特許第5791609号(P5791609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5791609炭化水素ガス流から酸性ガスを除去する極低温システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791609
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】炭化水素ガス流から酸性ガスを除去する極低温システム
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/02 20060101AFI20150917BHJP
   F25J 3/08 20060101ALI20150917BHJP
   F25J 3/00 20060101ALI20150917BHJP
   C10G 5/06 20060101ALI20150917BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   F25J3/02 B
   F25J3/08
   F25J3/00
   C10G5/06
   C10L3/00 B
【請求項の数】20
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2012-528795(P2012-528795)
(86)(22)【出願日】2010年7月22日
(65)【公表番号】特表2013-504737(P2013-504737A)
(43)【公表日】2013年2月7日
(86)【国際出願番号】US2010042927
(87)【国際公開番号】WO2011046658
(87)【国際公開日】20110421
【審査請求日】2013年7月12日
(31)【優先権主張番号】61/240,850
(32)【優先日】2009年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500450727
【氏名又は名称】エクソンモービル アップストリーム リサーチ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】カリネイン ジョン ティム
(72)【発明者】
【氏名】ノースロップ ポール スコット
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−507703(JP,A)
【文献】 特表2002−508057(JP,A)
【文献】 特表2005−519153(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/091317(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/049830(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0174678(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0266107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 5/06
C10L 3/00−3/12
F25J 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガス流から酸性ガスを除去するシステムであって、
極低温蒸留塔であって、主としてメタンで構成されたスプレー流を受け入れる凍結ゾーンを有し、前記原料ガス流を受け入れ、次に該原料ガス流をオーバーヘッドメタン流と二酸化炭素で構成された実質的に固形の物質に分離する蒸留塔と、
前記極低温蒸留塔の下流側に設けられ、前記オーバーヘッドメタン流を冷却し、該オーバーヘッドメタン流の一部分を前記スプレー流として前記極低温蒸留塔に戻す冷凍設備と、
前記凍結ゾーンの下に設けられ、前記実質的に固形の物質が前記凍結ゾーン内に沈殿しているときに前記実質的に固形の物質を受け入れ、該実質的に固形の物質を前記極低温蒸留塔から出るよう差し向けるコレクタトレーと、
前記実質的に固形の物質を受け入れて該実質的に固形の物質を主として二酸化炭素で構成された固体成分とメタンで構成された非固形物に分離する第1のフィルタと、
前記非固形物の少なくとも一部分を前記極低温蒸留塔に戻す液体還流ラインと、を備えている、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記コレクタトレーは、前記沈殿した実質的に固形の物質が落下して入る下降管を有する、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記コレクタトレーは、前記実質的に固形の物質を(i)重力流により、(ii)前記下降管内に配置された機械的輸送装置の作動により、(iii)前記スプレー流の一部分を前記コレクタトレー中に吹き込んで前記実質的に固形の物質に吹き付けることにより、又は(iv)これらの組み合わせによって前記極低温蒸留塔から出るよう差し向ける、
請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記極低温蒸留塔が、前記凍結ゾーンに上方に位置した上方精留ゾーンを備え、
前記極低温蒸留塔が、原料ガス流を前記凍結ゾーンの中に受け入れるように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記極低温蒸留塔が、前記凍結ゾーンの上方に位置した上方精留ゾーンと前記凍結ゾーンの下方に位置した下方蒸留ゾーンとを更に有し、
前記極低温蒸留塔が、原料ガス流を前記下方蒸留ゾーン中に受け入れさせるように構成されている、
請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記極低温蒸留塔は、ボトム流を前記下方蒸留ゾーンから放出するよう構成され、前記ボトム流は、液相の酸性ガスを含み、
前記液体還流ラインは、前記非固形物の少なくとも一部分を前記下方蒸留ゾーンに戻す、
請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記ボトム流は、二酸化炭素、エタン、プロパン、ブタン、硫化水素、芳香族炭化水素又はこれらの組み合わせを実質的に液相の状態で含む、
請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のフィルタは、(i)多孔質濾過材、(ii)1つ又は2つ以上のフィルタプレス、(iii)1つ又は2つ以上のベルトプレス、(iv)ハイドロサイクロン、(v)遠心分離器又は(vi)これらの組み合わせを有する、
請求項6記載のシステム。
【請求項9】
前記コレクタトレーは、−70°F〜−80°F(−56.7℃〜−62.2℃)の温度で動作する、
請求項6記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のフィルタからの前記固体成分は、第1のフィルタケークであり、
前記第1のフィルタからの前記非固形物は、第1の濾液であり、
低温二酸化炭素流を用いて前記第1のフィルタケークを濯ぎ洗いし、第1の固‐液スラリを生じさせる濯ぎ洗い容器を更に有する、
請求項8記載のシステム。
【請求項11】
前記濯ぎ洗い容器は、前記第1のフィルタケークを混合して前記第1の固‐液スラリを生じさせるミキサを有し、
多孔質濾過材を有する第2のフィルタを更に有し、前記第2のフィルタは、前記第1の固‐液スラリを受け入れて主として固体二酸化炭素で構成された第2のフィルタケーク及びメタンを含む液相の第2の濾液を生じさせる、
請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記システムは、前記第1の濾液と前記第2の濾液を組み合わせ、前記組み合わせ状態の第1の濾液と第2の濾液を液状物質として前記下方蒸留ゾーンに戻すよう構成されている、
請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の濾液は、メタン、二酸化炭素、硫化水素又はこれらの組み合わせを更に含む、
請求項12記載のシステム。
【請求項14】
主としてフィルタケークから取り出された実質的に固形の物質を温めて実質的に純粋な二酸化炭素流を液相の状態で生じさせるよう構成された熱交換器を更に有し、
前記低温二酸化炭素流は、前記実質的に純粋な二酸化炭素流の一部分を含む、
請求項10記載のシステム。
【請求項15】
さらに、第2のフィルタを有し、
前記フィルタケークは、前記第1のフィルタの後に、前記第2のフィルタ内で生じる、
請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記原料ガス流は、硫化水素を含み、
前記システムは、前記原料ガス流を前記極低温蒸留塔中に注入する前に前記原料ガス流から前記硫化水素を除去するよう構成された硫化水素除去システムを更に有する、
請求項5記載のシステム。
【請求項17】
前記液体還流ラインは、前記原料ガス流が前記極低温蒸留塔中に注入される前に、前記非固形物の少なくとも一部分と前記原料ガス流を合流させる、
請求項11記載のシステム。
【請求項18】
前記第2の濾液を受け入れて二酸化炭素、H2S又はこれらの組み合わせを液相の状態で含むボトム液体流及び回収メタン流を生じさせるよう構成された蒸留分離器を更に有し、前記回収メタン流は、前記オーバーヘッドメタン流と組み合わされる、
請求項17記載のシステム。
【請求項19】
脱水原料ガス流から酸性ガスを除去する方法であって、
極低温蒸留塔を用意するステップを有し、前記極低温蒸留塔は、主としてメタンで構成されたスプレー流を受け入れる凍結ゾーン及び前記凍結ゾーンの下に位置したコレクタトレーを有し、さらに、
前記原料ガス流を前記極低温蒸留塔中に注入するステップと、
原料ガス流を冷やして前記原料ガス流内の二酸化炭素が実質的に固形の物質として前記コレクタトレー上に沈殿するようにする一方でメタンが実質的に蒸発してオーバーヘッドメタン流として前記極低温蒸留塔から出ることができるようにするステップと、
前記オーバーヘッドメタン流を前記極低温蒸留塔の下流側に位置した冷凍システム中に通すステップとを備え、前記冷凍システムは、前記オーバーヘッドメタン流を冷却し、さらに、
前記冷却されたオーバーヘッドメタン流の一部分を液体還流として前記極低温蒸留塔に戻して前記スプレー流として機能するようにするステップと、
前記極低温蒸留塔から前記実質的に固形の物質をスラリとして除去するステップと、
前記実質的に固形の物質を主として二酸化炭素で構成された固形物及びメタンを含む液状物質に分離するステップと、
前記液状物質の少なくとも一部分を前記極低温蒸留塔に戻すステップと、を備えている、
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記極低温蒸留塔は、さらに、前記凍結ゾーンの上方の上方精留ゾーンを備え、
前記極低温蒸留塔は、前記原料ガス流を前記凍結ゾーンへと受け入れるように形成されている、請求項1記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分分離の分野に関する。特に、本発明は、炭化水素流体流からの二酸化炭素及び他の酸性ガスの分離に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2009年9月9日に出願された米国特許仮出願第61/240,850号(発明の名称:Cryogenic System for Removing Acid Gases From a Hydrocarbon Gas Stream, With Solid CO2 Recovery)の権益主張出願であり、米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
本項は、本発明の例示の実施形態と関連している場合のある当該技術分野の種々の態様を紹介するものである。この説明は、本発明の特定の態様の良好な理解を容易にする技術内容の枠組みを提供するのを助けるものと考えられる。従って、本項は、このような見方で読まれるべきであり、必ずしも本項の記載内容が先行技術である旨の承認として読まれるべきではないことは理解されるべきである。
【0004】
貯留層からの炭化水素の産出は、非炭化水素ガスの偶発的な産出を伴う場合が多い。このようなガスは、例えば硫化水素(H2S)や二酸化炭素(CO2)のような汚染要因物を含む。H2S及びCO2が炭化ガス流(例えば、メタン又はエタン)の一部として産出される場合、ガス流は、「サワーガス」と呼ばれる場合がある。
【0005】
サワーガスは、通常、次の処理又は販売のために下流側に送られる前にCO2、H2S及び他の汚染要因物の除去処理が行われる。分離プロセスは、分離した汚染要因物の処分に関して問題を生じさせる。幾つかの場合、濃縮酸性ガス(主としてH2S及びCO2から成る)は、硫黄回収ユニット(“SRU”)に送られる。SRUは、H2Sを良性の硫黄元素に変換する。しかしながら、地域によっては(例えば、カスピ海領域では)、硫黄元素の追加生成が望ましくない。というのは、市場が小さいからである。その結果、数百万トンの硫黄が世界の幾つかの領域、真っ先に挙げられるのがカナダやカザフスタンであるが、これらの領域では、大きな地上ブロックの状態で貯蔵されている。
【0006】
