特許第5791722号(P5791722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5791722ビームブロッカを用いたワークピースへのパターン注入
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791722
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】ビームブロッカを用いたワークピースへのパターン注入
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/266 20060101AFI20150917BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20150917BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20150917BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H01L21/265 M
   H01J37/317 C
   H01J37/09 A
   H01L21/265 T
   H01L21/265 603Z
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-528232(P2013-528232)
(86)(22)【出願日】2011年9月1日
(65)【公表番号】特表2013-541839(P2013-541839A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】US2011050156
(87)【国際公開番号】WO2012033697
(87)【国際公開日】20120315
【審査請求日】2014年3月31日
(31)【優先権主張番号】12/877,666
(32)【優先日】2010年9月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500324750
【氏名又は名称】バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ディスタソ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ロー、ラッセル、ジェイ.
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−136618(JP,A)
【文献】 特開2007−172927(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/065204(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/266
H01J 37/09
H01J 37/317
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入方法であり、
長い寸法を有するイオンビームを生成する段階と、
前記長い寸法方向の複数の位置において、前記イオンビームの一部をブロックする段階と、
前記ブロックする段階の後、第1ドース量および第2ドース量で、ワークピースに対し、前記イオンビームによる注入を同時に行う段階と
を備え、
前記ブロックする段階は、前記複数の位置で個別に制御され、
前記第1ドース量は前記複数の位置に対応し、
前記第2ドース量は、前記第1ドース量よりも多い、方法。
【請求項2】
前記イオンビームは不均一なビーム電流を有し、
前記ブロックする段階において、前記ワークピースに亘り前記第1ドース量および前記第2ドース量で均一に注入を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオンビームに対し前記ワークピースを走査する段階をさらに備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブロックする段階は、前記イオンビームの拡散を補正する、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
導電性の接触部を、前記第2ドース量で注入が行われる複数の領域に適用する段階をさらに備える、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1ドース量および前記第2ドース量は両方とも0より大きい、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
イオン注入方法であり、
長い寸法を有するイオンビームを生成する段階と、
前記長い寸法方向の複数の位置において、前記イオンビームの一部をブロックする段階と、
