(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791422
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】部品実装機および部品実装ライン
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-174840(P2011-174840)
(22)【出願日】2011年8月10日
(65)【公開番号】特開2013-38314(P2013-38314A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】小林 仁志
(72)【発明者】
【氏名】西尾 守
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−21938(JP,A)
【文献】
特開平11−340691(JP,A)
【文献】
特許第4076287(JP,B2)
【文献】
特開2007−61699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送経路に沿って部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、複数の部品を収容する部品収容装置が複数個脱着可能に取り付けられる部品供給装置と、前記部品供給装置の前記部品収容装置から前記部品を採取して位置決めされた前記基板に装着する部品移載装置とを備える部品実装機であって、
前記部品供給装置の前記部品実装位置よりも搬入側の一部の部品収容装置に代えて脱着可能に取り付けられ、前記基板搬送装置の前記搬送経路の上方に延在し、前記基板搬送装置によって搬入される移動途中の基板に付された基板情報を撮像して読み取るカメラユニットをさらに備える部品実装機。
【請求項2】
請求項1において、前記カメラユニットは、前記搬送経路と交差する基板幅方向に多数の画素を配置し、前記基板幅方向の走査および撮像を繰り返すラインスキャンカメラを有する部品実装機。
【請求項3】
請求項1または2において、前記移動途中の基板に付された基板情報は、部品実装後に複数の小片基板に分離されるマルチボード基板に付されたパネルIDコード、前記マルチボード基板の各前記小片基板に付されたボードIDコード、および前記マルチボード基板の各前記小片基板に必要に応じて付されたボードスキップマークの少なくともひとつを含む部品実装機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記部品供給装置の前記複数個の部品収容装置はそれぞれ、前記部品供給装置の本体部に接続されて電源および制御情報の少なくとも一部を受け渡すコネクタを有しており、
前記カメラユニットは、前記部品収容装置の前記コネクタと互換性のあるコネクタを有する部品実装機。
【請求項5】
基板を搬送経路に沿って部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、複数の部品を収容する部品収容装置が複数個脱着可能に取り付けられる部品供給装置と、前記部品供給装置の前記部品収容装置から前記部品を採取して位置決めされた前記基板に装着する部品移載装置とを備える部品実装機が複数段直列に配置された部品実装ラインであって、
ライン先頭の部品実装機を請求項1〜4のいずれか一項に記載の部品実装機とし、
前記ライン先頭の部品実装機は、前記カメラユニットによって読み取った前記基板情報を次段以降の部品実装機に通知する部品実装ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装機および部品実装ラインに関し、より詳細には、基板に付された基板情報を撮像して読み取るカメラユニットを備えた構成に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が実装された基板を生産する設備として、はんだ印刷機、部品実装機、リフロー機、基板検査機などがあり、これらを基板搬送装置で連結して基板生産ラインを構築することが一般的になっている。さらに、モジュール化された複数台の部品実装機を直列に配置して部品実装ラインを構成する場合も多い。この種の部品実装機では、搬入した基板の種類を特定し、また位置決めされた基板の実際の位置を検出して位置誤差の補正を行うために基板カメラを用いる。基板カメラは、実装ヘッドに設けられて移動可能とされ、位置決めされた基板の一部の領域を撮像し、付されたIDコードや位置マーカなどの基板情報を読み取る機能を有している。
【0003】
