(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等の携帯用電子機器の電源にエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池が用いられている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の電極材は、通常、正極、セパレータおよび負極で構成される。正極材には電気伝導性に優れ、二次電池の電気効率に影響せず、発熱が少ないという特徴を有するアルミニウム合金箔が支持体として使用され、一般的にJIS1085やJIS3003アルミニウム合金が用いられている。アルミニウム合金箔表面にはリチウム含有金属酸化物、たとえばLiCoO
2を主成分とする活物質を含む樹脂を活物質層材として塗布する。製造方法としては、20μm程度のアルミニウム合金箔に、100μm程度の厚さの活物質(活物質層材の意味。以下、同じ)を塗布し、活物質中の溶媒を除去する乾燥を実施する。さらに、活物質の密度を増大させるために、プレス機にて圧縮加工を施す。(以下、この工程をプレス加工と呼ぶ。)このようにして製造された正極はセパレータ、負極と積層された後、捲回し、ケースに収納するための成形を行った後、ケースに収納される。
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池の正極材に使用されるアルミニウム合金箔には、高い導電率が要求されている。導電率とは、物質内における電気の通り易さを表す物性値であり、導電率が高いほど、電気が通り易いことを示している。自動車や電動工具等に使用されるリチウムイオン二次電池は、民生用として使用される携帯電話やノートパソコン等のリチウムイオン二次電池より大きな出力特性が必要とされている。導電率が低い場合、大きな電流が流れた時には、電池の内部抵抗が増加するため、電池の出力電圧が低下してしまう問題がある。
【0005】
高い導電率が必要とされる二次電池用リチウムイオン合金箔には、Al純度が99%以上のアルミニウム合金箔が使用されている。しかし、Al純度が99%以上のアルミニウム合金箔は、含有している元素の量が少ないために、強度の向上が難しい。つまり、加熱処理時において、転位の移動を抑制できるような固溶元素や微細析出物がないために、強度低下が大きい。
【0006】
つまり、電極集電体用材料、特にリチウムイオン二次電池用電極材には、高い導電率を維持しつつ、最終冷間圧延後強度及び乾燥工程における加熱後の強度が高いアルミニウム合金箔が求められている。
【0007】
特許文献1には、電池集電体用で、引張強度が98MPa以上である、アルミニウム合金箔が提案されている。しかし、リチウムイオン二次電池正極材の製造工程における、乾燥工程後の強度についての開示はない。
特許文献2には、リチウムイオン二次電池電極集電体用で、引張強度が160MPa以上である、アルミニウム合金箔が提案されている。しかし、乾燥工程を想定した加熱処理後の強度は低く、プレス加工時の中伸びによる、捲回時の捲きしわやスリット時の破断を防止するのに十分ではない。
特許文献3には、高強度化することでプレス加工時において塑性変形をせず、活物質との剥離を防止する方法が示されている。しかし、主要元素としてMn、Cu、Mgを添加した合金であるため、高い導電率を満足することはできない。
【0008】
一方、リチウムイオン二次電池の正極材に使用されるアルミニウム合金箔には、活物質塗布時の切れの発生や、捲回時に屈曲部で破断するなどの問題があるため、高い強度が要求されている。特に、活物質塗布後の乾燥工程では、100℃〜180℃程度の加熱処理を実施するため、乾燥工程後の強度が低いと、プレス加工時に中伸びが発生し易くなるため、捲回時に捲きしわが発生し、活物質とアルミニウム合金箔との密着性の低下や、スリット時の破断が起こり易くなる。活物質とアルミニウム合金箔表面の密着性が低下すると、充放電の繰り返しの使用中に剥離が進行し、電池の容量が低下するという問題がある。
【0009】
そこで、例えば、正極材と活物質層の密着性を向上させる方法として、集電体として導電性樹脂で正極材を被覆するものが従来提案されており、以下の特許文献にはアクリル系樹脂で被覆する技術が開示されている。特許文献4には密着性に優れた正極の製造方法として、金属箔に、ポリアクリル酸又はアクリル酸とアクリル酸エステルとの共重合体を主結着剤とし、炭素粉を導電フィラーとして含む導電性媒体を塗布し、この導電性樹脂層上に正極合剤層を形成し、乾燥一体化する正極の製造方法が開示されている。特許文献5には負極集電体の上に負極材層が形成されており、この負極材層がリチウムイオンの吸蔵、放出が可能な炭素粉末とPVDF(ポリフッ化ビニリデン)からなる結着剤とを含有しているリチウム二次電池用負極板において、前記負極集電体と前記負極材層との間に導電材が混入されたアクリル系共重合体からなる結着層が形成されているリチウム二次電池用負極板が開示されている。特許文献6には結着性に優れ、サイクル特性に優れる電極構造が得られるとして、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマーと導電性フィラーとからなる樹脂層でコーティングした金属箔からなる集電体が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1を用いて、本発明の一実施形態の集電体について説明する。
図1に示すように、本発明の集電体1は、導電性基材3の片面又は両面に導電性を有する樹脂層(集電体用樹脂層)5を備える。
また、
図2に示すように、集電体1の樹脂層5上に活物質層又は電極材層9を形成することによって、非水電解質電池用、電気二重層キャパシタ用、又はリチウムイオンキャパシタ用として好適な電極構造体7を形成することができる。
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0022】
<1.導電性基材>
