(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電子ピアノの鍵スイッチとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この鍵スイッチは、鍵の動きを3段階で検出する3接点タイプのものであり、鍵の下面に固定されたドーム状のゴムスイッチと、その下側に配置されたスイッチ基板を備えている。ゴムスイッチには、その天壁から垂下する円柱状の第1〜第3スイッチ素子が、前後方向(鍵の長さ方向)に並んだ状態で設けられている。これらの第1〜第3スイッチ素子のうち、第1スイッチ素子が最も長く、第3スイッチ素子が最も短くなっており、それらの下端部には第1〜第3可動接点が形成されている。一方、スイッチ基板には、第1〜第3可動接点にそれぞれ対向するように、第1〜第3固定接点が並設されている。
【0003】
この鍵スイッチでは、押鍵時に鍵が回動すると、ゴムスイッチが、鍵で押圧され、圧縮変形するのに伴い、第1〜第3可動接点が第1〜第3固定接点に順次、接触することで、ON信号がそれぞれ出力される。
【0004】
図10は、従来における一般的な3接点タイプの固定接点の配置を示している。同図に示すように、第1〜第3固定接点cs1〜cs3はそれぞれ、グラウンドへの接地などにより、互いに同一の基準電位を有するコモン接点(ハッチングを付した接点)と、基準電位と異なる電位を有する非コモン接点(白抜きの接点)によって構成されている。これらのコモン接点および非コモン接点は、スイッチ基板にプリントされたカーボンなどから成り、前後方向(同図の左右方向)に直線的に延びる矩形状に形成されるとともに、左右方向(同図の上下方向)に互いに近接した状態で対向している。また、3つのコモン接点および3つの非コモン接点はそれぞれ、前後方向に互いに近接した状態で並設されている。
【0005】
そして、押鍵時に、カーボンなどから成る第1〜第3可動接点cm1〜cm3が、第1〜第3固定接点cs1〜cs3のコモン接点および非コモン接点にまたがるように接触し、コモン/非コモン接点が導通することによって、ON信号が出力される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した構成の従来の鍵スイッチでは、押圧されたゴムスイッチの動作(変形)のばらつきや、スイッチ基板に固定接点をプリントする際の位置ずれなどによって、固定接点に接触する際の、固定接点に対する可動接点の相対的な位置(以下「可動接点の接触位置」という)が、前後方向(鍵の長さ方向)にずれやすい。これに対し、従来の鍵スイッチでは、第1〜第3固定接点cs1〜cs3の矩形状の3つのコモン接点および非コモン接点が、前後方向に互いに近接した状態で配置されている。
【0008】
このため、可動接点の接触位置が前後方向にずれ、可動接点が本来の固定接点から少しでもはみ出ると、可動接点が隣の固定接点に誤って接触しやすく、誤検出を招くおそれがある。例えば、
図10に示すように、第1可動接点cm1が、本来の第1固定接点cs1に対応する位置(実線位置)から第2固定接点cs2側にはみ出た場合(破線位置)には、第2固定接点cs2の非コモン接点に接触することで、第2固定接点cs2がON状態であることを表すON信号が誤って出力されてしまう。
【0009】
また、鍵スイッチのON信号の安定化を図るとともに発熱量を抑制するためには、カーボンなどから成る可動接点の電気的抵抗がより低いことが好ましく、そのためには、例えば可動接点の径を大きくすることが有効である。しかし、従来の鍵スイッチでは、可動接点の径が大きくなると、その接触位置のずれに伴って隣の固定接点に接触する可能性が高くなるため、可動接点の径を制限せざるを得ない。
【0010】
さらに、上述した不具合を解消するために、例えば、各固定接点のコモン接点および非コモン接点の長さを大きくすることや、固定接点間の間隔を大きくすることが考えられる。しかし、3接点タイプの鍵スイッチは、2接点タイプのものと比較し、全体長さがもともと大きいので、上記のようにすると、鍵スイッチの全体長さがさらに増大し、大型化してしまう。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、鍵スイッチが3接点タイプの場合において、鍵スイッチを大型化することなく、可動接点のずれの許容範囲を拡大でき、それにより、誤動作を抑制し、押鍵情報をより精度良く検出することができる電子ピアノの鍵スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、鍵
