特許第5791323号(P5791323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791323
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】スクラムジェットエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02K 7/14 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   F02K7/14
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-72046(P2011-72046)
(22)【出願日】2011年3月29日
(65)【公開番号】特開2012-207555(P2012-207555A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】古谷 正二郎
(72)【発明者】
【氏名】川又 善博
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03667233(US,A)
【文献】 特開平02−275051(JP,A)
【文献】 米国特許第02684817(US,A)
【文献】 西独国特許第00961238(DE,B)
【文献】 特開2007−120316(JP,A)
【文献】 特開平04−219452(JP,A)
【文献】 米国特許第05253474(US,A)
【文献】 特開2002−054504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 7/10−20
F02K 9/44−58
F02K 9/62−68
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流路が形成されるように、機体に取り付けられた、空気流路形成部材と、
前記空気流路内に燃料を供給する、燃料供給機構と、
を具備し、
前記空気流路は、前方側に設けられた前方開口と、後方側に設けられた後方開口とを接続するように形成されており、
前記空気流路は、
超音速飛行時に、前記前方開口を介して空気を取り込む、上流領域と、
前記上流領域の後方側に接続され、前記燃料が供給され、前記取り込まれた空気が燃焼し、燃焼ガスを生成する、燃料供給領域と、
前記燃料供給領域の後方側に接続され、前記後方開口を介して前記燃焼ガスを噴出する、下流領域とを備え、
前記燃料供給領域は、
前方側に設けられた供給領域前方部分と、
後方側に設けられた供給領域後方部分とを備え、
前記下流領域は、後方側ほど断面積が大きくなるように形成され、
前記下流領域における単位長さあたりの断面積の増加量は、前記供給領域前方部分におけるそれよりも、大きく、
前記上流領域は、前方側に設けられた前記前方開口に接続される縮径部と、前記燃料供給領域に接続される接続部とを備え、
前記接続部は、空気流路の断面積が一定である断面積一定部を備える
スクラムジェットエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたスクラムジェットエンジンであって、
前記供給領域後方部分における側壁には、凹部が設けられており、
前記燃料供給機構は、前記凹部から前記燃料を前記空気流路内に噴射するように構成されている
スクラムジェットエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載されたスクラムジェットエンジンであって、
前記凹部は、前記機体に設けられている
スクラムジェットエンジン。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載されたスクラムジェットエンジンであって、
前記上流領域は、前記燃料供給領域に隣接して設けられた、断面積拡大部を有しており、
前記断面積拡大部は、後方側に向かって断面積が大きくなるように形成されている
スクラムジェットエンジン。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたスクラムジェットエンジンであって、
前記機体は、第1面を備えており、
前記空気流路形成部材は、第2面を備え、前記第2面で前記第1面に面するように、前記機体に取り付けられており、
前記空気流路は、前記第1面と前記第2面との間に形成されており、
前記第1面と前記第2面とが成す角度が、開き角として定義され、
前記下流領域における開き角は、前記供給領域前方部分における開き角よりも、大きい
スクラムジェットエンジン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラムジェットエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
超音速で飛行する飛しょう体が知られている。飛しょう体には、超音速飛行時における推進装置として、スクラムジェットエンジンが用いられることがある。
【0003】
