【実施例】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
ブチルゴムを用いて、
図1および
図2に示す形状のシリンジ用ガスケットのコア部を作製した。コア部の形成は、ブチルゴムに添加剤を配合した加硫性ゴム組成物をプレス成形することにより行った。得られたコア部の形状は、長さ20mm、先端側及び後端側環状リブ部分での外径23.7mm、先端側環状リブ中央と後端側環状リブ中央間の長さ10mm、先端側環状リブと後端側環状リブ間の同一外径部分での外径21.5mm、内側に雌ねじ部を有するプランジャー取付用凹部の長さ(深さ)8mm、プランジャー取付用凹部の先端側での内径14.5mm、及び後端側での内径15mmであった。
次に、精製水66重量部に、シリコーン系樹脂29重量部、ジオクチルジラウリル酸スズ1重量部を添加して、被覆液を調製した。なお、シリコーン系樹脂は以下のものを、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いて混合した。
【0024】
1)主成分が両末端シラノールポリジメチルシロキサンである製品名1501Fluid(東レ・ダウコーニング株式会社製)25重量部
2)主成分がメチルトリメトキシシランである製品名Z−6366(東レ・ダウコーニング株式会社製)0.1重量部
3)主成分が3−アミノプロピルトリエトキシシランである製品名Z−6011(東レ・ダウコーニング株式会社製)とマレイン酸無水物のエタノール溶液の混合物1重量部(樹脂率は50%)
4)主成分が3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである製品名Z−6040(東レ・ダウコーニング株式会社製)0.5重量部
【0025】
そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケットコア部材を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、上記組成の被覆液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、コア部材の表面に形成された被覆層の平均厚さは、約8μmであった。このガスケットを実施例1とした。
【0026】
(実施例2)
精製水66重量部に、実施例1と同じシリコーン系樹脂29重量部、ジオクチルジラウリル酸スズ1重量部を添加して、主剤を調製した。
主剤8重量部に対して、精製水5重量部を添加して、混合することにより、被覆液を調製した。そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケットコア部材を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、上記組成の被覆液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、コア部材の表面に形成された被覆層の平均厚さは、約5μmであった。このガスケットを実施例2とした。
【0027】
(実施例3)
精製水66重量部に、シリコーン系樹脂29重量部、ジオクチルジラウリル酸スズ1重量部を添加して、被覆液を調製した。なお、シリコーン系樹脂は以下のものを、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いて混合した。
1)主成分が両末端シラノールポリジメチルシロキサンである製品名DMS−S14(GELEST社製)25重量部
2)主成分がメチルトリメトキシシランである製品名SIP6560.0(GELEST社製)0.1重量部
3)主成分が3−アミノプロピルトリエトキシシランである製品名SIA0610.0(GELEST社製)とマレイン酸無水物のエタノール溶液の混合物1重量部(樹脂率50%)
4)主成分が3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである製品名SIG5840.1(商品名、GELEST社製)0.5重量部
そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケットコア部材を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、上記組成の被覆液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、コア部材の表面に形成された被覆層の平均厚さは、約8μmであった。このガスケットを実施例3とした。
【0028】
(実施例4)
精製水66重量部に、シリコーン系樹脂29重量部、ジオクチルジラウリル酸スズ1重量部を添加して、被覆液を調製した。なお、シリコーン系樹脂は以下のものを、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いて混合した。
1)主成分がシラノール基を有するポリアルキルフェニルシロキサンである製品名YR3204(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)25重量部
2)主成分がフェニルトリエトキシシランである製品名TSL8178(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)0.1重量部
3)主成分が3−アミノプロピルトリエトキシシランである製品名TSL8331(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)とマレイン酸無水物のエタノール溶液の混合物1重量部(樹脂率50%)
