【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、伝熱管と、該伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、該挿通孔が前記伝熱管の周方向にN個の突起部を有する熱交換器に適用され、挿通孔壁面と伝熱管外面との間に存在する隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定する付着物計測装置であって、前記伝熱管の内部に設置された1または複数のセンサを走査することにより、前記伝熱管の周方向に
略等間隔で設定されたM個の測定点
を該伝熱管の軸方向に走査させたときの複数の探傷信号を取得する信号取得手段と、複数の前記探傷信号のうち、前記突起部に対応する位置以外の前記探傷信号を用いて隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定する処理手段と
を具備し、前記処理手段は、前記信号取得手段によって取得された複数の探傷信号のうち、M/N個おきに配置された測定点の探傷信号同士を同じグループとしてグループ化し、各前記グループの代表信号を求めるグループ代表信号算出手段と、前記代表信号に基づいて、前記挿通孔の支持板突起部に位置するとみなせる突起部グループを特定し、前記突起部グループ以外のグループである評価グループの信号を評価用センサ信号として選定する評価用グループ選定手段と、前記評価用センサ信号を用いて閉塞率または付着物の厚さを推定する推定手段とを具備する付着物計測装置を提供する。
【0009】
このような構成によれば、
前記伝熱管内部に設置された1または複数のセンサを走査することにより、伝熱管の周方向に略等間隔で配置されたM個の測定点を伝熱管の軸方向に走査されたときの探傷信号が信号取得手段によって取得され、これらM個の探傷信号において、M/N個おきに配置された測定点同士の探傷信号が同じグループとしてグループ化される。これにより、M個の探傷信号が、管支持板の影響を大きく受けている測定点の信号群と、管支持板の影響が小さい測定点の信号群、すなわち、突起部間に形成される隙間部に位置する測定点の信号群とに分けられ、結果としてM/N個のグループが作成される。続いて、M/N個の各グループにおいて代表信号がグループ代表信号算出手段により求められ、この代表信号に基づいて挿通孔の支持板突起部に位置するとみなせる突起部グループが評価用グループ選定手段により特定される。そして、突起部グループ以外のグループである評価グループの探傷信号を用いて隙間部の閉塞率または付着物の厚さが推定手段により推定される。このように、
管支持板の影響が小さい信号のみを用いて
隙間部の閉塞率または
隙間部に付着した付着物の厚さを推定するので、
管支持板による影響を低減でき、閉塞率の推定精度を向上させることができる。
また、特許文献1に開示されているように、一般的に、管支持板の影響を低減するためには、付着物が全く付着していない基準信号を事前に用意し、閉塞率推定の際には、検出信号から基準信号を減算することにより、管支持板の影響を除去するという方法がとられるが、本態様では、評価信号の他に基準信号を用意する必要がない。
上記閉塞率とは、挿通孔を伝熱管の軸方向から見たときの支持板と伝熱管外面の隙間のうち、付着物がついている面積と隙間全体の面積の面積比であり、以下の式で求められる。
閉塞率[%]=付着物の面積/隙間全体の面積*100
【0010】
本発明は、伝熱管と、該伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が、伝熱管軸方向の支持板中点を通り該伝熱管軸方向と垂直に交わる平面を挟んで略対称な形状である熱交換器に適用され
、挿通孔壁面と伝熱管外面との間に存在する隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定する付着物計測装置であって、1または複数のセンサを前記伝熱管の内側を走査させて探傷信号を取得する信号取得手段と、前記管支持板の軸方向中心位置を挟んで両側の探傷信号の非対称成分を用いて隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定する処理手段とを具備する付着物計測装置を提供する。
【0011】
伝熱管外面の凹凸形状穴の管支持板部に付着するスケールは、伝熱管軸方向に偏った分布をもって堆積することが知られている。したがって、このような特徴を利用し、支持板の伝熱管軸方向中点を中心とした非対称成分と閉塞率の相関を用いて閉塞率または付着物の厚さを推定する。評価対象信号に管支持板の影響が多少含まれていたとしても、管支持板は、伝熱管軸方向の支持板中点を通り該伝熱管軸方向と垂直に交わる平面を挟んで略対称な形状をしているので、非対称成分のみを評価に用いることで、管支持板による検出信号への影響を低減することが可能となる。
また、特許文献1に開示されているように、一般的に、管支持板の影響を低減するためには、付着物が全く付着していない基準信号を事前に用意し、閉塞率推定の際には、検出信号から基準信号を減算することにより、管支持板の影響を除去するという方法がとられるが、本態様では、評価信号の他に基準信号を用意する必要がない。
【0012】
上記付着物計測装置において、前記信号取得手段は、
前記センサを走査することにより、前記伝熱管の周方