前記ブロックする段階の後、第1ドース量を有する第1の複数の領域および前記第1ドース量より多い第2ドース量を有する第2の複数の領域を形成すべく、ワークピースに対し、前記イオンビームによる注入を同時に行う段階と
を備え、
前記ブロックする段階は、前記複数の位置で個別に制御され、
前記第1の複数の領域は、前記ブロックする段階における前記複数の位置に対応する、方法。
【請求項8】
前記イオンビームは不均一なビーム電流を有し、
前記ブロックする段階において、前記ワークピースに亘り前記第1ドース量および前記第2ドース量で均一に注入を行う、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記イオンビームに対し前記ワークピースを走査する段階をさらに備える、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブロックする段階は、前記イオンビームの拡散を補正する、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
導電性の接触部を前記第2の複数の領域に適用する段階をさらに備える、請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1ドース量および前記第2ドース量は両方とも0より大きい、請求項7から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
イオン注入方法であり、
長い寸法を有するイオンビームを生成する段階と、
前記長い寸法方向の複数の位置において、前記イオンビームの一部をブロックする段階と、
前記イオンビームに対しワークピースを走査する段階と、
前記ブロックする段階における前記複数の位置に対応する、前記ワークピースの複数の領域に第1ドース量で注入し、前記第1ドース量よりも多い第2ドース量で、前記ワークピースの残りの部分の注入を行う、パターン注入を行う段階と
を備え、
前記ブロックする段階でブロックする量は、前記複数の位置のそれぞれで個別に制御される、方法。
【請求項14】
前記イオンビームは不均一なビーム電流を有し、
前記ブロックする段階において、前記ワークピースに亘り前記第1ドース量および前記第2ドース量で均一に注入を行う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ブロックする段階は、前記イオンビームの拡散を補正する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
導電性の接触部を前記第2ドース量を有する複数の領域に適用する段階をさらに備える、請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1ドース量および前記第2ドース量は両方とも0より大きい、請求項13から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
イオン注入方法であり、
長い寸法を有するイオンビームを生成する段階と、
前記長い寸法方向の複数の位置において、前記長い寸法に亘り第1電流領域および第2電流領域を有するパターンイオンビームを形成すべく、前記イオンビームの一部をブロックする段階と、
前記パターンイオンビームに対しワークピースを走査する段階と、
前記ワークピースに対し、前記第1電流領域および前記第2電流領域によって同時に注入が行われるように、前記ワークピースに対し、前記パターンイオンビームによる注入を行う段階と
を備え、
前記第1電流領域は、前記第2電流領域よりも低い電流を有し、かつ、前記複数の位置に対応し、
前記第1電流領域および前記第2電流領域の両方が、0よりも大きい電流を有し
前記ブロックする段階は、前記複数の位置で個別に制御される、方法。
【請求項19】
ビームラインイオン注入装置であって、
イオンビームを形成するイオンを生成するイオン源と、
偏向されたイオンビームを、長い寸法を有するリボンイオンビームに変換する角度補正磁石と、
前記長い寸法の複数の位置において前記リボンイオンビームの一部をブロックする、イオンブロッカユニットと
を備え、
前記リボンイオンビームは、前記ブロックされた後、第1ドース量および第2ドース量で、ワークピースに同時に注入され、
前記第1ドース量は前記複数の位置に対応し、前記第2ドース量は前記第1ドース量よりも多く、
前記イオンブロッカユニットは、前記ブロックすることを前記複数の位置で個別に制御する、装置。
【請求項20】
