【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、本発明者が初めて合成した新規化合物である一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を出発原料として用いることにより、効率よく、高収率で、一般式(1)で表される4−クロロアゼチジノン化合物を製造し得ることを見い出した。一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物は、下記スキーム1に従って、一般式(6)で表される化合物から誘導される。
【0018】
【化3】
【0019】
スキーム 1
[式中、R
1、R
2及びR
3は前記に同じ。]
【0020】
また本発明者は特許文献3で使用される一般式(10)で表されるペニシラン酸化合物と類似の一般式(9)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物を使用することによって、驚くべきことに極めて立体選択性良く一般式(8)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物を製造し得ることを見出した。一般式(8)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物は、下記スキーム2に従って、一般式(6−A)に誘導され、一般式(1)で表される4−クロロアゼチジノン化合物を得るための中間体として用いられる。
【0021】
【化4】
【0022】
スキーム 2
[式中、R
1、R
2及びR
3は前記に同じ。]
【0023】
本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0024】
本発明は、下記に項1〜項17に示す4−クロロアゼチジノン化合物の製造方法及び4−クロロアゼチジノン化合物を製造するための新規な中間体を提供する。
【0025】
項1.一般式(2)
【0026】
【化5】
【0027】
[式中、R
1は、水素原子又は水酸基の保護基を示す。R
3は複素環基を示す。]
で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の4位を塩素化することにより、一般式(1)
【0028】
【化6】
【0029】
[式中、R
1は前記に同じ。]
で表される4−クロロアゼチジノン化合物を得る、式(1)で表される4−クロロアゼチジノン化合物の製造方法。
【0030】
項2.塩素化を電解酸化により行う、項1に記載の製造方法。
【0031】
項3.(1)有機溶媒、(2)水及び(3)塩化水素の存在下に電解酸化を行う、項2に記載の製造方法。
【0032】
項4.塩酸以外の鉱酸共存下に電解酸化を行う、項3に記載の製造方法。
【0033】
項5.(1)有機溶媒、(2)水、(4)塩化物及び(5)鉱酸の存在下に電解酸化を行う、項2に記載の製造方法。
【0034】
項6.塩素化を塩素化剤を用いて行う、項1に記載の製造方法。
【0035】
項7.一般式(2)
【0036】
【化7】
【0037】
[式中、R
1及びR
3は前記に同じ。]
で表される4−ジチオアゼチジノン化合物。
【0038】
項8.一般式(3)
【0039】
【化8】
【0040】
[式中、R
1及びR
3は前記に同じ。R
2は水素原子又はカルボン酸の保護基を示す。]で表される4−ジチオアゼチジノン化合物。
【0041】
項9.一般式(4)
【0042】
【化9】
【0043】
[式中、R
1、R
2及びR
3は前記に同じ。]
で表される4−ジチオアゼチジノン化合物。
【0044】
項10.一般式(5)
【0045】
【化10】
【0046】
[式中、R
1、R
2及びR
3は前記に同じ。]
で表される4−ジチオアゼチジノン化合物。
【0047】
更に、本発明は以下の態様も包含する。
【0048】
項11.上記一般式(3)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物をアルコール又はアルコール水溶液中で撹拌することにより、一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造する方法。
【0049】
項12.上記一般式(4)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の有機溶媒溶液にオゾンを吹き込むことにより、一般式(3)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造する方法。
【0050】
項13.上記一般式(5)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の溶液に塩基を加え、撹拌することにより、一般式(4)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造する方法。
【0051】
項14.一般式(6)
【0052】
【化11】
【0053】
[式中、R
1及びR
2は前記に同じ。]
で表される1−オキシドペニシラン酸化合物と一般式(14)
HS−R
3 (14)
[式中、R
3は前記に同じ。]
で表されるチオール化合物とを加温下で反応させることにより、一般式(5)
【0054】
【化12】
【0055】
で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造する方法。
【0056】
項15.一般式(6−A)
【0057】
【化13】
【0058】
[式中、R
1は、水素原子又は水酸基の保護基を示す。R
2は水素原子又はカルボン酸の保護基を示す。]
で表される1−オキシドペニシラン酸化合物の製造方法であって、一般式(9)
