(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メタルシートを、メタルシート湾曲加工用の下金型と、前記下金型に対応する上金型との間に挿入し、これら上下の金型で前記メタルシートを挟み込むことにより、前記メタルシートの曲げ加工を行うように構成されたブレーキプレス加工装置に装着されるものであり、前記ブレーキプレス加工装置に装着された状態で前記メタルシートのロール加工を行うように構成されたロール加工ユニットであって、
前記下金型側に着脱可能に取り付けられ、前記下金型の長手方向に平行する受け側ローラが軸支された受け側ローラアタッチメントと、
前記上金型側に着脱可能に取り付けられ、前記上金型の長手方向に平行する押圧側ローラが軸支された押圧側ローラアタッチメントと、
前記受け側ローラアタッチメントおよび前記押圧側ローラアタッチメントを、前記ブレーキプレス加工装置から離脱した収容位置と前記ブレーキプレス加工装置側に配置された使用位置との間で搬送する搬送手段と、
を具備し、
前記搬送手段は、前記受け側ローラアタッチメントと前記押圧側ローラアタッチメントを前記収容位置と前記使用位置との間で回動させるスイングアーム機構であり、
前記収容位置に置かれた前記受け側ローラアタッチメントと前記押圧側ローラアタッチメントは、前記搬送手段と共に、前記ブレーキプレス加工装置に隣接して形成された地下収容ピットに収容されることを特徴とするロール加工ユニット。
【背景技術】
【0002】
メタルシートをロール加工するロール加工装置は、特許文献1に開示されるロールベンダーのように、平行に配置された上部ローラ(押圧側ローラ)と、この上部ローラに平行する1本または2本の下部ローラ(受け側ローラ)とを有し、油圧等により上部ローラを下部ローラ側に押し付けた状態で、メタルシートを上下のローラ間に巻き込み、各ローラの軸配置関係に応じた所定の曲率でメタルシートを連続的に湾曲成形するものである。
【0003】
上記のようにメタルシートを湾曲させる加工は、ブレーキプレス加工装置によっても行うことができる。ブレーキプレス加工装置は、メタルシートを、凹断面形状の下金型と、凸断面形状の上金型との間に挟み込み、油圧等により上金型を下金型側に押圧する動作を繰り返しながら、その一動作毎にメタルシートを微小量ずつ送ることによって断続的にメタルシートの曲げ加工を行うものである。
【0004】
一般に、航空機の胴体外板のような単曲面板を湾曲成形する際には、ロール加工装置およびブレーキプレス加工装置の両方を適用できる。ロール加工装置を用いる工法によれば、メタルシートの送り速度を速くできるため、生産性を高めて製品の価格を抑えることができる。一方、ブレーキプレス加工装置を用いる工法によれば、メタルシートの送り速度は遅い反面、メタルシートの曲率を途中で変化させたり、折り曲げたりするといった変則的な加工が可能である。
【0005】
航空機の胴体外板のように、曲率が3000〜4000ミリ程度、幅が数メートルある大型のメタルシートの場合には、ロール加工装置、ブレーキプレス加工装置のどちらの加工装置を用いるにしても、装置の加工スパンが10メートル前後ある大型のものとならざるを得ず、装置の価格が高価になるとともに、工場内における装置の設置スペースを多大に要するという難点がある。
【0006】
特許文献1に示されるロールベンダーは、ブレーキプレス加工装置の上プレス部材に上部ローラを取り付け、下プレス部材に下部ローラを取り付けることにより、ブレーキプレス加工装置をロール加工装置としても使用できるようにし、1台で2役をこなしている。こうすれば、ブレーキプレス加工装置とロール加工装置を個別に購入する必要をなくして設備投資額を低減させるとともに、工場内における加工装置の占有スペースを節減できるという利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示されるロールベンダーは、せいぜい数10センチ程度の長さのメタルシートを対象にしたものであるため、ブレーキプレス加工装置に取り付ける上部ローラおよび下部ローラも小型かつ軽量なものですみ、その着脱作業も作業者が手で簡単に行うことができる。しかしながら、航空機の胴体外板のような大型のメタルシートをロール加工する大型のブレーキプレス加工装置ともなると、これに取り付ける上部ローラおよび下部ローラも大型かつ高重量になるため、その脱着にはクレーン等を用いる必要があって容易ではなく、着脱に時間が掛かってしまう。さらに、取り外された上部ローラおよび下部ローラが加工作業の邪魔にならないよう、ブレーキプレス加工装置から離れた場所に専用の格納スペースを用意する必要があった。
【0009】
