特許第5791723号(P5791723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5791723電流制御素子、有機発光ダイオード、電流制御素子の製造方法および有機発光ダイオードの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791723
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】電流制御素子、有機発光ダイオード、電流制御素子の製造方法および有機発光ダイオードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20150917BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   H05B33/10
   H05B33/14 A
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-529625(P2013-529625)
(86)(22)【出願日】2011年9月20日
(65)【公表番号】特表2013-541154(P2013-541154A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2011066261
(87)【国際公開番号】WO2012038389
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2013年10月29日
(31)【優先権主張番号】102010041331.3
(32)【優先日】2010年9月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】タロアタ、ダン
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−047882(JP,A)
【文献】 特表2009−524189(JP,A)
【文献】 特開2008−258396(JP,A)
【文献】 特開2007−258308(JP,A)
【文献】 特開2001−118681(JP,A)
【文献】 特開平06−168785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/12
H05B 33/10
H01L 51/50
H01L 29/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重なり合った有機半導体層を有する電流制御素子であって、
・第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層との間に電子輸送層が配置されている電流制御素子において、
・前記第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層との間の電子輸送層が変調層として形成されており
・前記変調層は変調電圧のため、前記第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層の少なくとも一方に対して変調層が変更された層レイアウトによって側面に配置された接触部を有し、前記変調電圧を用いて前記変調層を介する変調電流の流れを生じさせることが可能であり、前記変調電流の流れを介して、前記第1の正孔輸送層から前記第2の正孔輸送層への変調層を通る部品電流の流れが制御可能である
ことを特徴とする電流制御素子。
【請求項2】
重なり合った有機半導体層を有する電流制御素子であって、
第1の電子輸送層と第2の電子輸送層との間に正孔輸送層が配置されている
電流制御素子において、
前記第1の電子輸送層と第2の電子輸送層との間の正孔輸送層が変調層として形成されており、
・前記変調層は変調電圧のため、前記第1の電子輸送層と第2の電子輸送層の少なくとも一方に対して変調層が変更された層レイアウトによって側面に配置された接触部を有し、前記変調電圧を用いて前記変調層を介する変調電流の流れを生じさせることが可能であり、前記変調電流の流れを介して前記第1の電子輸送層から前記第2の電子輸送層への変調層を通る部品電流の流れが制御可能である
ことを特徴とする電流制御素子。
【請求項3】
前記有機半導体層は垂直の積層体に積み重なっている請求項1又は2記載の電流制御素子。
【請求項4】
前記積み重なった半導体層の間にヘテロ接合が形成されているか、又は前記半導体層間に真正の中間層が配置されている請求項1から3のいずれか1項に記載の電流制御素子。
【請求項5】
前記変調層がこの変調層の半導体材料における少数電荷キャリアの拡散長より薄い層厚を有する請求項1からのいずれか1項に記載の電流制御素子。
【請求項6】
前記変調電圧は、前記変調層と前記第1の正孔輸送層または前記第1の電子輸送層とに印加され、前記輸送層の半導体材料における多数電荷キャリア及び前記変調層の半導体材料における少数電荷キャリアである制御すべき電荷キャリアが前記第1の輸送層から前記変調層へ動かされる請求項1からのいずれか1項に記載の電流制御素子。
【請求項7】
ドーピングされた輸送層を備える請求項1からのいずれか1項に記載の電流制御素子。
【請求項8】
ドーピングされた変調層を備える請求項1からのいずれか1項に記載の電流制御素子。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の少なくとも1つの電流制御素子を有する有機発光ダイオード。
【請求項10】
前記有機発光ダイオードの演色性が前記変調電圧の印加によって変更可能である請求項記載の有機発光ダイオード。
【請求項11】
少なくとも2つの発光層からなる発光領域を有する請求項又は10記載の有機発光ダイオード。
【請求項12】
前記変調電圧の印加によって効率が変更可能である請求項から11のいずれか1項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項13】
請求項1からのいずれか1項に記載の電流制御素子の製造方法であって、第1の有機半導体層上に先ず第2の有機半導体層及び続いて第3の有機半導体層が垂直に重なり合うように堆積され、前記第1及び第3の半導体層に対しては同じ種類の多数電荷キャリアを有する材料が用いられ、前記第2の半導体層に対しては前記の材料とは異なる種類の多数電荷キャリアを有する材料が用いられる電流制御素子の製造方法において、
