【文献】
Joneja A1, Huang X. ,A device for automated hydrodynamic shearing of genomic DNA.,Biotechniques. ,2009年 6月,46(7),p.553-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記剪断領域は、前記試料が前記剪断領域を通って流れると同時に、40kbp〜1Gbpの平均核酸サイズから約5kbp〜約20kbpの平均核酸サイズへの前記試料中の核酸の断片化を生じさせるように構成される、請求項1に記載の装置。
前記流入部分及び前記チャネルは、前記試料の大部分が前記剪断領域を通って流れる間、前記剪断領域の進入口で比較的一定の容積流量を維持するように配置構成される、請求項1に記載の装置。
前記流入部分及び前記チャネルは、前記試料の大部分が前記剪断領域を通って流れる間、前記剪断領域の進入口の容積流量を初期容積流量の約50%以内に維持するように配置構成される、請求項5に記載の装置。
前記流入部分及び前記チャネルは、前記試料の大部分が前記剪断領域を通って流れる間、前記チャネル容積の少なくとも5倍の試料容積を有する試料に対して、前記剪断領域の進入口で比較的一定の圧力を維持するように配置構成される、請求項1に記載の装置。
前記剪断領域のうち前記試料と接触する部分は、ガラス、サファイア、ルビー、金属又はセラミックのなかの少なくとも1つを含む材料から形成される、請求項1に記載の装置。
前記剪断領域は、前記試料が前記剪断領域を通って流れると同時に、40kbp〜1Gbpの平均核酸サイズから約5kbp〜約20kbpの平均核酸サイズへの前記試料中の核酸の断片化を生じさせるように構成される、請求項16に記載の装置。
前記第1の向きは、遠心機の回転中心から離れる方向を向く第1の端部と、前記遠心機の回転中心に向かう方向を向く第2の端部と、を含み、前記第2の向きは、前記遠心機の回転中心から離れる方向を向く前記第の2端部と、前記遠心機の回転中心に向かう方向を向く前記第1の端部と、を含む、請求項16に記載の装置。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、米国特許出願公開第2006/0133957号明細書に記載されるものなどの従来の剪断装置の性能が比較的低くなるのは、少なくともある程度は、剪断領域で試料流体の適切な圧力及び/又は流量が確立されないためであり得ることを認識した。すなわち、本発明者らは、オリフィスにおける剪断の働きが、少なくともある程度は、オリフィスにおける流体の圧力及び流体の流量並びに剪断オリフィスのサイズなどの他のパラメータに依存することを見出した。剪断オリフィスの圧力及び/又は流量が不十分である及び/又は変動すると、剪断性能が低下し、例えばDNA、RNA等の核酸分子の剪断に一貫性がなくなり、そのため核酸断片が所望のサイズより大きくなること又は望ましい分布の核酸断片が得られないことが見出された。従来の剪断装置では、所望の結果をもたらすために不完全に剪断された材料を剪断オリフィスに数回、例えば最大10〜20回通さなければならないため、非効率な剪断によって剪断プロセスは複雑化し得る。
【0006】
本発明の態様は、分子の効率的な剪断を提供するため、剪断オリフィス(例えば進入口)に適切な圧力、流量及び/又は他のパラメータを確立して維持するように動作する核酸(例えば、DNA、RNA)などの分子の剪断方法及び装置を提供する。例えば、本発明の態様における一部の実施形態は、当初のサイズが約40kbp〜ゲノムサイズの核酸(例えば、数Mbp、最大1Gbpのサイズ)の範囲である核酸分子(例えば、DNA、RNA)を、ある場合には剪断装置を通る1回のパスから、得られる核酸断片のサイズが約5〜20kbpとなるように剪断することを提供する。核酸分子の剪断は、適切な試料材料が入った剪断装置を遠心機に置き、続いて遠心機中の装置をスピンさせることにより実施され得る。遠心機により生じる力が、試料材料を装置の1以上の剪断領域を通して動かす駆動力を提供し得る。一部の実施形態では、剪断装置は2以上の剪断領域を備えてもよく、それにより例えば、剪断断片の90%以上が10kbpより小さいサイズ(例えば、約5kbp)である完成試料など、均一なサイズの剪断断片を有する最終生成物が提供され得る。
【0007】
一部の実施形態では、処理装置における剪断領域の進入口の圧力は、例えば処理装置の流入口及びチャネルの構造の結果として、試料の大部分が剪断領域を通って流れる間、比較的一定であるように確立されて維持される。ある場合には、剪断領域の進入口の圧力は、試料の大部分が剪断領域を通って流れる間、初期圧力の約40%以内に維持され得る。一部の実施形態では、流入口の断面積は、チャネルの断面積より実質的に大きくてもよい。一部の実施形態では、流入口の容積は、チャネルの容積より実質的に大きくてもよい。チャネルと比較して流入口の断面積及び/又は容積が大きいため、流入口における剪断オリフィスに対する表面レベル高さが比較的変化しないまま、試料が剪断オリフィスを通って流れることが可能になり得る。このように表面レベル高さの変化が比較的小さいことは、剪断オリフィスにかかるヘッド圧を比較的一定に維持するのに役立ち、剪断作用の向上に役立ち得る。
【0008】
一部の実施形態では、剪断装置に導入された核酸の剪断は、核酸を有する試料材料を剪断領域に通す動きを2回以上生じさせることにより、2回以上実施されてもよい。例えば、遠心機をアクチュエータとして使用して、試料材料を剪断領域に通して流してもよい。続いて、遠心機から剪断装置を取り出して反転させ、反転した配置で遠心機に戻してもよい。剪断装置を再度遠心力に供すると、試料材料が剪断領域を通って逆戻りし、それにより試料材料にさらなる剪断力が加わり得る。従って、好適な剪断装置は、遠心機で処理され、続いて反転され、次に再び遠心機で処理され得る。かかる処理スキームを必要に応じて何回でも用いることができる。
【0009】
従って、本発明の態様はまた、核酸及び/又は他の材料を望ましいサイズ範囲及び分布の核酸サイズに断片化するために用いられる処理装置及び方法にも関する。処理装置は、核酸を含む試料を受け入れる流入口と、試料が流入口から剪断領域を通って好適に流れると同時に試料中の核酸を断片化する剪断領域と、を含む。剪断領域の幾可学的形状により、ある核酸濃度の試料が適切な速度及び/又は圧力で流入口から剪断領域を通って流れると、試料に剪断力が加わって核酸間の結合が破壊される。一部の実施形態では、流入口は、剪断領域の剪断オリフィスと流体連通するチャネルを有し得る。このチャネルは、オリフィスの試料をほぼ一定の又は他の望ましい流量又は圧力とするように構成され得る。例えば、チャネルの形状は、剪断領域に対するヘッド高さを比較的一定に維持しながら試料流体を剪断領域に誘導する働きをする好適な漏斗状であってもよい。チャネルより上側の流入口の部分は、チャネルと比べてサイズ、例えば断面積が大幅に大きくてよく、それにより比較的広範囲の試料容積について、オリフィスより上側の試料のヘッド高さが維持され得る。処理装置はまた、剪断領域から断片化された核酸を受け取る回収部分も含む。
【0010】
流入口から剪断領域を通って回収部分に入る核酸を含む試料の流れを生じさせるため、1以上の処理装置がフローアクチュエータと組み合わされてもよく、フローアクチュエータが発生する力により、処理装置の剪断領域を好適な速度で通る試料の流れが生じる。一部の実施形態では、フローアクチュエータは、試料をポンプと接触させることなく処理装置を通る試料の流れを生じさせる力を生成する。例えば、フローアクチュエータは、剪断領域を通して試料を流れさせる圧力を流入口に作り出す遠心機又は空気(若しくは他の気体)ポンプであってもよい。従って、フローアクチュエータが遠心機である場合、処理装置の流入口、剪断部分及び回収部分は、遠心機の中に置かれてそこで用いられるように配置構成される。
【0011】
本発明の別の態様では、試料中の核酸を断片化するシステム及び方法が記載され、ここでは試料の全容積が剪断領域を通して流される。例えば、処理装置を遠心機で用いるように適切に構成することにより、処理装置の流入口に提供される試料の全容積が剪断領域を通って回収領域へと送り込まれ得る。従って、試料中の核酸の断片化完了時に発生し得る試料の損失は、ごく僅かであるか又は全くない。これは、剪断オリフィスを通る試料の流れをシリンジポンプの動作によって生じさせるいくつかの剪断構成とは対照的である。かかる装置では、試料の一部がシリンジポンプの「デッドスポット」及び/又は剪断領域に捕捉され、なぜなら、単純に、シリンジ機構では全ての試料をシリンジから押し出して剪断領域に通すことができないためである。別の態様では、既存の剪断構成で必要であろう処理時間と比べて短い時間で試料中の核酸が所望の平均核酸サイズに処理され得る。例えば、ある初期平均核酸サイズを有する核酸を含む試料が、初期平均核酸サイズの半分以下の(例えば、50kbpから5〜20kbpに至るまでの)最終平均核酸サイズへと、1分未満又はさらには30秒未満で断片化され得る。一部の実施形態では、処理装置の剪断領域を1回通って流れるだけの核酸を含む試料が、核酸の最終平均核酸サイズが試料の初期平均核酸サイズの半分以下となるように剪断され得る。
【0012】
本発明の他の態様は、処理装置の幾可学的形状、例えば剪断領域又はその近傍における装置の幾可学的形状に関する。一部の実施形態では、処理装置の剪断領域は、試料が剪断領域を通って流れる方向に実質的に垂直な角度を形成する壁(例えば、内壁又は外壁)を有する進入口部分を含む。一部の実施形態では、処理装置の流入口の一部分が、試料の所望の圧力、流量又は他のパラメータを維持するように漏斗形である。例えば、処理装置の流入口は、流入口の遠位端領域の断面積より大きい断面積の進入口領域を有することができ、ここで流入口の遠位端は装置の剪断領域へと通じる。流入口の遠位端は、剪断オリフィスへと通じるチャネルを備え得る。チャネルは、オリフィスを通る試料の流れの大部分について、オリフィスを通る試料の流れが好適な流量範囲内にとどまるように構成された導管を提供し得る。一部の実施形態では、試料の大部分が処理装置を通って流れる間、流入口及びチャネルが剪断オリフィスに対して一定の試料高さを維持し得ることで、剪断オリフィスに比較的一定の所望の圧力が生じ、剪断オリフィスを通る好適な流量が促進される。
【0013】
