特許第5791728号(P5791728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791728
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】有機肥料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 17/00 20060101AFI20150917BHJP
   C05F 3/00 20060101ALI20150917BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20150917BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   C05F17/00ZAB
   C05F3/00
   B09B3/00 A
   C02F11/02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-535277(P2013-535277)
(86)(22)【出願日】2011年10月17日
(65)【公表番号】特表2013-545702(P2013-545702A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】CZ2011000101
(87)【国際公開番号】WO2012055379
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2013年12月20日
(31)【優先権主張番号】PV2010-778
(32)【優先日】2010年10月26日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】513088490
【氏名又は名称】マネテック、エー.エス.
【氏名又は名称原語表記】MANETECH,A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】シューマン、ジャン
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−034589(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/059749(WO,A1)
【文献】 特開2008−214129(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01350778(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00535544(EP,A1)
【文献】 米国特許第05810903(US,A)
【文献】 英国特許第01498938(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F 3/00
C05F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然リグノセルロース吸収材および排水を堆肥化することから製造され、最低35%w/wが乾燥物であり、かつ最低25%w/wが有機物であり、かつ最低20%w/wが腐植質であり、かつ1.5%w/wの窒素を含有する有機肥料であって、
前記排水は、少なくとも20重量%の家畜排水を含有し、
前記家畜排水は、家畜排水1000kg当り360〜450gの薬剤と、分離剤とで均質化され、
前記薬剤は、1以上のデンプン誘導体を含有し、
前記薬剤は、家畜排水のチキソトロピーと表面張力を同時に高め、
前記分離剤は、集塊の形成を抑制し、家畜排水中でのデンプン誘導体の溶解度を高め、
前記分離剤はベントナイトと重炭酸ナトリウムの混合物を含有し、前記分離剤は、薬剤と分離剤の混合物全体の〜11重量%を占め、
前記排水が、天然リグノセルロース吸収材の上に噴霧され、この堆肥混合物が同時に混合され、曝気され、好気性細菌により分解され、このサイクルが少なくとも4回反復され、
前記少なくとも4回のサイクルの第1サイクルにおいて、前記排水は前記天然リグノセルロース吸収材の上に1バッチ以上噴霧され、前記堆肥混合物が同時に混合および曝気され、前記天然リグノセルロース吸収材に対する前記排水の重量比は、前記天然リグノセルロース吸収材1重量部に対して8〜10重量部の間であり、