図1は、スクラムジェットエンジンの一例を示す概略断面図である。このスクラムジェットエンジン100は、機体101に取り付けられたカウル102(流路形成部材)と、燃料供給機構104とを備えている。カウル102と機体101との間には、空気流路103が形成されている。燃料供給機構104は、空気流路103に燃料を噴射する機能を有している。
【0004】
空気流路103には、進行方向前方側から、超音速の空気が取り込まれる。取り込まれた空気は、空気流路103の入口付近において、圧縮され、超音速状態が維持される範囲で減速する。圧縮及び減速された空気は、燃料供給機構104によって噴射された燃料により、燃焼し、燃焼ガスを生成する。燃焼ガスは、膨張し、加速し、空気流路103から後方側へ向かって噴射される。これにより、機体101を推進させるための推進力が得られる。
【0005】
ところで、スクラムジェットエンジン100では、熱閉塞が発生する場合がある。図2は、熱閉塞が発生した場合におけるスクラムジェットエンジン100を示す概略図である。例えば、燃料の供給量が過多である場合、燃焼時における発熱量が増大し、空気流路103内において熱閉塞が発生する。熱閉塞の発生時には、超音速で流れる空気に対して、燃料の質量及び燃焼による熱が付加され、空気の流速が亜音速にまで低下する。すなわち、燃焼状態が、亜音速燃焼状態になる。その結果、推力が得られなくなる。従って、熱閉塞の発生を防止することが望まれる。
【0006】
スクラムジェットエンジンに関連する技術が、特許文献1(特開平7−4314号公報)に開示されている。特許文献1には、前方開口部、中央空洞部、および後方開口部を連ねた流路を備え、かつ中央空洞部へ水素を噴射する装置を備えたスクラムジェットエンジンにおいて、流路の周囲を構成する部材の一部を可動構造として前方開口部を閉鎖できるようにし、かつ中央空洞部へ酸素を噴射する装置を追加設置したことを特徴とするスクラムジェットエンジンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−4314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱閉塞を回避するために、空気流路103に開き角を設けることが考えられる。図3は、開き角が設けられた空気流路103の一例を示す概略図である。図3には、空気流路103において燃料が噴射される部分の構成が描かれている。図3に示される例において、空気流路103は、その断面積が後方側に向かうほど広くなるように、形成されている。すなわち、空気流路103に、開き角(機体101の下面とカウル102の上面とが成す角度)が設けられている。このような構成を採用することにより、空気の流れが加速され、熱閉塞の発生を回避しやすくなる。しかしながら、開き角の大きさによっては、着火及び保炎が不安定となり、保炎を継続することができない場合がある。
【0009】
熱閉塞を回避するための他の手法として、燃料の供給量を制限する手法が考えられる。すなわち、燃料供給量を、熱閉塞が発生しないような量に制限することにより、熱閉塞を防止できる。しかしながら、燃料供給量を制限する場合には、エンジンサイズに対して得られる推力が小さくなり、エンジン効率が低下する。
【0010】
従って、本発明の課題は、熱閉塞を防止することのできる、スクラムジェットエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスクラムジェットエンジンは、空気流路が形成されるように、前記機体に取り付けられた、空気流路形成部材と、前記空気流路内に燃料を供給する、燃料供給機構とを具備する。前記空気流路は、前方側に設けられた前方開口と、後方側に設けられた後方開口とを接続するように形成されている。前記空気流路は、超音速飛行時に、前記前方開口を介して空気を取り込む、上流領域と、前記上流領域の後方側に接続され、前記燃料が供給され、前記取り込まれた空気が燃焼し、燃焼ガスを生成する、燃料供給領域と、前記燃料供給領域の後方側に接続され、前記後方開口を介して前記燃焼ガスを噴出する、下流領域とを備える。前記燃料供給領域は、前方側に設けられた供給領域前方部分と、後方側に設けられた供給領域後方部分とを備える。前記下流領域は、後方側に向かって断面積が大きくなるように形成されている。前記下流領域における単位長さあたりの断面積の増加量は、前記供給領域前方部分におけるそれよりも、大きい。
【0012】
上述の発明によれば、下流領域が、後方側に向かって断面積が大きくなるように形成されている。従って、下流領域において、空気流路を流れる超音速の空気を加速させることができ、熱閉塞を回避することができる。一方、供給領域前方部分では、下流領域よりも、断面積の増加量が小さい。燃料供給領域において、空気が流れる速度を抑えることができ、安定して着火及び保炎を行うことができる。また、上述の発明によれば、より大きな燃料の供給量において熱閉塞を回避することができるので、エンジン効率の向上が可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱閉塞を防止することのできる、スクラムジェットエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】スクラムジェットエンジンの一例を示す概略断面図である。
