【実施例】
【0022】
以下に、本発明の実施例である噛合チェーンユニット100について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。
本発明の実施例である噛合チェーンユニット100は、内歯プレート111とこの内歯プレート111よりチェーン幅方向外側に配設した外歯プレート112とをそれぞれ有する一対の噛合チェーン110を噛み合わせてチェーン剛直化部分である噛み合い部分110Gを形成するように構成されている。
また、一対の噛合チェーン110よりチェーン幅方向外側でチェーン幅方向Tに離間して配設された一対のケースプレート120と、この一対のケースプレート120の間に配設され一対の噛合チェーン110をガイドするガイドプレートである第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bとを備えている。
【0023】
このうち、第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bは、二股分岐箇所を有して、一対の噛合チェーン110をガイドして噛み外れ状態と噛み合った剛直化状態とを切り替えるように構成されている。
また、一対のケースプレート120は、スプロケット軸170を回転自在に支持するとともに、一対の噛合チェーン110に動力を伝達するスプロケットSP、および、第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの二股分岐箇所を覆う噛合チェーンユニット100のケースCの一部を構成している。
【0024】
ここで、噛合チェーンユニット100に使用される一対の噛合チェーン110について説明する。
図2(A)および
図2(B)に示すように、一対の噛合チェーン110は、一方の噛合チェーン110Aと他方の噛合チェーン110Bとから構成されている。
一対のうちの一つ(一方)の噛合チェーン110Aは、一例として、内歯プレート111と、外歯プレート112と、ブシュ113と、連結ピン114と、ローラ115とから構成されている。
【0025】
このうち、内歯プレート111は、チェーン幅方向Tに一対で離間配置され、チェーン長手方向前後に配設されたブシュ孔を有している。
また、外歯プレート112は、一対の内歯プレート111の外側に一対配置され、チェーン長手方向前後に配設されたピン孔を有している。
【0026】
そして、ローラ115に回動自在に挿通されたブシュ113の両端が一対の内歯プレート111のブシュ孔に圧入されるとともに、連結ピン114をブシュ113に回動自在に挿通してこの連結ピン114が一対の外歯プレート112のピン孔に圧入されることにより、内歯プレート111と外歯プレート112とがチェーン長手方向Rに連結されている。
さらに、一対の内歯プレート111とブシュ113とローラ115とからなる内歯ユニットUが、チェーン幅方向Tで3列構成されている。
なお、本実施例では、内歯ユニットUが第1列の内歯ユニットUA〜第3列の内歯ユニットUCの3列構成されているが、何列でもよいのは言うまでもない。
【0027】
図示しない減速ユニットの駆動モータが、例えば、正転駆動すると、駆動モータの動力が、スプロケット軸170のスプロケットSPを介して、2つのチェーン収納部CSに収納された一対の噛合チェーン110の噛み外れ部分110Hをそれぞれ引き出して噛合チェーン110A(110B)の噛み合い部分110G側であるチェーン長手方向一端側(進退方向進出側)へ移動させる。
【0028】
そして、噛み外れ部分110Hが動力を受けて移動しながら第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの二本のスリット状のガイド溝の合流によって順次互いに噛み合って一体化(剛直化)し、この一体化した噛み合い部分110Gが進退方向進出側へ移動する。
他方、駆動モータが逆転駆動すると、一対の噛合チェーン110の噛み合い部分110Gが動力を受けて進退方向退避側へ移動しながら第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの一本のガイド溝の分岐によって互いに噛み外れ、この噛み外れ部分110Hがチェーン長手方向他端側(進退方向退避側)へ移動して2つのチェーン収納部CSにそれぞれ収納されるように構成されている。
【0029】
このように、駆動モータの動力が一対の噛合チェーン110を介して被作動部180へ伝達されることにより、被作動部180が進退方向Sへ移動する。
本実施例では、
図4に示すように、一例として、第1ガイドプレート130Aが、第1列の内歯ユニットUAの第1列のローラ115Aと接触し、第2ガイドプレート130Bが、第3列の内歯ユニットUCの第3列のローラ115Cと接触するように構成されている。
言い換えると、第2列の内歯ユニットUBの第2列のローラ115Bは、直接ガイドされない構成である。
なお、ガイドプレートの枚数を、内歯ユニットUの列数と対応させてもよいし、対応させなくてもよい。
内歯ユニットUの複数列のうち少なくても1列をガイドすれば、その他の列も間接的にガイドされるからである。