【0059】
【化14】
【0060】
[式中、R
2は前記に同じ。X
1及びX
2は、同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。]で表される1−オキシドペニシラン酸化合物にグリニャール試薬を反応させ、更に生成する化合物にアセトアルデヒドを反応させることにより、一般式(8)
【0061】
【化15】
【0062】
[式中、R
2は前記に同じ。X
1は、ハロゲン原子を示す。]
で表される1−オキシドペニシラン酸化合物を得る工程、
前記工程で得られる一般式(8)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物を還元することにより、一般式(7)
【0063】
【化16】
【0064】
[式中、R
2は前記に同じ。]
で表される1−オキシドペニシラン酸化合物を得る工程、及び
前記工程で得られる一般式(7)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物の水酸基を保護することにより、前記一般式(6−A)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物を得る工程、
を備えた一般式(6−A)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物の製造方法。
【0065】
項16.一般式(8)
【0066】
【化17】
【0067】
[式中、R
2は水素原子又はカルボン酸の保護基を示す。X
1はハロゲン原子を示す。]
で表される1−オキシドペニシラン酸化合物。
【0068】
項17.一般式(9)
【0069】
【化18】
【0070】
[式中、R
2は水素原子又はカルボン酸の保護基を示す。X
1及びX
2は、同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。]
で表される1−オキシドペニシラン酸化合物にグリニャール試薬を反応させ、更に生成する化合物にアセトアルデヒドを反応させることにより、一般式(8)
【0071】
【化19】
【0072】
[式中、R
2は前記に同じ。X
1はハロゲン原子を示す。]
で表される1−オキシドペニシラン酸化合物を製造する方法。
【0073】
本願発明の化合物におけるR
1で示される水酸基の保護基としては、例えば、Theodora W. Greene 著の "Protective Groups in Organic Synthesis, 1981 by John Wiley & Sons. Inc." の第2章(第10〜118頁)に記載されている水酸基の保護基を挙げることができる。このような水酸基の保護基の好ましい基を具体的に示せば、例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基等の直鎖又は分枝鎖状アルキル基;アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等の置換基を有することのあるアシルオキシ基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル(tert−ブチル)シリル基、トリ(tert−ブチル)シリル基等の低級アルキルシリル基;ベンジル基、p−ジメトキシベンジル基、p−ニトロベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基等の置換基としてフェニル基を1〜3個有することのあるアルキル基;ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。これら保護基の中でもジメチル(tert−ブチル)シリル基が好ましい。
【0074】
本願発明の化合物におけるR
2で示されるカルボン酸の保護基としては、例えば、アルキル基、アリールメチル基、Theodora W. Greene 著の "Protective Groups in Organic Synthesis, 1981 by John Wiley & Sons. Inc." の第5章(第224〜276頁)に記載されているカルボン酸の保護基を挙げることができる。このようなカルボン酸の保護基の好ましい基を具体的に示せば、例えば、メチル基、エチル基、トリクロロエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のハロゲン原子を有することのある炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基;ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−ニトロベンジル基、ジフェニルメチル基等のフェニル環上にアルコキシ基、ニトロ基等が置換していてもよいアリールメチル基等を挙げることができる。
【0075】
本願発明の化合物におけるR
3で表される複素環基は、単環及び多環のいずれであってもよく、そのような複素環基の具体例として、ピリジル基、キノリル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基(好ましくはチアジアゾリル基、:ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基)等を挙げることができる。
【0076】
これらの複素環基上には、メチル基、エチル基、tert−ブチル基等の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基;水酸基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アミノ基;置換アミノ基;カルボキシ基;エステル基;ケトン基;アミド基;エーテル基;チオール基;チオエーテル基;スルホニル基等の置換基が置換していてもよい。
