(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外郭部の内面であって前記噴出孔の対向位置から離間した位置に、内面に沿って流れる前記冷却用流体に乱流を形成させる乱流促進リブが突出して設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転機械の翼体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、インピンジメント冷却方式を採用する従来の翼体では、噴出孔から外郭部に対する冷却ガスの噴射が、これに交差して流れるクロスフローによって阻害されることにより、冷却効率が低下する問題がある。より詳細に説明すると、インサート部材の噴出孔から噴射する冷却ガスは、外郭部の内面に衝突した後、内面に沿った下方への流れすなわちクロスフローを形成する。そして、このクロスフローは、下流側すなわち翼高さ方向下側に行くに従って多くの冷却ガスが集まることにより、その流量が増大する。従って、外郭部とインサート部材との間の隙間幅が一定である場合、翼高さ方向下側に行くに従ってクロスフローの流速が増加する。そうすると、クロスフローの流速が速い翼高さ方向下側では、噴出孔から噴射する冷却ガスの流れがクロスフローによって大きく阻害されることにより、外郭部に対する熱伝達率が相対的に低くなる。その結果、外郭部にはその温度分布にムラが生じることに起因して熱応力が発生する。これにより、外郭部を所定の目標温度まで冷却する際に、必要な冷却ガスの量が増大することにより、または圧力損失が増大することにより、冷却効率が低下する。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、インピンジメント冷却方式を採用する翼体において、クロスフローの流速が下流側で増加することを抑制してその影響を低減することにより、冷却効率の向上を図る手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る回転機械の翼体は、
ロータに対する径方向に延びる翼本体と、前記径方向における前記翼本体の一方側に設けられている外側シュラウドと、前記径方向における前記翼本体の他方側に設けられている内側シュラウドと、を備え、
前記外側シュラウド及び前記内側シュラウドは、いずれも、内部に空間が形成されている本体部と、前記本体部の前記空間を前記径方向で二つの区画に分割するインピンジメントプレートを、を有し、前記インピンジメントプレートには、二つの前記区画のうち、前記径方向で前記翼本体と反対側の区画に流入した冷却用流体を前記翼本体側の区画内に噴出する複数の冷却孔が形成され、
前記翼本体は、翼形を形成する外郭部と、前記外郭部の内部に、前記外郭部の内面と隙間を有して配されるとともに、
前記外側シュラウドの前記翼本体側の区画から内部に供給された
前記冷却用流体を前記外郭部の内面に向かって噴出させる噴出孔を有する
第一供給部と、前記外郭部と
前記第一供給部との隙間に流入した
前記冷却用流体を
前記内側シュラウドの前記翼本体と反対側の前記区画内に排出する
第一排出口と、
前記外郭部の内部に、前記外郭部の内面と隙間を有して配されるとともに、前記内側シュラウドの前記翼本体側の区画から内部に供給された前記冷却用流体を前記外郭部の内面に向かって噴出させる噴出孔を有する第二供給部と、前記外郭部と前記第二供給部との隙間に流入した冷却用流体を外部に排出する第二排出口と、を有し、
前記外郭部の内面と前記第一供給部との間の前記隙間は、前記
第一排出口への
前記冷却用流体の排出する方向の上流側から下流側に向かうにしたがって断面積が次第に大きくなるように形成され
、前記外郭部の内面と前記第二供給部との間の前記隙間は、前記第二排出口への前記冷却用流体の排出する方向の上流側から下流側に向かうにしたがって断面積が次第に大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、供給部の噴出孔から噴射した冷却用流体は、外郭部の内面に衝突した後、その内面に沿って排出口へ向かって流れることによりクロスフローを形成する。そして、このクロスフローの流量は、下流側すなわち排出口に近付くほど増大する。しかし、外郭部と供給部との間の隙間は、その断面積が下流側に向かって次第に大きくなるように形成されている。従って、クロスフローの流量が増大する下流側においても、その流速の増加が抑制される。これにより、噴出孔から噴射する冷却用流体の流れがクロスフローによって大きく阻害されることがないため、冷却効率が低下することを未然に防止することができる。
