特許第5791660号(P5791660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791660
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】噛合チェーンユニット
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/06 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   F16G13/06 C
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-106559(P2013-106559)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-228032(P2014-228032A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100111372
【弁理士】
【氏名又は名称】津野 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100112298
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100168538
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 来
(72)【発明者】
【氏名】庄司 龍太
(72)【発明者】
【氏名】佐倉 俊児
(72)【発明者】
【氏名】峯山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】野口 敦男
(72)【発明者】
【氏名】酒井 克徳
(72)【発明者】
【氏名】堀江 拓
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−206844(JP,A)
【文献】 特開2011−126630(JP,A)
【文献】 特開昭60−125441(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0219144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/00−13/24
B66F 3/00− 3/46, 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯プレートと該内歯プレートよりチェーン幅方向外側に配設した外歯プレートとをそれぞれ有する一対の噛合チェーンを噛み合わせてチェーン剛直化部分を形成する噛合チェーンユニットにおいて、
前記一対の噛合チェーンよりチェーン幅方向外側でチェーン幅方向に離間して配設されスプロケット軸を回転自在に支持するとともにケースの一部を構成する一対のケースプレートと、該一対のケースプレートの間に配設され噛合チェーンをガイドするガイドプレートと、前記一対のケースプレートとガイドプレートとを相対的に位置決めする中実段付カラーとを備え、
該中実段付カラーが、前記チェーン幅方向を軸方向とした小径部と、該小径部より大径でチェーン幅方向中央を基準として一対のケースプレートのうちの一方のケースプレート側に偏って配設された大径部とを有することで、前記大径部でのガイドプレート側段差部分と、前記大径部での一方のケースプレート側段差部分とを構成し、
前記中実段付カラーの小径部が、前記ガイドプレートの挿通穴に挿通され、前記中実段付カラーの両端部が、前記一対のケースプレートの内側に設けられた座繰り穴にそれぞれ嵌まっているとともに、前記大径部でのガイドプレート側段差部分が、前記ガイドプレートの挿通穴の周縁と当接し、前記大径部での一方のケースプレート側段差部分が、前記一方のケースプレートの座繰り穴の周縁と当接していることを特徴とする噛合チェーンユニット。
【請求項2】
前記ガイドプレート側段差部分と当接しているガイドプレートを基準とした大径部と反対側に中空カラーを備え、
前記中実段付カラーが、前記中空カラーの内部を貫通し、
前記ガイドプレートが1枚で中空カラーの数が1つである場合、前記中空カラーの一端が、前記ガイドプレートと当接するとともに、前記中空カラーの他端が、前記一対のケースプレートのうちの他方のケースプレートと当接し、
前記ガイドプレートが複数枚で中空カラーの数がガイドプレートの枚数と同じである場合、前記ガイドプレートと中空カラーとが、前記チェーン幅方向で交互に配設され、前記中空カラーの端部が、前記ガイドプレートまたは他方のケースプレートと当接していることを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製造分野の製造設備、運輸分野の移送設備、医療福祉分野の介護設備、芸術分野の舞台設備などに用いて被作動部を設置面に対して進退方向に移動させる噛合チェーン式進退作動装置に組み込まれる噛合チェーンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被作動部をベースに対して進退方向に進退移動させる噛合チェーン式進退作動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような従来の噛合チェーン式進退作動装置の噛合チェーンユニットとして、例えば、図6に示すような噛合チェーンユニット700がある。