好気性細菌の作用により前記堆肥混合物の温度が少なくとも50℃に達し、それから2〜4週間後、前記少なくとも4回のサイクルの第2サイクルにおいて、前記堆肥混合物の混合および曝気に続いて1バッチ以上の排水を追加して、前記排水と元の天然リグノセルロース吸収材との総重量比を6〜8:1とし、
前記堆肥混合物が少なくとも50℃に達し、それから気候条件に応じて2〜4週間後、前記少なくとも4回のサイクルの第3サイクルを行い、前記堆肥混合物が同時に1バッチ以上の排水と混合され曝気されて、前記排水と元の天然リグノセルロース吸収材との総重量比を4〜6:1とし、
前記少なくとも4回のサイクルの第4サイクルでは、前記堆肥混合物の混合および曝気に続いて1バッチ以上の排水を追加し、これにより前記排水と前記天然リグノセルロース吸収材との総重量比を2〜4:1とし、
前記少なくとも4回のサイクルの終了時には、前記元の天然リグノセルロース吸収材の上に噴霧された全排水と元の天然リグノセルロース吸収材の最終重量比が20:1〜30:1の間となる、有機肥料の製造方法。
【請求項2】
前記排水が、家畜排水、食品工業排水および集落排水浄化プラントからの汚泥の群から選択され、前記排水は少なくとも20重量%の前記家畜排水を含有する、請求項1に記載の有機肥料の製造方法。
【請求項3】
前記天然リグノセルロース吸収材が、穀類の藁、ナタネの藁、稲藁、トウモロコシ茎葉、粉砕された木材または集落の廃棄物、集落および庭から出る植物廃棄物もしくは海草を含む材料の群から選択され、前記天然リグノセルロース吸収材の70重量%が、穀類の藁、ナタネの藁、稲藁またはそれらの組合せである、請求項1に記載の有機肥料の製造方法。
【請求項4】
チキソトロピーを高める前記薬剤が、1000kgの家畜排水あたり360〜450gの量の温熱的に改質・変性された酸化デンプンである、請求項1に記載の有機肥料の製造方法。
【請求項5】
前記有機肥料は、前記天然リグノセルロース吸収材を細断し、前記天然リグノセルロース吸収材に前記排水を混合するとともにその混合物を曝気する堆肥製造機を用いて連続的に製造され、各サイクル間の温度変動が抑えられ、前記天然リグノセルロースの破砕中において前記天然リグノセルロースの上に噴霧される前記排水と前記天然リグノセルロース吸収材の重量比率が最低25:1である、請求項1に記載の有機肥料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
天然リグノセルロース材料と排水、例えば農業生産および畜産からの排水に基づく有機肥料が提供される。
【背景技術】
【0002】
植物残渣は分解し、腐植質を作り出す。腐植質は、窒素、リンおよび種々の微量元素をゆっくり放出することによって植物栄養を改善する。腐植質はまた、土壌ミネラルを溶かし、土壌構造を改善し、土壌の保水性を改善するとともに、黒っぽい色であるために土壌温度を高める効果がある。
【0003】
腐植質は、無機質肥料よりもはるかに高い生物活性を有する。通常、腐植質は、土壌中で種々の微生物、蠕虫、昆虫および幼虫の助けで分解する藁と動物糞尿の混合物からなる。腐植質の工業生産は機械で行われる場合が多いが、悪臭のためにこの生産は不快なものとなる。
【0004】
現行の配合法では、藁、干し草、集落の植物廃棄物、台所・家庭ごみ、浄化プラントの汚泥、木くずやおがくずなどの植物廃棄物を堆肥化することができる。
【0005】
生物材料の堆肥化は好気的分解過程によって起こる。
【0006】
堆肥材料の良質な分解のためには、堆肥中で適当な水分を保つこと、材料が空気に触れやすいこと、および炭素と窒素の適切な比を維持することが重要である。
【0007】
堆肥湿度は空中湿度に関係する。堆肥が湿りすぎていると、好気性微生物に必要な空気に十分に触れることができない。嫌気性分解が続くと、望んでいない、悪臭のするカビの生えたものができる。C:N(炭素:窒素)比は、微生物活性の強さ、従って堆肥の熟成時間および腐植質の形成に影響を及ぼす。最適には、C:N=20または30:1である。土壌を堆肥に加えてもよく、これにより、保水性を助け、臭気を抑えることができる。
【0008】
植物材料は堆肥化の前に粉砕することができる。粉砕することで、微生物が植物材料と空気の双方に触れやすくなる。堆肥化材料は、空気と触れやすくするために通気および均質化を行うことができる。
【0009】
従来の条件下では、分解には3〜4週間かかる。微生物を作用させると、堆肥内で、例えば50〜70℃までの範囲で温度上昇が起こり、それとともに有機物に固定されている糖類、デンプンおよびタンパク質が分解される。およそ4週目〜10週目に温度は下がり、堆肥は褐色になり、もろい質感となる。現在の堆肥製造者は、生分解可能な集落のごみおよび集落の植物廃棄物および浄化プラントの汚泥を処理している。