と鍵の押鍵に伴って回動するハンマー
との一方である回動体の動きを、押鍵情報として検出する電子ピアノの鍵スイッチであって、回動体の長さ方向に沿って第1、第2および第3の固定接点が並設された基板を備え、第1〜第3の固定接点の各々は、回動体の長さ方向と直交する直交方向に互いに所定の間隔を隔てて対向するように配置された、所定の基準電位を有するコモン接点および基準電位と異なる電位を有する非コモン接点によって構成され、隣り合う各2つの固定接点において、少なくとも1つのコモン接点は、2つの非コモン接点の間に入り込むように直交方向に延びる延出部を有し、基板に取り付けられ、鍵の離鍵状態において、回動体に対向する弾性のスイッチ本体と、スイッチ本体に、第1〜第3の固定接点にそれぞれ対向するように並設され、押鍵時に回動する回動体でスイッチ本体が押圧されるのに伴い、第1〜第3の固定接点のコモン接点および非コモン接点に順次、接触することによって、押鍵情報を表す信号を出力するための第1、第2および第3の可動接点と、をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
この電子ピアノの鍵スイッチによれば、基板に、鍵およびハンマーの一方である回動体の長さ方向に沿って、第1〜第3固定接点が並設されている。第1〜第3固定接点の各々は、所定の基準電位を有するコモン接点と、この基準電位と異なる電位を有する非コモン接点によって構成され、各コモン接点および非コモン接点は、回動体の長さ方向と直交する直交方向に互いに所定の間隔を隔てて対向している。
【0014】
鍵が押鍵されるのに伴い、回動体が回動すると、弾性のスイッチ本体が回動体によって押圧され、圧縮変形する。このスイッチ本体の圧縮変形により、スイッチ本体に並設された第1〜第3可動接点が、第1〜第3固定接点のコモン接点および非コモン接点に、両者をまたぐように順次、接触することによって、押鍵情報を表す信号がそれぞれ出力される。
【0015】
また、本発明によれば、隣り合う各2つの固定接点において、少なくとも1つのコモン接点は、2つの非コモン接点の間に入り込むように直交方向に延びる延出部を有している。したがって、これらの2つの固定接点に対応する可動接点の接触位置が回動体の長さ方向にずれ、可動接点が本来の固定接点から他の固定接点側に若干はみ出た場合でも、その位置にコモン接点の延出部が存在することで、コモン接点との接触状態が保たれるとともに、他の固定接点の非コモン接点との接触が阻止され、その分、可動接点のずれの許容範囲が拡大する。このように、鍵スイッチを大型化することなく、可動接点のずれの許容範囲を拡大でき、したがって、誤動作を抑制し、押鍵情報をより精度良く検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による電子ピアノの鍵盤装置を、離鍵状態において示している。
【0018】
同図に示すように、鍵盤装置1は、電子ピアノの左右方向(
図1の表裏方向)に並んだ多数の鍵2(白鍵2aおよび黒鍵2bを各1つのみ図示)と、これらの鍵2を支持する鍵盤シャーシ3と、この鍵盤シャーシ3の後端部(
図1の右端部)に連結されたハンマーサポート4と、鍵2ごとに設けられ、押鍵された鍵2に連動して回動する多数のハンマー5(1つのみ図示)と、ハンマー5ごとに設けられ、鍵2の押鍵時にレットオフ感を付与するための多数のレットオフ部品6(1つのみ図示)と、鍵2の押鍵情報を検出するための鍵スイッチ7などで構成されている。
【0019】
鍵盤シャーシ3は、左右方向に延びる前レール9a、中レール9bおよび後レール9cから成る3本の支持レール9と、前後方向に延びる5本の補強用のリブ10とを、井桁状に組み立てたものであり、棚板(図示せず)上に固定されている。これらの支持レール9およびリブ10はいずれも、プレスによる打抜きおよび折曲げ加工によって所定の形状に形成された鉄板で構成されている。支持レール9の板厚は、その軽量化のためにより薄く(例えば1.0mm)、リブ10の板厚は、補強のためにより厚く(例えば1.6mm)設定されている。