例示的な実施形態において、試料中に含まれる核酸を断片化する処理装置が提供される。この装置は、核酸を含む試料を受け入れる流入部分と、流入部分と流体連通するチャネル容積を有するチャネルと、チャネルと流体連通する剪断領域であって、試料が剪断領域を通って流れると同時に試料中の核酸を断片化するように構成された剪断領域において、流入部分及びチャネルは、試料の大部分が剪断領域を通って流れる間、その試料の容積がチャネル容積の少なくとも2倍である場合に、剪断領域の進入口に比較的一定の圧力を維持するように配置構成される、剪断領域と、剪断領域と流体連通し、剪断領域から断片化された核酸を含む試料を受け取る回収部分と、を含み、ここで流入部分、チャネル、剪断領域及び回収部分は、フローアクチュエータと共に使用することで、核酸を含む試料を流入部分からチャネル及び剪断領域を通して回収部分へと動かすように配置構成される。一部の実施形態では、流入部分及びチャネルは、試料の大部分が剪断領域を通って流れる間、その試料の容積がチャネル容積の少なくとも4、5、6、8、10倍又はそれ以上である場合に、剪断領域に至る進入口に比較的一定の圧力を維持するように構成され得る。
【0014】
別の例示的な実施形態において、試料中に含まれる核酸を断片化する処理装置が提供される。この装置は、核酸を含む試料を受け入れる流入部分と、流入部分と流体連通する剪断領域であって、試料が剪断領域を通って流れると同時に試料中の核酸を断片化するように構成された剪断領域と、剪断領域と流体連通し、剪断領域から断片化された核酸を含む試料を受け取る回収部分と、を含み、ここで流入部分、剪断領域及び回収部分は、遠心機において第1の向き又は第1の向きに対して反転させた第2の向きのいずれかで用いるように形成及び構成される。
【0015】
さらなる例示的な実施形態において、試料中に含まれる核酸を断片化する方法が提供される。この方法は、核酸を含む試料を少なくとも1つの処理装置の流入部分に提供するステップと、試料を少なくとも1つの処理装置の剪断領域を通して第1の方向に流れさせるステップと、試料が剪断領域を流れるときに試料中の核酸に剪断力を加えて核酸を断片化するステップと、核酸に剪断力が加えられる処理時間の大部分にわたって、剪断領域に至る進入口で比較的一定の圧力を維持するステップと、断片化された核酸を含む試料を回収領域に回収するステップと、を含む。
【0016】
さらに別の例示的な実施形態において、試料中に含まれる核酸を断片化する方法が提供される。この方法は、核酸を含む試料を少なくとも1つの処理装置の流入部分に提供するステップと、遠心機が発生する力により試料を少なくとも1つの処理装置の剪断領域を通して流れさせるステップと、試料が剪断領域を流れるときに試料中の核酸に剪断力を加えて核酸を約10kbp未満の平均核酸サイズに断片化するステップと、断片化された核酸を含む試料を回収領域に回収するステップと、を含む。
【0017】
例示的な一実施形態において、核酸を断片化する処理装置が提供される。この装置は、核酸を含む試料を受け入れる流入部分と、流入部分と流体連通する剪断領域であって、試料が流入部分から剪断領域を通って流れると同時に、試料中の核酸を断片化するように構成された剪断領域と、剪断領域と流体連通し、剪断領域から断片化された核酸を含む試料を受け取る回収部分と、を含む。流入部分、剪断領域及び回収部分は、核酸を含む試料を流入部分から剪断領域を通して動かすために、遠心機において使用するように配置構成される。
【0018】
別の例示的な実施形態において、核酸を剪断して断片化された核酸を生じさせるシステムが提供される。このシステムは、少なくとも1つの処理装置とフローアクチュエータとを含む。少なくとも1つの処理装置は、核酸を含む試料を受け入れる流入部分と、剪断領域であって、試料が剪断領域を通って流れると同時に試料中の核酸を断片化するように構成された剪断領域と、剪断領域から断片化された核酸を含む試料を回収するための回収部分と、を含む。フローアクチュエータは、少なくとも1つの処理装置と組み合わされ、試料をポンプと接触させることなしに、少なくとも1つの処理装置の流入部分から剪断領域を通って回収部分に入る試料の流れを生じさせる力を発生するように構成される。
【0019】
別の例示的な実施形態において、核酸を断片化する方法が提供される。この方法は、核酸を含む試料を少なくとも1つの処理装置の流入部分に提供するステップと、試料をポンプと接触させることなく、試料を少なくとも1つの処理装置の剪断領域を通して流れさせるステップと、試料が剪断領域を流れるときに試料中の核酸に剪断力を加えて核酸を断片化するステップと、断片化された核酸を含む試料を回収領域に回収するステップと、を含む。
【0020】
さらに別の例示的な実施形態において、核酸を剪断することにより所望の平均サイズを有する核酸断片を生じさせるシステムが提供される。このシステムは、少なくとも1つの処理装置とフローアクチュエータとを含む。少なくとも1つの処理装置は、核酸を含む試料を受け入れ、試料容積を有する流入部分と、剪断領域であって、試料が剪断領域を通って流れると同時に試料中の核酸を断片化するように構成された剪断領域と、断片化された核酸を含む試料を回収するための回収部分と、を含む。フローアクチュエータは、少なくとも1つの処理装置と組み合わされ、全試料容積が流入部分から剪断領域を通って回収部分まで流れるような、少なくとも1つの処理装置の流入部分から剪断領域を通って回収部分に入る試料の流れを生じさせるように構成される。
【0021】
別の例示的な実施形態において、核酸を断片化する方法が提供される。この方法は、核酸を含み、試料容積を有する試料を少なくとも1つの処理装置の流入部分に提供するステップと、全試料容積を少なくとも1つの処理装置の剪断領域を通して流れさせるステップと、試料が剪断領域を流れるときに試料中の核酸に剪断力を加えて核酸を断片化するステップと、断片化された核酸を含む試料を回収領域に回収するステップと、を含む。
【0022】
さらに別の例示的な実施形態において、核酸を断片化する方法が提供される。この方法は、初期平均核酸サイズを有する核酸を含む試料を少なくとも1つの処理装置の流入部分に提供するステップと、少なくとも1つの処理装置の剪断領域を通る試料の流れを生じさせることにより、剪断領域を通って流れた後の試料の最終平均核酸サイズが初期平均核酸サイズの半分以下となるように、1分以下の範囲内で試料中の核酸を断片化するステップと、を含む。
【0023】
例示的な実施形態において、核酸を断片化する処理装置が提供される。この装置は、核酸を含む試料を受け入れる流入部分と、試料が剪断領域を通って流れる方向と垂直な角度をなす内壁を有する進入口部分を有する剪断領域であって、それにより試料が流入部分から剪断領域の進入口部分に流れ込むと同時に試料中の核酸を断片化する剪断領域と、剪断領域から断片化された核酸を含む試料を受け取る回収部分と、を含む。
【0024】
別の例示的な実施形態において、核酸を断片化する方法が提供される。この方法は、初期平均核酸サイズを有する核酸を含む試料を少なくとも1つの処理装置の流入部分に提供するステップと、少なくとも1つの処理装置の剪断領域を通る試料の流れを1回生じさせることにより、剪断領域を通って流れた後の試料の最終平均核酸サイズが初期平均核酸サイズの半分以下となるように、試料中の核酸を断片化するステップと、を含む。
【0025】
別の例示的な実施形態において、核酸を断片化する処理装置が提供される。この装置は、核酸を含む試料を受け入れる漏斗形流入部分であって、進入口領域と遠位端領域とを有する流入部分において、流入部分の進入口領域に規定される断面積が流入部分の遠位端領域に規定される断面積より大きい、流入部分と、流入部分の遠位端領域に隣接して配置される剪断領域であって、試料が流入部分から剪断領域を通って流れると同時に試料中の核酸を断片化するように構成された剪断領域と、剪断領域から断片化された核酸を含む試料を受け取る回収部分と、を含む。
【0026】
上記は本発明の非限定的な概要であり、本発明は添付の特許請求の範囲によって定義される。他の態様、実施形態、特徴は、以下の説明から明らかとなるであろう。
【0027】
添付の図面は一定の縮尺で描くことを意図したものではない。図面では、様々な図に示される同一の又はほぼ同一の構成要素のそれぞれが、同様の参照符号で表される。明確にするため、各図面の全ての構成要素に符号が付されるとは限らない。
【0028】
本発明の利点及び特徴は、添付の図面と併せて考慮するとき、以下の詳細な説明からより明確に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書で考察される態様においては、図を参照しながら例示的な実施形態が記載されることが理解されなければならない。記載される実施形態は、必ずしも本発明のあらゆる態様を示すことを意図したものでなく、むしろいくつかの例示的な実施形態を記載するために用いられる。従って、本明細書で考察される態様が、それらの例示的な実施形態をふまえて狭義に解釈されることは意図されない。加えて、記載される態様は、単独で用いられても、又は同様に記載される他の態様との任意の好適な組み合わせで用いられてもよいことが理解されなければならない。
【0031】
所望の平均核酸サイズ範囲を有する核酸(例えば、DNA、RNA)を断片化して回収するために用いられる処理装置を含むシステム及び方法が記載される。例えば、比較的大きいサイズの核酸(例えば、約40〜50kbpを始端とし、ゲノムサイズの核酸、数Mbp、1Gbp等の範囲にまで及ぶサイズの核酸)を含む溶液を、約5kbp〜約20kbpの範囲(例えば、約20kbp未満、約10kbp未満)の中程度のサイズの核酸に断片化することができる。ある場合には、核酸は、5kbpを下回る平均サイズまで断片化することができる。かかる結果が、核酸断片化に使用される従来のシステムで典型的に起こり得る多くの欠点を呈することなしに見出され得る。一部の実施形態では、核酸を含む試料(例えば、溶液、乳剤、懸濁液等)は、処理装置の流入部分に導入される。試料に力が加えられ、それにより、試料に剪断力を加えて核酸を望ましい形で断片化するのに好適な幾可学的形状を有する装置の流入部分から剪断領域を通る試料の流れが生じる。
【0032】
一部の実施形態では、試料が剪断領域を通って流れると、初めに試料が処理装置に導入されたときに試料中に含まれた初期平均核酸サイズ(例えば、48〜50kbp)のほぼ半分以下である最終平均核酸サイズ(例えば、5〜20kbp、1〜10kbp、5〜10kbp)に核酸が断片化される。一部の実施形態では、初期平均核酸サイズは、実質的であり、数Mbp程度(例えば、ゲノム又は染色体サイズの核酸)であってよい。様々な実施形態において、かかる大きい核酸もまた好適に望ましい核酸サイズまで断片化され得る。一部の実施形態では、核酸を含む試料は遠心機が発生する力に供され、それにより処理装置の流入口から剪断領域を通る試料の流れが生じ、核酸の断片化が引き起こされる。