【0010】
流体廃棄物に伴う問題として有機物の混入があり、特に、畜産農場からの排水であるスラリーが一般によく知られている。このような廃棄物は重大な運用上の、そして生態学的問題である。これまでには、この廃棄物を処分または処理する確実な方法はなかった。
【0011】
例えば、家畜スラリーは圃場に施され、嫌気的生物プロセスはバイオガスダイジェスターで用いられ、または好気的生物プロセスは浄化プラントで用いられる。嫌気的使用は農業慣行で最も多い。しかしながら、これは例えば下記のような重大な生態学的・経済的不利益をもたらす。
・広い区域が有機物および無機物で汚染される。
・水源汚染の危険性がある。
・悪臭が広い区域に及ぶ。
・スラリーの栄養価の大部分が流乏し、化学肥料の施肥が必要となり、次にこの一部がまた流乏し、それらの栄養効果が著しく減退する。
【0012】
嫌気システムは通常バイオガスの生産と連結され、多大な資本投下を伴う。資本投下に加えて、これらのシステムは運転コストも高くつく。
【0013】
好気システムは、好気タンクの建設および好気設備の確保に多大な資本投下を要する。これらのシステムの主な欠点は、それらの洗浄効果が外部温度に依存するということである。好気技術は冬季条件では信頼できる働きをせず、洗浄が有効に行えない。
【0014】
特許文献1に記載されている実施形態では、水が活性炭またはベントナイト(betonies)と組み合わせて処理される。特許文献2に記載されている実施形態では、水がイオン交換体で処理される。特許文献3によれば、水が水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムで処理され得る。
【0015】
特許文献4には、排水、特に食品工業および畜産からの排水の処分(liquidation)が記載されている。排水はチキソトロピーを高める材料で均質化され、浄化設備で活性化される。このタイプの混合物は、吸収材1重量部に対して水8〜10重量部の比率で曝気しながら、1以上の吸収材バッチに適用される。好適な吸収材には、藁、トウモロコシの茎葉、粉砕された木材または農業廃棄物が含まれる。この方法の欠点として、吸収材に対して処理される排水の比率が低いこと(8〜10:1)が挙げられる。
【0016】
種々の実施形態において、本明細書に開示されている有機肥料の製造方法は、この負の生態学的影響を排除するための現実的な可能性をもたらす。効率的な施肥を目的とするこの基質を用いれば、土壌品質の自然再生がもたらされ、地下水源の汚染を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】チェコ国特許第266152号
【特許文献2】アンゴラ国特許第190083号
【特許文献3】チェコ国特許第266153号
【特許文献4】チェコ国特許第277555号
【発明の概要】
【0018】
本明細書では、有機肥料およびその製造方法が記載される。
【0019】
天然リグノセルロース材料と排水、特に畜産からの排水を堆肥化することにより製造された有機肥料は、最低35%w/wの乾物、25%w/wの有機物、最低20%w/wの腐植質および1.5%w/wの窒素を含有する。
【0020】
微生物活性によって作り出される生物学的に活性な腐植質は、混合物中の有機物の量を求めることにより評価することができる。種々の実施形態において、有機物の量は、係数1.7を用い、硫黄とクロム酸により酸化されたCoxを評価することにより決定することができる。
【0021】
有機肥料は、吸収材に少なくとも20重量%の家畜排水を含有し、薬剤で均質化して混合物を形成させた排水を噴霧することにより製造することができる。このような薬剤は、排水のチキソトロピーおよび表面張力を高めるデンプン誘導体またはセルロース誘導体などの材料と分離剤とを含む。分離剤は、集塊の形成を抑制し、かつ、デンプンまたはセルロース誘導体の溶解度を高めるように設計することができる。
【0022】
得られた混合物の混合、曝気および好気性細菌の活性による分解を少なくとも4サイクル行う。第1サイクルでは、排水を1以上のバッチの吸収材に適用し、その後、この混合物を混合および曝気する。水と吸収材の重量比は、吸収材1重量部に対して水8〜10重量部の間である。特定の変形形態では、2〜4週間後に温度が少なくともおよそ50℃に達した際に、第2サイクルとして、その材料を総重量と元の吸収材が6〜8:1の比でさらなる排水と混合し、曝気する。気候条件に応じて2〜4週間後、堆肥混合物が少なくとも約50℃に達した際に、第3および第4のサイクルを行うことができる。第3のサイクルでは、堆肥化材料を1バッチ以上の排水と、総重量と元の吸収材が4〜6:1の比で混合する。第4サイクルでは、総重量比2〜4:1とする。方法の終了時には、改質された排水の最終重量と元の吸収材の比はおよそ20:1〜30:1の間である。