硫黄が陸上に貯蔵されている間、二酸化炭素ガスが大気中に逃げ出る場合が多い。しかしながら、CO2を逃がすというやりかたは、望ましくない場合がある。CO2エミッションを最小限に抑える一提案例は、酸性ガス注入(“AGI”)と呼ばれるプロセスである。AGIは、望ましくないサワーガスを圧力下で地下地層中に再注入し、潜在的な後での使用のために隔離することを意味している。別法として、サワーガスを、油回収作業の促進のための人工的な貯留層圧力を作るために用いてもよい。
【0007】
AGIを容易にするため、炭化水素ガスから酸性ガス成分を分離するガス処理施設を設けることが必要である。しかしながら、「高サワー」流、即ち約15%以上のCO2及びH2Sを含む産出流の場合、これは、所望の炭化水素から汚染要因物を経済的に分離することができる施設の設計、構築及び稼働に対して特に課題となる場合がある。大抵の天然ガス貯留層は、比較的低い割合の炭化水素(例えば、40%未満)と,高い割合の酸性ガス、主として二酸化炭素であるが、更に硫化水素、硫化カルボニル、二硫化炭素及び種々のメルカプタンとを含む。これらの場合、極低温ガス処理を有益に採用することができる。
【0008】
極低温ガス処理は、ガス分離に用いられる場合もある蒸留プロセスである。極低温ガス分離法は、中程度の圧力(例えば、300〜600ポンド/平方インチゲージ(psig))(なお、100ポンド=7.03kg/cm2)で冷却されると共に液化されたガス類を生じさせる。さらに、液化酸性ガスは、「ボトム(ズ)(bottom(s) )」生成物として生じる。液化酸性ガスは、比較的高い密度を有するので、注入プロセスを助けるためにAGIウェルでは静水頭を有益に使用することができる。この点に関し、酸性ガスをカラム圧力(例えば300〜600psig)で液体として回収することができる。このことは、液化酸性ガスを地層中に圧送するのに必要なエネルギーが低圧酸性ガスを貯留層圧力まで圧縮するのに必要なエネルギーよりも少ないことを意味している。
【0009】
極低温ガス処理は、追加の利点を有している。例えば、二酸化炭素の吸着には溶剤が不用である。さらに、メタン回収物を、単一容器で得ることができる(ライアン‐ホルムズ(Ryan-Holmes)法で用いられている多容器システムとは対照的である)。最後に、冷凍能力に応じ、生成ガスに関して例えば最低4ppmまで又はこれ以下の厳しいH2S仕様に適合することができる。
【0010】
サワーガスの極低温蒸留に関しても課題が存在する。処理されるべきガス中にCO2が約5モル百分率以上の濃度で存在する場合、このようなCO2は、標準型極低温蒸留ユニット内で凍結して固体となる。固体としてのCO2の生成により、極低温蒸留プロセスが阻害される。この問題を回避するため、本譲受人は、種々の“Controlled Freeze Zone(商標)”(CFZ(商標))プロセスを既に設計している。CFZ(商標)プロセスは、凍結CO2粒子が蒸留塔の開放部分内に生じることができ、次にこれら粒子が落下しているときにこれら粒子をメルトトレー上で捕捉することにより固体粒子を形成する二酸化炭素の性質を利用する。その結果、清浄なメタン流(原料ガス中に存在する窒素又はヘリウムと一緒に)が蒸留塔の頂部に生じ、他方、低温液体CO2/H2S流がボトム生成物として蒸留塔の底部に生じる。
【0011】
CFZ(商標)プロセス及び関連機器の或る特定の態様は、米国特許第4,533,372号明細書、同第4,923,493号明細書、同第5,062,270号明細書、同第5,120,338号明細書及び同第6,053,007号明細書に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,533,372号明細書
【特許文献2】米国特許第4,923,493号明細書
【特許文献3】米国特許第5,062,270号明細書
【特許文献4】米国特許第5,120,338号明細書
【特許文献5】米国特許第6,053,007号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一般に上記米国特許明細書に記載されているように、極低温ガス処理に用いられる蒸留塔又はカラムは、下方蒸留ゾーン及び中間制御凍結ゾーンを有する。好ましくは、上方精留ゾーンも設けられる。カラムは、二酸化炭素の凝固点よりも低いがその圧力ではメタンの沸点よりも高い温度範囲を持つカラムの一部分を提供することによって固体CO2粒子を作るよう稼働する。より好ましくは、制御凍結ゾーンは、メタン及び他の軽い炭化水素ガスを蒸発させることができる一方でCO2が凍結(固体)粒子を形成するようにする温度及び圧力で稼働される。
【0014】
ガス供給流がカラム中を上方に移動すると、凍結CO2粒子は、供給流から逃げ出て重力の作用で制御凍結ゾーンからメルトトレー上に降下する。ここで、粒子は、液化する。次に、二酸化炭素に富んだ液体流がメルトトレーからカラムの底部のところの下方蒸留ゾーンまで流下する。下方蒸留ゾーンは、生じる二酸化炭素固体が実質的にゼロであるが溶解メタンが沸騰する温度及び圧力に維持される。一態様では、ボトム酸性ガス流は、30°F〜40°F(−1.1℃〜4.4℃)で作られる。
【0015】
制御凍結ゾーンは、低温液体スプレーを含む。これは、「還流(reflux)」と呼ばれているメタンに富んだ液体流である。軽い炭化水素ガス及び同伴サワーガスの蒸気流がカラムを通って上方に移動すると、蒸気流は、液体スプレーに遭遇する。低温液体スプレーは、固体CO2粒子の取り出しを助ける一方で、メタンガスが蒸発して精留ゾーン中に上方に流れることができるようにする。
【0016】
上方精留ゾーンでは、メタン(又はオーバーヘッドガス)が捕捉されて販売のためにパイプ輸送され又は燃料に利用できるようにされる。一態様では、オーバーヘッドメタン流は、約−130°F(−90℃)で放出される。オーバーヘッドガスは、追加の冷却により部分的に液化される場合があり、液体の一部は、「還流」としてカラムに戻される。次に、液体還流は、低温スプレーとして精留ゾーン及び制御凍結ゾーン中に注入される。この点に関し、還流を得るために低温液体メタンを生じさせるプロセスは、CFZ塔に付随する機器を必要とする。この機器は、パイプ、ノズル、圧縮機、分離器、ポンプ及び膨張弁を含む。
【0017】
上方精留ゾーン内で生じたメタンは、パイプラインによる送り出しのための大抵の規格に適合する。例えば、メタンは、十分な還流が生じている場合、2モルパーセント未満のパイプラインCO2規格並びに4ppmH2S規格に適合することができる。しかしながら、純度の高い天然ガスに関する一層厳格なCO2規格が例えばヘリウム回収、極低温天然ガス液体回収、液体天然ガス(LNG)への変換及び窒素注入のような分野について存在する。
【0018】
一層厳格な規格に適合させるには、液体メタン還流の量を増大させるのが良い。これには、より大型の冷凍設備が必要である。オペレータがCO2を除去しようとする思いが強ければ強いほど、冷凍に関する要件がそれだけ一層厳しくなる。
【0019】
依然としてCO2含有量を極めて低いレベルに減少させながらCFZプロセスの冷凍要件を緩和する必要性がある。また、他のCO2除去技術により強化される極低温ガス分離システム及びこれに付随するプロセスが要望されている。さらに、ガスのCO2含有量及びH2S含有量を、冷凍設備の能力を増大させないで下流側液化プロセスのLNG規格にとって許容可能なレベルまで減少させることができる極低温ガス分離プロセスが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
原料ガス流から酸性ガスを除去するシステムが提供される。一実施形態では、システムは、極低温蒸留塔を有する。極低温蒸留塔は、中間制御凍結ゾーンを有する。制御凍結ゾーン又はスプレー区分は、主としてメタンで構成された低温液体スプレーを受け入れる。低温スプレーは、好ましくは、蒸留塔の下流側に位置したオーバーヘッドループから生じる液体還流である。
【0021】
極低温蒸留塔は、原料ガス流を受け入れ、次に、この原料ガス流を(1)オーバーヘッドメタンガス流及び(2)二酸化炭素で構成された実質的に固形の物質に分離するよう構成されている。
【0022】
システムは、極低温蒸留塔の下流側に位置した冷凍機器を更に有する。冷凍機器は、オーバーヘッドメタン流を冷却し、次にオーバーヘッドメタン流の一部分を還流として極低温蒸留塔内の精留ゾーンに戻すのに役立つ。液体還流の一部分を制御凍結ゾーン内に吹き込んで固体二酸化炭素粒子の沈殿を生じさせることができる。
【0023】
このシステムは、コレクタトレーを更に有する。コレクタトレーは、固体CO2粒子が制御凍結ゾーン内に沈殿しているときに固体CO2粒子を受け入れるよう制御凍結ゾーンの下に位置決めされている。好ましくは、コレクタトレーは、沈殿物を中央立下り管中に差し向けるよう傾斜ベースを有する。立下り管は、オプションとして、固体CO2物質を含むスラリを極低温蒸留塔から出してCO2回収施設に差し向ける機械的並進装置、例えばオーガを有するのが良い。
【0024】
CO2回収施設は、好ましくは、複数個のフィルタで構成されている。システムは、少なくとも、スラリを受け入れる第1のフィルタを有する。スラリは、凍結又は固形の物質(「フィルタケーク」と称する)及び液状物質(「濾液」又は場合によっては「液状濾過物」と称する)に分離される。固形物は、主として、二酸化炭素で構成され、液状物質は、メタンを含む。液状物質は、少量の二酸化炭素、硫化水素、水銀及び重炭化水素を更に含む場合がある。理解されるように、本明細書で用いられるスラリという用語は、固形物及び液状物質を含むが、更にガス状物質又は他の非固形物を更に含む場合があるものとして用いられている。非固形物の処理では、液体は、気体及び/又は固体に変換される場合があり、次に、これらを種々の目的、例えば回収施設への再注入目的で使用できる。しかしながら、説明を簡単にするために、スラリの非固体部分がスラリからいったん分離されると、本明細書においては、物質の状態とは無関係にスラリの非固体部分を液状物質と称する場合がある。
【0025】
システムは、液体戻りラインを更に有する。液体戻りラインは、CO2回収施設からの液状物質の少なくとも一部分を極低温蒸留塔に戻す。ここで、メタン及びこの中に同伴されている何らかの酸性ガス成分の次の処理が行われる。
【0026】
極低温蒸留塔は、好ましくは、制御凍結ゾーンの上に位置した上方精留ゾーンを有する。極低温蒸留塔は、制御凍結ゾーンの下に位置した下方蒸留ゾーンを更に有するのが良い。後者の場合、極低温蒸留塔は、好ましくは、原料ガスを下方蒸留ゾーン中に受け入れさせるよう構成されている。さらに、極低温蒸留塔は、液体戻りラインからの液状物質を下方蒸留ゾーン中に受け入れさせる。メタン及び微量酸性ガス成分の次の処理は、下方蒸留ゾーン内で行われる。ここで、メタンは、温かい下方蒸留ゾーン内で蒸発し、制御凍結ゾーン及び上方精留ゾーンを通って上方に移動し、オーバーヘッドメタン流と合流する。二酸化炭素成分は、大部分、下方蒸留ゾーン内で蒸発し、上方に移動して制御凍結ゾーンに流入し、そしてコレクタトレー上に戻って沈殿する。次に、CO2成分は、スラリと共にCO2回収施設に運ばれる。
【0027】
極低温蒸留塔が下方蒸留ゾーンを有する場合、酸性ガスは、比較的温かい下方蒸留ゾーンからボトム液体流として落下する。ボトム液体流は、エタン、プロパン、ブタン、硫化水素又はこれらの組み合わせを実質的に液相の状態で含む場合がある。二酸化炭素も存在する場合がある。
【0028】
一構成例では、極低温蒸留塔は、下方蒸留ゾーンを備えていない。この場合、原料ガス流は、蒸留塔内の制御凍結ゾーン中に注入される。さらに、液体戻りラインは、原料ガス流が極低温蒸留塔中に注入される前に又はそれと同時に、液状物質の少なくとも一部分を原料ガス流と合流させる。蒸留塔は、硫化水素を捕捉するボトム流を備えておらず、これとは異なり、硫化水素並びにメタン及び二酸化炭素の微量元素は、第2のフィルタ、オプションとして第3及び第4のフィルタよりCO2回収施設内に捕捉される。硫化水素並びにメタン及び二酸化炭素の微量元素は、低温液状濾過物としてフィルタから放出される。濾液は、次に、蒸留塔内で処理され、その結果、回収メタン流が酸性ガスから分離される。回収メタン流は、商業製品として販売のためにオーバーヘッドメタン流と合わされる。
【0029】
いずれの実施形態においても、CO2回収施設の端部のところにはオプションとして熱交換器が設けられる。熱交換器は、最終段フィルタケークから少なくとも部分的に取り出された実質的に固形の物質を温めて実質的に純粋な二酸化炭素流を液相の状態で生じさせるよう構成されている。実質的に固形の物質は、例えば原料ガス流を熱源として用いることにより温められる。
【0030】
また、本明細書において、酸性ガス除去システムを用いて原料ガス流から酸性ガスを除去する方法が提供される。原料ガス流は、メタン、二酸化炭素及び多くの場合例えばエタン及び硫化水素のような他の成分を含む。
【0031】
一実施形態では、この方法は、第1に、極低温蒸留塔を用意するステップを有する。蒸留塔は、主としてメタンで構成された低温液体スプレーを受け入れる制御凍結ゾーンを有する。蒸留塔は、制御凍結ゾーンの下に位置したコレクタトレーを更に有する。
【0032】
この方法は、原料ガス流を極低温蒸留塔中に注入するステップを更に有する。一構成例では、原料ガス流は、蒸留塔内の制御凍結ゾーンの下に位置した下方蒸留ゾーン中に注入される。一構成例では、原料ガス流は、蒸留塔内の制御凍結ゾーンそれ自体中に注入される。好ましくは、原料ガス流は、これが蒸留塔中に注入される前に実質的に脱水されている。
【0033】
