【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、各々が複数の異なった表示状態に構成可能である第1のエレクトロウェッティング素子および第2のエレクトロウェッティング素子を含む複数のエレクトロウェッティング素子を有するディスプレイ機器と、前記複数のエレクトロウェッティング素子を異なった表示状態の間で切り替えるために前記複数のエレクトロウェッティング素子を電気的にアドレッシングするための表示コントローラとを含み、前記表示コントローラは、前記第1のエレクトロウェッティング素子を、第1のアドレッシング間隔で隔てて2回続いてアドレッシングし、前記第2のエレクトロウェッティング素子を、第2のアドレッシング間隔で隔てて2回続いてアドレッシングするように構成され、前記第2のアドレッシング間隔は前記第1のアドレッシング間隔より長い、エレクトロウェッティングシステムが提供される。
【0007】
本発明は、エレクトロウェッティング素子の選択的なアドレッシングを提供するものである。したがって、1個のエレクトロウェッティング素子は、他より短い間隔の後に再アドレッシングされる。このことは、アドレッシングされるべき素子(表示ピクセルでありうる)のみが、所望の表示状態に構成するためにアドレッシングされることを意味する。ここで、素子をアドレッシングするという文脈において用いられる、「2回続いて(twice subsequently)」という語句は、エレクトロウェッティング素子がアドレッシング間隔の開始時に1回アドレッシングされ、再度、アドレッシング間隔の終わりにアドレッシングされることを意味する。2回の連続アドレッシング動作(subsequent addressing actions)は、それゆえ、アドレッシング間隔により隔てられている。本発明の文脈でのエレクトロウェッティング素子のアドレッシングは、エレクトロウェッティング素子の表示状態のリフレッシュ動作、エレクトロウェッティング素子の表示状態のリセット、またはエレクトロウェッティング素子の表示状態の変更を含む。
【0008】
選択的なピクセルアドレッシングは、顕著な利点を有している。ディスプレイへより少ないデータが送られる必要があるので、ピクセルのアドレッシングを制御するメモリが、画像フレーム全体のピクセルデータを記憶する必要がない。アップデートまたはリフレッシュのために選択されたピクセルに関連するデータのみが記憶される必要があり、必要となるメモリサイズを著しく減少させる。さらに、フレームごとに各ピクセルをアドレッシングすることに比べて、ディスプレイをアップデートするために供給されるべき情報が著しく少ないので、ディスプレイ機器の消費電力が著しく減少される。すなわち、データがアドレッシングされる必要のない要素へ送られる必要がない。また、例えば、より少ない情報が供給される必要があり、また、ディスプレイのアドレッシングが起こらない期間には電子機器が長い期間スイッチを切っておかれてもよいという事実によって、表示状態内の情報が静的であるかまたはアップデートの頻度が少ない場合には、ディスプレイのアドレッシングレートが著しく減少されることができる。事実、第2のアドレッシング間隔の終了に近づいているのでなければ、表示状態を変化しないピクセルにデータが供給される必要がないため、消費電力はさらに減少される。さらに、データクロックレートが著しく低くなることができ、例えば表示コントローラにおける消費電力の減少を導く。さらに加えて、フレームごとにより少ないピクセルをアドレッシングすることにより、ディスプレイからの電磁妨害が減少し、電磁適合性(EMC)が向上する。
【0009】
各フレームの期間中にすべての行をアドレッシングするのではなくディスプレイがピクセルごとにアドレッシングされることが可能な場合に生じる他の利点は、情報内容が強く制限されることであり、これは、データの大きな圧縮および情報の交換に必要とされるデータクロックレートに関連する大きく減少されたデータレートを生じる。このことは、特にデータ受信のために低バンド幅を有する携帯機器にとって利益がある。