前記イオンブロッカユニットは、各々が駆動ユニットに接続された複数のブロッカを有する、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、パターン注入に関し、より詳細には、ビームブロッカを用いたパターン注入に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、導電性を変更させる不純物をワークピースに対し導入するのに用いられる、標準的な技術である。所望される不純物がイオン源内でイオン化され、イオンは所定のエネルギーを持つイオンビームとなるよう加速化され、イオンビームは、ワークピースの面へと向けられる。ビーム内のエネルギーイオンはワークピース材のバルクへと浸透し、ワークピース材の結晶格子へと埋め込まれ、所望される導電性を有する領域が形成される。
【0003】
一例において、リボンイオンビームを用いてワークピースに対する注入が行われる。リボンイオンビームの断面は長い寸法および短い寸法を有する。例えば長い寸法は、幅またはx方向として呼ばれることもあり、若しくは異なる方向として見なすことも可能ではある。リボンイオンビームは、並列化レンズを用いて形成されたものであるか、または走査スポットビームである。
【0004】
太陽電池は、シリコンワークピースを用いるデバイスの一例である。高性能太陽電池の製造コストまたは生産コストの削減、または高性能太陽電池の効率性の向上が可能であれば、世界中の太陽電池の実装において、好ましい影響を与えることが出来るであろう。このことにより、クリーンなエネルギー技術である太陽電池の利用可能性を高めることが出来るであろう。
【0005】
太陽電池のアーキテクチャには、様々なものがある。2つの一般的な設計としては、選択エミッタ(SE)およびinterdigitated backside contact(IBC)がある。SE太陽電池は、太陽光が当たる低濃度ドープ面に亘って高ドース量のストライプを複数有する。IBC太陽電池は、太陽光が当たらない面に亘って、p型ストライプおよびn型ストライプを交互に有する。それら様々な領域をドープするよう、SE太陽電池およびIBC太陽電池の両方において注入が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異なる領域が異なるドース量を受けるよう、太陽電池または他のワークピースに対し注入を行う必要がある。多くの例において、このことは複数の注入工程を要する。SE太陽電池の場合、最初の注入は、典型的には、太陽電池の全体に亘る一様な注入であり、2度目の注入は、典型的には、高ドース量を必要とする特定の領域への選択的な注入である。選択的な注入には、例えば、フォトレジストまたはステンシルマスクが用いられる。2つの注入工程を採用することにより処理コストが嵩み、生産に要する時間が長くなり、製造施設において必要とされる注入装置の台数が増えることも考えられる。さらに、リソグラフィは高コストであり、長時間を要し、ステンシルマスクは、適切にアラインするのが難しい。よって、当技術分野ではパターン注入が必要とされており、より詳細には、同時に異なるドース量で注入を行うことのできるパターン注入が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の第1態様によると、イオン注入方法が提供される。当該方法は、長い寸法を有するイオンビームを生成する段階を含む。長い寸法方向の複数の位置において、イオンビームの一部をブロックする。ブロックする段階の後、第1ドース量および第2ドース量で、ワークピースに対し、イオンビームによる注入を同時に行う。ブロックする段階は、複数の位置で個別に制御される。第1ドース量は複数の位置に対応し、第2ドース量は、第1ドース量よりも多い。
【0008】
本願発明の第2態様によると、イオン注入方法が提供される。当該方法は、長い寸法を有するイオンビームを生成する段階を含む。長い寸法方向の複数の位置において、イオンビームの一部をブロックする。ブロックする段階の後、第1ドース量を有する第1の複数の領域および第1ドース量より多い第2ドース量を有する第2の複数の領域を形成すべく、ワークピースに対し、イオンビームによる注入を同時に行う。ブロックする段階は、複数の位置で個別に制御される。第1の複数の領域は、ブロックする段階における複数の位置に対応する。
【0009】
本願発明の第3態様によると、イオン注入方法が提供される。当該方法は、長い寸法を有するイオンビームを生成する段階を含む。長い寸法方向の複数の位置において、イオンビームの一部をブロックする。ブロックする段階でブロックする量は、複数の位置のそれぞれで個別に制御される。イオンビームに対しワークピースを走査する。ワークピースに対し、パターン注入を行う。ブロックする段階における複数の位置に対応する複数の領域に対し、第1ドース量で注入が行われる。ワークピースの残りの部分に対し、第1ドース量よりも多い第2ドース量で注入が行われる。
【0010】