この方法は、原料ガス流を冷やすステップを更に有する。原料ガス流を冷やすことにより、原料ガス流中の二酸化炭素は、実質的に固形物としてコレクタトレー上に沈殿し、この上でスラリとなる。それと同時に、蒸留塔内の圧力は、供給流よりも低く、それにより、原料ガス流中のメタンが瞬間蒸発する。メタンは、制御凍結ゾーンの上方に位置した精留ゾーンを通って流れ、そしてオーバーヘッドメタン流として極低温蒸留塔から流出する。
【0034】
この方法は、オーバーヘッドメタン流を極低温蒸留塔の下流側に位置した冷凍システムに通すステップを更に有する。冷凍システムは、オーバーヘッドメタン流の少なくとも一部分を冷却して液体にする。この方法は、冷却されたオーバーヘッドメタン流の一部分を液体還流として極低温蒸留塔に戻すステップを更に有する。液体還流の一部分は、低温液体スプレーとしての役目を果たすことができる。
【0035】
また、この方法の一部として、実質的に固形の物質が極低温蒸留塔から取り出される。一態様において、実質的に固形の物質の取り出しは、例えばスクリューコンベヤ又はオーガのような機械的並進装置の使用により達成される。オーガは、上述したコレクタトレーの立下り管内に位置するのが良い。オーガは、実質的に固形の物質又はスラリを切断し、これを並進させて蒸留塔から出して固体CO2処理機器に向かって並進させる。コレクタトレーは、例えば約−70°F〜−80°F(−56.7℃〜−62.2℃)の温度で動作することが好ましい。これは、CO2成分の凝固点(又は凍結点)の温度又はこれよりも僅かに低い温度である。
【0036】
この方法は、実質的に固形の物質を実質的に固体のフィルタケーク及び実質的に液状の濾過物に分離するステップを更に有するステップを更に有する。フィルタケークは、主として二酸化炭素で構成され、濾液は、メタン及び残留二酸化炭素を含む。濾液は、他の成分、例えば重炭化水素及び更に軽芳香族炭化水素を含む場合がある。
【0037】
分離ステップは、実質的に固形の物質又はスラリを第1のフィルタに通すことにより達成できる。これにより、主として固体二酸化炭素で構成される第1のフィルタケーク及び液相のメタン及び二酸化炭素を含む第1の濾液が生じる。第1のフィルタは、例えば、多孔質濾過材又は遠心機であるのが良い。
【0038】
分離ステップは、低温二酸化炭素流を用いて第1のフィルタケークを濯ぎ洗いするステップ、第1のフィルタケークを混合して第1の固‐液スラリを生じさせるステップ及び第1の固‐液スラリを第2のフィルタに送り出すステップを更に有するのが良い。第2のフィルタは、主として固体二酸化炭素で構成された第2のフィルタケーク及びメタンを液相の状態で含む第2の濾液を生じさせる。
【0039】
幾つかの具体化例では1回の分離ステップで十分であるが、追加のCO2除去を行う場合がある。例えば、分離ステップは、低温二酸化炭素流を用いて第2のフィルタケークを濯ぎ洗いするステップ、第2のフィルタケークを混合して第3の固‐液スラリを生じさせるステップ及び第3の固‐液スラリを第3のフィルタに送り出すステップを更に有するのが良い。これにより、主として固体二酸化炭素で構成された第3のフィルタケーク及びメタンを液相の状態で含む第3の濾液が生じる。
【0040】
この方法は、第2の液状材料の少なくとも一部分を極低温蒸留塔に戻すステップを更に有する。一態様では、第2の液状材料は、下方蒸留ゾーンに差し向けて戻される。別の態様では、第2の液状材料は、原料ガス流と合わされ、そして蒸留塔中の制御凍結ゾーン中に再注入される。
【0041】
この方法の一実施形態では、第1の濾液と第2の濾液が組み合わされる。濾液からの組み合わせ状態の流体は、極低温蒸留塔に戻される濾液を形成する。この場合、組み合わせ状態の濾液は、好ましくは、下方蒸留塔中に注入される。
【0042】
この方法の別の実施形態では、第1の濾液だけが液状濾過物として蒸留塔に戻される。この場合、第1の濾液は、制御凍結ゾーンに戻されるのが良い。蒸留塔は、好ましくは、下方蒸留ゾーンを備えていない。第2の濾液及びオプションとしての第3(又はその後の)濾液は、別個の下流側蒸留塔に送り出され、ここで、残留酸性ガスが最終的に、メタンから分離される。この場合、回収メタン流が得られ、この回収メタン流は、販売のために極低温蒸留塔のオーバーヘッドメタン流と合わされる。
【0043】
本発明を良好に理解できるように、或る特定の図解、図表及び/又は流れ図が本明細書に添付されている。しかしながら、図面は、本発明の選択された実施形態のみを示しており、従って、本発明の範囲を限定するものと解されてはならないことは注目されるべきである。というのは、本発明は、他の同様に効果的な実施形態及び用途に利用できる余地があるからである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】一実施形態のCFZ蒸留塔の側面図であり、初期原料ガス流が蒸留塔の中間制御凍結ゾーン内に注入されている状態で示されている図である。
図2A】一実施形態のメルトトレーの平面図であり、メルトトレーが制御凍結ゾーンの下で蒸留塔内に位置している状態を示す図である。
図2B図2Aのメルトトレーの2B‐2B線矢視断面図である。
図2C図2Aのメルトトレーの2C‐2C線矢視断面図である。
図3】一実施形態の蒸留塔の下側蒸留区分内のストリッピングトレーの拡大側面図である。
図4A】一実施形態の蒸留塔の下側蒸留区分か上側精留区分かのいずれかで使用可能なジェットトレーの斜視図である。
図4B図4Aのジェットトレーの開口部のうちの1つの側面図である。
図5図1の蒸留塔の中間制御凍結ゾーンの側面図であり、2つの例示のバッフルが中間制御凍結ゾーンに追加されている状態を示す図である。
図6A】一実施形態としてのコレクタトレーの平面図であり、ガス処理施設の一構成例でコレクタトレーが制御凍結ゾーンの下に位置する蒸留塔内に設けられている状態を示す図である。
図6B図6AのコレクタトレーのB‐B線矢視断面図である。
図6C図6AのコレクタトレーのC‐C線矢視断面図である。
図6D図6Aのコレクタトレーの変形実施形態のこれ又B‐B線矢視断面図である。
図7】本発明の一実施形態に従って原料ガス流から酸性ガスを除去するガス処理施設を示す略図であり、図6A又は図6Dのコレクタトレーが用いられている状態を示す図である。
図8】本発明の別の実施形態に従ってガス流から酸性ガスを除去するガス処理施設を示す略図であり、この場合も又、図6A又は図6Dのコレクタトレーが用いられている状態を示す図である。
図9】本発明の一実施形態としてガス流から酸性ガスを除去する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
定義
本明細書で用いられる「炭化水素」という用語は、主として元素としての水素及び炭素(これらが全てであるというわけではない)を含む有機化合物を意味している。炭化水素は、一般に、2つの種類、即ち、脂肪族又は直鎖炭化水素及び環状テルペンを含む環状又は閉リング炭化水素に分類される。炭化水素含有物質の例としては、任意形式の天然ガス、石油、石炭及び燃料として使用でき又は燃料にアップグレードできるビチューメンが挙げられる。
【0046】
本明細書で用いられる「炭化水素流体」という用語は、気体又は液体である炭化水素又は炭化水素の混合物を意味している。例えば、炭化水素流体は、地層条件において、処理条件において又は周囲条件(15℃及び1気圧)において気体又は液体である炭化水素又は炭化水素の混合物を含むのが良い。炭化水素流体としては、例えば、石油、天然ガス、炭層メタン、頁岩油(シェールオイル)、熱分解油、熱分解ガス、石炭の熱分解生成物及び気体状又は液体状の他の炭化水素が挙げられる。
【0047】
「物質移動装置」という用語は、接触対象の流体を受け入れ、このような流体を例えば重力による流れによって他の物体に移す任意の物体を意味している。非限定的な一例は、或る特定の流体をストリップするトレーである。グリッドパッキング(grid packing)はもう1つの例である。
【0048】
本明細書で用いられる「流体」という用語は、気体、液体及び気体と液体の組み合わせ並びに気体と固体の組み合わせ及び液体と固体の組み合わせを意味している。
【0049】
本明細書で用いられる「凝縮性炭化水素」という用語は、約15℃及び1絶対気圧で凝縮する炭化水素を意味している。凝縮性炭化水素としては、例えば、炭素数が4を超える炭化水素の混合物が挙げられる。
【0050】
本明細書で用いられる「閉ループ冷凍システム」という用語は、外部作業流体、例えばプロパン又はエチレンがオーバーヘッドメタン流を冷却するための冷却剤として用いられる任意の冷凍システムを意味している。これは、オーバーヘッドメタン流それ自体の一部分が作業流体として用いられる「開ループ冷凍システム」とは対照的である。
【0051】
本明細書で用いられる「地下」という用語は、地球の表面の下に生じている地質学的層を意味している。
【0052】
実施態様の説明
図1は、一実施形態において本発明と関連して使用可能な極低温蒸留塔100の略図である。極低温蒸留塔100を本明細書においては、互換的に「極低温蒸留塔」「カラム」、「CFZカラム」又は「スプリッタータワー」と称する場合がある。
【0053】
図1の極低温蒸留塔100は、初期流体流10を受け入れる。流体流10は、主として、産出ガスで構成されている。代表的には、流体流は、坑口(図示せず)からの乾燥状態のガス流を表し、約65%〜約95%のメタンを含む。しかしながら、流体流10は、低い割合、例えば約30%〜65%、又はそれどころか20%〜40%のメタンを含む場合がある。
【0054】
メタンは、他の軽い炭化水素ガスの微量要素、例えばエタンと一緒に存在する場合がある。さらに、微量のヘリウム及び窒素が存在する場合がある。本発明の用途では、流体流10は、或る特定の汚染要因物を更に含む。これらは、例えばCO2やH2Sのような酸性ガスである。
【0055】
初期流体流10は、約600ポンド/平方インチ(psi)の産出後圧力の状態にあるのが良い。場合によっては、初期流体流10の圧力は、最高約750psi又はそれどころか1,000psiまでになる場合がある。
【0056】
流体流10は、代表的には、蒸留塔100に入る前に冷却される。熱交換器150、例えば多管式熱交換器が初期流体流10のために設けられている。冷凍ユニット(図示せず)が冷却用流体(例えば、液体プロパン)を熱交換器150に提供し、それにより初期流体流10の温度を約−30°F〜−40°F(−34.4℃〜−40.0℃)に下げる。次に、冷却状態の流体流を膨張装置152中に通すのが良い。膨張装置152は、例えば、ジュール‐トムソン(“J‐T”)弁であるのが良い。
【0057】
膨張装置152は、流体流10の追加の冷却を可能にするエキスパンダとしての役目を果たす。好ましくは、流体流10の部分液化も又行われる。ジュール‐トムソン(又は“J‐T”)弁が固形分を形成しがちなガス供給流にとって好ましい。膨張装置152は、好ましくは、供給管類中の熱損失を最小限に抑えるために極低温蒸留塔100の近くに設けられる。
【0058】
J‐T弁の代替手段として、エキスパンダ装置152は、ターボエキスパンダであっても良い。ターボエキスパンダは、より多大な冷却作用をもたらし、上述した冷凍ユニットのようにプロセスのためのシャフトの運動の源を作る。冷凍ユニットは、熱交換器150の一部である。このように、オペレータは、蒸留プロセスのための全体的エネルギー要件を最小限に抑えることができる。しかしながら、ターボエキスパンダは、凍結粒子並びにJ‐T弁を取り扱うことができない。
【0059】
いずれの場合においても、熱交換器150及びエキスパンダ装置152は、初期流体流10を冷やされた状態の流体流12に変換する。好ましくは、この冷却流体流12の温度は、約−40°F〜−70°F(−40.0℃〜−56.7℃)である。一態様では、極低温蒸留塔100は、約550psiの圧力で稼働され、冷却流体流12は、約−62°F(−52.2℃)の状態にある。これら条件では、冷却流体流12は、実質的に液相の状態にある。ただし、幾分かの蒸気相が冷却流体流12中に不可避的に同伴される場合がある。おそらくは、CO2の存在から固形分が生じることはない。
【0060】
極低温蒸留塔100は、3つの主要な区分に分割される。これらは、下方蒸留ゾーン106、中間制御凍結ゾーン又は「スプレー区分」108及び上方精留ゾーン110である。図1の塔の構成例では、冷却流体流12は、蒸留塔100内の制御凍結ゾーン108に導入される。しかしながら、冷却流体流12は、変形例として、下方蒸留ゾーン106の頂部の近くのところに導入されても良い。
【0061】
図1の構成例において、下方蒸留ゾーン106、中間スプレー区分108、上方精留ゾーン110及び全てのコンポーネントは、単一の容器100内に収納されていることが注目される。しかしながら、塔100の高さ及び運動に関する事項を検討しなければならないような海上用途に関し又は輸送上の制限が問題となる遠隔場所に関し、塔100は、オプションとして、2つの別々の圧力容器(図示せず)に分割されるのが良い。例えば、下方蒸留ゾーン106及び制御凍結ゾーン108を1つの容器内に設置するのが良く、上方精留ゾーン110は、別の容器内に位置する。この場合、2つの容器を互いに連結するために外部配管が利用される。
【0062】