ここで、複数の小片基板が当初一体的に結合され部品実装後に分離されるマルチボード基板を基板生産ラインで生産する場合がある。このとき、基板カメラは、マルチボード基板に付されたパネルIDコード、各小片基板に付されたボードIDコード、および各小片基板に必要に応じて付されたボードスキップマークなど多くの基板情報を読み取る必要が生じ、撮像に時間を要して生産効率が低下する。このような生産効率の低下を抑制する技術が特許文献1および2に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された表面実装システムの制御装置は、上流側の作業機に基板の種類データを検出する検出手段を設けるとともに、検出された種類データを基板の搬送に対応させて下流側の作業機に転送する転送手段を備えている。さらに、請求項2には、複合基板(マルチボード基板)を構成する複数の単位基板(小片基板)のうち品質不良の単位基板に付されるバッドマーク(ボードスキップマーク)を上流側の作業機で検出して下流側の作業機に転送する構成が開示されている。この構成で、単一の検出手段により検出された基板の種類データやバッドマークに応じて、各作業機の駆動部をそれぞれ適正に制御できるとともに、検出所要時間を短くして作業効率を著しく向上できる、とされている。
【0005】
また、特許文献2に開示された部品装着装置は、多面取り基板(マルチボード基板)上の基板部不良マーク(ボードスキップマーク)の有無を検出する検出手段を有し、多面取り基板搬入時に前記検出手段を制御することを特徴としている。これにより、多面取り基板搬入時に基板部不良マークの検出を行い、検出動作の時間短縮が図れる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4076287号公報
【特許文献2】特開2005−64026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示された種類データやバッドマークの検出手段あるいは特許文献2に開示された基板部不良マークの検出手段を設けても、位置決めされた基板の位置を確認する必要があるため基板カメラを無くすことはできない。また、マルチボード基板では基板カメラで撮像し読み取る基板情報が多数あるので生産効率が低下するが、一般の基板ではIDコードと位置マーカを一緒に撮像すれば足りるので生産効率は殆ど低下しない。したがって、特許文献1および2の各検出手段は、マルチボード基板のみを生産する専用の基板生産ラインには効果的であっても、汎用の基板生産ラインでは機能を有効利用できる機会が少なく効果的でない。例えば、電子機器の受託生産(EMS=Electronics Manufacturing Service)を行うEMSメーカーは、多種多様な基板の生産を受託している。このEMSメーカーで、稀にマルチボード基板の生産を受託する場合に備えて、基板カメラとは別の検出手段を基板生産ライン中に常駐させるのは設置スペースや経済性の面で得策でない。
【0008】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、マルチボード基板を生産する際に生産効率を低下させずに確実に基板情報を読み取ることができ、設置スペースや経済性の面で優れた部品実装機および部品実装ラインを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に係る部品実装機の発明は、基板を搬送経路に沿って部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、複数の部品を収容する部品収容装置が複数個脱着可能に取り付けられる部品供給装置と、前記部品供給装置の前記部品収容装置から前記部品を採取して位置決めされた前記基板に装着する部品移載装置とを備える部品実装機であって、前記部品供給装置の前記部品実装位置よりも搬入側の一部の部品収容装置に代えて脱着可能に取り付けられ、前記基板搬送装置の前記搬送経路の上方に延在し、前記基板搬送装置によって搬入される移動途中の基板に付された基板情報を撮像して読み取るカメラユニットをさらに備える。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記カメラユニットは、前記搬送経路と交差する基板幅方向に多数の画素を配置し、前記基板幅方向の走査および撮像を繰り返すラインスキャンカメラを有する。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2において、前記移動途中の基板に付された基板情報は、部品実装後に複数の小片基板に分離されるマルチボード基板に付されたパネルIDコード、前記マルチボード基板の各前記小片基板に付されたボードIDコード、および前記マルチボード基板の各前記小片基板に必要に応じて付されたボードスキップマークの少なくともひとつを含む。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記部品供給装置の前記複数個の部品収容装置はそれぞれ、前記部品供給装置の本体部に接続されて電源および制御情報の少なくとも一部を受け渡すコネクタを有しており、前記カメラユニットは、前記部品収容装置の前記コネクタと互換性のあるコネクタを有する。
【0013】