図6は、本願で考慮する態様1の噛合チェーンユニット700の側断面図である。
【0003】
態様1の噛合チェーンユニット700は、一対のケースプレート720と、第1ガイドプレート730Aと、第2ガイドプレート730Bと、第3ガイドプレート730Cと、第1中空カラー750Aと、第2中空カラー750Bと、第3中空カラー750Cと、第4中空カラー750Dとを備えていた。
一対のケースプレート720は、スプロケット軸770を回転自在に支持するとともに、噛合チェーン(図示せず)に動力を伝達するスプロケットSPと、第1ガイドプレート730A乃至第3ガイドプレート730Cの二股分岐箇所とを覆う噛合チェーンユニット700のケースの一部を構成していた。
【0004】
また、第1ガイドプレート730A乃至第3ガイドプレート730Cは、一対のケースプレート720の間に配設され、噛合チェーンをガイドして噛み外れ状態と噛み合った剛直化状態とを切り替えるように構成されていた。
一対のケースプレート720のうちの一方のケースプレート720Aには、ねじ穴723Aが設けられ、他方のケースプレート720Bには、ねじ挿入穴722Bが設けられていた。
また、第1ガイドプレート730Aには、挿通穴731Aが設けられ、同様に、第2ガイドプレート730Bには、挿通穴731Bが設けられ、第3ガイドプレート730Cには、挿通穴731Cが設けられていた。
【0005】
さらに、第1中空カラー750Aは、一方のケースプレート720Aと第1ガイドプレート730Aとの間に配設され、第2中空カラー750Bは、第1ガイドプレート730Aと第2ガイドプレート730Bとの間に配設されていた。
同様に、第3中空カラー750Cは、第2ガイドプレート730Bと第3ガイドプレート730Cとの間に配設され、第4中空カラー750Dは、第3ガイドプレート730Cと他方のケースプレート720Bとの間に配設されていた。
そして、固定用ボルト760が、他方のケースプレート720Bの外側からねじ挿入穴722Bを介して、第4中空カラー750D、第3ガイドプレート730Cの挿通穴731C、第3中空カラー750C、第2ガイドプレート730Bの挿通穴731B、第2中空カラー750B、第1ガイドプレート730Aの挿通穴731A、第1中空カラー750Aの順でそれぞれに挿通されて一方のケースプレート720Aのねじ穴723Aにねじ留めされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−145168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、スプロケットSPと第1ガイドプレート730A乃至第3ガイドプレート730Cとの相対的な位置関係を正確に合わせる必要がある。
そのため、一対のケースプレート720を基準に第1ガイドプレート730A乃至第3ガイドプレート730Cの相対的な位置関係を調整しながら組み立てていたが、組立に時間がかかる上に位置関係の十分な精度を出すのが困難であった。
【0008】
具体的には、一対のケースプレート720の間の間隔は、スプロケット軸770で決まってしまう構造であったため、第1ガイドプレート730A乃至第3ガイドプレート730Cの厚みや第1中空カラー750A乃至第4中空カラー750Dの長さの出来具合により固定用ボルト760の締め付けにガタが生じたり、きつくなりすぎたりする虞があり、その都度、組み立てたものを分解して所謂、シム調整を行う必要があるという問題があった。
また、チェーン幅方向Tと直交する方向での位置決めについては、固定用ボルト760の径と第1ガイドプレート730A乃至第3ガイドプレート730Cのそれぞれの挿通穴731A、731B、731Cの径だけで行う構造であったため、スプロケットSPと第1ガイドプレート730A乃至第3ガイドプレート730Cとの相対的な位置関係の十分な精度を出すことが困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、例えば、図7に示す噛合チェーンユニット800が考えられる。
図7は、本願で考慮する態様2の噛合チェーンユニット800の側断面図である。
態様2の噛合チェーンユニット800は、一対のケースプレート820と、第1ガイドプレート830Aと、第2ガイドプレート830Bと、第3ガイドプレート830Cと、第1中空カラー850Aと、第2中空カラー850Bと、中空段付バー890とを備えている。
【0010】