【0077】
R
3で表される複素環基としては少なくとも窒素原子を1つ以上含む5〜6員の単環が好ましく、この単環はメチル基、エチル基等のアルキル基等の置換基を有していてもよい。より好ましくは窒素原子を2つ含む単環が好ましく、この単環はメチル基、エチル基等のアルキル基等の置換基を有していてもよい。特に好ましい複素環基は、2−ピリミジル基及び5−メチル−1,3,4−チアジアゾリル基である。
【0078】
一般式(1)で表される4−クロロアゼチジノン化合物は、下記の反応式−1に示す方法に従い製造することができる。
反応式−1【0079】
【化20】
【0080】
[式中、R
1及びR
3は前記に同じ。]
上記反応式−1によれば、一般式(1)で表される4−クロロアゼチジノン化合物は、一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を塩素化することにより製造される。
【0081】
塩素化は、電解酸化により行うか、塩素化剤を用いて行われる。
【0082】
電解酸化による塩素化(以下、塩素化A)
電解酸化は、例えば、(1)有機溶媒、(2)水及び(3)塩化水素の存在下に、或いは(1)有機溶媒、(2)水、(4)塩化物及び(5)鉱酸の存在下に行われる。
【0083】
電解酸化において、使用される有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、プロピレンジクロリド等のハロゲン系溶媒;蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸n−プロピル、蟻酸n−ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸のアルキルエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、エチルn−プロピルエーテル、エチルn−ブチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチルセロソルブ、ジメトキシエタン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソール等の芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0084】
これらの有機溶媒の中でも、ハロゲン系溶媒、カルボン酸のアルキルエステル又はケトン系溶媒が好ましく、具体的にはジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が特に好ましく使用できる。
【0085】
水及び塩化水素は、塩化水素を水に溶解して水溶液(塩酸)の形態で使用されるのが好ましい。
【0086】
(1)有機溶媒、(2)水及び(3)塩化水素の存在下に電解酸化を行う場合、反応系内に塩酸以外の鉱酸を共存させるのが特に好ましい。
【0087】
鉱酸としては、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。
【0088】
有機溶媒の使用量は、一般式(2)の4−ジチオアゼチジノン化合物1kg当たり、通常2〜2000リットル程度、好ましくは3〜1500リットル程度である。
【0089】
水の使用量は、一般式(2)の4−ジチオアゼチジノン化合物1kg当たり、通常1〜2000リットル程度、好ましくは1〜1500リットル程度である。
【0090】
塩化水素の使用量は、一般式(2)の4−ジチオアゼチジノン化合物1モル当たり、通常0.01〜300モル程度、好ましくは0.1〜50モル程度である。
【0091】
鉱酸を共存させる場合、その使用量は、一般式(2)の4−ジチオアゼチジノン化合物1モル当たり、通常1〜300モル程度、好ましくは1〜50モル程度である。
【0092】
(1)有機溶媒、(2)水、(4)塩化物及び(5)鉱酸の存在下に電解酸化を行う場合、有機溶媒は、上述したものと同じ有機溶媒を使用するのがよく、また有機溶媒及び水の使用量も上記と同じでよい。
【0093】
塩化物としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩; 塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩;塩化アルミニウム;塩化アンモニウム;塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラ(n−ブチル)アンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0094】
鉱酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。
【0095】
塩化物の使用量は、一般式(2)の4−ジチオアゼチジノン化合物1モル当たり、通常1〜2000モル程度、好ましくは1〜1500モル程度である。
【0096】
鉱酸の使用量は、使用する塩化物1モルに対して0.01〜50モル 好ましくは0.1〜5モル程度である。
【0097】
電解酸化を(1)有機溶媒、(2)水及び(3)塩化水素の存在下に、並びに(1)有機溶媒、(2)水、(4)塩化物及び(5)鉱酸の存在下に行う場合にいずれにおいても、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール等の炭素数3〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルコールを添加して行うと、目的とする一般式(1)の4−クロロアゼチジノン化合物をより高い収率で製造することができる。上記アルコールの中でも、tert−ブタノールを用いることが好ましい。