【0033】
好適な試料は核酸以外の材料を含み得る。一部の実施形態では、試料は細胞を含み、ここで細胞は、試料が処理装置の特定の領域、例えば剪断領域を通って流れるときに溶解される。試料中の細胞は、試料が処理装置の他の部分を通って流れるとき、例えば、試料が流入口からチャネルに流れる間、又はチャネルから回収部分に流れる間にも溶解され得る。試料は、他の化学的又は生物学的材料、例えばタンパク質、脂質、合成ポリマー、乳剤、懸濁液、又はその他の、巨大分子を含む好適な配合物を含み得る。
【0034】
一態様において、核酸の試料は、初期平均核酸サイズから最終平均核酸サイズへと、既存の剪断機器で可能な処理と比べてより効率的に処理される。一部の実施形態では、試料を流入部分から剪断領域を通して動かして試料中の核酸を断片化する力が加えられるのは1分未満又は30秒未満であり、所望の平均サイズに断片化された核酸を有する試料が取り出される。流入口から剪断領域を通る処理装置を通じた流れは複数回生じさせてもよいことは理解されなければならないが(例えば、剪断領域を通って戻る流れを生じさせるような往復作動又は処理装置の反転により)、しかしながら場合によっては、剪断領域を通る流れは1回のみ生じさせる。処理装置の流入口から剪断領域を通る試料の流れを1回のみ生じさせる場合、所望の平均核酸サイズ及び分布、例えば初期平均核酸サイズの半分以下である核酸サイズが回収され得る。
【0035】
高速の核酸断片化を提供するシステム及び方法が記載されるのみならず、考察される態様は、試料損失のない核酸断片化方法を提供する。一部の実施形態では、処理装置の流入口に最初に導入される試料の全容積が処理装置の領域を通って流れ、断片化プロセスの終了時には、所望の平均核酸サイズを有する全容積が回収領域に回収される。
【0036】
処理装置110の例示的な実施形態を
図1A〜
図2に示す。この実施形態において、処理装置110は、
図1Aに示す内側部分10と、
図1Bに示す外側部分100とを含み、ここで内側部分10は、
図2に示す処理装置110の組み立て時に外側部分100内に置かれるように構成される。
【0037】
図1Aの実施形態に示されるとおり、処理装置110の内側部分10は流入口と剪断領域とを含む。この実施形態において、流入口は、チャネル30に連結された流入部分20を含み、剪断領域は、チャネル30に連結された剪断オリフィス40を含む。流入部分20、チャネル30及び剪断オリフィス40は、試料が流入部分のいかなる特定の領域にも留まることなく、流入部分からチャネルを通って剪断オリフィスに流れ込み得るような方法で接続されてもよい。例えば、
図4A及び
図4Bに関連して後述するとおり、流入部分20及びチャネル30は、試料の一部が溜まったり、又は処理装置を通るその流れが他の形で妨げられたりする可能性が低減されるように構成され得る。流入部分20は進入口領域22を有し、この進入口領域22は、例えばピペット又は他の液体操作装置を介して受け取った、核酸を含む試料を受け入れるのに好適である。一部の実施形態では、流入部分20は、ピペット先端又はピペット先端と同様の構造である。
【0038】
一部の実施形態では、チャネル30は、剪断オリフィス40の進入口に所望の圧力が生じるように構成される。剪断オリフィス40の進入口の圧力は、チャネル30内に置かれた試料の剪断オリフィス40に対する高さに比例し得る。一部の実施形態では、装置の部分の寸法は、断片化プロセスの大半にわたりチャネル30が満たされたままであるように決められる。従って、剪断オリフィス40に対するチャネル30及び流入部分20の試料の高さは比較的一定のままであり、すなわち試料高さは大きくは(例えば、40%未満しか)変化しない。試料が剪断オリフィスを通って流れるときの試料の剪断オリフィス40に対する高さを比較的一定に維持することにより、剪断オリフィス40の進入口に確立される圧力もまた比較的一定となり得る。結果として、剪断オリフィスに至る進入口の圧力の差は、流入部分20及びチャネル30が試料で完全に満たされている場合、チャネル30のみが試料で満たされ、流入部分20は空である場合と比較して、僅かな大きさであり得る。
【0039】
図3A及び
図3Bが上記に記載される現象を示し、ここで処理装置は試料12を含む。
図3Aに示されるとおり、試料12の高さhは、チャネル30の長さLをほんの距離dだけ越えて延在し、ここで距離dはチャネル30の長さLと比べてかなり小さい。例えば、チャネルの長さLは、距離d又は流入部分それ自体の高さより2倍超、3倍超、5倍超、又は10倍超大きくてもよい。図を一定の縮尺で描く意図はないことが理解され得るとおり、流入部分20の容積はチャネル30の容積より実質的に大きくてもよい。同様に、流入部分の、例えば進入口22並びに他の領域における断面積は、チャネルの断面積より実質的に大きくてもよい。従って、試料が処理装置を通って動くとき、高さhは徐々に低下する。従って、チャネル30が試料で満たされたままである一方、高さhは引き続き距離dと比べてかなり大きく、チャネルを通って動く試料の量に比して、高さhは比較的一定のままであり、すなわち高さが大幅に変化することはない。
【0040】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるとおり試料の高さhが比較的一定のままである場合、流入部分20が空になる前の高さhの変化は、初期試料高さの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、又は10%未満である。試料高さhが比較的一定のままであるため、剪断領域40の進入口42の圧力もまた比較的一定のままである。
図3Bは、試料の実質的な量(例えば、最初に流入口に入れられた試料の大部分)が剪断領域を通って流れ去り、流入部分20が本質的に空になった場合を示す。結果として、試料高さhはチャネル30の長さLとほぼ等しい。従って、チャネルの断面積及び/又は容積は流入部分の断面積及び/又は容積と比べてかなり小さいため、少なくとも試料高さがチャネル長さLに等しくなるまでは、試料高さhは実質的に一定のままであり得る。
【0041】
上記に示唆されるとおり、様々な実施形態において、流入部分の断面積(例えば、流入口の断面積のその高さにわたる平均としての及び/又は進入口近傍での、若しくはチャネル流入口近傍の流入部分における遠位領域での)は、チャネルの断面積より実質的に大きくてもよい。例えば、流入部分の断面積は、チャネルの断面積より5倍超、10倍超、20倍超、50倍超、又は100倍超大きくてもよい。一部の実施形態では、流入部分の容積(例えば、試料を受け取るように意図される容積)は、チャネルの容積より実質的に大きくてもよい。例えば、流入部分の容積は、チャネルにより囲まれる容積より2倍超、5倍超、10倍超、20倍超、50倍超、又は100倍超大きくてもよい。かかる構造により、試料の大部分が剪断領域を通って流れる間の試料高さの低下が極めて緩徐となり、比較的一定の試料高さ並びに剪断領域に至る進入口における比較的一定の圧力の双方がもたらされ得る。別様に考えれば、かかる構造により、流入部分での試料の表面の流速又は他の形での流入部分内における流速が、剪断領域又はチャネル内の試料の流速と比べて実質的に小さくなり得る。
【0042】
一部の実施形態では、チャネルが満たされ且つ流入部分が満たされている場合、チャネルが満たされていて流入部分が空である場合と比較して剪断オリフィスの進入口に生じる圧力の差は、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、又は約15%未満である。他の実施形態において、チャネルのみが試料で満たされている場合の剪断オリフィスの進入口の圧力は、装置がチャネルの容積の少なくとも2、4、5、6、8、10倍又はそれ以上の容積の試料を保持しているときの剪断オリフィスにおける初期圧力の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、又は約15%未満だけ異なり得る。他の実施形態において、流入部分の断面積のチャネル長さに対する比が最小化され、それにより試料が流入部分から引き込まれることに伴う剪断オリフィス流入口における圧力変化が最小化され得る。ある場合には、流入部分の断面積の対チャネル長さ比は、約1.0又はそれ以上であってもよい。当然ながら、流入口断面積の対チャネル長さ比、異なる試料容積対チャネル容積比に基づく圧力差の比、流入部分の対チャネル断面積比等を、任意の好適な方法で単一の実施形態に共に組み合わせてもよい。従って、剪断領域の進入口の圧力は、試料の大部分が流入口から剪断領域を通って流れる間、比較的一定のままであり得る。
【0043】
チャネル上流から剪断オリフィスまでが満たされている場合(すなわち、流入部分が満たされている状況又は空である状況を含む)、好適な圧力が剪断オリフィスの進入口領域で比較的一定となるように確立及び維持され得る。一部の実施形態では、剪断オリフィスに通じるチャネルが試料材料で満たされているとき、剪断オリフィスの進入口の圧力は、約10psi〜約150psi、約15psi〜約100psi、約20psi〜約50psi、又は約25psi〜約40psiの範囲である。剪断オリフィスの進入口におけるこれらの範囲外の他の圧力もまた可能である。
【0044】
本明細書に記載される装置の特定の領域が極めて小さい圧力変化しか示さないという能力を説明するため、高さが3mm、流入口直径が9mmの、約200マイクロリットルの容積を保持することが可能なシリンダ状の流入部分と、長さが10mm、開口直径が1.5mmの、約17マイクロリットルの容積を保持することが可能なシリンダ状のチャネルと、を有する例示的な処理装置を考える。ここで流入部分及びチャネルは、4500gの遠心機が発生する力に供される。この例では、流入部分が空で、チャネルが試料で満たされているとき、剪断領域の進入口の圧力は約28psiである。しかしながら、流入部分及びチャネルの両方が試料で満たされると、183マイクロリットルの試料容積の増加に相当するが、剪断領域の進入口の圧力は35psiまでしか増加しない。従って、処理装置がさらに183マイクロリットルの試料で満たされたことを考えれば、かかる7psiの最小限の圧力増加は無視し得る程度と考えられる(すなわち、圧力は約25%しか変化せず、比較的一定のままである)。従って、動作時、183マイクロリットルの試料が剪断領域を通って流れても、剪断領域の進入口の圧力は約35psiから約28psiまでを変化するに過ぎず、比較的一定のままである。しかしながら、流入部分の試料が空になると、試料がチャネルを通り、剪断領域を通って急速に流れるため、圧力は急速に降下し、しかしこの圧力変化を受けるのは約17マイクロリットル未満の試料、全試料容積の約10%未満、に過ぎない。従って、この実施形態では、処理装置は、試料の容積がチャネルの容積の約12倍超大きい場合の試料の大部分について、剪断領域の圧力を約25%以内の変動に維持するように構成される。また、流入部分の断面積の対チャネル長さ比は、この例では約6.4である。
