特許第5791482号(P5791482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791482
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】生体情報検出装置及び温度調整装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/01 20060101AFI20150917BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20150917BHJP
   A61B 5/0205 20060101ALI20150917BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   A61B5/00 101F
   A61B5/02 320Z
   A61B5/02 G
   A61B5/02 H
   A61B5/02 F
   A61B5/08
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-264963(P2011-264963)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-116216(P2013-116216A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大澤 悟
(72)【発明者】
【氏名】山田 康太
(72)【発明者】
【氏名】荒川 孝
(72)【発明者】
【氏名】武田 政宗
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−162636(JP,A)
【文献】 特開2005−118573(JP,A)
【文献】 特開2003−294535(JP,A)
【文献】 特開2005−224299(JP,A)
【文献】 特開2010−268833(JP,A)
【文献】 米国特許第4677988(US,A)
【文献】 特開平2−289238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/053
A61B 5/06 − 5/22
G01R 23/16
G01J 5/00 − 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象者から放射されたマイクロ波帯の熱雑音を受信するための受信手段と、
前記受信手段からの受信信号を増幅し、検波する検波手段と、
前記検波手段にて検波された受信信号の周波数軸上のスペクトルを抽出するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、直流成分に対応したスペクトルを抽出し、該抽出したスペクトルの振幅を、検出対象者の肌温度を表す検出信号として出力する肌温度検出手段と、
前記フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、人体の呼吸数若しくは心拍数に対応した周波数帯域内で振幅が最大となるスペクトルを抽出し、そのスペクトルの周波数を、検出対象者の呼吸数若しくは心拍数を表す検出信号として出力する呼吸/心拍検出手段と、
を備えたことを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項2】
検出対象者から放射されたマイクロ波帯の熱雑音を受信するための受信手段と、
前記受信手段からの受信信号を増幅し、検波する検波手段と、
前記検波手段にて検波された受信信号の周波数軸上のスペクトルを抽出するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、直流成分に対応したスペクトルを抽出し、該抽出したスペクトルの振幅を、検出対象者の肌温度を表す検出信号として出力する肌温度検出手段と、
前記フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、人体の呼吸数若しくは心拍数に対応した周波数帯域内で振幅が最大となるスペクトルを抽出し、そのスペクトルの周波数を、検出対象者の呼吸数若しくは心拍数を表す検出信号として出力する呼吸/心拍検出手段と、
前記受信手段による前記熱雑音の受信方向前方の温度を上昇又は低下させる加熱/冷却手段と、
前記呼吸/心拍検出手段からの検出信号に基づき、前記受信手段による前記熱雑音の受信方向前方に検出対象者が居るか否かを判断する判定手段と、
前記判定手段にて前記受信方向前方に検出対象者が居ると判断されると、前記肌温度検出手段からの検出信号に基づき前記加熱/冷却手段を駆動することにより、前記受信方向前方の温度を上昇又は低下させ、前記判定手段にて前記受信方向前方に検出対象者が居ないと判断されると、前記加熱/冷却手段の駆動を停止する制御手段と、