【0098】
このような場合、アルコール化合物の使用量は、反応系に存在する水に対して、通常1〜10重量%程度、好ましくは1〜5重量%がよい。
【0099】
電解酸化は、一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の有機溶媒溶液に塩化水素及び/又は塩化物の水溶液並びに鉱酸を加えた後、通常の方法に従って行われる。電解装置に特に制限はないが、2枚の電極を用いた非分離型の電解槽を用いることができる。
【0100】
一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の電解酸化には、公知の電解酸化の条件を広く適用することができる。
【0101】
電解酸化を行うに当たり、陽極材料及び陰極材料は、通常行われている電解酸化に使用されている陽極材料及び陰極材料と同じものでよい。
【0102】
例えば、陽極材料としては、白金、スズ、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、酸化鉛、炭素、酸化鉄、チタン等が挙げられる。好ましい陽極材料は、白金、ステンレス及び炭素である。
【0103】
陰極材料としては、白金、スズ、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、鉛、銅、炭素等が挙げられる。好ましい陰極材料は、白金、スズ、ステンレス及び炭素である。
【0104】
電解反応は、冷却下、室温下及び加温下のいずれでも行われるが、通常−20〜50℃程度、好ましくは0〜10℃程度である。
【0105】
電解反応には、公知の定電位電解法及び定電流電解法のいずれの方法を適用してもよい。操作上の簡便さの観点から、定電流電解法を採用するのが好ましい。
【0106】
電解反応の際の電流密度は、通常0.1〜1000mA/cm
2程度、好ましくは1〜100mA/cm
2程度である。
【0107】
通電量は、通常2〜100F/モル程度、好ましくは2〜50F/モル程度とすればよく、また、原料が消失するまで通電を行ってもよい。通電時間は、電流密度、通電量、原料の使用量等により適宜決定される。
【0108】
塩素化剤による塩素化(以下、塩素化B)
また、一般式(1)で表される4−クロロアゼチジノン化合物は、一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物に塩素化剤を作用させることによっても製造される。該反応は、通常有機溶媒中で行われる。
【0109】
有機溶媒としては、上記塩素化Aで使用される有機溶媒の他、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール等の炭素数3〜8の直鎖状又は分枝鎖状のアルコール等を使用することができ、それらの中でも、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒及びジオキサン等のエーテル系溶媒が好ましい。これらの有機溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0110】
塩素化剤としては、例えば、塩素ガス、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸塩、tert-ブチルハイポクロライド、二塩化酸素、N−クロロコハク酸イミド、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、トリクロロイソシアヌル酸等が使用できる。
【0111】
これら塩素化剤の中でも、塩素ガスが好ましい。塩素ガスを用いる場合は、一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の有機溶媒溶液に塩素ガスを吹き込むことによって反応を行うことができる。
【0112】
塩素化剤は、一般式(2)の4−ジチオアゼチジノン化合物1モルに対して、通常1〜300モル程度、好ましくは1〜50モル程度使用される。
【0113】
この反応の反応温度は、−80〜25℃程度、好ましくは−40〜0℃である。該反応は、出発物質である一般式(2)で表される化合物が消失するまで行えばよいが、一般的には0.01〜10時間、好ましくは0.1〜5時間行えばよい。
【0114】
上記塩素化A又は塩素化Bにより得られる本発明の目的化合物(1)は、通常の分離手段により反応系内より分離され、更に精製することができる。この分離及び精製手段としては、例えば蒸留法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、親和クロマトグラフィー、プレパラティブ薄層クロマトグラフィー、溶媒抽出法等を採用できる。
【0115】
上記反応式−1において、出発原料として用いられる一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物は、文献未記載の新規化合物である。
【0116】
一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物は、例えば、下記反応式−2に示す方法に従い製造することができる。
反応式−2【0117】
【化21】
【0118】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記に同じ。]
【0119】
上記反応式−2によれば、一般式(3)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の1位N上の置換αケトエステルを加溶媒分解することによって、一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造することができる。