【0020】
前レール9aの下面および中レール9bの上面にはそれぞれ、筬前11および筬中12が固定されている。筬前11および筬中12は、合成樹脂から成る肉厚の板状のものであり、前レール9aおよび中レール9bの全体にわたって左右方向に延びている。筬中12には、白鍵2aおよび黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のバランスピン13が、左右方向に並んだ状態で立設されている。また、筬前11には、白鍵2aおよび黒鍵2bに対応する前後の位置に、多数のフロントピン14が、左右方向に並んだ状態で立設されている。
【0021】
鍵2は、前後方向に延びるとともに矩形状の横断面を有する木製の鍵本体15と、その前部の上面および前面に接着された合成樹脂製の鍵カバー16で構成されている。鍵本体15の中心よりも後ろ側には、バランスピン孔17が形成されており、鍵2は、このバランスピン孔17を介して、バランスピン13に揺動自在に支持されている。また、鍵本体15の前端部には、フロントピン孔18が形成されており、このフロントピン孔18がフロントピン14に係合することによって、鍵2が回動する際の左右方向のぶれが防止される。
【0022】
ハンマーサポート4は、合成樹脂で構成され、例えば1オクターブ分の複数の成形品を互いに連結したものであり、すべてのハンマー5にわたるように左右方向に延びており、鍵盤シャーシ3の後レール9cにねじ止めされている。ハンマーサポート4は、この後レール9c付近から直立するハンマー支持部19と、その上端部から前方に斜め上がりに延びるスイッチ取付部20などで構成されている。ハンマー支持部19の上端部には、各ハンマー5を支持するための水平なピン状の支点軸部21が形成されている。
【0023】
ハンマー5は、前後方向に延びるアーム状のハンマー本体22と、その左右の側面の前端部に取り付けられた錘板23(1つのみ図示)を有する。ハンマー本体22は合成樹脂で構成され、錘板23は、比重が比較的大きな鉄などの金属材料で構成されている。ハンマー本体22の後端部には、円弧状の軸穴24が形成されており、ハンマー5は、この軸穴24が支点軸部21に係合することによって、ハンマーサポート4に回動自在に支持されている。
【0024】
また、ハンマー本体22の下面には、軸穴24のすぐ前側の位置に、キャプスタンスクリュー25が進退自在にねじ込まれている。ハンマー5は、このキャプスタンスクリュー25を介して、鍵2の後端部に載置されている。また、ハンマー本体22の上面の軸穴24とキャプスタンスクリュー25との間の部分は、押鍵時に鍵スイッチ7を作動させるためのアクチュエータ部26になっている。さらに、ハンマー本体22の上面の前後方向の中央には、押鍵時にレットオフ部品6に係合する板状の係合突起27が設けられている。
【0025】
レットオフ部品6は、所定の弾性材料(例えば、スチレン系の熱可塑性エラストマーなど)の成形品で構成されており、ハンマーサポート4のスイッチ取付部20に取り付けられている。レットオフ部品6は、スイッチ取付部20から後ろ下がりに斜めに延びており、その先端部には、くびれ部を介して頭部28が形成されている。この頭部28は、離鍵状態において、ハンマー5の係合突起27に対向している。
【0026】
また、鍵スイッチ7は、プリント基板から成るスイッチ基板29と、このスイッチ基板29の下面に、鍵2ごとに設けられたゴムスイッチから成るスイッチ本体30で構成されている。スイッチ基板29は、その後端部がスイッチ取付部20に差し込まれるとともに、中央の部分で、スイッチ取付部20にねじ止めされている。また、スイッチ本体30は、離鍵状態において、ハンマー5のアクチュエータ部26に若干の間隔をもって対向している。さらに、スイッチ取付部20の下面の前端部には、ハンマー5の上方への回動を規制する、発泡ウレタンなどで構成されたハンマーストッパ31が設けられている。
【0027】
次に、上記構成の鍵盤装置1の動作について説明する。
図1に示す離鍵状態から鍵2が押鍵されると、鍵2は、バランスピン13を中心として、同図の反時計方向に回動し、それに伴い、ハンマー5は、キャプスタンスクリュー25を介して押し上げられ、支点軸部21を中心として、上方(同図の時計方向)に回動する。