本願発明の第4態様によると、イオン注入方法が提供される。当該方法は、長い寸法を有するイオンビームを生成する段階を含む。長い寸法方向の複数の位置において、長い寸法に亘り第1電流領域および第2電流領域を有するパターンイオンビームを形成すべく、イオンビームの一部をブロックする。第1電流領域は、第2電流領域よりも低い電流を有し、かつ、複数の位置に対応する。第1電流領域および第2電流領域の両方が、0よりも大きい電流を有する。ブロックする段階は、複数の位置で個別に制御される。パターンイオンビームに対しワークピースを走査する。ワークピースに対し、第1電流領域および第2電流領域によって同時に注入が行われるように、ワークピースに対し、パターンイオンビームによる注入を行う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示がよりよく理解されるよう、参照により本明細書に組み込まれる添付の図面を参照する。
図1図1は、ビームラインイオン注入装置のブロック図である。
図2図2は、イオンビームブロッカユニットの側面断面図である。
図3図3は、図2に示すイオンビームブロッカユニットの前方透視図である。
図4図4は、ブロッカの第2実施形態の前方透視図である。
図5図5は、注入が行われる太陽電池の前方透視図である。
図6図6は、図3に示すイオンビームブロッカユニットを用いた、太陽電池に対する注入を示す上方透視図である。
図7図7は、図6に示す実施形態の、x位置に対応するビームプロファイルを示すグラフである。
図8図8は、不均一なビームの、x位置に対応するビームプロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、イオン注入装置に関連して、これらの装置および方法の実施形態を説明する。しかし、半導体製造または荷電粒子を用いる他のシステムに関わる他のシステムおよびプロセスにおいて、様々な実施形態を用いる事が出来る。特に太陽電池について言及するが、半導体ウェハ、発光ダイオード(LED)、平面パネルまたは当業者に公知の他のワークピースなどの他のワークピースも本願発明の実施形態の恩恵を得る事が出来る。さらに、リボンビームが開示されるが、本明細書に開示する実施形態は、スポットビームまたは走査スポットビームに適用することも可能である。よって、本願発明は、以下に説明する特定の実施形態に限定されない。
【0013】
図1は、ビームラインイオン注入装置200のブロック図である。当業者であれば、ビームラインイオン注入装置200が、イオンを生成出来るビームラインイオン注入装置の多くの例のうちの1つに過ぎないことを理解するであろう。よって、本明細書に開示する実施形態は、図1のビームラインイオン注入装置200のみに限定されない。
【0014】
一般的に、ビームラインイオン注入装置200は、イオンビーム202を形成するイオンを生成するイオン源201を含む。イオン源201は、イオンチャンバ203を含んでよい。ガスがイオンチャンバ203へと供給され、当該ガスはイオンチャンバ203でイオン化される。いくつかの実施形態において、このガスは、p型ドーパント、n型ドーパント、炭素、水素、希ガス、分子化合物また他の当業者に公知の何らかの種であるか、若しくはこれらを含むか、または含有する。このように生成されたイオンはイオンチャンバ203から抽出され、イオンビーム202が形成される。イオンビーム202は、抑制電極204および接地電極205を通過し、質量分析器206へ到達する。質量分析器206は、分析磁石207、および分析スリット209を有するマスキング電極208を含む。分析磁石207は、所望されるイオン種のイオンが分析スリット209を通過するように、イオンビーム202内のイオンを偏向させる。所望されないイオン種は分析スリット209を通過せず、マスキング電極208によってブロックされる。
【0015】
所望されるイオン種のイオンは、分析スリット209を通過し、角度補正磁石210へと到達する。角度補正磁石210は、所望されるイオン種のイオンを偏向し、イオンビームを分岐イオンビームから、実質的に平行なイオン軌道を有するリボンイオンビーム212へと変換する。ビームラインイオン注入装置200はさらに、イオンビームエネルギー調整ユニット215を含んでよい。このイオンビームエネルギー調整ユニット215は、例えば、イオンビームのエネルギーを第1のエネルギーから第2のエネルギーに変換する加速レンズまたは減速レンズであってよい。イオンビームブロッカユニット216はリボンイオンビーム212の部分をブロックし、エンドステーション211またはプラテン214の上流に位置する。
【0016】
エンドステーション211は、ワークピース213に対して、所望される種のイオンによる注入が行われるように、リボンイオンビーム212のパス内で、ワークピース213などの1以上のワークピースを支持する。ワークピース213は、例えば、太陽電池であってよい。エンドステーション211は、1以上のワークピース213を支持するプラテン214を含んでよい。エンドステーション211は、リボンイオンビーム212の断面の長い寸法の方向に対し垂直にワークピース213を移動させワークピース213の全面にイオンを分布させる、スキャナ(図示せず)も含んでよい。当業者であれば、イオン注入の間は、イオンビームが横切るパス全体が真空状態とされていることを理解されるであろう。イオン注入装置200は、当業者に公知の追加コンポーネントを含んでよく、いくつかの実施形態においては、高温または低温イオン注入が組み込まれてもよい。