【0120】
例えば、一般式(3)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物をアルコール又はアルコール水溶液中で撹拌することによって、一般式(2)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を容易に製造できる。
【0121】
上記反応で使用されるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n―プロパノール、イソプロパノール、n―ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール等の炭素数1〜8の直鎖状又は分枝鎖状のアルコールを挙げることができる。これらの中でも、メタノールが好ましい。これらのアルコールは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0122】
本反応では、アルコールを単独使用としてもよいが、アルコール水溶液として使用するのが好ましく、その場合、反応系に存在する水1重量部に対して、アルコールを通常3〜20重量部程度、好ましくは5〜15重量部を混合して使用するのがよい。
【0123】
本反応の温度は、通常0〜80℃程度で行うことができ、好ましくは5〜30℃である。反応時間は、出発物質である一般式(3)で表される化合物が消失するまで行えばよいが、一般的には0.5〜24時間、好ましくは1〜20時間である。
【0124】
上記反応式−2において、出発原料として用いられる一般式(3)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物は、文献未記載の新規化合物である。
【0125】
一般式(3)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物は、例えば、下記反応式−3に示す方法に従い製造することができる。
反応式−3【0126】
【化22】
【0127】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記に同じ。]
【0128】
上記反応式−3によれば、一般式(4)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の1位N上の置換基のオレフィン二重結合部分をオゾン分解することによって、一般式(3)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造することができる。
【0129】
例えば、一般式(4)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の有機溶媒溶液にオゾンを吹き込むことによって、一般式(3)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造できる。
【0130】
この反応で使用される有機溶媒としては、塩素化Bで使用される有機溶媒を広く使用することができ、それら中でも、酢酸エチル、ジクロロメタン、アセトンが好ましい。これらの有機溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0131】
有機溶媒の使用量は、一般式(4)の4−ジチオアゼチジノン化合物1kg当たり、通常5〜200リットル程度、好ましくは10〜100リットル程度である。
【0132】
本反応の温度は、通常−90〜30℃程度、好ましくは−85〜0℃である。反応時間は、出発物質である一般式(4)で表される化合物が消失するまで行えばよいが、一般的には10分〜2時間、好ましくは15分〜1時間である。
【0133】
上記反応式−3において、出発原料として用いられる一般式(4)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物は、文献未記載の新規化合物である。
【0134】
一般式(4)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物は、例えば、下記反応式−4に示す方法に従い製造できる。
反応式−4【0135】
【化23】
【0136】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記に同じ。]
【0137】
上記反応式−4によれば、一般式(5)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の1位N上の置換基の2重結合を異性化することによって、一般式(4)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造することができる。
【0138】
例えば、一般式(5)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物の溶液に塩基を加え、撹拌することによって、一般式(4)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造できる。
【0139】
この反応の反応溶媒としては、有機溶媒、有機溶媒と水の混合溶媒を使用することができる。
【0140】
有機溶媒としては、塩素化Bで使用される有機溶媒を広く使用することができる。それら中でも、ジクロロメタン、トルエン及び酢酸エチルが好ましい。これらの有機溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0141】
有機溶媒の使用量は、一般式(5)の4−ジチオアゼチジノン化合物1kg当たり、通常2〜200リットル程度、好ましくは3〜100リットル程度である。
【0142】
