特許第5791646号(P5791646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5791646-画像処理装置および画像形成装置 図000002
  • 特許5791646-画像処理装置および画像形成装置 図000003
  • 特許5791646-画像処理装置および画像形成装置 図000004
  • 特許5791646-画像処理装置および画像形成装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791646
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/40 20060101AFI20150917BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20150917BHJP
   H04N 1/46 20060101ALI20150917BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H04N1/40 101Z
   H04N1/40 D
   H04N1/46 Z
   G06T5/00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-36477(P2013-36477)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-165773(P2014-165773A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】里見 星輝
【審査官】 豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−190347(JP,A)
【文献】 特開平11−266373(JP,A)
【文献】 特開2012−095172(JP,A)
【文献】 特開2007−215204(JP,A)
【文献】 特開2012−239012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46−62
G06T 5/00
H04N 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポジットブラックと判定された黒判定範囲の一方のエッジおよび他方のエッジについてのエッジ近傍部分をピュアブラックへ変換する色変換部と、
ブラックプレーンについて、前記黒判定範囲のうち、前記黒判定範囲の一方のエッジおよび前記黒判定範囲の他方のエッジより内側の、所定幅だけ狭い範囲をマスク範囲に設定し、前記マスク範囲外のエッジを、縁取り対象のエッジと特定する縁取りエッジ特定部と、
を備え
前記黒判定範囲は、ブラックプレーンの画素値と、残りのカラープレーンのそれぞれの画素値の最小値との和が所定の閾値より大きい部分として特定されること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記所定の閾値は、最高濃度値より低いことを特徴とする請求項記載の画像処理装置。
【請求項3】
コンポジットブラックと判定された黒判定範囲の一方のエッジおよび他方のエッジについてのエッジ近傍部分をピュアブラックへ変換する色変換部と、
ブラックプレーンについて、前記黒判定範囲のうち、前記黒判定範囲の一方のエッジおよび前記黒判定範囲の他方のエッジより内側の、所定幅だけ狭い範囲をマスク範囲に設定し、前記マスク範囲外のエッジを、縁取り対象のエッジと特定する縁取りエッジ特定部と、
を備え、
前記黒判定範囲は、ブラックプレーンの画素値と、残りのカラープレーンのそれぞれの画素値の最小値との和が所定の第1閾値より大きく、かつ彩度が所定の第2閾値より低い部分として特定されること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記縁取りエッジ特定部は、ブラック以外のカラープレーンについては、前記黒判定範囲の全部をマスク範囲とし、前記マスク範囲外のエッジを、縁取り対象のエッジと特定することを特徴とする請求項1または請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のうちのいずれか1項記載の画像処理装置を備え、
前記縁取り対象のエッジに対して縁取りを行いつつスクリーン処理を行い、前記スクリーン処理後の画像を印刷すること、
を特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複合機などの画像形成装置では、画像に対してスクリーン処理を行い、スクリーン処理後の画像で印刷を行う。