【0030】
さらに、本実施例では、噛合チェーンユニット100が、一対のケースプレート120と第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bとを相対的に位置決めする中実段付カラー140を備えている。
この中実段付カラー140は、チェーン幅方向Tを軸方向とした小径部142と、この小径部142より大径でチェーン幅方向中央を基準として一対のケースプレート120のうちの一方のケースプレート120A側に偏って配設された大径部143とを有している。
小径部142と大径部143とを有することで、大径部143でのガイドプレート側段差部分143Bと、大径部143での一方のケースプレート側段差部分143Aとが構成されている。
【0031】
そして、中実段付カラー140の小径部142が、第1ガイドプレート130Aの挿通穴131Aおよび第2ガイドプレート130Bの挿通穴131Bに挿通され、中実段付カラー140の両端部である一端141Aおよび他端141Bが、一対のケースプレート120の内側に設けられた座繰り穴121A、121Bにそれぞれ嵌まっている。
ここで、小径部142の径は、挿通穴131Aおよび挿通穴131Bの径と略同じであり、小径部142は、挿通穴131Aおよび挿通穴131Bにぴったりフィットする。
さらに、大径部143でのガイドプレート側段差部分143Bが、第1ガイドプレート130Aの挿通穴131Aの周縁と当接し、大径部143での一方のケースプレート側段差部分143Aが、一方のケースプレート120Aの座繰り穴121Aの周縁と当接している。
【0032】
これにより、挿通穴131A、131Bに挿通した中実段付カラー140の一端141Aを座繰り穴121Aに、他端141Bを座繰り穴121Bに嵌めるだけで一対のケースプレート120と第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bとが相対的に位置決めされる。
また、チェーン幅方向Tに直交する方向でのスプロケットSPと第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bとの相対的な位置関係が精度よく決まる。
さらに、組立ながら一対のケースプレート120を基準とした第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの位置関係について調整する必要がなくなる。
また、中実段付カラー140の一端141Aが一方のケースプレート120Aの座繰り穴121Aに嵌まり、他端141Bが他方のケースプレート120Bの座繰り穴121Bに嵌まった所謂、両持ち状態となる。
さらに、強度が向上することで振動が低減される。
なお、中実段付カラー140は、
図3における固定用ボルト160Bの箇所にそれぞれ配設されている。
【0033】
また、ガイドプレート側段差部分143Bと当接している第1ガイドプレート130Aを基準とした大径部143と反対側に中空カラーである第1中空カラー150Aおよび第2中空カラー150Bを備えている。
そして、中実段付カラー140が、第1中空カラー150Aおよび第2中空カラー150Bの内部を貫通している。
【0034】
さらに、本実施例のように、ガイドプレートが複数枚で中空カラーの数がガイドプレートの枚数と同じである場合、ガイドプレートと中空カラーとが、チェーン幅方向Tで交互に配設され、中空カラーの端部が、ガイドプレートまたは他方のケースプレート120Bと当接している。
具体的には、第1ガイドプレート130A、第1中空カラー150A、第2ガイドプレート130B、第2中空カラー150Bの順で配設されている。
そして、第1中空カラー150Aの一端151Aが、第1ガイドプレート130Aと当接し、他端152Aが、第2ガイドプレート130Bと当接している。
また、第2中空カラー150Bの一端151Bが、第2ガイドプレート130Bと当接し、他端152Bが、他方のケースプレート120Bと当接している。
【0035】
これにより、第1ガイドプレート130Aと第2ガイドプレート130Bとの間の距離が第1中空カラー150Aの長さとなり、第2ガイドプレート130Bと他方のケースプレート120Bとの間の距離が第2中空カラー150Bの長さとなる。
さらに、一方のケースプレート120Aと第1ガイドプレート130Aとの間の距離が、中実段付カラー140の大径部143での一方のケースプレート側段差部分143Aからガイドプレート側段差部分143Bまでの長さとなる。
【0036】
なお、ガイドプレートが1枚で中空カラーの数が1つである場合、中空カラーの一端が、ガイドプレートと当接するとともに、中空カラーの他端が、他方のケースプレート120Bと当接するように構成する。
これにより、ガイドプレートと他方のケースプレート120Bとの間の距離が中空カラーの長さとなる。
【0037】
さらに、本実施例では、一方のケースプレート120Aの座繰り穴121Aと同心位置に、チェーン幅方向Tに貫通したねじ挿入穴122Aが配設されている。