【0023】
家畜スラリーを食品工業からの排水または集落排水と混合することもできる。種々の実施形態では、排水の洗浄液および/または殺菌剤含量は0.01%以下である。
【0024】
種々の実施形態では、吸収材は穀類の藁、ナタネの藁、稲藁およびトウモロコシ茎葉などの材料群から選択することができる。これらの材料の最大30%を粉砕木材または集落の廃棄物、集落および庭から出る植物廃棄物、その他のトウモロコシ廃棄物もしくは海藻で置き換えることができる。
【0025】
種々の実施形態では、チキソトロピーおよび表面張力を高める材料として、家畜排水1000kg当たり360〜450gの量に最終的に調節した酸化デンプンを使用することができる。また、ベントナイトと重炭酸ナトリウムの混合物を分離剤として使用することもできる。堆肥化は間欠的であっても連続的であってもよい。連続的堆肥化は、ウィンドロウターナーなどの堆肥製造機を用いて行うことができる。堆肥製造機は、吸収材を破砕し、吸収材に排水を注入および/または混合し、同時にその混合物の曝気を行うことができる。各サイクルの温度変動を小さくし、排水と吸収材の比率を最低25:1とすることができる。
【0026】
種々の実施形態では、家畜排水は、水相中に未粉砕の食物残渣が懸濁したものからなる。乾物含量は食餌のタイプ、使用する給餌および給水技術などの変動要因によって異なり得る。乾物含量は一般に肉牛では8〜15重量%、豚では3〜12重量%、家禽類では10〜25%未満である。種々の化学化合物の含量は定性的および定量的に変化させることができる。施肥後効果という観点から重要な化合物は、あらゆるタイプの家畜排水に見られる。これらの化合物には、尿素およびそれから生成されたアンモニアが含まれる。また、リン、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびその他の有機物質も含まれる。付随する物理的作用としては、数種の有機物、すなわち、臭気を発する脂肪酸を伴うアンモニアの蒸発である。化学的および物理的特徴は経時的に変化する。これらの変化は主として進行中の微生物学的プロセスによって引き起こされる。畜産農場からの未処理排水のpHは7前後であり、尿素からアンモニアを放出するウレアーゼ酵素を含有する。低分子脂肪酸はアンモニアとともに蒸発し、それらが臭気を発する。本発明者は、デンプンまたはセルロースの誘導体を加えることでアンモニアおよび脂肪酸の蒸発が抑えられることを見出した。デンプンまたはセルロース誘導体は、家畜排水の表面張力を高め、かつ、チキソトロピー、密度および吸収材との密着性も高める。これらの物質は液体中に容易に分散することはできず、溶解度には悪影響を及ぼす。溶解度を高めるためには、これらの物質をベントナイトおよび重炭酸ナトリウムなどの分離剤と混合することができる。
【0027】
家畜排水に添加する薬剤の機能は、3つの特性域をカバーする。主としてこれらの薬剤は表面張力、チキソトロピーおよびスラリー粘度を調整し、その結果、吸収材に対する結合能が著しく増強される。
【0028】
薬剤はまた、家畜排水中の微生物叢の活性も高める。多糖類を添加することにより、細菌の増殖が高まる。細菌の増殖はリグノセルロース吸収材の好気性発酵に使用される。
【0029】
そして、最後に重要なこととして、これらの薬剤は家畜排水の処理に伴う臭気を抑え、アンモニアの蒸発による窒素の損失を抑える。
【0030】
繁殖の速い微生物は、前記薬剤を含有するこの栄養培地上で増え続ける。バクテリオイデス科(Bacterioidaceae)およびペプトコッカス科(Peptococcaceae)の細菌はセルロース分解能があり、農用動物の消化管で働く。バクテリオイデス科およびペプトコッカス科の増殖は、分解の開始時に、酸素の存在によって支えられる。リグノセルロース物の発酵プロセスは、急激な温度上昇と水の減少を生じる(水は蒸発し、微生物の増殖によっても用いられるため)。アンモニア態窒素を有機複合体に変換する発酵プロセス中に、吸収材および腐食質(humine)の出現から、アンモニア態窒素を有機複合体に変換する微生物によるリグノース分解が起こる。
【0031】