【0010】
エレクトロウェッティングディスプレイは、ビデオ機能を有している。エレクトロウェッティングディスプレイの典型的な用途は、腕時計および携帯電話を含むが、動画鑑賞用のビデオディスプレイも含んでもよく、これらはすべて低消費電力を有する。これは驚くべきことである。すなわち、消費電力は切り替え速度に関連し、高速のディスプレイ内容の変更は、高い切り替えレートを意味する。しかしながら、通常、殆どの画像内容はビデオ内で「フレーム」から「フレーム」への変化をせず、それゆえ、本発明は、この洞察を、ディスプレイの消費電力を減少させると同時にディスプレイ内の画像内容の高速の切り替え速度の機能を提供するために用いているのである。
【0011】
米国特許第5751266号が双安定性液晶(LC)セルの選択的ピクセルアドレッシングについて記載しており、米国特許第6504524号が双安定性電気泳動ピクセルのグループの選択的アドレッシングについて記載している。これらの先行技術文献内に開示されたピクセルは、以下に説明されるように、準安定な(quasi-stable)エレクトロウェッティング素子とは異なっている。なぜなら、本発明のエレクトロウェッティング素子の表示状態は、双安定性セルとは異なり、ある一定の保持間隔の後にリフレッシュされなければならないからである。米国特許第6504524号は、最終的に「ブランキング(blanking)」を必要とする双準安定性(bimetastable)ピクセルに言及するが、ここで使用されている用語「双安定」は、ピクセルからアドレッシング電圧が取り去られた後に、ピクセルが所望の用途について十分長くその光学状態を保持することを意味する。これは、ある一定の表示状態の最中に電圧が印加されることを必要とし、かつ準安定である、本発明のエレクトロウェッティング素子とは異なる。加えて、ピクセル表示状態をリセットするために高電圧パルスを印加することが必要であるため、隣接ピクセル間でクロストークが発生することにより、このような電気泳動ピクセルの選択的ピクセルアドレッシングは、低品質の画像を形成する。さらに、電気泳動またはLCピクセルはビデオを表示するのには十分迅速にアップデートされることができない。米国特許第6504524号のシステムにおいては、表示状態が印加電圧が取り去られる際に変化しないか、または非常にゆっくり変化するので、ビデオディスプレイには不向きである。また、LCディスプレイは、エレクトロウェッティングディスプレイとは異なり反転スキーム(inversion scheme)を必要とする。それゆえ、エレクトロウェッティングディスプレイにおける選択的ピクセルは、実施がより簡単である。
【0012】
国際出願第2007/049196号は、アクティブ・マトリクス・ディスプレイ機器におけるエレクトロウェッティング素子の使用を開示することに留意されたい。
【0013】
しかし、選択的ピクセルアドレッシングについては言及していない。ディスプレイのエレクトロウェッティング素子を選択的にアドレッシングすることは、その準安定性により、驚くべき利点を有する;異なる間隔の後に異なるピクセルをアドレッシングするのではなく、画像の劣化を避けるため同間隔の後に各要素をリフレッシュすることが期待されるだろう。本発明の洞察は、エレクトロウェッティング素子が既知の非双安定性ピクセルと比較して、表示状態のより長い保持時間を有しているという事実にある。事実、さらに長い保持状態すら、蓄積キャパシタを用いることで得ることができる。米国公開第2005/0057552号は、液晶セルの選択的ピクセルアドレッシングについて記載している。幾つかのピクセルは60Hzのフレームレートでリフレッシュされるが、他は15Hzのフレームレートでリフレッシュされる。これらのピクセルは最小フレームレート15Hzに制限され、15Hzより低いフレームレートは開示されていない。事実、15Hzより低いフレームレートは、LCDに必要とされる反転アドレッシングと組み合わせられ、不利である。なぜなら、見る者が、さらに下記で説明されるように画像のフリッカを感じうるためである。本発明のエレクトロウェッティング素子の準安定性は、より低いリフレッシュレートの使用を可能にし、このことは、画像のフリッカを減少させ、リフレッシュなしでより長い時間ピクセル表示状態を保持することを可能にする、
