(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガスを窒素還元剤と接触させることによって、酸化窒素を窒素に変換するためにガスを処理する方法であって、請求項1から4および8から10の一項に記載の触媒系または組成物を使用することを特徴とする、方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語「比表面積」は、定期刊行物「The Journal of the American Chemical Society,
60,309(1938)」に記載されたBrunauer−Emmett−Teller法で確立されている標準ASTM D3663−78に従って、窒素の吸着によって測定するB.E.T.比表面積を意味する。
【0011】
別の記載がない限り、ある温度および時間に関して示された比表面積の値は、この温度段階および示された時間を経た時の空気中での焼成に対応する。
【0012】
明細書で言う焼成は、別の記載がない限り、空気中での焼成である。
【0013】
含有量は、別の記載がない限り、質量としておよび酸化物として表される。
【0014】
以下の記載に関して、別の記載がない限り、示された値の範囲内に限界値も含まれることも指摘される。
【0015】
本記載に関して、用語「希土類元素」は、イットリウムと周期表の原子番号57から71(両数字は含まれる。)の間の元素とによって形成される群からの元素を意味する。
【0016】
本発明の組成物は、先ず、この構成成分の性質と比率とを特徴とする。即ち、該組成物は、ジルコニウム、セリウムおよびタングステンに基づき、これらの元素は、組成物中、通常、酸化物の形態で存在する。しかし、これらの元素が、少なくとも部分的に他の形態、例えば、水酸化物またはオキシ水酸化物の形態で存在することを排除するものではない。
【0017】
さらに、これらの元素は、より正確には以下に記載される、酸化物の質量として表される特定の比率で存在する。
【0018】
即ち、セリウムは、5%から30%の間、より特定的には10%から25%の間、およびさらにより特定的には12%から22%の間の比率で存在する。
【0019】
タングステンは、2%から17%の間、より特定的には10%から15%の間の比率で存在する。
【0020】
ジルコニウムは、組成物の残りを構成する。
【0021】
また、本発明は、先に規定した組成物であるが、鉄、銅、マンガンおよび希土類金属で形成される群の金属の1種を含まない組成物に関する。
【0022】
また、本発明は、ジルコニウム、セリウムおよびタングステンによって本質的に形成される組成物に関する。これは、該組成物は、痕跡またはとりわけハフニウムのような不純物の形態で、他の元素を含んでもよいが、とりわけNH
3の吸着特性または耐老化特性に影響を与えがちな他の元素は含まないことを意味する。
【0023】
本発明の組成物の他の重要な特徴は、これらの結晶構造である。具体的には、これらの組成物は、2相結晶構造を有する。
【0024】
本発明の組成物の構造の以下に続く記載は、750℃で、10%の水を含む空気雰囲気中、16時間エージングを受けた組成物に適用される。構造は、X線回析技術(XRD)によって測定される。
【0025】
前記エージング後、本発明の組成物は、2相構造、即ち、ここでは正方晶系ジルコニア相および単斜晶系ジルコニア相を含む構造を有する。これらの2相の存在は、JCPDSシートに記載されるそれぞれのピークの存在、即ち、単斜晶相またはバデライトのシート01−088−2390による、および、例えば、正方晶相のシート01−088−2398による公知の方法により実証される。より特定的には、正方晶相が顕著であり得る。従って、前記2相は、少なくとも5の比で存在し得る。この比は、比:正方晶相ピークの強度(約30°での2−シータピーク)/単斜晶相ピークの強度(約28.2°での2−シータピーク)に相当する。この比は、より特定的には少なくとも7、さらにより特定的には少なくとも9であってもよい。
