【実施例】
【0032】
図1、
図2に示すフォークリフト10は、特に、特殊環境下での作業、例えば放射性廃棄物収納容器の運搬等を行う産業車両であり、運転者に対する特殊物質被曝を防止するために特殊物質シールドキャビンを備えるところが一般のフォークリフトの構造と異なっている。
即ち、フォークリフト10は、左右一対の前輪11,11及び左右一対の後輪12,12(手前側の符号のみ図示)が設けられた車両本体としての車体13と、この車体13の上部に取付けられたキャビン14と、車体13の前部に設けられるとともに左右一対のフォーク16,16が昇降自在に設けられたマスト装置17とからなる。
【0033】
車体13は、内側に、前輪11,11を駆動するための動力源となるエンジン37(
図3参照)、このエンジン37の動力を変速する変速機38(
図3参照)、フォーク16,16を昇降させるための油圧源となる油圧ポンプ、エンジン始動用としてや電子機器に電力を供給するバッテリ、キャビン14内を空調する空気調和機などが車体カバー21で覆われるように配置されている。
【0034】
キャビン14は、複数の金属製厚板及び鉛ガラスからなるケーシング体で構成されている。これらの金属製厚板及び鉛ガラスは、特殊物質がキャビン内部へ透過するのを防止する。
【0035】
キャビン14の天井部上部には、キャビン14の内部へ外気を除染した状態で導入する空気浄化装置24が取付けられている。外気をキャビン14の内部へ導入することでキャビン14の内部の圧力を大気圧よりも高めて、特殊物質が侵入するのを防止する。キャビン14の内部の圧力は、例えば、約2気圧に保たれる。
また、空気浄化装置24をキャビン14の天井部に設けることで、空気浄化装置24を地面からできるだけ離し、地面からの特殊物質の影響を極力避ける。
【0036】
通常のフォークリフトでは、エンジン、変速機、油圧ポンプ、空気調和機などを制御する、例えば、車両制御用やエンジン制御用のコントロールユニット、各種電子機器は、車体13に設けられているが、このフォークリフト10では、特殊物質による影響を避けるために、これらのコントロールユニット43(
図3参照)、必要な電子機器45(
図3参照)をキャビン14内に設け、特殊物質から保護している。
【0037】
マスト装置17は、車体13の前部下部に揺動自在に取付けられたマスト26と、このマスト26に上下移動自在に取付けられたリフトブラケット27と、このリフトブラケット27に取付けられたフォーク16,16と、マスト26を伸縮させてリフトブラケット27を上下動させる図示せぬ駆動機構と、マスト26を前後に傾けるために車体13、マスト26間に渡されたチルトシリンダ28とからなる。
【0038】
マスト26は、車体13側に設けられたアウタマストと、このアウタマストに昇降自在に取付けられたインナマストとからなる。
駆動機構は、インナマストを昇降させるリフトシリンダと、このリフトシリンダの固定部分からリフトブラケット27まで延びるチェーンと、リフトシリンダの可動部分の頂部に設けられるとともにチェーンの途中を回転しながら支えるローラとからなる。
【0039】
図3に示すように、キャビン14は、車体13の上部に着脱自在に取付けられ、前方、後方及び左方・右方の視界をそれぞれ確保するための前窓31、後窓32、左窓33、右窓34(
図4参照)と、操作端を操作する作業員若しくは乗員が乗降するための左扉36とを備える。なお、左扉36は右側に設けられても良い。
上記したように、キャビン14を車体13に対して着脱自在としたことで、市販のフォークリフトのキャビンを上記キャビン14に容易に変更することができる、即ち特殊環境用有人車両への改造を容易に行うことができ、また、一般のフォークリフトのキャビン以外の部分を流用できるので、改造コストを削減することができる。
【0040】
図中の符号37は左右の前輪11を駆動する動力源となるエンジン、38はエンジン37の出力を変速する変速機、39は変速機38の出力を左右の前輪11に伝達する動力伝達機構である。また、上記の変速機38、動力伝達機構39及び左右の前輪11は、車両移動機構40を構成している。符号43は車両の各部やエンジンを制御するコントロールユニット、45はコントロールユニット以外の電子機器である。
【0041】
図4、
図5に示すように、車両本体としての車体13は、前後方向に延びる左右一対の車体フレーム41,41を備え、これらの車体フレーム41,41にそれぞれ複数の連結固定部としての支持柱42が溶接にて取付けられ、これらの支持柱42でキャビン14が支持されている。図中の符号51bは前壁51の前面、52bは後壁(
