(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
屋根の防水工法として、屋根の下地にシート固定装置(固定金具)を配置し、防水シートをシート固定装置に接着することで防水シートを下地に固定する機械式固定方法が開発されている。下地に配置される固定金具の形状として、例えば円盤形状のものや細長い板状(プレート状)のものがある。
【0003】
図6(a)は、従来の細長い板状のシート固定装置(プレート状固定金具とも言う)を用いて、下地に防水シートを固定した状態を示す図である。図に示すように、シート固定装置610は、コンクリート製の下地602(以下、コンクリート下地と呼ぶ場合がある)に、屋根601の立上り部604に対して平行に配置され、ファスナ612を用いてコンクリート下地602に打込み固定されている。シート固定装置610が配置される間隔W6は、帯状の防水シート603の幅とほぼ同じ大きさ(約1200mm)であり、防水シート603の側部裏面をシート固定装置610の上面に接着して固定する。防水シート603が塩ビシートでありシート固定装置610の上面が塩ビフィルムによって被覆されている場合は、シート固定装置610の塩ビフィルムを溶剤等で溶かすことで防水シート603とシート固定装置610とを溶着することができる。
【0004】
従来のシート固定装置610は、通常、両方の側部に折返しが付けられた金属板により構成されているが、側部の形状はシート固定装置610の配置場所によって異なり、例えば屋根の立上り部604の付近に配置されるシート固定装置610aの一方の側部には立上り611が形成されている。
【0005】
特許文献1は防水シートを下地に固定する防水シート固定金具を開示する。特許文献1の防水シート固定金具は、屋根下地材の上面にその一方の方向に沿って固定金物をビス止めし、屋根下地材上面に防水シートを張設すると共に、その防水シートの端部を固定金物に貼着した屋根防水構造における固定金具である。そして、その固定金具の全長に亘って溝状凹部が形成され、この凹部の所要位置にビスが貫通され、かつ溝状凹部は、ビスが屋根下地材にねじ込まれた際、そのビス頭が固定金物上面から突出しない深さとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6(a)に示すような、細長い板状のシート固定装置610を用いた場合、防水シート603を線状に固定できるので、防水シート603に掛かる応力を線状に分散させることができた。しかしながら、シート固定装置610の強度が不足している場合、又はシート固定装置610の間隔W6が広すぎる場合、シート固定装置610が変形して防水シート603とシート固定装置610の際において防水シート603が破断する場合があった。具体的には、
図6(b)に示すように、例えば矢印Aの方向に強風が吹くと、防水シート603が上方(矢印Bの方向)に浮き上がり、シート固定装置610に応力(矢印C)が集中する。そして、集中した応力がシート固定装置610の強度を上回るとシート固定装置610が弓状に塑性変形する場合があった。一旦、シート固定装置610が塑性変形すると、シート固定装置610と防水シート603との際において防水シート603が伸び、破断等の損傷が起こりやすい状況になる。そのため、防水シートの浮き上がりに起因するプレート状固定金具の塑性変形を防止し、防水シートの損傷を防ぐことが望まれている。なお、特許文献1は、防水シート固定金物を下地に固定する際、ビスの頭部が上面から突出しないよう溝状凹部に納めることについて記載されているが、防水シートの浮き上がりに起因する防水シートの破損を防止することについては示唆していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下地に防水シートを固定するシート固定装置であって、上面、該上面の反対側の下面及び両側部を有する細長い本体と、前記本体の上面に設けられ、前記防水シートに接合するシート接合部と、前記本体の何れか一方の側部から下方に延び、前記下地に接して前記本体を支持する支持部と、前記本体の両側部より内側の前記下面に前記本体の長手方向に沿って延びると共に下方に突出するよう設けられた補強部と、を備えることを特徴とする、シート固定装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記補強部に沿って前記本体の上面に形成された溝状の凹部を有する、シート固定装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記補強部の下端から上端部までの高さが、前記支持部の下端から上端までの高さと同一である、シート固定装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記補強部が側面を有し、該補強部の該側面が前記本体の下面に対して直交するよう設けられている、シート固定装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記支持部が側面を有し、該支持部の該側面