【0008】
また、本発明に係る回転機械の翼体は、前記冷却用流体を排出する方向が、前記外郭部の翼高さ方向であることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、噴出孔から排出口までの距離が、冷却用流体の排出方向が翼の高さ方向以外の方向である場合と比較して長くなるため、クロスフローの下流側において流量が増大しやすい。従って、クロスフローの流速が増加するのを抑制する効果がより有効に発揮される。
【0010】
また、本発明に係る回転機械の翼体は、前記外郭部の内面であって前記噴出孔の対向位置に、凸部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、外郭部の内面であって噴出孔の対向位置では、噴出孔から噴射する冷却用流体の流れが凸部によって阻害されることにより、外郭部に対する熱伝達率が相対的に低くなる。その結果、外郭部はその温度分布が均一化することに起因して熱応力が低減する。これにより、外郭部を所定の目標温度まで冷却する際に、必要な冷却用流体の量が減少することにより、または圧力損失が低減することにより、冷却効率が向上する。
【0012】
また、本発明に係る回転機械の翼体は、前記外郭部の内面であって前記噴出孔の対向位置から離間した位置に、内面に沿って流れる前記冷却用流体に乱流を形成させる乱流促進リブが突出して設けられていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、噴出孔の対向位置から離間した位置では、吹き付けられる冷却用流体の量が少ない領域が局所的に存在する。しかし、当該領域に突出して設けられた乱流促進リブによって冷却用流体に乱流の発生が促進されることにより、外郭部に対する熱伝達率が相対的に高くなる。その結果、外郭部はその温度分布が均一化することに起因して熱応力が低減する。これにより、外郭部を所定の目標温度まで冷却する際に、必要な冷却用流体の量が減少することにより、または圧力損失が低減することにより、冷却効率が向上する。
【0014】
また、本発明に係る回転機械の翼体は、前記供給部が、前記外郭部とは別部材であることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、冷却用流体を流通させる流路を、外郭部と供給部との間の隙間として形成するので、鋳造等によっては形成が難しい小さな流路であっても、供給部の形状を適宜変化させることによって容易に形成することができる。
【0016】
また、本発明に係る回転機械の翼体は、前記供給部は、その長手方向一端部が前記外郭部によって支持されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、供給部はその長手方向一端部が外郭部によって片持ち支持された状態であって外郭部に対する相対的な変形が許容されている。従って、回転機械の稼動時に翼体が高温の燃焼ガスに曝されると、外郭部と供給部とで熱伸びに差が生じる場合があるが、この場合でも供給部が外郭部に対して相対的に変形することにより、供給部または外郭部に熱応力が発生するのを抑制することができる。これにより、高温環境下においても回転機械を良好に稼動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る回転機械の翼体によれば、インピンジメント冷却方式を採用する翼体において、クロスフローの流速が下流側で増大することを抑制してその影響を低減することにより、冷却効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の第1実施形態に係る回転機械の翼体について説明する。本実施形態では、回転機械の翼体の一例として、ガスタービンのタービン静翼について説明する。
【0021】
図1は、第1実施形態に係るタービン静翼を備えたガスタービンを示す全体構成図である。ガスタービン1は、流体の流通方向Fに沿って最も上流側の位置に設けられて圧縮空気を生成する圧縮機2と、その下流側に設けられて圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させることで燃焼ガスを生成する燃焼器3と、更にその下流側に設けられて燃焼ガスにより回転駆動されるタービン4と、を備えるものである。
【0022】
タービン4は、