向に略等間隔で配置されたM個の測定点を該伝熱管の軸方向に走査させたときの探傷信号を取得し、前記処理手段は、M/N個おきに配置された測定点の探傷信号同士を同じグループとしてグループ化し、各前記グループの代表信号を求めるグループ代表信号算出手段と、前記代表信号に基づいて前記挿通孔の支持板突起部に位置するとみなせる突起部グループを特定し、前記突起部グループ以外のグループである評価グループの信号を評価用センサ信号として選定する評価用グループ選定手段と、前記評価用センサ信号を用いて閉塞率または付着物の厚さを推定する推定手段とを具備することとしてもよい。
【0013】
上記構成によれば、前記伝熱管内部に設置された1または複数のセンサを走査することにより、伝熱管の周方向に略等間隔で配置されたM個の測定点を伝熱管の軸方向に走査されたときの探傷信号が信号取得手段によって取得され、これらM個の探傷信号において、M/N個おきに配置された測定点同士の探傷信号が同じグループとしてグループ化される。これにより、M個の渦電流探傷信号が、管支持板の影響を大きく受けている測定点の信号群と、管支持板の影響が小さい測定点の信号群、すなわち、突起部間に形成される隙間部に位置する測定点の信号群とに分けられ、結果としてM/N個のグループが作成される。続いて、M/N個の各グループにおいて代表信号がグループ代表信号算出手段により求められ、この代表信号に基づいて挿通孔の支持板突起部に位置するとみなせる突起部グループが評価用グループ選定手段により特定される。そして、突起部グループ以外のグループである評価グループの探傷信号を用いて隙間部の閉塞率または付着物の厚さが推定手段により推定される。このように、管支持板の影響が小さい信号のみを用いて閉塞率または付着物の厚さを推定するので、管支持板による影響を低減でき、閉塞率の推定精度を向上させることができる。
【0014】
上記付着物計測装置において、前記評価用グループ選定手段は、前記突起部の影響が及ぶ角度範囲内に位置するセンサの数を除外個数として有しており、前記代表信号を除外個数特定し、特定した代表信号が属するグループを前記突起部グループとして特定することとしてもよい。
【0015】
支持板突起部の影響が及ぶ角度範囲を予め定めておき、この角度範囲内に位置する測定点の数を除外個数として記憶しているので、支持板突起部の影響を受けているグループを容易に特定することができる。
【0016】
上記付着物計測装置において、前記処理手段は、前記代表信号のうち、前記突起部の影響が及ぶ角度範囲内に位置すると判断した代表信号において管支持板範囲の中点を特定し、前記評価グループの各探傷信号に前記中点と同じ位置を特定し、特定した位置を軸中心として前記探傷信号のそれぞれを折り返し、折り返された信号と折り返されなかった信号との差分信号を得ることで、探傷信号の前記中点を中心とする非対称成分をそれぞれ求め、複数の前記非対称成分に基づいて隙間部の閉塞率または付着物の厚さを推定することとしてもよい。
【0017】
このような構成によれば、突起部の影響が及ぶ角度範囲内に位置すると判断した代表信号、換言すると、支持板突起部に位置する探傷信号を用いて管支持板範囲の中点を特定するので、精度よく管支持板の中点を特定することができる。特に、最も振幅が大きかった代表信号を用いて管支持板範囲の中点を特定すれば、最も精度よく管支持板の中点を特定することができる。
そして、この中点を評価グループの各探傷信号に反映させ、この中点を中心として信号を折り返し、折り返された信号と折り返されなかった信号との差分信号を得ることで、支持板中点を中心とした非対称成分をそれぞれ求める。そして、この差分信号を用いて閉塞率または付着物の厚さを推定するので、管支持板による検出信号への影響が低減でき、閉塞率の推定精度を更に向上させることができる。
【0018】
上記付着物計測装置において、前記処理手段は、前記代表信号のうち、前記突起部の影響が及ぶ角度範囲内に位置すると判断した代表信号において管支持板範囲の中点を特定し、前記評価グループの各探傷信号から求めた評価用信号に前記中点と同じ位置を特定し、特定した位置を軸中心として前記評価用信号のそれぞれを折り返し、折り返された信号と折り返されなかった信号との差分信号を得ることで、評価用信号の前記中点を中心とする非対称成分をそれぞれ求め、複数の前記非対称成分に基づいて隙間部の閉塞率または付着物の厚さを推定することとしてもよい。
【0019】
このような構成によれば、突起部の影響が及ぶ角度範囲内に位置すると判断した代表信号、換言すると、支持板突起部に位置する探傷信号を用いて管支持板範囲の中点を特定するので、精度よく管支持板の中点を特定することができる。特に、最も振幅が大きかった代表信号を用いて管支持板範囲の中点を特定すれば、最も精度よく管支持板の中点を特定することができる。
そして、この中点を評価グループの各探傷信号から求めた評価用信号に反映させ、この中点を中心として信号を折り返し、折り返された信号と折り返されなかった信号との差分信号を得ることで、支持板中点を中心とした非対称成分をそれぞれ求める。そして、この差分信号を用いて閉塞率または付着物の厚さを推定するので、管支持板による検出信号への影響が低減でき、閉塞率の推定精度を更に向上させることができる。
上記評価用信号としては、例えば、探傷信号を平均した平均探傷信号が挙げられる。
【0020】
