特許第5791623号(P5791623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791623
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】防湿絶縁材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20150917BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20150917BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20150917BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   C08L53/02
   C08L101/12
   C08K5/01
   H05K3/28 C
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-539721(P2012-539721)
(86)(22)【出願日】2011年10月17日
(86)【国際出願番号】JP2011073846
(87)【国際公開番号】WO2012053483
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年7月23日
(31)【優先権主張番号】特願2010-237476(P2010-237476)
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】大賀 一彦
(72)【発明者】
【氏名】東 律子
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−153999(JP,A)
【文献】 特開2008−189763(JP,A)
【文献】 特開2006−016531(JP,A)
【文献】 特開2005−162986(JP,A)
【文献】 特開2005−126456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/00−53/02
101/00−101/14
C08K 5/00−5/59
H05K 3/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、および溶媒を含む防湿絶縁材料であって、前記溶媒が80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒および110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を含み、前記80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒と前記110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒の質量比が50:50〜95:5の範囲であることを特徴とする防湿絶縁材料。
【請求項2】
80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒が、シクロヘキサンおよび/またはメチルシクロヘキサンであることを特徴とする請求項に記載の防湿絶縁材料。
【請求項3】
110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒が、cis−1,2−ジメチルシクロヘキサン、cis−1,3−ジメチルシクロヘキサン、cis−1,4−ジメチルシクロヘキサン、trans−1,2−ジメチルシクロヘキサン、trans−1,3−ジメチルシクロヘキサン、trans−1,4−ジメチルシクロヘキサンおよびエチルシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の防湿絶縁材料。
【請求項4】
防湿絶縁材料の総質量に対して、スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の総量が20〜40質量%であり、溶媒の総量が60〜80質量%であり、防湿絶縁材料中に含まれるスチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の質量比が2:1〜10:1の範囲であり、防湿絶縁材料中に含まれる80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒が、溶媒の総量に対して50質量%以上であり、さらに、防湿絶縁材料の25℃での粘度が1.5Pa・s以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の防湿絶縁材料。
【請求項5】
スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマー、スチレン−イソプレンブロック共重合エラストマー、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合エラストマー、およびスチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の防湿絶縁材料。
【請求項6】
スチレン系熱可塑性エラストマー中に含まれるスチレン由来の構造単位の含量が、スチレン系熱可塑性エラストマーの総量に対して15〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の防湿絶縁材料。
【請求項7】
粘着付与剤が、石油系樹脂粘着付与剤であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の防湿絶縁材料。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の防湿絶縁材料を用いて絶縁処理された電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業性、速乾燥性に優れた電子部品の防湿絶縁材料、およびその防湿絶縁材料によって絶縁処理された電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の製造工程においては、実装回路板や電極などの金属露出部を、湿気や塵埃あるいは腐食性ガスなどから保護する目的で、絶縁性皮膜によるコーティングが行われている。このコーティング材料には紫外線硬化型、湿気硬化型、溶媒乾燥型などのタイプがあり、それぞれアクリル樹脂、シリコーン樹脂、スチレンブロック共重合体樹脂などが使用されている。
【0003】