4)主成分が3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである製品名TSL8350(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)0.5重量部
そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケットコア部材を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、上記組成の被覆液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、コア部材の表面に形成された被覆層の平均厚さは、約8μmであった。このガスケットを実施例4とした。
【0029】
(比較例1)
精製水66重量部に、実施例1と同じシリコーン系樹脂29重量部、ジオクチルジラウリル酸スズ1重量部を添加して、主剤を調製した。
さらに、精製水46重量部、シリコンゴムパウダー52重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル2重量部を添加して、微粒子液を調製した。なお、シリコンゴムパウダーとしては、製品名シリコンゴムパウダーKMP−600(信越化学工業株式会社製)を用いた。主剤5重量部に対して、精製水5重量部、微粒子液3重量部を添加して、混合することにより、被覆液を調製した。
そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケットコア部材を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、上記組成の微粒子含有被覆液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、コア部材の表面に形成された被覆層の平均厚さは、約8μmであった。このガスケットを比較例1とした。
【0030】
(比較例2)
精製水66重量部に、実施例1と同じシリコーン系樹脂29重量部、ジオクチルジラウリル酸スズ1重量部を添加して、主剤を調製した。
さらに、精製水46重量部、シリコンゴムパウダーKMP−600(信越化学工業株式会社製)52重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル2重量部を添加して、微粒子液を調製した。
主剤6重量部に対して、精製水5重量部、微粒子液2重量部を添加して、混合することにより、被覆液を調製した。
そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケットコア部材を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、上記の被覆液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、コア部材の表面に形成された被覆層の平均厚さは、約8μmであった。このガスケットを比較例2とした。
【0031】
(比較例3)
精製水66重量部に、実施例1と同じシリコーン系樹脂29重量部、ジオクチルジラウリル酸スズ1重量部を添加して、主剤を調製した。
さらに、精製水46重量部、シリコンゴムパウダーKMP−600(信越化学工業株式会社製)52重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル2重量部を添加して、微粒子液を調製した。
主剤7重量部に対して、精製水5重量部、微粒子液1重量部を添加して、混合することにより、被覆液を調製した。
そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケットコア部材を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、上記の被覆液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、コア部材の表面に形成された被覆層の平均厚さは、約8μmであった。このガスケットを比較例3とした。
【0032】
(比較例4)
精製水100重量部に、フッ素系樹脂1重量部、ケイ素系樹脂10重量部、ウレタン系樹脂3重量部、タルク微粒子(平均粒径約3μm)20重量部、N−メチルピロリドン1重量部、ブチルカルビトール1重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1重量部を添加して、被覆液を調製した。なお、フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレンを主成分とする製品名ポリフロン(登録商標)TFE(ダイキン工業株式会社製)を用いた。ケイ素樹脂としては、水性ケイ素樹脂(水性シリコーン化合物)である、製品名SE1980(東レ・ダウコーニング株式会社製)を用いた。ウレタン樹脂として、水性ウレタン樹脂である、製品名ローザン1100(トーヨーポリマー株式会社製)を用いた。
さらに、シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシランを主成分とする製品名TSL8310(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を準備した。
そして、主剤95重量部に対してシランカップリング剤5重量部を添加し、混合することにより、被覆液を調製した。
そして、室温、常圧環境下において、上述のように作製したガスケットコア部材を、90℃、30分間加熱処理した後、その中心軸を中心として回転(300rpm)させるとともに、ガスケットの回転する側面側より、上記の被覆液をスプレー塗布した後、150℃、30分間乾燥させることによって、本発明のガスケットを作製した。その後、作製したガスケット上の余分な被覆液を洗うために、80℃以上の精製水で、洗浄を実施した。なお、コア部材の表面に形成された被覆層の厚さは、約10μmであった。このガスケットを比較例4とした。