本発明の導電性基材は、Fe:0.03〜1.0mass%(以下mass%を単に%と記す。)、Si:0.01〜0.3%、Cu:0.0001〜0.2%を含有し、残部Alと不可避的不純物から成り、最終冷間圧延後のアルミニウム合金箔の引張強さが180MPa以上、0.2%耐力が160MPa以上、導電率が58%IACS以上で、かつ前記最終冷間圧延後のアルミニウム合金箔に対して120℃で24時間、140℃で3時間、160℃で15分間の何れの熱処理を行った場合でも熱処理後の引張強さが170MPa以上、0.2%耐力が150MPa以上であるアルミニウム合金箔である。
以下、詳細に説明する。
【0023】
<アルミニウム合金箔の組成>
本発明のアルミニウム合金箔の組成は、Fe:0.03〜1.0%、Si:0.01〜0.3%、Cu:0.0001〜0.2%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる。
【0024】
Feは、添加することで強度を向上させる元素であり、0.03〜1.0%含有する。Fe添加量が0.03%未満では、強度向上に寄与しない。一方、Fe添加量が1.0%を超えると、Al−Fe化合物あるいはAl−Fe−Si化合物がアルミニウム合金箔内部及び表面に多く存在するようになり、ピンホールを増加させるので好ましくない。
【0025】
Siは、添加することで強度を向上させる元素であり、0.01〜0.3%含有する。Si添加量が0.01%未満では、強度向上に殆ど寄与しない。また、通常使用するAl地金には不純物としてSiが含まれており、0.01%未満に規制するためには高純度の地金を使用することになるため、経済的に実現が困難である。一方、Si添加量が0.3%を超えると、Al−Fe−Si化合物がアルミニウム合金箔内部及び表面に多く存在するようになり、ピンホールを増加させるので、好ましくない。
【0026】
Cuは、添加することで強度を向上させる元素であり、0.0001〜0.2%含有する。Cu添加量が0.0001%未満では、強度向上に殆ど寄与しない。また、高純度の地金を使用することになり、経済的に困難である。一方、Cu添加量が0.2%を超えると加工硬化性が高くなるために、箔圧延時での切れが発生し易くなる。
【0027】
その他、本材料にはCr、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、B、V、Zr等の不可避的不純物が含まれる。これら不可避的不純物は、個々に0.02%以下、総量としては0.15%以下であることが好ましい。Si、Fe、Cuが上限を超えると、導電率を十分には付与できない場合がある。
【0028】
<素板強度>
Fe、Si、Cuのみが主に添加されているアルミニウム合金では、鋳塊の均質化処理温度を高温化し、微量に添加された各元素を多く固溶させることで、転位の移動が抑制されて、より高強度を確保することができる。さらに、固溶量が増加することで、加工硬化性も上がるために、冷間圧延と箔圧延時による強度増加量も大きくなり、アルミニウム合金箔の強度を増加させることができる。
【0029】
最終冷間圧延後の素板引張強さは180MPa以上、0.2%耐力は160MPa以上とする。引張強さが180MPa未満及び、0.2%耐力が160MPa未満では強度が不足し、活物質塗布時に加わる張力によって、切れや亀裂が発生し易くなる。また、中伸びなどの不具合も引き起こし、生産性に悪影響を及ぼすため、好ましくない。
【0030】
<導電率>
導電率は58%IACS以上とする。導電率は溶質元素の固溶状態を示す。本発明の電極集電体をリチウムイオン二次電池等に用いる場合、導電率が58%IACS未満では樹脂層による導電率付与性が足りず放電レートが5Cを超えるような高い電流値で使用する際に、出力特性が低下するため好ましくない。なお、1Cとは公称容量値の容量を有するセルを定電流放電して、1時間で放電終了となる電流値のことである。
【0031】
<熱処理後の強度>
正極板の製造工程には、活物質中の溶媒を除去する目的で活物質塗布後に乾燥工程がある。この乾燥工程では100〜180℃程度の温度の熱処理が行われる。この熱処理により、アルミニウム合金箔は軟化して機械的特性が変化する場合があるため、熱処理後のアルミニウム合金箔の機械的特性が重要となる。100〜180℃の熱処理時には、外部からの熱エネルギーにより、転位が活性化されて移動し易くなり、回復過程で強度が低下する。熱処理時の回復過程での強度低下を防ぐには、アルミニウム合金中の固溶元素や析出物によって、転位の移動を抑制することが有効である。特に、Fe、Si、Cuのみが主に添加されているアルミニウム合金では、Fe固溶量による効果が大きい。つまり、鋳塊の均質化処理温度を高温化させることで、微量に添加されたFeを多く固溶させ、熱間圧延時にはこれらの固溶したFeをできるだけ析出させずに、高い固溶量を維持することで、熱処理後の強度低下を抑制する。
【0032】
本発明では、最終冷間圧延後のアルミニウム合金箔に対して120℃で24時間、140℃で3時間、160℃で15分間の何れの熱処理を行った場合でも熱処理後の引張強さが170MPa以上、0.2%耐力が150MPa以上とするように均質化処理条件を制御する。上記熱処理後の引張強さが170MPa未満、0.2%耐力が150MPa未満では、乾燥工程後のプレス加工時に中伸びが発生し易くなるため、捲回時に捲きしわが発生し、活物質の剥離やスリット時の破断が起こり易くなるため、好ましくない。
【0033】
<アルミニウム合金箔の製造方法>
本発明では上記合金組成のアルミニウム合金鋳塊を以下の工程で製造する。
前記組成を有するアルミニウム合金は、常法により溶解鋳造後、鋳塊を得ることができ、半連続鋳造法や連続鋳造法により製造される。鋳造したアルミニウム合金鋳塊は、550〜620℃で1〜20時間の均質化処理を行う。
【0034】