一対のケースプレート820は、上記態様1と同様、スプロケット軸870を回転自在に支持するとともに、スプロケットSP、および、第1ガイドプレート830A乃至第3ガイドプレート830Cの二股分岐箇所を覆う噛合チェーンユニット800のケースの一部を構成している。
そして、一対のケースプレート820のうちの一方のケースプレート820Aは、固定用ボルト860と接触しない構成である。
具体的には、第1中空カラー850Aが、第1ガイドプレート830Aと第2ガイドプレート830Bとの間に配設され、第2中空カラー850Bが、第2ガイドプレート830Bと第3ガイドプレート830Cとの間に配設されている。
【0011】
そして、中空段付バー890の大径部がチェーン幅方向Tで他方のケースプレート820B側となるように、中空段付バー890の小径部が、他方のケースプレート820B側から第3ガイドプレート830Cの挿通穴831C、第2中空カラー850B、第2ガイドプレート830Bの挿通穴831B、第1中空カラー850A、第1ガイドプレート830Aの挿通穴831Aの順でそれぞれに挿通されている。
さらに、固定用ボルト860が、一方のケースプレート820A側から中空段付バー890に挿通され他方のケースプレート820Bのねじ穴823Bにねじ留めされている。
【0012】
しかしながら、固定用ボルト860が所謂、片持ちとなる構造であるため、組立後の噛合チェーンユニット800の強度が十分でないという問題や、噛合チェーンからの負荷によって固定用ボルト860が撓んで結果的に相対的な位置ズレが生じるという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、前述したような問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、ケースプレートおよびスプロケットに対するガイドプレートの位置関係についての調整を不要にするとともに強度を十分にする噛合チェーンユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本請求項1に係る発明は、内歯プレートと該内歯プレートよりチェーン幅方向外側に配設した外歯プレートとをそれぞれ有する一対の噛合チェーンを噛み合わせてチェーン剛直化部分を形成する噛合チェーンユニットにおいて、前記一対の噛合チェーンよりチェーン幅方向外側でチェーン幅方向に離間して配設されスプロケット軸を回転自在に支持するとともにケースの一部を構成する一対のケースプレートと、該一対のケースプレートの間に配設され噛合チェーンをガイドするガイドプレートと、前記一対のケースプレートとガイドプレートとを相対的に位置決めする中実段付カラーとを備え、該中実段付カラーが、前記チェーン幅方向を軸方向とした小径部と、該小径部より大径でチェーン幅方向中央を基準として一対のケースプレートのうちの一方のケースプレート側に偏って配設された大径部とを有することで、前記大径部でのガイドプレート側段差部分と、前記大径部での一方のケースプレート側段差部分とを構成し、前記中実段付カラーの小径部が、前記ガイドプレートの挿通穴に挿通され、前記中実段付カラーの両端部が、前記一対のケースプレートの内側に設けられた座繰り穴にそれぞれ嵌まっているとともに、前記大径部でのガイドプレート側段差部分が、前記ガイドプレートの挿通穴の周縁と当接し、前記大径部での一方のケースプレート側段差部分が、前記一方のケースプレートの座繰り穴の周縁と当接していることにより、前述した課題を解決するものである。
【0015】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された噛合チェーンユニットの構成に加えて、前記ガイドプレート側段差部分と当接しているガイドプレートを基準とした大径部と反対側に中空カラーを備え、前記中実段付カラーが、前記中空カラーの内部を貫通し、前記ガイドプレートが1枚で中空カラーの数が1つである場合、前記中空カラーの一端が、前記ガイドプレートと当接するとともに、前記中空カラーの他端が、前記一対のケースプレートのうちの他方のケースプレートと当接し、前記ガイドプレートが複数枚で中空カラーの数がガイドプレートの枚数と同じである場合、前記ガイドプレートと中空カラーとが、前記チェーン幅方向で交互に配設され、前記中空カラーの端部が、前記ガイドプレートまたは他方のケースプレートと当接していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の噛合チェーンユニットは、内歯プレートとこの内歯プレートよりチェーン幅方向外側に配設した外歯プレートとをそれぞれ有する一対の噛合チェーンを噛み合わせてチェーン剛直化部分を形成することにより、チェーン剛直化部分の先端側を進退移動させることができるばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0017】