【0014】
LC素子は電界の印加中に素子に蓄積された永久電荷に起因する性能の劣化を示す。電荷蓄積は残像および/または階調シフトに起因する画質低下を引き起こす。劣化は、LC素子に印加される電圧を規則的なサイクルで+Vと−Vとの間で交番させることにより低減させることが可能である。サイクル周波数を15Hzより低下させるとき、電荷蓄積が起こる。この電荷蓄積は印加される電圧をオフセットさせ、その結果、サイクルの負の部分と正の部分との間に異なる光学像を生じさせる。したがって、15Hz未満のリフレッシュレートは、人間の眼がおよそ5〜15Hzの周波数での強度変動に対して非常に感度が高いので、明瞭に視認できるフリッカを引き起こす。これらの現象がLCディスプレイのフレームレートを15Hz以上に制限する。LC素子がスイッチと一緒に使用されるとき、保持時間は、素子の性能の劣化を回避するために67ms未満でなければならない。
【0015】
本発明はエレクトロウェッティング素子が液晶(LC)素子とは異なる挙動を示すという洞察に基づいている。エレクトロウェッティング素子は電圧の印加中に電荷蓄積を示さない。したがって、劣化なしに表示状態を維持するために交流電圧が必要とされない。ある特定の表示状態が維持されなければならない全期間中にエレクトロウェッティング素子を制御するため直流電圧を使用する可能性は、70msより長い期間に亘る保持状態の適用を可能にする。エレクトロウェッティング素子の容量および漏れ電流は、70msより長い保持状態の間に素子に必要とされる電圧を実質的に維持するための大きさを有する。「実質的に維持」されるとは、電圧の変化が素子の表示状態に可視的な変化を引き起こさないことを指し、この電圧の変化は10%未満の変化でありうる。素子の表示状態は流体の位置によって決定され、素子中の流体の位置は電圧によって決定されるので、この位置は保持状態の間に維持される。このような素子の状態は、したがって、準安定状態と呼ばれる。
【0016】
LC素子では、LC材料を通る漏れ電流は素子の性能に影響を与える。漏れは、電圧がセルギャップの両端間に印加されるとき、素子内部で電荷を移動させる。主な電圧降下が今度は電極とLC材料との間の誘電体層の両端間に発生し、その結果、LC材料の両端間の電圧降下が縮小される。この電圧降下の縮小は、液晶素子の保持時間が大体において液晶分子の零電圧状態への緩和によって決定されるので、光学状態を変更し、その結果、保持時間を制限する。
【0017】
漏れ電流は、LC材料の帯電および絶縁破壊を生じ、これは、LC素子の性能にさらなる影響を及ぼす。また、LCDにおいては、ピクセル容量はより低く、容量の変化もより少ない。このことは、エレクトロウェッティングディスプレイと比較して、LCDを、漏れ電流起因のピクセル電圧の変化の影響を受けやすくする。
【0018】
LC素子の保持状態の期間は、素子の容量の大きさと漏れ電流との組み合わせによっても制限される。保持時間は容量を増大させることによって増大される場合がある。この容量は、素子の電極間の容量と、ディスプレイ機器の支持板に一体化された蓄積キャパシタとを含む。容量は、例えば、蓄積キャパシタの面積を増大させること、蓄積キャパシタ中の誘電体の厚さを減少させること、または、蓄積キャパシタに使用される誘電体の誘電率を増大させることによって増大される場合がある。しかし、蓄積キャパシタの面積の増大は、ピクセル開口面積ならびにトランジスタ、行の配線、および、列の配線のようなシステムのその他のコンポーネントが利用できる面積も多く占めることによりピクセルの光学透過を減少し、漏れ電流を増大させる場合がある。容量を増大するための別の可能性として、誘電体の厚さまたは誘電率のいずれかを変更することが挙げられる。しかし、この変更は、同じ誘電体が通常は薄膜トランジスタ(TFT)および蓄積キャパシタによって使用されるため、同じ素子中のTFTの性能に重大な影響を与えるので、製造収率に悪影響をもたらす。容量を増大するために誘電体の厚さまたは誘電率を変更することは、それゆえ、好ましくない。所望の表示状態を維持するためのLC素子の保持状態は、それゆえ220msより短くされなければならない。LC素子は、素子中での上記の電荷蓄積が、交流電圧がフリッカを生じさせることなく4.5Hzに至るまでの周波数で素子に供給されうる程度まで縮小されているならば、非常に長い期間に亘ってLC素子の表示状態だけを維持可能であることに留意されたい。