均質化処理温度が550℃未満あるいは1時間未満の保持時間では、Si、Fe等の元素が十分に固溶せず、固溶量が不足し、強度及び加熱後の強度が低下するので好ましくない。温度が620℃を超えると局部的に鋳塊が溶融したり鋳造時に混入した極僅かの水素ガスが表面に出て材料表面に膨れが生じ易くなったりするため好ましくない。また、均質化処理時間が20時間を超えると生産性やコストの観点から好ましくない。
【0035】
上記均質化処理を行った後、熱間圧延、冷間圧延及び箔圧延が実施されて、箔厚6〜30μmのアルミニウム合金箔を得る。熱間圧延は、均質化処理終了後に500℃以上で開始する。熱間圧延の開始温度が500℃未満では、Si、Fe等の元素の析出量が多くなり、強度を向上させるための固溶量確保が困難となる。特に固溶したFe量は、高強度を維持するために大きな影響を与える。Feは、350〜500℃の温度域で、Al
3Fe、Al−Fe−Si系の金属間化合物として析出し易いために、この温度域の所要時間をできるだけ短くすることが必要である。特に、熱間圧延時における、350〜500℃の温度域の所要時間は、20分以内が好ましい。
【0036】
熱間圧延の終了温度は、255〜300℃である。熱間圧延時の終了温度は、ライン速度を変化させて、加工発熱や冷却条件を調整することによって、決定することができる。なお、熱間圧延されたアルミニウム板は、熱間圧延機の出側で巻き取られてコイル条となり冷却される。
熱間圧延の終了温度を255℃未満とするには、加工発熱の発生を抑制するために、ライン速度を大きく低下させることになり、生産性が低下してしまう。熱間圧延の終了温度が300℃を超えると、コイル条として冷却中に、アルミニウム板が再結晶するために、蓄積されたひずみが減少し強度が低下してしまう。より好ましい温度域は、255〜285℃である。
【0037】
熱間圧延終了後の冷間圧延時には、冷間圧延の前あるいは途中において、中間焼鈍は実施しないことが好ましい。中間焼鈍を実施すると、中間焼鈍前の熱間圧延及び冷間圧延によって蓄積された歪みが開放される。さらに、均質化処理及び熱間圧延時に固溶させたFeが析出し、Feの固溶量が低下するために、最終冷間圧延後のアルミニウム合金箔の強度及び120〜160℃で15分〜24時間の熱処理後の強度が低下する。
【0038】
最終冷間圧延後のアルミニウム合金箔の厚みは6〜30μmとする。厚みが6μm未満の場合、箔圧延中にピンホールが発生し易くなるため好ましくない。30μmを超えると、同一体積に占める電極集電体の体積及び重量が増加し、活物質の体積及び重量が減少する。リチウムイオン二次電池の場合、それは電池容量の低下をまねくので好ましくない。
【0039】
<2.樹脂層>
本発明の樹脂層は、アクリル系樹脂、硝化綿系樹脂、又はキトサン系樹脂からなる樹脂と、導電材とを含む。
<樹脂層の形成方法>
本発明では導電性基材の上に導電材を添加した樹脂層を形成する。形成方法は特に限定されないが、樹脂の溶液や分散液を導電性基材上に塗工することが好ましい。塗工方法としてはロールコーター、グラビアコーター、スリットダイコーター等が使用可能である。本発明に用いる樹脂は、アクリル系樹脂、硝化綿系樹脂、又はキトサン系樹脂でなければならない。種々の樹脂に導電材を添加して樹脂層の体積固有抵抗を調査した結果、水接触角を規定したこれらの樹脂を用いると十分に低い抵抗が得られるという本発明者の知見に基づくものである。なお、この抵抗の違いは、同じ導電材を添加しても樹脂によって樹脂層中での分布状態が異なり、後述する水接触角の規定と相まって抵抗に差が出るためと推定される。
【0040】
以下の説明において、数平均分子量又は重量平均分子量は、GPC(ゲル排除クロマトグラフ)によって測定したものを意味する。
<アクリル系樹脂>
本発明で用いるアクリル系樹脂は、アクリル酸若しくはメタクリル酸、又はこれらの誘導体を主成分とするモノマから形成された樹脂である。アクリル系樹脂のモノマ中のアクリル成分の割合は、例えば50質量%以上であり、好ましくは、80質量%以上である。上限は、特に規定されず、アクリル系樹脂のモノマが実質的にアクリル成分のみで構成されてもよい。また、アクリル系樹脂のモノマは、アクリル成分一種を単独で又は二種以上含んでいてもよい。
アクリル系樹脂の中でもメタクリル酸又はその誘導体と極性基含有アクリル系化合物の中から少なくともひとつをモノマとして含むアクリル共重合体が好ましい。これらのモノマを含むアクリル共重合体を用いることにより、ハイレート特性がさらに向上するからである。メタクリル酸又はその誘導体としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピルなどが挙げられる。極性基含有アクリル系化合物としてはアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどがある。さらに極性基含有アクリル系化合物の中でもアミド基を有するアクリル化合物が好ましい。アミド基を有するアクリル化合物としてアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどがある。
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、例えば、3万〜100万であり、具体的には例えば3万,4万,5万,6万,7万,8万,9万,10万,15万,20万,30万,40万,50万,60万,70万,80万,90万,100万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。分子量が小さすぎると、樹脂層の柔軟性が低く、小さい曲率半径で集電体を捲回すると樹脂層にクラックが発生して電池等の容量が低下する場合があり、分子量が大きすぎると、密着性が低くなる傾向があるからである。
【0041】
<硝化綿系樹脂>
本発明において、硝化綿系樹脂は、樹脂成分として硝化綿を含む樹脂であり、硝化綿のみからなるものであってもよく、硝化綿と別の樹脂とを含有するものであってもよい。硝化綿は多糖類であるセルロースの1種であるが、ニトロ基を有する点に特徴がある。硝化綿はニトロ基を有するセルロースであるが、CMC等の他のセルロースと比較して、電極に使用する用途としては知られておらず、従来、樹脂フィルムや塗料の原料として用いられている。