本請求項1に係る発明の噛合チェーンユニットによれば、一対の噛合チェーンよりチェーン幅方向外側でチェーン幅方向に離間して配設されスプロケット軸を回転自在に支持するとともにケースの一部を構成する一対のケースプレートと、この一対のケースプレートの間に配設され噛合チェーンをガイドするガイドプレートと、一対のケースプレートとガイドプレートとを相対的に位置決めする中実段付カラーとを備え、この中実段付カラーが、チェーン幅方向を軸方向とした小径部と、この小径部より大径でチェーン幅方向中央を基準として一対のケースプレートのうちの一方のケースプレート側に偏って配設された大径部とを有することで、大径部でのガイドプレート側段差部分と、大径部での一方のケースプレート側段差部分とを構成し、中実段付カラーの小径部が、ガイドプレートの挿通穴に挿通され、中実段付カラーの両端部が、一対のケースプレートの内側に設けられた座繰り穴にそれぞれ嵌まっているとともに、大径部でのガイドプレート側段差部分が、ガイドプレートの挿通穴の周縁と当接し、大径部での一方のケースプレート側段差部分が、一方のケースプレートの座繰り穴の周縁と当接していることにより、挿通穴に挿通した中実段付カラーの端部を座繰り穴に嵌めるだけで一対のケースプレートとガイドプレートとが相対的に位置決めされるため、噛合チェーンユニット組立中または組立後のケースプレートを基準としたガイドプレートの位置関係についての調整を不要にすることができる。
また、チェーン幅方向と直交する方向でスプロケットとガイドプレートとが相対的に精度よく位置決めされるため、スプロケットに対するガイドプレートの位置関係についての調整を不要にすることができる。
さらに、組立ながら調整する必要がなくなるため、その分組立時間を短縮できる。
また、中実段付カラーの両端部が一対のケースプレートの座繰り穴にそれぞれ嵌まった所謂、両持ち状態となるため、噛合チェーンユニットの強度を十分な強度とすることができる。
さらに、強度が向上することで振動が低減されるため、騒音を低減できる。
【0018】
本請求項2に係る発明の噛合チェーンユニットによれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、ガイドプレート側段差部分と当接しているガイドプレートを基準とした大径部と反対側に中空カラーを備え、中実段付カラーが、中空カラーの内部を貫通し、ガイドプレートが1枚で中空カラーの数が1つである場合、中空カラーの一端が、ガイドプレートと当接するとともに、中空カラーの他端が、一対のケースプレートのうちの他方のケースプレートと当接し、ガイドプレートが複数枚で中空カラーの数がガイドプレートの枚数と同じである場合、ガイドプレートと中空カラーとが、チェーン幅方向で交互に配設され、中空カラーの端部が、ガイドプレートまたは他方のケースプレートと当接していることにより、ガイドプレートと一対のケースプレートの一方との間の距離が中空カラーの長さとなるため、ガイドプレートと一対のケースプレートの一方との間の距離を精度よく決めることができる。
さらに、ガイドプレートが複数枚の場合も同様にガイドプレートとチェーン幅方向隣のガイドプレートとの間の距離が中空カラーの長さとなるため、ガイドプレートとチェーン幅方向隣のガイドプレートとの間の距離を精度よく決めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の本実施例である噛合チェーンユニットの概略を示す斜視図。
図2】(A)は噛合チェーンの分解斜視図、(B)は噛合チェーンの斜視図。
図3図1に示す符号3から視た噛合チェーンユニットの正面図。
図4図3に示す符号4−4で視た噛合チェーンユニットの側断面図。
図5図4に示す符号5の範囲を拡大した噛合チェーンユニットの拡大側断面図。
図6】本願で考慮する態様1の噛合チェーンユニットの側断面図。
図7】本願で考慮する態様2の噛合チェーンユニットの側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、内歯プレートとこの内歯プレートよりチェーン幅方向外側に配設した外歯プレートとをそれぞれ有する一対の噛合チェーンを噛み合わせてチェーン剛直化部分を形成する噛合チェーンユニットにおいて、一対の噛合チェーンよりチェーン幅方向外側でチェーン幅方向に離間して配設されスプロケット軸を回転自在に支持するとともにケースの一部を構成する一対のケースプレートと、この一対のケースプレートの間に配設され噛合チェーンをガイドするガイドプレートと、一対のケースプレートとガイドプレートとを相対的に位置決めする中実段付カラーとを備え、この中実段付カラーが、チェーン幅方向を軸方向とした小径部と、この小径部より大径でチェーン幅方向中央を基準として一対のケースプレートのうちの一方のケースプレート側に偏って配設された大径部とを有することで、大径部でのガイドプレート側段差部分と、大径部での一方のケースプレート側段差部分とを構成し、中実段付カラーの小径部が、ガイドプレートの挿通穴に挿通され