湿気硬化型のコーティング材料は、シリコーン樹脂自身の耐湿性には優れているものの、透湿性があるため、回路や電極の金属を保護するためにはコーティング材料を厚く塗布しなければならない問題点がある。
【0004】
紫外線硬化型のコーティング材料は、短時間での硬化が可能で生産性に優れているため広く使用されている。このような紫外線硬化型コーティング材料としては、例えば、特許文献1に記載のポリオレフィンポリオールや特許文献2に記載のポリカーボネートポリオールから誘導されたウレタン変性アクリレート化合物などが知られている。
【0005】
電子機器の製造工程においては、防湿絶縁材料によるコーティング処理を実施した後に何らかの不具合が確認されると、その不具合が発生した部品を除去して再度新たな部品を接合し直すというリペア工程がある。このリペア工程において部品を再接合する際には、不具合の発生する部位が不確定であるため、紫外線照射時の位置決めが困難であり、溶媒乾燥型のコーティング材料が使用されることが多い。
【0006】
溶媒乾燥型のコーティング材料用組成物としては、特許文献3にスチレン系熱可塑性エラストマー、粘着付与剤およびトルエンからなる組成物が開示されている。しかし、トルエンのような毒性の強い溶媒を使用することは環境上好ましくない。
【0007】
また、特許文献4および特許文献5にスチレン系熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、シランカップリング剤およびエチルシクロヘキサンからなる組成物が開示されている。しかし、エチルシクロヘキサンを主成分とする溶媒では、乾燥性を速めるために固形分濃度を高くすると、組成物の粘度が高くなってしまい、その結果、作業性(即ち、ポッティング性能)が低下する。また、低粘度化するために、エチルシクロヘキサンの量を増やすと、130μm程度の乾燥後の膜厚を形成する場合には、室温でタックが無くなるまでの時間が5分程度或いはそれ以上かかってしまう状況にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−308681号公報
【特許文献2】特開2007−332279号公報
【特許文献3】特開2003−145687号公報
【特許文献4】特開2005−126456号公報
【特許文献5】特開2005−162986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
溶媒乾燥型のコーティング材料は硬化反応を伴わないため、塗布・乾燥のみで必要な物性が発現できなければならず、そのため樹脂の分子量は大きくならざるを得ない。しかし樹脂の分子量が大きくなるほどコーティング材料の粘度が高くなり、作業性が低下する。あるいは作業性を確保するためにコーティング材料を希釈すると、塗布・乾燥後のコーティング膜の厚みが薄くなり、防湿性に劣る懸念があり、さらに、塗布後、塗膜の表面のタックが無くなるまでの時間が長くかかるため、生産性が落ちるという問題があった。
【0010】
工程の効率化のため溶媒乾燥型のコーティング材料は塗布後3分程度で次工程に移ることが望ましく、速乾燥性が求められる。しかし、乾燥があまりに速すぎるとポッティングの際のシリンジ先端部の詰まりなどの不具合が生じるため、適度な乾燥性が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、スチレン系熱可塑性エラストマーを含有する溶媒乾燥型コーティング材料において、80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を溶媒の主成分として使用することによって、低粘度かつ十分な固形分濃度を有し、速乾燥性を発現する優れた防湿絶縁皮膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明(I)は、スチレン系熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、および溶媒を含む防湿絶縁材料であって、前記溶媒が80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を含むことを特徴とする防湿絶縁材料である。
本発明(II)は、本発明(I)に記載の防湿絶縁材料を用いて絶縁処理された電子部品である。
【0013】
さらに言えば、本発明は以下の[1]〜[10]に関する。
[1] スチレン系熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、および溶媒を含む防湿絶縁材料であって、前記溶媒が80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を含むことを特徴とする防湿絶縁材料。
[2] 前記溶媒が、さらに110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を含むことを特徴とする[1]に記載の防湿絶縁材料。
[3] 防湿絶縁材料中に含まれる80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒と110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒の質量比が50:50〜95:5の範囲であることを特徴とする[2]に記載の防湿絶縁材料。
[4] 80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒が、シクロヘキサンおよび/またはメチルシクロヘキサンであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の防湿絶縁材料。
[5] 110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒が、cis−1,2−ジメチルシクロヘキサン、cis−1,3−ジメチルシクロヘキサン、cis−1,4−ジメチルシクロヘキサン、trans−1,2−ジメチルシクロヘキサン、trans−1,3−ジメチルシクロヘキサン、trans−1,4−ジメチルシクロヘキサンおよびエチルシクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[2]〜[4]のいずれかに記載の防湿絶縁材料。