【0033】
(実験1:被覆液の安定性)
実施例1〜4及び比較例1〜4で調製した被覆液の安定性を評価した。冷蔵保存で1箇月経過後の外観は表1のような結果となった。
【0034】
【表1】
【0035】
(実験2:摩擦係数測定試験)
実施例2で調製した被覆液及び比較例1で調製した被覆液各々を、90℃、30分間加熱処理した30mm×50mm、厚み2mmのEPDMゴムシートに、刷毛塗りし、150℃、30分間乾燥させた。その後、室温で24時間静置した。このゴムシートに100〜1000gの荷重をかけ、ガラス板上を1000mm/minの速度で水平に移動させたときの応力をJIS K7125に準拠した方法で摩擦試験機(往復摩耗試験機TYPE:30、新東科学株式会社製)を用いて測定し、動摩擦係数(μd)及び静摩擦係数(μs)を求めた。結果を表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
(実験3:摺動抵抗測定試験)
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、23.5mm、長さは、95mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び2、比較例1〜4の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
各シリンジの摺動抵抗値を、オートグラフ(機種名 EZ−Test、会社名 島津製作所)により測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端をオートグラフの測定対象物固定部に固定し、プランジャーを100mm/minの速度で60mm降下させたときの初期摺動抵抗値及び最大摺動抵抗値(N)を計測したところ、表3に示すような結果となった。
表3に示すように、実施例1及び2、比較例1〜4の各ガスケットを用いたシリンジは、初期摺動抵抗値及び最大摺動抵抗値ともに、同様なものであった。また、初期摺動抵抗値と最大摺動抵抗値との差が少なく、プランジャーを押し始めた際に薬液が設定量以上に飛び出すおそれがほとんどなく、薬液の吐出を安全かつ正確に行うことができる。初期摺動抵抗値と最大摺動抵抗値共に10N以下の良好な結果が得られた。
JIS K7125に準拠した試験系を採用した実験2において、固体微粒子を含まない被覆液(実施例1)を用いて作製したゴムシートと固体微粒子を含む被覆液(比較例2)を用いて作製したゴムシートを比較すると、固体微粒子を含む被覆液を用いたほうが、摩擦係数が低く滑り性が良いということが示された。しかし、本実験におけるガスケットとシリンジの組み合わせの摺動測定試験の結果からは、固体微粒子を含むことが優位ではなく、固体微粒子を含まない場合も良好な滑り性が示された。
【0038】
【表3】
【0039】
また、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び比較例4の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。その後、精製水40mLを注射筒内へ注入し、注射筒の先端部に封止部材を嵌めて密封し、オートクレーブ滅菌を行った後、上記同様、オートグラフ(機種名 EZ−Test、島津製作所株式会社製)により摺動抵抗値を測定した。試験速度20〜500mm/minにおける初期摺動抵抗値及び最大摺動抵抗値(N)を計測したところ、表4に示すような結果となった。
表4に示すとおり、実施例1のガスケットを用いたシリンジは、微粒子を含む比較例4のガスケットを用いたシリンジと比較して、100mm/minを境にして低い試験速度では摺動抵抗値が減少していることがわかり、薬剤を静脈内注射するのに適した速度における摺動性がより良好であることがわかった。
なお、各試験におけるサンプル数は10とし、表の数値はそれらの平均値である。
【0040】
【表4】
【0041】
また、シリンジ用外筒の形成材料として、ガラス(塩谷硝子株式会社製)を用いて、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、23mm、長さは、76mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1のガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。その後、精製水20mLを外筒内へ注入し、上記同様、オートグラフ(機種名 EZ−Test、島津製作所株式会社製)により摺動抵抗値を測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端をオートグラフの測定対象物固定部に固定し、プランジャーを20、50、100、500mm/minの速度で45mm降下させたときの最大摺動抵抗値(N)を計測したところ、表5に示すような結果となった。
【0042】
【表5】
【0043】
(実験4:滅菌済み注射筒基準に規定された圧力試験)
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、23.5mm、長さは、95mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び2、比較例1〜4の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