【0042】
本発明者らは、この硝化綿に導電材を分散して硝化綿系樹脂組成物を得て、導電性基材上に硝化綿系樹脂と導電材を含有する樹脂層を形成することにより、非水電解質電池のハイレート特性を飛躍的に向上させることができることを知見した。本発明に用いる硝化綿の窒素濃度は10〜13%、特に10.5〜12.5%が好ましい。窒素濃度が低すぎると、導電材の種類によっては十分分散できない場合があり、窒素濃度が高すぎると、硝化綿が化学的に不安定になり、電池に用いるには危険だからである。窒素濃度はニトロ基の数に依存するため、窒素濃度の調整はニトロ基数を調整することによって行うことができる。また、上記硝化綿の粘度は、JIS K−6703に基づく測定値が、通常1〜6.5秒、特に1.0〜6秒、酸分は0.006%以下、特に0.005%以下であることが推奨される。これらの範囲を逸脱すると、導電材の分散性、電池特性が低下する場合がある。
【0043】
本発明の硝化綿系樹脂は、樹脂成分全体を100質量%とした場合、硝化綿を100質量%使用できるが、他の樹脂成分と併用して使用することもでき、併用する場合には少なくとも硝化綿を全樹脂成分に対して通常40質量%以上、好ましくは50質量%以上、90質量%以下、特に80質量%以下含むことが好ましい。硝化綿の割合は、具体的には例えば、40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90質量%であり、ここで例示した何れか2つの数値の範囲内であってもよい。種々の樹脂に導電材を添加して製造した導電性樹脂層の内部抵抗を調査した結果、硝化綿を50質量%以上含むと樹脂層の抵抗が飛躍的に低減化でき、十分なハイレート特性が得られる上、密着性に優れ、長寿命化が計れることがわかった。一方、硝化綿の配合量が少なすぎると導電材の分散に対する硝化綿の配合による改善効果が得られない場合があり、40質量%以上の硝化綿を添加することにより、樹脂層の抵抗を十分低くできるためと推定される。
【0044】
本発明の硝化綿系樹脂は、上述した硝化綿と併用して種々の樹脂を添加することが可能である。本発明においては、電池性能(キャパシタ性能を含む。以下同じ)を調査した結果、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、エポキシ系樹脂を併用添加することが好適であり、樹脂成分として硝化綿を100質量%を使用した場合と同様かそれ以上に電池性能を向上させることができる。以下にそれぞれの樹脂成分について説明する。
【0045】
上記メラミン系樹脂は硝化綿と硬化反応を起こすため、樹脂の硬化性が向上し、導電性基材との密着性も向上することにより、電池性能が向上するものと推定される。添加量は、樹脂成分としての硝化綿を100質量%としたときの割合が5〜200質量%、より好ましくは10〜150質量%である。5質量%未満では添加する効果が低く、200質量%を超えると硬化が進みすぎて樹脂層が硬くなりすぎ、電池の製造時に剥離しやすくなり、放電レート特性が低下する場合がある。メラミン系樹脂としては、例えば、ブチル化メラミン、イソブチル化メラミン、メチル化メラミンなどを好適に用いることができる。メラミン系樹脂の数平均分子量は、例えば、例えば、500〜5万であり、具体的には例えば500,1000,2000,2500,3000,4000,5000,1万,2万,5万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0046】
上記アクリル系樹脂は導電性基材、特にアルミニウム、銅との密着性に優れることから、添加することによりさらに硝化綿系樹脂の導電性基材との密着性が向上させることができる。添加量は、硝化綿を100質量%としたときの割合が5〜200質量%、特に10〜150質量%が好ましい。5質量%未満では添加する効果が低く、200質量%を超えると導電材の分散に悪影響を及ぼして放電レート特性が低下する場合がある。アクリル系樹脂としてはアクリル酸あるいはメタクリル酸およびそれらの誘導体を主成分とする樹脂、また、これらのモノマを含むアクリル共重合体を好適に用いることができる。具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソプロピルなどやその共重合体である。また、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの極性基含有アクリル系化合物やその共重合体を好適に用いることもできる。アクリル系樹脂の重量平均分子量は、例えば、3万〜100万であり、具体的には例えば3万,4万,5万,6万,7万,8万,9万,10万,15万,20万,30万,40万,50万,60万,70万,80万,90万,100万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0047】
上記ポリアセタール系樹脂は可撓性、硝化綿との相溶性に優れていることから、樹脂層に適度な柔軟性を与え、活物質層との密着性が向上する。添加量は、硝化綿を100質量%としたときの割合が5〜200質量%、特に20〜150質量%が好ましい。5質量%未満では添加する効果が低く、200質量%を超えると導電材の分散に悪影響を及ぼして放電レート特性が低下する場合がある。ポリアセタール系樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリアセトアセタール、ポリビニルアセトアセタールなどが好適に使用可能である。ポリアセタール系樹脂の重量平均分子量は、例えば、1万〜50万であり、具体的には例えば1万,2万,3万,4万,5万,6万,7万,8万,9万,10万,15万,20万,50万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0048】