、中実段付カラーの両端部が、一対のケースプレートの内側に設けられた座繰り穴にそれぞれ嵌まっているとともに、大径部でのガイドプレート側段差部分が、ガイドプレートの挿通穴の周縁と当接し、大径部での一方のケースプレート側段差部分が、一方のケースプレートの座繰り穴の周縁と当接していることにより、噛合チェーンユニット組立中または組立後のケースプレートを基準としたガイドプレートの位置関係やスプロケットに対するガイドプレートの位置関係についての調整を不要にし、組立時間を従来構造の場合と比べて短くするとともに、噛合チェーンユニットの強度を十分な強度とするものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0021】
例えば、駆動モータなどの動力を噛合チェーンに伝達するスプロケットは、一対の噛合チェーンの両側に1つずつ配設してもよいし、片側に1つ配設してもよい。
また、本発明の噛合チェーンユニットで用いる内歯プレート及び外歯プレートなどのプレートの具体的な形状については、相互に対向する同種のプレート同士をそれぞれ噛み合せて一体とするとともにそれぞれ噛み外して分岐するものであれば如何なる形状を呈するものであってもよい。
さらに、噛合チェーンは、ブシュを有してローラがブシュの外周に回動自在に配設されている構成でもよいし、ブシュを有さずにローラが連結ピンの外周に回動自在に配設されている構成でもよい。
また、中実段付カラーの両端部は、一対のケースプレート内側の座繰り穴にそれぞれ嵌まっていれば、一対のケースプレートにねじ留めで固定されていてもよいし、座繰り穴への圧入で固定されていてもよい。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明の実施例である噛合チェーンユニット100について、図1乃至図5に基づいて説明する。
本発明の実施例である噛合チェーンユニット100は、内歯プレート111とこの内歯プレート111よりチェーン幅方向外側に配設した外歯プレート112とをそれぞれ有する一対の噛合チェーン110を噛み合わせてチェーン剛直化部分である噛み合い部分110Gを形成するように構成されている。
また、一対の噛合チェーン110よりチェーン幅方向外側でチェーン幅方向Tに離間して配設された一対のケースプレート120と、この一対のケースプレート120の間に配設され一対の噛合チェーン110をガイドするガイドプレートである第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bとを備えている。
【0023】
このうち、第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bは、二股分岐箇所を有して、一対の噛合チェーン110をガイドして噛み外れ状態と噛み合った剛直化状態とを切り替えるように構成されている。
また、一対のケースプレート120は、スプロケット軸170を回転自在に支持するとともに、一対の噛合チェーン110に動力を伝達するスプロケットSP、および、第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの二股分岐箇所を覆う噛合チェーンユニット100のケースCの一部を構成している。
【0024】
ここで、噛合チェーンユニット100に使用される一対の噛合チェーン110について説明する。
図2(A)および図2(B)に示すように、一対の噛合チェーン110は、一方の噛合チェーン110Aと他方の噛合チェーン110Bとから構成されている。
一対のうちの一つ(一方)の噛合チェーン110Aは、一例として、内歯プレート111と、外歯プレート112と、ブシュ113と、連結ピン114と、ローラ115とから構成されている。
【0025】
このうち、内歯プレート111は、チェーン幅方向Tに一対で離間配置され、チェーン長手方向前後に配設されたブシュ孔を有している。
また、外歯プレート112は、一対の内歯プレート111の外側に一対配置され、チェーン長手方向前後に配設されたピン孔を有している。
【0026】
そして、ローラ115に回動自在に挿通されたブシュ113の両端が一対の内歯プレート111のブシュ孔に圧入されるとともに、連結ピン114をブシュ113に回動自在に挿通してこの連結ピン114が一対の外歯プレート112のピン孔に圧入されることにより、内歯プレート111と外歯プレート112とがチェーン長手方向Rに連結されている。
さらに、一対の内歯プレート111とブシュ113とローラ115とからなる内歯ユニットUが、チェーン幅方向Tで3列構成されている。
なお、本実施例では、内歯ユニットUが第1列の内歯ユニットUA〜第3列の内歯ユニットUCの3列構成されているが、何列でもよいのは言うまでもない。
【0027】
図示しない減速ユニットの駆動モータが、例えば、正転駆動すると、駆動モータの動力が、スプロケット軸170のスプロケットSPを介して、2つのチェーン収納部CSに収納された一対の噛合チェーン110の噛み外れ部分110Hをそれぞれ引き出して噛合チェーン110A(110B)の噛み合い部分110G側であるチェーン長手方向一端側(進退方向進出側)へ移動させる。