図2】熱閉塞が発生した場合におけるスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
図3】開き角が設けられた空気流路の一例を示す概略図である。
図4A】第1の実施形態に係るスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
図4B】第1の実施形態の変形例に係るスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
図5A】第1の実施形態の他の変形例に係るスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
図5B】第1の実施形態の他の変形例に係るスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
図6A】第1の実施形態の他の変形例に係るスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
図6B】第1の実施形態の他の変形例に係るスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
図7】第2の実施形態に係るスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
図8】第2の実施形態の第1の変形例に係るスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
図9】第2の実施形態の第2の変形例に係るスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
図10】第2の実施形態の第3の変形例に係るスクラムジェットエンジンを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図4Aは、本実施形態に係るスクラムジェットエンジン11を示す概略図である。本実施形態に係るスクラムジェットエンジン11は、図1に示した例と同様に、機体1に取り付けられたカウル2(流路形成部材)、及び燃料供給機構9を備えている。尚、図4Aにおいては、図1とは異なり、カウル2が上側に描かれており、機体1が下側に描かれている。
【0017】
図4Aに示されるように、カウル2と機体1との間には、空気流路3が形成されている。具体的には、機体1は、第1面4を有している。また、カウル2は、第2面5を有している。カウル2は、第2面5で第1面4に面するように、機体1に取り付けられている。空気流路3は、第1面4と第2面5との間に形成されている。
【0018】
燃料供給機構9は、空気流路3内に燃料(例えば水素及びジェット燃料)を供給するように構成されている。例えば、燃料供給機構9は、空気流路3の壁面に設けられた燃料ノズル(図示せず)を介して、空気流路3に燃料を噴射する。
【0019】
空気流路3は、進行方向の前方側の端部で前方開口に接続されており、後方側の端部で後方開口に接続されている。空気流路3は、前方側から、上流領域8、燃料供給領域6、及び下流領域7を有している。
【0020】
上流領域8は、前方開口を介して超音速の空気を取り込み、燃料供給領域6に導く部分である。図4Aに示されるように、上流領域8は、縮径部8−1、及び接続部8−2を有している。縮径部8−1は、超音速の空気を圧縮し、減速させる部分であり、前方側の端部で前方開口に接続され、後方側の端部で接続部8−2に接続されている。縮径部8−1では、空気流路3の断面積が、後方側に向かうほど小さくなっている。一方、接続部8−2は、縮径部8−1と燃料供給領域6とを接続する部分である。接続部8−2における空気流路3の断面積は、ほぼ一定である。
【0021】
燃料供給領域6は、燃料供給機構9により燃料が供給される部分である。上流領域8から燃料供給領域6に導入された空気は、供給された燃料により燃焼し、燃焼ガスを生成する。図4Aに示されるように、燃料供給領域6は、供給領域前方部分6−1と、供給領域後方部分6−2とを有している。機体1の第1面4には、供給領域後方部分6−2において、凹部10が設けられている。燃料は、燃料供給機構9により、供給領域前方部分6−1のみ、供給領域後方部分6−2のみ、又は、供給領域前方部分6−1及び供給領域後方部分6−2の双方から、燃料供給領域6内に噴射される。
【0022】
下流領域7は、前方側の端部で燃料供給領域6に接続され、後方側の端部で後方開口に接続されている。この下流領域7においては、空気流路3の断面積が、後方側に向かうほど大きくなっている。具体的には、下流領域7には、開き角が設けられている。すなわち、下流領域7においては、後方側に向かうほど開くように(第1面4と第2面5との間の距離が大きくなるように)、第1面4と第2面5との間に角度が設けられている。図4Aに示される例では、下流領域7における第2面5は、燃料供給領域6における第2面5と同一平面上に設けられている。一方、下流領域7における第1面4は、燃料供給領域6における第1面4に対して傾斜して伸びている。これにより、空気流路3は、燃料供給領域6と下流領域7との接続部分において、開き始めている。尚、空気流路3は、必ずしも燃料供給領域6と下流領域7との接続部分において開き始めている必要はない。例えば、図4Bに示されるように、第1面4の傾斜は、供給領域後方部分6−2の途中(図4B中、A)から始まっていてもよい。
