(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791639
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】製油所廃液からセレンの除去
(51)【国際特許分類】
C02F 1/58 20060101AFI20150917BHJP
C02F 1/56 20060101ALI20150917BHJP
C02F 1/72 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
C02F1/58 H
C02F1/56 K
C02F1/72 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-557207(P2012-557207)
(86)(22)【出願日】2011年3月9日
(65)【公表番号】特表2013-522008(P2013-522008A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011027711
(87)【国際公開番号】WO2011112693
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2014年3月7日
(31)【優先権主張番号】12/721,139
(32)【優先日】2010年3月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507248837
【氏名又は名称】ナルコ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シュワーツ,ダニエル,イー
(72)【発明者】
【氏名】シャー,ジテンドラ,ティー
【審査官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−262804(JP,A)
【文献】
特開2008−188536(JP,A)
【文献】
特開平10−226832(JP,A)
【文献】
特開平10−094789(JP,A)
【文献】
米国特許第4405464(US,A)
【文献】
米国特許第5753125(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0114185(US,A1)
【文献】
米国特許第5510040(US,A)
【文献】
特表2001−520119(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/080686(WO,A1)
【文献】
特開平09−249922(JP,A)
【文献】
特開2002−086159(JP,A)
【文献】
特開2003−181467(JP,A)
【文献】
特開2003−251367(JP,A)
【文献】
特開2006−136843(JP,A)
【文献】
特開平09−075954(JP,A)
【文献】
特開2006−102559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52− 1/64
C02F 1/70− 1/78
B01D 21/01
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレンを液体から除去する方法であり、
前記液体中のSeO32−の大部分をHSeO3−へ変換するよう、前記液体に酸化剤を添加し、且つ前記液体のpHを6〜7に調節するステップと、
第2鉄塩を、前記液体中のセレンの四分の一未満が沈殿するような量で添加するステップと、
ジチオカルバメートモノマーを含むポリジチオカルバメート物質を、前記液体に、前記ジチオカルバメートモノマーの量(ppm)が前記第2鉄塩の量(ppm)よりも多くなるような量で添加するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
液体からセレンを除去する方法であり、
前記液体中のSeO32−の大部分をHSeO3−へ変換するよう、前記液体に酸化剤を添加し、且つ前記液体のpHを6〜7に調節するステップと、
第2鉄塩を、前記液体中のセレンの四分の一未満が沈殿するような量で添加するステップと、
ジチオカルバメート物質を、前記液体に、ジチオカルバメート物質の量(ppm)が前記第2鉄塩の量(ppm)よりも多くなるような量で添加するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体からセレンを除去するための物質及びそれを用いて流体からセレンを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セレン化合物は、地球地殻に0.9ppm含まれることが報告されている。セレンは、酵素グルタチオンパーオキシダーゼを作るために使用される微量金属として重要であり、前記酵素は脂質代謝に関与しており、従って多くの生物に見出される。セレンはまた、生物分解物質から由来する原油、石炭及びその他の化石燃料中に種々の量で見出され、又近隣の鉱物からも滲出する。セレン化合物はまた、自然に地下水中に及びセレン含有殺虫剤と除草剤の使用による農業排水中に見出される。
【0003】
不幸なことに、セレンは高い毒性を持ち、少量であっても障害を引き起こす可能性がある。障害には、皮膚炎、中枢神経系障害、ネフローゼ、膵臓及び副腎皮質の出血性壊死が含まれ、多量投与では死亡する。その結果として、多くの地域では、家庭用供給水でのセレンの許容量を10ppbに制限してきた。その結果として、セレン含有物質を含む活動から生成される排水を処分することは困難である。さらに、その毒性のために、これらの厳密な標準も将来において一様にさらに制限され得る。
【0004】