【0003】
ある画像処理装置では、スクリーン処理の際に、エッジに対する縁取りを行っている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−95172号公報
【特許文献2】特開2012−95173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、印刷対象となるカラー画像は、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラック(CMYK)の4プレーンで構成される。カラー画像内の黒は、全プレーンにおいて濃度を有するコンポジットブラックとして表現されることがある。
【0006】
図3は、コンポジットブラックの領域およびそのエッジを説明する図である。図3に示すように、コンポジットブラックの領域は、CMYKのすべてのプレーンにおいて濃度を有し、文字などのコンポジットブラックの領域は、各プレーンにおいてエッジ(図3における斜線部分)を有する。
【0007】
このようなコンポジットブラックの領域を含む画像をスクリーン処理する際にエッジの縁取りを行う場合、全色のプレーンにおけるエッジに対する縁取りを行うことが考えられる。しかし、その場合、印刷の際に、縁取り後のエッジの総トナー量が非常に高くなるため、トナーのチリなどの問題が生じる可能性がある。
【0008】
また、コピー機などの画像形成装置では、画像内の領域を、文字領域、階調領域などに分離する領域分離処理を行うことがある。また、領域分離処理によって黒の文字領域と判定された領域については、その領域のエッジ近傍部分をコンポジットブラックからピュアブラック(Kプレーン以外のプレーンの値をゼロとしKプレーンの値で表現されるブラック)へ変換することがある。
【0009】
図4は、黒の文字領域についてのエッジ近傍部分のコンポジットブラックからピュアブラックへの変換を説明する図である。図4に示すように、黒の文字領域についてのエッジ近傍部分101がピュアブラックへ変換され、エッジ近傍部分101以外の内部領域は、コンポジットブラックのままとされる。この場合、図4に示すように、Kプレーンにおいては、エッジ近傍部分101の両側にエッジ102,103が存在し、CMYプレーンにおいては、黒の文字領域の内部にエッジ104が存在することになる。
【0010】
したがって、図4に示すように、エッジ近傍部分のコンポジットブラックからピュアブラックへの変換が行われた画像のスクリーン処理をする際に、黒の文字領域のエッジに対する縁取りを行う場合、CMYKの各プレーンにおいて、文字領域の内部のエッジ103,104に対しても縁取りが行われ、スクリーン処理後の画質が低下する可能性がある。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、カラー画像についてのスクリーン処理後の画質を低下させずに、エッジの縁取りを行う画像処理装置および画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像処理装置は、コンポジットブラックと判定された黒判定範囲の一方のエッジおよび他方のエッジについてのエッジ近傍部分をピュアブラックへ変換する色変換部と、ブラックプレーンについて、前記黒判定範囲のうち、前記黒判定範囲の一方のエッジおよび前記黒判定範囲の他方のエッジより内側の、所定幅だけ狭い範囲をマスク範囲に設定し、前記マスク範囲外のエッジを、縁取り対象のエッジと特定する縁取りエッジ特定部とを備える。そして、前記黒判定範囲は、ブラックプレーンの画素値と、残りのカラープレーンのそれぞれの画素値の最小値との和が所定の閾値より大きい部分として特定される。あるいは、前記黒判定範囲は、ブラックプレーンの画素値と、残りのカラープレーンのそれぞれの画素値の最小値との和が所定の第1閾値より大きく、かつ彩度が所定の第2閾値より低い部分として特定される。

【0013】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記画像処理装置を備え、前記縁取り対象のエッジに対して縁取りを行いつつスクリーン処理を行い、前記スクリーン処理後の画像を印刷する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カラー画像についてのスクリーン処理後の画質を低下させずに、エッジの縁取りが行われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1における縁取りエッジ特定部で設定されるマスク範囲を説明する図である。
図3図3は、コンポジットブラックの領域およびそのエッジを説明する図である。