特定の実施形態では、家畜排水を施肥基質に変換する発酵プロセスを首尾よく進める条件を得るためには、少なくとも20%の家畜排水が2ヶ月以内のものである(あるいはまた、冬季では30%)。それより古い家畜排水は微生物の分裂プロセスの速度が毎日30%低下する。古い排水はまた、アンモニア蒸発のために窒素の損失がある。これは最終の有機肥料における窒素含量の低下を招き、この材料の肥料としての有効性を低下させる。
【0032】
藁、トウモロコシ茎葉またはおがくずなどの有機吸収材に排水を最初に適用する際の水と吸収材の比率は使用する吸収材によって異なり得る。最初の飽和段階で、おがくず1重量部に対して家畜排水4〜7重量部の比率が達成できる。藁の場合、家畜排水:藁の比は7:1〜10:1w/wであり得る。
【0033】
この混合物は第1サイクルの後でさえ肥料の特徴を有するが、吸収材は完全に分解されておらず、吸収能は使い尽くされてはいない。追加の排水を投入することができる。温度は50℃〜70℃の間を極大とする。これにより、病原性および日和見病原性微生物および雑草種子が繰り返し破壊/不活性化される。またこれにより、養分、特に有機複合体中に結合している窒素の含量が増え、アンモニア態窒素の含量が全窒素の3%未満となる。
【0034】
またその結果、フミン酸も増えるが、これは有利な高温下でのリグノセルロース材料の分解から生じるものである。フミン酸含量が高いと、土壌から植物への養分の移行が向上する。重金属塩を伴って形成されたフミン酸の一部の画分は水に不溶であり、食物連鎖における重金属の循環を減速させる。
【0035】
アンモニア態窒素は非水溶性有機複合体に変換されるが、このことは貯蔵期間中の養分の損失が無いか、またはわずかであることを意味する。
【0036】
排水のチキソトロピー特性の調整は、密度と吸収材への接着能を高める。セルロースおよびデンプンの誘導体が有利である。
【0037】
製造された有機肥料は圃場の敷地に貯蓄しておくことができ、標準的な化学肥料と置き換えることができるか、またはその施与を根本的に抑えることができる。
【0038】
養分に関する試験を行うと、植物成長または生産物体積が20〜25%増加することが確認できる。
【0039】
最終有機肥料製品は土壌の生物学的バランスと腐植質の量を回復させる。この肥料製品が施与されると、窒素性物質およびその他の無機物質の地下水源への漏出を軽減または防止する。最終有機肥料は土壌中で有利な相対湿度を保つ。
【0040】
有機肥料の製造中に、雑草種子は発酵プロセスによって破壊される。
【0041】
有機肥料の製造は、家畜排水またはその集落排水との混合物を固体基質に変換することによって家畜排水の処分を可能にする。排水の処理中に悪臭は除去され、その養分は固体有機肥料中に保持される。
【0042】
有機肥料は、農業慣行上必要な時に使用することができる。有機肥料の製造は畜産農業に近接して行うことができる。他の実施形態では、有機物が混入した他の排水を処理することができる。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は単に例示を目的とし、本開示またはそのいずれの実施形態をも限定するものではない。
【0044】
実施例1
5%乾物を含む養豚スラリーを、排水1メートルトン(1000kg)当たり400gの薬剤と混合した。この薬剤はチキソトロピー剤であり、最終的に添加調整した89w/w%の酸化デンプン、6w/w%ベントナイト(bentonit)および5w/w%重炭酸ナトリウムを含んだ。排水をこのチキソトロピー剤と2時間混合した。
【0045】
改質された排水をナタネおよび穀類の藁に10:1w/wの比率で適用するとともに、この混合物を絶えず曝気した。発酵プロセスは27時間後に始まった。4日後に外部温度が20℃に達した際に、堆肥化材料の内部温度は62℃に達していた。次のサイクルでは、さらなる被改質排水を堆肥化混合物に、堆肥化混合物と元の吸収材が8:1w/wの比率で、この混合物を絶えず曝気しながら適用した。20時間以内に、堆肥化混合物の温度が65℃に達した。定期的に曝気してさらに14日後に、さらなる被改質排水を、堆肥化混合物に、元の吸収材重量に対して5:1w/wの比率で適用した。3週間後に、再び第4サイクルを繰り返した。もう一度、さらなる排水を堆肥化混合物に、元の吸収材重量に対して4:1の比率で適用した。1重量部の吸収材に対して合計31重量部の排水が適用された。第2および第4のサイクルでは、養豚スラリーの20%を農業生産からの他の排水およびポテトチップス製造からの排水に置き換えた。