[6] 防湿絶縁材料の総質量に対して、スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の総量が20〜40質量%であり、溶媒の総量が60〜80質量%であり、防湿絶縁材料中に含まれるスチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の質量比が2:1〜10:1の範囲であり、防湿絶縁材料中に含まれる80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒が、溶媒の総量に対して50質量%以上であり、さらに、防湿絶縁材料の25℃での粘度が1.5Pa・s以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の防湿絶縁材料。
[7] スチレン系熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマー、スチレン−イソプレンブロック共重合エラストマー、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合エラストマー、およびスチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の防湿絶縁材料。
[8] スチレン系熱可塑性エラストマー中に含まれるスチレン由来の構造単位の含量が、スチレン系熱可塑性エラストマーの総量に対して15〜50質量%であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の防湿絶縁材料。
[9] 粘着付与剤が、石油系樹脂粘着付与剤であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の防湿絶縁材料。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の防湿絶縁材料を用いて絶縁処理された電子部品。
【発明の効果】
【0014】
本発明(I)の防湿絶縁材料は、低粘度かつ十分な固形分濃度を有し、作業性、基材との密着性、防湿性、絶縁信頼性に優れており、この防湿絶縁材料でコーティング処理することにより、高度に防湿絶縁保護された電子部品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明(I)の防湿絶縁材料について説明する。
本発明(I)は、スチレン系熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、および溶媒を含む防湿絶縁材料であって、前記溶媒が80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を含むことを特徴とする防湿絶縁材料である。
【0016】
なお、本明細書に記載の「熱可塑性エラストマー」とは、加熱することによって流動して通常の熱可塑性プラスチックと同様の成形加工ができ、常温ではゴム弾性(即ち、顕著な弾性回復)を示す性質を有する高分子化合物であり、詳細は、物理化学辞典編集委員会編、「熱可塑性エラストマーのすべて」、初版第1刷、(株)工業調査会発行、2003年12月20日 に記載されている。
【0017】
また、本明細書に記載の「スチレン系熱可塑性エラストマー」とは、分子構造中にスチレンに由来する構造単位を有する熱可塑性エラストマーを意味する。
【0018】
本発明(I)の防湿絶縁材料に用いられるスチレン系熱可塑性エラストマーは、耐湿性、絶縁信頼性に優れている。スチレン系熱可塑性エラストマーの例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマー、スチレン−イソプレンブロック共重合エラストマー、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合エラストマー、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合エラストマー等を挙げることができる。このようなスチレン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、D1101、D1102、D1155、DKX405、DKX410、DKX415、D1192、D1161、D1171、G1652、G1730(以上、クレイトンポリマー社製)、タフプレン(登録商標)A、タフプレン(登録商標)125、タフプレン(登録商標)126S、タフテック(登録商標)H1141、タフテック(登録商標)H1041、タフテック(登録商標)H1043、タフテック(登録商標)H1052、(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
スチレン系熱可塑性エラストマー中に含まれるスチレン由来の構造単位の含量が、スチレン系熱可塑性エラストマーの総量に対して15〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは18〜45質量%であり、さらに好ましくは19〜43質量%である。スチレン系熱可塑性エラストマー中に含まれるスチレン由来の構造単位の含量が、スチレン系熱可塑性エラストマーの総量に対して15質量%未満の場合には、該エラストマーの凝集力不足になる場合があり、好ましいこととはいえない。また、スチレン系熱可塑性エラストマーの総量に対して50質量%より多くなると、該エラストマーのゴム的性質が無くなる傾向になり、また、防湿性能が不足する傾向にあり、好ましいこととはいえない。
【0020】
本発明に用いられる粘着付与剤とは、ゴム弾性を有するエラストマーに代表される高分子化合物に配合して粘着機能を持たせるための物質である。エラストマーに代表される高分子化合物に比べ、分子量ははるかに小さく、一般に、分子量数百〜数千のオリゴマー領域の化合物であり、室温ではガラス状態でそのもの自体ではゴム弾性を示さない性質を有する。
【0021】
粘着付与剤としては、一般に、石油系樹脂粘着付与剤、テルペン系樹脂粘着付与剤、ロジン系樹脂粘着付与剤、クマロンインデン樹脂粘着付与剤、スチレン系樹脂粘着付与剤などを用いることができる。
【0022】
石油系樹脂粘着付与剤としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族−芳香族共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂およびこれらの水添物等の変性物が挙げられる。合成石油樹脂は、C5系でも、C9系でもよい。
【0023】
テルペン系樹脂粘着付与剤としては、β−ピネン樹脂、α−ピネン樹脂、テルペン−フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂などが挙げられる。これらのテルペン系樹脂の多くは、極性基を有しない樹脂である。
【0024】
