【実施例1】
【0016】
図1Aは本発明の実施例1を示す水陸両用車両の陸上走行時の模式的な側面図、
図1Bは同じく水陸両用車両の水上航行時の模式的な側面図、
図2は同じく冷却ファン駆動力と地面又は水底との距離の相関図、
図3は同じく車両運行状態に応じた冷却ファン駆動力と受信時間の相関図である。
【0017】
図1A及び
図1Bに示すように、本実施例の水陸両用車両は、エンジン10からの駆動力が図示しない動力伝達手段を介して伝達される陸上走行手段としての3軸からなる車輪11と、エンジン10からの駆動力が図示しない動力伝達手段を介して車輪11側から切り換えて伝達される水上航行手段としての図示しない水上推進装置(スクリュー等)とを備える。尚、水上航行手段として、前記水上推進装置(スクリュー等)に代えて、車輪11(厳密にはホイール)の側面に水掻きを付設しても良い。更に、軸数は、
図1A及び
図1Bでは3軸を例に記載するが、特に規定しないものとする。
【0018】
また、エンジン10の前方にはエンジン10の冷却液を外気(走行風)で冷却するラジエータ12が設けられると共に、このラジエータ12の直後方にはラジエータ12に走行風を取り込んでエンジン冷却液の熱交換を促進する冷却ファン13が設置される。この冷却ファン13は電動モータ14で駆動される。
【0019】
また、車体底部(車両)には、地面又は水底との距離を検出する超音波センサ(距離センサ)15が設置され、この超音波センサ15の検出信号は電子制御ユニット(ECU:制御手段)16に入力される。
【0020】
前記電子制御ユニット16は、超音波センサ15からの検出信号に基づいて車両が陸上走行モードから水上航行モードに移行したことを判断した際に、
図2に示すように、前記冷却ファン13の駆動力が増大するように電動モータ14を駆動制御するようになっている。
【0021】
具体的には、
図3に示すように、電子制御ユニット16は、(1)の陸上走行モードから移行した(2)の水上航行モード初期(2)で、超音波センサ15の受信時間Tの最低値(minT)を検出し(
図3の(a)点参照)、その後、(3)の水上航行モード中期に移行する過渡期(
図3の(b)領域参照)において、変化する受信時間Tの時間微分(傾き:dT/dt)がしきい値以上になったら、車両が陸上走行モードから水上航行モードに移行したことを判断するものである。尚、しきい値は、車両が陸上走行モードから水上航行モードに移行する際の検証値である。
【0022】
尚、この際、車体底から地面又は水底までの距離の設定によっては、陸上走行モードで不整地走行する場合においても同じ条件が成立する場合がある。従って前記判断方法は平坦路のみを走行する水陸両用車両に限って適用すると好適である。
【0023】
そして、水陸両用車両が不整地を走行する場合は、電子制御ユニット16は、(1)の陸上走行モードから移行した(2)の水上航行モード初期で、超音波センサ15の受信時間Tの最低値(minT)を検出し(
図3の(a)点参照)、その後、(3)の水上航行モード中期に移行する過渡期(
図3の(b)領域参照)において、変化する受信時間Tの時間積分(傾きの和:ΣdT/dt)がしきい値以上になったら、車両が陸上走行モードから水上航行モードに移行したことを判断するのである。尚、水上航行モード初期(2)で受信時間Tが最低値(minT)になる理由は、車体底からの距離は変わらずに、即ち、音波が往復する距離は変わらずに、陸上走行モード(1)での音速に対して、水上航行モード初期(2)での音速が速くなるためである。また、しきい値は、車両が陸上走行モードから水上航行モードに移行する際の検証値である。
【0024】
このようにして本実施例によれば、地形の変化を検知して冷却ファン13の駆動力を増大させるため、陸上走行モードから水上航行モードへの移行状態を直接的に判定して冷却ファン13の駆動力増大を図れるので、当該時におけるエンジン10の冷却ファン駆動力の応答遅れを低減することができ、水中航行時に十分な冷却効果が得られる。
【0025】
また、車両が陸上走行モードから水上航行モードに移行したことを判断するにあたって、前述した判断方法に、例えば水面着水時の水圧変化で喫水を検知する方法を組み合わせても良い。また、水上航行モードと判断した後も車両と水底との間の距離を継続的に検出し、陸上走行モードであると判断した際に冷却ファン駆動力を陸上走行モードに戻してよい。これにより、冷却ファン駆動力を必要に応じて増減させることにより、冷却ファン駆動に要するエネルギーを不必要に消費することを防ぐことができる。
【実施例2】
【0026】
図4Aは本発明の実施例2を示す水陸両用車両の陸上走行時の模式的な側面図、
図4Bは同じく水陸両用車両の水上航行時の模式的な側面図、
図5は同じく冷却ファン駆動力とエンジン出力との相関図である。
【0027】
これは、水上航行で高速航行を要求される車両の場合には、陸上走行時に比べて、水上航行時での要求出力が高くなるため、陸上走行モードから水上航行モードへの移行状態をエンジン出力の変化により直接的に判定しようとするものである。
【0028】
即ち、
図4A,
図4B及び
図5に示すように、電子制御ユニット16は、エンジン出力検出手段としての燃料噴射量とエンジン回転数によるエンジン出力マップからエンジン10の出力増大を検出することにより、車両が陸上走行モードから水上航行モードに移行したことを判断し、冷却ファン13の駆動力が増大するように電動モータ14を駆動制御するのである。その他の構成は実施例1と同様なので、図面において同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0029】
尚、本実施例においても、エンジン10の出力増大を検出することに加え、例えば運転者のモード切替スイッチの切替操作に連動させるとか、稼働気筒数の変化やスロットル開度検出等の各種パラメータとの組み合わせで、車両が陸上走行モードから水上航行モードに移行したことをさらに確実に判断するようにしても良い。
【0030】
これによれば、実施例1と同様の作用・効果に加えて、既設の各種センサを有効に用いることができるという利点が得られる。
【0031】
尚、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、水上航行手段や距離センサの変更等各種変更が可能であることは言うまでもない。