【0019】
漏れによってエレクトロウェッティング素子に引き起こされる問題はより少ない。第1の流体を通る電流の漏れは役割がないので、素子中に電荷の移動はない。素子は、比較的大きい容量および非常に低い漏れ電流を有する。したがって、素子は長い保持時間を有する。流体の位置は印加電圧およびそれゆえ印加電界によって決定される。エレクトロウェッティング素子中の流体の位置はスイッチが開いているとき長期間に亘って維持される。その結果、ディスプレイ機器で使用されるときの素子は、流体の位置によって決定される素子の表示状態を同様により長期間に亘って維持する。
【0020】
好ましくは、第2のアドレッシング間隔の終わりに表示コントローラが第2のエレクトロウェッティング素子の表示状態をリフレッシュするように構成される。用語「リフレッシュ」は、ここで、第2の間隔の最初と同じ表示状態をアドレッシング動作の後に維持するように、素子をアドレッシングしてその表示状態をリフレッシュするという意味で用いられる。本実施形態における第2アドレッシング間隔は、その後の表示状態が、ピクセル画像の表示に対して受け入れがたい表示状態へと劣化するような素子の保持時間に対応している。この劣化は抵抗の損失に起因する、すなわち素子内の電流漏れにより起こる。リフレッシュは、素子に印加される電圧を、表示状態が必要とする意図した印加される電圧値に設定し直すことを含む。それゆえ、第2のアドレッシング間隔の終わりに第2の素子をアドレッシングすることにより、準安定素子の表示状態は劣化の前と同様な状態にリフレッシュされ、そのようにして画像の高品質を保持する。このようなリフレッシュは、それゆえ、第2の間隔の終わりまでに劣化し始めた表示状態から、表示状態を回復させることによる表示状態の変更を伴ってよい。米国特許第6504524号に記載されているブランキング信号が、すべてのピクセルを同じ表示状態に構成する方法に関することに留意されたい。これは、電圧が印加される際に画像の劣化を防ぐために用いられる、本発明においてここで説明されたリフレッシュとは異なっている。
【0021】
好ましくは、第2のアドレッシング間隔の終わりに表示コントローラが第2のエレクトロウェッティング素子の表示状態をリセットするように構成される。ここで用いられる用語「リセット」は、リセット動作の後に第2のアドレッシング間隔の開始時と同じ表示状態を保持するために素子をアドレッシングするという意味合いで用いられる限り、ここで用いられる用語「リフレッシュ」と類似している。リセットは、逆流による表示状態の劣化後に所望の表示状態を回復するために、好ましくは見る者が劣化に気づく前に、適用される。逆流とは、漏れ電流がない中で一定の非零電圧がエレクトロウェッティング素子で維持されるにもかかわらず、少なくとも一方の流体の位置が、その素子に零電圧が印加されているときのその流体の位置に後退する傾向がある現象である。それゆえ、エレクトロウェッティング素子の非零電圧表示状態は、非零電圧の適用にもかかわらず零電圧表示状態に戻る傾向がある。逆流はLCディスプレイには発生せず、したがってLCディスプレイは、ここで述べたリセットを必要としない。
【0022】
リセットは、素子両端間に印加される電圧の設定を、一時的に、例えば約1ms間、0Vまたは0V近くに設定し、それから、意図される表示状態を得るために必要とされる値へ印加電圧を戻すことを伴う。このようにして、逆流によるいかなる表示劣化も解決される。リセットの持続時間は流体の構成に実質的に影響を与えないのに十分短い、すなわち、好ましくは素子を見る者が表示状態の変化を感じず、それゆえそれ以上表示状態を劣化させない。
