(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の工作機械を用いて発泡スチロールを切削加工すると、大量の切屑が発生する。特許文献1では、金属材料に凹溝を形成する際に発生する切粉の処理については記載されているものの、ワークとして発泡スチロールを用いた場合は発生する切屑の量が金属の場合とは比較にならないほど大量であり、凹溝形成に限らず、単に切断するだけでも大量の切屑が発生し、これらの清掃処理に時間を要するという問題があった。また、切り口から大量の切屑が発生するために複雑な形状の加工が困難であったり、切断面が荒れるため切断面の整形のための余肉材が必要となって材料費が増大してしまったりするという問題もあった。
【0005】
本発明の目的は、切屑の発生を抑制し、発泡材を容易かつ経済的に切削加工することのできる加熱式工具および工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱式工具は、ワークを加熱切削する加熱式工具であって、回転可能に設けられた主軸と、この主軸と前記ワークとを相対的に移動させる移動機構と、この移動機構を制御する制御手段と、を備えた工作機械に取り付けられ、前記主軸とともに移動する電熱線と、この電熱線に電力を供給する電源と、を備え
、前記電熱線は直線状に延びて配置され、前記移動機構は、少なくとも前記主軸を前記電熱線が延びる方向に移動可能とすることを特徴とする。
【0007】
ここで、ワークとしては、加熱することで切削可能な材料であればよく、例えば、発泡材が挙げられる。発泡材としては、発泡スチロール、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン等の合成樹脂発泡材が挙げられ、特に、気泡が比較的大きいために大量の切屑が発生しやすい発泡スチロールの切削加工に適している。
この構成によれば、電熱線によりワークを溶融しながら切削加工するため、ワーク、特に発泡材の切り口から切屑が発生しない。したがって、切屑の清掃処理を行う必要がなく、作業性に優れるとともに、複雑な形状の加工も容易に行うことができる。また、電熱線による切断面は滑らかに形成されるため、余肉材を設けて切断面を整形する必要がなく、材料費を抑えることができる。
また、主軸と移動機構と制御手段とを備えた一般的に用いられている工作機械に対し、電熱線を有する加熱式工具と電源とを取り付けるだけの簡単な構成でよいため、設備費を最小限に抑えることができる。
【0008】
本発明の加熱式工具において、U字フレームをさらに備え、前記電熱線の両端は前記U字フレームの両端にそれぞれ接続されて直線状を形成するとともに、前記電熱線の両端のうち下方に位置する端部にはウェイトが設けられていることが好ましい。
この構成によれば、電熱線の両端のうち下方に位置する端部に設けられたウェイトにより電熱線に張力が与えられるため、発泡材を切断する際に電熱線を直線状に維持することができ、発泡材の切削加工を安定して行うことができる。
【0009】
本発明の加熱式工具において、前記ウェイトの内部には、前記ウェイトを回転させる自転モータが配置されていることが好ましい。
この構成によれば、電熱線の下端部に設けられたウェイトの内部で自転モータが回転することにより、いわゆるジャイロ効果が働き、ウェイトが左右前後に振れる現象を抑えることができる。したがって、安定して電熱線を直線状に維持することができ、発泡材の切削加工を安定して行うことができる。
【0010】
本発明の加熱式工具において、前記電熱線の周囲には、当該電熱線の接触を検知するリングセンサが配置され、前記リングセンサは、検知結果を前記制御手段に通知することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、リングセンサにより電熱線が直線状を維持できなくなったことを検知することができる。すなわち、正常な切削加工は、電熱線が直線状態を維持しながら発泡材を切断する状態であるが、発泡材の材質や厚みにより正常な状態で切断できなくなる場合がある。このような場合は、制御装置による移動機構の移動速度に対し、電熱線による切断が追いつかないため、電熱線が発泡材によって後方(進行方向の反対方向)に引っ張られる状態となり、電熱線が斜め方向に傾斜してリングセンサに接触する。リングセンサは、電熱線が接触したことを制御装置に通知するため、制御装置は、この通知に基づいて移動機構の移動速度を遅くしたり、電熱線に供給する電力を大きくしたりして、移動機構の移動速度と電熱線による切断速度とが合うように調整することができる。このように、リングセンサにより電熱線の状態を正常に維持することができ、安定した切削加工を行うことができる。
【0012】
本発明の加熱式工具において、前記電熱線の一方の端部と他方の端部のうち少なくともいずれか一方は、前記U字フレームに沿ってスライド可能に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、電熱線の一方の端部と他方の端部のうち少なくともいずれか一方をスライドさせることで、電熱線を鉛直方向以外の方向に直線状に延びる状態を維持することができる。したがって、発泡材を様々な形状に加工することができ、複雑な加工にも対応することができる。