図1に示すように、ロータ5の外周に設けられて内部に燃焼ガス流路が形成されたタービンケーシング6と、ロータ5の外周面から突出して周方向に所定間隔で設けられた複数のタービン動翼7と、タービンケーシング6の内周面から突出して周方向に所定間隔で設けられた複数のタービン静翼10と、を有している。そして、複数段のタービン動翼7及びタービン静翼10が、ロータ5の軸線方向に沿って交互に設けられている。
【0023】
タービン静翼10は、燃焼ガスを減速してその圧力を上昇させる役割を果たすものである。ここで
図2は、タービン静翼10を一部破断した状態で示す概略斜視図である。タービン静翼10は、ロータ5の径方向に相当する翼高さ方向Hに延設される翼本体11と、この翼本体11の翼高さ方向一端部に設けられた外側シュラウド12と、翼本体11の翼高さ方向他端部に設けられた内側シュラウド13と、を具備している。
【0024】
(外側シュラウド)
外側シュラウド12は、周方向に複数設けられたタービン静翼10をその先端部において互いに連結する役割を果たすものである。この外側シュラウド12は、
図2に示すように、上面が開口された筐体である本体部14と、この本体部14の開口を封止する蓋体15と、本体部14の内部に設けられたインピンジメントプレート16と、蓋体15から上方へ突出した配管群17と、を有している。
【0025】
本体部14は、
図2に示すように、横断面で略矩形形状を有するとともに、その底面を貫通して複数の貫通穴141が形成されている。また、蓋体15は、平面視で本体部14の開口と同形状である略矩形に形成され、開口を覆うようにして本体部14に固定されている。これにより、本体部14及び蓋体15によって包囲される空間として、冷却室18が構成されている。そして、この冷却室18は、貫通穴141を介して翼本体11の内部に連通している。
【0026】
インピンジメントプレート16は、本体部14をインピンジメント冷却する役割を果たすものである。このインピンジメントプレート16は、
図2に示すように、平面視で冷却室18と略同じ断面形状を有し、複数の冷却孔161が形成されている。このように構成されるインピンジメントプレート16は、本体部14の内部に固定して配置されることにより、冷却室18を翼高さ方向Hに2つの区画すなわち上側の第一冷却室181と下側の第二冷却室182とに分割している。
【0027】
配管群17は、タービン静翼10に冷却ガスRG(冷却用流体)を供給し、またはタービン静翼10から冷却ガスRGを排出する役割を果たすものである。この配管群17は、
図2に示すように、蓋体15の中央部に突出して設けられてタービン静翼10から冷却ガスRGを排出する排出管171と、この排出管171を挟んだ両側の位置に突出して設けられてタービン静翼10に冷却ガスRGを供給する第一供給管172及び第二供給管173と、を有している。
【0028】
排出管171は、
図2に示すように断面略円形の配管であって、蓋体15及びインピンジメントプレート16を貫通してその一端が蓋体15の上方に開口するとともに、他端が翼本体11の内部空洞に接続されている(
図2では不図示)。これにより、この排出管171を介して翼本体11の内部とタービン静翼10の外部とが連通した状態になっている。
【0029】
第一供給管172は、
図2に示すように断面略円形の配管であって、蓋体15を貫通してその一端が蓋体15の上方に開口するとともに、他端が第一冷却室181に開口している。これにより、この第一供給管172を介して第一冷却室181とタービン静翼10の外部とが連通した状態になっている。
【0030】
第二供給管173は、
図2に示すように断面略三角形の配管であって、蓋体15及びインピンジメントプレート16を貫通してその一端が蓋体15の表面に開口するとともに、他端が翼本体11の内部空洞に接続されている(
図2に破線で示す)。これにより、この第二供給管173を介して翼本体11の内部とタービン静翼10の外部とが連通した状態になっている。
【0031】
尚、配管群17を構成する配管の本数やその設置位置は本実施例に限定されず、翼本体11の内部の構成等に応じて適宜設計変更が可能である。
【0032】
(内側シュラウド)
内側シュラウド13は、周方向に複数設けられたタービン静翼10をその基端部において互いに連結する役割を果たすものである。この内側シュラウド13は、