【0045】
他方で、流入部分20はチャネル30より大幅に大きいサイズ、容積又は他の形態を有してもよく、従って試料が流入部分20から引き込まれても、チャネル30における試料のヘッド高さは比較的一定のままである。例えば、流入部分20は、進入口22がより大きいサイズ、例えば断面積で(例えば、内径が約10mm以下)、且つチャネル30近傍がより小さいサイズ、例えば断面積である漏斗様の形状を有し得る。先述のとおり、従って流入部分20は、試料が処理される間、流入部分20における試料の高さが徐々に低下するように及び/又は比較的小さく変化するように構成され得る。例えば、チャネル30における試料の高さが流入部分20における試料の高さと比べてかなり大きくてもよく、次に流入部分20がチャネル30より大きい容積であってもよく、それにより、試料が剪断領域40を通って動くとき、試料が流入部分20から引き込まれることに伴うオリフィス40に対する試料の全高h(すなわち、チャネル30及び流入部分20における高さ)の変化が比較的小さくなる。従って、上記に考察したとおり、試料の処理中に流入部分20における試料の高さが緩徐に低下する一方、チャネル30内に置かれる試料の高さは比較的一定のままとなり、オリフィス40にほぼ所望の圧力及び/又は流量が提供され得る。処理装置の流入部分の外径は約15mm未満、約11mm未満であってもよく、及び/又は装置を遠心機に嵌まり得るような外径であってもよい。流入部分の内径は、流入部分に沿った位置によって異なってもよく、例えば、流入部分の進入口の近傍は、流入部分がチャネルに連結される領域と対照的であってもよい。流入部分の内径は10mm未満であってもよく、又は約9mm〜約1mmの範囲であってもよく、若しくはそれ未満であってもよい。一部の実施形態では、流入部分の内径は、可能な限り多くの試料容積を保持する一方で、剪断領域におけるチャネルの圧力変動を最小限に抑えるように形成される。一部の実施形態では、流入部分の中に保持される試料の容積は約50マイクロリットル〜約500マイクロリットルの範囲である。
【0046】
剪断オリフィス40は、任意の好適な構成を有してもよく、例えば、ルビー、サファイア又は他の適切な材料で形成された宝石をちりばめた構造(jeweled structure)であってもよい。剪断オリフィスは、好適なオリフィス内径、例えば、約10ミクロン〜約100ミクロン、約50ミクロン〜約100ミクロン、又は約10ミクロン〜約50ミクロンの直径を有し得る。剪断オリフィスはまた、約1mm〜約50mm、又は約5mm〜約20mmの長さなどの、任意の好適な長さを有し得る。しかしながら、剪断オリフィス40について他のサイズ又は構成が可能である。ある場合には、剪断オリフィスは、例えば1mm以下の外径の薄い剛性部材であってもよく、これは使用者が剪断オリフィスを操作するときに危害を及ぼす可能性がある。一部の実施形態(図に明確には示されない)では、かかる装置を操作し得る使用者の保護を高めるため、剪断オリフィスの周囲にスカート部分などの保護領域が提供されてもよい。
【0047】
一部の実施形態では、オリフィスを組み込む剪断領域はルビーディスク及びガラス毛管を含み、これらは直列に配置され、ディスクの中心にシリンダ軸cに沿って延在する穴を有する。ルビーディスク及び/又はガラス毛管は、任意の好適な外側厚さt、例えば約50ミクロン〜約500ミクロンの外側厚さを有し得る。例えば、ある実施形態では、ルビーディスクは約250ミクロンの外側厚さを有し、ガラス毛管は約100ミクロンの外側厚さを有する。ある実施形態では、ディスクの中心を通って延在する穴は、30ミクロンの直径を有する。ルビーディスク及び/又はガラス毛管は、約1mm〜約50mmの長さなど、任意の好適な長さを有し得る。ある実施形態では、ガラス毛管は5〜20mmの長さである。再び
図1Aを参照すると、処理装置110の外側部分100の実施形態が図示され、これは例えば管の形態であってよい。外側部分100は、任意の好適な材料及び/又は物品、例えば内側部分10を挿入するための進入口領域102を含む。外側部分100はまた支持体104a及び104bも含み、これらは内側部分10の設置に対応するのに好適な内幅W及び幾可学的形状を有する。回収領域50が外側部分100の底部に位置し、これは、試料が処理装置の他の領域を通って流れた後、試料(例えば、断片化されたDNAの溶液)を蓄積するのに好適である。一部の実施形態では、外側部分100は微量遠心管である。例えば、標準的な1.5mL又は2mL微量遠心管が、処理装置の外側部分として用いられてもよい。
【0048】
図2は、
図1A及び
図1Bの構造的な実施形態を図示し、ここでは内側部分10が外側部分100内に挿入されている。例えば、内側部分10は、内側部分10の流入部分20の縁部が外側部分100の支持体104a及び104bに当接して支えられるまで、進入口102から外側部分100に入れられる。支持体104a及び104bはあくまでも例であり、内側部分10の流入部分20及び剪断領域を任意の好適な方法で処理装置の外側部分100と関連付け得ることは理解され得る。例えば、内側部分10が適切なサイズのリップを有し、そのリップが外側部分100の好適な構造を有する進入口領域102と係合してもよい。或いは、内側部分10と外側部分100とは、接着剤、スナップ嵌め、ファスナ、ヒートシール/超音波シール又は他の好適な取り付け方法により共に連結されてもよい。一部の実施形態では、処理装置の内側及び外側部分は共に製造され、別個の挿入ステップを必要としない。例えば、フローアクチュエータ(例えば遠心機)と適切に組み合わせることのできる流入部分、チャネル、剪断領域及び回収部分を有する処理装置が、単一のモノリシック装置として提供されてもよい。従って、処理装置の内側及び外側部分は一体形成されてもよい。
【0049】
処理装置の部分は、任意の適切な方法によって互いに取り付けられ得る。例えば、流入部分20がチャネル30に取り付けられてもよく、チャネル30がさらに剪断領域に取り付けられてもよい。例えば、接着剤、スナップ嵌め、ファスナ、ヒートシール/超音波シール又は他の好適な方法など、任意の適切な取り付け方法を用いて処理装置の内側部分を共に取り付けることができる。ある場合には、流入部分20の形状が、流入部分のチャネルとの及びチャネルの剪断領域との連結を促進し得る。例えば、流入部分が、スナップ嵌め又は締まり嵌めなどの構成用の、隣接するチャネルの進入口領域32の対応する形状と係合するのに好適な遠位端領域24の形状を有してもよい。或いは、遠位端領域24は、例えば、単純に隣接するチャネルの進入口領域32の断面積と同様の断面積を有することで、接着剤による取り付けを促進してもよい。同様に、チャネルと剪断領域とが任意の好適な方法で連結され得る。装置のなかで共に連結されて流体連通する部分は十分に封止され(例えば、ガスケット、Oリング、真空プレス等)、試料の漏出なしに試料が処理装置を通じて流れることが可能となり得る。
【0050】
例示的実施形態において、核酸を含む試料は進入口22から流入部分20に導入される。場合によっては、図に示されるとおり、流入部分は漏斗形であり、試料の流入口への容易な進入、及び続く試料の流れの剪断領域への誘導が促進される。従って、装置をこのように限定するものではないが、漏斗形流入部分は流入部分の遠位端領域24の断面積より大きい断面積の進入口領域22を有してもよく、遠位端領域が剪断領域へとつながり得る。
【0051】
図4A〜
図4Cに例示される実施形態において、流入部分20は、試料が流入部分20の様々な領域に捕捉される可能性を最小限に抑えるような方法でチャネル30につながっている。すなわち、全試料が流入部分からチャネル30を通って剪断オリフィス40へと自由に流れる。
図4Aでは、チャネル30は開口34aを有し、この開口34aは、試料材料が詰まって流入部分とチャネルとの間を容易に流れることができない「デッドスポット」範囲が生じないように、流入部分20の遠位領域と好適に係合する。さらに、このチャネル30の遠位部分は、剪断オリフィス40により規定される断面積より大きい断面積を有する。
図4Bでは、チャネル30の開口34bは、剪断オリフィス40の直径と同様のサイズ及び形状の断面積を有する遠位部分を有する。従って、試料材料は、開口34bと剪断オリフィス40との間を、いかなる特定の箇所にも捕捉されることなく流れることができる。好適な実施形態は、流入部分とチャネルとの間、又はチャネルと剪断オリフィスとの間に滑らかな構造の移行部を有する必要はない。実際、ある場合には、チャネルと剪断オリフィスとの間など、様々な領域間における急激な移行部が、核酸及び/又は他の分子の剪断、ひいては断片化の向上をもたらす構造を提供する点で有利であり得る。
【0052】
図4Cに示されるとおり、
図4Aの処理装置は、一般に遠心機に設置することに関連する所定の角度(例えば、45度)で配置される。遠心機を作動させると、処理装置が回転軸Aの周りに回転する。それに従い、試料が破線の方向付き矢印F
1によって図示される流入部分20を通り、破線の方向付き矢印F
2によって示されるとおりチャネル30へと流れ込む。チャネル30の開口34により、流入部分からチャネルを通って剪断オリフィス40へと流れ易くなる。一部の実施形態では、チャネル30の遠位端領域及び剪断オリフィス40に至る進入口の幾可学的形状は、試料が剪断オリフィスを通って流れる方向(破線の方向付き矢印F
4によって指示される)に実質的に垂直な角度を有する内壁を含む。従って、チャネルから剪断オリフィスへの試料の流れは急激に変化し、剪断効果の増強がもたらされる。場合によっては、剪断オリフィスに至る進入口のかかる壁がオリフィスの外部に位置決めされてもよい。試料が剪断オリフィス40に至る進入口を通り、剪断領域の残りの部分を通って流れるとき、核酸を含む試料に対し、核酸を断片化する形で剪断力が加わる。
【0053】