図4図4は、黒の文字領域についてのエッジ近傍部分のコンポジットブラックからピュアブラックへの変換を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の構成を示すブロック図である。図1に示す画像形成装置1は、複合機である。ただし、画像形成装置1は、プリンター、コピー機、ファクシミリ機などでもよい。
【0018】
この画像形成装置1は、印刷装置11と、画像読取装置12と、ファクシミリ装置13と、画像処理装置14とを備える。
【0019】
印刷装置11は、スクリーン処理後のラスター画像データに基づいて原稿画像を印刷する内部装置である。例えば、印刷装置11は、電子写真方式でCMYK4色のトナーを使用してカラー画像を印刷する。
【0020】
画像読取装置12は、原稿から原稿画像を光学的に読み取り、原稿画像の画像データを生成する内部装置である。
【0021】
ファクシミリ装置13は、送信すべき原稿画像の画像データからファクシミリ信号を生成し所定の通信路を介して送信するとともに、ファクシミリ信号を所定の通信路を介して受信し画像データに変換する内部装置である。
【0022】
画像処理装置14は、画像読取装置12などで生成された画像データに対して、領域分離、色変換、スクリーン処理などの画像処理を行う。
【0023】
画像処理装置14は、演算処理装置21を有する。演算処理装置21は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やマイクロコンピューターで実現され、各種処理部を実現する。演算処理装置21では、制御部31、領域分離処理部32、色変換部33、高画質化処理部34、縁取りエッジ特定部35、およびスクリーン処理部36が実現される。
【0024】
制御部31は、印刷装置11、画像読取装置12、およびファクシミリ装置13を制御し、画像読取装置12およびファクシミリ装置13から原稿画像の画像データを取得したり、印刷装置11に原稿画像の印刷を実行させたりする。
【0025】
また、領域分離処理部32は、原稿画像内の文字領域、階調領域などを特定し、分離する。
【0026】
また、色変換部33は、原稿画像の画像データを、例えばRGBカラーデータから、印刷装置11のトナー色(CMYK)に対応するCMYKカラーデータへ変換する。
【0027】
さらに、色変換部33は、変換後のCMYKカラーデータにおいて、コンポジットブラックを有する領域を黒判定領域として特定し、図4に示すように、黒判定領域についての主走査方向および/または副走査方向における範囲(以下、黒判定範囲という)の一方のエッジおよび他方のエッジについてのエッジ近傍部分をピュアブラックへ変換する。
【0028】
また、高画質化処理部34は、スクリーン処理後の画像のスムージング処理などを行う。
【0029】
また、縁取りエッジ特定部35は、ブラックプレーン(Kプレーン)について、上述の黒判定範囲のうち、黒判定範囲の一方のエッジおよび黒判定範囲の他方のエッジより内側の範囲をマスク範囲に設定し、そのマスク範囲外のエッジを、縁取り対象のエッジと特定する。
【0030】
さらに、縁取りエッジ特定部35は、ブラック以外のカラープレーンについては、上述の黒判定範囲の全部をマスク範囲とし、そのマスク範囲外のエッジを、縁取り対象のエッジと特定する。
【0031】
この黒判定範囲は、ブラックプレーンの画素値と、残りのカラープレーンのそれぞれの画素値とに基づいて特定される。
【0032】
例えば、黒判定範囲は、ブラックプレーンの画素値dkと、残りのカラープレーンのそれぞれの画素値dc,dm,dyの最小値との和(dk+MIN(dc,dm,dy))が所定の閾値Thより大きい部分として特定される。そして、この所定の閾値Thは、最高濃度値より低く設定される。例えば、各プレーンの画素値が8ビットデータの場合、最高濃度値は255となり、この閾値Thは、255未満、例えば196に設定される。
【0033】
図2は、図1における縁取りエッジ特定部35で設定されるマスク範囲を説明する図である。
【0034】
図2(A)は、階調領域における黒判定範囲のCMYK各プレーンの濃度分布の一例を示している。階調領域における黒判定範囲については、上述のように、コンポジットブラックからピュアブラックへの変換が行われない。そして、CMYの各プレーンについては、階調領域における黒判定範囲の全域(つまり、黒判定範囲の一方のエッジから他方のエッジまでの範囲)が、マスク範囲に設定される。他方、ブラックプレーンについては、階調領域における黒判定範囲のうち、両端のエッジ51より内側の範囲が、マスク範囲に設定される。
【0035】