【0028】
そして、噛み外れ部分110Hが動力を受けて移動しながら第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの二本のスリット状のガイド溝の合流によって順次互いに噛み合って一体化(剛直化)し、この一体化した噛み合い部分110Gが進退方向進出側へ移動する。
他方、駆動モータが逆転駆動すると、一対の噛合チェーン110の噛み合い部分110Gが動力を受けて進退方向退避側へ移動しながら第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの一本のガイド溝の分岐によって互いに噛み外れ、この噛み外れ部分110Hがチェーン長手方向他端側(進退方向退避側)へ移動して2つのチェーン収納部CSにそれぞれ収納されるように構成されている。
【0029】
このように、駆動モータの動力が一対の噛合チェーン110を介して被作動部180へ伝達されることにより、被作動部180が進退方向Sへ移動する。
本実施例では、図4に示すように、一例として、第1ガイドプレート130Aが、第1列の内歯ユニットUAの第1列のローラ115Aと接触し、第2ガイドプレート130Bが、第3列の内歯ユニットUCの第3列のローラ115Cと接触するように構成されている。
言い換えると、第2列の内歯ユニットUBの第2列のローラ115Bは、直接ガイドされない構成である。
なお、ガイドプレートの枚数を、内歯ユニットUの列数と対応させてもよいし、対応させなくてもよい。
内歯ユニットUの複数列のうち少なくても1列をガイドすれば、その他の列も間接的にガイドされるからである。
【0030】
さらに、本実施例では、噛合チェーンユニット100が、一対のケースプレート120と第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bとを相対的に位置決めする中実段付カラー140を備えている。
この中実段付カラー140は、チェーン幅方向Tを軸方向とした小径部142と、この小径部142より大径でチェーン幅方向中央を基準として一対のケースプレート120のうちの一方のケースプレート120A側に偏って配設された大径部143とを有している。
小径部142と大径部143とを有することで、大径部143でのガイドプレート側段差部分143Bと、大径部143での一方のケースプレート側段差部分143Aとが構成されている。
【0031】
そして、中実段付カラー140の小径部142が、第1ガイドプレート130Aの挿通穴131Aおよび第2ガイドプレート130Bの挿通穴131Bに挿通され、中実段付カラー140の両端部である一端141Aおよび他端141Bが、一対のケースプレート120の内側に設けられた座繰り穴121A、121Bにそれぞれ嵌まっている。
ここで、小径部142の径は、挿通穴131Aおよび挿通穴131Bの径と略同じであり、小径部142は、挿通穴131Aおよび挿通穴131Bにぴったりフィットする。
さらに、大径部143でのガイドプレート側段差部分143Bが、第1ガイドプレート130Aの挿通穴131Aの周縁と当接し、大径部143での一方のケースプレート側段差部分143Aが、一方のケースプレート120Aの座繰り穴121Aの周縁と当接している。
【0032】
これにより、挿通穴131A、131Bに挿通した中実段付カラー140の一端141Aを座繰り穴121Aに、他端141Bを座繰り穴121Bに嵌めるだけで一対のケースプレート120と第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bとが相対的に位置決めされる。
また、チェーン幅方向Tに直交する方向でのスプロケットSPと第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bとの相対的な位置関係が精度よく決まる。
さらに、組立ながら一対のケースプレート120を基準とした第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの位置関係について調整する必要がなくなる。
また、中実段付カラー140の一端141Aが一方のケースプレート120Aの座繰り穴121Aに嵌まり、他端141Bが他方のケースプレート120Bの座繰り穴121Bに嵌まった所謂、両持ち状態となる。
さらに、強度が向上することで振動が低減される。
なお、中実段付カラー140は、図3における固定用ボルト160Bの箇所にそれぞれ配設されている。
【0033】
また、ガイドプレート側段差部分143Bと当接している第1ガイドプレート130Aを基準とした大径部143と反対側に中空カラーである第1中空カラー150Aおよび第2中空カラー150Bを備えている。
そして、中実段付カラー140が、第1中空カラー150Aおよび第2中空カラー150Bの内部を貫通している。