したがって、航空機の胴体外板等を生産する工場では、大型のロール加工装置とブレーキプレス加工装置の両方を設置するか、あるいはどちらか一方の加工装置のみによる非効率的な生産方法を採らざるを得ず、いずれにしても製品の価格上昇を招来していた。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、大型のブレーキプレス加工装置を素早く簡単にロール加工装置に転換させたり、戻したりできるようにして加工準備に費やされる時間を短縮し、ロール加工製品の生産性向上と製造コストダウンを図るとともに、通常のロール加工装置と比べて遜色のないロール加工を行うことができ、さらに通常のロール加工装置では製造できないロール加工製品を供給することのできるロール加工ユニット、およびロール加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
即ち、本発明に係るロール加工ユニットの第1の態様は、メタルシートを、メタルシート湾曲加工用の下金型と、前記下金型に対応する上金型との間に挿入し、これら上下の金型で前記メタルシートを挟み込むことにより、前記メタルシートの曲げ加工を行うように構成されたブレーキプレス加工装置に装着されるものであり、前記ブレーキプレス加工装置に装着された状態で前記メタルシートのロール加工を行うように構成されたロール加工ユニットであって、前記下金型側に着脱可能に取り付けられ、前記下金型の長手方向に平行する受け側ローラが軸支された受け側ローラアタッチメントと、前記上金型側に着脱可能に取り付けられ、前記上金型の長手方向に平行する押圧側ローラが軸支された押圧側ローラアタッチメントと、前記受け側ローラアタッチメントおよび前記押圧側ローラアタッチメントを、前記ブレーキプレス加工装置から離脱した収容位置と前記ブレーキプレス加工装置側に配置された使用位置との間で搬送する搬送手段と、を具備
し、前記搬送手段は、前記受け側ローラアタッチメントと前記押圧側ローラアタッチメントを前記収容位置と前記使用位置との間で回動させるスイングアーム機構であり、前記収容位置に置かれた前記受け側ローラアタッチメントと前記押圧側ローラアタッチメントは、前記搬送手段と共に、前記ブレーキプレス加工装置に隣接して形成された地下収容ピットに収容されることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、ブレーキプレス加工装置の下金型側に取り付けられる受け側ローラアタッチメントと、上金型側に取り付けられる押圧側ローラアタッチメントとが、搬送手段によって、ブレーキプレス加工装置から離脱した収容位置と、ブレーキプレス加工装置側に配置された使用位置との間を搬送されるため、各アタッチメントが高重量なものであっても、クレーン等を用いることなく、素早くブレーキプレス加工装置に着脱することができる。したがって、大型のブレーキプレス加工装置を素早く簡単にロール加工装置に転換させたり、戻したりすることができ、これにより加工準備に費やされる時間を短縮することができる。
【0013】
このように、ブレーキプレス加工装置をロール加工装置としても使用可能になり、その転換作業が迅速に行えるため、ロール加工の専用機を備えなくても、ブレーキプレス加工装置のみによって航空機の胴体外板等の大型なメタルシートを効率良くロール加工することができる。このため、生産設備投資費用を削減でき、しかも加工装置の保守費用や装置設置スペース等を削減できるため、これらの効果によってロール加工製品の製造コスト低減に多大に貢献することができる。
【0014】
しかも、ブレーキプレス加工装置の下金型と上金型の間隔を変化させると、これに倣って受け側ローラと押圧側ローラの軸間距離も変化するため、ロール加工製品の曲率を簡単に調整することができる。さらに、ロール加工中であっても、メタルシートを送らない、または微小な送り量とすることによって、ローラを付けたままブレーキプレス的な加工(チップフォーミング)が行えるため、ロール加工製品の曲率を途中で変化させるといった、通常のロール加工装置では行えない加工を行うことができる。
【0016】
さらに、受け側ローラアタッチメントと、押圧側ローラアタッチメントとが、搬送手段であるスイングアーム機構に搬送されて収容位置と使用位置との間を正確に回動するため、各アタッチメントを迅速かつ正確に収容位置または使用位置にセットすることができ、これによりブレーキプレス加工装置をロール加工装置に転換させたり、戻したりする段取り替え作業を短時間のうちに行うことができ、加工準備に費やされる時間を短縮してロール加工製品の生産性を向上させることができる。
【0018】
その上、ブレーキプレス加工装置から取り外された受け側ローラアタッチメントと押圧側ローラアタッチメントが、搬送手段と共に地下収容ピットに収容されてブレーキプレス加工装置の近傍に残存しないため、これらの機材が加工作業の邪魔にならず、しかもこれらの機材を専用の格納スペース等に運搬するといった手間も省けるため、加工準備に費やされる時間を短縮してロール加工製品の生産性を向上させることができる。
【0019】