上記エポキシ系樹脂は導電性基材との密着性に優れることから、添加することによりさらに導電性基材との密着性が向上する。添加量は、硝化綿を100質量%としたときの割合が5〜200質量%、特に10〜150質量%が好ましい。5質量%未満では添加する効果が低く、200質量%を超えると導電材の分散に悪影響を及ぼして放電レート特性が低下する場合がある。エポキシ系樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型といったグリシジルエーテル型樹脂が好ましい。エポキシ系樹脂の重量平均分子量は、例えば、300〜5万であり、具体的には例えば300,500,1000,2000,3000,4000,5000,1万,2万,5万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0049】
本発明において、硝化綿系樹脂は、上述したように硝化綿を樹脂成分として100%含むものであってもよいが、上述したアクリル系樹脂とポリアセタール系樹脂のうちの少なくとも一種と、メラミン系樹脂と、硝化綿とを含むことがさらに好ましい。このような組み合わせの場合に、放電レート特性、電池長寿命化特性が特に良好になるからである。
また、本発明において、特にアクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、メラミン系樹脂、及び硝化綿の合計を100質量%としたとき、メラミン系樹脂が5〜55質量%であり、硝化綿が40〜90質量%であることがさらに好ましい。100質量%からメラミン系樹脂と硝化綿の配合量を引いた残りが、アクリル系樹脂又はポリアセタール系樹脂の配合量である。この場合に、放電レート特性、電池長寿命化特性がさらに良好になるからである。メラミン系樹脂の含有量は、具体的には例えば5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。硝化綿の含有量は、40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0050】
<キトサン系樹脂>
本発明において、キトサン系樹脂は、樹脂成分としてキトサン誘導体を含む樹脂である。キトサン系樹脂は、キトサン誘導体が100質量%であるものを使用できるが、他の樹脂成分と併用して使用することもでき、併用する場合には少なくともキトサン誘導体を全樹脂成分に対して50質量%以上、特に80質量%以上含むことが好ましい。キトサン誘導体は、例えばヒドロキシアルキルキトサンであり、具体的には、ヒドロキシエチルキトサン、ヒドロキシプロピルキトサン、ヒドロキシブチルキトサン、グリセリル化キトサンが好ましく、特にグリセリル化キトサンである。
キトサン系樹脂は、好ましくは、有機酸を含む。有機酸としては、ピロメリット酸、テレフタル酸などが挙げられる。有機酸の添加量は、キトサン誘導体100質量%に対して20〜300質量%が好ましく、50〜150質量%がさらに好ましい。有機酸の添加量が少なすぎるとキトサン誘導体の硬化が不十分になり、有機酸の添加量が多すぎると樹脂層の可撓性が低下するからである。
キトサン系誘導体の重量平均分子量は、例えば、3万〜50万であり、具体的には例えば3万,4万,5万,6万,7万,8万,9万,10万,15万,20万,50万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。重量平均分子量は、GPC(ゲル排除クロマトグラフ)によって測定したものを意味する。
【0051】
<導電材>
本発明の導電性樹脂層は、導電性基材と活物質層又は電極材層との間に設けられ、この間を移動する電子の通路となるので、この電子伝導性が必要である。硝化綿系樹脂自体は絶縁性が高いので、電子伝導性を付与するために導電材を配合しなければならない。本発明に用いる導電材としては公知の炭素粉末、金属粉末などが使用可能であるが、その中でも炭素粉末が好ましい。炭素粉末としてはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブなどが使用可能である。導電材の添加量は、硝化綿系樹脂の樹脂成分(固形分、以下同じ)100質量%に対して20〜80質量%が好ましい。20質量%未満では樹脂層の体積固有抵抗が高くなり、80質量%を超えると導電性基材との密着性が低下するからである。導電材を硝化綿系樹脂の樹脂成分液に分散するには公知の方法を用いることができ、例えば、プラネタリミキサ、ボールミル、ホモジナイザ等を用いることによって分散することが可能である。
【0052】
<水接触角>
本発明の樹脂層表面の水接触角は、樹脂層に含まれる樹脂がアクリル系樹脂である場合に30度以上105度以下であり、前記樹脂が硝化綿系樹脂である場合に100度以上110度以下であり、前記樹脂がキトサン系樹脂である場合に20度以上50度以下である。本明細書において、水接触角は、23℃の恒温室内でθ/2法によって測定して得られた値を意味する。水接触角は接触角計を用いて測定することができる。集電体に樹脂層を形成した後、その表面に純水を数μリットルの水滴を付着させて接触角を測定する。温度によって水の表面張力が変化するので、水接触角は、23℃の恒温室内で測定する。
【0053】
単に樹脂に導電材を添加して樹脂層を形成しても、導電性基材と樹脂層の界面および樹脂層と活物質層の界面あるいは樹脂層と電極材層の界面に十分な密着性が得られない場合がある。これは樹脂であっても樹脂の種類や形成条件によって、樹脂層の状態が変化するためである。特に密着性に影響が大きい表面性状として液体の濡れ性を示す接触角があり、比較的表面張力の大きい水の接触角を測定することにより、集電体とその上に形成する活物質層や電極材層の密着性を評価することができる。この場合、樹脂層と水接触角について一見、水接触角が小さいほど密着性が向上し、放電レートの向上が図れるように見えるが、接触角が小さすぎると、導電性基材との密着性や放電レート特性に悪影響を及ぼす可能性がでてくるため、本発明においては水接触角を規定することが必要になる。なお、この点については後にも述べる。
