特許第5791275号(P5791275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791275
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】透明導電膜層シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20150917BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20150917BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20150917BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20150917BHJP
   H01H 11/00 20060101ALI20150917BHJP
   H01H 13/00 20060101ALI20150917BHJP
   H01H 13/02 20060101ALI20150917BHJP
   H01H 13/06 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   G06F3/041 400
   B32B7/02 104
   H01B5/14 A
   H01B13/00 503B
   H01H11/00 G
   H01H13/00 B
   H01H13/02 A
   H01H13/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-285440(P2010-285440)
(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2011-150697(P2011-150697A)
(43)【公開日】2011年8月4日
【審査請求日】2013年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2009-291867(P2009-291867)
(32)【優先日】2009年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】日本写真印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】高畑 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森 富士男
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−217380(JP,A)
【文献】 特開2009−280776(JP,A)
【文献】 特開2009−277763(JP,A)
【文献】 特開2004−051804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01−3/048
G06F 3/14−3/153
B32B 7/02
H01B 5/14
H01B 13/00
H01H 11/00
H01H 13/00
H01H 13/02
H01H 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部にディスプレイを設置した際に色むらが生じないようにした透明導電膜層シートであって、
ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のいずれかからなる基体シートと、前記基体シート上に形成されたインジウムスズ酸化物からなる透明導電膜層と、前記透明導電膜層を覆うように粘着層を備えた透明導電膜層シートであって、保護シートを積層しかつ前記粘着層をアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ゴム系樹脂のいずれかにすることにより、前記粘着層が水蒸気によって白化することが防止されたタッチセンサ用透明導電膜層シート。
【請求項2】
下部にディスプレイを設置した際に色むらが生じないようにした透明導電膜層シートであって、
ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のいずれかからなる基体シートと、前記基体シート上に形成されたインジウムスズ酸化物からなる透明導電膜層と、前記透明導電膜層を覆うように粘着層を備えた透明導電膜層シートであって、保護シートを積層しかつ前記粘着層をアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ゴム系樹脂のいずれかにすることにより、前記粘着層および透明導電膜層が水蒸気によって白化することが防止されたタッチセンサ用透明導電膜層シート。
【請求項3】
前記保護シートが、前記基体シートの粘着層形成面と反対側の面に形成された請求項1及び請求項2に記載のタッチセンサ用透明導電膜層シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のタッチセンサ用透明導電膜層シートを用いた静電容量式のタッチセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は透明導電膜層シート、とくに外部からの水分を遮断して粘着層を保護する機