を備えたことを特徴とする温度調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象者の肌温度、呼吸数、心拍数等の生体情報を検出する生体情報検出装置、及び、その生体情報検出装置を利用して周囲の温度調整を行う温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検出対象者の呼吸数や心拍数を検出する生体情報検出装置として、マイクロ波ドップラモジュールを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この生体情報検出装置は、マイクロ波ドップラモジュールを用いて、検出対象者の胸部や背中にマイクロ波を照射すると共に、照射したマイクロ波の反射波を受信し、その送信波と受信波との周波数の差を検出することで、検出対象者の動き(詳しくは呼吸や心拍による生体表面の微小な変位)を測定するものである。
【0003】
従って、この生体情報検出装置によれば、呼吸数や心拍数を測定するための測定器(センサ)を検出対象者に装着することなく、検出対象者の生体情報(呼吸数・心拍数)を検出することができ、検出対象者の負担を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−162069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の生体情報検出装置を構成するマイクロ波ドップラモジュールは、マイクロ波を発生するマイクロ波発生源、マイクロ波を送受信するための送信機及び受信機、送信波と受信波とを信号処理して生体表面の動きに対応した検出信号を生成する信号処理回路等、多くの構成要素からなっており、その構成が複雑で高価であるという問題があった。
【0006】
また、上記従来の生体情報検出装置では、生体表面の動きから、呼吸や脈拍を検出することはできても、生体表面の温度である肌温度を検出することはできない。
このため、例えば、検出対象者の肌温度や、呼吸数、心拍数等から、検出対象者の状態を把握して、温度等の周囲環境を制御する際には、別途、肌温度検出器を設ける必要がある。
【0007】
そして、この場合、上記生体情報検出装置のように、検出対象者の肌温度を非接触に検出できるようにするには、サーモグラフィーやサーモパイル等からなる赤外線センサが必要になり、制御システム全体のコストアップを招くという問題があった。
【0008】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、検出対象者に各種センサを装着することなく、検出対象者の呼吸数、心拍数、肌温度等を検出でき、しかも、マイクロ波ドップラモジュールを用いる場合に比べて低コストに実現し得る生体情報検出装置及び温度調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の生体情報検出装置は、
検出対象者から放射されたマイクロ波帯の熱雑音を受信するための受信手段と、
前記受信手段からの受信信号を増幅し、検波する検波手段と、
前記検波手段にて検波された受信信号の周波数軸上のスペクトルを抽出するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、直流成分に対応したスペクトルを抽出し、該抽出したスペクトルの振幅を、検出対象者の肌温度を表す検出信号として出力する肌温度検出手段と、
前記フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、人体の呼吸数若しくは心拍数に対応した周波数帯域内で振幅が最大となるスペクトルを抽出し、そのスペクトルの周波数を、検出対象者の呼吸数若しくは心拍数を表す検出信号として出力する呼吸/心拍検出手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の温度調整装置は、
検出対象者から放射されたマイクロ波帯の熱雑音を受信するための受信手段と、
前記受信手段からの受信信号を増幅し、検波する検波手段と、
前記検波手段にて検波された受信信号の周波数軸上のスペクトルを抽出するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、直流成分に対応したスペクトルを抽出し、該抽出したスペクトルの振幅を、検出対象者の肌温度を表す検出信号として出力する肌温度検出手段と、