前記第2の半導体層の堆積と共に又は堆積後に、前記第2の半導体層の電気的接触形成が接触部により行われ、その接触部は、前記第2の半導体層が前記第1または第3の半導体層に対する変更された層レイアウトによって側面に配置された接触部上に共に堆積されることによって、前記第3の半導体層との直接の電気的接触を生じない
ことを特徴とする電流制御素子の製造方法。
【請求項14】
請求項から12のいずれか1項に記載の有機発光ダイオードの製造方法であって、
・アノードとエミッタとの間において電子輸送層が第1及び第2の正孔輸送層間に堆積され、
または
・エミッタとカソードとの間において正孔輸送層が第1及び第2の電子輸送層間に堆積される
有機発光ダイオードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体素子及びその製造方法に関する。具体的には、本発明は、電流制御素子、有機発光ダイオード、電流制御素子の製造方法および有機発光ダイオードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体の分野において、電荷キャリアとしての電子を輸送するため電子輸送層、また電荷キャリアとしての正孔を輸送するため正孔輸送層が使用されるべきことは知られている。両電荷キャリアを使用する部品、例えばダイオード構造において、正孔の流れ又は電子の流れは、それぞれの輸送層の層厚によって、又はそれぞれの輸送層のドーピングによって影響される。それに代えて又はそれに加えて、適切な電子注入層又は正孔注入層が輸送層に前置されることが可能である。1つの種類の電荷キャリアの輸送を妨げたり最低限に抑えるために、正孔又は電子をブロックするバリア層を使用することも可能である。
【0003】
有機発光ダイオードは、有機半導体からなるダイオード構造に対する従来技術の1つの例である。有機の電界効果トランジスタ、太陽電池又は光検出器においても、上述の層厚、ドーピング、注入層又はバリア層のような因子によって、電荷キャリアとしての電子又は正孔の極めて異なる影響の問題が生じる。これらのすべての有機半導体部品においては、その製造に応じて部品を流れる全電流の流れについての正孔の分担分又は電子の分担分が確定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、1つの種類の電荷キャリアの流れを変調可能である素子を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、重なり合った有機半導体層を有する電流制御素子であって、
第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層との間に電子輸送層が配置されている電流制御素子において、
前記第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層との間の電子輸送層が変調層として形成されており、
前記変調層は変調電圧のため、前記第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層の少なくとも一方に対して変調層が変更された層レイアウトによって側面に配置された接触部を有し、前記変調電圧を用いて前記変調層を介する変調電流の流れを生じさせることが可能であり、前記変調電流の流れを介して、前記第1の正孔輸送層から前記第2の正孔輸送層への変調層を通る部品電流の流れが制御可能である
電流制御素子によって解決される(請求項1)。
また、本発明によれば、重なり合った有機半導体層を有する電流制御素子であって、
第1の電子輸送層と第2の電子輸送層との間に正孔輸送層が配置されている電流制御素子において、
前記第1の電子輸送層と第2の電子輸送層との間の正孔輸送層が変調層として形成されており、
前記変調層は変調電圧のための、前記第1の電子輸送層と第2の電子輸送層の少なくとも一方に対して変調層が変更された層レイアウトによって側面に配置された接触部を有し、前記変調電圧を用いて前記変調層を介する変調電流の流れを生じさせることが可能であり、前記変調電流の流れを介して前記第1の電子輸送層から前記第2の電子輸送層への変調層を通る部品電流の流れが制御可能である
電流制御素子によって解決される(請求項)。
電流制御素子に関する本発明の実施態様は次の通りである。
・前記有機半導体層は垂直の積層体に積み重なっている(請求項)。
・前記積み重なった半導体層の間にヘテロ接合が形成されているか、又は前記半導体層間に真正の中間層が配置されている(請求項)。
・前記変調層がこの変調層の半導体材料における少数電荷キャリアの拡散長より薄い層厚を有する(請求項)。
・前記変調電圧は、前記変調層と前記第1の正孔輸送層および/または前記第1の電子輸送層とに印加され、前記輸送層の半導体材料における多数電荷キャリア及び前記変調層の半導体材料における少数電荷キャリアである制御すべき電荷キャリアが前記第1の輸送層から前記変調層へ動かされる(請求項)。
・ドーピングされた輸送層、特に0.01vol%と10vol%との間のドーピング濃度を有する輸送層を備える(請求項)。
・ドーピングされた変調層、特に0.01vol%と10vol%との間のドーピング濃度を有する変調層を備える(請求項)。
前述の課題は、本発明によれば、本発明による電流制御素子を有する有機発光ダイオードによっても解決される(請求項)。
有機発光ダイオードに関する本発明の実施態様は次の通りである。
・前記有機発光ダイオードの演色性が前記変調電圧の印加によって変更可能である(請求項10)。
・少なくとも2つの発光層、特に異なる色の光を放出する発光層からなる発光領域を有する(請求項11)。
・前記変調電圧の印加によって効率が変更可能である(請求項12)。
前述の課題は、本発明によれば、電流制御素子の製造方法であって、第1の有機半導体層上に先ず第2の有機半導体層及び続いて第3の有機半導体層が垂直に重なり合うように堆積され、前記第1及び第3の半導体層に対しては同じ種類の多数電荷キャリアを有する材料が用いられ、前記第2の半導体層に対しては前記の材料とは異なる種類の多数電荷キャリアを有する材料が用いられる電流制御素子の製造方法において、
前記第2の半導体層の堆積と共に又は堆積後に、前記第2の半導体層の電気的接触形成が接触部により行われ、その接触部は、特に前記第2の半導体層が前記第1および/または第3の半導体層に対する変更された層レイアウトによって側面に配置された接触部上に共に堆積されることによって、前記第3の半導体層との直接の電気的接触を生じない