能をもった透明導電膜層シートおよびその製造方法に関する発明であり、静電容量式のタ
ッチセンサに適する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着層を介して貼着された静電容量式の透明タッチスイッチの文献として特許文
献1があった。
【0003】
上記特許文献1の発明は、前記透明面状体を複数備える静電容量式の透明タッチスイッ
チであって、前記各透明面状体は粘着層を介して貼着されており、粘着層はエポキシ系や
アクリル系など一般的な透明接着剤を用い、厚みは25〜75μm程度となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特再公表WO2006−126604
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、粘着層としてエポキシ系やアクリル系など一般的な透明接着剤を用いて25〜
75μm程度の厚みに形成した場合、高温高湿の環境下にさらされると外気の水分を吸収
して表面が白化する問題があった。
【0006】
とくに、特に粘着層の厚みが厚い場合には、側面から水分の侵入が顕著になり、白化の
程度もよりひどくなり、ときには透明導電膜層までがその水分によって影響を受ける問題
もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透明導電膜層が形成され、波長550nmにおける面内方向リタデーション
値Reが20nm以下で水蒸気透過性が高い材質からなる基体シートの片面に粘着層が形
成された透明導電膜層シートであって、該粘着層形成面と反対側の面に水蒸気バリア性の
ある材質からなる保護シートが積層された透明導電膜層シートである。また本発明は、前
記保護シートが、基体シートの反対面の粘着層の側面まで被覆されるよう立体形状に形成
されていてもよい。
【0008】
また本発明は、前記保護シートの材質が、シクロオレフィン系樹脂であることを特徴と
する透明導電膜層シートであってもよい。また本発明は、前記基体シートが、ポリカーボ
ネート系樹脂フィルムであることを特徴とする透明導電膜層シートであってもよい。
【0009】
また本発明は、透明導電膜層が形成された基体シートの片面に粘着層を形成し、該粘着
層形成面と反対側の面に保護シートを積層する透明導電膜層シートの製造方法であって、
前記粘着層の側面を被覆するように予め立体形状に形成された保護シートを積層すること
を特徴とする透明導電膜層シートの製造方法であってもよい。また本発明は、透明導電膜
層が形成された基体シートの片面に粘着層を形成し、該粘着層形成面と反対側の面に保護
シートを積層する透明導電膜層シートの製造方法であって、粘着層の側面まで沿うよう立
体形状に加工しながら保護シートを積層することを特徴とする透明導電膜層シートの製造
方法であってもよい。また本発明は、透明導電膜層が形成された基体シートの片面に粘着
層を形成し、該粘着層形成面と反対側の面に保護シートを積層する透明導電膜層シートの
製造方法であって、前記積層した後、保護シートを粘着層の側面に沿うように加工するこ
とを特徴とする透明導電膜層シートの製造方法であってもよい。
【0010】
また本発明は、前記透明導電膜層シートを用いた静電容量式のタッチセンサである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の透明導電膜層シートは、透明導電膜層が形成され、波長550nmにおける面
内方向リタデーション値Reが20nm以下で水蒸気透過性が高い材質からなる基体シー
トの片面に粘着層が形成された透明導電膜層シートであって、該粘着層形成面と反対側の
面に水蒸気バリア性のある材質からなる保護シートが積層されていることを特徴とする。
したがって、保護シートによって水分の浸入を防止できるので、水蒸気透過性が高い基体
シートであっても白化を防止できる効果がある。
【0012】
また、本発明の透明導電膜層シートは、前記保護シートが、基体シートの反対面の粘着
層の側面まで被覆されるよう立体形状に形成されていることを特徴とする。したがって、
粘着層の厚みが厚い場合であっても側面から水分の侵入を防止できるので、より白化を防
止できる効果がある。
【0013】
また本発明の透明導電膜層シートの製造方法は、透明導電膜層が形成された基体シート
の片面に粘着層を形成し、該粘着層形成面と反対側の面に保護シートを積層する透明導電
膜層シートの製造方法であって、前記粘着層の側面を被覆するように予め立体形状に形成
された保護シートを積層することを特徴とする。したがって、白化を防止した透明導電膜
層シートを生産性よく高品質で製造できる効果がある。
【0014】
また本発明の透明導電膜層シートの製造方法は、透明導電膜層が形成された基体シート
の片面に粘着層を形成し、該粘着層形成面と反対側の面に保護シートを積層する透明導電
膜層シートの製造方法であって、粘着層の側面まで沿うよう立体形状に加工しながら保護
シートを積層することを特徴とするか、または前記保護シートを積層した後、保護シート
を粘着層の側面に沿うように加工することを特徴とする。したがって、白化を防止した透
明導電膜層シートを生産性よく高品質で製造できる効果がある。
【0015】
また本発明の静電容量式のタッチセンサは、前記前記透明導電膜層シートを用いたこと