【0026】
さらに、本発明の組成物は、タングステンを含むいかなる結晶相も含まない。用語「タングステンを含む結晶相」は、タングステン酸セリウムおよび/またはタングステン酸ジルコニウムに相当する相、または酸化タングステン型WO
3・xH
2O、例えば、シートJCPDS00−025−0192に相当する式:Ce
4W
9O
33のタングステン酸塩の相を意味する。用語「含まない」は、これらの組成物から得たXRD図に、この存在、とりわけ回折ピークの形態で、2−シータが22°から28°の間の領域にこのような相の存在が現れないことを意味する。
【0027】
理論に縛られることは望まないが、タングステンは、本発明の組成物中に、多かれ少なかれ重合され安定な、タングステン酸塩型(WO
4)
nの化学種の形態で存在すると考えられ、なぜなら、エージングにもかかわらず、これらの種は、組成物のセリウム元素およびジルコニウム元素と反応しなかったからである。もしそうでなかったとすれば、これらの種と前記元素との反応生成物が、XRD分析で現れるはずであり、これらの生成物に相当するタングステン酸セリウムおよび/またはタングステン酸ジルコニウム型の相が示されることになるであろう。
【0028】
さらに、本発明の組成物は、高温においても、大きな比表面積を有する。従って、先に示した温度、時間および雰囲気条件下でのエージング後、組成物の比表面積は、少なくとも30m
2/g、より特定的には少なくとも40m
2/gである。この表面積の値は、最大約60m
2/gであってもよい。
【0029】
本発明の組成物のアンモニア吸着容量は、少なくとも2.5ml/gであり、この容量は、より特定的には少なくとも4ml/g、さらにより特定的には少なくとも5ml/gであってもよい。この容量の値は、最大約10ml/gであってもよい。吸着容量は、昇温脱離(TPD)法によって測定され、該方法は、より具体的に後述する。これは、800℃で4時間焼成された生成物で測定する。
【0030】
以下、本発明の組成物を調製する方法を記載する。
【0031】
この方法は、セリウム塩または化合物の溶液または懸濁液を、タングステンおよび水酸化ジルコニウムに基づく化合物と接触または混合し、次いで混合後に得られた生成物を焼成することを特徴とする。
【0032】
従って、この方法は、以下により具体的に記載する特定の方法に従ってあらかじめ調製された、タングステンおよび水酸化ジルコニウムに基づく化合物を使用する。
【0033】
水酸化ジルコニウムおよびタングステンに基づく化合物の調製
この方法は、水酸化ジルコニウムを調製する第一部を含む。この第一部は、以下のステップを含む。
【0034】
−(a)硫酸塩アニオンと、ジルコニウム塩、より特定的にはオキシ塩化ジルコニウムとを含む水溶液を、ZrO
2/SO
3比が1/0.40から1/0.52の間になる割合で調製するステップ、
−(b)該溶液を25℃未満の温度に冷却するステップ、
−(c)アモルファス水酸化ジルコニウムを析出させるために、アルカリ性化合物を加えるステップ、
−(d)水酸化ジルコニウムをろ別し、水またはアルカリ性化合物で洗浄し、残留する硫酸塩および、もしあれば塩酸塩を除去するステップ。
【0035】
本発明の第一実施形態によれば、タングステンおよび水酸化ジルコニウムに基づく化合物は、前記ステップ(d)後に得、水に再懸濁させたこの水酸化ジルコニウムを、タングステン塩または化合物の溶液または懸濁液と混合することによって調製してもよい。この塩は、より特定的には、アンモニウムまたはナトリウムのメタタングステン酸塩、パラタングステン酸塩またはタングステン酸塩であってもよく、ここでは、アンモニウム塩が好ましい。溶液または懸濁液は、所望する最終組成物に適切なZr/W質量比を得るのに必要な化学量論的な量で使用する。
【0036】