【0028】
このハンマー5の回動の途中で、その係合突起27が、レットオフ部品6の頭部28に係合し、頭部28を介してレットオフ部品6を圧縮させながら押圧することにより、レットオフ部品6からハンマー5に作用する反力が増大する。ハンマー5の回動が進むと、係合突起27が頭部28から外れることで、レットオフ部品6からの反力が急激に消失する。このようなレットオフ部品6の反力の増大と消失によって、アコースティックピアノに近似したレットオフ感が得られる。
【0029】
その後、ハンマー5がハンマーストッパ31に当接することによって、ハンマー5の上方への回動が終了する。また、ハンマー5の上方への回動の間、そのアクチュエータ部26が鍵スイッチ7のスイッチ本体30を押圧し、鍵スイッチ7をONすることによって、ハンマー5の回動量に応じた鍵2の押鍵情報が検出され、発音制御装置(図示せず)に出力される。そして、この発音制御装置により、検出された押鍵情報に基づいて、電子ピアノの発音が制御される。
【0030】
その後、鍵2が離鍵されると、鍵2は押鍵時と反対方向に回動し、
図1に示す離鍵状態に復帰し、それに伴い、ハンマー5も、下方に回動し、離鍵状態に復帰する。
【0031】
次に、
図2〜
図7を参照しながら、本発明に係る鍵スイッチ7について詳細に説明する。鍵スイッチ7のスイッチ本体30は、非常に柔らかいゴム、例えばシリコンゴムで構成されている。
図3および
図4に示すように、スイッチ本体30は、並設された4つのスイッチ本体30と、これらのスイッチ本体30をつなぐベース41と、ベース41から下方に突出する複数の取付用の脚部42とを一体に成形したスイッチ本体ユニット43として形成されている。
【0032】
各スイッチ本体30は、前後方向に長い小判状の平面形状を有するとともに、ベース41から立ち上がる薄肉の周壁部44と、それに連なる可動部45とから、全体としてドーム状に形成されている。
図2に示すように、可動部45の表面は、前側(
図2の右側)に向かってベース41に近づくように傾斜している。
【0033】
可動部45の表面には、円筒状の3つの凹部46〜48が前後方向に並んで形成され、これらの凹部46〜48の下縁から、薄肉部49を介して、第1〜第3スイッチ素子S1〜S3がそれぞれ垂下している。第1〜第3スイッチ素子S1〜S3の下端部には、カーボンから成る第1〜第3可動接点CM1〜CM3がそれぞれ設けられている。また、可動部45には、第1スイッチ素子S1の前側に、支持突起50が設けられている。この支持突起50は、ブロック状のものであり、ベース41の近くまで延びている。
【0034】
さらに、可動部45の表面には、中央の凹部47の左右両側にそれぞれ、前後2つの被押圧用突起(以下、単に「突起」という)51A、51Bが、互いに隣接した状態で設けられている。これらの突起51A、51Bは、ほぼ半円形の側面形状を有しており、そのサイズは互いに同じである。
【0035】
以上のように構成されたスイッチ本体30は、
図5に示すように、複数の脚部42を、その弾性を利用して、スイッチ基板29の対応する孔52に差し込むことによって、スイッチ基板29の下面に取り付けられている。鍵2の離鍵状態では、スイッチ本体30の後ろ側の突起51Bに、ハンマー5のアクチュエータ部26が、近接した状態で対向している。なお、
図5は、押鍵に伴い、アクチュエータ部26が突起51Bに当接した直後の状態を示している。
【0036】
また、離鍵状態では、可動部45の支持突起50は、スイッチ基板29に近接した状態で対向し、第1〜第3可動接点CM1〜CM3は、スイッチ基板29に形成された第1〜第3固定接点CS1〜CS3に、それぞれ対向している。可動/固定接点間の間隔は、第1可動/固定接点CM1、CS1、第2可動/固定接点CM2、CS2および第3可動/固定接点CM3、CS3の順に短く、すなわち、前側のものほどより短くなっている。
【0037】
図6に示すように、第1〜第3固定接点CS1〜CS3は、前後方向(同図の左右方向)に並設されており、それぞれ、第1コモン接点CC1および第1非コモン接点CN1、第2コモン接点CC2および第2非コモン接点CN2と、第3コモン接点CC3および第3非コモン接点CN3から成る接点対で構成されている。同図にハッチングを付して示す第1〜第3コモン接点CC1〜CC3は、接地されており、互いに同一の基準電位を有する。一方、第1〜第3非コモン接点CN1〜CN3は、基準電位と異なる所定の電位を有している。