を特徴とする。したがって、白化を防止した静電容量式のタッチセンサが得られる効果が
ある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の透明導電膜層シートを示す模式断面図であり、(a)は透明導電膜層および粘着層がそれぞれ一層ずつ形成された例を示し、(b)は基体シート、透明導電膜層および粘着層がそれぞれ二層ずつ形成された例を示し、(c)は透明導電膜層および粘着層がそれぞれ一層ずつ形成され、保護シートが、粘着層の側面まで被覆されるよう立体形状に形成された例を示し、(d)は基体シート、透明導電膜層および粘着層がそれぞれ二層ずつ形成され、保護シートが、両粘着層の側面まで被覆されるよう立体形状に形成された例を示す。
図2】本発明の透明導電膜層シートの製造方法を示す模式断面図であり、(a)は粘着層の側面を被覆するように予め立体形状に形成された保護シートを積層する製造方法例を示し、(b)は粘着層の側面まで沿うよう立体形状に加工しながら保護シートを積層する製造方法例を示し、(c)は保護シートを積層した後、保護シートを粘着層の側面に沿うように加工する製造方法例を示す。
図3】本発明の両面透明導電膜層シートを用いた静電容量式のタッチセンサの一実施例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1の(a)を参照して、本発明の透明導電膜層シート5は、基体シート7の片面(一
方面)に粘着層4が形成された透明導電膜層シート5であって、粘着層4形成面と反対側
の面(他方面)に保護シート1が積層されている。透明導電膜層シート5は、基体シート
7と、基体シート7の一方面の上に形成された透明導電膜層3と、透明導電膜層3を覆う
ように形成された粘着層4と、基体シート7の他方面に積層された保護シート1とを備え
ている。図1の(b)及び(d)を参照して、他の実施形態の透明導電膜層シート5は、
透明導電膜層3及び粘着層4が形成された基体シート7が、粘着層4と前記基体シート7
とが交互に繰り返すように2層積層されている。上記のような基体シート7が2層以上の
複数積層されてもよい。この場合、保護シート1は、最表面に露出した基体シート7の他
方面に積層されている。図1の(c)及び(d)を参照して、更に他の実施形態の透明導
電膜層シート5は、保護シート1が、全ての粘着層4の側面まで被覆されるよう立体形状
に形成されている。尚、他の部材10はとくに限定されないが、例えばガラス基材などが
挙げられる。
【0018】
基体シート7は、波長550nmにおける面内方向リタデーション値Reが20nm以
下の材質からなるシートであり、厚みが30〜2000μm程度が好ましい。面内方向リ
タデーション値Reが20nmを越えるような値であると、下部にディスプレイを設置し
た場合にディスプレイから出射された色と異なる色になったり、色むらが生じる問題があ
る。面内方向リタデーション値Reを20nm以下にできる材質としては、ポリカーボネ
ート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリスチ
レン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などのプラスチックフィルムが挙げられ
る。なかでも、ポリカーボネート系樹脂は、製膜条件を好適にすることで上記面内方向リ
タデーション値Reを5nm以下にすることが可能であるため特に好ましい。
【0019】
なお、リタデーションとは、結晶その他の非等方性物質に入射した光が互いに垂直な振
動方向を持つ2つの光波に分かれる現象である。複屈折を持つ材料に非偏光の光を入射す
ると、入射光は2つに分かれる。両者は振動方向が互いに直角で、一方を垂直偏光、他方
を水平偏光という。垂直の方が異常光線、水平の方が常光線となり、常光線は伝搬速度が
伝搬方向によらない光線で、異常光線は伝搬方向によって速度が異なる光線である。複屈
折材料ではこの2つの光線の速度が一致する方向がありこれを光学軸という。面内方向リ
タデーション値Reとは、上記基体シート7の面内方向における遅相軸方向の屈折率をn
x、基体シート7の面内方向における進相軸方向の屈折率をny、及び基体シート7の厚
みをdとしたときに、(nx−ny)×dで計算される値である。
【0020】
しかし、ポリカーボネート系樹脂を含め上記面内方向リタデーション値Reが低いプラ
スチックフィルムの多くは、水蒸気透過性が高いため水蒸気を容易に透過し、透過された
水蒸気によって後述の粘着層4が(条件によっては透明導電膜層3も)白化する問題があ
る。そこで本発明では、粘着層4形成面と反対側の面に保護シート1が積層させて裏面か
ら水蒸気の侵入を遮断し、粘着層4等の白化を防止させたのである。なお、ここでいう水
蒸気透過性が高いとは、シート全体の水蒸気透過度がJISK7129のB法に準拠して
、温度40℃、湿度90%の条件で測定した場合に、10g/m・day以上になる場
合を示す。
【0021】
保護シート1は、水蒸気バリア性のある材質からなるシートであり、厚みが30〜20
00μm程度が好ましい。そのような材質としては、シクロオレフィン系樹脂などのプラ
スチックフィルムのほか、酸化ケイ素などの無機質の膜を付与したフィルムが挙げられる
。なかでも、シクロオレフィン系樹脂フィルムは水蒸気バリア性が高いだけでなく、面内