【0013】
本発明の加熱式工具において、前記電源は、前記主軸の先端に取り付けられた発電機であり、この発電機は、前記主軸の回転を利用して発電することが好ましい。
この構成によれば、発電機は主軸の回転により発電するため、電源を別に用意する必要がなく、エネルギーを有効利用することができる。また、発電機が電熱線と近い位置に配置されるため、配線を簡略化することができる。
【0014】
本発明の工作機械は、ワークを加熱切削する工作機械であって、回転可能に設けられた主軸と、この主軸と前記ワークとを相対的に移動させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御手段と、前記主軸とともに移動する電熱線と、前記電熱線に電力を供給する電源と、を備え
、前記電熱線は直線状に延びて配置され、前記移動機構は、少なくとも前記主軸を前記電熱線が延びる方向に移動可能とすることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、上記発明と同様に、電熱線により発泡材を溶融しながら切削加工するため、発泡材の切り口から切屑が発生しない。したがって、切屑の清掃処理を行う必要がなく、作業性に優れるとともに、複雑な形状の加工も容易に行うことができる。また、電熱線による切断面は滑らかに形成されるため、余肉材を設けて切断面を整形する必要がなく、材料費を抑えることができる。
また、主軸と移動機構と制御手段とを備えた一般的に用いられている工作機械に対し、電熱線を有する工具と発電機とを取り付けるだけの簡単な構成でよいため、設備費を最小限に抑えることができる。
【0016】
本発明の工作機械において、前記電熱線の周囲には、当該電熱線の接触を検知するリングセンサが配置され、前記制御手段は、前記リングセンサによる検知結果に基づいて前記移動機構の移動速度を制御することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、上記発明と同様に、リングセンサにより電熱線が直線状でなくなったことを検知することができる。すなわち、電熱線が、発泡材の材質や厚みにより正常な状態を維持できなくなると、電熱線が斜め方向に傾斜してリングセンサに接触する。リングセンサは、電熱線が接触したことを制御装置に通知し、制御装置は、この通知に基づいて移動機構の移動速度を遅くしたり、電熱線に供給する電力を大きくしたりして、移動機構の移動速度と電熱線による切断速度とが合うように調整する。このように、制御装置により切断状況に応じて移動速度や電熱線に供給する電力を制御するため、電熱線を正常な状態に維持することができ、安定した切削加工を行うことができる。
【0018】
本発明の工作機械において、前記主軸は、前記ワークに対して4軸以上の方向に移動可能であることが好ましい。
ここで、4軸以上とは、X軸、Y軸、Z軸と、X軸周りのA軸、Y軸周りのB軸、Z軸周りのC軸のうちいずれか1つ以上の組み合わせである。この発明によれば、主軸がワークに対して4軸以上の方向に移動可能であるため、電熱線を様々な角度に保持することができ、ワークに対してあらゆる形状の切削加工を施すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
<工作機械1の構成>
工作機械1は、
図1に示すように、ワークWをX軸方向へ移動可能に支持するベース11と、このベース11の両側にベース11を跨いで設けられた門形フレーム12と、この門形フレーム12の水平ビーム12AにY軸方向へ移動可能に設けられたサドル13と、このサドル13にZ軸方向へ移動可能に設けられたラム14と、このラム14の内部に回転可能に支持された主軸3と、主軸3の先端に取り付けられた主軸先端部4と、ラム14の先端に設けられた工具5と、ベース11上に略垂直に設けられ、ワークWをベース11から嵩上げした状態で支持する支持軸2と、これらの駆動を制御する制御装置6と、を備えている。
【0021】
ベース11、門形フレーム12、サドル13、ラム14、およびベース11をX軸方向へ移動させるX駆動機構15と、サドル13をY軸方向へ移動させるY駆動機構16と、ラム14をZ軸方向へ移動させるZ駆動機構17と、により、ワークWと主軸3とを三次元方向へ相対移動させる相対移動機構が構成されている。
支持軸2は、ベース11の表面に形成された複数の平行な溝の一部に嵌合するように構成され、4本の支持軸2によりワークWの四隅を支持する。各支持軸2を設ける位置は、ワークWの大きさに応じて適宜調整することができる。
主軸3の先端部には、一般的な工具を取り付けられるように、図示しない工具ホルダ嵌合孔が形成されている。
【0022】
主軸先端部4は、一般的に用いられる工具ホルダの代わりに工具ホルダ嵌合孔に取り付けられる部材である。主軸先端部4は、