図2に示すように、下面が開口された筐体である本体部14と、この本体部14の開口を封止する蓋体15と、本体部14の内部に設けられたインピンジメントプレート16と、を有している。ここで、本体部14、蓋体15、及びインピンジメントプレート16の各構成は外側シュラウド12と同じであるため、同じ符号を付し、その説明を省略する。そして、本体部14及び蓋体15によって冷却室19が構成され、この冷却室19がインピンジメントプレート16によって上側の第三冷却室191と下側の第四冷却室192とに分割されている。
【0033】
(翼本体)
図3は、タービン静翼10の翼高さ方向Hへの断面を模式的に示した断面図、
図4は、
図3におけるA−A線断面を示す概略断面図である。翼本体11は、
図2及び
図4に示すように翼形の外形を成し内部が空洞の外フレーム20(外郭部)と、外フレーム20の内部を区画するように設けられた複数の区画フレーム21と、外フレーム20の内部に所定幅の隙間Cを介して挿入された複数の挿入部材22(供給部)と、を備えるものである。
【0034】
区画フレーム21は、
図4に示すように、外フレーム20における相対向する位置同士を互いに接続するように、或いは区画フレーム21と外フレーム20とを互いに接続するようにそれぞれ設けられている。これにより、翼本体11の内部には、外フレーム20と区画フレーム21とによって包囲される挿入空間23が複数形成されている。尚、区画フレーム21は、外フレーム20と一体的に構成してもよいし、或いは別部材として構成してもよい。
【0035】
挿入部材22は、
図3及び
図4に示すように、断面で細長い台形に形成された筐体であって、その長手方向一端側すなわち台形の長辺側の端面が開口されることにより、供給用開口221が形成されている。また、この挿入部材22を構成する傾斜板222には、長手方向に沿って所定間隔で複数の噴出孔223が形成されている。またこの噴出孔223は、
図4に詳細は示さないが、長手方向に略直交する方向へも所定間隔で形成されることにより、傾斜板222の全面に渡って形成されている。
【0036】
このように構成される挿入部材22は、
図3及び
図4に示すように、その長手方向一端側の供給用開口221を上方に向けた状態で、且つ、その傾斜板222を外フレーム20の側に向けた状態で、ある1つの挿入空間23Aに対して上方から挿入される。そして、挿入部材22は、
図3に示すように供給用開口221の縁部が外フレーム20及び区画フレーム21に対して溶接部24を介してそれぞれ固定される。これにより挿入部材22は、その長手方向一端部だけが外フレーム20及び区画フレーム21によって支持された状態、すなわち片持ち支持された状態となっている。
【0037】
そして、このように挿入部材22を挿入空間23Aに挿入した時、挿入部材22の傾斜板222と外フレーム20の内面20aとの間には、隙間Cが形成される。また、挿入部材22が断面で細長い台形に形成されていることにより、隙間Cの断面積、より詳細には翼高さ方向Hに略直交する方向への断面積は、翼高さ方向Hの上方から下方に向かって次第に大きくなっている。そして、この隙間Cの最下部には、流入した冷却ガスRGを外部へ排出するための排出口25が形成されている。一方、この隙間Cの最上部は、挿入部材22と外フレーム20との溶接部24によって封止されている。
【0038】
また、
図3及び
図4に示すように、この挿入空間23に隣接する挿入空間23Bに対しては、挿入部材22は挿入空間23Aと上下を逆転させた状態で挿入される。すなわち、この挿入空間23Bに対しては、挿入部材22はその供給用開口221を下方に向けた状態で、且つ、その傾斜板222を外フレーム20の側に向けた状態で上方から挿入される。そして、
図3に示すように、この挿入空間23Bに挿入された挿入部材22も、その供給用開口221の縁部が溶接部24を介して外フレーム20及び区画フレーム21によって支持された状態、すなわち片持ち支持された状態となっている。
【0039】
そして、この挿入空間23Bでも、挿入部材22の傾斜板222と外フレーム20の内面20aとの間に隙間Cが形成される。しかし、この隙間Cの断面積は、挿入空間23Aとは逆に、翼高さ方向Hの下方から上方に向かって次第に大きくなっている。
【0040】
尚、挿入部材22を鋳造等によって外フレーム20と一体的に形成することも可能である。しかし、本実施形態のように挿入部材22を外フレーム20とは別部材として構成すれば、冷却ガスRGの流路として機能する隙間Cを、鋳造等によっては形成が難しい小さな形状であっても、挿入部材22の形状を適宜変化させることで容易に形成することができるという利点がある。
【0041】
次に、第1実施形態に係るガスタービン1のタービン静翼10の作用効果について説明する。