方向リタデーション値Reが低くかつ立体加工もしやすいため、特に好ましい。なお、こ
こでいう水蒸気バリア性とは温度40℃、湿度90%の条件で測定した場合に、水蒸気の
透過率が1g/(m・day・atm)以下であることをいう。
【0022】
透明導電膜層3は、インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物などの金属酸化物や、樹脂バイ
ンダーとカーボンナノチューブや金属ナノワイヤなどとからなる層が挙げられ、真空蒸着
法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法、グラビア、スクリーン、オフ
セットなどの汎用の印刷法、各種コーターによる方法、塗装、ディッピングなどの方法で
形成するとよい。厚みは数十nm程度から数μm程度で形成され、80%以上の光線透過
率、数mΩから数百Ωの表面抵抗値を示すことが好ましい。
【0023】
粘着層4は、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ゴム系樹脂などか
らなる層が挙げられ、グラビア、スクリーン、オフセットなどの汎用の印刷法、各種コー
ターによる方法、塗装、ディッピングなどの方法で形成するとよい。厚みは数μm程度か
ら数十μm程度で形成され、強固な粘着性・各種耐性を示すことが好ましい。しかし、粘
着性・各種耐性にすぐれた粘着層はたいてい湿気を吸着して白化する問題がある。
【0024】
なお上記の例では、基体シート7や粘着層4が一層ずつの場合を示したが(図1(a)
参照)、これらの層が二層以上ずつ積層されていてもよい(図1(b)参照)。また本発
明では、基体シート7に保護シート1を積層することを特徴としているが、保護シート1
が基体シート7の要求特性も満たすものであれば、保護シート1を基体シート7の代用と
して保護シート1に直接透明導電膜層3や粘着層4などを設けてもよい。このような場合
には、基体シート7が不要になるのでより効率的である。
【0025】
また、基体シート7を保護シート1で積層する場合、その面だけでなく裏面の粘着層4
の側面まで被覆するような構造にすると(図1(c)参照)、より白化防止の効果が向上
する。そして、基体シート7や粘着層4が二層以上ずつ積層されている場合には、それら
の層全ての側面まで被覆するような構造にすると(図1(d)参照)、より白化防止の効
果が向上する。
【0026】
保護シート1を裏面の粘着層4の側面まで被覆するような構造に加工する方法としては
、粘着層4等の側面を被覆するように予め立体形状に形成された保護シート1を基体シー
ト7に積層する方法(図2(a)参照)、粘着層4等の側面まで沿うよう立体形状に加工
しながら保護シート1を基体シート7に積層する方法(図2(b)参照)、保護シート1
を基体シート7に積層した後、保護シート1を粘着層4等の側面に沿うように加工する方
法(図2(c)参照)などが挙げられる。
【0027】
保護シート1を粘着層4等の側面を被覆するように予め立体形状に形成する方法として
は、プレス成形、真空成形、圧空成形などが挙げられる。立体形状に形成された保護シー
ト1を基体シート7に積層する方法としては、接着剤等を介してラミネートする方法など
が挙げられる。
【0028】
粘着層4等の側面まで沿うよう立体形状に加工しながら保護シート1を基体シート7に
積層する方法としては、保護シート1を軟化温度以上に加熱して保護シート1を軟化して
いる状態にし、シリコンパットなどのゴム質の押圧材15で押圧することにより、保護シ
ート1を粘着層4の側面まで沿うようにする方法などが挙げられる。
【0029】
保護シート1を基体シート7に積層した後、保護シート1を粘着層4等の側面に沿うよ
うに加工する方法としては、貼り付けした保護シート1に高圧の水18等を吹き付けるハ
イドロフォーミング法などが挙げられる。
【0030】
なお、上記透明導電膜層シート5には外観意匠を向上させるための絵柄層を適宜設けて
もよい。絵柄層は、ポリビニル系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ア
ルキッド系などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有
する着色インキを用いるとよい。また、着色剤としてアルミニウム、チタン、ブロンズ等
の金属粒子やマイカに酸化チタンをコーティングしたパール顔料等を用いることもできる
。絵柄層の形成方法としては、グラビア、スクリーン、オフセットなどの汎用印刷法や各
種コート法、塗装などの方法がある。
【0031】
図2の(a)を参照して、透明導電膜層シート5の製造方法の1つとして、基体シート
7の一方面に透明導電膜層3を形成する工程と、透明導電膜層3を覆うように粘着層4を
形成する工程と、基体シート7の他方面に、粘着層4の側面を被覆するように予め立体形
状に形成された保護シート1を積層する工程とを備えたものがある。又、図2の(b)を
参照して、基体シート7の一方面に透明導電膜層3を形成する工程と、透明導電膜層3を
覆うように粘着層4を形成する工程と、基体シート7の他方面に、粘着層4の側面まで沿
うよう立体形状に加工しながら保護シート1を積層する工程とを備えたものがある。更に