図2に示すように、断面L字型の本体41と、この本体41にベアリングを介して回転可能に設けられ主軸3の工具ホルダ嵌合孔に装着されるテーパシャンク部42と、本体41に設けられテーパシャンク部42を介して主軸3の回転が伝達されて電力を発生する発電機7と、を備えている。また、本体41は、ラム14の先端に形成された嵌合孔142に装着されることで回転しないようになっている。
発電機7によって発生した電力は、図示しない配線を介して後述の電熱線53に供給される。
【0023】
工具5は、ラム14の先端面14Aに取り付けられて主軸3の軸方向に沿って延びるアーム51と、このアーム51に直交する方向に開口するU字フレーム52とを有し、U字フレーム52の対向する上腕部52Aと下腕部52Bとに電熱線53の各端部が取り付けられる。具体的には、上腕部52Aに電熱線53を取り付けるための取付片521が設けられ、下腕部52Bには、電熱線53を挿通可能な挿通孔522が形成されている。
【0024】
電熱線53は、一方の端部が取付片521に取り付けられ、他方の端部は挿通孔522に挿通されて鉛直方向に直線状に延びている。また、挿通孔522に挿通された電熱線53の下端部にはウェイト54が取り付けられている。ウェイト54の内部には、
図3に示すように、ウェイト54を回転させるための自転モータ55が配置されている。
【0025】
また、
図2に示すように、電熱線53の取付片521の近い位置にはリングセンサ56が設けられている。リングセンサ56は、電熱線53の接触の有無を検知するセンサであり、リングセンサ56の中心付近を電熱線53が挿通するように、固定アーム561により取付片521に固定されている。リングセンサ56は、検知結果を制御装置6に通知し、制御装置6はこの検知結果に基づいて相対移動機構を制御する。ここで、発泡材を垂直加工する際は、電熱線53が直線状に延びた状態でワークWを加工することが望ましいが、電熱線53の溶断不足により、
図4に示すように、電熱線53がワークWに押されて垂直加工の状態を保てなくなる場合がある。この場合、電熱線53の傾きによりリングセンサ56に接触するため、リングセンサ56はこの接触を検知して制御装置6にその検知結果を通知する。
【0026】
制御装置6は、X駆動機構15、Y駆動機構16、およびZ駆動機構17を、予め設定されたプログラムにしたがって駆動制御し、また、リングセンサ56による検知結果に基づいて駆動制御する。さらに、制御装置6は、発電機7で発電された電力を電熱線53へ給電する制御を行っている。具体的には、ワークWの厚さに応じた電力を供給するために、主軸3の回転を調整する。ワークWが厚い場合は電力量を増やすために主軸3の回転を高速にする制御を行い、ワークWが薄い場合は電力量を減らすために主軸3の回転を低速にする制御を行う。
【0027】
<加工方法>
上述した構成の工作機械1を用いて、発泡材を切削加工する方法について説明する。
発泡スチロールであるワークWを支持軸2の上に固定するとともに、工作機械1の主軸3およびラム14に、主軸先端部4および工具5を取り付ける。このとき、工具5の自転モータ55を回転させる。
この状態において、ワークWを加工するために予め定められた加工条件で加工を実行するプログラムを有する制御装置6からの指令により、ワークWの厚みに応じた回転速度で主軸3を回転させるとともに、主軸3をY軸方向およびZ軸方向へ、また、ベース11をX軸方向へ選択的に移動させながら、主軸3とともに移動する工具5によりワークWに所望の加工を施す。
加工の際、電熱線53は、鉛直方向に直線状に延びた状態を維持した状態でワークWを溶断していく。ここで、
図4に示すように、電熱線53が、溶断不足により工具5の移動速度についていけず、ワークWに押されることで傾き、リングセンサ56に接触する。リングセンサ56はこの接触を検知すると、検知結果を制御装置6に通知する。制御装置6は、この検知結果に基づいて相対移動機構の速度を制御する。
図4においては、移動速度を遅くすることにより、電熱線53の鉛直方向に直線状に延びた状態を維持することができる。
【0028】
<第1実施形態の作用効果>
以上の実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
本実施形態では、ラム14の先端に取り付けられた工具5が電熱線53を備え、電熱線53により発泡材を溶融しながら切削加工するため、発泡材の切り口から切屑が発生しない。したがって、切屑の清掃処理を行う必要がなく、作業性に優れるとともに、複雑な形状の加工も容易に行うことができる。また、電熱線53による切断面は滑らかに形成されるため、余肉材を設けて切断面を整形する必要がなく、材料費を抑えることができる。
【0029】
また、一般的に用いられている門形の工作機械に工具5および発電機7を備えた主軸先端部4を取り付けるだけで発泡材を効率よく経済的に切削加工することができるため、新たな設備を投入する必要がなく、設備費を抑えることができる。さらに、一般的な工作機械が備えている機能、例えば自動運転を利用できるため、人件費を抑えることができる。