ロジン系樹脂粘着付与剤としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどのロジン;水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジンなどの変性ロジン;ロジングリセリンエステル、水添ロジンエステル、水添ロジングリセリンエステルなどのロジンエステルなどが挙げられる。これらのロジン系樹脂は、極性基を有するものである。
【0025】
これらの粘着付与剤の中で、石油系樹脂粘着付与剤、テルペン系樹脂粘着付与剤が好ましい。さらに、好ましくは、石油系樹脂粘着付与剤である。
これらの粘着付与剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
スチレン系熱可塑性エラストマーおよび粘着付与剤の配合量については、防湿絶縁材料の総質量に対して、スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の総配合量は20〜40質量%であり、好ましくは23〜35質量%であり、さらに好ましくは、25〜33質量%である。防湿絶縁材料の総質量に対して、スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の総配合量が、20質量%よりも少ないとコーティング材料の厚みが薄くなり、十分な防湿性と膜強度が得られない場合がある。さらに、固形分濃度が低くなることにより、塗布後の塗膜表面のタックが無くなるまでの時間が長くなり、その結果、生産性が低くなる場合がある。また、スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の総配合量が、防湿絶縁材料の総質量に対して40質量%よりも多いとコーティング材料の粘度が高くなって作業性が劣り、均一に塗布することが困難になる場合や、ディスペンサーでのポッティングの際に、シリンジが詰まる場合があり、好ましいこととはいえない。
【0027】
スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の配合比率については、質量比で、2:1〜10:1の範囲であり、好ましくは2.5:1〜9.5:1の範囲であり、さらに好ましくは3:1〜9:1の範囲である。
スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の配合比率が、質量比で、10:1より大きくなると、十分な粘着機能を発現することができない場合があり好ましくない。また、スチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤の配合比率が、質量比で、2:1より小さくなると、塗布乾燥後の皮膜の引張(破断)強度が、著しく低下してしまうことがある。その結果、不具合が発生した部品を除去して再度新たな部品を接合し直すというリペア工程の際に行われる防湿絶縁皮膜を引き剥がして除去する際に、防湿絶縁皮膜が切断されて1枚ものの膜として除去できなくなる場合が生じてしまい、好ましくない。
【0028】
本発明(I)の防湿絶縁材料は、80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を必須成分として含む。本明細書において、別段の定めがない限り、沸点とは、1気圧における沸点をいう。
80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、n−ヘプタン(沸点98.4℃)、シクロヘキサン(沸点80.7℃)、メチルシクロヘキサン(沸点101.1℃)等を挙げることができる。これらの中で、好ましいものとしては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンである。最も好ましいものとしては、メチルシクロヘキサンである。
【0029】
本発明(I)の防湿絶縁材料は、さらに、110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を含むことが好ましい。
110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、n−オクタン(沸点125.7℃)、cis−1,2−ジメチルシクロヘキサン(沸点129.7℃)、cis−1,3−ジメチルシクロヘキサン(沸点120.1℃)、cis−1,4−ジメチルシクロヘキサン(沸点124.3℃)、trans−1,2−ジメチルシクロヘキサン(沸点123.4℃)、trans−1,3−ジメチルシクロヘキサン(沸点124.5℃)、trans−1,4−ジメチルシクロヘキサン(沸点119.4℃)、エチルシクロヘキサン(沸点132℃)等を挙げることができる。これらの中で、好ましいものとしては、cis−1,2−ジメチルシクロヘキサン、cis−1,3−ジメチルシクロヘキサン、cis−1,4−ジメチルシクロヘキサン、trans−1,2−ジメチルシクロヘキサン、trans−1,3−ジメチルシクロヘキサン、trans−1,4−ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンであり、入手の容易さを考慮すると、エチルシクロヘキサンが最も好ましい。
【0030】
また、80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒および110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒以外の溶媒を併用することも可能である。これらの溶媒としては、例えば、デカヒドロナフタリン等の脂環構造を有する炭化水素溶媒、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル等の酢酸エステル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒および石油ナフサ等が挙げられる。防湿絶縁材料を塗布後、室温無風の条件下における乾燥性と作業性を考慮すると、沸点が140℃以下であることが望ましく、具体的には、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル等の酢酸エステル系溶媒が好ましく、さらに好ましくは、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、酢酸n−ブチルである。
【0031】
80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を含む溶媒の総量は、防湿絶縁材料の総質量に対して、好ましくは60〜80質量%であり、より好ましくは67〜77質量%であり、さらに好ましくは70〜75質量%である。
80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒の全溶媒に占める割合は、50〜100質量%が好ましい。