【0023】
素子のリセットは当該素子のリフレッシュとは異なる時間に行われてよい。あるいは、素子のリフレッシュとリセットとは一緒に、好ましくは同時に行われてよい。有利には、リセットは第2のアドレッシング間隔の終わりにリフレッシュと同時に起こるように構成されてよい。リセットはリフレッシュより少ない頻度で行われてよい。それゆえ、ディスプレイがリフレッシュとリセットとを一緒に実行するように構成されている実施形態では、これは、必要なときに、複数の第2のアドレッシング間隔の持続時間に等しいアドレッシング間隔の終わりに、素子をリセットすることを含んでよい。あるいは、リフレッシュはリセットより少ない頻度で行われてよい。このようにすることで、エレクトロウェッティング素子の選択的ピクセルアドレッシングが、単純で効率的な方法で実現され、いかなる逆流および電流漏れ問題も克服し、選択的ピクセルアドレッシングを複雑にすると共に消費電力を増加する別個のリセットおよびリフレッシュ動作を避ける。
【0024】
ここで、第2のアドレッシング間隔の終わりにエレクトロウェッティング素子の表示状態をリフレッシュするという文脈において、用語「リフレッシュ」が使用されるとき(下記に述べる実施形態についても含む)、リフレッシュに代わるものとしてリセットが適用されてよいという、または、リセットが、例えば、第2のアドレッシング間隔の終わりにリフレッシュと同時に組み合わされて適用されてよいというさらなる実施形態が想定されるということが理解されるべきである。
【0025】
さらに、好ましくは、第2のアドレッシング間隔は人間の眼が最も感度が高いアドレッシング間隔よりも長い。人間の眼は約5〜15Hzの周波数でアドレッシングされることに起因するピクセル表示状態の輝度変化に最も感度が高い。これらの周波数において、ピクセル表示状態の輝度レベル(または反射レベル)の少しの変化(例えば5〜10%の)は人間の眼にはすでにフリッカとして見えるかもしれない。人間の眼は約5〜15Hzの範囲外のアドレッシング周波数に起因する輝度変化にはより感度が低く、それゆえ、このような変化をフリッカとして感じる前に、ピクセル輝度レベル(または反射率)のより大きな変化を許容する。約5Hzより低い周波数でのアドレッシングに起因する輝度変化は、おもに画像の明るさの変化と感じられる。約15Hzより高い周波数における低減された眼の感度は、眼の統合効果に起因している。これらの周波数における輝度変化は、平均画像明るさの変化として少なくとも部分的に感じられる。周波数5、10および15Hzは、それぞれ200、100および66.67msのアドレッシング間隔に相当する。素子が同じ表示状態のままでの、例えば約5〜15Hzより遅いレートでの第2エレクトロウェッティング素子のアドレッシング(例えばリフレッシュ)は、人間の眼には(まったく感知されないのでなければ)ほとんど感知されない。このことは、これらの低周波数における素子のアドレッシングに関連するいかなる表示状態の変化もフリッカとして検知されないことを意味している。
【0026】
エレクトロウェッティング素子の表示状態輝度における変化は小さくすることができる。例えば、全体の表示状態の10%または5%より小さい。これは人間の眼では気づかれない。素子に並列に接続された蓄積キャパシタが、輝度変化を減少させるために用いられてもよい。エレクトロウェッティング素子は、それゆえ約5〜15Hzの範囲を含むいかなるアドレッシング周波数に対応する間隔でアドレッシングされてもよい。フリッカの認知はピクセルの輝度に依存するので、そのレベルは、この周波数でアドレッシングすることに起因するいかなる輝度変化も人間の眼がフリッカとして感知しないよう十分低く選択される必要がある。それゆえに、エレクトロウェッティングディスプレイ機器は、フリッカのない高品質の画像を提供されることができる。
【0027】