前記フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、人体の呼吸数若しくは心拍数に対応した周波数帯域内で振幅が最大となるスペクトルを抽出し、そのスペクトルの周波数を、検出対象者の呼吸数若しくは心拍数を表す検出信号として出力する呼吸/心拍検出手段と、
前記受信手段による前記熱雑音の受信方向前方の温度を上昇又は低下させる加熱/冷却手段と、
前記呼吸/心拍検出手段からの検出信号に基づき、前記受信手段による前記熱雑音の受信方向前方に検出対象者が居るか否かを判断する判定手段と、
前記判定手段にて前記受信方向前方に検出対象者が居ると判断されると、前記肌温度検出手段からの検出信号に基づき前記加熱/冷却手段を駆動することにより、前記受信方向前方の温度を上昇又は低下させ、前記判定手段にて前記受信方向前方に検出対象者が居ないと判断されると、前記加熱/冷却手段の駆動を停止する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の生体情報検出装置によれば、受信手段が、検出対象者から放射されたマイクロ波帯の熱雑音を受信し、検波手段が、その受信信号を増幅して検波し、フーリエ変換手段が、検波手段にて検波された受信信号の周波数軸上のスペクトルを抽出する。
【0012】
すると、肌温度検出手段が、フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、直流成分に対応した極低周波領域のスペクトルを抽出し、その抽出したスペクトルの振幅を、検出対象者の肌温度を表す検出信号として出力する。
【0013】
また、呼吸/心拍検出手段が、フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、人体の呼吸数若しくは心拍数に対応した周波数帯域内で振幅が最大となるスペクトルを抽出し、そのスペクトルの振幅及び周波数の少なくとも一方を、検出対象者の呼吸数若しくは心拍数を表す検出信号として出力する。
【0014】
つまり、検出対象者の人体からは、赤外線だけでなく、マイクロ波帯の熱雑音も放射されており、その熱雑音の放射レベルは、検出対象者の皮膚の温度(つまり、肌温度)に対応する。
【0015】
そこで、本発明では、肌温度検出手段にて、検波手段を介して得られる検波信号(受信信号の振幅)の平均レベルである直流成分を、検出対象者の肌温度として検出する。
また、検波手段を介して得られる受信信号の信号レベルは、検出対象者の呼吸や心拍に伴う人体の動き(詳しくは人体の表面の動き)に応じて変動し、その変動周波数は呼吸数や心拍数に対応して変化する。
【0016】
そこで、本発明では、呼吸/心拍検出手段にて、フーリエ変換手段にて抽出された周波数軸上のスペクトルの中から、人体の呼吸数若しくは心拍数に対応した周波数帯域内で振幅が最大となるスペクトルを抽出し、そのスペクトルの周波数を、検出対象者の呼吸数若しくは心拍数を表す検出信号として出力する。
【0017】
従って、本発明の生体情報検出装置によれば、マイクロ波ドップラモジュールを利用する従来の生体情報検出装置のように、マイクロ波の発生源や送信機を設けることなく、検出対象者の呼吸数若しくは心拍数を検出することができる。
【0018】
このため、本発明によれば、検出対象者の呼吸数や心拍数を非接触に検出可能な生体情報検出装置の構成を、従来に装置に比べて簡単にすることができ、その製造コストを低減することができる。
【0019】
また、本発明の生体情報検出装置によれば、受信手段からの受信信号を検波し、受信信号に含まれる周波数軸上のスペクトルを解析することで、検出対象者の呼吸数若しくは心拍数を検出するだけでなく、受信手段からの受信信号を検波した検波信号の直流成分を、検出対象者の肌温度として検出することから、肌温度検出装置としても利用することができる。このため、本発明によれば、生体情報検出装置の用途を拡大することができる。
【0020】
次に、本発明の温度調整装置によれば、請求項1の生体情報検出装置と同様、受信手段、検波手段、フーリエ変換手段、肌温度検出手段、及び呼吸/心拍検出手段を備える。このため、本発明の温度調整装置によれば、検出対象者の肌温度や、呼吸数若しくは心拍数を、検出対象者とは非接触に検出することができる。
【0021】
また、本発明の温度調整装置においては、判定手段が、呼吸/心拍検出手段からの検出信号に基づき、受信手段による熱雑音の受信方向前方に検出対象者が居るか否かを判断する。これは、呼吸/心拍検出手段にて呼吸数若しくは心拍数が検出されない場合、受信手段による熱雑音の受信方向前方に検出対象者が居ないと考えられるためである。
【0022】
そして、判定手段にて受信方向前方に検出対象者が居ると判断されると、制御手段が、肌温度検出手段からの検出信号に基づき加熱/冷却手段を駆動することにより、受信方向前方の温度を上昇又は低下させる。また、判定手段にて受信方向前方に検出対象者が居ないと判断された場合には、制御手段は、加熱/冷却手段の駆動を停止する。
