特許第5791610号(P5791610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791610
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】電動機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/40 20060101AFI20150917BHJP
   H02K 9/08 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H02K3/40
   H02K9/08 A
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-529761(P2012-529761)
(86)(22)【出願日】2010年6月22日
(65)【公表番号】特表2013-505700(P2013-505700A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】US2010039406
(87)【国際公開番号】WO2011034648
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2012年7月31日
(31)【優先権主張番号】12/562,203
(32)【優先日】2009年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】エメリー、フランクリン ティー
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−026356(JP,U)
【文献】 特開2004−266964(JP,A)
【文献】 特開平07−007878(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0029893(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0197309(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と
前記回転子に作動可能に結合された固定子であって少なくとも1つの高電圧固定子コイルを備える固定子とを備える電動機械であって、
前記固定子コイルが、
コイル素線積層体を形成するように配列された複数のコイル素線;
前記コイル素線積層体を冷却するための冷却ガスを通過させるように配列された複数の通気チューブ;
前記コイル素線積層体の上面に配設された充填材及び前記コイル素線積層体の下面上に配設された別の充填材;並びに
前記少なくとも1つの高電圧固定子コイルの内部において前記コイル素線積層体の上面に構築された第1の電位差緩和構造及び前記少なくとも1つの高電圧固定子コイルの内部において前記コイル素線積層体の下面に構築された第2の電位差緩和構造
を有し、
前記電位差緩和構造が、
前記充填材上の電気絶縁層;
前記電気絶縁層上の導電層;及び
前記導電層上に配置された導電バー
を備え、
前記導電バーが、
前記コイル素線の少なくとも1つに電気的に接続されて、
前記導電層と前記コイル素線積層体との間の静電容量効果をシャントし、
前記導電層を、強制的に、前記コイル素線積層体と実質的に同一電位レベルとし、
これによって、過電圧状態を回避させる
電動機械。
【請求項2】
前記電気絶縁層が、前記コイル素線内又は前記通気チューブ内における、前記導電層を介した電気的相互接続の形成を回避するために、前記導電層に接して配置され、これにより、前記コイル素線間又は前記通気チューブ間の電気的短絡を防止する、請求項1に記載の電動機械。
【請求項3】
前記導電層が、前記コイル素線又は前記通気チューブに対する電気的遮蔽体を形成するように、配置される請求項1に記載の電動機械。
【請求項4】
前記電気絶縁層がガラスで裏打ちされたマイカテープの層を備える請求項1に記載の電動機械。
【請求項5】
前記電気絶縁層が0.005インチ〜0.006インチの範囲の厚さを有する請求項4に記載の電動機械。
【請求項6】
前記導電層がカーボンによって充填された導電テープの層を備える請求項1に記載の電動機械。
【請求項7】
前記導電層が0.005インチ〜0.006インチの範囲の厚さを有する請求項6に記載の電動機械。
【請求項8】
前記導電バーが金属バーを備える請求項1に記載の電動機械。
【請求項9】
前記充填材が、前記コイル素線積層体の前記上面及び下面における不連続性を平滑化するように配置される請求項1に記載の電動機械。
【請求項10】
前記充填材が樹脂含浸繊維を含有してなり、前記繊維がアラミド繊維及びポリエステル繊維からなる群から選択される、請求項1に記載の電動機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高電圧固定子コイルを備える電動機械に関し、更に詳しくは、そのような機械の固定子コイル内において電位差を緩和する構造的構成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動機械は、回転子と固定子とを具備する。回転子には、界磁巻線が巻回されており、界磁巻線は、回転子本体のスロット内に配設される。固定子には固定子コイルが巻回されており、固定子コイルは、固定子本体のスロット内に配設される。機械が発電機である場合には、回転子が蒸気タービン又はガスタービン等の機械エネルギーの外部供給源によって回転させられ、そして、励起電流が界磁巻線に供給された際に、固定子コイル内に電気エネルギーが誘起される。
【0003】