電流制御素子の製造方法によっても解決される(請求項13)。
前述の課題は、本発明によれば、本発明による有機発光ダイオードの製造方法であって、
アノードとエミッタとの間において電子輸送層が第1及び第2の正孔輸送層間に堆積され、および/または、エミッタとカソードとの間において正孔輸送層が第1及び第2の電子輸送層間に堆積される
有機発光ダイオードの製造方法によっても解決される(請求項14)。
【0006】
本発明に従う装置は、積み重なった半導体層を有する電流制御素子である。積み重なった有機半導体層は、第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層との間に配置された電子輸送層および/または第1の電子輸送層と第2の電子輸送層との間に配置された正孔輸送層である。有機半導体層はとりわけ垂直に重なっている。本発明の有利な実施形態においては、有機半導体層は垂直の積層体に積み重なっている。少数電荷キャリアに対する一つの輸送層、この輸送層を囲む複数の輸送層を組み込むことは、多数電荷キャリアの流れを制限する利点がある。
【0007】
電子の移動度が正孔の移動度より極めて高く、それ故電子輸送が主電流の流れを形成する有機半導体が電子輸送体と呼ばれる。正孔の移動度が電子の移動度より高く、それ故正孔輸送が主電流の流れを形成する半導体が正孔輸送体と呼ばれる。基本的には両方の種類の電荷キャリアが有機半導体中には存在し、多数電荷キャリアと少数電荷キャリアとに区別される。
【0008】
本発明の有利な実施形態においては、積み重なった半導体層間にヘテロ接合が形成されている。すなわち、電子輸送層は第1の正孔輸送層及び第2の正孔輸送層に対しそれぞれヘテロ接合を形成し、また電子輸送層の間の正孔輸送層は電子輸送層に対しそれぞれヘテロ接合を形成している。このことは、比較的低い駆動電圧の薄膜部品として実現し得る利点を有する。
【0009】
本発明の別の有利な実施形態においては、第1の正孔輸送層と第2の正孔輸送層との間の電子輸送層および/または第1の電子輸送層と第2の電子輸送層との間の正孔輸送層が、変調層として形成されている。ここで変調層とは、この層が電荷キャリアを変調する責任を負っていることを意味する。その場合電子輸送層によって、第1の正孔輸送層から第2の正孔輸送層への正孔輸送が変調され、正孔輸送層によって、第1の電子輸送層から第2の電子輸送層への電子輸送が制御される。変調層として形成されるとは、半導体層が変調電圧に対する接触部を有することを意味する。この接触部を用いて、変調電圧が印加されることにより変調層を介して変調電流の流れが発生される。この変調電流の流れは、第1の正孔輸送層又は第1の電子輸送層から第2の正孔輸送層又は第2の電子輸送層へそれぞれの変調層を介して流れる部品電流の流れを制御する。この部品電流の流れはしたがって変調電流によって変調可能である。この実施形態はとりわけ、変調電圧を介して、全電流の流れに対する1つの種類の電荷キャリアの電流の流れを変更することができるという利点を有する。全電流は電子電流と正孔電流とから構成される。
【0010】
本発明の別の有利な実施形態においては、変調層は変調層の半導体材料における少数電荷キャリアの拡散長より小さい層厚を有する。小数キャリアの拡散長はしたがって層厚を最大層厚に制限する。最大層厚は、拡散長を介して印加電圧に依存する。電荷キャリアの拡散長Ldiffはすなわち電荷キャリアの移動度μに依存する。他方で有機半導体材料における電荷キャリアの移動度は、電界強度、すなわち印加電圧及び層厚に依存する。
【数1】
ここで、Dは拡散係数、τは寿命、kはボルツマン定数、Tは温度、qは電荷である。
【0011】
本発明の別の有利な実施形態においては、電流制御素子において、変調電圧が変調層と第1の正孔輸送層又は第1の電子輸送層とに印加されることにより、輸送層の半導体材料における多数電荷キャリア及び変調層の半導体材料における少数電荷キャリアである制御すべき電荷キャリアが第1の輸送層から変調層へ動かされる。この実施形態は、設置された変調層が電荷キャリアの流れを最小限に抑えるか又は抑制するのみならず、この電荷キャリアの流れを高めることもできるという利点を持っている。全電荷キャリアの流れ又は部品の電荷キャリアの流れ、したがって第1の輸送層から第2の輸送層へのそれぞれ変調層を介しての電流は、したがって変調層を介して流出する変調電流によって制御可能である。
【0012】
輸送層はドーピングされているのが好ましい。とりわけ、電荷キャリアの流れにおいて変調層の前に存在するそれぞれの第1の輸送層がドーピングされている。とりわけ、輸送層、特に第1の輸送層のドーピング濃度は0.01vol%と10vol%との間の値を有する。輸送層のドーピング濃度が50vol%未満にあると好ましい。輸送層は好ましくは20vol%未満にある。
【0013】
例えば変調層がドーピングされている。とりわけ、変調層は0.01vol%と10vol%との間のドーピング濃度を有する。変調層のドーピング濃度が50vol%未満にあると好ましい。好ましくは変調層のドーピング濃度は20vol%未満にある。
【0014】
本発明に従う電流制御素子は、好ましくは有機発光ダイオードに挿入されていることが可能である。これは、有機発光ダイオードにおける正孔電流および/または電子電流を別々に制御可能であるという利点を備えている。
【0015】
本発明の別の有利な実施形態においては、有機発光ダイオードは少なくとも一つの先に説明された電流制御素子を含み、有機発光ダイオードの演色性は変調電圧を印加することによって変更可能である。素子へ変調電圧が印加されることによって、正孔電流又は電子電流が制御されることが可能である。有機発光ダイオードの演色性は、電子および/または正孔が発光ダイオードの発光領域へ、それらが再結合する前にどの程度に入り込むかに依存している。
【0016】
本発明の特に有利な実施形態においては、有機発光ダイオードは、正孔電流を制御するため又は電子電流を制御するため少なくとも一つの電流制御素子を含み、また少なくとも二つの発光層からなる発光領域を有する。この発光層は特に異なる色の光を放出する。これは、電子電流又は正孔電流の制御によって、両発光層の1つにおける再結合の場所が移動せしめられ得るという利点を有する。
【0017】