が前記本体の下面に対して直交するよう設けられている、シート固定装置を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記支持部が下端に側方へ張り出すフランジ部を有する、シート固定装置を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記シート接合部に、前記シート固定装置を前記下地に固定するファスナを通すための貫通孔が形成されている、シート固定装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記補強部に、前記シート固定装置を前記下地に固定するファスナを通すための貫通孔が形成されている、シート固定装置を提供する。
【0016】
また、本発明は、上記記載のシート固定装置を用いて、下地に防水シートを固定する防水工法を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記防水シートは長さと幅とを有する帯状のシートであり、複数の前記シート固定装置を、前記防水シートの前記幅の半分の間隔で互いに平行に配置して下地に固定し、前記防水シートの長さ方向を前記シート固定装置の前記長手方向に合わせて前記防水シートを前記シート固定装置に接着し、以て前記下地に前記防水シートを固定する防水工法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシート固定装置は、支持部とは別に、本体の両側部より内側の下面に本体の長手方向に沿って延びると共に下方に突出するよう設けられた補強部を備えているので、従来のものより強度が向上している。そのため、防水シートの浮き上がりによりシート固定装置に応力が集中する場合でも、シート固定装置の塑性変形を防止することができ、シート固定装置と防水シートとの際における防水シートの損傷を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第一実施形態によるシート固定装置を用いて防水シートを下地に固定した屋根を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態によるシート固定装置を示す図であり、
図2(a)は平面図、
図2(b)は、
図2(a)のII−II線に沿った断面図であり、シート固定装置により防水シートを下地に固定した状態を示す図、
図2(c)はシート固定装置の別例を示す端面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態によるシート固定装置の別例を示す図であり、
図3(a)は平面図、
図3(b)は
図3(a)のIII−III線に沿った断面図であり、シート固定装置により防水シートを下地に固定した状態を示す図である。
【
図4】本発明の第二実施形態によるシート固定装置を示す図であり、
図4(a)は平面図、
図4(b)は
図4(a)のIV−IV線に沿った断面図であり、シート固定装置により防水シートを下地に固定した状態を示す図である。
【
図5】本発明の第二実施形態によるシート固定装置の別例を示す図であり、
図5(a)は平面図、
図5(b)は
図5(a)のV−V線に沿った断面図であり、シート固定装置により防止シートを下地に固定した状態を示す図である。
【
図6】
図6(a)は従来のシート固定装置を示す斜視図であり、
図6(b)は防水シートが浮き上がった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。また、以下の実施形態において同一又は類似の構成要素は共通の参照符号を付して示している。図面は、当然、縮尺通りではなく、明確にすべき特定部品の比率は誇張して示してある。
【0021】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態によるシート固定装置10を用いて防水シート3をコンクリート下地2に固定した屋根1を示す斜視図であり、
図2は、第一実施形態のシート固定装置10を示す図で、
図2(a)は平面図、
図2(b)は
図1及び
図2(a)のII−II線に沿ったシート固定装置10の断面図である。
【0022】
本実施形態のシート固定装置10は、長さと幅W2とを有する帯状の防水シート3を屋根1に固定する細長い板状の固定金具である。
図1に示すように、複数のシート固定装置10がコンクリート下地2の上面に、一定の間隔W1を開けて互いに平行になるよう配置され、それぞれのシート固定装置10はファスナ24によりコンクリート下地2に固定される。そして、防水シート3の長さ方向をシート固定装置10の長手方向に合わせ、シート固定装置10の上面に防水シート3の裏面(下面)を接着することで、防水シート3をコンクリート下地2に固定する。
【0023】
本実施形態のシート固定装置10は金属製の部材であり、