固定子コイルは、一般に、複数の、素線(strand)と呼ばれる、個別導電体から構築される。これらの素線は、一緒にして1つに積層されることにより、大きな電圧及び電流を搬送する能力を有する更に大きな1つの導電体(又は、コイル)を形成する。多くの固定子コイルにおいては、これらの素線は、単純に互いに上下に積層されるのではなく、撚り合わせて編み込みパターンを形成している。この編み込み法は、一般に、当技術分野においては、レーベル転位(Roebelling)と呼称され、回転子に最も近接する、固定子コイルの、内側の素線が、回転子から遠い外側の素線よりも大きな電流を搬送(し、且つ、多量の熱を発生)することを防止するのに役立つ。レーベル転位は、各素線が、確実に、同等量の電流を搬送すると共に同等量の熱を発生するのに役立つ。
【0004】
固定子コイルには、素線を冷却するための一体型の通気チューブを備えるものがある。当技術分野においては、これらのタイプの固定子コイルを内部冷却型コイルと呼称している。内部冷却型コイルにおいては、複数の通気チューブを互いに上下に積層し且つ二以上の素線積層体の間に挟持してもよい。これにより、冷却ガス(例えば、水素又は空気)が通気チューブを通じてポンプで供給され、これらの素線から熱を除去する。
【0005】
内部冷却型固定子コイルの製造には、いくつかの問題点が存在している。例えば、素線積層体のレーベル転位が終わった後に、積層体の上面及び下面は、もはや、平滑ではない。これらの表面は、素線のレーベル転位によって引き起こされた大きな不連続性を有する。これらの不連続性は、接地壁絶縁(groundwall insulation)と呼ばれる外側絶縁層の適用を困難にする。
【0006】
別の問題点は、発電機が作動している際に、固定子コイル内の素線と通気チューブとの間に、比較的大きな電位差が生じ得るという点にあろう。この電位差が、素線と通気チューブとの間の絶縁耐力を超えた場合には、銅製素線と通気チューブとの間に電気的短絡が発生することになり、これは、通気チューブ内の循環電流の発生及び/又は固定子コイルの破滅的な損傷に繋がる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの問題点を軽減すべく様々な技術が提案されているが、電気的短絡に対する保護の強化と、固定子コイルの製造に伴う複雑さ及び費用を低減しつつ、固定子コイル内に存在する電位差を緩和して電動機械の作動中の電気放電現象に繋がりかねない過電圧状態を回避する能力と、を提供するための、固定子コイルの構成の更なる改善に対する要求が、依然として存在している。
【0008】
以下、添付の図面を参照し、本発明について説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の態様を具象化した複数の固定子コイルを示す、例示の電動機械の断片斜視図である。
図2】本発明の態様による電位差緩和構成を具備した例示の固定子コイルの、断片斜視図である。
図3】固定子コイルコンポーネント間の特性インピーダンスを示す断面図である。
図4】本発明の態様を具象化した電位差緩和構成を具備する、固定子コイルの等価回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の態様の利益を享受可能な例示の電動機械10(例えば、発電機又は電動機)を示している。機械10は、当業者には理解されることであるが、回転子12と、回転子12を取り囲むように配置された固定子15と、を備える。固定子15は、図2に更に詳細に示されているが、複数の(例えば、約4kV以上の)高電圧固定子コイル20を備えている。複数の固定子コイル20のそれぞれは、例えば銅又は銅合金から形成されたコイル素線22からなる1つ又は複数の積層体と、水素又は空気のような冷却ガスを導く複数の金属製通気チューブ30と、を備える。本発明の態様によれば、電位差緩和構造構成のそれぞれは、固定子コイルの内部において、電位差緩和用のコイル素線積層体の上面及び下面に構築され、これにより、電動機械の作動中の電気放電現象に繋がりかねない過電圧状態を防止する。
【0011】
図2は、本発明の態様による電位差緩和構成40の一実施形態を示している。図示を簡潔にすべく、図2は、電位差緩和構成を、コイル素線積層体の上面との関連においてのみ、示している。但し、図3に示されているように、同一の構成が、コイル素線積層体の下面にも設けられることを理解されたい。電位差緩和構成40は、充填材44、例えば、樹脂含浸フェルトを含有してなるレーベル充填材、を備える。樹脂含浸フェルトは、Nomex(登録商標)アラミド繊維又はDacron(登録商標)ポリエステル繊維−これらは、いずれも、E.I. Du Pont de Nemours & Co.,Inc.社から入手可能である−から製造されたものであってよい。当業者には理解されることだが、充填材44は、素線のレーベル転位(編み込み)の結果として通常生じる上面及び下面の不連続性を、大幅に平滑化する。
【0012】
電気絶縁層46が充填材44上に配設される。一実施形態においては、絶縁層46は、ガラスで裏打ちされたマイカテープの層であってよく、且つ、コイルの幅に沿って延在するように構成してもよい。絶縁層46は、更に、コイル素線積層体のそれぞれの側部に、(例えば、一実施形態においては、約0.25インチ〜約1インチの範囲の長さを有する)個別の側部延在部47を設けるように、構成してもよい。
【0013】