セレンの化学的性質が、溶液から除去することを困難かつ複雑なことにしている。原子状態では不溶性ではあるが、セレンは4つの酸化状態(−2、+2、+4及び+6)を持ち、これによりセレンは多くの高い水溶性の化合物を容易に形成でき、従ってセレンを溶液から除去することを非常に困難にする(Kapoor等、Removal of Selenium from Water and Wastewater、Environmental Studies、Vol.49、pp.137−147(1995)参照)。その結果として、従来の除去方法は不十分なものか又はある場合にはほとんど効果がないものである。1つの従来技術が米国特許第7419602号に記載されており、これは第2鉄塩、pH調節及び酸化剤の使用を含む技術であるが、その効率は70%未満である。他の方法が米国特許第5510040号に記載され、これはポリジチオカルバメート物質を用いる方法であり、より高い効率を示す一方で相当の費用がかかる方法である。
【0005】
従って、セレンを溶液から除去するための改善された方法及びその使用について、明らかな必要性がある。ここで記載された技術は、特に記載されない限り、ここで参照された全ての特許、刊行物又は情報が本発明に関して「従来技術」であることを自認することを意図するものではない。さらに、ここの記載は、調査(サーチ)がなされたこと、又は37CFR.1.56(a)に既定される他の関連する情報がない、ということを意味するように解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7419602号明細書
【特許文献2】米国特許第5510040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、流体からセレンを除去するための物質及びそれを用いて流体からセレンを除去する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも1つの実施態様は、液体からセレンを除去する方法に関わり、前記方法は:前記液体に酸化剤を添加し、
前記液体のpHを7.5未満に調節し、
前記液体中のセレンの四分の一未満が沈殿するような量で、第2鉄塩を添加し、
前記液体にジチオカルバメート物質を、前記物質中のジチオカルバメートの量(ppmで)が前記第2鉄塩の量(ppmで)よりも多くなるように添加する、ステップを含む。前記ジ前記チオカルバメート物質は、PDTC、DTC及びこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。前記液体は水であり得る。前記水はサワーストリッパー水であり得る。前記pHは、硫酸、HCl、H
3PO
4及びこれらの任意の組合せの添加により下げられ得る。前記第2鉄塩は、硫化第2鉄、塩化第2鉄、硫化第1鉄、塩化第1鉄及びこれらの任意の組合せからなる群から選択され得る。前記第2鉄塩は、1〜300ppmの間の量で添加され得る。前記ジチオカルバメート物質は、前記液体へ添加される第2鉄塩の量(ppmで)の50%と300%との間であり得る。
【0009】
前記方法は、前記液体に硫黄含有凝集剤の添加を含み得る。前記方法は、前記液体中のセレンの量を、1000ppbを超える量から40ppb未満の量へ低減させ得る。前記酸化剤は、過酸化水素オゾン、KMnO
4、NaClO、ClO
2、過酢酸、過炭酸ナトリウム、過酸化カルバミド、過硫酸ナトリウム及びこれらの任意の組合せからなるリストから選択され得る。
【0010】
以下、本発明は図面を参照しつつ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の方法の1つの実施態様を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
以下、本出願の目的のために用語が次のように定義される。
【0013】
「PDTC」は、ポリジ
チオカルバメートを意味し、ジチオカルバメート官能基が存在するポリマーの任意の形を含む。「DTC」はジチオカルバメートを意味する。
【0014】
「セレナイト」は、化学式HSeO
3−を持つ物質のセレン含有組成物を意味する。
【0015】
「サワーウオーター」は、化学処理、及びより具体的には石油化学処理の副生成物として生成される液体廃棄物を意味する。「ストリッピング」は、液流の一部の水で、アンモニア及び硫化水素などの副生成物を除去する処理を意味する。ストリッピングは通常蒸留搭内で実施され、そこでは前記液流が前記搭を流れ落ち、ガス流が前記搭を上昇して前記液体から汚染物が「ストリップ(除去)」される。
【0016】
「ストリッパーサワーウオーター」は、ストリッピング工程を通過したサワーウオーターを意味する。
【0017】
「排水」は、工業プラント又は工業プロセスから生成される
副生成物である水を意味する。
【0018】
上の定義又は本出願のいずれかでなされた定義が、辞書又は本出願に参照されて援用されたもので通常使用される意味とは一致しない場合は、本出願及び特に請求項で使用される用語は本出願での定義により解釈されるべきであり、かつ通常の定義、辞書の定義又は参照されて援用された定義により解釈されるべきではない。
【0019】
少なくとも1つの実施態様では、セレンは、セレン含有液体から:前記液体に酸化剤を添加し、前記液体のpHを7(好ましくは6)未満に調節し、第2鉄塩を、前記液体中のセレンの四分の一未満が沈殿するような量で添加し、及びポリジチオカルバメート物質を前記液体に、前記ポリジチオカルバメート物質の量(ppm)が前記第2鉄塩の量(ppm)よりも多いような量で添加するステップを含む方法で除去される。
【0020】
少なくとも1つの実施態様では、前記酸化剤は、過酸化水素オゾン、KMnO
4、NaClO、ClO
2、過酢酸、過炭酸ナトリウム、過酸化カルバミド、過硫酸ナトリウム及びこれらの任意の組合せからなるリストから選択される。少なくとも1つの実施態様では、前記pHは、硫酸、HCl、H
3PO