図2(a)に示すように、上面12a及びその反対側の下面12bと両側部12c、12dとを有する細長い板状の本体12と、本体12の上面12aに設けられ防水シート3に接合するシート接合部14と、本体12の両側部12c、12dから下方に延び、コンクリート下地2の上面に接して本体12を支持する支持部18とを備えている。そして、支持部18とは別に、本体12の両側部12c、12dより内側の下面12bに長手方向に沿って延びると共に下方に突出するよう設けられて、本体12の強度を補強する2本の補強部20を備えている。さらに、シート固定装置10は、補強部20に沿って本体12の上面12aに形成された溝状の凹部21を有し、本実施形態のシート接合部14は、二本の凹部21によって、シート接合部14a、14b、14cに分割されている(以下、これらをまとめてシート接合部14と呼ぶ場合がある)。
【0024】
本実施形態のシート固定装置10は、コンクリート下地2にファスナ24を用いて固定される。そのため、シート固定装置10の幅方向の略中央に、ファスナ24を通すための貫通孔26が複数、一定の間隔Dを開けてシート固定装置10の長手方向に沿って形成されている。それぞれの貫通孔26の周囲には、座ぐり27が形成されており、
図2(b)に示すように、シート固定装置10をコンクリート下地2に固定した際、ファスナ24の頭部がシート接合部14から突出することがない。
【0025】
シート固定装置10の支持部18は、上下方向の応力に対して最も効率よく強度を発揮することができるよう、支持部18の側面18aが本体12の下面12bに対して直交するよう形成されている。そのため、支持部18はコンクリート下地2に対して垂直になるよう設置される。本実施形態のシート固定装置10では、本体12の両側部12c、12dのそれぞれに支持部18を設けているが、支持部18は本体12の側部の何れか一方に有ればよく、例えば、屋根1の立上り部(図示しない)に沿って配置されるシート固定装置10の場合、立上り部に接する本体12の側部において支持部18の代わりに立上りを設けてもよい(
図6(a)の立上り611参照)。
【0026】
また、図に示すように、シート固定装置10の支持部18の下端に側方へ張り出すフランジ部22を設け、支持部18を安定して立たせることができるようにしてもよい。図ではフランジ部22はシート固定装置10の側方の外側に向けて張り出しているが、側方の内側に向けて延びてもよい。また、フランジ部22は内外両方に延びるよう形成されてもよい。
【0027】
シート接合部14は、上述のように防水シート3の下面に接着剤等により接合する部分であり、接着性を向上させるため出っ張りの無い平面に形成されている。シート接合14の幅が広いほど、防水シート3に対する接着力が強くなり、その幅は40mm以上にするのがよく50mm以上にするのが好ましい。本実施形態では、シート接合部14a、14b、14cのそれぞれ幅W3a、W3b、W3cの合計が50mm以上になるよう形成されている。また、シート接合部14は塩ビフィルムによって被覆されており、防水シートをポリ塩化ビニル樹脂からなる塩ビシートとすることで、被覆された塩ビフィルムを溶剤で溶融することで防水シート3に溶着することができる。
【0028】
次に、シート固定装置10の補強部20について詳述する。補強部20は、
図2(a)、
図2(b)に示すように、本体12の両側部12c、12dより内側の下面12bに、本体12の長手方向に沿って延びると共に、下方に突出するよう設けられ、本体12の強度を補強している。本実施形態では、二本の補強部20が本体12の下面12bに設けられており、補強部20の底部20a(下端)は、コンクリート下地2の上面に接するよう、すなわち補強部20が本体12の下面12bから突出する下端から上端までの高さH2が支持部18の下端から上端までの高さH1と同一になるように形成されている。このような構成とすることで、本体12は支持部18だけでなく、補強部20によっても支持されるようになる。補強部20の側面20bは、上下方向の応力に対して最も効率よく強度を発揮できるよう、本体12の下面12bに対して直交するよう形成されている。別の言い方をすれば、本実施形態のシート固定装置10は、防水シート3の浮き上がりによる変形を抑制するため、シート固定装置10の長手方向に対して平行に凹凸に加工されており、支持部18及び補強部20の凹凸を全て直角にすることで耐変形強度をもたせている。
【0029】
支持部18の高さH1及び補強部20の高さH2は大きいほどシート固定装置10の強度を高めることができるが、屋根面から平面性を考慮するとその大きさは3mm〜8mmであるのがよく、6mm程度とするのが好ましい。また、補強部20の高さH2、支持部18の高さH1と同一の大きさとするのが望ましいが、強度が充分に確保できる場合は補強部20の高さH2を支持部18の高さH1より低くしてもよい。また、凹部21が開口する幅W4の大きさは任意であるが、シート接合部14の幅をより広くする確保するために、凹部21の幅W4を狭くするのがよく、幅W4を0mmとして補強部20をその側部20bだけで形成してもよい。
【0030】