図2の(c)を参照して、基体シート7の一方面に透明導電膜層3を形成する工程と、
透明導電膜層3を覆うように粘着層4を形成する工程と、基体シート7の他方面に水蒸気
バリア性のある材質からなる保護シート1を積層する工程と、保護シート1を粘着層4の
側面に沿うように加工する工程とを備えたものがある。透明導電膜層3及び粘着層4が複
数積層された透明導電膜層シートを製造する場合は、保護シート1を積層する工程の前ま
での工程を繰り返す。
【0032】
そして、以上の方法により得られた透明導電膜層シート5に形成されている透明導電膜
層3を、引き回し回路を介してICチップが搭載された外部回路28に接続すれば、過酷
な耐湿条件下でも耐えうる静電容量式タッチセンサ20が作成できる(図3参照)。
【実施例1】
【0033】
(1)透明導電膜層シートの作製
基体シートとして厚さ50μmのポリカーボネート系樹脂フィルムを用い、その表面に
インジウムスズ酸化物からなる透明導電膜層をスパッタリング法で200nmの厚みで形
成し、その上にポリウレタン系の粘着層をスクリーン印刷で形成した透明導電膜層シート
を10セット用意した。
【0034】
ついで、上記透明導電膜層シートの5セットには、基体シートの粘着層形成面と反対の
面に軟化温度120℃のシクロオレフィン系樹脂フィルムからなる保護シートを積層しつ
つ、150℃に加熱されているシリコンパットで背面から保護シートを押圧した。該シリ
コンパットの押圧する領域は基体シートのサイズより大きく設定しており、押圧すること
により保護シートが軟化するとともに、基体シートおよび粘着層の側面にまで沿って積層
された。残りの5セットは保護シートを積層しなかった。
【0035】
(2)透明導電膜層シートの耐性評価
以上の保護シートを積層した5セットおよび積層しなかった5セットを、60℃90R
H%の耐湿試験機に入れ、10日間放置後の表面状態を確認したところ、保護シートを積
層した5セットは全て異常がなかったが、積層しなかった5セットについては全て粘着層
が白化しており、うち1セットについては透明導電膜層も若干白化していた。
【実施例2】
【0036】
(1)透明導電膜層シートの作製
基体シートとして厚さ50μmのポリカーボネート系樹脂フィルムを用い、その表面に
インジウムスズ酸化物からなる透明導電膜層をスパッタリング法で200nmの厚みで形
成し、その上にポリウレタン系の粘着層をスクリーン印刷で形成した後、それらを三層積
層した透明導電膜層シートを10セット用意した。
【0037】
一方、軟化温度120℃のシクロオレフィン系樹脂フィルムを160℃に加熱し、プレ
ス成形によって外周に200μm程度の立ち上がりのある立体形状の保護シートを準備し
た。ついで、上記透明導電膜層シートの5セットには、この立体形状の保護シートの内面
にエポキシ系の接着剤を塗布し、積層された最下層の基体シートの粘着層形成面と反対の
側から保護シートを貼り付けした。保護シートの内面の領域は基体シートの外形サイズと
一致しており、貼り付けすることにより最下層の基体シートが保護シートにより被覆され
るとともに、上層の基体シートの側面および粘着層の側面も被覆された。残りの5セット
は保護シートを積層しなかった。
【0038】
(2)透明導電膜層シートの耐性評価
以上の保護シートを貼り付けした5セットおよび貼り付けしなかった5セットを、60
℃90RH%の耐湿試験機に入れ、10日間放置後の表面状態を確認したところ、保護シ
ートを貼り付けした5セットは全て異常がなかったが、貼り付けしなかった5セットにつ
いては全て粘着層が白化しており、うち3セットについては透明導電膜層がかなり白化し
ていた。
【実施例3】
【0039】
(1)透明導電膜層シートの作製
基体シートとして厚さ50μmのポリカーボネート系樹脂フィルムを用い、その表面に
インジウムスズ酸化物からなる透明導電膜層をスパッタリング法で200nmの厚みで形
成し、その上にポリウレタン系の粘着層をスクリーン印刷で形成した後、それらを二層積
層した透明導電膜層シートを10セット用意した。
【0040】
ついで、上記透明導電膜層シートの5セットには、積層された下層の基体シートの粘着
層形成面と反対の面に軟化温度120℃のシクロオレフィン系樹脂フィルムからなる保護
シートをエポキシ系の接着剤を介して貼り付けした。保護シートは基体シートの外形サイ
ズより大きく設定しており、上記の貼り付け工程では保護シートの外周部分は接着してい
なかったが、その後高圧力の流水でもってハイドロフォーミング加工することにより、保
護シートの外周部分が上層の基体シートおよび粘着層の側面に沿っていき貼り付けされた
。残りの5セットは保護シートを積層しなかった。
【0041】
(2)透明導電膜層シートの耐性評価
以上の保護シートを貼り付けした5セットおよび貼り付けしなかった5セットを、60
℃90RH%の耐湿試験機に入れ、10日間放置後の表面状態を確認したところ、保護シ
ートを貼り付けした5セットは全て異常がなかったが、貼り付けしなかった5セットにつ
いては全て粘着層が白化しており、うち1セットについては透明導電膜層がかなり白化し
ていた。
【符号の説明】
【0042】
1 保護シート
3 透明導電膜層
4 粘着層
5 透明導電膜層シート
7 基体シート
10 他の部材
20 静電容量式タッチセンサ
12 保護シートの外周加工部
15 押圧材
18 高圧の水
28 外部回路
図1
図2
図3