【0030】
本実施形態では、電熱線53の下端部にウェイト54を設けたことで、電熱線53を直線状に延びた状態に維持させることができる。また、ウェイト54の内部に配置された自転モータ55の回転によりウェイト54が回転し、この回転によりウェイト54が振れる現象を抑制することができ、電熱線53が直線状に延びた状態をより安定して維持させることができる。
【0031】
本実施形態では、リングセンサ56が電熱線53の周囲に設けられていることで、電熱線53の溶断不足により直線状の状態を維持できなくなった場合(
図4参照)に、電熱線53がリングセンサ56に接触する。リングセンサ56は、この接触を検知して検知結果を制御装置6に通知し、制御装置6は検知結果に基づいてX駆動機構15、Y駆動機構16、Z駆動機構17の移動速度を遅くする制御を行う。これにより、電熱線53が直線状になる状態を維持することができ、発泡材の切削加工を安定して実施することができる。
【0032】
本実施形態では、発電機7を主軸3の先端に設ける構成とした。発電機7は、主軸3の回転を動力として発電するため、その他の電源を用意する必要がなく、エネルギーを有効利用することができる。また、発電機7と電熱線53との距離が短いため、電力を供給するための配線を短くすることができ、装置を簡略化することができる。
【0033】
[第2実施形態]
第2実施形態では、U字フレーム52に対する電熱線53の取付方法とリングセンサが設けられていない点が異なる。ただし、基本的には第1実施形態と同様の構成であるため、同様の構成については説明を省略する。
第2実施形態では、工具60は、
図5に示すように、U字フレーム52の上腕部52Aに沿ってスライド可能なスライド取付片61を備えている。スライド取付片61には電熱線53の一方の端部が接続され、スライド取付片61は上腕部52Aに沿ってスライドした位置に固定されている。すなわち、電熱線53は左側に傾斜した状態となる。
【0034】
このような第2実施形態では、前述した作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。なお、第2実施形態ではリングセンサを設けていないため、前述したリングセンサによる作用効果は得られない。
第2実施形態では、スライド取付片61の取付位置をスライドさせることで、電熱線53を直線状に傾斜させた状態を維持することができるため、ワークWに傾斜面を形成することができる。また、スライド取付片61は上腕部52Aに沿ってスライド可能であるため、所望の角度となるように位置調整をすることができる。このように、様々な形状に加工できるため、汎用性が高い。
【0035】
[第3実施形態]
第3実施形態では、工具が第1実施形態および第2実施形態とは異なる。第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
図6に示すように、主軸3の先端には、一般的に用いられる工具ホルダ43が主軸3の工具ホルダ嵌合孔に装着されるテーパシャンク部42を介して取り付けられ、工具ホルダ43の先端には電熱線74の一方の端部が取り付けられている。電熱線74の他方の端部にはウェイト75が取り付けられており、このウェイト75により電熱線74が鉛直方向に直線状に張った状態を維持することができる。なお、ウェイト75は、第1実施形態のウェイト54と同様の構成である。また、ウェイト75の下方には導電性のプレート76が配置され、ウェイト75を挿通してウェイト75の下端部から延びる電熱線74の先端に取り付けられた小さなおもり77は、プレート76に接触する。また、プレート76は、絶縁プレート111を介してベース11上に載置されている。
電熱線74の一方の端部は、電源78のプラス側の端子からのびる配線79に接続されるとともに、プレート76は電源78のマイナス側の端子に接続されている。これにより、電源78で発生する電力が電熱線74に供給される。
【0036】
このような第3実施形態では、前述した作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。なお、第3実施形態においてリングセンサを設けてもよく、リングセンサを設けた場合は前述と同様の作用効果を得ることができる。
第3実施形態では、一般的に用いられる工具ホルダ43の先端に電熱線74を取り付けただけの簡単な構成であるので、設備費を大幅に抑えることができる。
また、ウェイト75の下端部にさらに小さなおもり77を取り付けたことで、ウェイト75のぶれを小さくすることができるため、より安定した切削加工を行うことができる。
さらに、ベース11とプレート76との間に絶縁プレート111を設けたことで、工作機械全体とは電気的に絶縁されるため、より安全である。
【0037】
なお、上記第3実施形態において、プレート76を設けないで、電熱線74からケーブル等で直接電源78のマイナス側の端子に接続させる構成であってもよい。また、絶縁プレート111を設けない構成としてもよい。一方、電気的な問題がなければ、ベース11自体をマイナス極にしておもり77から導電させてもよい。