本実施形態のシート固定装置10は、上述のように金属製であり、0.5mmから2.0mmの厚みを有する鋼板を折り曲げ加工することにより作製される。補強部20を折り曲げ加工により形成することで、シート固定装置10を容易にかつ安価に作製することができる。強度を考慮すると、鋼板の厚みは0.6mm以上あるのがよく、約1mmの厚みを有するのが望ましい。また、具体的な鋼板として、例えば溶融亜鉛めっき鋼板、塗装溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板、溶融亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板、塗装溶融亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板、塗装ステンレス鋼板、溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、塗装溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、熱間圧延ステンレス鋼板、冷間圧延ステンレス鋼板が挙げられる。また、本実施形態のシート固定装置10は、塩ビフィルム(ポリ塩化ビニル樹脂)により被覆されているが、これに限定されず、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂により被覆されてもよい。また、シート固定装置10は、強度及び製造コストの観点から金属製が望ましいが、例えば、強化プラスチックや合成樹脂から作製されてもよい。なお、一本のシート固定装置10の長さは2m程度であり、その幅W5は約70mm〜75mmで形成される。
【0031】
ファスナ24は、従来の防水工法において、シート固定装置を下地に固定するのに常用されているものであれば、どのような形状のファスナを用いてもよい。図ではファスナ24の一例としてビスを示しているが、ファスナ24は、例えば、プラスチック製のカールプラグを併用するものでもよく、また、ハンマーでビス頭を叩くことによりビスの先端が開いてコンクリート下地2にしっかりと固定されるものでもよい。ファスナ24の選定にあたってはコンクリート下地2に対する引き抜き強度に留意する必要があり、引き抜き強度が小さい場合は、ファスナ24を配置する間隔Dを小さくする必要がある。
【0032】
従来のシート固定装置は帯状の防水シート3の防水シート3の幅と同じ間隔で配置されていた。細長い板状のシート固定装置を用いる防水工法の場合、通常、シート固定装置10の長手方向と帯状の防水シート3の長さ方向を合わせて、防水シート3をシート固定装置10に接着して防水シートを固定する。本実施形態では、
図1に示すように、シート固定装置10を配置する間隔W1を、防水シート3の幅W2の半分とし、一枚の防水シート3に対し二本のシート固定装置10を用いて、防水シート3をコンクリート下地2に固定している。シート固定装置10を配置する間隔を従来より狭くすることで、一本のシート固定装置10に応力が集中するのを緩和してシート固定装置10の負荷を小さくし、防水シート3の浮き上がりによる塑性変形を防止している。一般的な防水シート3の幅W2は約1200mmであるため、シート固定装置10を配置する間隔W1は約600mmになる。
【0033】
図2(c)は、本実施形態のシート固定装置10の別例を示す図である。シート固定装置10の補強部20は、
図2(c)に示すように断面円形の金属棒を本体12の下面12bに溶接することで実現されてもよい。また、本実施形態のシート固定装置10は、金属板を折り曲げ加工することにより作製されているが、例えば金型(ダイス)を用いた押出し加工により作製されてもよい。
【0034】
図2(a)に示すシート固定装置10は二本の補強部20を備えていたが、
図3(a)及び(b)に示すように、シート固定装置10に設けられる補強部20の数を、本体12の幅方向中央に設けられた一本としてもよい。この場合、シート固定装置10をコンクリート下地2に固定するファスナ24を、凹部21によって分けられたシート接合部14のそれぞれの幅方向中央に沿って配置する。また、
図3(a)に示すように、シート接合部14にファスナ24を千鳥状に配置してもよい。このように、補強部20は一本であってもよく、補強部20の数を調整することでシート固定装置の強度を調整することができる。より強度を高めたい場合は、三本以上の補強部20を本体12の長手方向に対して平行に設けてもよい。
【0035】
本実施形態の防水工法についてて説明する。まず、複数本のシート固定装置10を屋根1のコンクリート下地2に互いに平行に配置する。シート固定装置10を配置する間隔は防水シート3の幅の半分にする。そして、ファスナ24を用いてシート固定装置10をコンクリート下地2に固定する。次にシート固定装置10のシート接合部14に接着剤を塗布したのち又は塗布しつつ、防水シート3の長さ方向をシート固定装置10の長手方向に合わせて防水シート3を接着し、防水シート3をコンクリート下地2に固定する。シート接合部14に被覆された塩ビフィルムを溶剤により溶融して、塩ビシートの防水シート3をシート固定装置10に接着してもよい。