図7参照)の背面である。
【0042】
図6(a)はキャビン14(
図4、
図5参照)の下部に備える底板としての底壁44の説明のために、
図4、
図5に対してキャビン14の上部を便宜的に省き、底壁44のみを示している。
底壁44には、キャビン14の内部と外部とを各種配管、ハーネス、ワイヤケーブルを貫通させるために、複数の穴としての貫通穴44a,44bが開けられている。
【0043】
例えば、各種配管としてはブレーキ配管、油圧機器の作動油配管、ハーネスとしては電子機器用ハーネス、ワイヤケーブルとしてはアクセルペダル用ケーブルや変速のためのシフトレバー用ケーブル、フォーク16(
図1参照)のための操作レバー用ケーブルなどがある。
【0044】
図6(b)、
図6(c)に示すように、底壁44は、各支持柱42にそれぞれ複数のボルト46で着脱自在に取付けられている。
支持柱42は、上壁47a及び側壁47bからなる断面L字状の一体成形の本体部47と、この本体部47の上壁47a、側壁47bの両方に垂直に溶接にて取付けられた補強部48とからなる。
【0045】
支持柱42の各側壁47bは、車体フレーム41の外側面41aに溶接にて取付けられているため、車体フレーム41に対する支持柱42の幅方向、即ち車両前後方向(
図6(b)の左右方向)の取付強度、支持強度が大きくなり、また、支持柱42の各補強部48は、その幅方向が
図6(c)の左右方向に延びるため、この方向の支持強度が大きくなる。更に、支持柱42が車体フレーム41に複数取付けられ、且つ底壁44が複数の支持柱42で支持されているため、キャビン14の上下方向の取付強度、支持強度も大きくなる。
従って、キャビン14を上記支持構造で車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向の3軸で三次元的に支持することができるため、重量物であるキャビン14を十分な支持強度で支持することができる。
【0046】
図7は
図4、
図5に示されたキャビン14から前窓31、後窓32、左窓33、右窓34、左扉36が取り外されたキャビン本体50を示している。
キャビン本体50は、底壁44と、この底壁44の前後左右に取付けられた前壁51(
図4参照)、後壁52、左壁53、右壁54と、これらの前壁51、後壁52、左壁53、右壁54の上部に取付けられた上壁56とからなる。
以上の
図4、
図5及び
図7に示したように、キャビン14は、キャビン本体50と、各窓(前窓31、後窓32、左窓33、右窓34)と、左扉36とから構成される箱体構造のケーシング体である。
【0047】
図4において、前壁51は、開口部(不図示)が開けられ、この開口部の縁部にサッシュ61が複数のボルトで取付けられ、サッシュ61に酸化鉛を含ませた特殊物質遮蔽用ガラスとしての鉛ガラス71が嵌め込まれている。サッシュ61及び鉛ガラス71は前窓31を構成している。
【0048】
図5、
図7において、後壁52は、開口部52aが開けられ、この開口部52aの縁部にサッシュ62が複数のボルトで取付けられ、サッシュ62に鉛ガラス72が嵌め込まれている。サッシュ62及び鉛ガラス72は後窓32を構成している。
【0049】
図5、
図7において、左壁53は、開口部53a,53bが開けられ、開口部53aの縁部にサッシュ63が複数のボルトで取付けられ、開口部53bの縁部を形成する後壁52の端部に開閉自在に左扉36が取付けられ、サッシュ63に鉛ガラス73が嵌め込まれている。サッシュ63及び鉛ガラス73は左窓33を構成している。
【0050】
図4、
図7において、右壁54は、開口部(不図示)が開けられ、この開口部の縁部にサッシュ64が複数のボルトで取付けられ、サッシュ64に鉛ガラス74が嵌め込まれている。サッシュ64及び鉛ガラス74は右窓34を構成している。
【0051】
底壁44、前壁51、後壁52、左壁53、右壁54、上壁56及び左扉36は、特殊物質を遮蔽する鋼板、鉛板又は鋼板と鉛板との合わせ板からなる遮蔽板であり、特殊物質遮蔽に十分な板厚を有する。
鉛ガラス72,73,74は、鉛ガラス71と同様に、酸化鉛を含ませた特殊物質遮蔽用ガラスであり、鉛ガラス71,72,73,74は、特殊物質遮蔽に十分な板厚を有する。
【0052】
図8(a)に示す底壁44と左壁53の接合、底壁44と右壁54の接合、
図8(b)に示す底壁44と前壁51の接合、底壁44と後壁52の接合、
図9(a)に示す上壁56と前壁51の接合、上壁56と後壁52の接合、
図9(b)に示す上壁56と左壁53の接合、上壁56と右壁54の接合、