いずれの実施形態においても、下方蒸留ゾーン106の温度は、冷却流体流12の供給温度よりも高い。下方蒸留ゾーン106の温度は、カラム100の作業圧力において冷却流体流12中のメタンの沸点よりも十分高い温度であるように設定される。このようにすると、メタンは、重い炭化水素及び液体酸性ガス成分から優先的にストリップされる。当然のことながら、当業者であれば理解されるように、蒸留塔100内の液体は、混合物であり、このことは、液体が純粋メタンと純粋CO2との間の或る中間温度で「沸騰」することになる。更に、混合物中に重い炭化水素が存在する場合、これにより、混合物の沸点が上昇する。これら要因は、蒸留塔100内の作業温度に関する設計上の検討事項となる。
【0063】
下方蒸留ゾーン106内では、CO2及び任意他の液相流体は、重力の作用で極低温蒸留塔100の底部に向かって落下する。それと同時に、メタン及び他の蒸気相流体は、逃げ出て、塔100の頂部に向かって上方に進む。この分離は、主として、気相と液相の密度差により達成される。しかしながら、分離プロセスは、オプションとして、蒸留塔100内の内部コンポーネントによって助長される。以下に説明するように、これらコンポーネントとしては、メルトトレー130、複数個の有利に構成された物質移動装置126及びオプションとしてのヒーターライン25が挙げられる。側部再沸器(図示せず)を同様に下方蒸留ゾーン106に追加してCO2の除去及び熱伝達を容易にするのが良い。
【0064】
再び図1を参照すると、冷却流体流12を下方蒸留ゾーン106の頂部の近くでカラム100内に導入するのが良い。変形例として、供給流12をメルトトレー130の上方で中間制御凍結ゾーン108内に導入することが望ましい場合がある。冷却流体流12の注入箇所は、初期流体流10の組成によって定められる設計上の選択事項である。
【0065】
冷却流体流12をカラム100内の2相フラッシュボックス型装置(又は蒸気分配器)124を通って下方蒸留ゾーン106内に直接注入することが好ましい場合がある。フラッシュボックス124の使用は、冷却流体流12中の2相蒸気‐液体混合物を部分的に分離するのに役立つ。フラッシュボックス124は、2相流体がフラッシュボックス124内に設けられているバッフルに当たるようスロット付きであるのが良い。
【0066】
相当な液体スラッギング又は頻繁なプロセス混乱状態が予測される場合、冷却流体流12は、カラム100への供給に先立って容器173内で部分的に分離される必要がある。この場合、冷却供給流12は、2相容器173内で分離されるのが良い。蒸気は、容器入口ライン11を通って2相容器173から出て、蒸気は、この容器入口ラインのところで、入口分配器121を通ってカラム100に流入する。次に、ガスは、カラム100を通って上方に移動する。液体13は、2相容器173から排出される。液体13は、分配器124を通ってカラム100内に差し向けられる。液体13は、重力又はポンプ175によってカラム100に供給されるのが良い。
【0067】
いずれの構成例においても、即ち、2相容器173が設けられている構成例又は設けられていない構成例では、冷却流体流12(又は11)は、カラム100に入る。液体成分は、フラッシュボックス124から出て、下方蒸留ゾーン106内のストリッピングトレー126のひとまとまりに沿ってこれを下って進む。ストリッピングトレー126は、一連の立下り管129及び堰128を有する。これらについては図3と関連して以下に詳細に説明する。ストリッピングトレー126は、下方蒸留ゾーン106内の温かい温度と相まって、メタン及び他の軽い気体が溶液から逃げ出るようにする。その結果生じる蒸気は、沸騰した二酸化炭素分子と一緒にメタン及び軽い気体を担持している。
【0068】
蒸気は、メルトトレー130(図2Bに示されている)の立上り管131を通って凍結ゾーン108中に上方に更に進む。メルトトレー立上り管131は、凍結ゾーン108全体にわたる一様な分布を可能にする蒸気分配器として作用する。蒸気は、次に、スプレーヘッダ120からの低温液体に接触してCO2を「凍結」する。換言すると、CO2は、凍結し、次に、メルトトレー130上に「雪」のように降って戻る。すると、固体CO2は、溶けて重力の作用で液体の状態でメルトトレー130に沿ってこれを流下し、そしてその下の下方蒸留ゾーン106を通って流れる。
【0069】
以下に詳細に説明するように、スプレー区分108は、極低温蒸留塔100の中間凍結ゾーンである。冷却流体流12が、塔100への流入に先立って容器173内で分離される別の構成例では、分離された液体/固体スラリ13は、メルトトレー130の真上で塔100内に導入される。かくして、サワーガスと重い炭化水素成分の液‐固混合物は、分配器121から流れ、固体及び液体は、メルトトレー130上に落下する。
【0070】
メルトトレー130は、中間スプレー区分108から液体及び固体物質、主としてCO2及びH2Sを重力の作用で受け入れるよう構成されている。メルトトレー130は、液体及び固体物質を温めてこれらを次の精製のために液体の形態で下方蒸留ゾーン106を通って下方に差し向けるのに役立つ。メルトトレー130は、制御凍結ゾーン108からひとまとまりの液体の状態で固‐液混合物を集めてこれらを温める(加温する)。メルトトレー130は、蒸気の流れを放出して制御凍結ゾーン108に戻し、固体CO2を溶融させるのに適当な熱伝達を行い、そしてメルトトレー130の下に位置したカラム100の下側蒸留ゾーン106への液体/スラリの排出を容易にするよう設計されている。
【0071】
図2Aは、一実施形態のメルトトレー130の平面図である。図2Bは、図2AのB‐B線に沿ったメルトトレー130の断面図である。図2Cは、C‐C線に沿ったメルトトレー130の断面図である。これら3つの図をひとまとめに参照してメルトトレー130について説明する。
【0072】
第1に、メルトトレー130は、ベース134を有する。ベース134は、実質的に平板状であるのが良い。しかしながら、図2A図2B及び図2Cに示されている好ましい実施形態では、ベース134は、実質的に非平板状の輪郭形状を採用している。非平面状の形態により、制御凍結ゾーン108からメルトトレー130上に至った液体及び固体に接触する表面積が増大する。これは、カラム100の下方蒸留ゾーン106から立ち上っている蒸気から液体及び溶けている固体への熱伝達を増大させるのに役立つ。一態様では、ベース134は、波形である。別の態様では、ベース134は、実質的に正弦波形状である。トレーデザインのこの態様は、図2Bに示されている。変形例として、他の非平板状幾何的形状を用いてもメルトトレー130の熱伝達面積を増大させることができるということは言うまでもない。
【0073】
メルトトレーベース134は、好ましくは傾斜している。傾斜は、図2Cの側面図に明示されている。殆どの固体を融解させるべきであるが、傾斜は、液体混合物中の非融解状態の固体がメルトトレー130から出てその下に位置する下方蒸留ゾーン106内に入るようにするのに役立つ。
【0074】
図2Cの記載では、サンプ又は「立下り管」138がメルトトレー130の中央に位置した状態で示されている。メルトトレーベース134は、立下り管138に向かって内方に傾斜して固‐液混合物を送り出すようになっている。ベース134は、重力による液体のドローオフを容易にするよう傾けられるのが良い。
【0075】
米国特許第4,533,372号明細書に記載されているように、メルトトレーは、「煙突トレー(チムニートレー)」と呼ばれていた。煙突は、蒸気が煙突トレーを通って上方に動くことができるようにする開口部を備えていた。しかしながら、単一の煙突の存在は、煙突トレーを通って上方に移動する気体の全てが単一の開口部を通って流出しなければならなかった。他方、図2A図2B及び図2Cのメルトトレー130では、複数個の煙突131(又は「立上り管」)が設けられている。多数の煙突131を用いることにより、蒸気の分布状態が向上する。これは、制御凍結ゾーン108内における良好な熱/物質移動に寄与する。
【0076】
煙突131は、任意輪郭形状のものであって良い。例えば、煙突131は、丸形、長方形又は蒸気がメルトトレー130を通過することができるようにする任意他の形状のものであって良い。煙突131は又、細く且つ中間スプレー区分108中に上方に延びるのが良い。これにより、有益な圧力降下が、蒸気がCFZ制御凍結ゾーン108中に立ち上っている時に蒸気を均等に分布させることができる。煙突131は、好ましくは、追加の熱伝達面積を提供するよう波形ベース134のピークのところに配置される。
【0077】
煙突131の頂部開口部は、好ましくは、ハット又はキャップ132で覆われる。制御凍結ゾーン108から落ちている固体がメルトトレー130上に落下しなくなる恐れが最小限に抑えられる。図2A図2B及び図2Cでは、キャップ132は、煙突131の各々の上方に位置した状態で示されている。
【0078】
メルトトレー130は又、設計上、バブルキャップを備えるのが良い。バブルキャップは、ベース134に設けられて、メルトトレー130の下から上に延びる凸状凹みを備えている。バブルキャップは、メルトトレー130の表面積を一層増大させ、それによりCO2に富んだ液体に追加の熱を伝達することができる。この設計例では、適当な液体ドローオフにより、例えば傾斜角の増大により、液体が下に位置するストリッピングトレー126に差し向けられるよう保証されることが必要である。
【0079】
再び図1を参照すると、メルトトレー130は又、設計上外部液体移送システムを備えるのが良い。移送システムは、全ての液体に実質的に固体がなく、十分な熱伝達が可能になるようにするのに役立つ。移送システムは、第1に、ドローオフノズル136を有する。一実施形態では、ドローオフノズル136は、ドローオフサンプ又は立下り管138内に位置する。立下り管138内に集められた流体は、移送ライン135に送り出される(図2Cに示されている)。移送ライン135を通る流れは、制御弁137及び液位コントローラ“LC”(図1に示されている)によって制御される。流体は、移送ライン135を経て下方蒸留ゾーン106に戻される。液位が高すぎる場合、制御弁137が開き、液位が低すぎる場合、制御弁137が閉じる。オペレータが下方蒸留ゾーン106内で移送システムを用いないということを選択した場合、制御弁137が閉じられ、流体は、オーバーフロー立下り管139を経てストリッピングのためにメルトトレー130の下に位置する物質移動装置又は「ストリッピングトレー」126に直ちに差し向けられる。
【0080】
外部移動装置を用いるにせよ用いないにせよいずれにせよ、固体CO2は、メルトトレー130上で加温され、CO2富化液体に変換される。メルトトレー130は、ストリッピング区分106からの蒸気により下から加熱される。補充の熱がオプションとして種々の手段、例えばヒーターライン25によりメルトトレー130又はメルトトレーベース134のすぐ上方のところに追加されるのが良い。ヒーターライン25は、固体の融解を容易にするよう底部再沸器160から既に利用可能な熱エネルギーを利用する。
【0081】
CO2富化液体を液位制御下でメルトトレー130から抜き出され、重力の作用で下方蒸留ゾーン106に導入される。注目されるように、メルトトレー130の下の下方蒸留ゾーン106には複数個のストリッピングトレー126が設けられている。ストリッピングトレー126は、好ましくは、互いに上下に位置した実質的に平行な関係にある。ストリッピングトレー126の各々は、オプションとして、極めて僅かな傾斜度で位置決めされるのが良く、液がトレー上で維持されるように堰を備えるのが良い。流体は、重力の作用で、各トレーに沿って流れて堰を越えて流れ、次に立下り管を介して次のトレー上に流下する。
【0082】
ストリッピングトレー126は、種々の配置関係をなすことができる。ストリッピングトレー126は、正弦波状の滝のように落ちる液体の流れを形成するよう全体として水平な関係をなして配置されるのが良い。しかしながら、ストリッピングトレー126は、実質的に同一の水平面に沿って別個のストリッピングトレーによって分割される滝のように落ちる液体流を形成するよう配置されることが好ましい。これは、図3の配置状態に示されており、この場合、液体の流れは、液体が2つの互いに反対側に位置した立下り管129内に落下するよう少なくとも1回分割される。
【0083】
図3は、一実施形態としてのストリッピングトレー126の構成の側面図である。ストリッピングトレー126は各々、流体を上から受け入れてこれらを集める。各ストリッピングトレー126は、好ましくは、ストリッピングトレー126の各々の上に少量のひとたまりの流体を集めることができるダムとしての役目を果たす堰128を有する。蓄積高さは、1/2〜1インチ(1.27〜2.54cm)であるのが良い。ただし、任意の高さを採用することができる。滝効果は、流体が1つのトレー126から次の下側のトレー126上に落下している時に堰128によって生じる。一態様では、ストリッピングトレー126には傾斜が与えられておらず、滝効果が、これよりも高い位置にある堰128の形態により作られる。流体は、トレー126のこの「接触領域」中の直交流液体からメタンをストリッピングした軽い炭化水素が富化された状態の近づいてくる蒸気と接触する。堰128は、蒸気が立下り管129を通ってバイパスするのを阻止すると共に炭化水素ガスの抜け場所を一段と容易にするよう立下り管129を動的に封止するのに役立つ。
【0084】
液体中のメタンの割合が、液体が下方蒸留ゾーン106を通って下方に流れるにつれて次第に小さくなる。蒸留の程度は、下方蒸留ゾーン106中のトレー126の個数で決まる。下方蒸留ゾーン106の上方部分では、液体のメタン含有量は、25モルパーセントという高い量であり、底部のストリッピングトレーでは、メタン含有量は、0.04モルパーセントという低い量である場合がある。含有メタンは、ストリッピングトレー126を(又は他の物質移動装置)に沿って迅速に流れる。下方蒸留ゾーン106で用いられる物質移動装置の数は、原料流10の組成に基づく設計上の選択事項である。しかしながら、メタンを液化酸性ガスにおいて例えば1%以下の所望のレベルまで除去するのに有することが必要なストリッピングトレー126のレベルはほんの僅かである。