本発明の別の有利な実施形態においては、有機発光ダイオードは少なくとも一つの電流制御素子を含み、有機発光ダイオードの効率は変調電圧の印加によって変更され得る。発光ダイオードの効率は、電流の流れあたりの光放出から生じる。その際、部品を貫く導電率が高められていることは必要ではなく、電子と正孔との間の電荷キャリアのバランスが重要である。発光領域において同じくらいの電子と正孔とが出会い、そこで再結合するときのみ、部品における電流の流れあたりの出力される光電流の高い効率が得られる。この電荷キャリアバランスは、個々の電荷キャリアの種類の電流の流れを制御し得る電流制御素子によって最適化することができる。特に、発光層に向かって電子輸送側並びに正孔輸送側の両側にそれぞれ本発明に従う電流制御素子が有機発光ダイオードに設置されている。
【0018】
本発明の別の有利な実施形態においては、有機発光ダイオードは2つの制御電流素子を含む。その内特に1つは電子輸送を制御するためカソードとエミッタ層との間に設けられている。正孔輸送を制御するための素子は特にアノードとエミッタ層との間に設けられている。電流制御素子が3つの有機半導体層を含むと好ましい。これらの半導体層は有機発光ダイオードにおいて輸送層として組み込まれることが可能である。とりわけ、1つの電流制御素子は電子電流の制御のために電子輸送層として使用される。正孔電流の制御のための電流制御素子は、例えば正孔輸送層として組み込まれることが可能である。それらの素子は、したがってそれぞれ適切な正孔または電子輸送層を含む。これらの層はしたがって、それぞれ他の種類の電荷キャリアの輸送に適した、したがってブロック層を演じる1つの極めて薄い層によって分割されている。この層はしかしながら、その層においては少数電荷キャリアである電荷キャリアが層を通して拡散し得るほどに薄いと好ましい。すなわち、変調層の層厚が変調層中の少数電荷キャリアの拡散長より小さいと好ましい。
【0019】
例えば、電荷キャリア変調のための電流制御半導体素子は論理回路の構成に適している。電子および/または正孔のための電荷キャリア変調体は、太陽電池の調整のために使用することができる。とりわけ、例えばパネル上の、複数の有機太陽電池の相互接続において、電流制御素子は太陽電池を互いに調整するために使用することができる。
【0020】
本発明に従う電流制御素子の製造方法は以下の工程を含む。すなわち、第1の有機半導体層上に、まず第2の有機半導体層が堆積される。その上に続いて第3の有機半導体層が堆積される。これらの半導体層はとりわけ互いに垂直に堆積される、すなわち半導体層は水平方向に延びており、互いに垂直に積み重ねられる。第1及び第3の半導体層については、その中を同じ種類の多数電荷キャリアが電気的に導かれる材料が用いられる。第2の半導体層については、第1及び第3の半導体層とは異なる種類の多数電荷キャリアを有する材料が用いられる。すなわち、したがって第1及び第3の有機半導体層が正孔導体であれば、その間には第2の半導体層として電子導体層が設けられる。第1及び第3の半導体層が電子導体であれば、その間に第2の半導体層として正孔輸送層が堆積される。個々の層は、例えばまた更にそれぞれ真正のドープされない有機半導体層によって分離されることも可能である。そのような中間層は例えば、ドーパントの相互反応を阻止するために設けることができ、それに従ってパッシベーションの作用を行う。
【0021】
この方法は、半導体層がヘテロ接合を形成するという利点を有する。部品の層の製造に対しては、パターニング法、例えば高価なリソグラフィプロセスは必要としない。
【0022】
製造方法の有利な実施形態においては、第2の半導体層の堆積と同時に又は堆積後直ぐに、第2の半導体層の接触部による電気的接触形成が生ぜしめられる。ここで接触部による接触形成とは、第2の半導体層がその僅かな層厚にも拘らず半導体層の堆積において、外部と例えば電源と接触形成され得る接触部を有することを意味する。この接触部は第3の半導体層と直接の電気的接触を生じていない。例えば、接触部による接触形成は、第2の半導体層が変更された層レイアウト、とりわけ第1および/または第3の半導体層に対する変更された層レイアウトによって、堆積されることにより達成される。第2の半導体層が結合される接触部は、とりわけ積層体に対し側面に配置されている。接触形成は特に、第2の半導体層が第1の半導体層及びそれに側面に配置された接触部上に堆積されるように行われる。このことは、場合によってあり得る中間工程又はパターニング工程なしに、有機半導体を迅速かつ簡単に積層する利点を有する。
【0023】
本発明の有利な実施形態において、その製造方法は電流制御素子を有する有機発光ダイオードの製造を含む。特に、有機発光ダイオードは複数の電流制御素子を含むことも可能である。好ましくは正孔電流の制御のための電流制御素子および/または電子電流の制御のための電流制御素子を有する有機発光ダイオードが作られる。その製造方法においては、アノードとエミッタ領域との間において電子輸送層が第1及び第2の正孔輸送層間に堆積される、および/またはエミッタ領域とカソードとの間において正孔輸送層が第1及び第2の電子輸送層間に堆積される。発光領域はこの場合少なくとも1つのエミッタを含む。したがって、電子輸送側には電子電流を制御する素子、および/または正孔輸送側には正孔電流を制御する素子が挿入される。これらの素子は、有機発光ダイオードにおいては特に電子輸送層ないし正孔輸送層に置き換え得る。アノードと電流制御素子との間には正孔注入層が存在し得る。同様に、カソードと電流制御素子との間には電子注入層が存在し得る。電子電流の制御のための電流制御素子とエミッタ領域との間には、さらに正孔ブロック層が存在し得る。本発明に従う電流制御素子は、電流抑制素子又は電流制限素子とも考えることができる。特に、その素子は電流で制御されるのみならず、また電流をも制御する。素子は1つの種類の電荷キャリアの電流を管理するのに適している。例えば、したがってかかる素子の製造の際、少なくとも1つの中間層が電子輸送層又は正孔輸送層へ組み込まれ、その中間層は電荷キャリアを導かない。即ち、先ず抑制層が挿入される。この抑制層はしかし今や1つの種類の電荷キャリアに対しては静止状態のバリアではなく、電気的に変えられ得る。この電気的変更はこの中間層への電圧の印加によってひき起こされ、抑制層を変調層へ変える。
【0024】
本発明に従う電流制御素子の根本的な機能の仕方は、まず正孔輸送制御のための素子に基いて説明される。第1及び第2の正孔輸送層に、従って部品の外側の層に、第1の正孔輸送層から第2の正孔輸送層へ正孔を輸送すべき電圧が印加されると、電子輸送層において正孔が過剰になる。これらの正孔は電子輸送層においては少数電荷キャリアであり、明らかに正孔輸送層におけるより伝わり方がよくない。それによって電荷キャリアの停滞が生じる。この過剰、すなわち電子輸送層における正孔の集積によって、部品内に電荷キャリアの濃度勾配が生じる。この電荷キャリア濃度勾配に基いて拡散電流が流れ、その結果正孔はさらに第2の正孔輸送体に伝えられる。第1の正孔輸送層に注入された正孔は、電子輸送体の強い電界によって加速される。