この混合後、タングステンおよび水酸化ジルコニウムに基づく化合物の懸濁液を得、これを6バール以下、より特定的には3バール以下の圧力で水熱処理に供する。水熱処理後、とりわけタングステン化合物としてナトリウム塩を使用する場合、固体生成物を、任意の公知の方法で、懸濁液から分離し、洗浄することができる。次いで、この洗浄した生成物を、水熱処理のために再懸濁する。
【0037】
この水熱処理は、大気圧またはより高い圧力で、とりわけ100℃を超える温度に該化合物の水性懸濁液を加熱することが本質的な構成である。水熱処理は、より特定的には、3バールの圧力で5時間行ってもよい。
【0038】
水熱処理後、固体生成物は、場合により、このようにして得た懸濁液から再び分離してもよく、この生成物を洗浄してもよい。この得られた生成物は、乾燥し固体状態で保存してもよく、または以下に記載する方法の残りの間、懸濁液の形態を保ち、保存してもよい。
【0039】
第二実施形態によれば、タングステンおよび水酸化ジルコニウムに基づく化合物は、先に記載したように、前記方法のステップ(d)後に得られる水酸化ジルコニウムから、先に記載したように、水酸化ジルコニウムの懸濁液をタングステン塩または化合物、最も特定的には、ここでは、メタタングステン酸ナトリウムと混合することによって得てもよい。しかし、この第二のモードの場合、この混合後に得られる媒体のpHを、硝酸のような酸を加えることによって6から8の間の値に調整する。次いで、固体生成物を、公知の方法により懸濁液から分離し、この生成物を洗浄してもよい。
【0040】
得られた生成物を水に再懸濁し、次いでこの懸濁液を、先に記載した条件と同じ条件下で水熱処理に供し、水熱処理後に続く生成物の処理と同じ処理に供する。
【0041】
上記に記載した方法のステップ(a)から(d)に従う水酸化ジルコニウムの調製については、WO2007/088326の全記載を参照のこと。
【0042】
次いで、水酸化ジルコニウムおよびタングステンに基づく化合物を、以下に記載する2つの変法により、本発明による組成物の調製のために使用する。
【0043】
本発明による組成物の調製
第一変法によれば、先ず、セリウム塩または化合物の溶液または懸濁液を形成する。
【0044】
硝酸塩、硫酸塩または塩化物のような無機酸塩を塩として選択してもよい。
【0045】
また、有機酸の塩、とりわけ、飽和脂肪族カルボン酸の塩またはヒドロキシカルボン酸の塩を使用することもできる。例示として、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩およびクエン酸塩を挙げることができる。
【0046】
また、セリウムを、ゾルまたはコロイド状懸濁液の形態で使用することも可能である。用語「コロイド状懸濁液」および「ゾル」は、ここでは、通常、コロイドの大きさの酸化セリウムまたはオキシ水酸化物の固体微粒子、即ち、該粒子のサイズが、通常、1nmから50nmの間、より特定的には、1nmから20nmの間である固体微粒子から形成されるいかなる系も表す。ここで示されるサイズは、光散乱技術により測定される。これらの粒子は、液相中の安定な懸濁液中に存在する。
【0047】
次いで、先に記載した方法によって得られた固体状態の、乾燥したタングステンおよび水酸化ジルコニウムに基づく化合物に、セリウム溶液または懸濁液を含浸する。該溶液または懸濁液は、所望する最終組成物に適切なZr/Ce質量比を得るのに必要な化学量論的な量で使用する。
【0048】
より特定的には、乾燥含浸が使用される。乾燥含浸は、含浸すべき固体の細孔容積と同じ容積の元素の水溶液または水性懸濁液を、含浸すべき生成物に加えることが本質的な構成である。
【0049】
含浸後、水酸化ジルコニウムに基づきならびにセリウムおよびタングステンに基づく化合物を得、これを、場合により、乾燥してもよい。次いで、この化合物を焼成する。焼成は、例えば、300℃から800℃の間、より特定的には500℃から800℃の間の温度で行う。この焼成は、通常、空気中で行われる。