【0085】
メタン逃げ場所を容易にするストリッピングトレー126について種々の個々の形態を用いることができる。ストリッピングトレー126は、単に、篩穴又はバブルキャップを備えたパネルであっても良い。しかしながら、流体へのそれ以上の熱伝達を提供すると共に固体に起因する望ましくない閉塞を阻止するためには、メルトトレーの下に所謂「ジェットトレー」を用いるのが良い。トレーに代えて、ランダム又は構造化充填剤を採用しても良い。
【0086】
図4Aは、一実施形態としての例示のジェットトレー426の平面図である。図4Bは、ジェットトレー426のジェットタブ422の断面図である。図示のように、各ジェットトレー426は、本体424を有し、この本体424には複数個のジェットタブ422が形成されている。各ジェットタブ422は、開口部425を覆っている傾斜したタブ部材428を有する。かくして、ジェットトレー426は、複数個の小さな開口部425を有する。
【0087】
作用を説明すると、1つ又は2つ以上のジェットトレー426を塔100の下方蒸留ゾーン106及び/又は精留区分110内に配置するのが良い。トレー426を多数のパスを備えた状態で、例えば、図3のストリッピングトレー126のパターンをなして配置されるのが良い。しかしながら、メタンガスの抜き出しを容易にする任意のトレー又は充填剤の構成を利用することができる。流体は、各ジェットトレー426上に滝のように流れ落ちる。次に、流体は、本体424に沿って流れる。次に、流体は、開口部425を出た蒸気に接触する。タブ422は、最適には、トレー426を横切って流体を迅速且つ効率的に移動させるよう差し向けられている。隣接の立下り管(図示せず)がオプションとして、液体を次のトレー426まで移動させるのに設けられるのが良い。また、開口部425により、下方蒸留ゾーン106内での流体移動プロセス中に放出されたガス蒸気がメルトトレー130まで、そして煙突131を通って効率的に上方に進むことができる。
【0088】
一態様では、トレー(例えばトレー126又は426)は、耐汚損性材料、例えば固形分の堆積を阻止する材料で作られるのが良い。耐汚損性材料は、金属粒子、ポリマー、塩、水和物(ハイドレート)、触媒微粉又は他の固形化学物質である。極低温蒸留塔100の場合、耐汚損性材料がCO2固形分の付着を制限するためにトレー126又は426に用いられるのが良い。例えば、テフロン(Teflon(商標))被膜をトレー146又は426の表面に被着させるのが良い。
【0089】
変形例として、CO2がカラム100の内周部に沿って固体の形態で堆積し始めないようにするために物理的な設計を施しても良い。この点に関し、ジェットタブ422は、カラム100の壁に沿って液体を押すよう差し向けられるのが良く、それにより、カラム100の壁に沿う固形分の堆積が阻止されると共に良好な蒸気‐液体の接触が保証される。
【0090】
トレーの構造のうちのどれにおいても、流下する液体がストリッピングトレー126に当たると、成分の分離が生じる。メタンガスが溶液から逃げ出て蒸気の形態で上方に移動する。しかしながら、CO2は、これらその液体の形態のままの状態で下方蒸留ゾーン106の底部まで下方に進むのに足るほど低温であり且つ高い濃度状態にある。次に、液体は、流出流体流22として流出ラインを通って極低温蒸留塔100から運び出される。
【0091】
蒸留塔100から流出すると、流出流体流22は、再沸器160に入る。図1では、再沸器160は、再沸された蒸気をストリッピングトレーの底部に提供するやかん形のものである。再沸蒸気ラインは、参照符号27に示されている。さらに、再沸蒸気は、補充の熱をメルトトレー130に提供するようヒーターライン25を通って送り出されるのが良い。補充の熱は、弁165及び温度制御装置TCにより制御される。変形例として、初期流体流10がエネルギーを節約するために熱交換器、例えば熱サイホン型熱交換器(図示せず)を用いても良い。この点に関し、再沸器160に流入する液体は、比較的低い温度、例えば約30°F〜40°F(−1.1℃〜4.4℃)のままである。熱を初期流体流10に取り込むことにより、オペレータは、蒸留塔100からの低温流出流体流22を温める一方で、生成流体流10を冷却することができる。この場合に関し、ライン25を介して補充熱を提供する流体は、再沸器160からの混合相戻り流である。
【0092】
ある条件下においては、メルトトレー130は、ヒーターライン25なしで働くことができるということが想定される。これらの場合、メルトトレー130は、設計上、内部加熱特徴、例えば電気ヒーターを備えるのが良い。しかしながら、流出流体流22で得られる熱エネルギーを採用する熱系を提供することが好ましい。再沸器160を出た後のヒーターライン25中の温かい流体は、一態様では、30°F〜40°F(−1.1℃〜4.4℃)の状態で存在し、従って、これら流体は、比較的高い熱エネルギーを含む。かくして、図1では、蒸気流25は、メルトトレー130に設けられた加熱コイル(図示せず)を介してメルトトレー130に差し向けられた状態で示されている。変形例として、蒸気流25は、移送ライン135に結合されても良い。
【0093】
作用を説明すると、再沸蒸気流は、底部液の上方で且つ最後のストリッピングトレー126の下でライン27を介してカラムの底部に導入される。再沸蒸気が各トレー126を通過すると、残留メタンが液体からストリップされる。この蒸気は、これが塔に沿って上方に移動するにつれて冷える。蒸気27のストリッピング蒸気が波形メルトトレー130に達する時点までに、温度は、約−20°F〜0°F(−28.9℃〜−17.8℃)まで低下する場合がある。しかしながら、これは、メルトトレー130上の融解中の固体(これは、約−50°F〜−70°F(−45.6℃〜−−56.7℃)の場合がある)と比較して極めて温かい状態のままである。蒸気は、蒸気がメルトトレー130に接触してメルトトレー130を温めるので、固形CO2を融解させるのに足るほどのエンタルピを依然として有する。
【0094】
再沸器160に戻ってこれを参照すると、液体の形態で再沸器160を出た底部流24中の流体は、オプションとして、膨張弁162を通過するのが良い。膨張弁162は、底部液体生成物の圧力を減少させ、冷凍効果を効果的にもたらす。かくして、冷却底部流26が提供される。これは又、静水頭を生じさせる。この点に関し、再沸器160から出たCO2富化液体は、1つ又は2つ以上のAGIウェル(図1に参照符号250で概略的に示されている)を通って下方に圧送されるのが良い。ある状況では、液体CO2は、改良型油回収プロセスの一部として部分的に回収された油の貯留層中に圧送されるのが良い。かくして、CO2は、混和性注入物質であるのが良い。変形例として、CO2は、油回収を促進するための混和性フラッド剤(flood agent)として用いられても良い。再びカラム100の下方蒸留ゾーン106を参照すると、ガスは、下方蒸留ゾーン106を通り、メルトトレー130の煙突131を通り、そして中間スプレー区分108内に上方に移動する。スプレー区分108は、複数個のスプレーノズル122を備えた開放チャンバである。蒸気がスプレー区分108を通って上方に移動するにつれて、蒸気の温度は、非常に低くなる。蒸気は、スプレーノズル122から来た液体メタンと接触する。この液体メタンは、外部冷凍ユニット170により冷却された状態にあり、上方に移動中の蒸気よりも低温である。一構成例では、液体メタンは、約−120°F〜−130°F(−84.4℃〜−90℃)の温度状態でスプレーノズル122から流出する。しかしながら、液体メタンが蒸発すると、メタンは、その周囲から熱を吸収し、それにより、上方に移動中の蒸気の温度を減少させる。蒸発したメタンは又、その密度の減少(液体メタンに対する)及びカラム100内での圧力勾配に起因して上方に流れる。
【0095】
メタン蒸気が極低温蒸留塔100に沿って更に上方に移動すると、メタン蒸気は、中間スプレー区分108を出て上方精留ゾーン110に流入する。蒸気は、元の冷却流体流12から逃げ出た他の軽量ガスと一緒に上方に移動し続ける。組み合わせ状態の炭化水素蒸気は、極低温蒸留塔100の頂部から出てオーバーヘッドメタン流14になる。
【0096】
オーバーヘッドメタン流14中の炭化水素ガスは、外部冷凍ユニット170内に移される。一態様では、冷凍ユニット170は、オーバーヘッドメタン流14を最低−135°F〜−145°F(−92.8℃〜−98.3℃)まで冷却することができるエチレン冷媒又は他の冷媒を用いている。これは、オーバーヘッドメタン流14を少なくとも部分的に液化するのに役立つ。次に、冷却メタン流14を還流凝縮器又は分離チャンバ172に移動させる。
【0097】
分離チャンバ172は、ガス16を液体還流18から分離するために用いられる。ガス16は、元の原料ガス流10からの軽い炭化水素ガス、主としてメタンを表している。窒素やヘリウムも又存在する場合がある。メタンガス16は、当然のことながら、最終的に捕捉されてエタンと共に市販されるようになった「生成物」である。
【0098】
冷凍ユニット170から出たオーバーヘッドメタン流14の一部分は、凝縮状態のままである。この部分は、分離チャンバ172内で分離されてカラム100に戻される液体還流18になる。液体還流18をカラム100内に送り戻すのにポンプ19を用いるのが良い。変形例として、分離チャンバ172は、液体還流18の重力供給を可能にするようカラム100の上方に設けられる。液体還流18は、上方精留ゾーン110から逃げ出た二酸化炭素を含むであろう。しかしながら、液体還流18の大部分は、典型的には95%以上のメタンであり、窒素(初期流体流10中に存在する場合)及び微量の二酸化炭素及び硫化水素(これらも又、初期流体流10中に存在する場合)を含む。
【0099】
一冷却構成例では、オーバーヘッドメタン流14は、開ループ冷凍システムを通って得られる。この構成例では、オーバーヘッドメタン流14は、液体還流18として用いられるオーバーヘッドメタン流の戻り部分を冷却するために直交型熱交換器を通って得られる。しかる後、オーバーヘッドメタン流14を約1,000psi〜1,400psiに加圧し、次に、周囲空気及び場合によっては外部プロパン冷媒を用いて冷却する。加圧されると共に冷却されたガス流を次に、更に冷却するために膨張装置中に差し向ける。ターボ膨張装置を用いると、多量の液体並びに幾分かのシャフトの運動を回収することができる。米国特許第6,053,007号明細書(発明の名称:”Process For Separating a Multi-component Gas Stream Containing at Least One Freezable Component”)は、オーバーヘッドメタン流の冷却方式を記載しており、この米国特許を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0100】
ここでは、本発明がオーバーヘッドメタン流14の冷却法によって限定されることはないということを理解されたい。また、冷凍ユニット170と初期冷凍ユニット150との間の冷却の程度を変化させることができるということを理解されたい。幾つかの場合、冷凍ユニット150を高い温度で作動させることが望ましい場合があるが、この場合、冷凍ユニット170内でのオーバーヘッドメタン流14の冷却が強化される。この場合又、本発明は、このような設計上の選択肢には限定されない。
【0101】
図1に戻ってこれを参照すると、液体還流18は、上方蒸留又は精留ゾーン110内に戻される。次に、還流液体18は、重力の作用で、精留区分110内の1つ又は2つ以上の物質移動装置116を通って運ばれる。一実施形態では、物質移動装置116は、上述のトレー126と同様、一連のカスケード状に配列された堰118及び立下り管159を備えた精留トレーである。トレーに代えてランダムな又は体系化された実装方式を採用しても良い。
【0102】
還流液体流18からの流体が精留トレー116を通って下方に移動すると、追加のメタンが蒸発し、精留区分110から出る。メタンガスは、オーバーヘッドメタン流14に再び出会ってガス生成物流16の一部になる。しかしながら、還流液体18の残りの液相は、コレクタトレー140上に落下する。還流液体流18がそのように落下するので、還流液体流18は、不可避的に、制御凍結ゾーン108から上方に移動している炭化水素及び残留酸性ガスのうちの僅かな割合をピックアップする。メタンと二酸化炭素の液体混合物はコレクタトレー140のところに集められる。
【0103】
コレクタトレー140は、好ましくは、液体を収集する実質的に平板状の本体を備える。しかしながら、メルトトレー130の場合と同様、コレクタトレー140も又、制御凍結ゾーン108から来たガスを逃がすための1つ、好ましくは複数個の煙突を有する。例えば図2B及び図2Cのコンポーネント131,132により提供される煙突及びキャップ構成を用いることができる。コレクタトレー140の煙突141及びキャップ142は、図5の拡大図に示されている。これについては以下に更に説明する。
【0104】