【0025】
好ましくは第1の正孔輸送層は高いドーピングを有する。このドーピングは特に0.01vol%と10vol%との間にある。ドーピング濃度はしかしたかだか20vol%、せいぜい50vol%にある。自由電荷キャリア濃度は、1015/cm〜1019/cmの範囲に得られる。変調層、すなわち正孔輸送層間の電子輸送層もドーピングを有することができる。このドーピングは特に正孔輸送体と同じ濃度範囲にある。
【0026】
変調層、例えば2つの正孔輸送層間の電子輸送層であって、その層厚が変調層における少数電荷キャリア特にしたがって電子輸送層における正孔の拡散長より小さいものを有する素子の実施形態が目的にかなっている。変調層の僅かな厚さは、素子が正孔又は電子変調のために組み込まれる有機部品を本質的には厚くしないという付加の利点を有する。例としてあげれば、通常1nm〜10000nmの範囲にある電子又は正孔輸送層を有する有機発光ダイオードに使用する場合、変調層は本質的に部品厚をより高くすることに寄与しない。特に輸送層がドーピングされる場合、全部品にかかる電圧はほんの少し高められるだけである。したがって、有機発光ダイオードの効率は引続き保たれる。
【0027】
電子電流の調整又は制御のために、2つの電子輸送層とその間に配置された正孔輸送層とを有する本発明に従う電流制御素子を用いることができる。その半導体層の間には再びヘテロ接合が形成されている。両電子輸送層間に外部電圧が印加されると、第1の電子輸送層から第2の電子輸送層への電子輸送が行われる。この電子輸送は、その間に配置された正孔輸送層が存在することによって減少されるか阻止される。第1の電子輸送体及び正孔輸送層、したがって変調層に変調電圧が印加されることによって、電子は第1の電子輸送体から正孔輸送層を介して流出する。したがって、正孔輸送層中に形成される電子バリヤは減少し、増大した電子電流が第1の電子輸送体から第2の電子輸送体へ流れる。電子電流のできるだけ良好な伝導率を保証するために、とりわけ第1の電子輸送層において高い電荷キャリア密度に留意しなければならない。この高い電荷キャリア密度は例えば層の適切な高いドーピングを介して保証される。第1の電子輸送層のドーピング濃度はとりわけ0.01vol%と10vol%との間である。このドーピング濃度はしかしたかだか50vol%である。好ましくはドーピング濃度は20vol%より小さい。変調層として利用される正孔輸送層における再結合が行われるのを阻止するため、正孔輸送層の厚さが正孔輸送材料における電子の拡散長より小さく選ばれると好ましい。正孔輸送層ないし変調層もまた高くドーピングされるのが好ましい。特に、変調層においてドーピング濃度は0.01vol%と10vol%との間にある。
【0028】
変調電圧が印加されていないと、部品駆動電圧の場では変調層は制限層又は阻止層を形成する。この変調層は、輸送層内に設置されて、電荷輸送を阻止する。このことは特に、電荷キャリアがその輸送に適していない変調層に集まりたまることに起因する。抑制層においてこの電荷キャリアがたまることは、変調電圧を印加することによって、ないしはそれによって生じる変調電流によって阻止ないし低減することができる。電荷キャリアは特に変調電圧により変調層を経由して流出し、第1の輸送層から第2の輸送層へ各変調層を経由する電流の流れを助長することになる。変調電流はしたがって部品を通る電流の流れを制御する。
【0029】
本発明の実施形態が実例を挙げるやり方で図1〜5に関して説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】正孔変調体を示す。
図2】電子変調体を示す。
図3】層厚及び拡散長をプロットした線図を示す。
図4】正孔変調体を有する有機発光ダイオードを示す。
図5】電子変調体を有する有機発光ダイオードを示す。
図6】電子変調体及び正孔変調体を有する有機発光ダイオードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
すべての図は全く模式的であり、縮尺どおりの図を表わすものではない。
図1に示される正孔変調体(正孔変調器)10は、重なり合って配置されている3つの有機半導体層から構成される。このような3層系の製造のために、正孔輸送体htである第1の層上に、電子輸送層etである第2の層及び正孔輸送層htである第3の層が堆積される。したがって、2つの正孔輸送層ht、htの間に電子輸送層etがある。この電子輸送層etは変調層を形成する。3つの有機半導体層はそれぞれ接触形成し得るようになっている。第1の正孔輸送層htは、電圧源Uを介して第2の正孔輸送層htに接続されている。電圧供給Uを介して、外側の両正孔輸送層ht、htに電圧Uを印加することができる。この電圧Uは、第1の正孔輸送層htから変調層etを通って第2の正孔輸送層htへの正孔輸送が行われるように印加される。第1の正孔輸送層htは別の接触部を介して第2の電圧源Uと、さらにこの電圧源を介して電子輸送層etに接続されている。したがって、電子輸送層つまり変調層et及び第1の正孔輸送層htには別の電圧Uが印加される。
【0032】
電子輸送層etは、高ドーピングされたn型層である。この変調層etを介して、第1の正孔輸送体htから第2の正孔輸送体htへの正孔電流が制御される。電子輸送層etにおいてここでは少数電荷キャリアである正孔が過剰のために、そしてそれと結び付く濃度勾配のために、拡散電流が流れ、その結果正孔は第2の正孔輸送体htに運ばれる。第1の正孔輸送層htに注入された正孔は、電子輸送体etの強い電界中で加速される。第1の正孔輸送体htは好ましくは高ドーピングされており、その結果高い正孔伝導率が存在する。これによって、正孔電流を変調するための正孔変調体の特性が改善される。ドープされていない有機輸送材料における自由電荷キャリアの数は、たいてい極めて少なく、10から10/cmの範囲にある。ドーピングは、自由電荷キャリアの数が1015から1019/cmの範囲に10桁ほど高められるように選ばれる。そのため0.01vol%〜50vol%の範囲のドーピング濃度が使用される。
【0033】