前記態様において、前記搬送手段は、前記受け側ローラアタッチメントと前記押圧側ローラアタッチメントを前記使用位置に移動させた後、前記受け側ローラアタッチメントと前記押圧側ローラアタッチメントを切り離して前記収容位置に戻ることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、受け側ローラアタッチメントと押圧側ローラアタッチメントとが使用位置にてブレーキプレス加工装置に取り付けられた後、搬送手段のみがブレーキプレス加工装置から離脱して収容位置に戻るため、ブレーキプレス加工装置でロール加工を行う際に搬送手段が邪魔にならず、これによりロール加工製品の生産性を向上させることができる。
【0021】
前記態様において、前記受け側ローラアタッチメントと前記押圧側ローラアタッチメントは、それぞれ前記下金型と前記上金型に被せられるように取着される形状であることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、元からブレーキプレス加工装置に平行にセットされている下金型と上金型に、それぞれ受け側ローラアタッチメントと押圧側ローラアタッチメントが被せられるように取着されるため、各アタッチメントが上下の金型に沿って平行にセットされ、その位置決めが容易になる。このため、位置決め作業等の加工準備に費やされる時間を短縮し、ロール加工製品の生産性と製造コストダウンを図ることができる。
【0023】
前記態様において、前記受け側ローラアタッチメントおよび前記押圧側ローラアタッチメントの各々に設けた平行基準面を、それぞれ前記下金型および前記上金型の各々に設けた平行基準面に当接させることにより、前記受け側ローラアタッチメントと前記押圧側ローラアタッチメントとの間を相対的に平行にするようにしたことを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、受け側ローラアタッチメントおよび押圧側ローラアタッチメントの各々に設けられた平行基準面を、下金型および上金型の平行基準面に当接させるだけで、両アタッチメント間を正確に平行にすることができ、両アタッチメントをより迅速かつ正確に位置決めすることができる。そして、両アタッチメントを下金型および上金型にボルトで締結する等して固定してしまえば、両アタッチメント間の相対平行度が狂うことがない。
【0025】
前記態様において、前記搬送手段は、前記受け側ローラアタッチメントおよび前記押圧側ローラアタッチメントの各々に設けられた平行基準面を、それぞれ前記下金型および前記上金型の各々に設けられた平行基準面に当接させる当接機構を有することを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、受け側ローラアタッチメントおよび押圧側ローラアタッチメントが大型かつ高重量なものであっても、これらを当接機構の力で容易に下金型および上金型に当接させ、各ローラアタッチメントの平行度を正確に出すことができる。
【0027】
前記態様において、前記受け側ローラアタッチメントと前記押圧側ローラアタッチメントは、それぞれ前記受け側ローラと前記押圧側ローラを異なる周速度で回転駆動することができる回転駆動手段を備えていることを特徴とする。
【0028】
上記構成によれば、加工するメタルシートの板厚、湾曲率、材質、単板か多板か等の諸条件、およびロール加工製品の形状等に応じて受け側ローラおよび押圧側ローラの周速度を設定できるため、各ローラとメタルシートの表面との間に滑りが発生するといった不具合を解消し、ロール加工製品の歩留まりを高めて生産性を向上させることができる。
【0029】
前記態様において、前記受け側ローラアタッチメントと前記押圧側ローラアタッチメントは、それぞれ前記受け側ローラと前記押圧側ローラの外径を変更することができることを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、加工するメタルシートの板厚、湾曲率、材質、単板か多板か等の諸条件、およびロール加工製品の形状等に応じて、受け側ローラと押圧側ローラの外径を選定できるため、通常のロール加工装置と比べて遜色のないロール加工を行うことができる。
【0031】
前記態様において、前記受け側ローラは2本平行に配置されており、これら2本の受け側ローラは、その軸間距離を変更できることを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、加工するメタルシートの板厚、湾曲率、材質、単板か多板か等の諸条件、およびロール加工製品の形状等に応じて、受け側ローラの軸間距離を選定できるため、通常のロール加工装置と比べて遜色のないロール加工を行うことができる。
【0033】
また、本発明に係るロール加工方法は、前