図9(c)に示す前壁51と左壁53の接合、前壁51と右壁54の接合、
図9(d)に示す後壁52と左壁53の接合、後壁52と右壁54の接合は、各壁間に隙間が生じないようにそれぞれ連続したすみ肉溶接にて行われる。
【0053】
図10に示すように、キャビン14の左壁53には、運転者が乗降するための左扉36が左窓33の後方に設けられている。左扉36は、後壁52に複数のヒンジ81を介して開閉自在に取付けられている。左扉36には開閉の際の取っ手となるレバーハンドル82が回動自在に取付けられ、このレバーハンドル82を回すことで左壁53に対する左扉36のロック又はロック解除が行われる。
【0054】
図11(a)に示すように、左窓33のサッシュ63は、長方形の枠本体63aと、この枠本体63aの外周面に一体成形されたフランジ63bとからなり、枠本体63aの内側に鉛ガラス73が枠本体63aと隙間無く嵌め込まれ、フランジ63bに形成された複数のボルト穴63cにそれぞれボルト84が挿入され、これらのボルト84が左壁53に形成されためねじ53dにねじ込まれてサッシュ63が左壁53に取付けられている。
【0055】
ヒンジ81は、後壁52に複数のボルト86で取付けられた取付側プレート91と、左扉36の内面36aに溶接にて取付けられた扉側プレート92と、これらの取付側プレート91及び扉側プレート92のそれぞれを回動自在に連結する支軸部93とからなる。
【0056】
レバーハンドル82は、左扉36に回動自在に取付けられるとともに左扉36の外側に配置されたアウタハンドル95と、このアウタハンドル95に一体的に連結され且つ左扉36に回転自在に取付けられるとともに左扉36の内側に配置されたインナハンドル96と、このインナハンドル96に取付けられたロック片97とからなる。
【0057】
左壁53の開口部53bには、レバーハンドル82のロック片97が挿入されるロック穴53eが形成されている。レバーハンドル82を回してロック片97をロック穴53eに挿入することで左扉36の閉状態がロックされる。
【0058】
図中の符号98,98はシート状のシール部材であり、左扉36の開口部53bの縁部となる左壁53の外面と後壁52の端面52dにシール部材98,98が貼り付けられ、左扉36を閉じたときに左扉36と左壁53との間、及び左扉36と後壁52との間をシールして外部からキャビン14内へ特殊物質が侵入するのを防ぐ。
シール部材98の材質としては、ゴム、ウレタン等の可撓性を有するものが好適である。
【0059】
図10、
図11(a)において、符号101,102,103,104は、左扉36を閉じた状態での左扉36と左壁53との間、左扉36と後壁52との間に隙間が生じたときに備えて、隙間の延長上に配置される長尺の当板としての遮蔽ブロックであり、外部から隙間に向かって隙間の延長上を直線的に進む特殊物質の進行を遮り、キャビン14の内部に侵入するのを防止する。
【0060】
図11(b)は、
図11(a)の状態からレバーハンドル82を回してロック穴53eからロック片97を外し、左扉36を矢印で示すように開けた状態を示している。
遮蔽ブロック101,102,103(符号102,103は
図10参照)は、左壁53に取付けられ、遮蔽ブロック104は、左扉36に取付けられている。
【0061】
以上のように、遮蔽ブロック101,102,103,104を設けることで、左扉36と遮蔽ブロック101,102,103との間に出来る隙間と、左壁53と左扉36との間に出来る隙間とが断面L字状の屈曲路(特殊物質侵入屈折路)となり、また同様に、後壁52と遮蔽ブロック104との間に出来る隙間と、後壁52と左扉36やヒンジ81との間の隙間とが断面L字状の屈曲路(特殊物質侵入屈折路)となり、上記した特殊物質の侵入を防ぐ。
【0062】
図12に示すように、空気浄化装置24(
図1参照)を構成する濾過・吸引部106は、外気を下方から上方に向けて取り込む吸気口111と、この吸気口111に接続されて空気中の放射性物質を除きながら空気を通過させるフィルタ112と、このフィルタ112の下流側に吸い込み口113aが接続されてフィルタ112内の空気を吸引するブロア113と、これらのフィルタ112及びブロア113を支持するとともにキャビン14(
図1参照)の天井部(上壁56(
図1参照))に取付けるための台座114とからなる。
【0063】
図13に示すように、空気浄化装置24は、濾過・吸引部106と、この濾過・吸引部106、詳しくは濾過・吸引部106を構成するブロア113の排出口113bにゴムホース116を介して接続されたダクト部117と、このダクト部117内及びキャビン14(