請求項5に係る部品実装ラインの発明は、基板を搬送経路に沿って部品実装位置に搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、複数の部品を収容する部品収容装置が複数個脱着可能に取り付けられる部品供給装置と、前記部品供給装置の前記部品収容装置から前記部品を採取して位置決めされた前記基板に装着する部品移載装置とを備える部品実装機が複数段直列に配置された部品実装ラインであって、ライン先頭の部品実装機を請求項1〜4のいずれか一項に記載の部品実装機とし、前記ライン先頭の部品実装機は、前記カメラユニットによって読み取った前記基板情報を次段以降の部品実装機に通知する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る部品実装機の発明では、基板搬送装置によって搬入される移動途中の基板に付された基板情報をカメラユニットが撮像する。このとき、撮像のために基板を一旦停止させる必要はなく、移動速度を減速する必要もない。したがって、基板情報の撮像および読み取りに要する時間は実質的にゼロであり、生産効率が低下しない。また、カメラユニットは、部品供給装置の一部の部品収容装置に代えて脱着可能に取り付けられるので、専用の設置スペースを必要としない。さらに、常駐でなく必要時にのみ取り付ければよいので、1台のカメラユニットを事業所内の複数の部品実装ラインで共用でき、経済性の面で優れる。なお、カメラユニット不要時には、部品収容装置を元通りに取り付けることができ、供給する部品の種類数を減らさなくて済む。
【0015】
請求項2に係る発明では、カメラユニットは、基板幅方向の走査および撮像を繰り返すラインスキャンカメラを有し、移動途中の基板がカメラユニットに対して好都合に相対移動するので、基板の上面全体を多数回にわけて撮像できる。したがって、基板情報が基板上のどの位置に付されていても確実に撮像でき、撮像および読み取りに要する時間は実質的にゼロとなって、生産効率が低下しない。
【0016】
請求項3に係る発明では、基板情報は、マルチボード基板に付されたパネルIDコード、マルチボード基板の各小片基板に付されたボードIDコード、および各小片基板に必要に応じて付されたボードスキップマークの少なくともひとつを含んでいる。マルチボード基板は多数の基板情報を有しており、基板が部品実装位置に位置決めされてから動作する基板カメラで撮像していては生産効率の低下が著しい。これに対し、移動途中のマルチボード基板に付された多数の基板情報を撮像するカメラユニットは、基板カメラに比較して生産効率を低下させない効果が顕著である。
【0017】
請求項4に係る発明では、請求項1〜3のいずれか一項において、カメラユニットは、部品収容装置のコネクタと互換性のあるコネクタを有しており、部品供給装置の本体部に接続できる。したがって、電源供給系統および制御系統の少なくとも一部を共用化して、装置構成を簡素化できる。
【0018】
請求項5に係る部品実装ラインの発明では、ライン先頭の部品実装機を請求項1〜4のいずれか一項に記載の部品実装機とし、ライン先頭の部品実装機は、カメラユニットによって読み取った基板情報を次段以降の部品実装機に通知する。したがって、ライン先頭の部品実装機で読み取った基板情報を、基板の搬送に対応させて下流側の部品実装機に順次通知でき、部品実装ライン全体の生産効率が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態の部品実装機をライン先頭に配置した実施形態の部品実装ラインを模式的に説明する図である。
【
図2】部品実装機および部品実装ラインの実際の構造を示す斜視図である。
【
図3】ライン先頭の部品実装機の部品供給装置にカメラユニットを取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図4】実施形態の部品実装機の動作を例示説明する図であり、マルチボード基板に付された基板情報をカメラユニットで撮像する状況を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態の部品実装機2および部品実装ライン1について、
図1〜
図4を参考にして説明する。
図1は、実施形態の部品実装機2をライン先頭に配置した実施形態の部品実装ライン1を模式的に説明する図であり、(1)は部品実装ライン1全体の斜視図、(2)は(1)の矢印Z方向から見たライン先頭の部品実装機2の平面図である。
【0021】
部品実装ライン1は、
図1の(1)に示されるように、2台の同一構造の部品実装機を搭載したシステムベース11を2個隣接して配置し構成する。したがって、部品実装ライン1は、合計4台の同一構造の部品実装機2、2A、2B、2Cが直列に配置されて構成される。以降では、ライン先頭の部品実装機2を例にして説明する。