図2(B)は、文字領域における黒判定範囲のCMYK各プレーンの濃度分布の一例を示している。文字領域における黒判定範囲については、上述のように、エッジ近傍部分について、コンポジットブラックからピュアブラックへの変換が行われる。そして、CMYの各プレーンについては、階調領域における黒判定範囲の全域(つまり、黒判定範囲の一方のエッジから他方のエッジまでの範囲)が、マスク範囲に設定される。他方、ブラックプレーンについては、階調領域における黒判定範囲のうち、両端のエッジ61より内側の範囲が、マスク範囲に設定される。
【0036】
つまり、CMYの各プレーンについては、領域種別(文字領域および階調領域)に拘わらず、黒判定範囲の全域(つまり、黒判定範囲の一方のエッジから他方のエッジまでの範囲)が、マスク範囲に設定される。他方、領域種別(文字領域および階調領域)に拘わらず、黒判定範囲の最も外側のエッジ51,61より内側の範囲が、マスク範囲に設定される。
【0037】
したがって、縁取りエッジ特定部35は、領域種別(文字領域および階調領域)を考慮せずに、縁取り対象のエッジを適切に特定している。つまり、仮に、領域分離処理による各画素の領域種別情報が得られなくても、縁取りエッジ特定部35は、縁取り対象のエッジを適切に特定することができる。
【0038】
また、スクリーン処理部36は、縁取りエッジ特定部35により指定されたエッジについての縁取りを行いつつ(つまり、縁取りエッジ特定部35により指定されていないエッジについての縁取りを行わず)、CMYKの各プレーンについてのスクリーン処理を行う。なお、エッジの縁取りについては、例えば、特開2012−95172号公報および特開2012−95173号公報に記載の方法を使用してもよい。
【0039】
次に、上記画像形成装置の動作について説明する。
【0040】
制御部31は、例えばコピージョブにおいて、画像読取装置12から、原稿画像の画像データを取得する。
【0041】
そして、領域分離処理部32は、その原稿画像に対して領域分離処理を行う。なお、領域分離処理の結果に基づいて、領域種別に応じた適応フィルタリングなどの処理が行われる。例えば、階調領域については平滑化が行われ、文字領域についてはエッジの鮮鋭化が行われる。
【0042】
また、色変換部33は、画像データを、RGBデータからCMYKデータへ変換するとともに、上述のように、黒の文字領域のエッジ近傍部分を、コンポジットブラックからピュアブラックへ変換する。
【0043】
次に、高画質化処理部34が、色変換部33により処理された後の原稿画像に対してスムージング処理などを行う。
【0044】
そして、縁取りエッジ特定部35は、その原稿画像内の各プレーンについて、スクリーン処理された画像において縁取り対象となるエッジを上述のようにして特定する。
【0045】
スクリーン処理部36は、各プレーンについて、高画質化処理部34による処理後の原稿画像に対してスクリーン処理を行うとともに、縁取りエッジ特定部35により指定されたエッジの縁取りを行う。
【0046】
このようにして、縁取りエッジ特定部35により指定されたエッジの縁取りが行われたスクリーン処理後の画像データが得られると、制御部31は、その画像データに基づく画像を印刷装置11に印刷させる。
【0047】
以上のように、上記実施の形態によれば、色変換部33は、コンポジットブラックと判定された黒判定範囲の一方のエッジおよび他方のエッジについてのエッジ近傍部分をピュアブラックへ変換し、縁取りエッジ特定部35は、ブラックプレーンについて、黒判定範囲のうち、黒判定範囲の一方のエッジおよび黒判定範囲の他方のエッジより内側の範囲をマスク範囲に設定し、そのマスク範囲外のエッジを、縁取り対象のエッジと特定する。
【0048】
これにより、黒判定範囲内のエッジについては縁取りが行われずに済み、カラー画像についてのスクリーン処理後の画質を低下させずに、エッジの縁取りが行われる。
【0049】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0050】
例えば、上記実施の形態において、黒判定範囲は、(a)ブラックプレーンの画素値と、残りのカラープレーンのそれぞれの画素値の最小値との和(dk+MIN(dc,d,dy))が所定の第1閾値Thより大きく、かつ(b)彩度が所定の第2閾値Th2より低い部分として特定されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば、プリンター、コピー機、複合機などの画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 画像形成装置
14 画像処理装置
33 色変換部
35 縁取りエッジ特定部
図1
図2
図3
図4