【0050】
第二変法によれば、使用する出発物質は、先に記載した方法で得た、水中懸濁液の形態のタングステンおよび水酸化ジルコニウムに基づく化合物である。次いで、この懸濁液を、先に記載したものと同じタイプのセリウム化合物の溶液または懸濁液と混合する。
【0051】
次いで、このようにして得た混合物を、例えば、噴霧によって乾燥する。用語「噴霧によって乾燥」は、熱雰囲気下で混合物を噴霧することによって乾燥すること(噴霧乾燥)を意味する。噴霧は、これ自体既知の任意の噴霧器、例えば、散水用スプリンクラータイプのスプレーノズルなどを使用して行ってもよい。また、タービンタイプの噴霧器を使用してもよい。本方法で使用してもよい種々のスプレー技術に関しては、とりわけ、修士課程の基本的な刊行物、標題「Spray−Drying」(second edition,1976,George Godwin−Londonにより刊行)を参照のこと。
【0052】
次いで、とりわけ噴霧によって乾燥した生成物を、第一方法で記載した条件と同じ条件下で焼成する。
【0053】
先に記載した本発明の組成物、または先に記載した調製方法により得た本発明の組成物は、粉末形態であるが、場合により、種々のサイズの顆粒状、ビーズ、円筒またはハニカム状の形態となるように、形成してもよい。
【0054】
これらの組成物は、触媒形成の分野、即ち、とりわけ熱不活性材料において一般的に使用される任意の材料とともに使用してもよい。この材料は、アルミナ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、ケイ酸塩、結晶性リン酸シリコアルミニウムおよび結晶性リン酸アルミニウムから選択してもよい。
【0055】
また、組成物は、触媒特性を持ち、これらの組成物に基づく被膜(ウォシュコート)と、先に記載した種類の材料とを含む触媒系で使用されてもよい。ここで、前記被膜は、例えばFerCralloyのような金属のモノリス型の基板、または例えば、コーディライト、シリコンカーバイド、チタン酸アルミナまたはムライトのようなセラミックの基板上に析出するものである。
【0056】
この被膜は、組成物を前記材料と、前記基板上に析出することができる懸濁液を形成するように混合することによって得られる。
【0057】
本発明の組成物を使用してもよい触媒系は、ゼオライトを含んでもよい。ゼオライトは、天然でも合成でもよく、アルミノシリケート型、アルミノホスフェート型またはシリコアルミノ−ホスフェート型であってもよい。
【0058】
アルミノシリケート型のゼオライトの場合、このゼオライトのSi/Al原子比は、少なくとも10、より特定的には少なくとも20であってもよい。
【0059】
本発明のさらに特定的な一実施形態によれば、ゼオライトは、鉄、銅およびセリウムからなる群から選択される少なくとも1種の他の元素を含む。
【0060】
用語「少なくとも1種の他の元素を含むゼオライト」は、先に記載した種類の1種以上の金属がイオン交換、含浸または同形置換により加えられた構造を持つゼオライトを意味する。
【0061】
この実施形態では、金属含有量は、約1%から約5%の間でもよく、ここで、含有量は、ゼオライトに対する金属元素の質量として表される。
【0062】
本発明の触媒系の構成に含まれ得るアルミノシリケート型のゼオライトとして、より特定的には、ベータゼオライト、ガンマゼオライト、ZSM5およびZSM34を含む群から選択されるものが挙げられる。アルミノホスフェート型のゼオライトについては、タイプSAPO−17、SAPO−18、SAPO−34、SAPO−35、SAPO−39、SAPO−43およびSAPO−56が挙げられる。
【0063】
前記ゼオライトを有する触媒系は、先に記載したタイプの被膜、とりわけ、本発明による組成物とゼオライトとの単なる物理的な混合により得られた化合物を含む被膜を含んでもよい。
【0064】