塩基としては、公知の有機塩基及び無機塩基を広く使用できる。
【0143】
有機塩基としては、例えば、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のN,N,N−トリ低級アルキルアミン;N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン等のN−低級アルキルアザシクロアルカン;N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のN−低級アルキルアザオキシシクロアルカン;N−ベンジル−N,N−ジメチルアミン、N−ベンジル−N,N−ジエチルアミン等のN−フェニル低級アルキル−N,N−ジ低級アルキルアミン;N,N−ジメチルアニリン等のN,N−ジアルキル芳香族アミン;ピリジン等の含窒素芳香族アミン;ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等の二環式アミンやこれらの混合物等が挙げられる。無機塩基としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩;炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸アルカリ土類金属塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ金属塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属塩;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属塩;水素化カルシウム等の水素化アルカリ土類金属塩;酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属酸化物等やこれらの混合物が挙げられる。
【0144】
これらの中でもトリエチルアミンが好ましい。
【0145】
上記有機塩基及び無機塩基は、混合して使用してもよい。
【0146】
塩基の使用量は、処理すべき一般式(5)の4−ジチオアゼチジノン化合物に対して、通常0.1〜5当量、好ましくは0.5〜2当量である。
【0147】
本反応の温度は、通常0〜100℃程度、好ましくは5〜40℃である。反応時間は、出発物質である一般式(5)で表される化合物が消失するまで行えばよいが、一般的には1〜24時間、好ましくは2〜20時間である。
【0148】
反応式−4において、出発原料として用いられる一般式(5)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物は、文献未記載の新規化合物である。
【0149】
一般式(5)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物は、例えば、下記反応式−5に示す方法に従い製造することができる。
反応式−5【0150】
【化24】
【0151】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、前記に同じ。]
【0152】
上記反応式−5によれば、一般式(6)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物の開環反応を行うことによって、一般式(5)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造することができる。
【0153】
例えば、一般式(6)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物と一般式(14)で表されるチオール化合物とを加温下反応させることにより、一般式(5)で表される4−ジチオアゼチジノン化合物を製造できる。
【0154】
この反応で用いられる溶媒としては、塩素化Bで使用される有機溶媒を広く使用することができる。それら中でも、芳香族炭化水素、カルボン酸エステル、エーテル系溶媒が好ましく、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテルが特に好ましい。これらの有機溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0155】
有機溶媒の使用量は、一般式(6)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物1kg当たり、通常2〜200リットル程度、好ましくは3〜100リットル程度である。
【0156】
本反応の温度は、通常80〜150℃程度、好ましくは90〜130℃である。反応時間は、出発物質である一般式(6)で表される化合物が消失するまで行えばよい。
【0157】
上記反応式−5において出発原料として用いられる一般式(6)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物は、入手が容易な公知の化合物であり、例えば特開昭59−112989号公報に開示されている製造方法により製造される。
【0158】
また、一般式(6)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物の立体異性体の1つである一般式(6−A)で表される化合物は、下記スキーム2に従って製造することができる。
【0159】
【化25】
【0160】
スキーム 2
[式中、R
1、R
2、X
1、X
2は、前記に同じ。]
【0161】
一般式(6−A)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物は、例えば、下記の反応式−6に示す方法に従い製造することができる。
反応式−6【0162】