図1の(2)に示されるように、部品実装機2は、基板搬送装置3、部品供給装置4、部品カメラ6、図には見えない部品移載装置5および制御コンピュータ7などが基台9に組み付けられて構成されている。図中のXY座標軸に示されるように、部品実装機2の水平幅方向をX軸方向、部品実装機2の水平長手方向をY軸方向とする。
【0022】
基板搬送装置3は、第1搬送装置31および第2搬送装置32が並設された、いわゆるダブルコンベアタイプの搬送装置である。第1搬送装置31および第2搬送装置32は、X軸方向に延在する搬送経路を有し、搬送経路の中央付近に部品実装位置が設定されている。
図1の(2)には、第1搬送装置31で基板K1を搬入しつつ(矢印A1参照)、第2搬送装置32で基板K2を搬出している(矢印A2参照)状況が例示されている。基板K1、K2の搬送経路に沿う方向を基板長さ方向、搬送経路と交差する方向を基板幅方向と呼ぶ。
【0023】
部品供給装置4はフィーダ方式の装置であり、部品収容装置に相当するカセット式フィーダ41を最大で20個までX軸方向に並べて列設できるようになっている。部品供給装置4の本体部45はX軸方向に並ぶ20箇所のスロット46を有し(
図3参照)、図の例では10箇所のスロット46にそれぞれカセット式フィーダ41が取り付けられている。部品カメラ6は、部品供給装置4と第1搬送装置31との間に配置されている。
【0024】
ライン先頭の部品実装機2に限り、カメラユニット8を脱着可能に取り付けて用いる。カメラユニット8は、部品供給装置4の部品実装位置よりも搬入側の一部のカセット式フィーダ41に代えて脱着可能に取り付けられる。本実施形態では、カメラユニット8は、部品供給装置4の本体部45の最も搬入側の4箇所のスロット46を使用して取り付けられている(
図3も参照)。カメラユニット8は、基板搬送装置3の2列の搬送経路の上方に延在し、基板搬送装置3によって搬入される移動途中の基板K1に付された基板情報を撮像して読み取るものである。
【0025】
次に、実施形態の部品実装機の実際の構造について説明する。
図2は、部品実装機2Cおよび部品実装ライン1の実際の構造を示す斜視図である。ここでは、4台の同一構造の部品実装機2、2A、2B、2Cうちライン後尾の部品実装機2Cを主にして説明する。部品実装機2Cの基板搬送装置3は、部品実装機2Cの長手方向(Y方向)の中央付近に配設されている。基板搬送装置3の第1搬送装置31は、基台9上にX軸方向に平行に並設された一対のガイドレール、およびガイドレールにそれぞれ案内され基板を載置して搬送する一対のコンベアベルト(図示省略)などにより構成されている。また、第1搬送装置31には、部品実装位置まで搬送された基板を基台9側から押し上げて位置決めするクランプ装置(図示省略)が設けられている。第2搬送装置32も、第1搬送装置31と同様に構成されている。
【0026】
部品供給装置4は、部品実装機2Cの長手方向の前部(
図2の左前側)に設けられている。部品供給装置4の本体部45のスロット46に脱着可能に取り付けられるカセット式フィーダ41は、フィーダ本体42と、フィーダ本体42の後部(部品実装機2の前側)に回転可能かつ脱着可能に装着された供給リール43と、フィーダ本体42の先端(部品実装機2の中央寄り)に設けられた部品供給部44とを備えている。供給リール43は部品を供給する媒体であり、所定個数の部品を一定の間隔で保持したキャリアテープ(図示省略)が巻回されている。このキャリアテープの先端が部品供給部44まで引き出され、キャリアテープごとに異なる部品が供給される。
【0027】
部品移載装置5は、X軸方向およびY軸方向に移動可能ないわゆるXYロボットタイプの装置であり、部品実装機2Cの長手方向の後部(
図2の右奥側)から前部の部品供給装置4の上方にかけて配設されている。部品移載装置5は、ヘッド駆動機構51や実装ヘッド52、吸着ノズル53などにより構成されている。ヘッド駆動機構51は、実装ヘッド52および吸着ノズル53をX軸方向およびY軸方向に駆動する。
【0028】
部品カメラ6は、部品移載装置5の吸着ノズル53が吸着した部品の良否、および部品吸着状態の良否を判定する装置である。部品カメラ6は、部品供給装置4の部品供給部44と第1搬送装置31との間の基台9上に配設されている。
【0029】
制御コンピュータ7は、上部のカバー91の前側上部に配設されている。制御コンピュータ7は、基板搬送装置3、部品供給装置4、部品移載装置5、および部品カメラ6と制御線によって連携されており、適宜情報を交換しつつ指令を発する。また、各部品実装機2、2A〜2Cの制御コンピュータ7同士は、直接的にあるいは他の制御装置を介して間接的に情報交換するようになっている。さらに、ライン先頭の部品実装機2では、制御コンピュータ7は、後述するように部品供給装置4の本体部45を介してカメラユニット8と連携されている。
【0030】