【0054】
種々の条件にて樹脂層を形成して水接触角を測定した結果、特定の上限値以下であれば、活物質層や電極材層と十分な密着性が得られることがわかった。また、水接触角の異なる樹脂層を形成して、導電性基材と樹脂層の密着性の関係を調査した結果、樹脂層の表面の水接触角が特定の下限値未満であるとハイレート特性が劣ることがわかった。原因は明らかではないが、導電性基材と樹脂層の微妙な密着状態の差を検出しているものと推定される。従って、水接触角は、上記下限値以上であることが必要である。以上のように、本発明の水接触角の規定は、樹脂と活物質層又は電極材層との密着性だけでなく、導電性基材と樹脂層との密着性についても考慮したものであり、このように水接触角の規定された本発明の集電体は、特に電極構造体として電池や帯電部品に用いるとハイレート特性を良好に付与できる。
【0055】
本発明の集電体を得るには、先に述べたアルミニウム箔等の導電性基材の少なくとも片面に樹脂層を公知の方法で形成して得ることができるが、上記水接触角を有するものにする必要がある。例えば、塗工にて樹脂層を形成する場合、焼付温度と焼付時間が水接触角に影響する。焼付温度は導電性基材の到達温度として90〜230℃、焼付時間は10〜60秒が好ましい。このような条件で樹脂層を形成した場合に、その表面での水接触角を上記範囲内にする調整に寄与するからである。但し、水接触角は、樹脂組成、樹脂液中の樹脂濃度、焼付温度、焼付時間、焼付方法などの種々の因子によって総合的に決定されるものであるので、焼付温度と焼付時間が上記範囲内であっても、水接触角は上記範囲外なる場合がある。また、逆に焼付温度と焼付時間が上記範囲外であっても、水接触角が上記範囲内になる場合がある。
一般に焼付温度が高いほど、焼付時間が長いほど、水接触角が大きくなる傾向がある。従って、水接触角を上記範囲内にするには、最初に、ある条件で樹脂層を形成し、形成した樹脂層において水接触角を測定し、測定された水接触角が上記下限値より小さければ、焼付温度を高くするか焼付時間を長くし、測定された水接触角が上記上限値よりも大きければ焼付温度を低くするか焼付時間を短くする等の調整が必要である。従って、樹脂の組成や焼付温度のみでは水接触角の値は決定されないが、上記の方法を用いれば、数回の試行錯誤を行うだけで、水接触角を所望の値に設定することが可能である。
【0056】
本発明の集電体を用いれば、活物質層又は電極材層を形成し電解液が浸潤した状態においても、樹脂層と活物質層あるいは樹脂層と電極材層の界面に十分な密着性が確保できるだけでなく、導電性基材との界面にも十分な密着性の確保を兼ね備えることができる。また、充放電を繰り返した後においても大きな剥離は認められず、十分な密着性と優れた放電レート特性、長寿命化が図れた集電体が得られる。
【0057】
本発明において、導電性樹脂層の厚さは特に制限されるものではないが、通常0.1μm以上、5μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.3μm以上、3μm以下である。0.1μm未満では導電性樹脂層の形成にムラができ、導電性基材上を被覆できない部分が発生して、十分な電池特性が得られない場合がある。一方、5μmを超えると後述する非水電解質電池や蓄電部品に適用する際、その分、活物質層や電極材層を薄くせざるを得ない場合があることから十分な容量密度が得られない場合がある。また、リチウムイオン二次電池等に用いる場合、セパレータと組み合わせて巻回した際、曲率半径が非常に小さい内側の巻き部において、樹脂層に亀裂が入り、剥離部分が発生、非水電解質電池や蓄電部品の性能を劣化させる場合がある。
【0058】
本発明の集電体の製造方法は、特に制限されるものではないが、導電性基材に樹脂層を形成する際、導電性基材表面の密着性が向上するように導電性基材自体に公知の前処理を実施することも効果的である。特に圧延にて製造したアルミニウム等の導電性基材を用いる場合、圧延油や磨耗粉が残留している場合があり、脱脂などによって除去することにより、密着性を向上させることができる。また、コロナ放電処理のような乾式活性化処理によっても密着性を向上させることができる。
【0059】
電極構造体
本発明の集電体の少なくとも片面に活物質層又は電極材層を形成することによって、本発明の電極構造体を得ることができる。電極材層を形成した蓄電部品用の電極構造体については後述する。まず、活物質層を形成した電極構造体の場合、この電極構造体とセパレータ、非水電解質溶液等を用いて非水電解質電池用、例えばリチウムイオン二次電池用の電極構造体(電池用部品を含む)を製造することができる。本発明の非水電解質電池用電極構造体および非水電解質電池において集電体以外の部材は、公知の非水電池用部材を用いることが可能である。ここで、本発明において電極構造体として形成される活物質層は、従来、非水電解質電池用として提案されているものでよい。例えば、正極としてはアルミニウムを用いた本発明の集電体に、活物質としてLiCoO
2、LiMnO
2、LiNiO
2等を用い、導電材としてアセチレンブラック等のカーボンブラックを用い、これらをバインダであるPVDFに分散したペーストを塗工・乾燥させることにより、本発明の正極構造体を得ることができる。負極の電極構造体とする場合には、導電性基材として銅を用いた本発明の集電体に活物質として例えば黒鉛、グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等を用い、これらを増粘剤であるCMCに分散後、バインダであるSBRと混合したペーストを活物質層形成用材料として塗工・乾燥させることにより、本発明の負極構造体を得ることができる。
【0060】
非水電解質電池