この場合に注目されるように、精留区分110内では、存在するH2Sは、液体中に溶解する傾向があり、これに対して、処理温度ではガス中に溶解する傾向がある。この点に関し、H2Sは、比較的低い相対揮発性を有する。残りの蒸気を液体に接触させることにより、極低温蒸留塔100は、H2S濃度を最低所望のppm(100万当たりの部)限度内に、例えば10又は4ppm規格まで減少させる。流体が精留区分110内の物質移動装置116を通過すると、H2Sは、液体メタンに接触し、蒸気相から引き出されて液体流20の一部になる。ここから、H2Sは、液体の形態で下方蒸留ゾーン106を通って下方に移動し、最終的には、液化酸性ガス流22の一部として極低温蒸留塔100から出る。
【0105】
極低温蒸留塔100内では、コレクタトレー140のところに捕捉された液体は、液体流20として精留区分110から抜き出される。液体流20は、主として、メタンで構成されている。一態様では、液体流20は、約93モルパーセントメタン、3%CO2、0.5%H2S及び3.5%N2で構成されている。この時点では、液体流20は、約−125°F〜−130°F(−87.2℃〜−90℃)の状態にある。これは、還流液体流18よりもほんの僅か温かい。液体流20は、還流ドラム174内に差し向けられる。還流ドラム174の目的は、ポンプ176にサージ能力を提供することにある。還流ドラム174を出ると、スプレー流21が作られる。スプレー流21は、ポンプ176内で加圧され、極低温蒸留塔100内への2回目の再導入が行われる。この場合、スプレー流21は、中間制御凍結ゾーン108内に圧送され、ノズル122を通って放出される。
【0106】
スプレー流21の或る部分、特にメタンがノズル122を出る際に揮発すると共に蒸発する。ここから、メタンは、中間制御凍結ゾーン108を通り、コレクタトレー140内の煙突を通り、そして精留区分110内の物質移動装置116を通って上昇する。メタンは、オーバーヘッドメタン流14として蒸留塔100を出て、最終的に、ガス流16中の商用生成物になる。
【0107】
また、ノズル122からのスプレー流21により、二酸化炭素は、気相から昇華しなくなる。この点に関し、幾分かのCO2は、一時的に気相に入り、メタンと一緒に上方に移動する。しかしながら、中間スプレー区分108内の温度が低いことに鑑みて、気体二酸化炭素は、素早く固相になり、「雪」のように降り始める。この現象を脱昇華と称する。このように、幾分かのCO2は、これがメルトトレー130に当たるまでは決して気相に再び入ることはない。この二酸化炭素は、メルトトレー130上に「雪」のように降り、溶けて液相になる。ここから、CO2富化液体が上述したように冷却流体流12からの液体CO2と一緒に、下方蒸留ゾーン106内の物質移動装置又はトレー126を滝のように流下する。この時点で、ノズル122のスプレー流21からの残りのメタンは、迅速に漏れて蒸気になるはずである。これら蒸気は、極低温蒸留塔100内で上方に移動し、精留区分110に再び入る。
【0108】
冷却液体を、カラムを上方に動いているガスのうちのできるだけ多くに接触させることが望ましい。蒸気がノズル122から出ているスプレー流21をバイパスした場合、高いレベルのCO2が塔100の精留区分110に達する場合がある。制御凍結ゾーン108内における気体/液体接触効率を向上させるため、指定された形態を持つ複数個のノズル122を用いるのが良い。かくして、還流流体流21中の1つ又は2つ以上のレベルのところに単一のスプレー源を用いるのではなく、オプションとして設計上多数のスプレーノズル122を備えた数個のスプレーヘッダ120を用いるのが良い。かくして、このような形態のスプレーノズル122は、制御凍結ゾーン108内でおこる物質移動に影響を及ぼす。
【0109】
本発明の譲受人は、国際出願日が2007年11月20日である同時係属中の国際公開第2008/091316号明細書において種々のノズル構成を先に提案している。この国際公開並びに図6A及び図6Bをノズル形態の教示に関して参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。ノズルは、スプレー区分108内において360°且つ完全放射状の適用範囲を保証すると共に良好な蒸気‐液体接触及び熱/物質移動をもたらすようになっている。これにより、極低温蒸留塔100を通って上方に移動している気体二酸化炭素が効果的に冷却される。
【0110】
完全な適用範囲が得られるよう多数のヘッダ120及び対応のオーバーラップノズル122の構成を利用することにより、逆混合が最小限に抑えられる。この点に関し、完全適用範囲は、細かく且つ軽量のCO2粒子がカラムを上方に逆に移動して精留区分110に再び入るのを阻止する。これら粒子は、次に、メタンと再び混ざり合ってオーバーヘッドメタン流14に再び入り、結局のところ再び再生利用される。
【0111】
理解できるように、極低温蒸留塔100を通って蒸気を循環させるプロセスは、最終的に、商用メタン生成物16で構成された炭化水素生成物を生じさせる。ガス生成物16は、販売のためにパイプラインを下って送られる。ガス生成物流16は、好ましくは、十分な還流が得られている場合、1〜4モルパーセントのパイプラインCO2規格並びに4ppm以下のH2S規格に適合する。それと同時に、酸性ガスが流出流体流22から除去される。
【0112】
酸性ガス成分を凍結させて制御凍結ゾーン108内の固体にし、次に、酸性ガス成分を溶解させて下方蒸留ゾーン106内の液体ボトム流22の状態にし、次に底部再沸器160を用いてCO2を同伴天然ガスから分離する。CO2の凍結と関連して相当多くの量のエネルギーが消費される。このエネルギーは、制御凍結ゾーン108内の固体成分が溶け、次に下方蒸留ゾーン106内で液相のH2S及び他の重炭化水素と再び混合する際に、少なくとも部分的に無駄になる。
酸性ガス注入又は処分のためには比較的純粋なCO2が望ましいので、凍結CO2を分離するためには酸性ガス富化又は濃縮プロセス又は他の精製法が望ましい。この分離は、制御凍結ゾーン108の底部のところ又は下方蒸留ゾーン106の頂部のところで行われるべきである。かくして、CO2を溶解させ(そして、液体H2S及び重炭化水素成分と再混合し)そして重力の作用で液相成分を下方蒸留ゾーン106を通って落下させるのではなく、本発明では、メルトトレー130に代えてコレクタトレーを用いることを提案する。コレクタトレーは、制御凍結ゾーン108から硬化‐液スラリの形態で沈殿物を受け入れる。固‐液スラリは、コレクタトレー上に集められ、そして次の処理のために極低温蒸留塔から取り出される。
【0113】
図6Aは、一実施形態としてのコレクタトレー610の平面図である。図6Bは、図6AのB‐B線で取ったコレクタトレー610の断面図である。図6Cは、C‐Cで取ったコレクタトレー610の断面図である。これら3つの図を一緒に参照してコレクタトレー610について説明する。
【0114】
最初に、コレクタトレー610は、ベース620を有する。ベース620は、実質的に扁平な本体であっても良く、或いは表面積を増大させるために起伏を有していても良い。いずれの構成においても、ベース620は、互いに反対側の側部に沿って好ましくは内方に傾斜し、その結果、ベース620上に落ちた流体は、中央立下り管630に向かって重力の作用で流れるようになる。
【0115】
図6Cの記載では、コレクタトレー130の中央にサンプ又は「立下り管」630がより明確に見える。コレクタトレーベース620は、固‐液スラリを送り出すよう立下り管630に向かって内方に傾斜している。ベース620は、重力の作用による固体及び液体の抜き出しを容易にするよう任意の仕方で傾けられるのが良い。
【0116】
図2Aのメルトトレー130の場合と同様、図6A図6B及び図6Cのコレクタトレー610は、複数本の煙突622,624(又は「立上り管」)を有する。煙突622,624は、蒸気の分布を向上させることができ、気相の流体が下方蒸留ゾーン106から上方に移動して中間制御凍結ゾーン108内に流入することができる。これは又、制御凍結ゾーン108内における良好な熱/物質移動又は輸送に寄与する。
【0117】
煙突622,624は、任意輪郭形状のものであって良い。例えば、煙突622,624は、丸形、長方形又は蒸気がコレクタトレー610を通過することができるようにする任意他の形状のものであって良い。煙突622,624は又、細く且つ制御凍結ゾーン108中に上方に延びるのが良い。これにより、有益な圧力降下が、蒸気が凍結ゾーン108中に立ち上っているときに蒸気を均等に分布させることができる。
【0118】
煙突622,624の頂部開口部は、好ましくは、ハット又はキャップ626で覆われる。キャップ626は、制御凍結ゾーン108から落下した固体が、コレクタトレー610をバイパスして下方蒸留ゾーン706内に移動する恐れを最小限に抑える。
【0119】
立下り管630は、ベース620と共に好ましくは傾けられている。立下り管630′の傾斜構造は、図6Dの側面図に示されている。図6Dは、図6Aのコレクタトレー610の変形実施形態の断面図である。この図は、図6AのB‐B線で取られている。
【0120】
コレクタトレー610は、原料ガス流から酸性ガスを除去するシステムの一部として極低温蒸留塔中に組み込まれるよう設計されている。コレクタトレー610は、極低温蒸留塔の制御凍結ゾーンから落下した固体及び液体粒子を受け取るよう構成されている。コレクタトレー610は、更に、固体及び液体粒子で構成されたスラリを蒸留塔から運び出してCO2回収施設に運び込むよう構成されている。
【0121】
図7は、本発明の一実施形態に従って炭化水素ガス流から酸性ガスを除去するガス処理施設700を示す略図である。炭化水素ガス流は、貯留層開発領域又は「現場」で行われる炭化水素産出活動に源を発している。現場は、圧縮性の炭化水素が産出される場所であればどのような場所であっても良い。現場は、陸上であっても良く、岸の近くであっても良く、或いは海上であっても良い。現場は、元の貯留層圧力から動作しても良く、或いは、石油・原油の回収増進を行っても良い。本明細書に添付の特許請求の範囲に記載されたシステム及び方法は、現場が酸性ガス成分で汚染された圧縮性炭化水素を産出している限り、開発中の現場の形式には限定されない。
【0122】
ガス処理施設700は、コレクタトレー、例えば図6Aのコレクタトレー610を利用している。図7で理解できるように、コレクタトレー610は、極低温蒸留塔705に組み込まれている。蒸留塔705は、中間制御凍結ゾーン708を有している。制御凍結ゾーン708又はスプレー区分は、主としてメタンで構成された低温液体スプレーを受け入れる。
【0123】
低温スプレーは、好ましくは、蒸留塔705の下流側に位置したオーバーヘッドループ714から生じた液体還流である。オーバーヘッドループ714は、熱交換器170内に冷凍機器を有し、熱交換器170は、オーバーヘッドメタン流14を冷却し、次に、オーバーヘッドメタン流14の一部分を液体還流18として極低温蒸留塔705に戻すのに役立つ。液体還流18は、スプレーヘッダ120を通って制御凍結ゾーン708内に吹き込まれ、それにより固体炭化水素粒子の沈殿が生じる。図7に示されているように、液体還流18は、スプレーヘッダ120を通って吹き込まれる前に、上方精留区分710に送り出され、このような上方精留区分710については以下に更に説明する。他の具体化例では、液体還流18の何割か又は全てを直接スプレーヘッダ120又はスプレーヘッダ収集ドラム174に引き込むのが良い。
【0124】
図1の塔100の場合と同様、極低温蒸留塔705は、酸性ガスで構成された初期流体流10を受け入れるよう構成されている。初期流体流10は、メタン、二酸化炭素及び場合によっては微量のエタン、窒素、ヘリウム及び硫化水素を含む。初期流体流10は、好ましくは、蒸留塔705内中に注入される前に或る程度の脱水が行われる。脱水は、初期流体流をグリコール脱水プロセス中に通すことにより達成できる。(脱水システムは、図7には示されていない。)
【0125】
さらに、初期流体流10は、好ましくは、蒸留塔705に流入する前に冷やされる。熱交換器150、例えば多管式熱交換器が初期流体流10を冷やすために設けられている。冷凍ユニット(図示せず)が冷却用流体(例えば、液体プロパン)を熱交換器150に提供して初期流体流10の温度を約−30°F〜−40°Fに至らせる。次に、初期流体流10を膨張装置152、例えばジュール‐トムソン(“J‐T”)弁に通すのが良い。その結果、冷やされた原料ガス流712が得られる。好ましくは、冷却原料ガス流712の温度は、約−40°F〜−70°Fである。
【0126】
注目されるように、ガス処理施設700内において、原料ガス流712は蒸留塔705内で制御凍結ゾーン708の下に受け入れられる。具体的に説明すると、原料ガス流712は、制御凍結ゾーン708の下に位置する下方蒸留ゾーン706中に注入される。しかしながら、原料ガス流712は、2相容器、例えば図1に示されている容器173中に差し向けられても良いことは言うまでもない。これにより、主としてメタン蒸気(制御凍結ゾーン708に注入されたメタン蒸気)及び液体酸性ガス並びに場合によっては重炭化水素(下方蒸留ゾーン706中に注入された重炭化水素)で構成された分割流が生じる。2相容器173は、固形物が蒸留塔705の入口ライン及び内部コンポーネントを詰まらせる恐れを最小限に抑える。
【0127】
一態様では、極低温蒸留塔712は、制御凍結ゾーン708内において約550psiの圧力状態で作動され、冷却原料ガス流712は、約−62°Fの状態にある。これらの条件では、原料ガス流712は、実質的に液相である。ただし、幾分かの蒸気相は、必然的に、冷却ガス流712中に同伴される場合がある。最も可能性のあることとして、CO2の存在に起因して固形物の生成が生じることはない。