記のいずれかの態様のロール加工ユニットをブレーキプレス加工装置に装着して構成したロール加工装置を用いたロール加工方法であって、前記メタルシートのロール加工中に、前記下金型と前記上金型の間隔を変更することにより、前記受け側ローラと前記押圧側ローラとの軸間距離を変更し、前記メタルシートの湾曲率を変化させることを特徴とする。このロール加工方法によれば、通常のロール加工装置では製造できないロール加工製品を供給することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明に係るロール加工ユニットによれば、大型のブレーキプレス加工装置を素早く簡単にロール加工装置に転換させたり、戻したりすることができるようにし、ロール加工製品の製造コストを低減することができる。
【0035】
また、本発明に係るロール加工方法によれば、メタルシートに変則的な曲率を付与するといった、通常のロール加工装置では製造できないロール加工製品を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係るロール加工ユニットが装着されたブレーキプレス加工装置の縦断面図である。
【
図2】
図1のII矢視によるロール加工ユニットの正面図である。
【
図3】受け側ローラおよび押圧側ローラの分解斜視図である。
【
図4】(a),(b)は、それぞれ
図3のIVa-IVa線、IVb-IVb線に沿う受け側ローラおよび押圧側ローラの縦断面図である。
【
図5】スイングアームと受け側ローラアタッチメントと押圧側ローラアタッチメントが収容位置に置かれた状態を示す縦断面図である。
【
図6】スイングアームと受け側ローラアタッチメントと押圧側ローラアタッチメントが使用位置に回動した状態を示す縦断面図である。
【
図7】受け側ローラアタッチメントが下側ベッド上に載置され、下金型に被せられた状態を示す縦断面図である。
【
図8】上金型が降下して押圧側ローラアタッチメントが上金型に被せられた状態を示す縦断面図である。
【
図9】受け側ローラアタッチメントおよび押圧側ローラアタッチメントの平行基準面が、それぞれ下金型および上金型の平行基準面に当接し、両アタッチメントが使用位置に置かれた状態を示す縦断面図である。
【
図10】受け側ローラアタッチメントおよび押圧側ローラアタッチメントの平行基準面が、それぞれ下金型および上金型の平行基準面に当接した状態を示す拡大縦断面図である。
【
図11】メタルシートをロール加工している状態を示すブレーキプレス加工装置およびロール加工ユニットの縦断面図である。
【
図12】受け側ローラアタッチメントと押圧側ローラアタッチメントを示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係るロール加工ユニット1が装着されたブレーキプレス加工装置2の縦断面図であり、
図2は
図1のII矢視によるロール加工ユニット1の正面図である。ロール加工ユニット1は、ブレーキプレス加工装置2に装着された状態で、
図11に示すようにメタルシートMのロール加工を行うものである。ここで述べるメタルシートとは、例えば航空機の胴体外板を形成するための、幅が5メートル以上のジュラルミン板等である。
【0038】
ブレーキプレス加工装置2は、基礎面3の上に設置される下側ベッド4と、この下側ベッド4の上方に位置して図示しない油圧シリンダ等の力により昇降する上側ベッド5を備えている。このブレーキプレス加工装置2は公知のものであるため、その他の基本的な構成の説明は省略する。下側ベッド4の上面には、メタルシート湾曲加工用の長い下金型6が固定され、上側ベッド5の下面には、下金型6に対応する長い上金型7が固定されている。例えば下金型6の縦断面形状は凹形状であり、上金型7の縦断面形状は凸形状である。
【0039】
ブレーキプレス加工装置2にロール加工ユニット1が装着されていない状態では、本来のブレーキプレス加工が行われる。即ち、下金型6と上金型7の間にメタルシートを挿入し、上側ベッド5を下側ベッド4側に下降させて上金型7と下金型6との間にメタルシートを挟み込むことにより、メタルシートを湾曲または屈曲加工することができる。また、上金型7を下金型6側に押し付けたり、離したりする動作を繰り返しながら、その一動作毎にメタルシートを微小量ずつ送ることによって断続的にメタルシートの曲げ加工を行えば、メタルシートをロール加工することもできる。
【0040】
一方、ロール加工ユニット1は、ブレーキプレス加工装置2の下金型6側に被せられる形で着脱可能に取り付けられる受け側ローラアタッチメント11と、上金型7側に被せられる形で着脱可能に取り付けられる押圧側ローラアタッチメント12と、これらのアタッチメント11,12を、ブレーキプレス加工装置2から離脱した収容位置11a,12aおよびブレーキプレス加工装置2側に配置された使用位置11b,12bの間で搬送する(回動させる)スイングアーム機構13(搬送手段)とを具備して構成されている。このスイングアーム機構13の回動範囲の両端の位置は、それぞれ収容位置13a、起立位置13bとなる。
【0041】
