【文献】
音楽ネット配信の権利処理を一元化、「Fluzo」が4月1日スタート,[online],2010年 3月31日,[検索日:2015年1月23日],URL,http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100331_358108.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
概 要
シンジケーションシステムは、互いに参加しているメディアホストサービスとコンテンツオーナー(owner: 所有者)との間の権利の管理を支援する(facilitate: 容易にする、促進する)。個々のメディアホストサービスおよびコンテンツオーナーは、シンジケーションシステムに参加するか否かを選択できる。シンジケーションシステムは、シンジケーションシステムへの共同参加を選択した事業体(エンティティ)に対し、コンテンツ認識システムを使用して、参加メディアホストサービスがホストするコンテンツを識別する。メディアコンテンツが識別されると、シンジケーションシステムは、識別したコンテンツに関連する権利管理ポリシーを判断する。次いで、該シンジケーションシステムは、識別したポリシーに従って、メディアホストサービスと該識別したコンテンツのオーナーとの間の権利管理サービスを支援(促進)する。権利管理サービスは、様々な権利管理ポリシーに基づいて、例えば、メディアホストサービスに対してコンテンツを遮断(ブロック)するように命じることと、ホストコンテンツに付加する広告を選択して、メディアホストサービスとコンテンツオーナーとの間の収益の分配を管理することと、および/またはホストコンテンツの利用数を追跡して、追跡結果の統計をコンテンツオーナーに提供することを含んでもよい。
【0024】
シンジケーションシステムは、メディアホストサービスにアップロードされたユーザ提供コンテンツ(例えば、動画ファイルおよび/またはオーディオファイル)に埋め込まれたサウンド記録および作品を自動的に識別する、コンテンツ認識システムを使用する。本明細書にて使用するように、「サウンド記録」および「作品」は、それぞれ著作権法に基づいて「サウンド記録」および「作品」と認識される仕事の成果である。コンテンツ認識システムは、サウンド記録と作品の両方を自動的に識別することによって、レコード会社が発売した或る作品のオリジナル録音(例えば、スタジオ録音)の使用と、カバー演奏、新たに発売されたバージョン、別バージョン(例えば、アコースティック・バージョン)または生演奏の映像など、作品の他の録音の使用、の両方を検出することができる。メディアコンテンツが識別されると、シンジケーションシステムは、コンテンツオーナーの代理として、所有権の管理および収益化に当たってメディアホストサービスを支援することができる。従って、シンジケーションシステムは、例えば、オーナーの代理としてメディアホストサービスに対して該メディアコンテンツを遮断するよう命じることができ、またはシンジケーションシステムは、的を絞った広告を該メディアコンテンツに付加して提供すると共に、コンテンツオーナーにロイヤリティを分配することによって、該メディアコンテンツの収益化に当たってメディアホストサービスを支援することができる。
【0025】
アップロードされたメディアコンテンツを全て手動で確認することは、よく言っても実用的ではないので、大規模なメディア権利のホスト・管理ソリューションにとって、メディアコンテンツの自動検出は、必要とは言わないまでも有益ではある。さらに、メディアホストサービスへのアップロードの可能性がある全ての作品またはサウンド記録に関連する所有権を人間が記憶するのは、困難または不可能である。シンジケーションシステムは、効率的かつ拡張可能な方法でサウンド記録および作品を自動検出することによって、権利保有者が求める手動による介入の件数を最小限に抑えることができる。この自動検出は、日々何千または何百万もの新規のユーザ提供メディアアップロードを受信するような高トラフィックのメディアホストサービスにとって、特に有益である。これによって、著作権保護作品の利用全体および著作権保護作品に係るロイヤリティの支払いの効率性が向上し、当該録音および作品の著作権者にとって有益となる。
システム・アーキテクチャ
【0026】