図3は、ライン先頭の部品実装機2の部品供給装置4にカメラユニット8を取り付けた状態を示す斜視図である。図には、全てのカセット式フィーダ41を取り外し、最も搬入側の4箇所のスロット46にカメラユニット8を取り付けた状態が例示されている。部品供給装置4の本体部45は、上面に平行に形成された20箇所のスロット46を有している。本体部45の前側(部品実装機2の中央寄り)は上方に折れ曲がって起立部47になっている。起立部47のスロット46に対向する側面には、各スロット46の位置にそれぞれ対応して20個の雌コネクタ48が設けられている。雌コネクタ48は、カセット式フィーダ41に電源の供給および制御情報の受け渡しを行うためのものである。さらに、起立部47の各雌コネクタ48の上下にそれぞれ位置決め孔49、4Aが穿設されている。
【0031】
一方、カセット式フィーダ41は、フィーダ本体42の前面に雄コネクタおよびその上下に配設された位置決めピンを有している。そして、カセット式フィーダ41をスロット46に摺動させながら本体部45の上面に取り付けると、上下の位置決めピンがそれぞれ位置決め孔49、4Aに嵌入し、雄コネクタが雌コネクタ48に嵌合するようになっている。雄コネクタと雌コネクタ48との嵌合によって、カセット式フィーダ41に電源が供給され、さらにはカセット式フィーダ41と制御コンピュータ7との間の制御情報の受け渡しが行われる。
【0032】
カメラユニット8は、ユニットベース81、2つのカメラベース82、83、および4台のラインスキャンカメラ84A〜84Dなどにより構成されている。
図3に示されるように、ユニットベース81は、スロット46の4箇所分に相当する幅の部材が3箇所で折れ曲がった形状であり、右手前側から順番に固定取付部811、一側橋脚部812、橋渡し部813、他側橋脚部814となっている。
【0033】
固定取付部811は水平方向に延在し、その下面にはスロット46に係合する係合部(図示省略)が形成されている。固定取付部811の一端から一側橋脚部812が立ち上がっている。一側橋脚部812は、部品供給装置4の起立部47と対向する側面に4個の雄コネクタ(図示省略)を有している。一側橋脚部812の雄コネクタは、カセット式フィーダ41が有する雄コネクタと同じ形状で互換性を有している。一側橋脚部812の上端から、橋渡し部813が水平に延在している。橋渡し部813は、起立部47と第1および第2基板搬送装置31、32の上方を横断して部品実装機2の後方側に達している。橋渡し部813の延在した先端から、他側橋脚部814が立ち下がっている。他側橋脚部814の下端は基台9に当接している。
【0034】
橋渡し部813の下面の第1および第2基板搬送装置31、32の搬送経路に対向する位置に、第1および第2カメラベース82、83が設けられている。第1カメラベース82の下面に、2台のラインスキャンカメラ84A、84Bが搬送経路と交差する基板幅方向に並んで下向きに設けられている。ラインスキャンカメラ84A、84Bは、基板幅方向に多数の画素を配置し、基板幅方向の走査および撮像を繰り返して行うものである。図示されるように、ラインスキャンカメラ84A、84Bの撮像視野は視野角θで基板幅方向に拡がっている。そして、2台のラインスキャンカメラ84A、84Bの撮像視野が基板幅方向でオーバーラップして、基板K1の幅方向全体をカバーするようになっている。これにより、2台のラインスキャンカメラ84A、84Bが基板幅方向に走査および撮像を繰り返すと、移動途中の基板K1が好都合に相対移動するので、基板K1の上面全体を多数回にわけて撮像できる。
【0035】
第2カメラベース83の下面にも、同様に2台のラインスキャンカメラ84C、84Dが並んで下向きに設けられている。各ラインスキャンカメラ84A〜84Dの電源線および制御線は、橋渡し部813の内部ダクトを経由して一側橋脚部812の4個の雄コネクタにそれぞれ接続されている。一側橋脚部812の雄コネクタは本体部45の雌コネクタ48に嵌合しており、各ラインスキャンカメラ84A〜84Dに電源が供給される。さらに、各ラインスキャンカメラ84A〜84Dと制御コンピュータ7との制御信号の受け渡しや、カメラ84A〜84Dから制御コンピュータ7への画像データの出力が行われる。
【0036】
なお、ラインスキャンカメラを搬送経路から比較的離して配置でき、視野角θの撮像視野が基板K1の幅方向全体をカバーできるようであれば、カメラの台数は搬送経路ごとに1台とすることができる。また、基板情報の位置が基板K1の幅方向の一部の範囲に留まる場合には、当該の範囲が視野角θに入るようにラインスキャンカメラを配置する。
【0037】
部品供給装置4の本体部45の残る16箇所のスロット46には、それぞれカセット式フィーダ41を取り付けることができる。つまり、部品供給装置4は、カメラユニット8が取り付けられた状態でも、最大で16個のカセット式フィーダ41から部品を供給することができる。なお、カメラユニット8不要時には搬入側の4箇所のスロット46にもカセット式フィーダ41取り付けることで、部品供給装置4は最大で20種類の部品を供給することができる。
【0038】
次に、上述のように構成された実施形態の部品実装機2および部品実装ライン1の動作について説明する。