図4Cに示されるような構成の剪断オリフィス40の圧力は、試料流体の密度(ρ)、遠心機の角速度(ω)、回転軸(A)からの剪断オリフィスの半径(r)、及び剪断オリフィスより上側の流体の高さ(h)を含むいくつかのパラメータに依存し得る。一実施形態において、圧力(P)は以下の式により求められる。
【数1】
【0054】
オリフィス40を通る流量は、オリフィスに至る進入口の圧力(P1)、オリフィスの出口の圧力(P2)、オリフィスの内径(D1)、オリフィスの外径(D2)、及び密度(ρ)を含むいくつかのパラメータに依存し得る。一実施形態において、流量Qは以下の式により求められる。
【数2】
【0055】
従って、遠心機適用における流量(及びオリフィスにおける分子の剪断)は、遠心機の角速度、オリフィスの直径、回転軸からのオリフィスの半径及びオリフィスに対する試料の高さに依存する。角速度、オリフィスの直径及びオリフィスの半径は、全て厳密に制御することができ、必要であれば一定にしてもよい。オリフィスに対する試料高さのみが変動し得ることから、従って剪断のより厳密な制御を維持するため、理想的には流入口(例えば、流入部分及びチャネル)は、処理中にオリフィスに対する試料ヘッド高さが可能な限り一定に維持されるように構成される。
図1Aに例示されるような構成では、チャネル30の容積が比較的小さく、且つ試料が流入部分20から引き込まれるときの試料高さの変化を最小限に抑えるように流入部分20が構成される場合、オリフィスにおける高さ(ひいては試料圧力)は比較的一定となり得る。また、チャネル30の容積が比較的小さいと、試料の他の部分より低い圧力で比較的少量の試料のみがオリフィスに押し通され得る。
【0056】
試料中の核酸が処理前の元の核酸サイズの半分以下の平均核酸サイズに断片化されることは、概して短時間で起こり得る。一部の実施形態では、核酸を含む試料に対して力(例えば遠心機又はポンプなどのフローアクチュエータからの)が加えられることで、処理装置の剪断領域を通る試料の流れが1回のみ引き起こされ、ここで試料の最終平均核酸サイズは、力を加える前の試料における初期平均核酸サイズの約半分以下である。しかしながら、本明細書で意図される特定の処理装置を通る流れは、例えば洗練された核酸サイズ分布を提供することにおいて、複数回生じさせ得ることは理解されなければならない。一部の実施形態では、核酸を含む試料を処理装置の剪断領域を通って流れさせる力が加えられるのは1分以下(例えば30秒以下)であり、試料の最終平均核酸サイズは、力を加える前の試料における初期平均核酸サイズの約半分以下である。
【0057】
初期平均核酸サイズを有する核酸を含む任意の好適な試料が処理装置に供給され得る。例えば、試料は、溶液中に含まれる核酸がある適切な濃度である溶液を含み得る。処理装置で断片化する前、核酸の試料は任意の好適な初期平均核酸サイズ、例えば約40kbp〜約50kbp(例えば、約48kbp)、約40kbp〜100Mbp、約40kbp〜1Gbp(例えば、ゲノムサイズの核酸程度)、約1Mbp〜100Mbp、約40kbp〜1Mbpを有し得る。核酸は、DNA、RNAなどの巨大分子、又は他の好適なヌクレオチドベースの化合物を含んでもよい。処理装置に導入される核酸を含む試料はまた、任意の好適な容積の試料であってよい。一部の実施形態では、試料容積は約50マイクロリットル〜約500マイクロリットルの範囲であり得る。
【0058】
処理装置内に配置された、核酸を含んでいる試料に加えられる力は、流入口(例えば、チャネルを含む)から剪断領域を通って回収領域に入る処理装置を通じた試料の流れを生じさせ得る。ある場合には、かかる力は試料に対し、シリンジ装置などのポンプを使用して、試料を処理装置の流入口から剪断領域を通して押し込む方法で加えられ得る。しかしながら、一部の実施形態では、流入口から剪断領域を通る試料の流れを生じさせるために試料に加えられる力は、試料をポンプ又はシリンジ装置と接触させることなく引き起こされる。例えば、処理装置が遠心機の適切な領域内に置かれてもよく、ここで遠心機により発生する力が装置に加えられると、それにより試料が剪断領域を通って回収部分に流れ込む。一部の実施形態では、空気によって発生する圧力を加えることにより、試料が流入口から剪断領域を通して流される。例えば、処理装置にガス圧供給源が好適に連結され、それが発生する力により剪断領域を通る試料の流れを生じさせてもよい。或いは、真空の負圧を用いて試料を剪断領域に通すこともできる。さらに、一部の実施形態では、処理装置の適切な動き又は撹拌により、流入口から剪断領域を通る試料の流れを生じさせる。例えば、処理装置が振動する動き又は他の適切な加速に供されてもよく、それにより剪断領域を通る試料の流れを生じさせてもよい。
【0059】
一部の実施形態では、処理装置の流入口に導入される全試料容積が剪断領域を通って流れ、及び回収部分で回収され得る。例えば試料を保持するシリンジを使用して試料を流入口から剪断領域を通してポンピングする従来の状況では、ごく一部の試料が少量の使用されない容積としてシリンジの試料との接触領域に残る。従って、シリンジを使用して試料を流入口から剪断領域を通してポンピングすると、最終的に処理後に回収できない部分的な試料損失が生じる。他方で、例えば、遠心機又は直接的な接触なしに好適な力を供給するポンプによるなど、試料のポンプとの接触が関与しない力を生じさせることにより、試料の全容積を流入口から剪断領域に通し、最終的には回収部分へと移動させて、処理済み試料を全て回収することが可能になる。
【0060】
処理済みの試料中の断片化された核酸は、所望の最終平均核酸サイズ範囲を有し得る。一部の実施形態では、処理済みの試料の最終平均核酸サイズは、約5kbp〜約20kbp、約5kbp〜約10kbp、約10kbp未満、約8kbp〜約20kbp又は約10kbp〜約20kbpの範囲である。ある場合には、核酸サイズが断片化される程度は、剪断領域を通る試料の流れを生じさせる試料に加えられる力(例えば、遠心機の速度又は剪断領域から遠心機の回転中心までの距離を変えることにより生成される)など、様々な要因に依存し得る。例えば、試料に加える力を増加させると、試料中の核酸に加わる剪断力が増加し、より小さい核酸断片が得られる。溶液中の核酸の濃度もまた、最終平均核酸サイズに寄与し得る。従って、場合によっては、溶液中の核酸濃度を高くすると、核酸が低速で断片化されるようになり、核酸断片の平均値が大きくなり得る。試料中の核酸濃度は、例えば、約5マイクログラム/ミリリットル〜約200マイクログラム/ミリリットルの間で異なり得るが、範囲又は分布がそのように限定されるものではない。一部の実施形態では、処理された核酸の断片サイズ分布は、約14倍未満、約7倍未満又は約2倍未満である。ある例では、約10.5kbpの平均核酸サイズについて、断片化された核酸のばらつきは約7倍〜約14倍である。
【0061】
処理装置を通る試料の流れは、任意の適切な速度で起こり得る。従って、試料に加えられる力が大きいほど、処理装置を通じて流れる試料の速度が高くなる可能性が高いが、速度は当然ながら、剪断領域におけるオリフィスサイズなどの他の要因に依存する。一部の実施形態では、処理中の所与の時点における処理装置を通じる試料の流量は、例えば、約3マイクロリットル/秒未満、約1マイクロリットル/秒〜約3マイクロリットル/秒、又は約1.5マイクロリットル/秒〜約2.5マイクロリットル/秒であり得る。一部の実施形態では、処理中の所与の時点における処理装置を通じる試料の流量は、例えば、約20マイクロリットル/秒未満又は約10マイクロリットル/秒〜約20マイクロリットル/秒であり得る。処理装置を通じる試料の他の流量が可能である。
【0062】
処理中の様々な時点における処理装置を通じる試料の流量は、任意の好適な程度に従い変化し得る。一部の実施形態では、試料の大部分が剪断領域を通って流れる間、処理装置を通じる試料の流量は比較的一定のままである。例えば、試料に対する処理時間の大部分にわたり、流量の変化が処理装置を通じる初期流量の約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約15%以下又は約10%以下である場合、処理装置を通じる試料の流量は一定の流量であると見なされ得る。
【0063】
処理装置は、使い捨てとして製造されてもよい。すなわち1回の使用で、試料が処理されて回収された後、装置は好適に取り除かれ得る。従って、使い捨ての処理装置が再利用される(又は洗浄して再利用される)ことがないため、試料間での交差汚染の可能性が大幅に低減される。
【0064】
剪断オリフィスは任意の好適な材料を含み得る。一部の実施形態では、剪断オリフィスは、ルビー、サファイア、ガラス、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ステンレス鋼、他の好適な材料又はそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、剪断オリフィスは、ポリイミドなどのコーティング材料を含む。例えば、コーティング材料を塗布すると、核酸が剪断オリフィスの表面に結合する可能性が特定のコーティングによって低くなり得るため、目詰まりする可能性が低下し得る。
【0065】
図5は、個別の処理装置110a、110b及び110cが適切に挿入される受け入れ領域210a、210b及び210cを有する遠心機200の例示的な実施形態を図示する。処理装置110a、110b及び110cの各々の中には、核酸を含むそれぞれの試料が入れられる。処理装置は、破線矢印によって示されるとおり、遠心機200の適切な受け入れ領域に挿入される。次に遠心機を作動させると力が発生し、その力により、装置のそれぞれの流入部分から剪断領域を通って回収部分に入る各処理装置中の試料の流れが生じる。
【0066】
遠心機は、処理装置を中に配置し得る受け入れ領域を任意の好適な数だけ有し得る。遠心機を作動させると、核酸を有する試料がそれぞれの処理装置の各々の剪断領域を通る流れを同時に引き起こす力が生じる。一部の実施形態では、
図5に示されるとおり、遠心機は10個の受け入れ領域を備える。他の実施形態において、遠心機は12個又はそれ以上の受け入れ領域を備える。従って、遠心機は、遠心機が有する受け入れ領域と同じ数の処理装置に対し、同時の核酸断片化をもたらす力を付与することが可能である。場合によっては、高速遠心機を使用して、記載される処理装置で核酸剪断を引き起こす力を発生させてもよい。例えば、好適な遠心機は、8000rpm以上、10000rpm以上、12000rpm以上、又は14000rpm以上の回転速度で力を発生し得る。
【0067】