図2にも示すように、受け側ローラアタッチメント11は、下金型6に被せられる逆凹形断面形状の長いベース部材15の上面に、所定の角度で傾斜した楔状断面を持つ一対の長いアングル部材16が固定され、これら各アングル部材16の上面に、それぞれ1本ずつ円柱状の受け側ローラ17が、その両端をローラステー18に支持されて回転自在に軸支された構成である。これら2本の受け側ローラ17は、その軸方向が下金型6の長手方向に平行するとともに、アングル部材16の角度のために互いに寄り添うように傾斜している。なお、各受け側ローラ17の両側には多数の支持ローラ19がベース部材15側に軸支されて受け側ローラ17の外周面に当接しており、強いプレス荷重により受け側ローラ17が下方に撓むことが防止されている。
【0042】
押圧側ローラアタッチメント12は、上金型7に被せられる凹形断面形状の長いベース部材21の下面に、1本の押圧側ローラ22が、その両端をローラステー23に支持されて回転自在に軸支された構成である。この押圧側ローラ22は、その軸方向が上金型7の長手方向に平行している。また、押圧側ローラ22の両側には多数の支持ローラ24がベース部材21側に軸支されて押圧側ローラ22の外周面に当接しており、強いプレス荷重により押圧側ローラ22が上方に撓むことが防止されている。ロール加工ユニット1がブレーキプレス加工装置2に装着された状態において、押圧側ローラ22は2本の受け側ローラ17の間の真上に位置する。
【0043】
図1に示すように、下金型6と上金型7は、例えばそのスイングアーム機構13寄りの側面が、それぞれ平行基準面6a,7aとなっている。これらの平行基準面6a,7aは、下金型6と上金型7の成形中心線Cに平行する鉛直面である。また、受け側ローラアタッチメント11のベース部材15と押圧側ローラアタッチメント12のベース部材21の、各々のスイングアーム機構13寄りの内側面が、それぞれ平行基準面15a,21aとなっている。これらの平行基準面15a,21aは、受け側ローラ17と押圧側ローラ22の中心軸線に平行する鉛直面である。
【0044】
このため、
図9および
図10に示すように、受け側ローラアタッチメント11(ベース部材15)の平行基準面15aを下金型6の平行基準面6aに当接させ、押圧側ローラアタッチメント12(ベース部材21)の平行基準面21aを上金型7の平行基準面7aに当接させることにより、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12との間を相対的に高精度で平行にすることができる。
【0045】
受け側ローラ17と押圧側ローラ22が数メートル以上の長いものになる場合は、その製造が困難になるため、
図3に示すように、2本以上の短いローラ分割体26a,26bを連結して長くする。その連結部の構造としては、
図4(a),(b)にも示すように、例えば一方のローラ分割体26aの端面に形成したキー付きの嵌合軸26dを、他方のローラ分割体26bの端面に形成したキー付きの嵌合孔26cに密に嵌合させ、ローラ分割体26aの端面近くを径方向に貫通するセットボルト27で固定する。
【0046】
この構成により、例えばロール加工するメタルシートの幅が5メートル以上あるような場合でも、これに対応した長い受け側ローラ17と押圧側ローラ22を形成することができる。このように、複数のローラ分割体26a,26bを連結して受け側ローラ17と押圧側ローラ22を長く形成しても、受け側ローラ17と押圧側ローラ22は前述のように、その両側が多数の支持ローラ19,24に支えられているため、プレス荷重により撓むことはない。なお、ローラ分割体26a,26bの連結部における端面の角部に面取り加工または微小なR加工を施すことにより、ロール加工するメタルシートの表面に傷が付くことを防止できる。
【0047】
ところで、スイングアーム機構13は、下側ベッド4の一側部下方に設けられた支持ブラケット31と、この支持ブラケット31に支持されたピボット軸32と、ピボット軸32に一端が回動自在に軸支された伸縮アーム33と、伸縮アーム33の他端に固定された当接機構34と、当接機構34に連結された支持ステー35とを備えて構成されている。これらの部材31〜35は、受け側ローラアタッチメント11(ベース部材15)と押圧側ローラアタッチメント12(ベース部材21)の長手方向の少なくとも両端部に設けられ、各アタッチメント11,12の長さが5m以上の場合には中間部にも設けられる。
【0048】
伸縮アーム33と当接機構34は、例えば油圧シリンダであり、伸縮アーム33を構成する第1シリンダ33aの基端部がピボット軸32に軸支され、この第1シリンダ33aの自由端側から油圧で伸縮する第1ロッド33bの先端部に、当接機構34を構成する第2シリンダ34aの基端部が直角に固定され、この第2シリンダ34aから油圧で伸縮する第2ロッド34bの先端部に支持ステー35が固定されている。支持ステー35は、例えば側面視で直角に屈曲した形状であり、受け側ローラアタッチメント11のベース部材15に着脱される上側連結端部35aと、押圧側ローラアタッチメント12のベース部材21に着脱される下側連結端部35bとを備えている(
図1参照)。
【0049】