図4は、実施形態の部品実装機2の動作を例示説明する図であり、マルチボード基板MKに付された基板情報をカメラユニット8で撮像する状況を例示している。
図4の例で、マルチボード基板MKは、部品実装後に分離される小片基板SKが4×5に配置されているが、部品実装ライン1内では1枚の基板として扱われる。20枚の各小片基板SKにはそれぞれボードIDコードBIDが付されており、かつ必要に応じてボードスキップマークBSMが付されている。ボードスキップマークBSMは、
図4に斜線を付した丸印で示され、図の例では5枚の小片基板SKに付されており、何らかの原因により当該の小片基板SKを使用できないことを意味している。一方、残る15枚の小片基板SKの白の丸印は、ボードスキップマークBSMが付されていないことを示し、当該の小片基板SKを使用できることを意味している。さらに、左下の小片基板SKには、マルチボード基板MKを特定するためのパネルIDコードPIDが付されている。
【0039】
したがって、このマルチボード基板MKに部品実装ライン1で部品実装を行う際に、合計41個の基板情報を撮像して読み取る必要がある。ライン先頭の部品実装機2では、矢印Gで示されるようにマルチボード基板MKを搬入するときに、カメラユニット8のラインスキャンカメラ84A〜84Dが動作して移動途中のマルチボード基板MKの上面全体を撮像する。これにより、合計41個の基板情報を読み取ることができる。さらに、ライン先頭の部品実装機2は、読み取った基板情報をマルチボード基板MKの搬送に対応させて下流側の部品実装機2A、2B、2Cに順次通知する。したがって、下流側の部品実装機2A、2B、2Cは、合計41個の基板情報を読み取ることなく、マルチボード基板MKに対して適正な部品実装動作を行える。例えば、ボードスキップマークBSMが付された小片基板SKに対して部品実装動作を省略する。
【0040】
実施形態の部品実装機2によれば、基板搬送装置3によって搬入される移動途中の基板K1、MKの上面全体をカメラユニット8のラインスキャンカメラ84A〜84Dで撮像できる。したがって、基板情報が基板K1、MK上のどの位置に付されていても確実に撮像できる。また、撮像のために基板K1、MKを一旦停止させる必要はなく、移動速度を減速する必要もないので、撮像および読み取りに要する時間は実質的にゼロとなって、生産効率が低下しない。特に、マルチボード基板MKは多数の基板情報を有しており、従来の基板カメラによる撮像に比較して生産効率を低下させない効果が顕著である。
【0041】
また、カメラユニット8は、部品供給装置4の一部のカセット式フィーダ41に代えて脱着可能に取り付けられるので、専用の設置スペースを必要としない。さらに、常駐でなく必要時にのみ取り付ければよいので、1台のカメラユニット8を事業所内の複数の部品実装ラインで共用でき、経済性の面で優れる。なお、カメラユニット8不要時には、当該のスロット46にカセット式フィーダ41を元通りに取り付けることができ、供給する部品の種類数を減らさなくて済む。
【0042】
さらに、カメラユニット8は、カセット式フィーダ41の雄コネクタと互換性のある雄コネクタを有しており、部品供給装置4の本体部45の雌コネクタ48に接続できる。したがって、電源供給系統および制御系統を共用化して、装置構成を簡素化できる。
【0043】
実施形態の部品実装ライン1によれば、ライン先頭の部品実装機2は、カメラユニット8によって読み取った基板情報を基板K1、MKの搬送に対応させて下流側の部品実装機2A、2B、2Cに順次通知する。したがって、下流側の部品実装機2A、2B、2Cは、基板情報を読み取ることなく適正な部品実装動作を行え、部品実装ライン1全体の生産効率が低下しない。
【0044】
なお、本発明は、必ずしもマルチボード基板MKのみを対象とするものではなく、通常の基板でも基板情報の種類が多い場合には有効である。さらに、基板搬送装置3はダブルコンベアタイプに限定されずにシングルコンベアタイプでもよく、ラインスキャンカメラの台数や構造も適宜変更できる。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:部品実装ライン
2、2A、2B、2C:部品実装機
3:基板搬送装置 31:第1搬送装置 32:第2搬送装置
4:部品供給装置
41:カセット式フィーダ(部品収容装置)
42:フィーダ本体 43:供給リール 44:部品供給部
45:本体部 46:スロット 47:起立部
48:雌コネクタ 49、4A:位置決め孔
5:部品移載装置
51:ヘッド駆動機構 52:実装ヘッド 53:吸着ノズル
6:部品カメラ
7:制御コンピュータ
8:カメラユニット
81:ユニットベース 82、83:カメラベース
84A〜84D:ラインスキャンカメラ
9:基台 91:カバー
K1、K2:基板
MK:マルチボード基板 SK:小片基板
BID:ボードIDコード BSM:ボードスキップマーク
PID:パネルIDコード