【0038】
同図に示すように、第1コモン接点CC1および第1非コモン接点CN1は、前後方向に長い矩形状に形成され、互いに同じ長さおよび幅を有し、第1可動接点CM1の径よりも小さな所定の間隔を隔てて、左右方向(同図の上下方向)に互いに対向している。
【0039】
これに対し、第2および第3コモン接点CC2、CC3と第2および第3非コモン接点CN2、CN3はいずれも、本体部と、その一端部から延びる延出部で構成され、L字状に形成されている。第2コモン接点CC2および第2非コモン接点CN2のそれぞれの本体部BC2、BN2は、第1コモン接点CC1および第1非コモン接点CN1と同じ長さおよび幅を有する矩形状に形成され、それらの延長線上に前後方向に延びるとともに、所定の間隔を隔てて互いに対向している。一方、第2コモン接点CC2の延出部EC2は、その本体部BC2の前端部から、第1非コモン接点CN1と第2非コモン接点CN2の本体部BN2との間に入り込むように、左右方向に延びている。また、第2非コモン接点CN2の延出部EN2は、その本体部BN2の後端部から、第2コモン接点C2の本体部BC2と第3コモン接点CC3の本体部BC3との間に入り込むように、左右方向に延びている。
【0040】
同様に、第3コモン接点CC3および第3非コモン接点CN3のそれぞれの本体部BC3、BN3は、第2コモン接点CC2および第2非コモン接点CN2の本体部BC2、BN2と同じ長さおよび幅を有する矩形状に形成され、それらの延長線上に前後方向に延びるとともに、所定の間隔を隔てて互いに対向している。一方、第3コモン接点CC3の延出部EC3は、その本体部BC3の前端部から、第2非コモン接点CN2の本体部BN2と第3非コモン接点CN3の本体部BN3との間に入り込むように、左右方向に延び、第3非コモン接点CN3の延出部EN3は、その本体部BN3の後端部から、第3コモン接点CC3の本体部BC3の後ろ側に回り込むように、左右方向に延びている。
【0041】
次に、
図5および
図7を参照しながら、上記構成の鍵スイッチ7の動作を詳細に説明する。鍵2が押鍵されると、ハンマー5が
図5の時計方向に回動し、そのアクチュエータ部26がスイッチ本体30を押圧することによって、スイッチ本体30が圧縮変形する。この圧縮変形により、まず第1可動接点CM1が、第1固定接点CS1の第1コモン接点CC1および第1非コモン接点CN1に、両者をまたぐように同時に接触することによって、両接点CC1、CN1が導通し、第1スイッチ素子S1がONされる。
【0042】
ハンマー5の回動が進むと、第2可動接点CM2が、第2固定接点CS2の第2コモン接点CC2および第2非コモン接点CN2に、両者をまたぐように同時に接触することによって、両接点CC2、CN2が導通し、第2スイッチ素子S2がONされる。ハンマー5がさらに回動すると、第3可動接点CM3が第3固定接点CS3の第3コモン接点CC3および第3非コモン接点CN3に、両者をまたぐように同時に接触することによって、両接点CC3、CN3が導通し、第3スイッチ素子S3がONされる。
【0043】
以上の第1〜第3スイッチ素子S1〜S3からのON信号は、発音制御装置に順次、入力される。例えば、発音制御装置は、鍵スイッチ7のON作動によって、鍵2が押鍵されたこととそのキーナンバーを判定するとともに、第1〜第3スイッチ素子S1〜S3のON時間差から、ハンマー5の回動速度を算出し、それらの結果に基づいて、電子ピアノの発音を制御する。
【0044】
また、例えば、
図7に破線で示すように、第1可動接点CM1の接触位置が後ろ側にずれ、第1可動接点CM1が第1固定接点CS1からはみ出た場合には、第1可動接点CM1が、第1非コモン接点CN1と、その後ろ側に存在する第2コモン接点CC2の延出部EC2とに接触することによって、コモン接点との接触状態が保たれるとともに、第2固定接点CS1の非コモン接点CN2との接触が阻止される。これにより、第1スイッチ素子S1のON状態が維持される。
【0045】