4及びこれらの任意の組合せからなるリストから選択される酸の添加により下げられる。少なくとも1つの実施態様では、前記第2鉄塩は、硫酸第2鉄、塩酸第2鉄、硫酸第1鉄、塩酸第1鉄及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される。少なくとも1つの実施態様では、前記第2鉄塩は、約1〜300ppmの量で添加される。少なくとも1つの実施態様では、前記ポリジチオカルバメート物質は、前記液体に添加された第2鉄の量(ppmで)の約50%〜300%の間である。
【0021】
理論に限定されずに、前記酸化剤及びpH環境は、セレンをセレナイトへ変換し、これは前記第2鉄塩と複合体を形成し、これが効果的に前記ポリジチオカルバメート物質と凝集して溶液から除去される、と考えられる。pHの低下を限定することは、前記セレンが、除去することがより困難なその他の化合物を形成することを防止する。前記SeO
32−をHSeO
3−にすることで、セレナイトは、第2鉄イオンがセレンと結合するための最良の条件を促進し、それにより、より少量の第2鉄イオンが使用され得る。前記PDTCの使用は、溶液から効果的に分離され得る前記第2鉄セレナイト付加物を沈殿させる。対照的に、従来技術は、より高濃度の第2鉄イオンでのみ操作されるより高いpH(>8)での共沈殿方法によるものであった。この共沈殿方法は、比較的少量のSe含有物質を吸収するために過剰量の加水分解酸化鉄(水酸化鉄)物質を用いる。
【0022】
少なくとも1つの実施態様では、前記pH、pE、電位及びSHE(標準水素電極)(ボルトで)は、教科書(Pourbaix、M.Atlas of Electro Chemical Equilibria in Aqueous Solutions、NACE Cebelcor(1974)(James A.Franklinによりフランス語から翻訳)及び特に554−559ページで、セレンのセレナイトの形成及び維持のための最適化)に準じて調節される。
【0023】
少なくとも1つの実施態様で、前記水は石油精製からのスリッパサワーウオーターである。これらの実施態様では、前記セレン除去は、蒸留搭を通る前記サワーウオーターの繰り返し通過が前記サワーウオーター中のセレンの濃度を増加し続ける結果となる場合に、顕著な効果を奏する。さらに、サワーストリッピング水は一般には非常に還元性であり、ほとんどのセレンはセレナイト、セレンシアネート及び他の有機セレン種の形で存在する。一連の実験で、本発明の方法は、ストリッパーサワーウオーター中の95%を超えるセレンを効果的に除去する、ということが示された。
【0024】
鉄物質とPDTCとの比は重要であり、それぞれの水源に応じて調節される必要がある。少なくとも1つの実施態様では、鉄物質とPDTCの比は1:4の硫酸鉄のモル数対ジチオカルバメート官能基のモル数である(10%の活性硫酸鉄溶液を用いる)。他の実施態様では、鉄物質とPDTCの比が1:2である。理想的範囲はこれらの例の間であるが、完全に水に依存する。
【0025】
いくつかの他の実施態様で、前記方法はPDTCに代えてDTCを用いて実施される。
【0026】
実施例
ここまで説明されたことは、次のいくつかの例を参照することでよりよく理解され得る。以下の例は例示することを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0027】
ストリッパーサワーウオーターのいくつかのサンプルを石油精製所から得た。これらのサンプルは大量のセレンを含んでいた。前記サンプルはその後、セレンを除去するための従来技術及び本発明の方法により処理された。残りの水はその後、誘導カップルプラズマ技術を用いて、サンプル中に残留するセレンを元素分析した。
【0028】
【表1】
データは、この処理で最も効果的な適用は、pH6〜7であることを示す。このpHではセレンは大部分がHSeO
3−(セレナイト)の形である。この形は、容易に第2鉄イオンと、さらに最終的にはPDTCBと複合物を形成可能となる。この凝集は大きな
フロック粒子を形成し、何らかの固−液分離方法で分離され得る。通常は石油精製所排水はpH>7であり、従って酸の添加により調節して低下させる必要がある。
【0029】
本発明は多くの異なる態様で実施され得るが、ここでは本発明の特に好ましい実施態様について添付図面に詳細に示される。本発明の開示は、本発明の原理を例示するものであって、本発明は例示される実施態様に限定されるものではない。ここで挙げられた全ての特許、特許出願、科学的文献及び全ての他の参照資料はそれらの全内容が参照されて本明細書に援用される。さらに、本発明は、ここで説明され、及び援用される種々の実施態様のいくつか又は全ての任意の可能な組合せを含む。
【0030】
ここで開示される全ての範囲及びパラメータは、そこに含まれる任意の及び全ての部分範囲を含み、その範囲の両端の間の全ての数が含まれる。例えば、範囲「1〜10」とは、最小値1及び最大値10の間(及び最小値1及び最大値10を含む)の任意のかつ全ての部分範囲を含むものと考えられるべきである。即ち最小値以上で始まる部分範囲(例えば1〜6.1)、最大値10以下で終了する部分範囲(例えば9.4〜8、4〜7)を含み、かつ最終的に前記範囲に含まれるそれぞれの数1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10を含むものと考えられるべきである。
【0031】
これまでの開示は説明のためであることが意図されており網羅的なものではない。本記載は、当業者に多くの変更例及び変法を示唆するものである。これら全ての変更例及び変法は、特許請求の範囲に含まれることが意図されており、ここで用語「含む」は「含むがこれに限定されない」ことを意味する。当技術分野に精通する者は、ここで記載された具体的な実施態様と均等な他の実施態様はまた本特許請求の範囲に含まれる、ということを認識することができる。当業者は、ここで記載される具体的な実施態様と均等な他の実施態様はまた添付される本特許請求の範囲に含まれる、ということを認識することができる。