滅菌済みのプラスチック製の注射筒であり、そのまま直ちに使用でき、かつ、1回限りの使用で使い捨てる滅菌済み注射筒基準(平成10年12月11日医薬発第1079号医薬安全局長通知)における圧力試験に規定されている試験を実施した。その結果を表3に示した。
なお、試験におけるサンプル数は5とし、全て適合した場合、「適合」とした。
【0044】
(実験5:高浸透性液体密封性試験)
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、23.5mm、長さは、95mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び2、比較例1〜4の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
その後、プラスチック製軟包材ヒートシール部の密封性試験に用いられるエージレス(登録商標)チェッカー(三菱瓦斯化学株式会社製)を用い、密封性試験を実施した。室温で一晩放置し、ガスケット摺動部からの液漏れを目視観察した結果を表3に示した。
なお、試験におけるサンプル数は5とし、全て適合した場合、「適合」とした。
【0045】
(実験6:表面粗度)
実施例1及び2、比較例1〜4の各ガスケットについて、表面粗度を測定した。測定方法は、JIS B0601(1994)に従って行った。結果を表3に示した。
【0046】
(実験7:固着試験)
50mm×70mm、厚み2mmのポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を形成材料とした板を準備した。さらに、本ガスケットコア部材と同じブチルゴム製のゴムシート(10mm×50mm、厚み15mm)を90℃、30分間加熱処理した後、実施例2及び比較例1で用いた被覆液各々をゴムシートにスプレー塗布し、150℃、30分間乾燥させた試料を用意した。
そして、上記のポリプロピレン板と鉄板の間にコーティング面をポリプロピレン板側にして各々試料を挟み、クリップで固定し、40℃、60℃、80℃恒温槽内で各々1日、さらに60℃恒温槽内で10日、20日、30日各々静置した。静置後のサンプルについて、オートグラフ(機種名 EZ−Test、島津製作所株式会社製)により固着度を測定した。結果を表6に示した。
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、23.5mm、長さは、95mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例2及び比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。その後、40℃、60℃、80℃恒温槽内で各々1日、さらに60℃恒温槽内で10日、20日、30日各々静置した。静置後のサンプルについて、ガスケットのシリンジ用外筒への固着度を評価するために、各シリンジの初期摺動抵抗値を、オートグラフ(機種名 EZ−Test、島津製作所株式会社製)により測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端をオートグラフの測定対象物固定部に固定し、プランジャーを100mm/minの速度で60mm降下させたときの初期摺動抵抗値(N)を計測したところ、表7に示すような結果となった。
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】
表5より、固体微粒子を含まない被覆液(実施例2)を用いて作製したゴムシートと固体微粒子を含む被覆液(比較例1)を用いて作製したゴムシートを比較すると、固体微粒子を含む被覆液を用いたほうが、固着度が低いことが示された。しかし、本ガスケットとシリンジの組み合わせの摺動測定試験の初期摺動抵抗値から得られた固着試験においては(表6)、固体微粒子を含むことが優位ではなく、固体微粒子の有無による固着度に差はないことが示された。
【0050】
(実験8:不溶性微粒子試験)
シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、23.5mm、長さは、95mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。 そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
その後、精製水40mLを注射筒内へ注入し、注射筒の先端部に封止部材を嵌めて密封し、オートクレーブ滅菌を行った後、10分間激しく振とう後の精製水中の不溶性微粒子を測定した。結果を表8に示した。
【0051】
【表8】
【0052】
(実験9:シリンジポンプを用いた流量精度評価試験)
シリンジポンプ(TE−331、テルモ株式会社製)を用い、シリンジの流量精度評価を実施した。シリンジ用外筒の形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のシリンジ用外筒を作製した。シリンジ用外筒の円筒部分の内径は、23.5mm、長さは、95mmであった。また、プランジャーの形成材料として、ポリプロピレン(日本ポリケム株式会社製)を用いて、射出成形により、
図5に示す形状のプランジャーを作製した。
そして、上記のシリンジ用外筒、実施例1及び比較例1の各ガスケット、上記のプランジャーを組み立て、シリンジを作製した。
その後、精製水40mLを注射筒内へ注入し、注射筒の先端部に封止部材を嵌めて密封し、オートクレーブ滅菌を行った後、各シリンジをシリンジポンプへセットして、5mL/hの流量で精製水を8時間吐出させ、電子天秤を用いて、その重量を30秒間隔で経時的に測定したところ、
図6(実施例1)および
図7(比較例1)に示すような吐出振幅結果が得られた。図より明らかに、実施例1のほうが振幅が小さく、安定した吐出であることが確認された。