電子輸送層つまり変調層etの厚さdは、この場合正孔である少数電荷キャリアの拡散長Ldiffより小さくなければならない。拡散長Ldiffは、自由電荷キャリアの電荷キャリア移動度μと寿命τとから決定することができる。
【0034】
例えば電子輸送材料はAlq(トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム)である。Alqにおける電界依存の正孔移動度μは次の大きさである。
【数2】
【0035】
自由電荷キャリアの寿命τが50nsの仮定のもとでは、Alq変調体層の層厚dについて最大値は10nmとなる。この値は、Alqの正孔移動度μと、電荷キャリアの寿命τと、印加された変調電圧Uに正比例する電界とから算出される。
【0036】
図2には電子変調体(電子変調器)が示されている。これは再び3つの有機半導体層から構成されている。この有機半導体層は垂直に重なり合って配置されており、その結果電流の流れは垂直に部品を通り抜ける。第2の電子輸送層etの上部に正孔輸送層htが配置されている。さらにその上に第1の電子輸送層etが配置されている。これら3つの層は、それぞれ電子輸送層から正孔輸送層への大面積の接触部が作り出されるように重なり合っている。正孔輸送層htはその層厚dが電子輸送層et、etより著しく薄い。正孔輸送層htは電子の流れに対する変調層の役目をする。2つの外側の電子輸送層et、etには電圧Uが印加され、その結果第1の電子輸送体etから第2の電子輸送体etへ向かう、すなわち正孔輸送層htを通る、電子の流れが発生する。この正孔輸送層はしかしながら先ずバリアの役目をする。電子輸送層etは別の接触部を備え、その結果第1の電子輸送層etと正孔輸送変調体層htとの間に電圧Uが印加され得る。この電圧が印加されると、第1の電子輸送体etから正孔輸送体htを経由する電子の流れが発生する。電圧Uを高めることによって、変調体層htのバリア特性が低下する。したがって、第1の電子輸送体etから正孔輸送体htを経由する電流の流れを介して、第1の電子輸送体etから第2の電子輸送体etに至る全電流の流れを制御することが可能である。
【0037】
電子変調体の構成はしたがって、正孔変調体の構成と同様に、2つの電子輸送層et、et及びその間に配置された正孔輸送層htとの3層系の垂直配置で行われる。電子変調体層htのできるだけ良好な特性を保証するため、電子輸送層における高い電荷キャリア密度が顧慮されなければならない。そのため、とりわけ第2の電子輸送層etが高くドープされる。正孔輸送層ht、したがって電子変調体の変調体層、における電荷キャリアの再結合を阻止するために、変調体層の層厚dは、その層厚が材料中の電子、すなわち変調体層中の少数電荷キャリアの拡散長Ldiffを越えないように再び薄くされなければならない。その際しばしば高い電荷キャリア移動度μが高い拡散長Ldiffを伴う。
【0038】
電子変調体における変調体層として使用し得る正孔導体の1つの例は、α−NPD(N,N’−ディ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン)である。α−NPDにおける電界依存性の電子移動度μは次のとおりである。
【数3】
【0039】
この正孔輸送層の最大層厚は、電子移動度μ、寿命τおよび変調体電圧Uに正比例する印加電界から算出される。再び自由電荷キャリアの寿命τが50nsと仮定すると、変調体層の層厚dの最大値は100nmと算出される。
【0040】
電子輸送材料についての例は次の通りである。
・ 2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンジミダゾール)
・ 2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−タート−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール
・ 2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
・ 8−ヒドロキシキノリノラート−リチウム
・ 4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール
・ 1,3−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン
・ 4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
・ 3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−タート−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール
・ ビス(2−メチル−8−キノリノラート)−4−(フェニルフェノラート)アルミニウム
・ 6,6’−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2’−ビピリジル
・ 2−フェニル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)−アントラセン
・ 2,7−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン
・ 1,3−ビス[2−(4−タート−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン
・ 2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
・ 2.9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
・ トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン
・ 1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾール[4,5f][1,10]フェナントロリン
【0041】
これらの電子輸送材料の電子伝導率を高めるために、これらの材料はドーピングされていることが可能である。
【0042】
ドーピング材料に対する例は次のとおりである。
・ Li、Na、K、Cs、Ca、Mg、Sr、Ba又はSmのようなアルカリ金属、アルカリ土金属、ラントドイド
・ 電子伝導率を高める無機塩:CaCO
・ W(TBD)、Mo(TBD)のような強い還元性の金属有機錯体、この場合TBDは1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デク−5−エンのアニオンである。