図10、
図11(a)参照)内のそれぞれを連通させるためにキャビン14の上壁56(
図1参照)に開けられた連通穴118とからなる。なお、符号112bはフィルタ112の排出口であり、ブロア113の吸い込み口113aに接続される。符号113cはブロア113の内部通路であり、内部通路113cはフィルタ112の排出口112bとで屈折路115を形成する部分である。
【0064】
ダクト部117は、ゴムホース116に接続されたダクト部入口121と、このダクト部入口121が取付けられた入口遮蔽板122と、ラビリンス構造を形成する5個のダクト部形成ブロック123〜127と、入口遮蔽板122、ダクト部形成ブロック123〜127の上方を塞ぐ上蓋128(不図示)とからなり、ダクト部117の下面が直にキャビン14の上壁56に溶接にて取付けられているため、ダクト形成部117とキャビン14の上壁56とで密閉空間であるダクトを形成している。
【0065】
以上に述べた空気浄化装置24の作用を次に説明する。
図13において、ブロア113を作動させると、外気は、吸気口111から矢印Aのように吸引され、白抜き矢印Bで示すように、フィルタ112内を通過するときに、フィルタ112内でフィルタ112の目よりも大きな放射性物質は空気から分離され、空気はフィルタ112内から矢印Cで示すように屈折路115を介してブロア113内を通過してダクト部117内に進む。
【0066】
また、
図14に示すように、ホース136を設けてもよい。空気浄化装置131は、濾過・吸引部106と、この濾過・吸引部106の排出口113bの近傍、詳しくは、左方に配置されたダクト部132と、このダクト部132内に形成されたラビリンス(迷路)133及びキャビン14(
図10、
図11(a)参照)内のそれぞれを連通させるために上壁56(
図1参照)に取付けられた連通管134と、ラビリンス133に沿って配置されるとともに一端が排出口113bに接続され且つ他端が連通管134に接続されたホース136とからなる。
【0067】
ダクト部132は、ホース136を通す通孔137aが開けられるとともにホース136の外周面に嵌合される入口遮蔽板137と、ラビリンス構造を形成する5個のダクト部形成ブロック123〜127と、入口遮蔽板122、ダクト部形成ブロック123〜127の上方を塞ぐ上蓋128(不図示)とからなり、ダクト部132の下面が直にキャビン14の上壁56に溶接にて取付けられている。
【0068】
図15に示すように、空気浄化装置141を、車体13におけるキャビン14の後方に配置させてもよい。濾過・吸引部106と、この濾過・吸引部106の排出口113bに一端が接続されるとともに他端がキャビン14の後壁52を貫通してキャビン14の内部まで延びる排気ダクト142とからなる。
【0069】
ブロア113を作動させることで、フォークリフト10の後方の空気を吸引し、放射性物質を除去した空気を矢印Eで示すようにキャビン14内の空間146に取り込み、キャビン14の内部を与圧する。
図中の符号144は左右の後輪12(
図2参照)を操舵する操作端としてのハンドル、145は乗員としての運転者167が着座するシートである。
キャビン14内には、特殊物質の影響を避けるために、シート145の下方にコントロールユニット43、ダッシュボード内に電子機器45が配置されている。
【0070】
図16に示すように、キャビン14を構成する前壁51の下端部前部に前方に延びるフランジ部151が溶接にて取付けられ、このフランジ部151の前端面151aに邪魔板152が溶接にて取付けられ、フランジ部151に複数のボルト穴151bが開けられ、底壁44の縁部に複数のめねじ44dが形成され、ボルト穴151bを通されたボルト153の先端部がめねじ44dにねじ込まれることで、底壁44に前壁51が複数のボルト153で着脱自在に取付けられる。この場合、後壁52、左壁53、右壁54についても底壁44とそれぞれ複数のボルトで着脱自在に取付けられている。
従って、
図8(b)に示した実施形態に比べてキャビン14の上部を底壁44から取外したときに、キャビン14の上部は底壁44が無い分だけ軽量になり、取扱いが楽になる。
【0071】
また、邪魔板152は、前壁51の下端面51aを延長する面に交差するように配置され、あるいは、底壁44と前壁51との間に生じる隙間を延長する部分に交差するように配置されることで、前方から矢印Gで示すように、底壁44と前壁51との隙間に向かって直進する特殊物質が点線の矢印Hのようには進行しなくなり、隙間からキャビン14内に侵入するのを防止することができる。