図1Aは、シンジケーションシステム100の一実施形態を示す。シンジケーションシステムは、コンテンツ認識システム130と、シンジケーションサーバ180とを備える。シンジケーションシステム100は、複数のコンテンツオーナークライアント装置170(例えば、コンテンツオーナークライアント装置170−1、170−2、...、170−N)と、複数のメディアホストサービスシステム110(例えば、メディアホストサービスシステム110−1、110−2、...、110−N)とに(例えば、ネットワーク上で)連結される。各コンテンツ・オーナーは、通常、シンジケーションシステム100に参加するか否かを(例えば、シンジケーションシステム100が設けるコンテンツオーナークライアント装置170上のインターフェースを介して)選択でき、参加する場合は、どの特定のメディアホストサービスシステム110に参加するかを選択できる。同様に、各メディアホストサービスシステム110は、通常、シンジケーションシステム100を使用して、シンジケーションシステム100に参加するか否かを選択でき、参加する場合は、どの特定のコンテンツオーナーと参加するかを選択できる。参加メディアホストサービスシステム110について、コンテンツ認識システム130は、メディアホストサービスシステム110がホストするメディアコンテンツを識別し、そのメディアコンテンツの所有権を有する参加コンテンツオーナーを検索する。シンジケーションサーバ180は、次いで、参加メディアホストサービスシステム110と参加コンテンツオーナーとを(クライアント装置170を介して)インターフェース上で接続し、参加メディアホストサービスシステム110と参加コンテンツオーナーとの間の権利管理サービスを支援する。
【0027】
図1Bは、参加メディアホストサービスシステム110およびコンテンツオーナークライアント装置170と共に運用されるシンジケーションシステムの一実施形態を示す。クライアント装置は、ネットワーク上(図示せず)で、サービスシステム110およびシンジケーションシステム100との通信を行う。なお、本実施形態の関連態様の不明瞭化を回避するために、従来のコンポーネントを必ずしも図示していない。
【0028】
メディアホストサービスシステム110は、ユーザが動画(ビデオ: video)ファイルおよびオーディオファイルなどのメディアコンテンツをアップロード、共有、および視聴できるように構成される。一実施形態において、ユーザは、ユーザ・クライアント装置150が実行するウェブブラウザからアクセス可能なメディアホストウェブサイトを介して、メディアホストサービスシステム110と交信する。ユーザは、ユーザ・クライアント装置150を使用することによって、ユーザ提供メディア151をメディアホストサービスシステム110にアップロードでき、および/またはメディアホストサービスシステム110が(例えば、ネットワーク上で支援されるオンライン・インターフェースを介して)ホストする(提供する)ユーザ要求メディア153を視聴することができる。メディアホストサービスシステム110は、シンジケーションシステム100を使用して、メディアホストサービスシステム110がホストするメディアコンテンツに関連する権利管理ポリシーを識別し、その実施を支援する。図示するように、シンジケーションシステム100は、メディアホストサービスシステム110からオーディオクリップ141を受信して、対応する権利管理情報145を返送する。
【0029】
一実施形態において、メディアホストサービスシステム110は、インジェストサーバ112と、メディアサーバ114と、コンテンツデータベース120とを備える。代替の構成において、メディアホストサービスシステム110は、別のモジュールまたは追加モジュールを備えてもよい。
【0030】
インジェストサーバ112は、ユーザ・クライアント装置150からユーザ提供メディア151(例えば、オーディオファイルまたは動画ファイル)を受信する。インジェストサーバ112は、ユーザ提供メディア151のオーディオ処理および/または動画処理を任意で行い、例えば、ユーザ提供メディア151を標準フォーマットにエンコードする。ユーザ提供メディアコンテンツ151は、アップロードされると、コンテンツデータベース120に格納される。ユーザは、ユーザ・クライアント装置150を使用して、コンテンツデータベース120に予め格納されているホストメディアコンテンツの視聴を要求できる。メディアサーバ114は要求に応じて、ユーザの視聴用に、コンテンツデータベース120からユーザ・クライアント装置150へユーザ要求メディア153を流す。
【0031】
メディアホストサービスシステム110は、シンジケーションシステム100のコンテンツ認識システム130を使用して、該メディアホストサービスシステム110がホストするメディアコンテンツに関連する所有権を識別する。図示するように、コンテンツ認識システム130は、メディアホストサービスシステム110からオーディオクリップ141を受信して、シンジケーションサーバ180により使用される対応する所有権情報143を返送する。また、コンテンツ認識システム130は、コンテンツオーナー(例えば、レコード会社および/または出版社)が、コンテンツオーナークライアント装置170を介して、所有権メタデータ161および参照記録物163を提供できるようにする。参照記録物163および所有権メタデータ161は、コンテンツオーナーが所有権の行使を求めるメディアコンテンツ(例えば、サウンド記録または作品)に対応する。コンテンツ認識システム130は、オーディオクリップ141と1つ以上の参照サウンド記録163との照合を行い、マッチが見つかった場合に、対応する所有権情報143を返送する。
【0032】