導電層48が絶縁層46上に配設される。一実施形態においては、導電層48は、カーボンを充填した導電テープであってよく、また、絶縁層46のガラス裏打ち面は、導電層48に面するように配置してもよい。一実施形態においては、導電層48は、実質的に、コイルのまっすぐな領域上に延在している。即ち、導電層48は、コイルの前部及び後部セクションに、それぞれ、位置するコイルの内巻き領域上に、延在する必要はない。空間的な制約により、電気絶縁層46及び導電テープ層48は、それぞれ、相対的に小さな厚さを有する(一実施形態においては、略、約0.005インチ〜約0.006インチの厚さの範囲である)。
【0014】
導電バー50が導電層48上に配設される。導電バー50は、銅又は任意のその他の適切な導電性の金属又は金属合金等の、いかなる導電性材料から構築してもよい。導電バーの一端(例えば、端部52)は、溶接、蝋付け又ははんだ付け等の任意の適切な接続法により、素線の少なくとも1つに電気的に接続され得るように、十分な長さを有する。反対側の端部は、電気的に浮動状態にあってもよい。素線の表面の約1/4平方インチの絶縁を剥ぎ取り、電気的接続を容易にしてもよい。
【0015】
導電層48は、有利には、レーベル充填材44内で形成される空隙(例えば、捕獲された気泡)を横切って発生し且つレーベル充填材44の誘電特性を打ち負かす傾向がある、電位を低減するための電気的遮蔽体として、機能する。例えば、当業者には容易に理解されるように、接合を目的とするレーベル充填材44は、空気に曝された状態において、熱硬化(ベークライズ)プロセス(bakelize process)を施される場合があり、これにより、レーベル充填材44内に気泡が捕獲される可能性がある。電気絶縁層46は、コイル素線22及び/又は通気チューブ30内における、導電層48を介した、電気的相互接続の形成を回避するために、導電層48との関係において配置され、これにより、低温の素線及び/又は通気チューブの間の電気的短絡を防止する。例えば、素線間の絶縁体及び通気チューブの絶縁体は、比較的多孔性である場合があり、従って、電気絶縁層46が存在しない場合には、導電層48が、素線間の電気接続を形成する可能性があり、これが、素線−素線間の電気的短絡に繋がり及び/又は通気チューブ内の電気的短絡を形成する可能性がある。従って、電気絶縁層46の存在は、有利には、導電層48が素線−素線間の電気的短絡及び/又は通気チューブ内の電気的短絡を生じさせることを防ぎ、他方で、コイル素線及び/又は通気チューブとの関係において、電気的遮蔽体として、レーベル充填材44内に形成され得る空隙を横切って発生しうる電位を低減するという機能を有効に果たすという、導電層48の能力を維持する。
【0016】
導電バー50は、導電層48を、少なくとも1つのコイル素線22に、電気的に接続し、且つ、基本的に、導電層48を、強制的に、コイル素線22の積層体とほぼ同一の電位レベルとする。一実施形態においては、接着テープ片(例えば、Nomex(登録商標)接着テープ片)を使用し、導電バー50を定位置に保持してもよい。更には、接地壁絶縁層をコイルに適用する際に、導電バー50を更に固定してもよい。
【0017】
図3は、コイルコンポーネント間の特性インピーダンスを含む断面図である。静電容量C1は、接地壁の静電容量を表している。静電容量C2は、コイルの外側導電電極と導電層48との間の静電容量を表している。静電容量C3は、金属製通気チューブ30とコイル素線22との間の静電容量を表している。静電容量C4は、コイル素線22と導電層48との間の静電容量(例えば、レーベル充填材の静電容量)を表している。
【0018】
図4は、本発明の態様を利用した電位差緩和構成を有する固定子コイルの等価回路60を示している。図4に示されているように、導電バー50は、導電層48とコイル素線22の積層体との間の静電容量効果をシャントして、導電層48を、強制的に、コイル素線積層体と実質的に同一電圧レベルとし、これにより、過電圧状態を回避させる。この結果、さもなければ静電容量C4(即ち、レーベル充填材の静電容量)を横切って発生する可能性がある電位の効果を、除去することが可能になる。交流(AC)源62は、銅製素線22とコイルの外側導電電極64との間の固定子コイルによって発生されるAC電圧を表している。
【0019】
作動の際に、本発明の態様を利用した、内部構築された電位差緩和構成は、少なくとも、以下の例示的利点を提供するものと考えられる。
レーベル充填材の厚さの低減。これにより、比較的に厚い接地壁絶縁が可能となる。厚さの低減は、充填材によるコイルの充填の改善にも有用である。
適用可能な電気的絶縁要件を固定子コイルが確実に満足させることができるようにする、大きな素線間電気抵抗の維持。
力率はね上げ試験(power factor tip−up test)に供した際の固定子コイルの合格率の改善。力率はね上げ試験に関する概略的な背景情報を望む読者は、「IEEE Recommended Practice for Measurement of Power Factor Tip−Up of Electric Machinery Stator Coil Insulation」という名称のIEEE規格286−2000を参照されたい。この規格の内容は、本引用により、本明細書に包含される。
及び/又は、
多数の、手間と費用を要する、はんだ付け接続を一般に必要とする外部電位差緩和抵抗器の必要性がなくなること。
【0020】
以上、本発明の様々な実施形態について図示及び説明したが、これらの実施形態は、一例として提供されたものに過ぎないことが明らかであろう。本発明から逸脱することなしに、多数の変形、変更及び置換を実施することが可能である。従って、本発明は、添付の請求項の趣旨及び範囲によってのみ限定されるものと解釈されたい。
【符号の説明】
【0021】
10 電動機械
12 回転子
15 固定子
22 コイル素線
30 通気チューブ
40 電位差緩和構造
44 充填材
46 電気絶縁層
48 導電層
50 導電バー
図1
図2
図3
図4