【化26】
【0163】
[式中、R
1及びR
2は、前記に同じ。]
【0164】
上記反応式−6によれば、一般式(6−A)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物は、一般式(7)で表される化合物の水酸基をR
1基で保護することにより製造される。
【0165】
水酸基を保護する方法としては、例えば、Theodora W. Greene 著の "Protective Groups in Organic Synthesis, 1981 by John Wiley & Sons. Inc." の第2章(第10〜118頁)に記載されている各種条件を適用することができる。
【0166】
また、本発明の一般式(7)で表される化合物は、例えば、下記の反応式−7に示す方法に従い製造することができる。
反応式−7【0167】
【化27】
【0168】
[式中、R
2およびX
1は、前記に同じ。]
【0169】
上記反応式−7によれば、一般式(7)で表される化合物は、一般式(8)で表される化合物を還元することにより製造される。還元反応としては、例えば、Ishiwata A. et al., Organic Letters, 2000年, Vol.2, No.18, p.2889-2892に記載されている各種条件を適用することができる。
【0170】
還元反応は、一般式(8)で表される化合物を、通常の有機反応に用いられる還元剤と反応させることにより行うことができる。
【0171】
上記反応式−7で使用される還元剤としては、例えば白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム等の接触水素触媒、亜リン酸エステル、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の三価のリン化合物、ジメチルスルフィド等が挙げられる。これらの中でも三価のリン化合物が好ましく、トリブチルホスフィンが更に好ましい。
【0172】
上記反応式−7に示される反応は、一般に還元反応で使用される通常の溶媒中で行われる。
【0173】
上記反応式−7において出発原料として用いられる一般式(8)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物は、文献未記載の新規化合物である。
【0174】
また、本発明の一般式(8)で表される化合物は、例えば、下記の反応式−8に示す方法に従い製造することができる。
反応式−8【0175】
【化28】
【0176】
[式中、R
2は、前記に同じ。X
1及びX
2は、同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。]
【0177】
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。これらの中でもX
1及びX
2何れも臭素原子が好ましい。
【0178】
上記反応式−8によれば、一般式(8)で表される化合物は、一般式(9)で表される化合物にグリニャール試薬を反応させ、更に生成する化合物にアセトアルデヒドを反応させることにより、製造される。一般式(9)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物を使用することによって、極めて立体選択性良く目的物質を得ることが出来る。
【0179】
上記反応式−8においては、公知のグリニャール試薬をいずれも使用できる。その具体例としては、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムヨージド、n−プロピルマグネシウムクロリド、n−プロピルマグネシウムブロミド、n−プロピルマグネシウムヨージド、イソプロピルマグネシウムクロリド、イソプロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムヨージド、n−ブチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムブロミド、n−ブチルマグネシウムヨージド、イソブチルマグネシウムクロリド、イソブチルマグネシウムブロミド、イソブチルマグネシウムヨージド、tert−ブチルマグネシウムクロリド、tert−ブチルマグネシウムブロミド、tert−ブチルマグネシウムヨージド等のC
1−4アルキルマグネシウムハライドを例示できる。
【0180】
これらグリニャール試薬の中でも、C
1−2アルキルマグネシウムハライドが好ましく、エチルマグネシウムクロリド及びエチルマグネシウムブロミドが特に好ましい。
グリニャール試薬は、一般式(9)で表される化合物1モルに対して、通常1〜10モル程度、好ましくは1〜4モル程度使用される。
【0181】
上記反応式−8に示される反応は、一般にグリニャール反応で使用される通常の溶媒中で行われる。用いられる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等の鎖状もしくは環状のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、アニソール等の芳香族炭化水素等が挙げられる。また、これら溶媒を主溶媒とし、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類等を併用することもできる。全溶媒中に占める主溶媒の割合は、通常80容量%以上、好ましくは90容量%以上である。
【0182】
これら溶媒は、一般式(9)で表される化合物1kg当たり、通常0.5〜200リットル程度、好ましくは1〜50リットル程度使用される。
【0183】