【0072】
図17に示すように、キャビン14の壁、例えば前壁51に形成された穴としての開口部51cを遮蔽板161を用いて複数のボルト162で塞ぐ場合、前壁51と遮蔽板161との間に出来る隙間163から特殊物質がキャビン14の内部に侵入しないように、前壁51の前面51dに且つ隙間163の延長上を遮るように邪魔板165,165を取付ける。
好ましくは、遮蔽板161の周囲を連続的に取り囲むように邪魔板165を前壁51に取付ける。
【0073】
これにより、特殊物質が、矢印Kに示すように、隙間163の延長上を隙間163に向かって進行しても、邪魔板165,165で阻止され、波線の矢印Mで示すような、隙間163及び開口部51cを介してキャビン14の内部に侵入することがなく、運転者167が特殊物質を浴びることを防止できる。
【0074】
遮蔽板161を構成する取付フランジ166,166と邪魔板165との間に隙間168が出来るが、この隙間168と隙間163とは断面L字状の特殊物質侵入屈折路としての屈曲路169を形成しているため、車両前方からキャビン14に向かって直進する特殊物質に対してはキャビン14内への進行を有効に妨げる。
【0075】
図18(a)に示すように、底壁44の貫通穴44aに配管170を通す場合は、貫通穴44aと配管171との隙間に、例えば、鉛毛171、ゴムなどを充填し、且つ貫通穴44aの両端のそれぞれの縁部と配管171との間をそれぞれ邪魔板172,173で塞ぐことにより、貫通穴44aと配管171との隙間からキャビン内への放射性物質及び特殊物質の侵入を防止することができる。
【0076】
図18(b)に示すように、邪魔板172は、底壁44にボルト174で取付けられる第1ベース板176と、この第1ベース板176に重ねて取付けられた第1重ね板177とからなり、第1ベース板176に、ボルト174を挿入するボルト穴176aと、配管170を通す切欠き176bとが形成され、第1重ね板177に配管170を通す切欠き177aが形成されている。
【0077】
邪魔板173は、底壁44にボルト174で取付けられる第2ベース板183と、この第2ベース板183に重ねて取付けられた第2重ね板184とからなり、第2ベース板183に、ボルト174を挿入するボルト穴183aと、配管170を通す切欠き183bとが形成され、第2重ね板184に配管170を通す切欠き184aが形成されている。
【0078】
図18(c)に示すように、邪魔板172の第1重ね板177と邪魔板173の第2重ね板184とは、配管170に密着する切欠き部177aと切欠き部184aとが形成される。また、邪魔板172の第1重ね板177と邪魔板173の第2ベース部183とは、互いに上下にオーバーラップする重なり部177b,177bと重なり部183c,183cとが形成される。これによって、
図18(a),(b)に示したように、第1ベース板176と第2ベース板183との間の水平方向の隙間を上下方向から塞ぐことができ、キャビン14の下方からキャビン14に向かって上方へ進む特殊物質や放射性物質をキャビン14内の空間146に侵入しないように遮ることができる。
【0079】
図19(a)に示すように、底壁44の開口部44aに油圧配管191又はエア配管を通す場合には、底壁44の開口部44aの縁部に複数のボルト192で配管マニホールド193を取付け、この配管マニホールド193に油圧配管191を取付ける。
【0080】
図19(b)に示すように、配管マニホールド193は、マニホールド本体187と、このマニホールド本体187の側部周囲に取付けられたフランジ188とからなり、フランジ188が複数のボルト192で底壁44の下面に取付けられる。
【0081】
マニホールド本体187は、第1通路191aと、この第1通路191aに連通する第2通路191bと、この第2通路191bに連通する第3通路191cとが設けられ、第1通路191aの一端にジョイントコネクタ194が接続され、第2通路191bの一端がプラグキャップ196で塞がれ、第3通路191cの一端にジョイントコネクタ194が接続された部品である。
【0082】
各プラグキャップ194に油圧配管191を接続することで、容易に底壁44の開口部44aに油圧配管191を通すことができるとともに、フランジ188で開口部44aとマニホールド本体187との隙間を塞ぐことができる。
【0083】
図20(a)に示すように、左扉36は、開き防止部材201によって開き角度が規制されている。開き防止部材201は、左壁53の開口部53bに取付けられた壁側固定部材203と、左扉36の内面36aに取付けられた扉側固定部材204と、これらの壁側固定部材203及び扉側固定部材204のそれぞれに渡されたチェーン205とからなる。