また110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を併用する場合には、80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒と110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒との合計量の全溶媒に占める割合は、60〜100質量%が好ましい。
【0032】
80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒と110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒を併用する場合には、その配合比率は、質量比で、50:50〜95:5の範囲で、好ましくは65:35〜95:5である。80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒と110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒の配合比率は、質量比で50:50より小さくなると、防湿絶縁材料を塗布した後、塗膜表面のタックが無くなるまでの時間が長くかかってしまう場合がある。80℃以上110℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒と110℃以上140℃未満の沸点を有する脂肪族炭化水素系溶媒の配合比率は、質量比で95:5より大きくなると、スチレン系熱可塑性エラストマーの濃度が高い組成物の場合には、乾燥が速くなりすぎ、ディスペンサーのシリンジが詰まったり、塗出液が曳糸性を有する場合があり、好ましいこととは言えない。
【0033】
本発明(I)の防湿絶縁材料は、防湿絶縁材料の25℃での粘度は、好ましくは1.5Pa・s以下であり、より好ましくは1.1Pa・s以下であり、さらに好ましくは1.0Pa・s以下である。一般的にディスペンサーを用いて塗布されるので、塗布する際のディスペンサーの圧力を考慮すると、防湿絶縁材料の25℃での粘度が1.5Pa・sより高くなると、塗布する際の圧力が高くなりすぎる場合があり、また、防湿絶縁材料をディスペンサーにより塗布する場合、塗布後の広がりが抑制され、その結果、乾燥後の厚みが必要以上に厚くなる懸念があり。好ましいこととはいえない。
【0034】
なお、本明細書に記載の粘度は、ブルックフィールド社製のDV−II+Pro viscometer 少量サンプルアダプター(スピンドルの型番:SC4−31)を用いて、25℃、回転数20rpmで測定した値である。
【0035】
本発明(I)の防湿絶縁材料は、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、着色剤、シランカップリング剤等の添加剤を用いることができる。
【0036】
レベリング剤としては、添加することにより塗膜表面のレベリング性を向上させる機能を有する材料であれば、特に制限はない。具体的には、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合物、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合物、ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン共重合物等が使用できる。これらは、単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。本発明(I)の防湿絶縁材料100質量部に対し、0.01〜3質量部添加することができる。0.01質量部未満の場合には、レベリング剤の添加効果が発現しない可能性がある。また、3質量部より多い場合には、使用するレベリング剤の種類によっては、塗膜表面にべたつきが発生したり、絶縁特性を劣化させる可能性がある。
【0037】
消泡剤としては、本発明(I)の防湿絶縁材料を塗布する際に、発生或いは残存する気泡を消す或いは抑制する作用を有するものであれば、特に制限はない。本発明(I)の防湿絶縁材料に使用される消泡剤としては、シリコーン系オイル、フッ素含有化合物、ポリカルボン酸系化合物、ポリブタジエン系化合物、アセチレンジオール系化合物など公知の消泡剤が挙げられる。その具体例としては、例えば、BYK−077(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、SNデフォーマー470(サンノプコ株式会社製)、TSA750S(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、シリコーンオイルSH−203(東レ・ダウコーニング株式会社製)等のシリコーン系消泡剤、ダッポーSN−348(サンノプコ株式会社製)、ダッポーSN−354(サンノプコ株式会社製)、ダッポーSN−368(サンノプコ株式会社製)、ディスパロン230HF(楠本化成株式会社製)等のアクリル重合体系消泡剤、サーフィノールDF−110D(日信化学工業株式会社製)、サーフィノールDF−37(日信化学工業株式会社製)等のアセチレンジオール系消泡剤、FA−630(信越化学工業株式会社製)等のフッ素含有シリコーン系消泡剤等を挙げることができる。これらは、単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。通常、本発明(I)の防湿絶縁材料100質量部に対し、0.001〜5質量部添加することができる。0.01質量部未満の場合には、消泡剤の添加効果が発現しない可能性がある。また、5質量部より多い場合には、使用する消泡剤の種類によっては、塗膜表面にべたつきが発生したり、絶縁特性を劣化させる可能性がある。
【0038】
着色剤としては、公知の無機顔料、有機系顔料、および有機系染料等が挙げられ、所望する色調に応じてそれぞれを配合する。本発明(I)の防湿絶縁材料に用いられる着色剤としては油溶性の染料が好ましく、具体例としては、例えば、OIL BLACK860(オリエント化学工業株式会社製)、OIL BLACK 803(オリエント化学工業株式会社製)、OIL BLUE 2N(オリエント化学工業株式会社製)、OIL BLUE 630(オリエント化学工業株式会社製)、SOT Black(保土谷化学工業株式会社製)などを挙げることができる。これらは、単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。通常、これらの染料の添加量は、本発明(I)の防湿絶縁材料100質量部に対し、0.01〜5質量部添加することができる。
【0039】