【0023】
ここで、下流領域7における単位長さあたりの断面積の増加量は、供給領域前方部分6−1におけるそれよりも、大きい。すなわち、供給領域前方部分6−1における単位長さあたりの断面積の増加量は、0であるか、下流領域7におけるそれよりも小さい。
【0024】
本実施形態においては、超音速飛行時に、前方開口を介して、空気流路3に超音速の空気が取り込まれる。取り込まれた空気は、縮径部8−1において圧縮され、超音速状態が維持される範囲で減速され、接続部8−2を介して燃料供給領域6に導かれる。燃料供給領域6に導入された空気は、燃料供給機構9によって噴射される燃料により燃焼し、燃焼ガスを生成する。燃焼ガスは、下流領域7において膨張し、加速し、後方開口を介して噴出される。これにより、機体1を推進させる推進力が得られる。
【0025】
ここで、本実施形態では、供給領域前方部分6−1における単位長さあたりの断面積の増加量が、下流領域7におけるそれよりも小さい。従って、燃料供給領域6においては、空気の流速が抑制される。そのため、燃料供給領域6において、安定的に、着火及び保炎を行うことができる。一方、下流領域7における単位長さあたりの断面積の増加量は、供給領域前方部分6−1におけるそれよりも、大きい。従って、下流領域7においては、空気の流速を加速させることができる。そのため、燃料の供給量が過多となった場合であっても、燃料供給領域6における圧力増加を防止でき、熱閉塞を回避できる。
【0026】
尚、本実施形態においては、供給領域後方部分6−2において凹部10が設けられており、燃料がこの凹部10から空気流路3内に噴射される。このような構成を採用することにより、火炎が空気の流れによって吹き消されてしまうことが防止され、より安定的に、着火及び保炎を行うことができる。但し、燃料の供給方式は、図4Aに示した例に限定されず、他の方式を用いて燃料を供給することも可能である。
【0027】
また、本実施形態では、下流領域7における第1面4が、燃料供給領域6における第1面4に対して傾斜している。但し、必ずしも下流領域7において第1面4が傾斜している必要はなく、供給領域前方部分6−1における単位長さあたりの断面積の増加量が、下流領域7におけるそれよりも小さければよい。例えば、以下に説明される変形例のような構成が採用されてもよい。
【0028】
図5Aは、本実施形態の変形例に係るスクラムジェットエンジン11を示す概略図である。この変形例においては、第1面4は、燃料供給領域6と下流領域7との間において、同一平面上に形成されている。一方、下流領域7における第2面5は、燃料供給領域6における第2面5に対して傾斜している。これにより、下流領域7における単位長さあたりの断面積の増加量が、供給領域前方部分6−1におけるそれよりも大きくなっている。このような構成を採用しても、本実施形態と同様の作用効果を奏することが可能である。また、図4Bに示した例と同様に、空気流路3は、供給領域後方部分6−2の途中から開き始めていてもよい。図5Bは、そのような例を示す概略図である。図5Bに示される例では、第2面5の傾斜が、供給領域後方部分6−2の途中から始まっている。図5Bに示されるような構成を採用しても、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
図6Aは、本実施形態の他の変形例に係るスクラムジェットエンジン11を示す概略図である。この変形例においては、下流領域7における第1面4は、燃料供給領域6における第1面4に対して傾斜して伸びている。また、下流領域における第2面5も、燃料供給領域6における第2面に対して傾斜している。これにより、下流領域7における単位長さあたりの断面積の増加量が、供給領域前方部分6−1におけるそれよりも大きくなっている。このような構成を採用しても、本実施形態と同様の作用効果を奏することが可能である。更に、図4Bに示した例と同様に、空気流路3は、供給領域後方部分6−2の途中から開き始めていてもよい。図6Bは、そのような例を示す概略図である。図6Bに示される例では、第1面4および第2面5の傾斜が、供給領域後方部分6−2の途中から始まっている。図6Bに示されるような構成を採用しても、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図7は、本実施形態に係るスクラムジェットエンジン11を示す概略図である。本実施形態においては、第1の実施形態に対して、上流領域8における構成が変更されている。その他の点については、第1の実施形態と同様の構成を採用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0031】