又は
・ Mo(CO)又はW(Co)のような金属(O)錯体
【0043】
正孔輸送材料の例は次の通りである。
・ N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン
・ N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン
・ N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン
・ N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−2,2−ジメチルベンジジン
・ N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン
・ 2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン
・ N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン
・ N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン
・ N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン
・ N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチルフルオレン
・ N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン
・ ジ−[4−(N,N−ジトリル−アミノ)−フェニル]シクロヘキサン
・ 2,2’,7,7’−テトラ(N,N−ジ−トリル)アミノ−スピロ−ビフルオレン
・ 9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ビフェニル−4−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン
・ 2,2’,7,7’−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン
・ 2,7−ビス[N,N−ビス(9,9−スピロ−ビフルオレン−2−イル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン
・ 2,2’−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン
・ N,N’−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン
・ N,N,N’,N’−テトラ−ナフタレン−2−イル−ベンジジン
・ 2,2’−ビス(N,N−ジ−フェニル−アミノ)−9,9−スピロビフルオレン
・ 9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン
・ 9,9−ビス[4−(N,N’−ビス−ナフタレン−2−イル−N,N’−ビス−フェニル−アミノ)−フェニル]−9H−フルオレン
・ 酸化チタンフタロシアニン
・ 銅フタロシアニン
・ 2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン
・ 4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン
・ 4,4’,4”−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン
・ 4,4’,4”−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン
・ 4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)トリフェニルアミン
・ ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル
・ N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)ベンジジン
・ 2,7−ビス[N,N−ビス(4−メトキシ−フェニル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン
・ 2,2’−ビス[N,N−ビス(4−メトキシ−フェニル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン
・ N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンゼン−1,4−ジアミン
・ N,N’−ジ−フェニル−N,N’−ジ−[4−(N,N−ジ−トリル−アミノ)フェニル]ベンジジン
・ N,N’−ジ−フェニル−N,N’−ジ−[4−(N,N−ジ−フェニル−アミノ)フェニル]ベンジジン
【0044】
さらにまた、トリス(フェニルピリジナート)イリジウム(III)のような金属有機錯体又は同種の化合物が正孔輸送材料として適している。
【0045】
これらの正孔輸送材料の正孔伝導率を高めるために、これらの材料はドーピングされていてもよい。ドーピング材の例は次の通りである。
・ 正孔伝導率を高める無機の塩又は酸化物:MoO、WO、ReO、FeCl
・ Rh(OCCF、又はRu同属化合物のような強くリューイス酸作用をする金属有機錯体
・ F−TCNQのような有機アクセプター分子
【0046】
図3は、変調層et、htの最大層厚dmaxの算出を説明する線図を示す。横軸には変調体層et、htの層厚de/hが画かれている。変調体層厚de/hは1×10−10mと1×10−6mの間の大きさである。縦軸には変調体層et、htにおける少数電荷キャリアの拡散長ldiffが画かれている。少数電荷キャリアの拡散長ldiffは、1×10−10mと1×10mとの間である。この線図においては、まず変調体層厚値de/hが画かれている。それに加えて、小数キャリアの拡散長ldiffが変調体層et/htの層厚de/hに依存して画かれた。層厚de/hの依存性は、拡散長ldiffないし電荷キャリア移動度μの電界依存性によってもたらされる。
【0047】