本発明(I)の防湿絶縁材料の酸化劣化および加熱時の変色を押さえることが必要な場合には、酸化防止剤を使用することができ、かつ、好ましい。
酸化防止剤としては、本発明(I)の防湿絶縁材料の熱劣化や変色を防止する作用のある化合物であれば特に制限は無く、例えば、フェノール系酸化防止剤等を使用することができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、下記式(1)〜式(11)のような化合物を挙げることができる。
【0040】
【化1】
【0041】
【化2】
【0042】
【化3】
【0043】
【化4】
【0044】
【化5】
【0045】
【化6】
【0046】
【化7】
【0047】
【化8】
【0048】
【化9】
【0049】
【化10】
【0050】
【化11】
【0051】
本発明(I)の防湿絶縁材料を塗布してできる塗膜のガラスや金属酸化物への強固な密着性が要求される場合には、シランカップリング剤を使用することができる。
シランカップリング剤とは、分子内に有機材料と反応結合する官能基、および無機材料と反応結合する官能基を同時に有する有機ケイ素化合物で、一般的にその構造は下記式(12)のように示される。
【0052】
【化12】
【0053】
ここで、Yは有機材料と反応結合する官能基で、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、置換アミノ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基等がその代表例として挙げられる。Xは無機材料と反応する官能基で、水、あるいは湿気により加水分解を受けてシラノールを生成する。このシラノールが無機材料と反応結合する。Xの代表例としてアルコキシ基、アセトキシ基、クロル塩素原子などを挙げることができる。R1は、2価の有機基であり、R2はアルキル基を表す。aは1〜3の整数を表し、bは0〜2の整数を表す。ただし、a+b=3である。
【0054】
シランカップリング剤としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0055】
これらのシランカップリング剤の中で、好ましいものとしては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤が挙げられ、市販品としては、KBM−503(信越化学工業株式会社製)、KBM−903(信越化学工業株式会社製)、KBE−903(信越化学工業株式会社製)、Z−6062(東レ・ダウコーニング株式会社製)、Z−6023(東レ・ダウコーニング株式会社製)などが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
本発明(I)の防湿絶縁材料に好適なガラス基材への密着性を与えるためには、シランカップリング剤の配合量が、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜8質量部であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明(II)は、本発明(I)の防湿絶縁材料を用いて絶縁処理された電子部品である。このような電子部品としては、マイクロコンピュータ、トランジスタ、コンデンサ、抵抗、リレー、トランス等、およびこれらを搭載した実装回路板などが挙げられ、さらにこれら電子部品に接合されるリード線、ハーネス、フィルム基板等も含むことができる。
また、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機エレクトロルミネッセンスパネル、フィールドエミッションディスプレイパネル等のフラットパネルディスプレイパネルの信号入力部等も、電子部品として挙げられる。特に、電子部品用ディスプレイ用基板等のIC周辺部やパネル張り合わせ部等に、本発明(I)の防湿絶縁材料を好ましく使用できる。
【0058】
本発明(II)の電子部品は、防湿絶縁材料を用いて電子部品を絶縁処理することにより製造される。本発明(II)の電子部品の具体的な製造方法としては、まず、一般に知られている浸漬法、ハケ塗り法、スプレー法、線引き塗布法等の方法によって上述した防湿絶縁材料を上記電子部品に塗布し、防湿絶縁材料に含まれる有機溶媒を揮発させて塗膜を乾燥させることにより、電子部品が得られる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ制限されるものではない。
【0060】
実施例1
スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマーとしてD1155(クレイトンポリマー社製,スチレン含量40質量%)25g、粘着付与剤としてクイントン(登録商標)D100(日本ゼオン株式会社製脂肪族−芳香族共重合系石油樹脂)6.1g、溶媒としてメチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンMCH)53.3g、エチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)26.7gを混合し、配合物D1とした。
配合物D1の25℃での粘度は、0.85Pa・sであった。
【0061】
実施例2
スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマーとしてD1155(クレイトンポリマー社製,スチレン含量40質量%)22.5g、粘着付与剤としてクイントン(登録商標)D100(日本ゼオン株式会社製)5.5g、溶媒としてメチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンMCH)42g、エチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)22g、酢酸n−ブチル(協和発酵ケミカル株式会社製 商品名:酢酸ブチル−P)8gを混合し、配合物D2とした。
配合物D2の25℃での粘度は、0.64Pa・sであった。
【0062】
実施例3
スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマーとしてD1155(クレイトンポリマー社製,スチレン含量40質量%)22.5g、粘着付与剤としてクイントン(登録商標)D100(日本ゼオン株式会社製)3.0gおよびアイマーブ(登録商標)S−110(出光興産株式会社製、C5留分を主成分とするジシクロペンタジエン/芳香族共重合系の水添石油樹脂)2.5g、溶媒としてメチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンMCH)42g、エチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)22g、酢酸n−ブチル(協和発酵ケミカル株式会社製 商品名:酢酸ブチル−P)8gを混合し、配合物D3とした。