本発明は非水電解質電池であってもよい。この場合、本発明の集電体を使用する以外には特に制限されるものではない。例えば、本発明の集電体を構成要素とする前記正極構造体と負極構造体の間に非水電解質を有する非水電解質電池用電解液を含浸させたセパレータで挟むことにより、本発明の非水電解質電池を構成することができる。非水電解質およびセパレータは公知の非水電解質電池用として用いられているものを使用可能である。電解液は溶媒として、カーボネート類やラクトン類等を用いることができ、例えば、EC(エチレンカーボネイト)とEMC(エチルメチルカーボネイト)の混合液に電解質としてLiPF
6やLiBF
4を溶解したものを用いることができる。セパレータとしては例えばポリオレフィン製のマイクロポーラスを有する膜を用いることができる。
【0061】
蓄電部品(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等)
本発明の電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等は、本発明の集電体を大電流密度での高速の充放電が必要な電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の蓄電部品にも適応可能である。本発明の蓄電部品用電極構造体は本発明の集電体に電極材層を形成することによって得られ、この電極構造体とセパレータ、電解液等によって、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の蓄電部品を製造することができる。本発明の電極構造体および蓄電部品において集電体以外の部材は、公知の電気二重層キャパシタ用やリチウムイオンキャパシタ用の部材を用いることが可能である。
【0062】
電極材層は正極、負極共、電極材、導電材、バインダよりなるものとすることができる。本発明においては、本発明の集電体の少なくとも片側に前記電極材層を形成することによって電極構造体とした後、蓄電部品を得ることができる。ここで、電極材には従来、電気二重層キャパシタ用、リチウムイオンキャパシタ用電極材料として用いられているものが使用可能である。例えば、活性炭、黒鉛などの炭素粉末や炭素繊維を用いることができる。導電材としてはアセチレンブラック等のカーボンブラックを用いることができる。バインダとしては、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)やSBR(スチレンブタジエンゴム)を用いることができる。また、本発明の蓄電部品は、本発明の電極構造体にセパレータを挟んで固定し、セパレータに電解液を浸透させることによって、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタを構成することができる。セパレータとしては例えばポリオレフィン製のマイクロポーラスを有する膜や電気二重層キャパシタ用不織布等を用いることができる。電解液は溶媒として例えばカーボネート類やラクトン類を用いることができ、電解質は陽イオンとしてはテトラエチルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩等、陰イオンとしては六フッ化りん酸塩、四フッ化ほう酸塩等を用いることができる。リチウムイオンキャパシタはリチウムイオン電池の負極、電気二重層キャパシタの正極を組み合わせたものである。これらの製造方法は本発明の集電体を用いる以外は、公知の方法に従って行うことができ、特に制限されるものではない。
【実施例】
【0063】
本発明の集電体をリチウムイオン電池に適応した場合の実施例を以下に説明する。
【0064】
1.アルミニウム合金箔
表1に示す組成のアルミニウム合金を半連続鋳造法により溶解鋳造し、厚さ500mmの鋳塊を作製した。次に、この鋳塊を面削後、表1に示す条件で均質化処理を行い、均質化処理後には熱間圧延を行い、板厚を3.0mmとした。その後、冷間圧延により板厚0.8mmとして、440℃で3時間の中間焼鈍を行い、さらに冷間圧延と箔圧延を行い、箔厚12μmあるいは15μmのアルミニウム合金箔を得た。
【0065】
<引張強さ>
圧延方向に切り出したアルミニウム合金箔の引張強さを、島津製作所製インストロン型引っ張り試験機AG−10kNXを使用して測定した。測定条件は、試験片サイズを10mm×100mm、チャック間距離50mm、クロスヘッド速度10mm/分とした。また、乾燥工程を想定し、120℃で24時間、140℃で3時間、160℃で15分の熱処理を行った後のアルミニウム合金箔についても、圧延方向に切り出し、上記と同じく引張強さを測定した。引張強さは、180MPa以上を合格とし、180MPa未満を不合格とした。120℃で24時間、140℃で3時間、160℃で15分の熱処理を行った後の引張強さは、170MPa以上を合格とし、170MPa未満を不合格とした。
【0066】
<0.2%耐力>
上記と同じく、引張試験を実施して、応力/ひずみ曲線から0.2%耐力を求めた。0.2%耐力は、160MPa以上を合格とし、160MPa未満を不合格とした。120℃で24時間、140℃で3時間、160℃で15分の熱処理を行った後の0.2%耐力は、150MPa以上を合格とし、150MPa未満を不合格とした。
【0067】
<導電率>
導電率は、四端子法にて電気比抵抗値を測定し、導電率に換算して求めた。
58%IACS以上を合格とし、
58%IACS未満を不合格とした。
【0068】
2.樹脂層形成
前述のアルミニウム合金箔に、以下の方法で、樹脂層を形成した。
【0069】
(実施例1〜6,実施例11〜16、比較例1〜2、比較例4〜5、比較例11〜12)
モノマとしてアクリル酸、ブチルアクリレート、メチルアクリレートを含むアクリル共重合体を配合比5:45:50で、重量平均分子量が10万になるように重合し、界面活性剤を用いて水に分散した樹脂液に、樹脂の固形分に対して60質量%のアセチレンブラックを添加し、ボールミルにて8時間分散して塗料とした。この塗料を表1に示すアルミニウム箔(JIS A1085)の片面にバーコータで塗布し、基材到達温度が表2に示す温度となるように30秒間加熱して集電体を作製した。焼付後の膜厚は2μmとした。この加熱は、恒温槽で行った。