【0036】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、図を用いて説明する。
図4は本実施形態のシート固定装置210を示す図であり、
図4(a)はシート固定装置210の平面図、
図4(b)は
図4(a)のIV−IV線に沿った断面図であり、シート固定装置210により防水シート3をコンクリート下地2に固定した状態を示す。シート固定装置210は、
図1に示すシート固定装置10と同様、ファスナ24によりコンクリート下地2に固定され、シート固定装置210と防水シート3とを接着することで、防水シート3をコンクリート下地2に固定する。
【0037】
シート固定装置210は、細長い板状の本体212と、本体212の上面に設けられた防水シート3に接合するシート接合部214と、本体212の両側部から下方に延びて本体212を支持する支持部218とを備えている。そして、支持部218の下端にはフランジ部222が形成されている。また、シート固定装置210は、第一実施形態のシート固定装置10と同様に、本体212の下面に長手方向に沿って延びると共に下方に突出するよう設けられた補強部220を備えている。補強部220の下端から上端までの高さH2は支持部218の下端から上端までの高さH1と同一であり、補強部220の底部220aがコンクリート下地2に接するようになっている。また、本体212の幅方向中央に補強部220に沿って形成された一本の溝状の凹部221を有している。本実施形態のシート接合部214、支持部218、補強部220、凹部221及びフランジ部222の機能や形状は、
図2(a)及び(b)のシート固定装置10のものと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施形態のシート固定装置210は、第一実施形態のシート固定装置10と比較すると、シート固定装置210をコンクリート下地2に固定するファスナ24の取付け位置、すなわち、ファスナ24を通す貫通孔226を形成する位置が異なっている。具体的には貫通孔226が補強部220の下端すなわち底部220aに形成され、ファスナ24を凹部221及び貫通孔226を介して通すことにより、シート固定装置210をコンクリート下地2に固定している。
【0039】
ファスナ24の頭部が凹部221に隠れるため、第一実施形態のシート固定装置10のように、貫通孔226の周囲に座ぐりを形成する必要がない。また、補強部220の底部220aが、コンクリート下地2に接しているため、ファスナ24で固定する際、貫通孔226の周囲が撓むことなくシート固定装置210を固定することができる。凹部221の幅W5の大きさは、シート固定装置210を固定するファスナ24の頭部の大きさを考慮して決定され、約10mm〜12mmで形成される。
【0040】
シート固定装置210の別例を
図5に示す。
図5に示すシート固定装置210では、二本の補強部220が本体212の長手方向に互いに平行になるよう設けられている。そして、ファスナ24を通す貫通孔226がそれぞれの補強部220の底部220aに形成されている。二本の補強部220を設けることで、さらにシート固定装置210の強度を高めることができる。補強部220に形成される貫通孔226は、
図5(a)に示すように千鳥状に配置されてよい。
【0041】
本実施形態のシート固定装置の効果を確認するために、従来のシート固定装置との強度比較実験を行った。実験では、防水シートの浮き上がり現象を再現するために、防水シートと下地とによりできる隙間の空間を密閉し、エアコンプレッサーによりその空間に空気を加圧することで、防水シートを浮き上がらせている。
【0042】
従来のシート固定装置を用いて防水シートを固定し、空気を約2000Paで加圧したところ、防水シートが浮き上がり従来のシート固定装置が塑性変形した。そして、減圧した後でもシート固定装置の変形が戻らず防水シートが伸びた状態になった。一方、本実施形態のシート固定装置を用いて防水シートを固定し、内部の空気を約2000Paで加圧したところ、シート固定装置は弾性変形しても塑性変形することはなかった。減圧した後は、シート固定装置はもとの形状に戻り、防水シートも伸びることはなかった。
【0043】
強風により防水シートが浮き上がった場合、従来のシート固定装置(プレート状固定金具)では強度が不足し、応力がシート固定装置に集中したときにシート固定装置が塑性変形する場合があった。本発明によるシート固定装置は、本体の側部から下方に延びる支持部と、支持部とは別に、本体の両側部より内側の下面に本体の長手方向に沿って延びると共に下方に突出するよう設けられた補強部とを備えることによって、変形に対する強度が高められており、防水シートの浮き上がりによる塑性変形を防止して防水シートの破損を防ぐことができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について添付図を用いて説明した。なお、本実施形態では、屋根の下地がコンクリートスラブであることを前提に説明したが、コンクリート下地に限らず、鉄骨構造、木構造等の一般的な建築物の構造体の下地にも本発明のシート固定装置を使用することができる。