配合物D3の25℃での粘度は、0.66Pa・sであった。
【0063】
実施例4
スチレン−イソプレンブロック共重合エラストマーとしてD1161(クレイトンポリマー社製,スチレン含量15質量%)22.5g、粘着付与剤としてクイントン(登録商標)D100(日本ゼオン株式会社製)5.5g、溶媒としてメチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンMCH)36.0g、エチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)31.0g、酢酸n−ブチル(協和発酵ケミカル株式会社製 商品名:酢酸ブチル−P)5gを混合し、配合物D4とした。
配合物D4の25℃での粘度は、1.20Pa・sであった。
【0064】
実施例5
スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマーとしてD1155(クレイトンポリマー社製,スチレン含量40質量%)25g、粘着付与剤としてクイントン(登録商標)D100(日本ゼオン株式会社製)6.1g、溶媒としてメチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンMCH)98.5gを混合し、配合物D5とした。
配合物D5の25℃での粘度は、0.30Pa・sであった。
【0065】
比較例1
スチレン−イソプレンブロック共重合エラストマーとしてD1161(クレイトンポリマー社製,スチレン含量15質量%)20g、粘着付与剤としてアイマーブ(登録商標)P−100(出光興産株式会社製、C5留分を主成分とするジシクロペンタジエン/芳香族共重合系の水添石油樹脂、PグレードはSグレードよりも水素化(水添)率が高いグレード)10g、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 商品名:KBM−602)1g、溶媒としてエチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)70gを混合し、配合物E1とした。
配合物E1の25℃での粘度は、1.11Pa・sであった。
【0066】
比較例2
スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合エラストマーとしてG1652(クレイトンポリマー社製,スチレン含量30質量%)20gおよびスチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマーD1101(クレイトンポリマー社製,スチレン含量31質量%)20g、粘着付与剤としてアイマーブ(登録商標)P−100(出光興産株式会社製、C5留分を主成分とするジシクロペンタジエン/芳香族共重合系の水添石油樹脂)10g、シランカップリング剤としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 商品名:KBM−602)1g、溶媒としてエチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)70gを混合し、配合物E2とした。
配合物E2の25℃での粘度は高すぎて、前記の粘度測定条件で測定することができなかった。
【0067】
比較例3
スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマーとしてD1155(クレイトンポリマー社製,スチレン含量40質量%)25g、粘着付与剤としてクイントン(登録商標)D100(日本ゼオン株式会社製脂肪族−芳香族共重合系石油樹脂)6.1g、溶媒としてエチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)80gを混合し、配合物E3とした。
配合物E3の25℃での粘度は、0.88Pa・sであった。
【0068】
比較例4
スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマーとしてD1155(クレイトンポリマー社製,スチレン含量40質量%)22.5g、粘着付与剤としてクイントン(登録商標)D100(日本ゼオン株式会社製)5.5g、溶媒としてエチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)64g、酢酸n−ブチル(協和発酵ケミカル株式会社製 商品名:酢酸ブチル−P)8gを混合し、配合物E4とした。
配合物E4の25℃での粘度は、0.66Pa・sであった。
【0069】
比較例5
スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマーとしてD1155(クレイトンポリマー社製,スチレン含量40質量%)22.5g、粘着付与剤としてクイントン(登録商標)D100(日本ゼオン株式会社製)3.0gおよびアイマーブ(登録商標)S−110(出光興産株式会社製、C5留分を主成分とするジシクロペンタジエン/芳香族共重合系の水添石油樹脂)2.5g、溶媒としてエチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)64g、酢酸n−ブチル(協和発酵ケミカル株式会社製 商品名:酢酸ブチル−P)8gを混合し、配合物E5とした。
配合物E5の25℃での粘度は、0.68Pa・sであった。
【0070】
比較例6
スチレン−イソプレンブロック共重合エラストマーとしてD1161(クレイトンポリマー社製,スチレン含量15質量%)22.5g、粘着付与剤としてクイントン(登録商標)D100(日本ゼオン株式会社製)5.5g、溶媒としてエチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)67g、酢酸n−ブチル(協和発酵ケミカル株式会社製 商品名:酢酸ブチル−P)5gを混合し、配合物E6とした。
配合物E6の25℃での粘度は、1.22Pa・sであった。
【0071】
比較例7
スチレン−ブタジエンブロック共重合エラストマーとしてD1155(クレイトンポリマー社製,スチレン含量40質量%)25g、粘着付与剤としてクイントン(登録商標)D100(日本ゼオン株式会社製)6.1g、溶媒としてエチルシクロヘキサン(丸善石油化学株式会社製 商品名:スワクリーンECH)98.5gを混合し、配合物E7とした。
配合物E7の25℃での粘度は、0.32Pa・sであった。
【0072】
[配合物の評価]