図7に示されるように、上流領域8の接続領域8−2には、断面積一定部8−2−1と、断面積拡大部8−2−2とが設けられている。断面積一定部8−2−1は、前方側端部において、縮径部8−1に接続されている。断面積一定部8−2−1における空気流路3の断面積は、一定である。一方、断面積拡大部8−2−2は、前方側端部において断面積一定部8−2−1に接続されており、後方側端部において燃料供給領域6に接続されている。断面積拡大部8−2−2における空気流路の断面積3は、後方側に向かうほど拡大している。本実施形態では、断面積拡大部8−2−2において、第1面4が傾斜して伸びており、これによって、断面積拡大部8−2−2における断面積が後方側に向かうほど大きくなっている。尚、第2面5は、断面積拡大部8−2−2において傾斜していない。すなわち、断面積一定部8−2−1及び断面積拡大部8−2−2において、第2面5は、同一平面上に形成されている。
【0032】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、供給領域前方部分6−1における単位長さあたりの断面積の増加量が、下流領域7におけるそれよりも小さい。従って、燃料供給領域6において、空気の流速の増加を抑制でき、安定的に、着火及び保炎を行うことができる。また、下流領域7における単位長さあたりの断面積の増加量は、供給領域前方部分6−1におけるそれよりも、大きい。従って、下流領域7において、空気の流速を加速させることができ、熱閉塞を回避することができる。
【0033】
加えて、本実施形態によれば、上流領域8において、断面積拡大部8−2−2が設けられている。そのため、熱閉塞が発生しそうな状態になっても、熱閉塞の進行を回避することができる。熱閉塞の発生時には、燃料供給領域6における空気の流速が亜音速にまで低下する。そして、亜音速にまで低下した空気が、空気流路3の上流側に逆流することにより、熱閉塞が進行する。本実施形態においては、断面積拡大部8−2−2が設けられていることにより、燃料供給領域6における空気の流速が低下した場合であっても、断面積拡大部8−2−2よりも上流側に空気が逆流することが防止される。その結果、熱閉塞の進行が抑えられ、熱閉塞を回避することができる。
【0034】
尚、本実施形態においては、断面積拡大部8−2−2において第1面4が傾斜して伸びている。但し、断面積拡大部8−2−2の断面積は、後方側に向かって大きくなっていればよく、必ずしも図7に示した構成が採用される必要はない。例えば、以下に説明する第1の変形例のような構成を採用することも可能である。
【0035】
図8は、本実施形態の第1の変形例に係るスクラムジェットエンジン11を示す概略図である。本変形例においては、断面積拡大部8−2−2において、第2面5が傾斜して伸びている。一方、第1面4は、断面積一定部8−2−1及び断面積拡大部8−2−2において、同一平面上に設けられている。これにより、断面積拡大部8−2−2における断面積が、後方側に向かうほど拡大している。本変形例のような構成を採用しても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0036】
また、第1の実施形態と同様に、下流領域7においては、後方側に向かうほど断面積が大きくなるように構成されてさえいればよい。
【0037】
図9は、本実施形態の第2の変形例に係るスクラムジェットエンジン11を示す概略図である。本変形例においては、断面積拡大部8−2−2においては、第1面4が傾斜して伸びている。一方、下流領域7においては、第2面5が傾斜して伸びている。このような構成を採用しても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0038】
図10は、本実施形態の第3の変形例に係るスクラムジェットエンジン11を示す概略図である。本変形例においては、断面積拡大部8−2−2において、第1面4が傾斜して伸びている。また、下流領域7においては、第1面4及び第2面5の双方が、後方側に向かうほど断面積が拡大するように、傾斜して伸びている。本変形例のような構成を採用しても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0039】
以上、本発明について、第1及び第2の実施形態を用いて説明した。尚、既述の実施形態及び変形例は、独立するものではなく、矛盾のない範囲内で組み合わせて用いることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 機体
2 カウル
3 空気流路
4 第1面
5 第2面
6 燃料供給領域
6−1 供給領域前方部分
6−2 供給領域後方部分
7 下流領域
8 上流領域
8−1 縮径部
8−2 接続部
8−2−1 断面積一定部
8−2−2 断面積拡大部
9 燃料供給機構
10 キャビティ(凹部)
11 スクラムジェットエンジン
100 スクラムジェットエンジン
101 機体
102 カウル(流路形成部材)
103 空気流路
104 燃料供給機構
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10