【0038】
[変形例]
本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
前記実施形態では、工具5をラム14に取り付ける構成としたが、ラム14に一般的に取り付けられる工具ホルダの先端に工具5を取り付ける構成としてもよい。
【0039】
前記実施形態では、工具5は、門形の工作機械1に取り付けられ、電熱線53が上下に張られた状態を示したが、
図7に示すように、横中ぐり盤の工作機械9の主軸91に取り付けた構成でもよい。工具70は、U字フレーム72の腕部72Aが主軸91の軸方向に直交するように取付部材92を介して取り付けられ、電熱線73は水平方向に延びた状態となる。また、電熱線の両方の端部のうち少なくともいずれか一方を腕部72Aに沿ってスライドさせることにより、
図8に示すように、電熱線73を傾斜させ、ワークWに傾斜面を形成可能にするようにしてもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、工具5は、門形の工作機械1に取り付けられ、前述した変形例においては横中ぐり盤の工作機械9に取り付けられたが、これら以外の工作機械にも適用することができる。例えば、ロータリーテーブル付きの横軸機の場合、ロータリーテーブルの回転とXYZ軸方向への3次元方向への移動指令が可能であるため、カム形状などの複雑な形状の加工も可能となる。
【0041】
前記実施形態では、工具5の電熱線53は、U字フレーム52の両端部に直線状に張られた構成であったが、工具5の形状はこれに限られない。例えば、
図9に示すU字形状の電熱線81を有する工具8を用いれば、ワークWを
図9および
図10に示す形状に加工することができる。その他、
図11、
図12、
図13、
図14、および
図15に示す形状の電熱線を用いれば、V字形状などの様々な形状にワークWを加工することができる。
【0042】
また、前記実施形態では、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に移動可能な主軸を例示して説明したが、X軸、Y軸、Z軸と、C軸、A軸、B軸のうち1つ以上との組み合わせ、すなわち4軸以上の方向に移動可能な主軸を用いてもよい。
図16に5軸方向に移動可能な5軸ヘッドを有する工作機械の例を示す。
図16において、工作機械100は、一般的な門形の工作機械であり、Z軸方向へ移動可能なラム14に設けられた5軸ヘッド110を有している。5軸ヘッド110は、Z軸方向に延出するとともにZ軸周り(C軸方向)に回転可能なヘッド本体部111と、ヘッド本体部111の先端に取り付けられ、ヘッド本体部111との取付位置を支点としてY軸まわり(B軸方向)に回動可能なヘッド先端部112と、を有している。ヘッド本体部111は、ヘッド本体部111をC軸方向に回動させる図示しないC駆動機構を有し、ヘッド先端部112は、ヘッド先端部112をB軸方向に回動させる図示しないB駆動機構を有している。ヘッド先端部112には工具ホルダ113が取り付けられ、工具ホルダ113の先端には上述した工具8が取り付けられている。
このような工作機械100は、工具8を様々な角度で保持することができるため、電熱線を様々な角度に調整することで、平面形状だけでなく曲面形状なども用意に切削加工することができる。
【0043】
前記実施形態では、ワークとして発泡スチロールを切削加工する例を説明したが、加熱することで切削加工できる材料であればよい。
前記実施形態では、発電機7を主軸3の先端に設け、発電機7は主軸3の回転により電力を発生させる構成としたが、発電機7の代わりにバッテリーを用いてもよい。また、発電機7またはバッテリーを工作機械1の外部に設けてもよく、この場合は、外部電源から電熱線53に電力を供給する配線を設置する。
【0044】
前記第1実施形態では、電熱線53の下方にウェイト54および自転モータ55を設ける構成としたが、自転モータ55を設けない構成でもよいし、ウェイト54および自転モータ55を設けないで電熱線53の下方の端部をU字フレーム52の下腕部52Bに固定する構成としてもよい。
前記第1実施形態では、電熱線53にリングセンサ56を配置する構成としたが、リングセンサ56を配置しない構成としてもよい。
【0045】
前記第1実施形態では、リングセンサ56における検知結果に基づいて、制御装置6が相対移動機構の移動速度を制御する構成としたが、移動速度ではなく、主軸3の回転速度を調整することで発電機7から電熱線53へ供給される電力量を調整し、溶断力を制御する構成としてもよい。
前記第2実施形態では、リングセンサを設けない構成としたが、リングセンサを設けてもよい。この場合は、電熱線53がリングセンサの中心付近を通るように、リングセンサの向きや位置が調整される。これによれば、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。