核酸断片化用の記載される処理装置を組み込むシステム及び方法から、例えば、望ましい範囲及び分布の核酸断片サイズが得られること、交差汚染が解消されること、様々な異なる試料容積及び濃度を処理する能力を有すること、試料を同時に処理すること、試料損失がないこと、及び短い処理時間など、いくつかの利益がもたらされる。ここで、上記の利益を提供する処理装置の様々な実施形態を、既に考察した実施形態に加えて説明する。
【0068】
剪断領域は、試料が流れ得る剪断オリフィスを任意の好適な数だけ含むことができる。
図6に示される例示的な実施形態では、処理装置110の剪断領域は、直列構成で配置された2つの剪断オリフィス40aと40bとを含む。図に明確には示されないが、処理装置にさらに多くのチャネル及び/又は剪断オリフィスが含まれてもよいことは理解され得る。例えば、剪断オリフィス40aと40bとの間、又はそれらの下流に、1つ又は複数のチャネルが含まれてもよい。
【0069】
一部の実施形態では、処理装置はフィルタを含む。
図7は、処理装置110の流入部分20の中にフィルタ60が配置される例示的な実施形態を図示する。従って、フィルタ60は、試料が流入部分20から剪断領域へと流れるときの材料の汚染又は目詰まりを防止する働きをする。特定の材料はフィルタを通り抜けて流れることができないが、好適な流体試料はフィルタを通過して剪断領域に入り得る。遠心機を使用して流入口から剪断領域を通る試料の流れを引き起こす力を発生させる実施形態において、フィルタは、剪断領域の進入口近傍における試料の初期の流れを減速させる働きをし得る。従って、場合によっては、遠心機が定常状態の角速度に達していない時点では、流入口内に置かれた試料の大部分は剪断領域にまだ入っていない。場合によっては、フィルタ60はチャネル30より上側に配置され、又は核酸が効率的に剪断されるように、流入部分20内において、処理中に試料によって剪断オリフィス40の進入口に確立される圧力を妨害しない十分な高さに位置決めされる。一部の実施形態では、フィルタ60と剪断オリフィス40との間の距離は約5mm〜約20mmである。
【0070】
フィルタは任意の好適な方法によって流入口内に適切に位置決めされ得ることは理解され得る。一部の非限定的な例では、フィルタは、流入部分の遠位端領域に、剪断領域の進入口に隣接して、取り付けることなしに単純に置かれてもよく、又はフィルタは、接着剤又は取付け点により流入口又は剪断領域の一部分に取り付けられてもよい。
【0071】
一部の実施形態では、材料が流入部分の進入口領域から出たり、又はそこに入り込んだりすることを防ぐため、処理装置は蓋を含む。
図8は、処理装置110の流入部分20を覆って蓋106が置かれる例示的な実施形態を示す。蓋106は、任意の好適な方法、例えば、接着剤、スナップ嵌め、ねじ嵌め又は別の適切な取り付け具により、流入部分20に連結され得る。蓋106が流入部分20の進入口に適切に連結されると、蓋106は外部の材料が流入部分に入り込んで処理装置内の内容物が汚染されることを阻止する。蓋106はまた、装置が突然動くことにより液がはね散るなどして流入部分内の材料が取り除かれることを阻止する働きもする。
【0072】
上記に考察したとおり、剪断領域は1つ以上のチャネル及び/又は剪断オリフィスを有し得る。
図9〜
図11は、直列構成で互いに隣接して配置されたチャネル30及び剪断オリフィス40の例示的な実施形態を図示する。この実施形態において、装置に好適な力が加えられると、試料はチャネル30の進入口へと流れ込んで開口を通り、続いて断片化用の剪断オリフィス40を通って流れる。必須ではないが、チャネル及び剪断オリフィスは、双方ともシリンダ状の形である。
【0073】
図9は、チャネル30及び剪断オリフィス40の側面図を示す。チャネル30は第1の長さL
1を有し、剪断オリフィス40は第2の長さL
2を有する。本明細書に提示されるチャネル及び剪断オリフィスは、任意の好適な長さを有し得る。一部の実施形態では、チャネルの長さは約5mm〜約20mm、約10mm〜約15mm、約100ミクロン〜約20mm又は約100ミクロン〜約5mmの範囲である。一部の実施形態では、剪断オリフィスの長さは、約100ミクロン〜約20mm、約100ミクロン〜約5mm、約5mm〜約20mm、約200ミクロン〜約500ミクロン又は約250ミクロン超である。
【0074】
図10は、
図9に示される対応する線に沿ったチャネル30の断面図を示し、ここでチャネル30は、試料が処理装置の流入口から流れ込み得るオリフィスの内表面36を有する。チャネル30はまた外表面38も含む。
図10に示されるとおり、内表面36は内幅W
1を有し、外表面38は外幅W
2を有する。
【0075】
図11は、
図9に示される対応する線に沿った剪断オリフィス40の断面図を示す。剪断オリフィス40は、試料がチャネル30から流れ込み得るオリフィスの内表面46を含む。剪断オリフィス40はまた外表面48も含む。
図11に示されるが、内表面46は内幅W
3を有し、外表面48は外幅W
4を有する。
【0076】
チャネル及び剪断オリフィスの内幅及び外幅は、任意の好適なサイズであってよいことは理解され得る。しかしながら、
図9〜
図11に示される実施形態では、あらゆる実施形態に必須なわけではないが、チャネル30の内幅W
1は剪断オリフィス40の外幅W
4に等しい。一部の実施形態では、試料が流れ込み得る剪断オリフィスの内幅は、約10ミクロン〜約100ミクロン、約10ミクロン〜約50ミクロン又は約10ミクロン〜約70ミクロンの範囲である。一部の実施形態では、チャネルの内幅は約300ミクロン〜約2mmの範囲である。一部の実施形態では、剪断オリフィスの外幅は、約50ミクロン超、約50ミクロン〜約1mm、約100ミクロン〜約1mm又は約1mm超である。例えば、剪断オリフィスの外幅は約300ミクロン〜約1.5mmの範囲であり得る。
【0077】
剪断オリフィスの幅は、試料中の核酸に加えられる剪断力の程度に影響し得る。例えば、オリフィス幅が小さいと、試料がオリフィス内へとそこを通って流れるときの核酸に加わる剪断力の程度が大きくなり、ひいては核酸断片化の程度が高まり得る。
【0078】
ある例では、剪断オリフィスは、約30ミクロンの内径、約1.5mmの外径及び約250ミクロンの長さを有する。チャネルは、約1.5mmの内径及び約10mmの長さを有する。
【0079】
核酸を含む試料が流れ得る剪断領域には、複数の剪断オリフィスが含まれてもよい。
図12は、表面46a、46b、46c及び46dにより規定される4つのオリフィスを有する剪断領域41の例示的な実施形態を図示する。従って、適切な力が加わると、試料は流入口から、剪断領域で並列のオリフィスの各々へと流れ込み、そこを通過する。一実施形態において、約40ミクロン径の複数の穴が約250ミクロン厚のポリイミドフィルムに開けられ、ここでそれらの穴は、約200ミクロンより大きい中心間距離(例えば、約250ミクロンの中心間距離)だけ離間される。
【0080】
剪断領域のオリフィスは任意の好適な形を有し得ることもまた理解され得る。
図13は、様々な形の表面46e、46f、46g及び46dにより規定される4つのオリフィスを有する剪断領域41の非限定的な実施形態を例示する。例えば、表面46eは矩形/正方形を規定し、表面46fは三角形を規定し、表面46gは楕円形を規定し、及び表面46hは六角形を規定する。好適な力が加わると、核酸を含む試料が剪断領域41に配置されたオリフィスの各々を通って流れる。
【0081】
チャネルもまた、核酸を含む試料が流れ得る開口を任意の好適な数だけ有し得ることは理解されなければならない。かかるチャネル開口もまた、任意の好適な形を有し得る。
【0082】
剪断オリフィスは、任意の好適な方法で処理装置の流入口と連結されてもよい。例えば、
図14は、処理装置の流入部分20の壁の間に配置された剪断オリフィス40の実施形態を例示する(外側部分及び回収領域は図示せず)。使用時、試料が流入部分20に加えられ、処理装置が遠心機に置かれる。遠心機を作動させると、試料が剪断オリフィス40の進入口42を通過する。次に試料は、剪断オリフィス40を出て流入部分20の遠位端部分に入り込み、別の剪断オリフィス又は回収領域(
図14には図示せず)に入る。一部の実施形態では、剪断オリフィス40及び流入部分20は、試料が処理されたときに試料の一部が流入部分内に残るように構成される。
【0083】
図15は、流入部分20の壁の下に配置された剪断オリフィス40の実施形態を図示し、ここで遠心機に置くための外側部分及び回収領域は図示しない。
図14について説明したとおり、試料が流入部分20から処理装置に導入され、処理装置が遠心機に置かれ、遠心機が作動される。遠心機から力が加わると、試料は流入口の本体を通って流入口の遠位端部分まで動き、そこで試料は次に剪断オリフィス40の進入口42を通って流れる。剪断オリフィス40から出ると、続いて試料は別の剪断オリフィス又は回収領域(
図15には図示せず)に流れ込む。チャネルは明確に示されないが、この実施形態では1以上のチャネルを好適な方法で組み込むことができる。
【0084】
図16は処理装置の実施形態を示し、ここでは処理装置の対応する剪断オリフィス40aを有する第1の流入部分20aの一部分が、対応する剪断オリフィス40bを有する第2の流入部分20bの内部に配置されている。使用時、試料を第1の流入部分20aの進入口に導入した後、処理する力が(例えば遠心機から)装置に加えられる。試料は、剪断オリフィス40aの進入口42aを通って流れ、次に剪断オリフィス40aから出る。続いて試料は、第2の流入部分20bに達し、そこで試料は最終的に、対応する進入口42b及び場合により好適なチャネルを経て、剪断オリフィス40bを通って流れる。剪断オリフィス40bから、試料は後続の剪断オリフィス又は回収領域(
図16には図示せず)へと流れ込む。ある場合には、処理する力を加えたとき、処理装置に複数の流入部分があることで、試料が装置を通じて流れるときの試料が受ける核酸断片化が増し、完成した試料において概してより小さい平均断片サイズ及び/又は均一性が増した断片サイズの核酸を有する処理済み試料が生じ得る。1つ以上のチャネルが剪断オリフィスと共に好適に組み込まれ得る。
【0085】
図17は、核酸の断片化に用いられ得る処理装置200の例示的な実施形態を示す。処理装置200は、核酸の溶液が流れ得る内側部分210と、遠心機の受け入れ範囲内に置くための構造を有する外側部分260と、を含む。内側部分210は、流入リザーバ220と、第1の剪断オリフィス230及び第2の剪断オリフィス240を含む剪断領域と、回収領域250と、を含む。核酸を含む試料(例えば、DNAを含む溶液)が流入リザーバ220の進入口212に導入され、装置200が処理のため遠心機に好適に置かれる。