さらに、本発明は、ガスを窒素還元剤に接触させることによって、酸化窒素を窒素に変換するために前記ガスを処理する方法に関する。この方法は、本発明によるおよび先に記載した、セリウム、ジルコニウムおよびタングステンに基づく組成物または触媒系を、触媒として使用することを特徴とする。
【0065】
これは、当業者に周知のSCRタイプの方法である。
【0066】
窒素還元剤は、アンモニア、ヒドラジンまたは任意の適切なアンモニア前駆体、例えば、炭酸アンモニウム、尿素、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ギ酸アンモニウムまたはアンモニアを含む有機金属化合物であってもよい。より特定的には、アンモニアまたは尿素が選択される。
【0067】
該方法は、内燃機関(移動型または固定)、とりわけ自動車エンジンから発生するガス、またはガスタービン、石炭または燃料で操業している発電所、および他の任意の産業施設から発生するガスを処理するために実施されてもよい。
【0068】
特定の一実施形態によれば、該方法は、希薄燃焼内燃機関またはディーセルエンジンの排ガスを処理するために使用される。
【0069】
本発明の組成物または触媒系を使用することによって、ガス処理方法は、比較的低温で、効率がよくなり始める可能性がある。例えば、250℃のガス温度で、この温度範囲でのNOxの窒素への変換が、これによって少なくとも30%のレベルで観察され得る。
【0070】
さらに、本発明の触媒組成物および系は、ガス中に含まれる一酸化炭素および炭化水素の接触酸化用の触媒としてガスを処理するために使用してもよい。本発明との関連で処理されてもよいガスとして、例えば、ガスタービン、火力発電所のボイラーまたは自動車の内燃機関から発生するガスがある。さらに、前記化合物と酸素との酸化、即ち、反応:
CO+1/2O
2→CO
2 (1)
HC(炭化水素)+O
2→CO
2+H
2O (2)
の場合がある。
【0071】
該方法は通常酸素が豊富な媒体で適用されるので、ここでの酸素は、ガスからの過剰の酸素であるが、それでもなお一時的に酸素が少なくなることがある。具体的には、この方法で処理されるガスは、可燃物または燃料の化学量論的燃焼に必要な量より過剰量の酸素を有し、より正確には、これらのガスは、化学量論的な値λ=1より過剰量の酸素を有する。従って、これらは、λの値が1を超えるガスである。この値λは、とりわけ内燃機関の分野ではこれ自体既知の方法における空気/燃料比と相関する。このようなガスとして、酸素含有量(容量として表示)が例えば、少なくとも2%である希薄燃焼ガソリンエンジンのガス、また、いくらか高い酸素含有量を有するガス、例えば、ディーゼル型エンジンのガス、即ち、少なくとも5%、より特定的には少なくとも10%、この含有量は例えば5%から20%の間も可能であるガスであってもよい。
【0072】
先に記載した酸化反応(1)および(2)の他に、該方法は、ガスの処理中に、可溶性有機画分、即ち、燃料および潤滑油から発生し、エンジンによって生成する煤の粒子に吸着している液体炭化水素の酸化、および例えばアルデヒドのような含酸素化合物の二酸化炭素および水への酸化を使用してもよいことが指摘されるであろう。
【0073】
先に記載した用途の他に、本発明の触媒系および組成物は、尿素の加水分解用の触媒として使用してもよい。
【0074】
さらに、本発明の触媒組成物および系は、炭化水素によるNOxの選択的還元用のNOxトラップタイプまたはHC DeNOxタイプの触媒系と組合わせて、およびNH
3スリップ触媒としても使用してもよい。
【0075】
最後に、本発明の触媒系および組成物は、触媒粒子フィルタ上の触媒として使用してもよい。
【実施例】
【0076】
実施例を以下に挙げる。
【0077】
これらの実施例で、生成物の吸着容量は、以下に記載するTPD法によって測定する。
【0078】
昇温脱離(TPD)法
TPD中の酸性部位を特徴付けるために使用されるプローブ分子は、アンモニアである。
【0079】