【0017】
図2は、イオンビームブロッカユニットの側面断面図である。(破線で示す)イオンビームブロッカユニット216は、リボンイオンビーム212がワークピース213に対し注入を行うべくz方向に移動するパス上にある。イオンビームブロッカユニット216は、少なくとも1つのブロッカ300を含む。各ブロッカ300は、ブロッカ300を矢印303で示すy方向へ移動させる駆動ユニット301に接続されている。ブロッカ300が移動させられる距離は、リボンイオンビーム212のどの程度が、ブロックされるか、またはトリミングされるかに影響を及ぼす。駆動ユニット301は、圧電駆動素子または当業者に公知に何らかの他のシステムであってよい。ブロッカ300は、グラファイトまたはリボンイオンビーム212を汚染しない何らかの他の物質を用いて作製される。
【0018】
図3は、図2に示すイオンビームブロッカユニットの前方透視図である。図3もz方向に向かうリボンイオンビーム212を示すが、図3ではz方向は頁の手前に向かう方向である。図3では5つのブロッカ300A〜300Eが示されているが、他の構成を採用することも出来、本実施形態は5つのブロッカに限定されない。ブロッカ300A〜300Eはアレイ状に配置されてよく、これによりリボンイオンビーム212を複数の位置でブロックする。駆動ユニット301はブロッカ300A〜300Eをy方向に移動させる。各ブロッカ300A〜300Eは個別に移動させられてもよい。よって、ブロッカ300A、300C、300Eは、ブロッカ300B、300Dよりも多くのリボンイオンビームをブロックまたはトリミングする。ブロッカ300A〜300Eのそれぞれのパターンは、所望されるパターン注入、リボンイオンビーム212の不均一性またはリボンイオンビーム212のどの程度がブロックまたはトリミングされる必要があるかによって変わる。ブロッカ300A〜300Eは、リボンイオンビーム212のパスから外れて移動させられてもよい。コントローラを用いて各ブロッカ300A〜300Eの配置または移動を決定してもよい。このコントローラは、リボンイオンビーム212の均一性、プロファイルまたは電流を検出出来る計測デバイスに接続されてよい。
【0019】
長方形のブロッカ300A〜300Eが示されているが、他の形状を採用することも可能である。例えば、各ブロッカ300A〜300Eは、リボンイオンビーム212をブロックまたはトリミングできる複数のクレネレーション(crenellation)または歯を有していてよい。他のパターンまたは形状を採用してもよい。図4は、ブロッカの第2の実施形態を示す前方透視図である。ブロッカ300は複数の歯302を含む。よって、各ブロッカ300は、イオンビームの複数の部分をブロックすることが出来る。
【0020】
図5は、注入が行われる太陽電池の前方透視図である。太陽電池100は、第1ドース領域101および第2ドース領域102を有するSE太陽電池の一例である。第2ドース領域102は、第1ドース領域101よりも高ドース量を有する。金属であってよい導電性の接触部を第2ドース領域102に適用することにより太陽電池100を形成してよい。本明細書に開示する実施形態は、複数の注入工程を設けることなく第1ドース領域101および第2ドース領域102の両方に同時にドープすることを可能とする。
【0021】
図6は、図3に示すイオンビームブロッカユニットを用いた、太陽電池に対する注入を示す上方透視図である。イオンビームブロッカユニット216のブロッカ300A〜300Eは、図3に示すものと対応する。よって、ブロッカ300A、300C、300Eは、y方向の配置の違いにより、ブロッカ300B、300Dよりも多くのリボンイオンビームをブロックまたはトリミングする。ブロッカ300A〜300Eの下流にあるリボンイオンビーム212は、リボンイオンビーム212の長い寸法またはx方向に亘り、第1電流領域103および第2電流領域104とへと分けられる。第1電流領域103は、ブロッカ300A、300C、300Eにより、第2電流領域104よりもより多くブロックされ、結果的に、より低いビーム電流を有する。このことにより、より高いビーム電流を有する第2電流領域104は、太陽電池100の(斜線で示される)第2ドース領域102を形成することが出来る。よって、太陽電池100の第1ドース領域101は、リボンイオンビーム212のより多くの部分をブロックまたはトリミングし、第1電流領域103を形成するブロッカ300A、300C、300Eの位置に対応する。太陽電池100は、その表面の全体に注入が行われるよう、y方向に走査されてもよい。