【0023】
このように、本発明の温度調整装置によれば、呼吸/心拍検出手段からの検出信号に基づき検出対象者の有無を判定して、検出対象者が居る場合にのみ、加熱/冷却手段を、肌温度検出手段にて検出された検出対象者の肌温度に応じて駆動し、検出対象者周囲の温度を上昇又は低下させる。
【0024】
従って、本発明の温度調整装置によれば、加熱/冷却手段を、加熱/冷却対象となる検出対象者が居るときにだけ駆動することができるようになり、加熱/冷却手段の駆動効率を向上し、省エネ化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態の生体情報検出装置全体の構成を表すブロック図である。
図2】受信信号のフーリエ変換結果と肌温度、呼吸数及び心拍数との関係を表す説明図である。
図3】生体情報検出装置を用いて検出対象者(人体)の状態を監視し、室内の温度調整を行う監視・制御システム全体の構成を表すブロック図である。
図4図3の監視装置にて実行される監視・警報処理を表すフローチャートである。
図5図3の制御装置にて実行される空調制御処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[生体情報検出装置]
図1に示すように、本実施形態の生体情報検出装置は、検出対象者2の人体から放射されるマイクロ波帯(より詳しくはマイクロ波の中で波長が短いミリ波帯)の熱雑音を受信するための受信アンテナ4を備え、この受信アンテナ4からの受信信号を信号処理することで検出対象者2の肌温度、呼吸数、及び心拍数を検出するものである。
【0027】
すなわち、本実施形態の生体情報検出装置には、受信アンテナ4にて受信されたミリ波帯の受信信号を増幅する受信増幅部12と、この受信増幅部12で増幅された受信信号を検波する検波部14と、検波部14にて検波された検波信号を増幅する検波増幅部16とが備えられている。
【0028】
そして、検波増幅部16にて増幅された検波信号は、A/D変換部18にて所定のサンプリング周期でA/D変換され、FFT部20にて離散フーリエ変換(FFT)される。
なお、A/D変換部18による検波信号のサンプリング周期は、FFT部20での離散フーリエ変換(FFT)にて、少なくとも、サンプリングした検波信号から、人の心拍数に対応した最大200Hz程度の周波数成分を抽出し得る周期(若しくはこの周期よりも短い周期)に設定されている。
【0029】
また、FFT部20は、A/D変換された検波信号を離散フーリエ変換(FFT)することで、図2に示すように、人の心拍数、心拍数よりも周期の長い呼吸数、及び、検波信号の直流成分(詳しくは肌温度)に対応したスペクトルを含む、検波信号の周波数軸上の多数のスペクトルを抽出するためのものである。
【0030】
次に、FFT部20にて抽出された検波信号の周波数軸上のスペクトルは、肌温度検出部22、呼吸数検出部24、及び心拍数検出部26にそれぞれ入力される。
これら各検出部22、24、26は、ローパスフィルタ若しくはバンドパスフィルタを構成するデジタルフィルタとして構成されており、FFT部20にて抽出されたスペクトルの中から、それぞれ、検波信号の直流成分に対応したスペクトル、1分間当たりに10〜20回程度となる呼吸数に対応した周波数帯域内のスペクトル、1秒当たりに50〜80回程度、運動等による最大でも200回程度となる心拍数に対応した周波数帯域内のスペクトル、が選択的に抽出される。
【0031】
そして、肌温度検出部22は、検波信号の直流成分に対応したスペクトルの信号レベル(つまり振幅)を、肌温度の検出信号として出力する。
また、呼吸数検出部24は、上記のように抽出した、呼吸数に対応した周波数帯域内のスペクトルの中から、信号レベル(振幅)が最も大きいスペクトルを選択し、その選択したスペクトルの周波数を、呼吸数の検出信号として出力する。
【0032】
また、心拍数検出部26は、上記のように抽出した、心拍数に対応した周波数帯域内のスペクトルの中から、信号レベル(振幅)が最も大きいスペクトルを選択し、その選択したスペクトルの周波数を、心拍数の検出信号として出力する。
【0033】
つまり、検出対象者2の人体からは、ミリ波を含むマイクロ波帯の熱雑音が放射されており、その熱雑音の放射レベルは、検出対象者2の肌温度に対応する。
そこで、本実施形態では、受信アンテナ4にて検出対象者2から放射されたミリ波帯の熱雑音を受信し、その受信信号を、受信増幅部12、検波部14及び検波増幅部16にて検波及び増幅して、その検波信号の直流成分の信号レベルをFFT部20及び肌温度検出部22にて検出することで、肌温度を検出する。
【0034】
また、検波信号の信号レベルは、検出対象者2の呼吸や心拍に伴う人体の表面の動きに応じて変動し、その変動周波数は呼吸数や心拍数に対応して変化する。