図1に示すガスタービン1が稼動されると、タービン4を構成するタービン静翼10は、燃焼器3で生成された高温の燃焼ガスに曝された状態となる。ここで、翼本体11を構成する挿入部材22は、前述のように外フレーム20及び区画フレーム21によって片持ち支持された状態となっており、外フレーム20に対する相対的な変形が許容されている。従って、翼本体11が高温の燃焼ガスに曝され、外フレーム20と挿入部材22とで熱伸びに差が生じても、挿入部材22が外フレーム20に対して相対的に変形することにより、挿入部材22または外フレーム20に熱応力が発生するのを抑制することができる。これにより、高温環境下においてもガスタービン1を良好に稼動させることができる。
【0042】
そして、このように高温環境下に曝されるタービン静翼10を冷却すべく、圧縮機2で圧縮した圧縮空気をクーラで冷却することによって冷却ガスRGが生成され、この冷却ガスRGがタービン静翼10に供給される。
【0043】
より詳細に説明すると、圧縮空気を冷却して生成した冷却ガスRGは、
図2に示すように、タービン静翼10の外側シュラウド12に設けられた第一供給管172に供給される。この冷却ガスRGは、第一供給管172を通って本体部14の第一冷却室181に流入し、インピンジメントプレート16に形成された冷却孔161から第二冷却室182に向かって下向きに噴射することにより、外側シュラウド12の本体部14をインピンジメント冷却する。
【0044】
そして冷却ガスRGは、本体部14の底面に形成された貫通穴141を通って第二冷却室182から翼本体11の内部に流入し、
図3に示すように、供給用開口221から挿入部材22の内部に流入する。そして冷却ガスRGは、挿入部材22の内部を下方へ流通しながら、傾斜板222の噴出孔223から側方へ噴射することにより、外フレーム20をインピンジメント冷却する。このように、外フレーム20の冷却にインピンジメント冷却方式を用いることにより、対流冷却方式を用いる場合と比較してより効率的な冷却が可能となる。
【0045】
そして、外フレーム20と挿入部材22との間の隙間Cに流入した冷却ガスRGは、外フレーム20の内面20aに沿って下方へ流れることにより、噴出孔223から噴射する流れに対して交差して流れるクロスフローCFを形成する。このクロスフローCFは、下流側すなわち排出口25に近付くほど多くの冷却ガスRGが合流することにより、その流量が次第に増大する。しかし前述のように、外フレーム20と挿入部材22との間の隙間Cは、その断面積が下方すなわちクロスフローCFの下流側に向かって次第に大きくなるように形成されている。従って、クロスフローCFの流量が増大する下流側においても、その流速の増加が抑制される。これにより、噴出孔223から噴射する冷却ガスRGの流れがクロスフローCFに大きく阻害されることによって冷却効率が低下することを、未然に防止することができる。
【0046】
その後、隙間Cの最下流部に到達した冷却ガスRGは、排出口25から外フレーム20の外部へ排出され、内側シュラウド13の第四冷却室192に流入する。そして、この冷却ガスRGは、インピンジメントプレート16に形成された冷却孔161から第三冷却室191に向かって上向きに噴射することにより、内側シュラウド13の本体部14をインピンジメント冷却する。
【0047】
そして冷却ガスRGは、
図3に示すように、内側シュラウド13の上面に形成された貫通穴(不図示)を通って第三冷却室191から翼本体11の内部に流入する。そしてこの冷却ガスRGは、前記挿入部材22とは別の挿入空間23Bに挿入された挿入部材22の内部に、供給用開口221から流入する。
【0048】
その後、冷却ガスRGは、挿入部材22の内部を上方へ流通しながら、傾斜板222の噴出孔223から側方へ噴射することにより、外フレーム20をインピンジメント冷却する。そして、外フレーム20と挿入部材22との間の隙間Cに流入した冷却ガスRGは、外フレーム20の内面20aに沿って上方へ流れる事により、クロスフローCFを形成する。このクロスフローCFは、下流側すなわち排出口25に近付くほどにその流量が次第に増大するが、外フレーム20と挿入部材22との間の隙間Cは、その断面積が上方すなわちクロスフローCFの下流側に向かって次第に大きくなるように形成されている。従って、クロスフローCFは流量が増大する下流側において流速の増加が抑制される。これにより、噴出孔223から噴射する冷却ガスRGの流れがクロスフローCFに大きく阻害されることによって冷却効率が低下することを、未然に防止することができる。