【0022】
特定の一実施形態において、第2ドース領域102は、第1ドース領域101のドース量よりも3倍多いドース量を有する。一実施形態において、第1電流領域103を選択的に形成するブロッカ300A、300C、300Eは、リボンイオンビーム212の3分の2をブロックする。特定の他の実施形態において、第1電流領域103も第2電流領域104も、ゼロではない電流を有する。本実施形態において、第1電流領域103および第2電流領域104は両方ともいくらかの電流を有する。よって、第1ドース領域101および第2ドース領域102は、ゼロより大きなドース量を有する。
【0023】
図7は、図6に示す実施形態の、x位置に対応するビームプロファイルを示すグラフである。図6は第1電流領域103および第2電流領域104を示しており、これらは図7においても示されている。ブロッカ300A、300C、300Eは、ビーム電流を減少させ、リボンイオンビームの第1電流領域103を形成する。
【0024】
図8は、不均一なビームの、x位置に対応するビームプロファイルを示すグラフである。リボンイオンビームのビームプロファイル400は不完全、若しくは、不均一である。このようなビームプロファイルによって太陽電池または他のワークピースに対する注入に影響が及ぼされるかもしれないが、図3に示すブロッカ300A〜300Eを用いてビームを削る(sculpt)または補正することが出来る。図8において破線で示すように、ビームプロファイル400をブロックまたはトリミングすることにより、第1電流領域103および第2電流領域104を形成できる。よって、場合によっては太陽電池または他のワークピースの不正確なドーピングを引き起こすビームとなり得るものであっても、注入に用いることが出来る。いくつかのビームプロファイルにおいては、ブロッカは個別に制御してもよく、補正を目的とし、図3に示す鋸の歯状のアレイとは異なる特有のアレイであってもよい。ビームプロファイルが特に不均一である場合、個別の配置を用いることが出来る。
【0025】
ブロッカを用いてリボンイオンビームの拡散を補正してもよい。リボンイオンビームを形成する荷電粒子が一因となり、この拡散又は「吹き上げ(ブローアップ)」が起こる。イオンビームブロッカユニットのブロッカは、リボンビームの拡散を軽減すべく、ワークピースまたは太陽電池に近接して載置される。イオンビームブロッカユニットとワークピースとの間での拡散を補正すべく計算し、リボンイオンビームの部分をブロックまたはトリミングするようブロッカの位置を決めてもよい。さらに、リボンイオンビームの部分が例えばブロッカに衝突するか、またはぶつかる時、ブロッカの材料により二次電子が生じ得る。これらの二次電子によって、リボンイオンビームの中和が促進される。リボンイオンビームが中和されればされるほど、リボンイオンビームの下流において引き起こされる「吹き上げ」は少なくなる。
【0026】
1つの特別な利点は、イオンビームブロッカユニットのブロッカが可動式であることである。複数の注入される種、リボンイオンビームの様々な構成、異なる注入パターンまたは異なるワークピースに対し、単一の注入装置を用いることが出来る。ブロッカは、これらの様々なパラメータの変更に従って調整することが出来、これにより装置コストが削減される。イオンビームブロッカユニットによって、ワークピースに対する均一な注入が確実になることが他の利点である。ブロッカを個別に調節し、ワークピース上の様々な領域への注入を均一とすることが出来る。このことは、例えばステンシルマスクまたはフォトレジストを用いる技術よりも向上した技術である。その理由は、ステンシルマスクまたはフォトレジストを用いる方法は、イオンビームを調整することが出来ず、またはイオンビームの不均一性を補正することが出来ないからである。ステンシルマスクまたはフォトレジストを用いて選択的に注入を行うことが出来るかもしれないが、注入されるビームは不均一となり得る。
【0027】
本開示は、本明細書に説明した特定の実施形態の態様に限定されない。実際に、本開示の他の様々な実施形態および変形例は、本明細書に説明されたものに加えて、上述した説明および添付の図面を参照することにより当業者に明らかとなるであろう。よって、それら他の実施形態および変形例は、本開示の態様の範囲に含まれるものとする。さらに、本開示は、特定の目的を達成するべく特定の環境における特定の実装例の文脈で本明細書において説明してきたが、当業者であればその有用性がそれらに限定されず、本開示は、無数の目的を達成すべく無数の環境において有益に実装することが可能であることが理解されよう。したがって、以下に示す請求項は、本明細書に説明される本開示の全範囲および態様を鑑みて解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8