【0128】
極低温蒸留塔705は、上方精留ゾーン710を更に有している。上方精留ゾーン710は、制御凍結ゾーン708の上方に位置している。図1の極低温蒸留塔700と関連して上述したように、精留ゾーン710は、メタン蒸気を同伴状態の二酸化炭素分子から一段と分離するのに役立つ。精留ゾーン710は、オーバーヘッドメタンガス流14を放出する。精留ゾーンは又、流体の一部分を液体流20中に配分し、液体流20は、スプレーヘッダ収集ドラム174を通り、次に圧力ブースタ176に通され、次にスプレーヘッダ120を通って塔705中に注入して戻される。
【0129】
注目されるように、ガス処理施設700は、コレクタトレー610を更に有する。コレクタトレー610は、実質的に固形の物質が制御凍結ゾーン708から沈殿しているときに実質的に固形の物質を受け入れるよう制御凍結ゾーン708の下に位置決めされている。コレクタトレー610は、例えば約−70°F〜−80°Fの温度で動作することが好ましい。これは、CO2の凝固点(凍結点)の温度又はこれよりも僅かに低い温度である。かくして、スラリがコレクタトレー610のところに生じる。
【0130】
好ましくは、コレクタトレー610は、スラリを中央立下り管(図6Cにおいて符号630で示されている)中に差し向けるよう傾斜ベース(図6Cにおいて符号620で示されている)を有する。立下り管630は、オプションとして、立下り管内に機械的並進装置例えばオーガ(図6Bにおいて符号640で示されている)を有するのが良い。オーガ640は、固体CO2物質を含むスラリを機械的に動かして極低温蒸留塔705から出してCO2回収施設740に向かって動かすのに役立つ。
【0131】
スラリ出口ライン741がガス処理施設700内に設けられている。スラリ出口ライン741は、蒸留塔705からのスラリをCO2回収施設740に移動させる。このように、二酸化炭素は、これが下方蒸留ゾーン706内に落下する前に蒸留塔705から実質的に除去される。スラリは、重力の作用で動かされるのが良い。代替的に又は追加的に、スラリは、オーガ640により並進可能である。さらに変形例として、低温液体還流18の一部分が蒸留塔705の側壁からコレクタトレー610中に差し向けられてスラリをコレクタトレーから押し出して蒸留塔705から出しても良い。
【0132】
固体が溶融してボトム流体流722の一部として出ることができるようにしないで、CO2を固体の状態で抽出すると、幾つかの潜在的な利点が存在する。第1に、二酸化炭素を固体の状態に結晶化するプロセスは、適正な温度及び圧力で行われると、代表的には、実質的に純粋な固形物を生じさせる。或る微量のエタン、硫化水素及び重炭化水素がスラリの一部として固体中に同伴される場合があるが、固体CO2の分離により、実質的に純粋なCO2生成物が得られる。軽い生成物、例えばエタン又は他の酸性生成物、例えばH2Sをストリッピングすることは、必ずしも必要ではない。というのは、このような生成物は、液体としてボトム流体流722中に落下することになるからである。
【0133】
また、原料ガス流712中のCO2の相当多くの部分が純粋固体として回収されるので、ボトム流体流中のCO2の量は、減少することになる。これにより、下流側プロセス、例えば酸性ガス富化及び硫黄回収ユニット(図示せず)に対する要求が軽減される。さらに、価値のある重炭化水素、例えばエタン又はプロパンをボトム流体流722から一層容易に回収することができる。というのは、CO2含有量が実質的に減少するからである。
【0134】
さらに、原料ガス流712中のCO2の相当多くの部分をサイドドロー(side-draw)(スラリ出口ライン741のところ)として除去することにより、蒸留塔705内における蒸気及び液体の富化を減少させることができる。これにより、再沸器160及び凝縮器、即ち分離チャンバ172の低い能力が許容されると共に冷凍要件が緩和される。より重要なこととして、固体CO2の取り出しにより、供給能力が同等である場合に、小径の塔705の採用が可能である。サイズの減少は、一般に、塔705から抽出される固体CO2の量に比例する。
【0135】
再び図7を参照すると、二酸化炭素を主成分とするスラリは、スラリ出口ライン741を通ってCO2回収施設740に運ばれる。CO2回収施設740は、第1のフィルタ742を有する。好ましくは、第1のフィルタ742は、スラリから固形物の相当な部分を補足する多孔質濾過材を有する。第1のフィルタ742は、例えば、ワイヤメッシュであるのが良い。変形例として、フィルタ742は、ポリエステル又は他の合成多孔質材料であっても良い。フィルタ742は、変形例として、遠心分離器、ハイドロサイクロン、1つ又は2つ以上のベルトフィルタ、1つ又は2つ以上のフィルタプレス又はこれらの組み合わせであっても良い。
【0136】
スラリの液体部分は、「濾液」と呼ばれる。濾液は、第1のフィルタ742を通過し、液体ライン744に送られる。濾液は、大部分がCH4から成るが、CO2及びH2Sを更に含む場合がある。液体ライン744は、濾液を液体戻りライン760に送り出す。液体戻りライン760は、濾液を極低温蒸留塔705の下方蒸留ゾーン706に戻す。CH4は、蒸発してオーバーヘッドメタン流14の一部となる。H2S及び何らかの重炭化水素成分は、蒸留塔705から落下して液体としてボトム流体流722中に入る。
【0137】
注目されるように、液体ライン744は、重炭化水素、特にエタン及びプロパンという測定可能な成分を更に含む場合がある。これら成分は、濾液144を従来型天然ガス液(“NGL”)トレーン(図示せず)と類似したプロセス中に送ることにより回収可能である。
【0138】
第1のフィルタ742は、「フィルタケーク」と呼ばれるスラリの固体部分を補足する。フィルタケークは、大部分が二酸化炭素から成る。固体フィルタケークは、第1の固形物ライン746に沿って送り出される。フィルタケークは、スクリューコンベヤ、ヒルデブラント(Hildebrandt)抽出器又は当該技術分野において知られている他の手段によって第1のフィルタ742から第1の固形物ライン746を通って運ばれるのが良い。
【0139】
フィルタケークは、これが液相に入るよう温められるのが良い。一態様では、第1の固形物ライン746からの固体二酸化炭素は、熱交換器772で温められる。熱交換器772は、例えば、二酸化炭素を溶解させるために初期流体流10からの熱を用いることができる。これにより、有益には、初期流体流10が冷却され、その後、この初期流体流は、熱交換器150に流入する。それと同時に、温められた液体CO2は、実質的に純粋な二酸化炭素液体としてCO2流体ライン786を通って送られる。 固形物ライン746内の凍結二酸化炭素(又はフィルタケーク)を直接熱交換器772に送り出すのではなく、オペレータは、凍結二酸化炭素を追加の濾過手段中に運ぶよう選択しても良い。ガス処理施設700では、CO2回収施設740は、濯ぎ洗い容器748を有するのが良い。濯ぎ洗い容器748では、低温液体CO2は、凍結二酸化炭素に吹き付けられる。これは、新たなスラリを生じさせる作用効果を有し、残留メタン及び硫化水素は、液体として固体フィルタケークから濯ぎ洗いにより除かれる。
【0140】
濯ぎ洗い剤として用いられる低温二酸化炭素は、CO2送り出しライン784を通って送られる。濯ぎ洗い剤として用いられる低温CO2は、好ましくは、熱交換器772の出口778から引き出される。低温CO2ラインは、符号780で示されている。
【0141】
再び濯ぎ洗い容器748を参照すると、好ましくは、スラリは、濯ぎ洗い容器748内で混合される。撹拌装置747が濯ぎ洗い容器748内に設けられるのが良い。撹拌装置747は、例えば、表面積を生じさせるよう固形物を通って回転する1組の羽であるのが良い。表面積を作ることにより、固形物は、送り出しライン748からの低温液体CO2にさらされる。これは、残留メタン及び硫化水素を濯ぎ洗いして固形物から除去するのに役立つ。
【0142】
新たなスラリは、濯ぎ洗い容器748からスラリライン750を通って運ばれる。新たなスラリは、図7に符号752で示されている第2のフィルタに送られる。第2のフィルタ752は、新たなスラリから固体部分を補足する。このような固体部分は、この場合も又、大部分が二酸化炭素から成る。固体部分は、第2のフィルタケークであり、第2の固形物ライン756に沿って送られる。第2のフィルタケークは、ここから、これが液相に入るよう温められるのが良い。
【0143】
濯ぎ洗いステップ及び濾過ステップは、別々の容器、例えば濯ぎ洗い容器748及び濾過容器752内で起こるものとして示されていることが注目される。しかしながら、オペレータは、固形物の濯ぎ洗いと濾過を単一容器内で組み合わせて行うよう選択することができる。
【0144】
第2の濾液と呼ばれている新たなスラリの液体部分は、第2のフィルタ752を通過して液体ライン754に送られる。第2の濾液は、CH4を含み、場合によっては、H2S及び重炭化水素を更に含む。液体ライン754は、スラリの液体部分を液体戻りライン760に送る。かくして、第2の濾液754を呈する液体は、第1の濾液754を呈する液体と合流し、その後、液体戻りライン760を通って蒸留塔705中に注入される。CH4は、蒸発してオーバーヘッドメタン流14の一部となる。H2S及びC2+化合物は、蒸留塔705から落下して液体としてボトム流体流722中に入る。第1の濾液744か第2の濾液754かのいずれかが溶融CO2を万が一含んでいる場合、溶融CO2は、蒸発して制御凍結ゾーン708に入り、最終的に、凍結物質としてコレクタトレー610上に戻って沈殿する。
【0145】
オプションとして、第1の濾液744及び/又は第2の濾液754は、液体戻りライン760を通って更に精製されるよう小型周辺蒸留カラム(図示せず)に送られるのが良い。
【0146】
オペレータは、ライン756内の実質的に純粋な固体CO2を直接熱交換器772に運ぶよう選択することができる。変形例として、不純物の追加の分離を行っても良い。図7のボックス770は、ライン756内の固体CO2の1つ又は2つ以上の追加の濯ぎ洗い及び濾過段を示している。濯ぎ洗い及び濾過ステップの数は、CO2生成物の所望の純度で決まる。ライン782は、低温CO2を濯ぎ洗い剤として送り出すものとして示されている。第3(又はその後の)濾液774は、追加の濯ぎ洗い及び濾過段770から放出される。第3(又はその後の)固体CO2(又はフィルタケーク)は、ライン776を通って熱交換器772に送られる。最終のCO2生成物ラインがライン786として示されている。液体CO2生成物は、酸性ガス注入のために使用でき又は高純度生成物として販売のために送り出し可能である。顧客は、例えば、石油・原油の回収増進のため又は他の目的のために液体CO2生成物を使用することができる。
【0147】
図7のガス処理施設700は、冷却原料ガス流712が高いCO2含有量、例えば約30%を超えるCO2含有量を有している条件で理想的に使用される。この条件では、原料ガス流712からのCO2の全てを凍結するには相当な冷凍が必要になる場合がある。したがって、原料ガス流712を制御凍結ゾーン808及びコレクタトレー610の下の下方蒸留ゾーン706内に注入することがエネルギー効率が良いと考えられる。液体の形態のままであってボトム供給流722と一緒に蒸留塔705から落下して出るCO2は、再沸器160により回収されて下方蒸留ゾーン706中に再注入される。
【0148】
図示のガス処理システム700では、コレクタトレー610及び対応のスラリ出口ライン741の箇所は、原料ガス注入箇所よりも十分上方に位置決めされている。オペレータは、原料ガス流12が極低温蒸留塔705に流入する箇所を上方の位置にするよう選択することができる。注入箇所を上方の位置にすることにより、コレクタトレー610上に固体として回収される原料ガス流712からの流体の量が増大する。これは、原料ガス流712が低い、例えば、約10〜30molパーセントのCO2含有量を有する場合に一層有利である。
【0149】
本願において実施された一シミュレーションでは、コレクタトレー610及び対応のスラリ出口ライン741を原料ガス注入箇所のところ又はこれよりも僅かに高いところに位置決めした。原料ガス流712をこれが70molパーセントCO2及び30molパーセントCH4の組成を有するようシミュレートした。注入流量が約10,000標準m3/時の状態で初期ガス温度40℃であると仮定した。極低温蒸留塔705をこれが450psiaで稼働するようシミュレートした。
【0150】
このシミュレーションにおいて、供給CO2の約93%が固体として極低温蒸留塔から出た。極めて僅かの流体が液体の状態で蒸留塔を下って移動するようになった。これにより、当然のことながら、ボトム流体流722に関して相当な減容が生じると共に再沸器160に関する富化要件が約89%減少した。この方式の欠点は、初期流体流10を冷やすためには蒸留塔705の上流側で一層の冷却が熱交換器150で必要になるということである。これは、蒸留塔705の下流側において熱交換器170で必要とされる冷凍が僅かに減少することによって部分的に相殺される。
【0151】
図8は、本発明の変形実施形態に従ってガス流から酸性ガスを除去するガス処理施設800を示す略図である。ガス処理施設800は、ガス処理施設700とほぼ同じである。この点に関し、ガス処理施設800も又、コレクタトレー、例えば図6Aのコレクタトレー610を利用している。コレクタトレー610は、極低温蒸留塔805に組み込まれている。蒸留塔805は、この場合も又、中間制御凍結ゾーン808を有している。制御凍結ゾーン808又はスプレー区分は、主としてメタンで構成された低温液体スプレーを受け入れる。