【0070】
正極の作製にあたっては、活物質のリン酸鉄リチウム(LiFePO
4)と導電材のアセチレンブラックとをバインダであるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)に分散したペーストを連続塗工・乾燥機で前記集電体に塗工した。その際、箔に切れが発生しないかどうかをチェックした。さらに活物質の密度を大きくするためロールプレスを実施し、最終的に70μm厚の正極構造体を得た。負極は活物質の黒鉛をCMC(カルボキシメチルセルロース)に分散後、バインダであるSBR(スチレンブタジエンゴム)と混合したペーストを連続塗工・乾燥機で厚さ20μmの銅箔に厚さ70μmになるよう塗工し、負極構造体とした。これらの電極構造体にポリプロピレン製マイクロポーラスセパレータを挟んで電池ケースに収め、2032型コイン電池を作製した。電解液として、1mol/LのLiPF
6のEC(エチレンカーボネート)+EMC(エチルメチルカーボネート)溶液を用いた。
【0071】
(実施例7〜8、実施例17〜18、比較例6〜7、比較例13〜14)
主樹脂として硝化綿(JIS K6703L1/4)80質量%(硝化綿の重量はいずれも湿潤剤を除いた重量)と、硬化剤としてブチルエーテル化メラミン(数平均分子量2700)20質量%を有機溶剤メチルエチルケトン(MEK)に溶解した樹脂液に、樹脂成分(樹脂の固形分、以下同じ)に対して60質量%のアセチレンブラックを添加し、ボールミルにて8時間分散して塗料とした。この塗料を表1に示すアルミニウム箔(JIS A1085)の片面にバーコータで塗布し、基材到達温度が表2に示す温度となるように30秒間加熱して集電体を作製した。焼付後の膜厚は2μmとした。この加熱は、恒温槽で行った。その他の条件は実施例1と同じにしてコイン電池を作製した。
【0072】
(実施例9〜10、実施例19〜20、比較例8〜9、比較例15〜16)
主樹脂としてヒドロキシアルキルキトサン(重量平均分子量80000)50質量%と、硬化剤ピロメリット酸50質量%とを有機溶剤ノルマルメチル2ピロリドン(NMP)に溶解した樹脂液に、樹脂成分(樹脂の固形分、以下同じ)に対して60質量%のアセチレンブラックを添加し、ボールミルにて8時間分散して塗料とした。この塗料を表1に示すアルミニウム箔(JIS A1085)の片面にバーコータで塗布し、基材到達温度が表2に示す温度となるように30秒間加熱して集電体を作製した。焼付後の膜厚は2μmとした。この加熱は、恒温槽で行った。その他の条件は実施例1と同じにしてコイン電池を作製した。
【0073】
(比較例3、比較例10)
エポキシ樹脂(重量平均分子量2900)とメラミン樹脂(ブチル化メラミン、数平均分子量2700)を配合比95:5でメチルエチルケトン(以下、MEKという)に溶解した樹脂液に、樹脂の固形分に対して60%のアセチレンブラックを添加し、ボールミルにて8時間分散して塗料とした。この塗料を表1に示すアルミニウム箔(JIS A1085)の片面にバーコータで塗布し、基材到達温度が表2に示す温度となるように15秒間加熱した。焼付後の膜厚は2μmとした。その他の条件は実施例1と同じにしてコイン電池を作製した。
【0074】
これらの集電体に形成した導電性樹脂層の厚さ、導電性樹脂層の水接触角、活物質塗布工程における切れ発生の有無、基材と樹脂層の密着性、樹脂層と活物質層の密着性、コイン電池の放電レート特性を調査した結果を表2に示す。
【0075】
<樹脂層の厚さ>
樹脂層の厚さはフィルム厚み測定機 計太郎G(セイコーem製)を用いて、樹脂層形成部と未形成部(アルミ箔のみの部分)の厚みの差から樹脂層の厚さを算出した。
【0076】
<接触角>
水接触角は接触角計(協和界面科学社製Drop Master DM-500)を用い、23℃の恒温室内にて1μリットルの水滴を樹脂層表面に付着させ、2秒後の接触角をθ/2法にて測定した。
【0077】
<活物質塗布工程における切れ発生の有無>
活物質塗布工程において塗布した正極材に、切れが発生したか否かを目視で観察した。切れが発生しなかった場合を合格とし、発生した場合を不合格とした。
【0078】
<基材と樹脂層の密着性>
密着性はニチバン製セロテープを樹脂層表面に貼り付け、十分押さえた後、一気に剥がしたときの目視による剥離状況にて評価した。評価基準は剥離なしを○、剥離面積が90%以内であれば△、剥離面積が90%を超えれば×とした。
【0079】
<樹脂層と活物質層の密着性(活物質剥離の有無)>
活物質剥離の有無は、目視で観察を行った。剥離が発生しなかった場合を合格とし、少なくとも一部発生した場合を不合格とした。
【0080】
<放電レート特性>
放電レート特性は、充電上限電圧3.4V、充電電流0.2C、放電終了電圧2.0V、温度25℃において、放電電流1C、5C、10C、20Cにおける放電容量(0.2C基準、単位%)を測定した。(1Cはその電池の電流容量(Ah)を1時間(h)で取り出すときの電流値(A)である。20Cでは1/20h=3minでその電池の電流容量を取り出すことができる。あるいは充電することができる。)
得られた測定結果を表2に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
実施例1〜実施例20は、薄箔でも十分な素板強度を有し、従来と同じ正極厚さで電池容量を大きくでき、かつ20Cにおける放電レート特性が40%以上とハイレート特性に優れている。
比較例1は、不十分な素板強度を補うため箔を厚くしたため、そのぶん正極合材層が薄くなり、ハイレート特性は十分であるにもかかわらず電池容量が劣っていた。
比較例2は、素板強度が不十分なため、活物質塗布工程において塗布した正極材に、切れが発生した。
比較例3、10は、樹脂がエポキシ系であることから、密着性は十分であるがハイレート特性が劣っていた。
比較例4〜9、比較例11〜16は、本発明の規定の接触角に外れるため、密着性が劣り界面抵抗が大きく、ハイレート特性が劣っていた。