本発明のさらなる実施形態において、表示コントローラが、第1のアドレッシング間隔の終わりに第1のエレクトロウェッティング素子の表示状態を変化させるように構成されている。用語「変化」は、ここで、素子をアドレッシングしてその表示状態をアップデートし、アドレッシング動作の後に第1の間隔の開始時におけるものとは異なる表示状態を与えるという意味で用いられる。第1の間隔が第2の間隔より短いので、第1のエレクトロウェッティング素子は、それゆえ、第2のエレクトロウェッティング素子の表示状態を変化させることなく(これは現在の表示状態のままである)、その表示状態を異なる表示状態へとアップデートされるとよい。それゆえ、ディスプレイは減少した消費電力を有し、また画像データを受信するためにより低いバンド幅を必要とする。ディスプレイの追加のエレクトロウェッティング素子もまた、第1のアドレッシング間隔でその表示状態を変化されてよい。本発明の幾つかの実施形態において、ピクセルアドレッシングメカニズムは、その表示状態を変化されるものと異なり、表示状態を変えることなく他のエレクトロウェッティング素子をアドレッシングしてもよい。例えば、素子の行のすべてのエレクトロウェッティング素子がアドレッシングされてよいが、それらの素子の選択されたもののみが表示状態を変化される。
【0028】
好ましい実施形態において、第1のアドレッシング間隔は、人間の眼が最も敏感なアドレッシング間隔、例えば10または20msよりも短い。ある特定のアドレッシング周波数に対する人間の眼の感度については上述した。先行技術の双安定ディスプレイのピクセルは、エレクトロウェッティング素子について可能な長さより著しく長い最小間隔においてアップデートされることができる。それゆえ、双安定ディスプレイと異なり、本発明のエレクトロウェッティング素子は、第1の間隔が約5msまたはそれより短い(すなわち、アップデートレートが約200Hzまたはそれより高い)ような、より高いピクセル変化レートを有するビデオを提供することに適している。第1のアドレッシング間隔が、人間の眼が最も敏感なアドレッシング間隔より短くてよいので、感知しうるフリッカのない高品質のビデオが提供されることができる。約5msより長い第1の間隔もまた、例えばアナロググレイスケールディスプレイを用いて、ビデオ画像が表示されることを許容する。
【0029】
本発明のさらなる実施形態によると、複数のエレクトロウェッティング素子がパッシブ・マトリクス、アクティブ・マトリクスまたは直接駆動動作のために構成される。本発明は、それゆえ高レベルの設計自由度を与える種々のディスプレイ製造に適用されてもよい。
【0030】
好ましくは、本発明のエレクトロウェッティングシステムは、複数のエレクトロウェッティング素子のうちの少なくとも1つに電気的に接続される少なくとも1つのドライバ段を含み、表示コントローラは、複数のエレクトロウェッティング素子のうちの少なくとも1つの表示状態を決定するように少なくとも1つのドライバ段を制御するように構成され、ドライバ段は高インピーダンス状態を有する、オン状態およびオフ状態、さらには高インピーダンス状態を有するいわゆるトライ・ステートドライバ段を用いることは、本発明の利点がエレクトロウェッティングディスプレイにおいて簡単に効率的に提供されるようにする。直接駆動ディスプレイにおいて、1つのドライバ段は1つのエレクトロウェッティング素子に接続されることが可能である。高インピーダンスドライバ段はアクティブ・マトリクス表示にもまた使用されうる。このとき、高インピーダンスを有するアクティブ・マトリクスディスプレイ内のトランジスタ上にデータがサンプリングされる。さらなる実施形態において、少なくとも1つのドライバ段が複数のエレクトロウェッティング素子に電気的に接続されてよい。
【0031】
本発明の実施形態において、表示コントローラが複数のエレクトロウェッティング素子の各々の表示状態を略同時にリフレッシュするように構成される。それゆえ、各ピクセルの表示状態がリフレッシュされ、全体(グローバル)表示リフレッシュを与える。そのようなリフレッシュは、例えば各ピクセルをアップデートするために行われ、遅れのない画像が表示されることを確実にする。このリフレッシュは後述するようにMoving Picture Experts Group(MPEG)等のデータフォーマット画像に従うとよい。