【0049】
その後、隙間Cの最下流部に到達した冷却ガスRGは、排出口25から外フレーム20の外部へ排出され、
図2に示す外側シュラウド12の排出管171を通ってタービン静翼10の外部へ回収される。このように回収した冷却ガスRGを、
図1に示す燃焼器3において予混合燃焼を行うための燃焼用空気として再利用することにより、燃焼に伴う窒素酸化物の排出を低減することができる。尚、本実施形態では冷却ガスRGを回収して再利用する回収式空気冷却を採用したタービン静翼10について説明したが、開放式空気冷却を採用したタービン静翼10として構成することも可能である。この開放式空気冷却とは、冷却ガスRGを回収することなく翼本体11の外部へそのまま放出し、翼本体11の表面に薄い空気のフィルム層を形成することにより、燃焼ガスに触れた翼本体11の温度が上昇することを抑制する方式である。この開放式空気冷却を採用する場合、例えば、翼本体11の内部を外側シュラウド12の側から内側シュラウド13の側へ向かってのみ、冷却ガスRGが流通するように構成してもよい。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るタービン静翼10について説明する。第2実施形態に係るタービン静翼10は、第1実施形態に係るタービン静翼10と比較すると、外フレーム30(外郭部)の構成だけが異なっている。それ以外の構成は第1実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0051】
図5は、第2実施形態の外フレーム30の内面30aを示す概略断面図である。本実施形態では、外フレーム30の内面30aに突出して複数の凸部31が設けられている。これら凸部31は、円錐形状を有し、挿入部材22の傾斜板222に形成された噴出孔223に対向する位置Xにそれぞれ固定されている。
【0052】
次に、第2実施形態に係るタービン静翼10の作用効果について説明する。
図6は、第2実施形態の外フレーム30に対する熱伝達率の分布を示すグラフであって、横軸が噴出孔223の中心に対向する位置Xからの離間距離を、縦軸が外フレーム30に対する熱伝達率をそれぞれ示している。外フレーム30の内面30aに凸部31が設けられていない場合、
図6に破線で示すように、冷却ガスRGが最も多く吹き付けられる位置、すなわち噴出孔223の中心に対向する位置Xにおいて、熱伝達率が最も高くなっている。そして、その位置から離間するに従って、熱伝達率は徐々に低くなる傾向を有している。
【0053】
しかし、本実施形態では外フレーム30の内面30aに凸部31を設けたことにより、噴出孔223に対向する位置Xでは、噴出孔223から噴射する冷却ガスRGの流れが凸部31によって阻害されることにより、
図6に実線で示すように、当該箇所では外フレーム30への熱伝達率が相対的に低くなる。その結果、外フレーム30は温度分布が均一化することに起因して熱応力が低減する。これにより、外フレーム30を所定の目標温度まで冷却する際に、必要な冷却ガスRGの量が減少することにより、または圧力損失が低減することにより、冷却効率が向上する。
【0054】
尚、本実施形態では凸部31を外フレーム30とは別部材としたが、凸部31を外フレーム30と一体的に形成してもよい。また凸部31は、噴出孔223に対向して設けられていれば、その材質や形状等は特に限定されない。ここで、
図7は、凸部31の変形例を示す概略斜視図である。
図7(a)に示す本実施形態の円錐形状の凸部31に代えて、
図7(b)に示す四角錐形状の凸部32や、
図7(c)に示す台形柱形状の凸部33を採用することも可能である。
【0055】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るタービン静翼10について説明する。第3実施形態に係るタービン静翼10も、第1実施形態に係るタービン静翼10と比較すると、外フレーム40(外郭部)の構成だけが異なっている。それ以外の構成は第1実施形態と同じであるため、同じ符号を用い、ここでは説明を省略する。
【0056】
図8は、第3実施形態の外フレーム40の内面40aを示す概略断面図である。本実施形態では、外フレーム40の内面40aに突出して複数の乱流促進リブ41が設けられている。これら乱流促進リブ41は、平面視で略円環形状を有し、挿入部材22の傾斜板222に形成された噴出孔223に対向する位置Xから離間するようにして、すなわち隣接する噴出孔223の中間位置Yにそれぞれ固定されている。