変調体層etm、htmの最大層厚dmaxは、線図においては破線とdmaxとによって明らかにされている。dmaxより小さい層厚mに対して、実施可能な電荷キャリア変調体を実現することができる。dmaxの上にある層厚dBに対しては、複数の正孔輸送層又は複数の電子輸送層の内の1つの電子輸送層又は1つの正孔輸送層がバリア層を形成し、この層は印加された電圧に無関係に電荷バリアを形成し、電荷の流れを抑制ないし減少させる。
【0048】
図4においては、正孔変調体10を有する有機発光ダイオード30の模式的構成が示されている。その積層体は下方から上方へ向かって先ず基板31を示し、この基板は例えばガラス基板である。ガラス基板31上にはアノード32が設けられている。アノードは好ましくは透明で、例えばインジウム錫酸化物から成る。ガラス基板31上の透明のアノード32を通して、有機発光ダイオード30において生じる光が部品から出射することが可能である。光の出射50は矢印で示されている。アノード32上には正孔注入層hiが設けられている。その上には正孔変調体10、すなわち第1の正孔輸送層ht1、その上の電子輸送層etm、そしてさらにその上の第2の正孔輸送層ht2が存在する。変調体電圧Uhは電子輸送層etm及びアノード32に印加されている。正孔変調体10の上方には発光領域40が続く。発光領域40は複数のエミッタ層から構成することができる。例えば正孔輸送体ht2上に赤色発光層43、緑色発光層32が、さらにその上に青色発光層41が続く。この発光領域40において電荷キャリアの再結合45が生じるのが好ましい。再結合領域45は正孔及び電子電流によって移動可能である。したがって、発光領域40に到達する電子と正孔との比に応じてエミッタ層41−43の1つにおける再結合が増加するように行われる。エミッタ層41−43の上方には例えば正孔ブロック体hbが続く。その上には電子輸送層etが堆積されている。その上には電子注入層eiが設けられている。その上方にはカソード33が存在する。カソード33及びアノード32には部品を駆動するための電圧Udが印加されている。電圧Udは、カソード33においては電子が部品内へ注入され、アノード32においては正孔が部品内へ注入されるように印加される。注入層及び電子輸送層ei、etを通ってエミッタ層41−43へ流れる電子電流Ieは、カソード33から再結合中心45へ向けた矢印によって示されている。正孔電流hmは、同様にアノード32から正孔変調体層10を通り再結合領域45までの矢印で示されている。再結合領域45に到達する正孔電流hmは、正孔変調体10を介して調整可能である。
【0049】
図5には再び有機発光ダイオード30が示されている。このダイオードは再び有機半導体層からなる積層体を含み、それらの半導体層はカソード33とガラス基板31上のアノード32との間に存在する。1つの矢印が再び透明のアノード32及び透明基板31を通る光出射50を示す。この基板31及びアノード32に有機層が続く。すなわち、先ず正孔注入層hi、その上に正孔輸送体htである。それに例えば3つのエミッタ層43、42、41を有する発光領域40が続く。エミッタ層41−43の上方には例えば正孔ブロック体hbが配置されている。正孔ブロック体の上方には電子輸送領域が存在する。この領域は電子変調体20である。すなわち、正孔ブロック体層hb上にはまず第2の電子輸送体et2、その上に電子の変調のための正孔輸送体htm、そしてその上に第1の電子輸送体et1が配置されている。電子変調体20の上方にはさらに電子注入層eiがカソード33の下方で存在する。カソード33及びアノード32には再び部品電圧Udが印加されている。この電圧dは、カソード33から有機発光ダイオードへの電子の流れemが生じ、またアノード32から有機発光ダイオードへの正孔輸送hmが行われるように印加される。カソード33及び正孔輸送変調体層htmには、変調体電圧Ueが印加されている。この電圧は方向に関して、カソード33から電子注入層ei及び第1の電子輸送層et1を通り正孔変調体htmへの電子が生ずるように印加される。電圧Ueが印加されることにより、電子輸送層et1/et2内の正孔輸送体htmのバリア特性が低下し、その結果電子電流の流れemが高められる。そうして変調された電子注入電流emは、カソード33から発光層40の方向への矢印で示唆されている。正孔輸送hmは、アノード32から発光層40の方向へ行われ、また矢印によっても示されている。電子と正孔とが出会うところで、電荷キャリアの再結合45が起こり得る。この場所は、正孔に対する電子の比によって影響を受けやすい。電子変調によって、発光領域40内の再結合領域45はそれぞれ異なる発光層41−43へ移動され得る。
【0050】
最後に図6には、再び電子変調体20及び正孔変調体10を有する有機発光ダイオード30が示されている。すなわち、有機半導体層の積層体は、正孔変調体10、電子変調体20及び発光層系40を含む。正孔変調体は再び正孔注入層h上に、そしてこの注入層は再びガラス基板31上のアノード32上に設けられている。正孔変調体10の上方には発光層40が存在し、その上方には正孔ブロック体hbが存在し、そしてその上には電子変調体20が存在する。カソード33から有機発光ダイオードへの電子注入は、カソード33と電子変調体20との間に配置された電子注入層eを介して行われる。電荷キャリアを変調するためには、カソード33及びアノード32に部品電圧Uが印加され、さらに正孔変調体10の電子輸送層etの間に正孔変調電圧U、加えて電子変調体20の正孔輸送層htに電子変調電圧Uが印加される。有機発光ダイオード30においては、個々の電荷キャリアを発光層40へ的確に閉じ込めるために、カソード側に正孔ブロック体hb、アノード側に電子ブロック体を組み込むことができる。
【符号の説明】
【0051】
ht 第1の正孔輸送層(正孔輸送体)
ht 第2の正孔輸送層(正孔輸送体)
et 電子輸送層(変調層)
et 第1の電子輸送層(電子輸送体)
et 第2の電子輸送層(電子輸送体)
ht 正孔輸送層(変調層)
電子輸送層
電子輸送層(変調層)の層厚
正孔輸送層(変調層)の層厚
max 変調層の最大層厚
変調層の最大層厚より小さい層厚
変調層の最大層厚より大きい層厚
diff 少数電荷キャリアの拡散長
正孔注入層
電子注入層
ht 正孔輸送体
hb 正孔ブロック体
電圧源
電圧
電圧
電圧源
電圧
電子電流
正孔電流
10 正孔変調体
20 電子変調体
30 有機発光ダイオード
31 基板
32 アノード
33 カソード
40 発光領域
41 発光層(エミッタ層)
42 発光層(エミッタ層)
43 発光層(エミッタ層)
45 再結合領域
50 光出射
図1
図2
図3
図4
図5
図6