【0032】
本発明の他の実施形態において、表示コントローラは複数のエレクトロウェッティング素子の第1の群の表示状態を所定の時点で略同時にリフレッシュし、複数のエレクトロウェッティング素子の第2の異なった群の表示状態を異なった所定の時点で略同時にリフレッシュするように構成される。幾つかのピクセルは他のピクセルと異なる間隔でリフレッシュされ、それにより表示の選択的リフレッシュを提供する。例えば、一度にすべてのピクセルがリフレッシュされることのないグローバル表示リフレッシュを与えるために、異なったピクセルの行が他の行のピクセルとは異なる瞬間にリフレッシュされることができ、これは、見る者が全部のピクセルのリフレッシュに気づくことを避けることになる。さらに、ディスプレイは、異なるアドレッシングレートを有する異なる部分を有してもよく、第1の部分は急速に変化する画像(例えばビデオ)を表示する一方で、第2の部分は静止またはゆっくりと変化する画像を表示できる。LCディスプレイは、交流電圧を用いてアドレッシングする必要があるため、異なった領域が異なったリフレッシュレートを有するように構成することはできない。これは、LCディスプレイの正しい動作のための適切な反転スキームを得るための幾つかの行/列をアドレッシングする必要に起因している。これに対し、エレクトロウェッティング素子は反転スキームが必要とされないので、直流電圧を用いて切り替えられることができる。
【0033】
好ましくは、エレクトロウェッティングシステムは、複数のエレクトロウェッティング素子の各々を最後にアドレッシングしてから経過した時間を示すデータを記憶するように構成されたメモリを有する。このようにして、第2のアドレッシング間隔の経過は、限られた準安定性によって表示状態の劣化が生じる前に各ピクセルの表示状態をリフレッシュするためにモニタされることができる。
【0034】
好ましい実施形態において、エレクトロウェッティングシステムは、第1の画像を表す入力画像データを連続した第2の画像を表す入力画像データと比較して前記複数のエレクトロウェッティング素子のうち何れが表示状態変化を必要とするか識別する出力画像データを生成するように構成される画像データプロセッサを含む。この比較を用いて、選択されたピクセルのみが表示状態変化をするように識別される。これは、電力消費および必要とされるディスプレイドライバのバンド幅を最小化する。
【0035】
さらなる好ましい実施形態において、エレクトロウェッティングシステムは、第1の画像と連続した第2の画像との間の画像差を表す入力画像データを処理して複数のエレクトロウェッティング素子のうち何れが表示状態変化を必要とするか識別するように構成される画像データプロセッサを含む。入力画像データ、例えばMPEGデータ、または類似の画像圧縮技術は、第2の画像の各ピクセルの表示状態の詳細を与えるのではなく、第1の画像と第2の画像との間の差、あるいはデルタデータといわれるものを識別しうる。そのようなデータ形式の使用は、選択的ピクセルアドレッシングの実施を簡単にし、効率的なデータ転送を可能にする。さらに、LCD技術で経験されるモーションまたはブロックアーチファクトのない高品質のビデオ画像を提供するために、本発明のエレクトロウェッティング素子の選択的ピクセルアドレッシングとともにMPEGデコーディングを使用することが考えられる。
【0036】
さらに好ましくは、周期的に、入力画像データは複数のエレクトロウェッティング素子の各々の表示状態を示す。MPEGは、例えば、上記の通り、連続画像間の差を示す。しかしながら、連続フレーム間のピクセルの表示状態における小さな変化は、新しい画像のデータに含まれるには十分大きくない可能性がある。それゆえ、周期的に、入力データはピクセルごとに現在の表示状態を示し、これらピクセルは、各ピクセルの表示状態が現在の画像に対して正しくなるようにそれに応じてアップデートされる。