【0057】
次に、第3実施形態に係るタービン静翼10の作用効果について説明する。
図9は、第3実施形態の外フレーム40に対する熱伝達率の分布を示すグラフであって、横軸が噴出孔223の中心に対向する位置Xからの離間距離を、縦軸が外フレーム40に対する熱伝達率をそれぞれ示している。外フレーム40の内面40aに乱流促進リブ41が設けられていない場合、第2実施形態の
図6と同様に、
図9に破線で示す熱伝達率は、噴出孔223の中心に対向する位置Xにおいて最も高くなっており、その位置から離間するに従って徐々に低くなる傾向を有している。そして熱伝達率は、冷却ガスRGが吹き付けられる量が最も少ない位置、すなわち隣接する噴出孔223の中間位置Yにおいて最も低くなっている。
【0058】
しかし本実施形態では、隣接する噴出孔223の中間位置Yに設けた乱流促進リブ41によって冷却ガスRGについて乱流RFの発生が促進されることにより、
図9に実線で示すように、中間位置Yにおける熱伝達率が相対的に高くなる。その結果、外フレーム40は温度分布が均一化することに起因して熱応力が低減する。これにより、外フレーム40を所定の目標温度まで冷却する際に、必要な冷却ガスRGの量が減少することにより、または圧力損失が低減することにより、冷却効率が向上する。
【0059】
尚、本実施形態では乱流促進リブ41を外フレーム40とは別部材としたが、乱流促進リブ41を外フレーム40と一体的に形成してもよい。また乱流促進リブ41は、隣接する噴出孔223の中間位置Yに設けられていれば、その材質や形状等は特に限定されない。ここで、
図10から
図15は、乱流促進リブ41の変形例を示す図であって、(a)は概略平面図、(b)は概略斜視図である。乱流促進リブ41は、本実施形態のような平面視で略円環形状に限られず、平面視で略直線形状に形成することも可能である。
【0060】
そして乱流促進リブ41の配置の仕方としては、
図10(a)及び(b)に示すように、隣接する噴出孔223(図に破線で示す)の中間位置Yを通り、クロスフローCFの流れ(図に矢印で示す)に略直交する方向へ延びるように乱流促進リブ42を配置してもよい。また、
図11(a)及び(b)に示すように、クロスフローCFの流れに略平行する方向へ延びるように乱流促進リブ43を配置してもよい。更に、
図12(a)及び(b)に示すように、クロスフローCFの流れに略直交する方向と略平行する方向の両方へ延びるように乱流促進リブ44を格子状に配置してもよい。
【0061】
また、
図13(a)及び(b)に示すように、隣接する噴出孔223の中間位置Yを通り、クロスフローCFの流れに対して所定の角度をなして斜めに延びるように乱流促進リブ45を配置してもよい。更に、
図14(a)及び(b)に示すように、隣接する噴出孔223の中間位置Yを2本の乱流促進リブ46が通り、クロスフローCFの流れに略直交する方向へそれぞれ延びるように(或いは平行する方向へ延びるように)乱流促進リブ46を配置してもよい。また、
図15(a)及び(b)に示すように、隣接する噴出孔223の中間位置Yを2本の乱流促進リブ47が通り、クロスフローCFの流れに対して所定の角度をなしてそれぞれ斜めに延びるように乱流促進リブ47を配置してもよい。
【0062】
また、第2実施形態の凸部31と第3実施形態の乱流促進リブ41〜47とを並存させることも可能である。すなわち、図に詳細は示さないが、噴出孔223それぞれに対向する位置Xに凸部31を設けるとともに、隣接する噴出孔223の中間位置Yに乱流促進リブ41〜47を設けてもよい。
【0063】
また、以上説明した各実施形態では冷却ガスRGの排出方向を翼高さ方向Hとしたが、これに限られず冷却ガスRGの排出方向は翼本体11の内部における任意の方向とすることが可能である。しかし、本実施形態のように冷却ガスRGの排出方向を翼高さ方向Hとした場合、排出方向を他の方向とした場合と比較して、噴出孔223から排出口25までの距離が長くなるため、クロスフローCFの下流側において流量が増大しやすい。従って、クロスフローCFの流速が増加するのを抑制する効果がより有効に発揮される。
【0064】
また、本発明に係る回転機械の翼体は、各実施形態で説明したガスタービン1のタービン静翼10に限られず、タービン動翼7や、高温の作動流体に曝されるその他の翼体として構成することも可能である。
【0065】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。