上記付着物計測装置において、前記信号取得手段により得られる信号は、磁性体に起因する信号要因を校正試験片に付加し、この校正試験片によって得た信号を基準信号として校正を行う渦電流探傷方式により得られた信号であってもよい。
【0021】
伝熱管や管支持板に付着するスケールが磁性体である場合、スケールに起因する信号は透磁率変化により発生する信号が主体である。したがって、校正基準として、伝熱管の変形やスリットを付与した信号ではなく、透磁率変化に起因する信号要因を用いて信号校正を行うことで、スケール信号が安定した検出信号を得ることが可能となる。
【0022】
本発明は、上記いずれかに記載の付着物計測装置を用いて検査を行う渦電流検査方法を提供する。
【0023】
本発明は、伝熱管と、該伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、該挿通孔が前記伝熱管の周方向にN個の突起部を有する熱交換器に適用され、挿通孔壁面と伝熱管外面との間に存在する隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定する付着物計測方法であって、前記伝熱管の内部に設置された1または複数のセンサを走査することにより、前記伝熱管の周方向に
略等間隔で設定されたM個の測定点
を該伝熱管の軸方向に走査させたときの複数の探傷信号を取得する
信号取得工程と、複数の前記探傷信号のうち、前記突起部に対応する位置以外の前記探傷信号を用いて隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定する
処理工程と
を有し、前記処理工程は、前記信号取得工程において取得した複数の探傷信号のうち、M/N個おきに配置された測定点の探傷信号同士を同じグループとしてグループ化し、各前記グループの代表信号を求めるグループ代表信号算出工程と、前記代表信号に基づいて、前記挿通孔の支持板突起部に位置するとみなせる突起部グループを特定し、前記突起部グループ以外のグループである評価グループの信号を評価用センサ信号として選定する評価用グループ選定工程と、前記評価用センサ信号を用いて閉塞率または付着物の厚さを推定する推定工程とを具備する付着物計測方法を提供する。
【0024】
本発明は、伝熱管と、該伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が、伝熱管軸方向の支持板中点を通り該伝熱管軸方向と垂直に交わる平面を挟んで略対称な形状である熱交換器に適用され
、挿通孔壁面と伝熱管外面との間に存在する隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定する付着物計測方法であって、
1または複数のセンサを前記伝熱管の内側を走査させて探傷信号を取得する工程と、前記管支持板の軸方向中心位置を挟んで両側の探傷信号の非対称成分を用いて隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定する工程とを具備する付着物計測方法を提供する。
【0025】
本発明は、伝熱管と、該伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、該挿通孔が前記伝熱管の周方向にN個の突起部を有する熱交換器に適用され、挿通孔壁面と伝熱管外面との間に存在する隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定するためのプログラムであって、前記伝熱管の内部に設置された1または複数のセンサを走査することにより、前記伝熱管の周方向に
略等間隔で設定されたM個の測定点
を該伝熱管の軸方向に走査させたときの複数の探傷信号を取得する
信号取得ステップと、複数の前記探傷信号のうち、前記突起部に対応する位置以外の前記探傷信号を用いて隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定する
処理ステップとを有し、前記処理ステップは、前記信号取得ステップにおいて取得した複数の探傷信号のうち、M/N個おきに配置された測定点の探傷信号同士を同じグループとしてグループ化し、各前記グループの代表信号を求めるグループ代表信号算出ステップと、前記代表信号に基づいて、前記挿通孔の支持板突起部に位置するとみなせる突起部グループを特定し、前記突起部グループ以外のグループである評価グループの信号を評価用センサ信号として選定する評価用グループ選定ステップと、前記評価用センサ信号を用いて閉塞率または付着物の厚さを推定する推定ステップとをコンピュータに実行させるための付着物計測プログラムを提供する。
【0026】
本発明は、伝熱管と、該伝熱管を通すための挿通孔が形成された管支持板とを備え、前記挿通孔が、伝熱管軸方向の支持板中点を通り該伝熱管軸方向と垂直に交わる平面を挟んで略対称な形状である熱交換器に適用され、挿通孔壁面と伝熱管外面との間に存在する隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定するためのプログラムであって、1または複数のセンサを前記伝熱管の内側を走査させて探傷信号を取得する
ステップと、前記管支持板の軸方向中心位置を挟んで両側の探傷信号の非対称成分を用いて隙間部の閉塞率または該隙間部に付着した付着物の厚さを推定する
ステップとをコンピュータに実行させるための付着物計測プログラムを提供する。