【0086】
遠心機が作動して、処理装置を通じた試料の動きを引き起こす力が発生すると、試料は第1の剪断オリフィス230の進入口232を通って流れ、剪断オリフィス230に関連した剪断力により断片化される。続いて試料は剪断オリフィス230から流れ出て、流入リザーバ220を通って進み続け、第2の剪断オリフィス240に達する。次に試料は第2の剪断オリフィス240の進入口242に流れ込み、試料中の核酸が、第2の剪断オリフィス240によって生じる剪断力により断片化される。次に試料は流入リザーバ220の遠位端領域214に向かって流れ出す。遠心機が回転し続けることに伴い、断片化された核酸を含む試料は回収領域250に蓄積する。或いは、代替的には遠位端領域214を閉鎖して、試料が回収領域250へと通過することなく流入リザーバ220の底に集まるようにしてもよい。従って、遠位端領域214が回収領域として機能し得る。剪断オリフィス230及び/又は240は、流入リザーバ220に沿った任意の好適な位置に配置され得るが、一部の実施形態では、オリフィス230と240との間に好適に長い距離が提供され、下流オリフィス240における所望の試料圧力の確立が促進され得る。すなわち、上流オリフィス230の圧力が下流オリフィス240の圧力に影響を及ぼさないように、オリフィス230と240との間での流体の有効な分断が確立されてもよい。一部の実施形態では、剪断オリフィスは互いから約5mm〜約20mmに配置される。明確には示されないが、流入リザーバ220と外側部分260とは任意の好適な方法により共に取り付けられ、又は連結され得ることもまた理解されなければならない。一部の実施形態では、流入リザーバ220と外側部分260とは、単一のモノリシック装置として共に一体形成されてよい。
【0087】
処理装置の流入リザーバ220は、
図17では円錐形を有するものとして例示されるが、流入リザーバは任意の適切な形状を有し得ることは理解されなければならない。例えば、記載される実施形態における好適な流入リザーバは、直線状であってもよく又は適切な曲率を含んでもよい。
【0088】
一部の実施形態では、剪断オリフィス間にチャネルが配置される。例えば、図に明確には示されない処理装置が、直列構成で配置された、流入リザーバ220と、第1のチャネルと、第1の剪断オリフィス230と、第2のチャネルと、第2の剪断オリフィス240と、を含んでもよく、ここでチャネルと剪断オリフィスとは流体連通している。かかる例では、遠心機が作動すると、試料は、第1のチャネルを通って第1の剪断オリフィス230の進入口232に流れ込み、剪断オリフィス230に対応する剪断力により断片化される。続いて試料は、剪断オリフィス230から流れ出て第2のチャネルを通り、第2の剪断オリフィス240に達する。次に試料は第2の剪断オリフィス240の進入口242に流れ込み、試料中の核酸が適切に断片化される。剪断オリフィス間のチャネルは、先述したとおりの長さ、内幅及び外幅の範囲などの、任意の好適な寸法を有し得る。一部の実施形態では、2以上の剪断オリフィスを有する処理装置が、試料の大部分が処理装置を通って流れる間、各剪断オリフィスより上側の試料高さ、ひいては対応する剪断領域の進入口の圧力及び装置を通る流量も同様に比較的一定のまま維持するような構造を有する流入部分と1以上のチャネルとを含み得る。
【0089】
図18は、遠心機に好適に置かれたときに向きが付く処理装置200を示し、ここでこの装置は、第1の剪断オリフィス230の中心が遠心機の回転軸Aから径方向距離R
1だけ離れて置かれるような傾いた構成にある。同様に、第2の剪断オリフィス240の中心は、遠心機の回転軸Aから径方向距離R
2だけ離れて置かれる。処理装置の構成が傾いているため、径方向距離R
1は径方向距離R
2より小さい。
【0090】
場合によっては、処理装置及び遠心機システムの様々な特徴が、剪断オリフィスを通る試料流量、ひいては試料中の核酸が断片化される能力に影響を及ぼし得る。かかる特徴としては、例えば、遠心機の回転速度、剪断オリフィスの直径、及び回転軸からの剪断オリフィスの径方向距離を挙げることができる。一部の実施形態では、流入リザーバに沿った剪断オリフィスの位置が、核酸の断片化の程度にいくらかの影響を有し得る。例えば、流入リザーバの進入口のより近く(従って遠心機の回転軸Aからより小さい半径、例えば径方向距離R1)に位置決めされた、且つ所与の直径を有する第1の剪断オリフィスは、同じ直径の、且つ流入リザーバの遠位端のより近く(従って第1の剪断オリフィスと比べて遠心機の回転軸Aからより大きい半径R、例えば径方向距離R
2)に位置決めされた第2の剪断オリフィスと比べ、オリフィスを通ってより低速の流量を示し得る。
【0091】
場合によっては、剪断オリフィスを通る試料流量がより低速であることにより、剪断力の低下、ひいては核酸断片化の減少がもたらされる。実際、所与の遠心機システムについて、処理後の最終平均核酸サイズ及び分布は、処理装置の詳細な幾何学的設計上の考慮事項に依存し得る。従って、具体的な目標範囲の核酸サイズは、特定の処理システムで使用される処理装置の特定の属性に基づき回収され得る。一部の実施形態では、処理装置は、処理後に特定の核酸サイズ範囲が得られるように調節自在に設計される。例えば、オリフィスサイズ、回転軸Aからの半径R、及び/又は各オリフィスそれぞれに対する試料ヘッド高さが、
図18にある装置と同様に、装置におけるオリフィス230及び240の双方に同一の又はほぼ同じ剪断影響を提供するように設計されてもよい。図示されないが、各オリフィス230及び240が、関連するオリフィスに対する試料のヘッド高さを定義するのに役立つそれぞれの流入部分/チャネルを有してもよい。一部の実施形態では、剪断オリフィス230と240とは同じ回収領域を共有してもよく、ここで試料材料は両方のオリフィスを通ってその回収領域に流れ込む。図に示されない他の実施形態では、別個の独立した剪断オリフィスがそれぞれの回収領域を有してもよく、ここで試料材料は別々に各オリフィスを通って流れ、独立に回収される。
【0092】
再び
図17及び
図18を参照すると、一部の実施形態では、試料が回収されたときの核酸サイズのばらつきが比較的小さくなるように、第2の剪断オリフィス240を通る試料の流量がほぼ一定に保たれる。これを達成するため、処理時間のほとんどにおいて、第1の剪断オリフィス230と第2の剪断オリフィス240との間に置かれる試料の容積がほぼ一定に維持される。従って、ある実施形態では、試料は、第2の剪断オリフィス240を通る試料の流れと比べ、第1の剪断オリフィス230を通ってより容易に流れる。さらに、第2の剪断オリフィス240の径方向距離R
2より小さい第1の剪断オリフィス230の径方向距離R
1に適合させて、第1の剪断オリフィス230の直径を第2の剪断オリフィス240の直径より大きくしてもよい。従って、遠心機が作動すると、試料を第2の剪断オリフィス240に通す流れの力が試料を第1の剪断オリフィス230に通す流れの力より大きい可能性があるにもかかわらず、第1の剪断オリフィス230の直径がより大きいため、試料材料が装置を通じて動く間、第1の剪断オリフィス230と第2の剪断オリフィス240との間に置かれた試料の容積をほぼ一定のままとすることが可能となる。
【0093】
図19〜
図20Bは、処理装置300の例示的な実施形態を図示する。装置300は、チャネル310と、剪断オリフィス320と、第1のチャンバ330と、第1の蓋332と、第2のチャンバ340と、第2の蓋342と、を含む。処理装置300について記載される構成要素の各々が、流体連通している。すなわち、流体は第1の蓋332から第1のチャンバ330に流れ込み、チャネル310を通り、剪断オリフィス320を通り、第2のチャンバ340に入り、第2の蓋342に入って戻り得る。第1の蓋332及び第2の蓋342は、任意の好適な方法によって第1のチャンバ330及び第2のチャンバ340に取り付けることができる。一部の実施形態では、蓋332及び342は、ねじ嵌めの構成によってチャンバ330及び340に取り付けられ得る。他の実施形態では、蓋332及び342は、接着剤、スナップ嵌め又は締まり嵌めによってチャンバ330及び340に連結される。
【0094】
図19は処理装置300の斜視図を示し、蓋332及び342は図示しない。
図20Aは、気密シールを形成するよう蓋332及び342がそれぞれのチャンバ330及び340に取り付けられているとき、及び取り付けられていないときの処理装置300を例示する。一部の実施形態では、蓋332及び342は、処理装置300に導入される試料の全容積を保持するのに十分な大きさである。処理装置300が両端に2つの蓋を有しなくてもよいことは理解されなければならない。実際に、一部の実施形態については、処理装置300は第1のチャンバ用の第1の蓋のみを含み、一方で第2のチャンバは、そこに永久的に取り付けられた、又はそこに成形された覆いを有する。処理装置300は、チャンバ330と340との間にチャネル310及び剪断オリフィス320を通る試料材料の流れを生じさせるため、遠心機又はポンプなどのフローアクチュエータと好適に組み合わされ得る。一部の実施形態では、処理装置300は、試料を処理するため、遠心機の受け入れ範囲に直接置かれ得る。或いは、処理装置300は、内側部分10及び外側部分100に関して上記に記載する形状と同様の、遠心機の受け入れ範囲に置かれるような好適な形状の外部構造を有するホルダと組み合わされてもよい。従って、処理装置とホルダとの組み合わせが、遠心機によって加えられる力に共に供され得る。
【0095】
図20Bは、核酸を含む試料450が処理され得る一連のステップ400〜410を例示する。ステップ400では、試料450が第1のチャンバ330に装入される。ある場合には、試料の粘度とチャネルの小さい進入口直径との要因が複合して、試料450はチャネル310に容易には流れ込まない。ステップ402では、蓋332がチャンバ330に取り付けられ、気密シールが形成される。ステップ404は、例えば遠心機が発生する力に供されている処理装置を示す。従って、試料450は、第1のチャンバ330からチャネル310を通り、チャネルの中央に配置された剪断オリフィス320を通って第2の蓋342に流れ込む。一部の実施形態では、第2の蓋342が試料材料の回収領域として機能する。ステップ404から、剪断オリフィス320を通る試料の流れからの剪断力によって、試料中に含まれる核酸が断片化されることが理解されなければならない。