【0037】
好ましい実施形態において、複数のエレクトロウェッティング素子は、第1のエレクトロウェッティング素子を含む第1の組および第2のエレクトロウェッティング素子を含む第2の組を有し、表示コントローラは、第1の組を、第1のアドレッシング間隔で隔てて2回続いてアドレッシングし、第2の組を、第2のアドレッシング間隔で隔てて2回続いてアドレッシングするように構成される。このように、個々のピクセルではなく、ピクセルの組(例えばピクセルのブロックまたは行)が、選択的にアドレッシングされることができる。換言すれば、1個より多い素子が第1のアドレッシング間隔でアドレットングされてよく、1個より多い素子が第2のアドレッシング間隔でアドレッシングされてよい。このことは、より大きなディスプレイのピクセルのアップデートまたはリフレッシュについてのより効率的なスキームをもたらしうる。さらに、メモリが、アドレッシングを必要とする行に関する記憶データのみを記憶することを必要とし、これは、より小さなメモリが用いられてよいことを意味する。さらに、より速いピクセル変化領域およびより遅いピクセル変化/リフレッシュ領域を有するディスプレイが構築されてよい。
【0038】
本発明のさらなる観点によると、複数のエレクトロウェッティング素子を異なった表示状態の間で切り替えるために複数のエレクトロウェッティング素子を電気的にアドレッシングするための表示コントローラであって、複数のエレクトロウェッティング素子は、第1のエレクトロウェッティング素子および第2のエレクトロウェッティング素子を含み、当該表示コントローラは、第1のエレクトロウェッティング素子を、第1のアドレッシング間隔で隔てて2回続いてアドレッシングし、第2のエレクトロウェッティング素子を、第2のアドレッシング間隔で隔てて2回続いてアドレッシングするように構成され、第2のアドレッシング間隔は第1のアドレッシング間隔よりも長い表示コントローラが提供される。
【0039】
本発明の別の観点によると、複数のエレクトロウェッティング素子のうちの少なくとも1つへの電気接続のためのドライバ段であって、該ドライバ段は、前記複数のエレクトロウェッティング素子を異なった表示状態の間で切り替えるために、表示コントローラの制御の下で、前記複数のエレクトロウェッティング素子のうちの少なくとも1つを電気的にアドレッシングするように構成され、前記複数のエレクトロウェッティング素子は、第1のエレクトロウェッティング素子および第2のエレクトロウェッティング素子を含み、前記ドライバ段は、前記第1のエレクトロウェッティング素子を第1のアドレッシング間隔の終わりにアドレッシングするのに、および前記第2のエレクトロウェッティング素子を第2のアドレッシング間隔の終わりにアドレッシングするのに適しており、前記第2のアドレッシング間隔は前記第1のアドレッシング間隔よりも長い、ドライバ段が提供される。ドライバ段は好ましくは高インピーダンス状態を有し、それゆえさらに詳細を後述するように、ディスプレイのトライ・ステート切り替えを提供する。
【0040】
さらなる本発明の観点は、第1のエレクトロウェッティング素子および第2のエレクトロウェッティング素子を含む複数のエレクトロウェッティング素子を有するディスプレイ機器を制御する方法であって、前記エレクトロウェッティング素子の各々が当該エレクトロウェッティング素子を電気的にアドレッシングすることにより複数の異なった表示状態に構成可能であり、当該方法は、
a) 前記第1のエレクトロウェッティング素子を、第1のアドレッシング間隔で隔てて2回続いてアドレッシングするステップと、
b) 前記第2のエレクトロウェッティング素子を、第2のアドレッシング間隔で隔てて2回続いてアドレッシングするステップと
を含み、前記第2のアドレッシング間隔は前記第1のアドレッシング間隔より長い、方法に関する。
【0041】
本発明のさらなる特徴および利点は、例示のためだけに記載され、添付図面を参照して行われた、発明の好ましい実施形態についての以下の説明から明らかとなろう。