スイングアーム機構13は、ピボット軸32を中心に例えば180度回動し、その支持ステー35に受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12を連結した状態で、前述のように両アタッチメント11,12を、ブレーキプレス加工装置2から離脱した収容位置11a,12aと、ブレーキプレス加工装置2側に配置された使用位置11b,12bとの間で回動させることができる。このスイングアーム機構13の回動動作は、図示しない油圧回動機構の動力によって行われる。また、スイングアーム機構13の伸縮アーム33は、
図6と
図7に示すように伸縮可能であり、当接機構34も
図8と
図9に示すように伸縮可能である。
【0050】
図1、
図5に示すように、ブレーキプレス加工装置2が設置される基礎面3には、下側ベッド4に隣接して地下収容ピット37が形成されている。スイングアーム機構13によって収容位置11a,12aに搬送された受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12は、スイングアーム機構13と共に地下収容ピット37に収容される。この時には、伸縮アーム33と当接機構34が最も縮んだ状態となる。
図5にも示すように、地下収容ピット37には開閉可能な蓋部材38が設けられ、この蓋部材38が閉じられると、蓋部材38の上面が基礎面3に連続する平坦面となる。
【0051】
スイングアーム機構13は、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12を使用位置11b,12bに移動させた後、支持ステー35と両アタッチメント11,12との間の連結を切り離して、
図11に示すように地下収容ピット37内の収容位置13aに戻ることができる。蓋部材38には、収容位置13aに回動したスイングアーム機構13の伸縮アーム33を避けるために図示しない切欠部が設けられており、
図1または
図11に示すように、スイングアーム機構13のみ、またはスイングアーム機構13と両アタッチメント11,12が地下収容ピット37内に収容された状態で地下収容ピット37の開口部を閉じることができる。
【0052】
図10に示すように、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12には、それぞれ受け側ローラ17と押圧側ローラ22を回転駆動する回転駆動モータ41,42(回転駆動手段)が設けられている。回転駆動モータ41,42は、図示しない制御装置の指示により、受け側ローラ17と押圧側ローラ22の各々を、それぞれ異なる周速度で回転駆動することができる。
【0053】
ところで、
図12に示すように、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12は、それぞれ受け側ローラ17の外径D1と押圧側ローラ22の外径D2を変更することができる。その際には、受け側ローラ17を支持するローラステー18と、押圧側ローラ22を支持するローラステー23を、長さの異なるものに交換してローラ外径D1,D2が変更される。また、受け側ローラアタッチメント11は、2本の受け側ローラ17の軸間距離Lを変更することができる。その場合は、ベース部材15の上面に設置されたアングル部材16の固定位置が変更される。
【0054】
以上のように構成されたロール加工ユニット1をブレーキプレス加工装置2に装着してメタルシートのロール加工を行う場合には、まず、
図5に示すように、ブレーキプレス加工装置2の上側ベッド5を充分に上昇させ、地下収容ピット37の蓋部材38を開く。この時には受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12とスイングアーム機構13が、それぞれ地下収容ピット37の中の収容位置11a,12a,13aに配置されている。
【0055】
次に、
図6に示すように、スイングアーム機構13を起立位置13bに回動させて、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12を、それぞれ使用位置11b,12bに配置する。スイングアーム機構13が収容位置13aから起立位置13bに回動するのに伴い、伸縮アーム33が伸ばされるため、使用位置11bに回動した受け側ローラアタッチメント11(ベース部材15)が下金型6にぶつかることはない。
【0056】
次に、
図7に示すように、伸縮アーム33が縮められて受け側ローラアタッチメント11のベース部材15が下金型6に被せられ、ベース部材15の下面が下側ベッド4の上面に当接する。続いて、
図8に示すように、ブレーキプレス加工装置2の上側ベッド5が下降し、上金型7の凸断面形状が押圧側ローラアタッチメント12のベース部材21の凹断面形状に嵌合する。
【0057】
次に、
図9、