また、図示しないが、第2可動接点CM2が、第2固定接点CS2から前側にはみ出た場合には、第2非コモン接点CN2とその前側に存在する第2コモン接点CC2の延出部EC2とに接触することによって、第2固定接点CS2から後ろ側にはみ出た場合には、第2非コモン接点CN2とその後ろ側に存在する第3コモン接点CC3の延出部EC3とに接触することによって、それぞれ第2スイッチ素子S2のON状態が維持される。同様に、第3可動接点CM3が、第3固定接点CS3から前側にはみ出た場合には、第3非コモン接点CN3とその前側に存在する第3コモン接点CC3の延出部EC3とに接触することによって、第3スイッチ素子S3のON状態が維持される
【0046】
また、
図7に示すように、第1可動接点CM1の接触位置が後ろ側にずれたときに許容される限界は、延出部EC2の後縁によって定まる。したがって、この限界位置と第1固定接点CS1の中心位置との距離を第1可動接点CM1のずれの許容範囲と定義すると、この場合の許容範囲はL1になる。
【0047】
これに対し、
図8に破線で示すように、従来の鍵スイッチにおいて、第1可動接点cm1の接触位置が後ろ側にずれた場合には、その限界位置が、第1固定接点cs1に近接する第2固定接点cs2の前縁によって定まるため、許容範囲は、本実施形態によるL1よりも小さなL1’になる。すなわち、本実施形態によって、第1可動接点CM1のずれの許容範囲が拡大されることが分かる。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、第1〜第3可動接点CM1〜CM3の接触位置がハンマー5の長さ方向にずれ、第1〜第3可動接点CM1〜CM3が本来の固定接点からはみ出た場合でも、その位置に存在する第2および第3コモン接点CC2、CC3の延出部EC2、EC3によって、第1〜第3可動接点CM1〜CM3のコモン接点との接触状態が保たれるとともに、他の固定接点の非コモン接点との接触が阻止される。その結果、鍵スイッチ7を大型化することなく、第1〜第3可動接点CM1〜CM3のずれの許容範囲を拡大でき、したがって、誤動作を抑制し、押鍵情報をより精度良く検出することができる。
【0049】
図9は、上述した実施形態の変形例を示す。この変形例は、上述した実施形態と比較し、第1〜第3固定接点CS1〜CS3の配置パターンのみが異なる。同図に示すように、この変形例では、第1〜第3固定接点CS1〜CS3の3つのコモン接点CC1〜CC3および非コモン接点CN1〜CN3は、それぞれ左右方向に互い違いに配置されている。
【0050】
第1および第2コモン接点CC1、CC2には、それらの互いに近接する端部同士を結ぶように、延出部EC12が設けられており、この延出部EC12は、第1および第2非コモン接点CN1、CN2の間に、左右方向に延びている。同様に、第2および第3コモン接点CC2、CC3には、それらの互いに近接する端部同士を結ぶように、延出部EC23が設けられており、この延出部EC23は、第2および第3非コモン接点CN2、CN3の間に、左右方向に延びている。他の構成は、実施形態と同じである。
【0051】
この構成によれば、
図9に破線で示すように、第1〜第3可動接点CM1〜CM3の接触位置がハンマー5の長さ方向にずれ、第1〜第3可動接点CM1〜CM3が本来の固定接点からはみ出た場合でも、その位置に存在するコモン接点の延出部EC12または延出部EC23によって、第1〜第3可動接点CM1〜CM3のコモン接点との接触状態が保たれるとともに、他の固定接点の非コモン接点との接触が阻止される。したがって、実施形態による前述した効果を同様に得ることができる。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態および変形例において示した固定接点のコモン接点、非コモン接点および延出部の配置パターンは、あくまで例示であり、コモン接点の延出部が隣り合う2つの非コモン接点の間に延びるように配置される限り、任意の配置パターンを採用することが可能である。
【0053】
また、実施形態では、鍵スイッチがハンマーで押圧されるように構成されているが、本発明は、これに限らず、鍵で押圧される鍵スイッチに適用してもよい。その他、細部の構成を、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することが可能である。