−試料の作成:
試料をヘリウム気流下20℃/分の温度上昇速度で500℃とし、水蒸気が除去されるようにこの温度で30分維持し、こうして細孔のブロッキングを回避する。
【0080】
最後に、試料をヘリウム気流下10℃/分の速度で100℃に冷却する。
【0081】
−吸着:
次いで、試料を100℃で30分アンモニアの気流に供する。該試料を最低で1時間ヘリウムの気流に供する。
【0082】
−脱離:
10℃/分の温度上昇速度で700℃まで上げることによりTPDを行う。
【0083】
温度が上昇する間、脱離種、即ちアンモニアの濃度を記録する。
【0084】
材料の特徴付け
組成物の特性を、以下の条件下で評価する。
【0085】
組成物をエージングした。エージングは、組成物を含む反応器内の10容量%のH
2Oを含む空気の合成ガス混合物の連続循環で本質的に構成される。反応器の温度は、定常段階の16時間、750℃に維持される。
【0086】
次いで、エージングされた組成物を、触媒テストで評価する。このテストでは、適用した代表的な合成混合物(30L/h)(表1)を、組成物(90mg)上を通過させる。
【0087】
【表1】
NOx変換を組成物の温度の関数としてモニターする。
【0088】
[比較例1]
この実施例は、事前に調製されたセリウムおよび水酸化ジルコニウムに基づく化合物に、メタタングステン酸塩溶液を含浸させる方法によって調製した組成物を記載する。
【0089】
153gの硫酸ジルコニウム溶液(ZrO
2として17.3重量%)および40gの硝酸セリウム溶液(CeO
2として20重量%)を、4リットルの水と混合する。次いで、アルカリ性溶液(6Nのアンモニア水溶液)をこの混合物に加え、pHの値を9.5に調整する。形成した析出物をろ過により回収し、次いで11.2gのメタタングステン酸アンモニウム溶液(WO
3として50重量%)を含浸する。次いで、含浸生成物を、800℃の温度で焼成する(4時間の定常段階、4℃/分の温度上昇)。
【0090】
得られた生成物は、以下の質量組成物に相当する。
【0091】
−酸化セリウム:20%
−酸化ジルコニウム:66%
−酸化タングステン:14%
先に行った焼成後、比表面積は24m
2/gである。
【0092】
X線図には、生成物は、主に正方晶セリウム/ジルコニウム混合酸化物相と、酸化セリウム立方相との形態であることが示されている。単斜晶相は存在しない。
【0093】
[比較例2]
この実施例は、事前に調製されたセリウムおよび酸化ジルコニウムに基づく化合物に、メタタングステン酸塩溶液を含浸させる方法によって調製した組成物を記載する。
【0094】
出発物質は、酸化セリウムの質量含有量が15%、および酸化ジルコニウムの質量含有量が85%、および比表面積が100m
2/gのセリウムジルコニウム酸化物である。これは、正方晶系ジルコニアに相当する純粋な結晶相の形態である。さらに、メタタングステン酸アンモニウム水溶液を調製する。
【0095】
10gの前記混合酸化物に、メタタングステン酸アンモニウム溶液を含浸(乾燥含浸)する。次いで、生成物を120℃で1時間オーブン乾燥する。次いで、生成物を800℃で焼成する(4時間の定常段階、4℃/分の温度上昇)。
【0096】
得られた生成物は、以下の質量組成の酸化物に相当する。
【0097】
−酸化セリウム:13%
−酸化ジルコニウム:72%
−酸化タングステン:15%
先に行った焼成後、比表面積は44m
2/gである。
【0098】
[実施例3]
この実施例は、本発明による酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化タングステンに基づく組成物であって、該酸化物の質量比率が、それぞれ、74%、15%および11%である組成物に関する。
【0099】
水酸化ジルコニウムを、WO2007/088326の実施例3に従って調製する。水熱処理前、懸濁液を、析出させ、洗浄した水酸化ジルコニウム(ZrO