【0034】
さらに、本実施例のように、ガイドプレートが複数枚で中空カラーの数がガイドプレートの枚数と同じである場合、ガイドプレートと中空カラーとが、チェーン幅方向Tで交互に配設され、中空カラーの端部が、ガイドプレートまたは他方のケースプレート120Bと当接している。
具体的には、第1ガイドプレート130A、第1中空カラー150A、第2ガイドプレート130B、第2中空カラー150Bの順で配設されている。
そして、第1中空カラー150Aの一端151Aが、第1ガイドプレート130Aと当接し、他端152Aが、第2ガイドプレート130Bと当接している。
また、第2中空カラー150Bの一端151Bが、第2ガイドプレート130Bと当接し、他端152Bが、他方のケースプレート120Bと当接している。
【0035】
これにより、第1ガイドプレート130Aと第2ガイドプレート130Bとの間の距離が第1中空カラー150Aの長さとなり、第2ガイドプレート130Bと他方のケースプレート120Bとの間の距離が第2中空カラー150Bの長さとなる。
さらに、一方のケースプレート120Aと第1ガイドプレート130Aとの間の距離が、中実段付カラー140の大径部143での一方のケースプレート側段差部分143Aからガイドプレート側段差部分143Bまでの長さとなる。
【0036】
なお、ガイドプレートが1枚で中空カラーの数が1つである場合、中空カラーの一端が、ガイドプレートと当接するとともに、中空カラーの他端が、他方のケースプレート120Bと当接するように構成する。
これにより、ガイドプレートと他方のケースプレート120Bとの間の距離が中空カラーの長さとなる。
【0037】
さらに、本実施例では、一方のケースプレート120Aの座繰り穴121Aと同心位置に、チェーン幅方向Tに貫通したねじ挿入穴122Aが配設されている。
そして、固定用ボルト160Aが、一方のケースプレート120Aの外側からねじ挿入穴122Aに挿入され中実段付カラー140にねじ留めされている。
同様に、他方のケースプレート120Bの座繰り穴121Bと同心位置に、チェーン幅方向Tに貫通したねじ挿入穴122Bが配設されている。
そして、固定用ボルト160Bが、他方のケースプレート120Bの外側からねじ挿入穴122Bに挿入され中実段付カラー140にねじ留めされている。
これにより、一対のケースプレート120に中実段付カラー140が固定されて、一対のケースプレート120と中実段付カラー140とが一体となるため、噛合チェーンユニット100を十分な強度とすることができる。
【0038】
なお、相対的な位置決めの作用効果を得るためには、中実段付カラー140の中心に対して大径部143と反対側の固定用ボルト160Bでねじ留めするだけでよく、大径部143側の固定用ボルト160Aでねじ留めする必要はない。
本実施例で大径部143側の固定用ボルト160Aでもねじ留めしたのは、強度をより高めるためである。
また、強度が十分であり、チェーン幅方向Tでのケースプレートに対するガイドプレートの配置が左右対称である場合は、複数の中実段付カラー140のうち略半数の中実段付カラー140の向きを残りの中実段付カラー140に対して逆向きにして、大径部143と反対側の固定用ボルト160Bでねじ留めし、大径部143側の固定用ボルト160Aを省略してもよい。
これにより、ねじ(固定用ボルト)の点数が削減されるため、組立時間をより短縮できる。
【0039】
このようにして得られた本発明の実施例である噛合チェーンユニット100は、一対の噛合チェーン110よりチェーン幅方向外側でチェーン幅方向Tに離間して配設されスプロケット軸170を回転自在に支持するとともにケースCの一部を構成する一対のケースプレート120と、この一対のケースプレート120の間に配設され噛合チェーンをガイドするガイドプレートである第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bと、一対のケースプレート120と第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bとを相対的に位置決めする中実段付カラー140とを備え、この中実段付カラー140が、チェーン幅方向Tを軸方向とした小径部142と、この小径部142より大径でチェーン幅方向中央を基準として一対のケースプレート120のうちの一方のケースプレート120A側に偏って配設された大径部143とを有することで、大径部143でのガイドプレート側段差部分143Bと、大径部143での一方のケースプレート側段差部分143Aとを構成し、中実段付カラー140の小径部142が、第1ガイドプレート130Aの挿通穴131Aおよび第2ガイドプレート130Bの挿通穴131Bに挿通され、中実段付カラー140の両端部である一端141Aおよび他端141Bが、一対のケースプレート120の内側に設けられた座繰り穴121A、121Bにそれぞれ嵌まっているとともに、大径