【0096】
試料450が蓋342に回収されると、続いて装置は、ステップ406に示される反転した位置に置かれる。反転させると、重力によって試料450が第2のチャンバ340に入り、しかしながら試料450は、試料の粘度及びチャネルの小さい進入口直径に起因して、容易にはチャネル310に流れ込まない。ステップ408では、処理装置が、例えば遠心機により生じる力に供され、第2のチャンバ340からチャネル310を通り、剪断オリフィス320を通って第1の蓋332に入る試料450の流れが生じる。一部の実施形態では、第1の蓋332が試料材料の回収領域として機能してもよい。従って、試料中に含まれる核酸は、剪断オリフィス320を通る試料の流れからの剪断力によって再び断片化される。ステップ410では、第1の蓋332が処理装置300から取り外され、試料450の処理が終わって完全に回収されている。
【0097】
上記の方法、特にステップ404〜408は、目標の核酸サイズ分布に達するまで、必要に応じて何度でも繰り返されることが可能である。従って、ステップ408の後、装置を再度反転させてその元の位置にし、好適なフローアクチュエータ(例えば遠心機)によって加えられる力に供してもよい。従って、試料450は、第1のチャンバ330から流れ出て、チャネル310を通り、剪断オリフィス320を通って第2の蓋342に戻り得る。実際、一部の実施形態について装置300は、所望の断片化された核酸のサイズ範囲及び分布に達するまで、必要に応じて何回でも反転させて処理されることができる。
【0098】
図21Aは、本体502と、第1の蓋532と、第2の蓋542と、を含む処理装置500の別の実施形態の斜視図を示す。第1の蓋532は、本体の一端でねじ装置を介してねじって本体に取り付けられ、第2の蓋542は、装置の他端で締まり嵌めによって本体に固着されている。他の取り付け構成が可能であることが理解され得る。第1の蓋532及び第2の蓋542は装置の対向する端部に取り付けられ、それぞれのチャンバ530、540を封鎖して気密シールを形成する。この装置はまた、第1のチャンバ530と剪断領域520との間に配置された第1のチャネル510、及び剪断領域520と第2のチャンバ540との間に配置された第2のチャネル512も含む。図示される実施形態において、第1のチャネル510の内幅は第2のチャネル512の内幅より小さい。装置について構造及び寸法の他の組み合わせが可能である。
【0099】
一部の実施形態では、チャンバ530、540は、処理装置500に導入された試料の全容積を保持するのに十分な大きさである。上記に考察したとおり、本明細書に記載される実施形態において好適な処理装置の両端部に2つの蓋を有することは、要件ではない。本発明における処理装置が、処理の主要な本体に任意の好適な方法で取り付け得る蓋を有してもよいことが理解され得る。さらに、他の好適な蓋又は取り付け具が、記載される本発明の特徴における様々な処理装置に対して使用されてもよく又は使用されなくてもよい。
【0100】
図21Bに示される実施形態において、核酸を有する試料材料は、処理装置500の剪断領域520を1回又は複数回通過するように流され得る。使用時、第1の蓋532は、最初は本体502の第1のチャンバ530がある領域にねじ付けられていない。その一方で、第2の蓋542は、第2のチャンバ540で締まり嵌めによって本体に取り付けられている。第1のチャンバ530に提供される開口において、試料材料が装置に導入される。装置内に十分な量の試料材料が入ると、次に第1の蓋532が装置の本体にきつくねじ付けられ、試料材料が中に封入される。次に装置が、アクチュエータ(例えば、遠心機、ポンプ、撹拌等)によって生じる力に供され、試料材料がチャネル510を経由して剪断領域520を通り、チャネル512を経由して第2のチャンバ540へと動かされる。次に、装置に力を加えることで、試料材料が、チャネル510、512を経由して剪断領域520を通り、第1のチャンバ530の中へと戻る動きを生じさせてもよい。
図21Bに図示される実施形態に示されるとおり、チャネル510の断面積はチャネル512の断面積より大きい。一部の実施形態では、装置500が適切に反転され、試料を逆方向に第1のチャンバ進入口範囲に向かって戻す力に供される。試料は、第1のチャンバの蓋に収集されてもよく又は剪断領域を戻る動きの繰り返しに供されてもよい。従って、試料材料は、剪断領域を通る好適な動きからの剪断力に必要に応じた回数だけ供され得る。
【実施例】
【0101】
実施例1
流入口として使用するピペットチューブにチャネル及び剪断オリフィスを装着し、微量遠心管内に置いて、上記に記載される実施形態に係る処理装置を形成した。濃度50マイクログラム/ミリリットルの48kbpの出発核酸サイズを有するラムダDNAの試料を、処理装置のピペットチューブに導入した。装置を遠心機に挿入し、次に遠心機を、7,000rpm、8,000rpm、9,000rpm、10,000rpm、11,000rpm、12,000rpm、13,000rpm及び14,500rpmの種々の速度で動作させた。
図22に示されるとおり、断片化されたDNAの結果をゲル電気泳動分析によって未処理の試料DNAと比較した。このDNA試料に対して遠心機を約11,000rpm〜約14,500rpmの速度で動作させると、平均核酸サイズが約10kbpのDNAが得られたことが観察された。また、この処理装置に対して遠心機を高速で動作させるほど、DNA断片化の増加がもたらされたことも観察された。
【0102】
実施例2
実施例1に記載されるものと同じ処理装置を使用して、様々な濃度の200マイクロリットルのラムダDNA及び大腸菌(E.Coli)DNAを、13,000rpmで動作する遠心機を用いて処理した。ラムダDNAの濃度は、50マイクログラム/ミリリットル、100マイクログラム/ミリリットル、及び200マイクログラム/ミリリットルであった。大腸菌(E.Coli)DNAの濃度は、25マイクログラム/ミリリットル、100マイクログラム/ミリリットル、及び200マイクログラム/ミリリットルであった。
図23に示されるとおり、処理後のラムダ及び大腸菌(E.Coli)試料の断片化されたDNAは、約10kbpの平均核酸サイズとなった。
【0103】
実施例3
実施例1に記載されるものと同様の、但し剪断オリフィスの直径が異なる4つの処理装置を作成した。すなわち、直径は10ミクロン、20ミクロン、30ミクロン及び50ミクロンであった。処理装置にラムダDNAを充填して遠心機に置き、次に遠心機を10,000rpm及び14,000rpmで動作させた。10,000rpmでは、20ミクロン径及び30ミクロン径の剪断オリフィスについての処理後の平均核酸サイズは、それぞれ約6.4kbp及び約7.0kbpであった。14,000rpmでは、10ミクロン径、20ミクロン径、30ミクロン径及び50ミクロン径の剪断オリフィスについての処理後の平均核酸サイズは、それぞれ約5.2kbp、約5.2kbp、約6.0kbp及び約9.0kbpであった。この処理装置に使用する剪断オリフィスの直径が小さいほど、DNA断片化が増加したことが観察された。また、遠心機を高速で動作させるほど、同様にDNAが断片化される量が増加したことも観察された。
【0104】
実施例4
10ミクロン径による剪断を備える実施例3の処理装置を使用して、12,000rpmの定常遠心速度で処理する間の液体試料の流量を計測した。
図24及び
図25に示されるとおり、断片化プロセスの大半において処理装置を通じる流量に認められる低下は僅かであり、概して比較的一定の流量であると見なされた。流入リザーバに残る液体試料が10マイクロリットル未満になると、流量は大幅に低下したが、10マイクロリットルを超える液体試料の容積については、流量は約1.0マイクロリットル/秒〜約3.0マイクロリットル/秒の範囲でほぼ一貫していた。
【0105】
実施例5
図17及び
図18に記載した実施形態に係る2つの剪断オリフィスを有する処理装置を使用し、これらは剪断オリフィス間で径方向距離及び試料高さが異なった。直径が50ミクロン、40ミクロン、35ミクロン及び30ミクロンの剪断オリフィスもまた評価した。以下の表は、処理装置において2つの異なる位置に位置決めした剪断オリフィスに対応する最小流量を、剪断オリフィスのそれぞれの直径と共に示す。剪断オリフィスの位置が変わると、遠心機の回転軸からの径方向距離が変化し、剪断オリフィスを通る流量に影響が及び得る。加えて、剪断オリフィスを通る流量は、概してオリフィスの直径が大きいほど高くなることが観察された。
【0106】
【表1】
【0107】
図26に示されるとおり、DNA断片化プロセス全体を通じて流量はほぼ一定のままである。流入リザーバに残る液体試料が10マイクロリットル未満になると、流量は大幅に低下したが、しかしながら10マイクロリットルを上回る液体試料容積については、流量は約10.0マイクロリットル/秒〜約20.0マイクロリットル/秒の範囲で比較的一定していた。
【0108】
実施例6
図19〜
図20Bにおいて記載した実施形態に係る処理装置を製造した。すなわち、この装置は、第1の位置で処理した後、装置が反転して底側が上を向き、且つ上側が下に向いた第2の位置で処理することが可能である。MG DNA及びラムダDNAを1回、2回、及び4回処理し、ここで装置は、連続する処理ステップ毎に向きを反転させた。すなわち、4回処理した場合、装置は向きを3回反転させ、2回処理した場合、装置は1回反転させ、及び1回処理した場合、装置の向きは反転させなかった。加えて、各処理ステップの間、遠心機は7,000rpmで動作させた。
図27に示されるとおり、MG DNA及びラムダDNAを含む試料を4回処理すると、平均核酸サイズが約10kbpの狭い分布が生じたことが観察された。
【0109】
このように、本発明の少なくとも一つの実施形態の態様をいくつか記載したが、当業者には様々な代替例、変形例、及び改良例が容易に想起され得ることが理解されなければならない。かかる代替例、変形例、及び改良例は、本開示の一部であることが意図され、且つ本発明の趣旨及び範囲に含まれることが意図される。従って、前述の説明及び図面は単に例に過ぎない。本発明の範囲から逸脱することなく本発明に対して他の実施形態及び様々な変形が行われ得ることは明らかであろう。本発明の前述の説明は、単に本発明を例示することを意図したものに過ぎず、本発明を限定する意図はない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物により定義される。