そこで、本実施形態では、検出対象者2の呼吸や心拍に伴い変化する検波信号の変動成分を、FFT部20と呼吸数検出部24及び心拍数検出部26とによりそれぞれ抽出し、その変動成分の呼吸及び心拍に対応した周波数を、それぞれ、検出対象者2の呼吸数及び心拍数として検出する。
【0035】
従って、本実施形態の生体情報検出装置によれば、マイクロ波ドップラモジュールを利用する従来の生体情報検出装置のように、マイクロ波の発生源や送信機を設けることなく、検出対象者2の呼吸数及び心拍数を検出することができる。
【0036】
よって、本実施形態によれば、検出対象者2の呼吸数や心拍数を非接触に検出可能な生体情報検出装置の構成を、従来に装置に比べて簡単にすることができ、その製造コストを低減することができる。
【0037】
また、本実施形態の生体情報検出装置によれば、検出対象者2の呼吸数及び心拍数だけでなく、検出対象者2の肌温度も検出できることから、肌温度検出装置としても利用することができ、生体情報検出装置の用途を拡大することができる。
【0038】
なお、FFT部20、肌温度検出部22、呼吸数検出部24、及び心拍数検出部26は、離散フーリエ変換(FFT)やデジタルフィルタとしての各種演算処理を実行するマイクロコンピュータ、若しくは、デジタル演算回路にて構成されている。
【0039】
そして、このうち、FFT部20は、本発明のフーリエ変換手段に相当し、肌温度検出部22は、本発明の肌温度検出手段に相当し、呼吸数検出部24及び心拍数検出部26は、本発明の呼吸/心拍検出手段に相当する。
【0040】
また、本実施形態において、受信アンテナ4は、本発明の受信手段に相当し、受信増幅部12、検波部14及び検波増幅部16は、本発明の検波手段に相当する。
[監視装置・空調制御装置]
次に、図3は、上記のように構成された本実施形態の生体情報検出装置を用いて、検出対象者2の状態を監視し、室内の温度調整を行う監視・制御システム全体の構成を表すブロック図である。
【0041】
図3に示すように、この監視・制御システムは、例えば、病院等で検出対象者2である病人が寝るベッド6の上方に生体情報検出装置10を設置し、受信アンテナ4によるミリ波の受信方向を、ベッド6に寝ている検出対象者2の胸や腹部或いは背中に向くよう調整することで、ベッドに寝ている検出対象者2の肌温度、呼吸数、心拍数を、衣服や布団越しに監視できるようにしたものであり、監視装置30と、空調装置50の制御装置40と、を備える。
【0042】
監視装置30は、生体情報検出装置10の各検出部22,24,26からの検出信号に基づき、検出対象者2の肌温度、呼吸数、心拍数を監視し、これらの異常時に、その旨を周囲(例えばナースセンタ等)に報知するものであり、図4に示す手順で監視・警報処理を実行するマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0043】
また、制御装置40も、マイクロコンピュータを中心に構成されており、図5に示す空調制御処理を実行して、空調装置50を制御することで、室内の温度を、ベッド6の上に寝ている検出対象者2に適した温度に制御する。
【0044】
なお、空調装置50は、室内の空気を吸入して加熱若しくは冷却することで、温度調整した空調空気を生成し、その生成した空調空気を室内に吹き出すことで、室内の温度を適正温度に制御する所謂エアコンである。
【0045】
そして、制御装置40は、空調装置50から室内に吹き出される空調空気の温度を調整することで、室内温度を適正温度に制御する。
以下、監視装置30及び制御装置40にてそれぞれ実行される監視・警報処理及び空調制御処理について説明する。
【0046】
図4に示す監視・警報処理は、監視装置30において、所定時間毎に繰り返し実行される処理であり、処置が開始されると、まず、S110(Sはステップを表す)にて、生体情報検出装置10から検出対象者2の呼吸数を読み込み、監視装置30内の記憶媒体(不揮発性メモリ、ハードディスク等)にその読み込んだ呼吸数を、検出時刻と共に記憶する。
【0047】
次に、S120では、S110で読み込んだ呼吸数は、予め安静時の正常範囲として設定された設定範囲内(例えば、1分当たりに12〜18回)にあるか否かを判断し、呼吸数が設定範囲内になければ、S130に移行して、呼吸数が設定範囲内から外れた異常状態の継続時間は、予め設定された異常判定時間T1以上になったか否かを判断する。
【0048】
そして、S130にて、異常状態の継続時間が異常判定時間T1以上になっていると判断されると、S200に移行して、検出対象者2に何らかの異常があるものとして警報を発生する。
【0049】