また、上記反応は、冷却下及び室温下のいずれでも進行するが、冷却下で反応を行うのが好ましい。該反応は、通常−100〜30℃、好ましくは−78〜0℃で行われ、一般に0.1〜3時間程度、好ましくは0.5〜1時間程度で完結する。
【0184】
本発明では、次に一般式(9)で表される化合物とグリニャール試薬との反応により生成する化合物(以下この化合物を「化合物B」ということもある)にアミン化合物を配位させるのが好ましい。本発明では、化合物Bを反応系内から単離した後、次の反応に供してもよいが、作業効率等の観点から、反応混合物から単離することなく次の反応に供するのが望ましい。
【0185】
アミン化合物としては、例えば、一般式(11)
【0186】
【化29】
【0187】
[式中、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なって、C
1−4アルキル基、C
3−8シクロアルキル基又はフェニル基を示す。R
5及びR
6は、互いに結合してC
2−6アルキレン基を示してもよい。]
で表されるモノアミン化合物、一般式(12)
【0188】
【化30】
【0189】
[式中、R
7、R
8、R
9及びR
10は、同一又は異なって、水素原子又はC
1−4アルキル基を示す。R
7及びR
9並びにR
8及びR
10は、互いに結合してC
1−4アルキレン基を示してもよい。lは2〜4の整数を示す。]
で表されるジアミン化合物、一般式(13)
【0190】
【化31】
【0191】
[式中、R
11、R
12、R
13、R
14及びR
15は、各々C
1−4アルキル基を示す。m及びnは、2〜4の整数を示す。]
で表されるトリアミン化合物等を挙げることができる。これらのアミン化合物は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。これらのアミン化合物の中でも、一般式(13)で表されるトリアミン化合物が好ましい。
【0192】
一般式(11)で表されるモノアミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジシクロへキシルメチルアミン、N-メチルピペリジン、トリフェニルアミン等を挙げることができる。モノアミン化合物の中では、トリエチルアミン及びエチルジイソプロピルアミンが好ましい。
【0193】
一般式(12)で表されるジアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を挙げることができる。ジアミン化合物の中では、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが好ましい。
【0194】
一般式(13)で表されるトリアミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタエチルジエチレントリアミン等を挙げることができる。トリアミン化合物の中では、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミンが好ましい。
【0195】
これらアミン化合物は、入手が容易な公知の化合物であるか、又は公知の方法に従って容易に製造できる化合物である。
【0196】
上記アミン化合物は、出発原料である一般式(9)で表される1−オキシドペニシラン酸化合物1モルに対して、通常1〜10モル程度、好ましくは1〜4モル程度使用される。
【0197】
また、アミン化合物は、グリニャール試薬1モルに対して、通常1〜10モル程度、好ましくは1〜3モル程度使用されるが、アミン化合物は、グリニャール試薬とほぼ等モルの割合で使用するのが望ましい。
【0198】
化合物Bへのアミン化合物の配位は、冷却下及び室温下のいずれでも進行するが、冷却下で反応を行うのが好ましい。具体的には、該配位は、通常−80〜20℃、好ましくは−78〜−40℃で行われ、一般に0.1〜3時間程度、好ましくは0.5〜2時間程度で該反応は完結する。
【0199】
本発明では、更に化合物Bにアミン化合物が配位した化合物(以下この化合物を「化合物C」ということもある)にアセトアルデヒドを反応させる。本発明では、化合物Cを反応系内から単離した後、次の反応に供してもよいが、作業効率等の観点から、反応混合物から単離することなく次の反応に供するのが望ましい。
【0200】
本発明において、アセトアルデヒドは、一般式(9)で表される化合物1モルに対して、通常1.5〜10モル程度、好ましくは3〜8モル程度使用される。
【0201】
化合物Cとアセトアルデヒドとの反応は、冷却下及び室温下のいずれでも進行するが、冷却下で反応を行うのが好ましい。具体的には、該反応は、通常−80〜20℃、好ましくは−40〜0℃で行われ、一般に1〜10時間程度、好ましくは1〜6時間程度で該反応は完結する。
【0202】
本発明の一般式(9)で表される化合物は、入手が容易な公知の化合物であり、例えばTetrahedron, Vol.52, No.7 pp2343-2348,1996、Tetrahedron Letters, Vol.34, No.49, 997877-7880, 1993, Heterocycles, Vol. 32, No. 8, 1991 に開示されている製造方法に従い製造することができる。
【0203】
上記反応式−2、反応式−3、反応式−4、反応式−5、反応式−6、反応式−7、及び反応式−8に示す各反応は、それぞれ好適に進行し、各々の目的化合物を好収率で得ることができる。
【0204】
これらの反応式で製造される各々の目的化合物は、通常の分離手段により反応系内より分離され、更に精製することができる。この分離及び精製手段としては、例えば蒸留法、再結晶法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、親和クロマトグラフィー、プレパラティブ薄層クロマトグラフィー、溶媒抽出法等を採用できる。