【0152】
図1の塔705の場合と同様、極低温蒸留塔805は、炭化水素及び酸性ガスで構成された初期流体流10を受け入れるよう構成されている。初期流体流10は、好ましくは、蒸留塔705内中に注入される前に或る程度の脱水が行われる。さらに、初期流体流10は、好ましくは、蒸留塔805に流入する前に冷やされる。熱交換器150、例えば多管式熱交換器が初期流体流10を冷やすために設けられている。冷凍ユニット(図示せず)が冷却用流体(例えば、液体プロパン)を熱交換器150に提供して初期流体流10の温度を約−60°F〜−80°F(−51.1℃〜−62.2℃)に至らせる。次に、初期流体流10を膨張装置152、例えばジュール‐トムソン(“J‐T”)弁に通すのが良い。その結果、冷やされた原料ガス流712が得られる。
【0153】
上述したように、ガス処理施設700内において、原料ガス流712は蒸留塔705内で制御凍結ゾーン708の下に受け入れられる。具体的に説明すると、原料ガス流712は、制御凍結ゾーン708の下に位置する下方蒸留ゾーン706中に注入される。しかしながら、極低温蒸留塔805では、蒸留ゾーン(図7では符号706で示されている)が省かれており、コレクタトレー610は、ここでは、制御凍結ゾーン808内に位置している。さらに、原料ガス流812は、コレクタトレー610の上方で制御凍結ゾーン808中に注入される。これは、上述のシミュレーションと一致している。 冷やされた原料ガス流812の注入箇所を制御凍結ゾーン808中に上方に移動させる目的は、高い固体CO2回収率を得ることにある。これを達成するため、冷やされた原料ガス流812の温度を約−60°F〜−80°Fに下げる。これは、図7の原料ガス流712に課された温度範囲よりも低い温度範囲である。原料ガス流812が蒸留塔805に流入すると、この原料ガス流は、さっと流れて冷え、それによりCO2が制御凍結ゾーン808内に沈殿する。蒸気CO2がスプレーヘッダ120から下降している液体CH4還流によって冷却される。これにより、コレクタトレー610上に沈殿する固体が生じ、それによりスラリが形成される。
【0154】
ガス処理施設700の場合と同様、スラリは、ガス処理施設800内で低温蒸留塔805からスラリ出口ライン841を通ってCO2回収システム840に運ばれる。CO2回収システム840は、図7のCO2回収システム740と同一であるのが良い。この点に関し、主として二酸化炭素で構成されたスラリは、第1のフィルタ742を通過し、次に、オプションとして、1つ、2つ又は3つの濯ぎ洗い及び濾過段を通って運ばれ、ついには、実質的に純粋なCO2固体が得られる。CO2固体は、好ましくは、熱交換器772中で温められ、次に出口778を通って液体として放出される。液体CO2は、ライン786を通って生成物として放出される。
【0155】
図8のCO2回収システム840では、第1のフィルタ742からの第1の濾液744は、極低温蒸留塔805に戻される。これは、図7のCO2回収システム740の動作と一致している。しかしながら、メタン富化状態の第1の濾液744を液体戻りライン760を通って直接蒸留塔805に戻すのではなく、第1の濾液744を初期流体流10と合流させる。このようにすると、メタン富化状態の第1の濾液744を制御凍結ゾーン808中への注入前に再び冷やすことができる。
【0156】
CO2回収システム840では、第2の濾液754とその後の濾液874は、液体戻りライン760では合わされず、これとは異なり、第2の濾液754とその後の濾液874は、互いに合わされて下流側蒸留カラム892に送られる。第2の濾液754及びその後の濾液874は、主として硫化水素で構成されているが、微量のメタン及び二酸化炭素を含む場合がある。再沸器892では、メタンは、回収メタン流894として放出される。回収メタン流894をメタン販売用生成物16と合流させて販売製品898として市場に送られる。
【0157】
再沸器892は又、液体896を放出する。液体896は、大部分が硫化水素であり、微量の二酸化炭素を含む。H2S富化液体896は、処分され又は硫黄回収ユニット(図示せず)中に送られる。変形例として、第2の濾液754及びその後の濾液874は、再沸器892に進むことなく、処分され又は硫黄回収ユニットに送られる。これは、CH4含有量が回収に見合わず又は分離を必要とする場合に特に当てはまる。
【0158】
図7及び図8で理解できるように、互いに異なる処理方式を採用することができる。最適の構成は、多くの変数で決まる。これら変数としては、オーバーヘッド熱交換器、例えば熱交換器170内で得られるような冷凍の利用性(又は能力)、CO2生成物786の所望の純度及び最も重要なこととして初期流体流10の組成が挙げられる。選択された流れ方式とは無関係に、固形物除去及び生成と組み合わされる蒸留の基本的原理が適用される。
【0159】
幾つかの状況においては、初期流体流10は、高濃度、例えば約5〜10パーセント以上の濃度の硫化水素を含む場合がある。幾つかの具体化例では、例えば、固体CO2回収が望ましい場合、高H2S濃度を有するガス供給流を極低温蒸留塔に通すことが望ましくない場合がある。というのは、H2Sの高レベルがCO2を溶かす場合があり、それにより制御凍結ゾーン中での固体生成が阻止されると考えられるからである。この状況では、H2SとCO2の高い比をもつ天然ガスが主蒸留塔705又は805への導入に先立って選択的H2S除去のために予備処理カラム(図示せず)に送られるのが良い。分離は、H2S分離法、例えば選択的アミンによる吸収、レドックス法又は吸着を用いて達成できる。しかる後、ガス流を上述の例示の処理施設700又は800に従って脱水して冷凍するのが良い。追加的に又は代替的に、他の具体化例でもCO2回収生成物の状態の影響を受けず、H2Sを初期流体流中に残しても良い。
【0160】
硫黄種を蒸留塔の蒸留側で除去した場合の追加の利点は、硫黄除去により、回収システム740又は840からの高純度CO2生成物786の生成が可能になるということにある。さらに、高純度のC2+生成物をボトム流体流722から回収することができる。当然のことながら、少量のH2Sは、極低温蒸留塔705,805内の相挙動が固体CO2生成を可能にすることを条件として、極低温蒸留塔705,805中に滑り込むようになる場合がある。このような少量のH2Sは、ボトム流体流22中に回収される。
【0161】
原料ガス流から酸性ガスを除去する方法も又、本明細書において提供される。図9は、本発明の一実施形態として酸性ガス除去システムを用いて原料ガス流から酸性ガスを除去する方法900を示す流れ図である。原料ガス流は、メタン、二酸化炭素及びおそらくはエタン及び硫化水素のような他の成分を含む。
【0162】
この方法900は、まず最初に、極低温蒸留塔を用意するステップを有する。このステップは、ボックス905に示されている。蒸留塔は、主としてメタンで構成された低温液体スプレーを受け入れる制御凍結ゾーンを有する。蒸留塔は、制御凍結ゾーンの下にコレクタトレーを更に有する。
【0163】
この方法900は、原料ガス流を極低温蒸留塔中に注入するステップを更に有する。これは、ボックス910に示されている。一構成例では、原料ガス流を蒸留塔内で制御凍結ゾーンの下に位置する下方蒸留ゾーン中に注入する。別の構成例では、原料ガス流を蒸留塔内の制御凍結ゾーンそれ自体の中に注入する。好ましくは、原料ガス流は、蒸留塔中に注入される前に実質的に脱水されている。
【0164】
この方法900は、原料ガス流を冷ますステップを更に有する。これは、図9のボックス915に示されている。原料ガス流を冷やすことにより、原料ガス流中の二酸化炭素が実質的に固形物としてコレクタトレー上に沈殿する。それと同時に、蒸留塔内の圧力は、供給流の圧力よりも低く、それにより原料ガス流中のメタンが実質的に蒸発する。メタンは、制御凍結ゾーンの上方に位置する上方精留ゾーンを通って流れ、次にオーバーヘッドメタン流として極低温蒸留塔から出る。
【0165】
方法900は、オーバーヘッドメタン流を極低温蒸留塔の下流側の冷凍システムに通すステップを更に有する。これは、ボックス920に示されている。冷凍システムは、オーバーヘッドメタン流の少なくとも一部分を冷却して液体にする。
【0166】
方法900は、冷却されたオーバーヘッドメタン流の一部分を液体還流として極低温蒸留塔に戻すステップを更に有する。液体還流は、低温液体スプレーとして役立つ。これは、ボックス925に示されている。
【0167】
また、方法900の一部として、固形物を極低温蒸留塔から実質的に除去する。これは、ボックス930に示されている。好ましくは、実質的に固形の物質を除去することは、重力流によって達成される。変形例として、機械的並進装置、例えばスクリューコンベヤ又はオーガが設けられても良い。オーガは、図6A図6B図6C及び図6Dに示されているようにコレクタトレーの立下り管内に位置するのが良い。オーガは、変形例として、実質的に固形の物質をCO2回収システムに差し向けるよう蒸留塔の外部に配置されても良い。いずれの場合においても、オーガは、実質的に固形の物質を切断し、これをスラリとして蒸留塔から出してCO2回収システムに向かって並進させる。
【0168】
方法900は、二酸化炭素スラリを固形物と液状物質に分離するステップを更に有する。これは、ボックス935に示されている。第1の固形物は、主として二酸化炭素で構成され、液状物質は、メタン及び残留二酸化炭素を含む。液状物質は、他の成分、例えば硫化水素、重炭化水素及び軽芳香族炭化水素を含む場合がある。
【0169】
ボックス935の分離ステップは、スラリを第1のフィルタに通すことによって達成されるのが良い。これにより、主として固体二酸化炭素で構成された第1のフィルタケーク及び液相のメタン及び二酸化炭素を含む第1の濾液が生じる。第1のフィルタは、例えば、多孔質濾過材又は遠心機であって良い。
【0170】
ボックス935の分離ステップは、低温二酸化炭素流を用いて第1のフィルタケークを濯ぎ洗いし、第1のフィルタケークを混合して第1の固‐液スラリを生じさせ、そして第1の固‐液スラリを第2のフィルタに送るステップを更に含むのが良い。第2のフィルタは、主として固体二酸化炭素で構成された第2のフィルタケーク及び大部分がメタンであるが、この場合も又液相の二酸化炭素及び硫化水素を更に含む第2の濾液が生じる、
追加のCO2除去を実施することができる。例えば、ボックス935の分離ステップは、低温二酸化炭素流を用いて第2のフィルタケークを濯ぎ洗いし、第2のフィルタケークを混合して固‐液スラリを生じさせ、そして固‐液スラリを更に第3のフィルタに送るステップを更に含むのが良い。これにより、主として固体二酸化炭素で構成された第3のフィルタケーク及びこの場合も又液相のメタン、硫化水素及び二酸化炭素を含む第3の濾液が生じる。
【0171】
方法900は、第2の液状物質の少なくとも一部分を極低温蒸留塔に戻すステップを更に有する。これは、ボックス940に示されている。一態様では、第2の液状物質を下方蒸留ゾーンに差し向けて戻す。別の態様では、第2の液状物質を原料ガス流と合流させ、そして蒸留塔内の制御凍結ゾーン中に注入する。
【0172】
方法900の一実施形態では、第1の濾液と第2の濾液を組み合わせる。これら濾液により生じる組み合わせ状態の流体は、極低温蒸留塔に戻される液状物質を形成する。この場合、液状物質は、好ましくは、下方蒸留ゾーン中に注入される。
【0173】
方法900の別の実施形態では、第1の濾液だけを蒸留塔に戻す。この場合、第1の濾液を制御凍結ゾーンに送り戻すのが良い。蒸留塔は、好ましくは、下方蒸留ゾーンを備えておらず、これとは異なり、第2及びオプションとしての第3の濾液を別個の下流側蒸留塔に送り、ここで、残留酸性ガスを最終的にメタンから分離する。この場合、極低温蒸留塔のオーバーヘッドメタン流と合わされた回収メタン流が販売のために得られる。
【0174】
方法900の更に別の構成例では、最終のフィルタケークを温める。これは、1つ、2つ、3つ又は4つ以上の濾過段が設けられているかどうかとは無関係に行われる。最終のフィルタケークは、例えどのようなものであっても最終フィルタから得られた最終段フィルタケークである。これは、当然のことながら、第1の固形物の少なくとも一部分を含むであろう。この加温ステップは、図9のボックス945に示されている。
【0175】
加温は、例えば、フィルタケークを構成する固体二酸化炭素と原料ガス流を熱交換することによって実施できる。その結果、低温の純二酸化炭素液体が得られる。純二酸化炭素は、市場で販売可能であり又は石油・原油の回収増進のために使用可能である。さらに、低温二酸化流の一部分は、上述したように固‐液スラリを生じさせるための濯ぎ洗い剤として使用できる。
【0176】
本明細書において説明した本発明は、上述の利益及び利点を達成するのに十分に計算されていることが明らかであるが、本発明は、本発明の精神から逸脱することなく、改造、変形及び変更が可能であることは理解されよう。制御凍結ゾーンを用いた酸性ガス除去プロセスの作動の技術的改良が提供されている。このような技術的改良により、CO2を生成ガス中の極めて低いレベルまで減少させる設計が提供されている。本明細書において説明した本発明は又、極低温蒸留塔の冷凍に関する要件を緩和する一方で、最大量の許容可能なCO2に関するLNG規格に適合する。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9