一方、S120にて、呼吸数は設定範囲内にあると判断されるか、或いは、S130にて、呼吸数が設定範囲内から外れた異常状態の継続時間は異常判定時間T1以上になっていないと判断されると、S140に移行する。
【0050】
S140では、生体情報検出装置10から検出対象者2の心拍数を読み込み、監視装置30内の記憶媒体(不揮発性メモリ、ハードディスク等)にその読み込んだ心拍数を、検出時刻と共に記憶する。
【0051】
次に、S150では、S140で読み込んだ心拍数は、予め安静時の正常範囲として設定された設定範囲内(例えば、1秒当たりに55〜75回)にあるか否かを判断し、心拍数が設定範囲内になければ、S160に移行して、心拍数が設定範囲内から外れた異常判定回数が、予め設定された設定判定回数N1以上になったか否かを判断する。
【0052】
そして、S160にて、心拍数の異常判定回数が設定判定回数N1以上になっていると判断されると、S200に移行して、検出対象者2に何らかの異常があるものとして警報を発生する。
【0053】
一方、S150にて、心拍数は、設定範囲内にあると判断されるか、或いは、S160にて、心拍数の異常判定回数が設定判定回数N1以上になっていないと判断されると、S170に移行する。
【0054】
S170では、生体情報検出装置10から検出対象者2の肌温度を読み込み、監視装置30内の記憶媒体(不揮発性メモリ、ハードディスク等)にその読み込んだ肌温度を、検出時刻と共に記憶する。
【0055】
次に、S180では、S170で読み込んだ肌温度は、予め正常範囲として設定された設定範囲内(例えば、36℃〜37℃)にあるか否かを判断し、肌温度が設定範囲内になければ、S190に移行して、肌温度が設定範囲内から外れた異常判定回数が、予め設定された設定判定回数N2以上になったか否かを判断する。
【0056】
そして、S190にて、肌温度の異常判定回数が設定判定回数N2以上になっていると判断されると、S200に移行して、検出対象者2に何らかの異常があるものとして警報を発生する。
【0057】
一方、S180にて、肌温度は設定範囲内にあると判断されるか、或いは、S190にて、肌温度の異常判定回数が設定判定回数N2以上になっていないと判断されると、当該監視・警報処理を一旦終了する。
【0058】
このように、監視装置30においては、生体情報検出装置10から、検出対象者2の呼吸数、心拍数、及び、肌温度を順次読み込み、その読み込んだ呼吸数、心拍数、及び、肌温度が正常範囲として設定された設定範囲内にあるか否かを判断することで、検出対象者2に何らかの異常が生じているか否かを監視し、検出対象者2に異常が生じている場合には、警報を発する。
【0059】
このため、監視装置30によれば、病院等で、検出対象者2である病人を監視する際、検出対象者2に各種センサを装着することなく、非接触にて病人の状態を監視することができ、病人の負担を軽減することができる。
【0060】
次に、図5に示す空調制御処理は、制御装置40において、所定時間毎に繰り返し実行される処理であり、処置が開始されると、まず、S210にて、監視装置30から呼吸数及び心拍数の監視結果を読み込み、監視装置30側で呼吸数及び心拍数が検出されたか否かを判断する。
【0061】
この判断は、ベッド6の上に検出対象者2が居て、生体情報検出装置10により、その検出対象者2の呼吸数及び心拍数が正常に検出できているか否かを判断するための処理であり、監視装置30の記憶媒体に記憶されているこれら各パラメータの値に基づき実行される。
【0062】
そして、S220にて、呼吸数及び心拍数は正常に検出できている(つまり、検出対象者2が居る)と判断されると、S230に移行して、監視装置30から肌温度の監視結果を読み込む。
【0063】
また、S230にて、肌温度の監視結果を読み込むと、今度は、S240にて、S210で読み込んだ呼吸数及び心拍数の監視結果に基づき、検出対象者2が起きているか、睡眠中であるかを判断する。
【0064】
つまり、検出対象者2が睡眠中であるときには、呼吸数や心拍数は、検出対象者2が起きているときよりも低くなるので、S230では、監視装置30による呼吸数及び心拍数の監視結果から、検出対象者2が眠ったか否かを判断するのである。
【0065】
そして、S250にて、検出対象者2は睡眠中であると判断されると、S260に移行し、S230にて読み込んだ肌温度と予め設定された睡眠中の制御パターンとに基づき、室内の温度が睡眠中の検出対象者2にとって最適な温度となるよう、空調装置50を駆動し、当該空調制御処理を一旦終了する。
【0066】
また、S250にて、検出対象者2は睡眠中ではない(つまり、起きている)と判断されると、S270に移行し、S230にて読み込んだ肌温度と予め設定された通常時の制御パターンとに基づき、室内の温度が検出対象者2にとって最適な温度となるよう、空調装置50を駆動し、当該空調制御処理を一旦終了する。