上記の組成により調製した配合物D1〜D5およびE1、E3〜E7の特性を、以下に示す方法により評価した。結果を表1および表2に示す。
【0073】
<粘度の測定>
粘度は以下の方法により測定した。
試料10mLを使用して、粘度計(Brookfield社製、型式:DV−II+Pro)を用いて、少量サンプルアダプターおよび型番C4−31のスピンドルを使用し、温度25.0℃、回転数20rpmの条件で粘度がほぼ一定になったときの値を測定した。
【0074】
<タックフリータイムの評価>
タックフリータイムは以下の方法により評価した。
配合物D1〜D5および配合物E1、E3〜E7をそれぞれガラス上に乾燥後の厚みが約130μmになるようにディスペンサーを用いて塗布し、塗布後、塗膜表面のべたつきの有無を30秒ごとに指触により確認した。べたつきが無くなった最初の時間をタックフリータイムとした。
タックフリータイムは速乾燥性の指標であり、短いほど好ましい。
なお、配合物E2は、粘度が高すぎて、ディスペンサーでの塗布ができなかった。
【0075】
<ガラスへの密着性およびガラスからの引き剥がし性の評価>
ガラスへの密着性は以下の方法により評価した。
配合物D1〜D5および配合物E1、E3〜E7を、それぞれガラス上に乾燥後の厚みが130μmになるよう塗布し、室温で10分間保持した後に、70℃で0.5時間乾燥した後、室温で12時間放置した。これらの塗膜について、評価試験用の硬化膜の一端のみを剥離して、幅2.5mmの接着力測定用試験片を作製した。接着力は、ガラス板と剥離した硬化フィルムが90度の角度を成すように引張り試験機(株式会社島津製作所製、EZ Test/CE)に固定し、最初のチャック間距離を2.5cmとし、23℃において50mm/minの速度で90度引き剥がし強さを測定して求めた。結果を表1および表2に示す。
また、「引き剥がし性」における×印とは、90度引き剥がし強さの測定中に硬化膜が切れたことを意味し、「引き剥がし性」における○印とは、90度引き剥がし強さの測定中に硬化膜が切れずに剥離できたことを意味する。
ある程度の密着性は、防湿性、絶縁信頼性を維持するために必要であるが、LCDパネルの出荷前検査で不良がある場合には、ガラスパネルは再利用したい(フレキシブル配線板は捨てる)ので、引き剥がしたいときには、塗膜が切れることなくきれいに引き剥がしを行えることが好ましい。
【0076】
<ポリイミドフィルムへの密着性の評価およびポリイミドからの引き剥がし性の評価>
ポリイミドフィルムへの密着性は以下の方法により評価した。
配合物D1〜D5および配合物E1、E3〜E7を、それぞれポリイミドフィルム(商品名:カプトン(登録商標)150EN、東レ・デュポン株式会社製)上に乾燥後の厚みが130μmになるよう塗布し、室温で10分間保持した後に、70℃で0.5時間乾燥した後、室温で12時間放置した。その後、このポリイミドフィルムの配合物が塗布されていない面とガラスクロス入りエポキシ樹脂板を両面接着テープで貼り合わせた板(以下、「ポリイミドフィルム貼り付けエポキシ樹脂板」と記す。)を作製した。これらの塗膜について、評価試験用の硬化膜の一端のみを剥離して、幅2.5mmの接着力測定用試験片を作製した。接着力は、ポリイミドフィルム貼り付けエポキシ樹脂板と剥離した硬化フィルムが90度の角度を成すように引張り試験機(株式会社島津製作所製、EZ Test/CE)に固定し、最初のチャック間距離を2.5cmとし、23℃において50mm/minの速度で90度引き剥がし強さを測定して求めた。結果を表1および表2に示す。
また、「引き剥がし性」における×印とは、90度引き剥がし強さの測定中に硬化膜が切れたことを意味し、「引き剥がし性」における○印とは、90度引き剥がし強さの測定中に硬化膜が切れずに剥離できたことを意味する。
【0077】
<透湿度評価>
配合物D1〜D5および配合物E1、E3〜E7を、それぞれテフロン(登録商標)板上に乾燥後の厚みが約130μmになるように、バーコーターを用いて、重ね塗りすることにより自立膜を作製した。
透湿カップ治具(テスター産業株式会社製)を使用して、これらの自立膜の透湿度を、JIS Z0208に準拠して測定した。その結果を表1および表2に記す。
なお、透湿度の試験条件は、温度40℃、湿度90%RH、24時間とした。
【0078】
<フレキシブル基板を用いた長期電気絶縁信頼性の評価>
フレキシブル銅張り積層板(住友金属鉱山株式会社製、グレード名:エスパーフレックス、銅厚:8μm、ポリイミド厚:38μm)をエッチングして製造した、JPCA−ET01に記載の微細くし形パターン形状の基板(銅配線幅/銅配線間幅=15μm/15μm)に錫メッキ処理を施したフレキシブル配線板に、配合物D1〜D5およびE1、E3〜E7を、それぞれ乾燥後の厚みが100μmになるよう塗布し、室温で10分間保持した後に、70℃で1.5時間乾燥した。
この試験片を用いて、バイアス電圧30Vを印加し、温度85℃、湿度85%RHの条件での温湿度定常試験を、MIGRATION TESTER MODEL MIG−8600(IMV社製)を用いて行った。上記温湿度定常試験をスタートしてから1000時間後の抵抗値を表1および表2に記す。
【0079】
<ガラス基板上配線を用いた長期絶縁信頼性の評価>
ガラス基板上にライン/スペースが40μm/10μmである櫛形パターン形状のITO配線を形成したパターン電極上に、配合物D1〜D5およびE1、E3〜E7を、それぞれ乾燥後の厚みが100μmになるよう塗布し、室温で10分間保持した後に、70℃で1.5時間乾燥した。
この試験片を用いて、バイアス電圧30Vを印加し、温度85℃、湿度85%RHの条件での温湿度定常試験を、MIGRATION TESTER MODEL MIG−8600(IMV社製)を用いて行った。上記温湿度定常試験をスタート初期およびスタートしてから1000時間後の抵抗値を表1および表2に記す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表1および表2の結果より、配合物D1〜D5は乾燥性、ガラス基材への密着性、長期絶縁信頼性に優れており、かつ、粘度が1.5Pa・s以下(特に、D1〜D3およびD5の粘度は1.0Pa・s未満)と低粘度であることがわかる。これに対して、配合物E2は粘度が高くハンドリング性が悪く、配合物E1、E3〜E7は乾燥速度に劣る結果となっており、本発明の組成物はディスペンサーを用いて塗布する防湿絶縁材料に適していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の防湿絶縁材料は、低粘度かつ速乾燥性を発現できる組成物であり、この防湿絶縁材料でコーティング処理することにより、高度に防湿絶縁保護された電子部品を得ることができる。