2として100g含有する。)から形成し、これに220gのメタタングステン酸アンモニウム水溶液(WO
3として8%含有する。)を加える。次いで水熱処理を3バールで5時間行う。水熱処理後、得られた懸濁液を、脱イオン水で希釈し、総容量を1Lとする。103gの硝酸セリウム(III)溶液(CeO
2として20.3g含有する。)を、これに徐々に加える。得られた媒体を、実験室用アトマイザーを使用し、ガス入り口温度が100℃で噴霧によって乾燥する。次いで、乾燥した水酸化物を、800℃で、空気中で焼成する(2時間の定常段階、4℃/分の温度上昇)。
【0100】
先に行った焼成後、比表面積は62m
2/gである。
【0101】
X線図には、生成物は、正方晶セリウム/ジルコニウム混合酸化物相と単斜晶相との形態であることが示されている。正方晶/単斜比は9である。タングステンを含む結晶相は観察されない。
【0102】
[実施例4]
この実施例は、本発明による酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化タングステンに基づく組成物であって、該酸化物の質量比率が、それぞれ、68%、20%および12%である組成物に関する。
【0103】
実施例3の方法を行うが、220gのメタタングステン酸ナトリウム水溶液(8%のWO
3を含有する。)を使用する。次いで、希硝酸(30%のHNO
3)で、媒体のpHの値を7に調整する。得られた固体生成物を水相から分離し、水洗し、次いで再懸濁し、実施例3と同じ条件下で水熱処理に供する。水熱処理後、このようにして得た168gの水酸化ジルコニウムおよびタングステンに基づく化合物を乾燥する。この化合物に、128gの硝酸セリウム(III)溶液(CeO
2として29.4g含有)を含浸させる。含浸ステップ後、得られた生成物を、空気中800℃で焼成する(2時間の定常段階、4℃/分の温度上昇)。
【0104】
先に行った焼成後、比表面積は60m
2/gである。
【0105】
実施例1から4の各組成物に関し、以下の表2に示す。
【0106】
−10%の水を含む空気の雰囲気下での750℃、16時間のエージング後の比表面積
−同じ条件下でのエージング後の結晶構造
−組成物の800℃、空気中での焼成後のアンモニア吸着容量
−先に記載した条件化での評価中に測定したNOxの変換率
【0107】
【表2】
【0108】
本発明の組成物は、NOxの変換に関し、250℃のような低温であっても、比較組成物に対して、有効性が改良されていることが分かる。さらに、NH
3吸着容量が増加しているため、例えばエンジンの作動中、アンモニアの漏出のリスクを減らすという利点がある。その上、この改善された吸着容量により、アンモニアの注入がない操業時間であっても、触媒系を効率よくすることができる。
【0109】
添付の
図1は、10%の水を含む空気雰囲気下750℃で16時間のエージング後の、比較例2の生成物のX線図である。この図は、生成物が、正方晶セリウム/ジルコニウム混合酸化物相(約30°での2−シータピーク)と単斜晶相(約28.2°での2−シータピーク)との形態であることを示している。2つの前記ピークの高さ(これらの高さは、該図上では太線で表す。)の比を求めることにより得られる正方晶/単斜比は、9である。2−シータ22°から2−シータ29°の領域の拡大図を示す、図中の挿入箇所は、2−シータ23.2°、24.7°、25.6°および26.9°での式:Ce
4W
9O
33のタングステン酸塩を含む結晶相を明らかにしている。
【0110】
図2は、10%の水を含む空気雰囲気下750℃で16時間のエージング後の、実施例4の生成物のX線図である。この図は、
図1と同じピークによって、生成物は、正方晶セリウム/ジルコニウム混合酸化物相と単斜晶相との形態であることを示す。
図1と同じように測定した正方晶/単斜比は、9である。
図1と同じ拡大図に相当する挿入箇所では、ここでタングステンを含む結晶相が観察されないことが示されている。