【0046】
この有機肥料は37%w/wの乾物含量、25%w/wの有機物質、22%w/wの腐植質および2%w/w窒素を含んでいた。
【0047】
家畜排水は、栄養価を保つためには14日以内に処理すべきである。
【0048】
混合は、ポンプおよび/またはミキサーを含め、当技術分野で公知の任意の方法により行うことができる。次に、改質スラリーは、タンク(例えば、可動式タンク)など任意の形式で吸収材に輸送および/または適用してもよい。吸収材と適用されたスラリーの混合は、トラクター牽引式の回転耕耘機を使用するなど、機械的経路で行うことができる。吸収材および最終基質の取り回しにフロントローダーを用いてもよい。
【0049】
このプロセスは直接圃場で行うこともでき、得られた有機肥料は、その後の施与に備えて貯蓄しておくことができる。スラリーの漏出は無く、全プロセスが不利な気象条件(例えば、雨、雪、−15℃までの温度)でも実施可能である。その区域が極めてぬかるんでいたり、重機が入れなかったりする場合には、このプロセスを土壌表面、空いているサイレージピットまたは他のいずれの類似の場所においても実施可能である。
【0050】
本発明による有機肥料の製造中に、堆肥化混合物に石灰石またはその他の化合物を添加することができる。
【0051】
実施例2
本有機肥料製造の全方法を継続した。排水を吸収材に混合し、同時にこの混合物を曝気したところ、各サイクル中の温度変動は抑えられた。
【0052】
吸収材として農業廃棄物と集落廃棄物の混合物を1:1w/wの重量比率で用いた。堆肥化プロセスを開始させるために、3重量%のベントナイト(betonies)および4重量%の重炭酸ナトリウムとともに、最終的に調節されたデンプンを含有する薬剤で100%均質化された養豚スラリーを使用した。2トンの処理済み養豚スラリーを、バッチ内の1メートルトンの吸収材の上に1日間施与した。次に、混合した浄化プラントの汚泥と養豚スラリーを、6:4のw/w比で施与した。最終混合物の液相用量と吸収材は25:1w/wであった。
【0053】
得られた有機肥料は35w/wの乾物含量、25%w/wの有機物、20%w/wの腐植質、および2.5%w/wの窒素を含んでいた。
【0054】
この堆肥化プロセスの有効性は、吸収材の物理的特徴に依存し得る。例えば、堆肥化プロセスの有効性は、空気および液体に触れるその表面の大きさ、ならびにその化学組成に依存し得る。有効性はまた、排水の微生物組成および化学組成、ならびに天候にも依存し得る。例えば、木くずは空気や液体に触れる表面が藁よりも小さく、その結果、分解プロセスが遅くなり、集落廃棄物は家畜排水よりも発酵活性が低い。
【0055】
肥料の用量は、他の材料と併せて計画することができる。例えば、本明細書に記載されている配合物を、化学肥料と組み合わせることができる。通常用いられる化学肥料の5%用量までを保持し、残りを1:8〜1:10の間の比率で有機肥料に置き換えることを奨励することができる。これは100kgの化学肥料を800kg〜1000kgの間の有機肥料に置き換えることができることを意味する。有機肥料は、上記のように、最適な肥料効果を達成できるように特定の土壌要求に特異的に応じて結成することができる。
【0056】
有機肥料の量は、様々で土壌に施与することができる。同様に、農業技術上の施与期間も様々であり得る。種々の実施形態では、有機肥料は土壌中にすき込むこともできるし、耕起なしで施与することもできるし(例えば、コンビネーターまたはディスクハローによる)、土壌にすぐに入ることなく表面散布することもできる。成熟した有機肥料が安定化された場合には、養分、特に窒素の損失は最小限であるかないしは全くなく、窒素は99%まで有機物質に結びついている。
【0057】
化学肥料の過剰施肥による土壌分解が存在し、家畜排水の広域施与が伴えば、重大なマイナス点に達し得る。水源も同時に汚染される。水管理システムの全体が広域に渡って危機的状態に陥る。
【0058】
この意味において、提案される有機肥料の生産は、家畜スラリーの圃場施与と化学肥料の過剰施肥の環境への悪影響を同時になくすことが実現可能であることを示す。この有機肥料の施肥は、この2つの緊急の環境問題を解決し、土壌品質の自然回復をもたらし、水資源の汚染を軽減する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
天然リグノセルロース材料と排水、すなわち、畜産からのスラリーに基づく有機肥料、およびその製造方法が、農業および食品工業に適用可能である。