そして、固定用ボルト160Aが、一方のケースプレート120Aの外側からねじ挿入穴122Aに挿入され中実段付カラー140にねじ留めされている。
同様に、他方のケースプレート120Bの座繰り穴121Bと同心位置に、チェーン幅方向Tに貫通したねじ挿入穴122Bが配設されている。
そして、固定用ボルト160Bが、他方のケースプレート120Bの外側からねじ挿入穴122Bに挿入され中実段付カラー140にねじ留めされている。
これにより、一対のケースプレート120に中実段付カラー140が固定されて、一対のケースプレート120と中実段付カラー140とが一体となるため、噛合チェーンユニット100を十分な強度とすることができる。
【0038】
なお、相対的な位置決めの作用効果を得るためには、中実段付カラー140の中心に対して大径部143と反対側の固定用ボルト160Bでねじ留めするだけでよく、大径部143側の固定用ボルト160Aでねじ留めする必要はない。
本実施例で大径部143側の固定用ボルト160Aでもねじ留めしたのは、強度をより高めるためである。
また、強度が十分であり、チェーン幅方向Tでのケースプレートに対するガイドプレートの配置が左右対称である場合は、複数の中実段付カラー140のうち略半数の中実段付カラー140の向きを残りの中実段付カラー140に対して逆向きにして、大径部143と反対側の固定用ボルト160Bでねじ留めし、大径部143側の固定用ボルト160Aを省略してもよい。
これにより、ねじ(固定用ボルト)の点数が削減されるため、組立時間をより短縮できる。
【0039】
このようにして得られた本発明の実施例である噛合チェーンユニット100は、一対の噛合チェーン110よりチェーン幅方向外側でチェーン幅方向Tに離間して配設されスプロケット軸170を回転自在に支持するとともにケースCの一部を構成する一対のケースプレート120と、この一対のケースプレート120の間に配設され噛合チェーンをガイドするガイドプレートである第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bと、一対のケースプレート120と第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bとを相対的に位置決めする中実段付カラー140とを備え、この中実段付カラー140が、チェーン幅方向Tを軸方向とした小径部142と、この小径部142より大径でチェーン幅方向中央を基準として一対のケースプレート120のうちの一方のケースプレート120A側に偏って配設された大径部143とを有することで、大径部143でのガイドプレート側段差部分143Bと、大径部143での一方のケースプレート側段差部分143Aとを構成し、中実段付カラー140の小径部142が、第1ガイドプレート130Aの挿通穴131Aおよび第2ガイドプレート130Bの挿通穴131Bに挿通され、中実段付カラー140の両端部である一端141Aおよび他端141Bが、一対のケースプレート120の内側に設けられた座繰り穴121A、121Bにそれぞれ嵌まっているとともに、大径部143でのガイドプレート側段差部分143Bが、第1ガイドプレート130Aの挿通穴131Aの周縁と当接し、大径部143での一方のケースプレート側段差部分143Aが、一方のケースプレート120Aの座繰り穴121Aの周縁と当接していることにより、噛合チェーンユニット100の組立中または組立後の一対のケースプレート120を基準とした第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの位置関係やスプロケットSPに対する第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの位置関係についての調整を不要にすることができ、組立ながら調整する必要がなくなる分組立時間を短縮できるとともに、噛合チェーンユニット100の強度を十分な強度とすることができ、振動や騒音を低減できる。
【0040】
さらに、ガイドプレート側段差部分143Bと当接している第1ガイドプレート130Aを基準とした大径部143と反対側に中空カラーである第1中空カラー150Aおよび第2中空カラー150Bを備え、中実段付カラー140が、第1中空カラー150Aおよび第2中空カラー150Bの内部を貫通し、第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bと第1中空カラー150Aおよび第2中空カラー150Bとが、チェーン幅方向Tで交互に配設され、第1中空カラー150Aの一端151Aが第1ガイドプレート130Aと当接し、他端152Aが第2ガイドプレート130Bと当接し、第2中空カラー150Bの一端151Bが第2ガイドプレート130Bと当接し、他端152Bが他方のケースプレート120Bと当接していることにより、一方のケースプレート120Aと第1ガイドプレート130Aとの間の距離を精度よく決めることができ、第1ガイドプレート130Aとチェーン幅方向隣の第2ガイドプレート130Bとの間の距離を精度よく決めることができ、第2ガイドプレート130Bと他方のケースプレート120Bとの間の距離を精度よく決めることができるなど、その効果は甚大である。