図10に示すように、スイングアーム機構13の当接機構34の、第2シリンダ34aから第2ロッド34bが伸び、支持ステー35を受け側ローラアタッチメント11および押圧側ローラアタッチメント12と共に押圧し、両アタッチメント11,12の各々に設けられた平行基準面15a,21aが、それぞれ下金型6および上金型7の各々に設けられた平行基準面6a,7aに当接する。これにより、両アタッチメント11,12間が相対的に平行に位置決めされる。その後、
図10に示すように、両アタッチメント11,12を下金型6および上金型7にボルト43,44で締結すれば、両アタッチメント11,12間の相対平行度がずれることがない。
【0058】
そして、
図11に示すように、スイングアーム機構13が、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12から切り離されて収容位置13aに戻され、地下収容ピット37の蓋部材38が閉じられれば、ロール加工ユニット1の装着が完了し、ブレーキプレス加工装置2をロール加工装置51として使用することができる。このロール加工装置51では、一般のロール加工装置と同様に、メタルシートMを受け側ローラ17と押圧側ローラ22の間に挿入し、受け側ローラ17と押圧側ローラ22の軸間距離に応じた所定の曲率でメタルシートMを連続的に湾曲成形する。受け側ローラ17と押圧側ローラ22の軸間距離は、ブレーキプレス加工装置2の上側ベッド5を昇降させることによって任意の値に調整することができるため、メタルシートMのロール曲率を簡単に調整することができる。
【0059】
以上のように構成されたロール加工ユニット1は、ブレーキプレス加工装置2の下金型6側に取り付けられる受け側ローラアタッチメント11と、上金型7側に取り付けられる押圧側ローラアタッチメント12とが、スイングアーム機構13によって、ブレーキプレス加工装置2から離脱した収容位置11a,12aと、ブレーキプレス加工装置2側に配置された使用位置11b,12bとの間を搬送されるため、各アタッチメント11,12が高重量なものであっても、クレーン等を用いることなく、素早くブレーキプレス加工装置2に着脱することができる。したがって、大型のブレーキプレス加工装置2を素早く簡単にロール加工装置51に転換させたり、戻したりすることができ、これにより加工準備に費やされる時間を短縮することができる。
【0060】
このように、ブレーキプレス加工装置2をロール加工装置51としても使用可能になり、その転換作業が迅速に行えるため、ロール加工専用の装置を備えなくても、ブレーキプレス加工装置2のみによって航空機の胴体外板等の大型なメタルシートを効率良くロール加工することができる。無論、ロール加工専用の装置を導入する必要がないため、生産設備投資費用を多大に削減するとともに、加工装置の保守費用や装置設置スペース等も削減でき、これらの効果によってロール加工製品の製造コスト低減に大きく貢献することができる。
【0061】
しかも、ブレーキプレス加工装置2の下金型6と上金型7の間隔を変化させると、これに倣って受け側ローラ17と押圧側ローラ22の軸間距離も変化するため、ロール加工製品の曲率を簡単に調整することができる。さらに、ロール加工中であっても、メタルシートMを送らない、または微小な送り量とすることによって、各アタッチメント11,12を装着したままで、ブレーキプレス的な加工(チップフォーミング)が行える。
【0062】
特に、このロール加工ユニット1を取り付けたブレーキプレス加工装置2の独自の加工方法として、メタルシートMのロール加工中に、下金型6と上金型7の間隔を変更することにより、受け側ローラ17と押圧側ローラ22との軸間距離を変更し、メタルシートMの湾曲率を変化させることができる。
【0063】
また、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12を、それぞれ収容位置11a,12aと使用位置11b,12bとの間で移動させる搬送手段としてスイングアーム機構13を採用したため、両アタッチメント11,12を迅速かつ正確に収容位置11a,12aまたは使用位置11b,12bにセットすることができる。特に、両アタッチメント11,12を使用位置11b,12bにセットする際には、上下、左右、前後方向への位置合わせを全く行わなくても両アタッチメント11,12を使用位置11b,12bに迅速かつ正確に搬送することができる。したがって、ブレーキプレス加工装置2をロール加工装置51に転換させたり、戻したりする段取り替え作業を短時間のうちに完了させることができ、このような加工準備に費やされる時間を短縮してロール加工製品の生産性を向上させ、製造コストを低減させることができる。
【0064】
さらに、ブレーキプレス加工装置2に隣接して地下収容ピット37が形成され、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12がそれぞれ収容位置11a,12aに置かれた時には、両アタッチメント11,12がスイングアーム機構13と共に地下収容ピット37内に収容されるため、ロール加工ユニット1を使用しない場合に、ロール加工ユニット1の構成機材がブレーキプレス加工装置2の近傍に残存することがなく、これらの機材が加工作業の邪魔にならない。しかも、これらの機材を専用の格納スペース等に運搬するといった手間も一切不要である。このため、加工準備に費やされる時間を短縮してロール加工製品の生産性を向上させることができる。