【0084】
また、左扉36は、ヒンジ部材207によって完全に閉じるのを防止することが可能である。ヒンジ207は、左壁53の開口部53bの縁部に取付けられた固定部211と、この固定部211に支軸212を介して上下揺動自在に支持された可動部213とからなる。
左扉36を完全に閉じる場合には、可動部213を下側に揺動させて左扉36の開閉範囲から外し、また、完全に閉じないようにする場合には、可動部213を上側に揺動させて左扉36の開閉範囲内に配置する。これにより、左扉36が可動部213に当たり、左壁3と左扉36との間に隙間が出来る。従って、手などを間に挟む心配がない。
【0085】
図20(b)に示すように、左扉36は、開き防止部材としてのストッパ221によって開き角度が規制されている。ストッパ221は、後壁52の背面52bに取付けられている。左扉36を大きく開くと、左扉36及びヒンジ81の少なくとも一方にストッパ221の先端部が当たり、それ以上開かない。
【0086】
また、左ドア36は、開閉固定部材225によって開閉を固定することも可能である。
開閉固定部材225は、後壁52の内面52cに取付けられた壁側固定部材226と、この壁側固定部材226に揺動可能に連結されるとともに先端に屈曲部227aが形成されたバー227と、このバー227の屈曲部227aを係止可能で且つ左扉36の内面36aに取付けられた扉側固定部材228とからなる。
【0087】
図20(b)に示したように、バー227の屈曲部227aを扉側固定部材228に係止すれば、左扉36を開けた状態に固定しておくことができる。
また、左扉36を開閉動作させる場合には、バー227の屈曲部227aを扉側固定部材228から外し、バー227を壁側固定部材226を中心にしてキャビン14内に収納する。
【0088】
図21に他のキャビン構造を示す。フォークリフトを構成するキャビン230は、上部を構成するキャビン上部体231と、フォークリフトの車両本体としての車体235を構成する左右の車体フレーム41に取付けられたベースプレート236と、このベースプレート236の上面に溶接にて取付けられた複数の連結固定部としての支持部材237と、これらの支持部材237にキャビン上部体231を締結する複数のボルト(不図示)とからなる箱体構造のケーシング体である。
【0089】
キャビン上部体231は、
図5に示した実施形態のキャビン14に対して底壁44を無くすとともに、左壁53及び右壁54(
図4参照)の下部にそれぞれめねじを形成したケーシング体である。左壁53にめねじを形成したものが左壁238である。
ベースプレート236は、鋼板、鉛板又は鋼板と鉛板との合わせ板からなる遮蔽板であり、特殊物質遮蔽に十分な板厚を有する。
【0090】
支持部材237は、断面L字状のプレートと、このプレートの2面に渡されるように取付けられた補強プレートとからなり、L字状のプレートにボルトを通すボルト穴が複数開けられている。
支持部材237とキャビン上部体231とは、ボルトを支持部材237のボルト穴に通し、ボルトの先端を左壁53及び右壁の各めねじにねじ込むことで締結される。
【0091】
支持部材237の形状、及び支持部材237とキャビン上部体231との締結構造は、
図6(a)〜(c)に示した支持柱42の形状、及び支持柱42とキャビン14との締結構造と同様であるから、支持部材237でキャビン上部体231を上記支持構造で車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向の3軸で三次元的に支持することができるため、重量物であるキャビン上部体231を十分な支持強度で支持することができる。
キャビン上部体231は、車体235に複数のボルトによって着脱自在に取付けられた箱体構造のケーシング体であり、底壁が無い分軽量に造ることができ、また、部品点数も減るので、運搬等の取扱いや仕様変更が楽に行え、コストも低減できる。
【0092】
尚、本発明では、ケーシング体を、車両本体に対し連結固定部を介して分離可能に区画隔成したが、これに限らず、ケーシング体を車両本体に直接に分離可能に結合してもよい。
また、
図21に示した実施形態では、車体235側のベースプレート236に支持部材237を設けたが、これに限らず、支持部材237をキャビン上部体231の下部に溶接にて取付け、この支持部材237とベースプレート236とをボルトで着脱自在に結合してもよい。