【0067】
一方、S220にて、呼吸数及び心拍数は検出できていない(つまり、検出対象者2がベッド6の上に居ない)と判断されると、S280に移行して、その状態が一定時間経過したか否かを判断する。
【0068】
そして、S280にて、検出対象者2がベッド6の上に居ない状態が一定時間経過したと判断されると、検出対象者2は、何らかの用事で部屋を出ていると判断して、S300に移行し、空調装置50の駆動を停止した後、当該空調制御処理を一旦終了する。
【0069】
また、S280にて、検出対象者2がベッド6の上に居ない状態が一定時間経過していないと判断されると、検出対象者2は室内に居るものと判断して、S290に移行し、前回S260若しくはS270の空調制御で用いた肌温度を読み込み、S270に移行する。
【0070】
そして、S270では、S290にて読み込んだ肌温度と予め設定された通常時の制御パターンとに基づき、室内の温度が検出対象者2にとって最適な温度となるよう、空調装置50を駆動し、当該空調制御処理を一旦終了する。
【0071】
このように、制御装置40においては、監視装置30から、検出対象者2の呼吸数及び心拍数の監視結果を読み込み、その読み込んだ監視結果から、ベッド6の上に検出対象者2が居るか否かを判断する。
【0072】
そして、ベッド6の上に検出対象者2が居る場合には、呼吸数及び心拍数の監視結果から、検出対象者2が睡眠中か否かを判断し、その判断結果に対応した睡眠中制御パターン若しくは通常制御パターンにて、検出対象者2の肌温度に対応した空調制御を実行する。
【0073】
このため、本実施形態の制御装置40によれば、空調装置50による室温の制御を、検出対象者2の肌温度及び睡眠状態に応じて最適に制御することができる。
また、本実施家板の制御装置40は、ベッド6の上に検出対象者2が居ない状態が一定時間以上経過すると、検出対象者2は部屋に居ないと判断して、空調装置50の駆動を停止する。
【0074】
このため、空調装置50を不必要に動作させるのを防止し、空調装置50の省エネ化を図ることができる。
なお、図3において、空調装置50は、本発明の加熱/冷却手段に相当し、制御装置40は、本発明の判定手段及び制御手段に相当する。そして、特に、本発明の判定手段は、制御装置40にて実行されるS210、S220の処理にて実現され、本発明の制御手段は、制御装置40にて実行されるS230〜S300の処理にて実現される。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて、種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、生体情報検出装置10は、検出対象者2の肌温度、呼吸数、及び心拍数を検出するものとして説明したが、呼吸数と心拍数については、何れか一方を検出するようにしてもよい。つまり、そのようにしても、空調装置50の制御は実現できる。
【0076】
また、上記実施形態では、生体情報検出装置10による検出結果に基づき、空調装置50を制御する制御装置40について説明したが、制御装置40は、単に加熱用のヒータを制御するものであっても、或いは、加湿器を駆動制御することにより、温度に加えて湿度を制御するものであってもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、呼吸数、心拍数、肌温度の正常範囲を表す数値は、一例であり、適宜変更することができる。また、例えば、これら各パラメータは、検出対象者2の年齢や性別等によって変化することから、正常/異常の判定に用いる設定範囲についても、検出対象者2の年齢や性別により変更できるようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態において、生体情報検出装置10は、検出対象者2から放射されるミリ波帯の熱雑音を受信し、その受信信号から肌温度、呼吸数、心拍数を検出するものとして説明したが、ミリ波よりも波長の長い熱雑音(マイクロ波)を受信するようにしてもよい。
【0079】
そして、このようにすると、検出対象者2が着ている衣服等の障害物を通過する際の熱雑音の損失が小さくなるので、障害物の種類や厚さなどの条件によっては、障害物によって受ける影響を小さくして、検出精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0080】
2…検出対象者、4…受信アンテナ、6…ベッド、10…生体情報検出装置、12…受信増幅部、14…検波部、16…検波増幅部、18…A/D変換部、20…FFT部、22…肌温度検出部、24…呼吸数検出部、26…心拍数検出部、30…監視装置、40…制御装置、50…空調装置。
図1
図3
図4
図5
図2