部143でのガイドプレート側段差部分143Bが、第1ガイドプレート130Aの挿通穴131Aの周縁と当接し、大径部143での一方のケースプレート側段差部分143Aが、一方のケースプレート120Aの座繰り穴121Aの周縁と当接していることにより、噛合チェーンユニット100の組立中または組立後の一対のケースプレート120を基準とした第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの位置関係やスプロケットSPに対する第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bの位置関係についての調整を不要にすることができ、組立ながら調整する必要がなくなる分組立時間を短縮できるとともに、噛合チェーンユニット100の強度を十分な強度とすることができ、振動や騒音を低減できる。
【0040】
さらに、ガイドプレート側段差部分143Bと当接している第1ガイドプレート130Aを基準とした大径部143と反対側に中空カラーである第1中空カラー150Aおよび第2中空カラー150Bを備え、中実段付カラー140が、第1中空カラー150Aおよび第2中空カラー150Bの内部を貫通し、第1ガイドプレート130Aおよび第2ガイドプレート130Bと第1中空カラー150Aおよび第2中空カラー150Bとが、チェーン幅方向Tで交互に配設され、第1中空カラー150Aの一端151Aが第1ガイドプレート130Aと当接し、他端152Aが第2ガイドプレート130Bと当接し、第2中空カラー150Bの一端151Bが第2ガイドプレート130Bと当接し、他端152Bが他方のケースプレート120Bと当接していることにより、一方のケースプレート120Aと第1ガイドプレート130Aとの間の距離を精度よく決めることができ、第1ガイドプレート130Aとチェーン幅方向隣の第2ガイドプレート130Bとの間の距離を精度よく決めることができ、第2ガイドプレート130Bと他方のケースプレート120Bとの間の距離を精度よく決めることができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0041】
100、 700、 800 ・・・ 噛合チェーンユニット
110 ・・・ 一対の噛合チェーン
110A ・・・ 一方の噛合チェーン
110B ・・・ 他方の噛合チェーン
110G ・・・ 噛み合い部分(チェーン剛直化部分)
110H ・・・ 噛み外れ部分
111 ・・・ 内歯プレート
112 ・・・ 外歯プレート
113 ・・・ ブシュ
114 ・・・ 連結ピン
115 ・・・ ローラ
115A ・・・ 第1列のローラ
115B ・・・ 第2列のローラ
115C ・・・ 第3列のローラ
120、 720、 820 ・・・ 一対のケースプレート
120A、720A、820A・・・ 一方のケースプレート
121A ・・・ 座繰り穴
122A ・・・ ねじ挿入穴
723A ・・・ ねじ穴
120B、720B、820B・・・ 他方のケースプレート
121B ・・・ 座繰り穴
122B、722B ・・・ ねじ挿入穴
823B・・・ ねじ穴
130A、730A、830A・・・ 第1ガイドプレート
131A、731A、831A・・・ (第1ガイドプレートの)挿通穴
130B、730B、830B・・・ 第2ガイドプレート
131B、731B、831B・・・ (第2ガイドプレートの)挿通穴
730C、830C・・・ 第3ガイドプレート
731C、831C・・・ (第3ガイドプレートの)挿通穴
140 ・・・ 中実段付カラー
141A ・・・ (中実段付カラーの)一端
141B ・・・ (中実段付カラーの)他端
142 ・・・ 小径部
143 ・・・ 大径部
143A ・・・ (一方のケースプレート側)段差部分
143B ・・・ (第1ガイドプレート側)段差部分
150A、750A、850A・・・ 第1中空カラー
151A ・・・ (第1中空カラーの)一端
152A ・・・ (第1中空カラーの)他端
150B、750B、850B・・・ 第2中空カラー
151B ・・・ (第2中空カラーの)一端
152B ・・・ (第2中空カラーの)他端
750C ・・・ 第3中空カラー
750D ・・・ 第4中空カラー
160A ・・・ (大径部側の)固定用ボルト
160B ・・・ (大径部と反対側の)固定用ボルト
760、 860 ・・・ 固定用ボルト
170、 770、 870 ・・・ スプロケット軸
180 ・・・ 被作動部
890 ・・・ 中空段付バー
C ・・・ ケース
CS ・・・ チェーン収納部
R ・・・ チェーン長手方向
S ・・・ 進退方向
SP ・・・ スプロケット
T ・・・ チェーン幅方向
U ・・・ 内歯ユニット
UA ・・・ 第1列の内歯ユニット
UB ・・・ 第2列の内歯ユニット
UC ・・・ 第3列の内歯ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7