【0065】
これらに加え、スイングアーム機構13は、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12を使用位置11b,11bに搬送した後、両アタッチメント11,12を切り離して収容位置13aに戻るため、両アタッチメント11,12がブレーキプレス加工装置2に取り付けられてロール加工が行われる際にスイングアーム機構13が邪魔にならず、これによりロール加工製品の生産性を向上させることができる。
【0066】
受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12は、それぞれブレーキプレス加工装置2の下金型6と上金型7に被せられるように取着される形状であるため、元からブレーキプレス加工装置2に平行にセットされている下金型6と上金型7の平行精度をそのまま利用して、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12を容易に平行に位置決めすることができる。このため、位置決め作業等の加工準備に費やされる時間を短縮し、ロール加工製品の生産性と製造コストダウンを図ることができる。
【0067】
また、その際には、受け側ローラアタッチメント11および押圧側ローラアタッチメント12の各々に設けられた平行基準面15a,21aを、それぞれ下金型6および上金型7の各々に設けられた平行基準面6a,7aに当接させて両アタッチメント11,12間の相対的な平行度を出すようにしてあるため、両アタッチメント11,12間の平行度をより迅速かつ正確に出すことができる。その後、両アタッチメント11,12が下金型6および上金型7にボルト43,44で締結固定されるため、両アタッチメント11,12間の相対平行度が狂うことがない。
【0068】
上記のように受け側ローラアタッチメント11および押圧側ローラアタッチメント12の平行基準面15a,21aを、下金型6および上金型7の平行基準面6a,7aに当接させて平行度を出す作業は、スイングアーム機構13の当接機構34が、油圧により第2シリンダ34aから第2ロッド34bを伸ばすことにより行うため、両アタッチメント11,12が大型かつ高重量なものであっても、容易に行うことができる。
【0069】
また、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12に設けられた回転駆動モータ41,42により、受け側ローラ17と押圧側ローラ22が個別に回転駆動され、受け側ローラ17と押圧側ローラ22の各々の周速度を異ならせることができるため、メタルシートの板厚、湾曲率、材質、単板か多板か等の諸条件に応じて受け側ローラ17および押圧側ローラ22の周速度を個別に設定することができる。特に、メタルシートの板厚が薄い場合には、ロール加工時におけるメタルシートからの反力が小さくなり、各ローラ17,22とメタルシートとの間に滑りが発生しやすくなるため、各ローラ17,22を個別に回転駆動し、かつ湾曲したメタルシートの表裏面における速度差を考慮して受け側ローラ17と押圧側ローラ22の周速度を異ならせることにより、このような不具合を解消し、ロール加工製品の歩留まりを高めて生産性を向上させることができる。
【0070】
さらに、受け側ローラアタッチメント11と押圧側ローラアタッチメント12は、それぞれ受け側ローラ17の外径D1と押圧側ローラ22の外径D2を変更可能であるため、加工するメタルシートMの板厚、湾曲率、材質、単板か多板か等の諸条件、およびロール加工製品の形状等に応じて、受け側ローラ17と押圧側ローラ22の外径D1,D2を選定できる。
【0071】
また、受け側ローラアタッチメント11においては、2本の受け側ローラ17の軸間距離Lを変更可能であるため、加工するメタルシートMの諸条件およびロール加工製品の形状等に応じて最適な軸間距離Lを選定することができ、上記のように受け側ローラ17の外径D1と押圧側ローラ22の外径D2を変更可能であることと相俟って、通常のロール加工装置と比べて遜色のないロール加工を行うことができる。
【0072】
そして、このロール加工ユニット1をブレーキプレス加工装置2に装着して構成したロール加工装置51を用いれば、メタルシートのロール加工中に、ブレーキプレス加工装置2の下金型6と上金型7の間隔を変更することにより、受け側ローラ17と押圧側ローラ22との軸間距離を変更してメタルシートの湾曲率を変化させることができ、通常のロール加工装置では製造できないロール加工製品を供給することができる。
【0073】
なお、このロール加工ユニット1を付設することにより、既存のブレーキプレス加工装置を簡単にロール加工装置に改造することができる。