一実施形態において、コンテンツ認識システム130は、インジェストサーバ132と、メロディ指紋モジュール134と、オーディオ指紋モジュール136と、索引付けモジュール138と、照合モジュール140と、メロディID参照データベース142と、オーディオID参照データベース144と、所有権データベース146とを備える。代替の構成において、コンテンツ認識システムは、異なるモジュールまたは追加モジュールを備えてもよい。
【0033】
インジェストサーバ132は、コンテンツオーナークライアント装置170から参照記録物163および所有権メタデータ161を受信する。参照記録物とは、レコード会社または他の事業体が所有権を有する「サウンド記録」をいう。通常、出版社または他の事業体も、該「サウンド記録」で具現化された「作品」の所有権を有する。参照記録物163は、何れの種類のオーディオ用コーデック(例えば、AAC、HE-AAC、MP3、FLAC、ALAC、OGG、WMAなど)でエンコードされたオーディオファイルを備えてもよく、オーディオファイル全体(例えば、演奏全体の録音)またはオーディオファイルの一部分であってもよい。インジェストサーバ132は、参照記録物163のオーディオ処理を任意で行い、例えば、参照記録物163を標準フォーマットにエンコードする。所有権メタデータ161は、通常、参照記録物163およびコンテンツオーナーに関する識別情報を格納する、テキストベースのファイルを備える。所有権メタデータ161は、例えば、アーティスト、曲名、ジャンル、レコード会社、出版社などの様々な分類またはフィールドで構成されてもよい。
【0034】
また、インジェストサーバ132は、メディアホストサービスシステム110からオーディオクリップ141を受信するように構成される。オーディオクリップ141は、参照記録物163と同様に、何れの種類のオーディオ用コーデックでエンコードされたオーディオファイルを備えてもよく、オーディオファイル全体またはオーディオファイルの一部分であってもよい。代替として、オーディオクリップ141は、動画ファイル(または動画ファイルの一部分)のオーディオ部分を備えてもよい。他の実施形態において、オーディオクリップ141は、実際のオーディオファイルではなく、オーディオクリップの圧縮表現(例えば、指紋)であってもよい。インジェストサーバ132は、オーディオクリップ141のオーディオ処理を任意で行い、例えば、オーディオクリップ141を標準フォーマットにエンコードするか、または動画ファイルのオーディオ部分を抽出する。
【0035】
オーディオ指紋モジュール136は、コンテンツオーナーが提供する参照サウンド記録163の参照オーディオ指紋(または「オーディオIDファイル」という)を作成する。オーディオ指紋モジュール136は、レコード会社または他の事業体(エンティティ)が所有する特定のサウンド記録を一意に(ユニークに)表すオーディオ指紋を作成するように構成されている。1つのオーディオ指紋は、1つの参照サウンド記録163のオーディオ特徴を、他のオーディオ指紋と効率的に比較および照合(マッチング)できるようなフォーマットで簡潔に表している。オーディオ指紋モジュール136は、メディアホストサービスシステム110から受信したオーディオクリップ141のオーディオ指紋を同様に生成し、該生成したオーディオ指紋と前記参照オーディオ指紋とを比較することができるようにする。
【0036】
メロディ指紋モジュール134は、コンテンツオーナーが提供する参照サウンド記録の参照メロディ指紋(または「メロディIDファイル」という)を作成する。メロディ指紋は、或る作品のメロディに基づいて、該作品(これは、様々なスタジオ録音、生演奏の録音、またはカバー演奏の録音として具現化され得る)を一意に(ユニークに)表すように設計される。メロディ指紋は、参照サウンド記録のメロディの特徴を、他のメロディ指紋と効率的に比較および照合(マッチング)できるようなフォーマットで簡潔に表している。特定の演奏記録を一意に表す前記オーディオ指紋とは対照的に、該メロディ指紋は、演奏で具現化される作品のメロディをその代わりに表し、音階調、器楽編成、エンコーディングフォーマットの違い、ならびにその他の演奏手法、録音処方および信号処理手法の違いが、該メロディ指紋の特徴に実質的に影響を与えないようなやり方で、該メロディを表している。従って、特定の作品の生演奏のメロディ指紋が、その作品のスタジオ録音のメロディ指紋とマッチする一方で、生演奏のオーディオ指紋はスタジオ録音のオーディオ指紋とはマッチしない。メロディ指紋モジュール134は、同様に、メディアホストサービスシステム110から受信したオーディオクリップ141のメロディ指紋を作成する。
【0037】
一実施形態において、メロディ指紋モジュール134は、オーディオクリップ141の異なる時点の間に生じる一連の
音程を検出し、これを簡潔に表す。
音程表現を用いたメロディ指紋については、Richard Lyon等による米国特許出願第12/826,623号、表題「Intervalgram Representation of audio for Melody Recognition」にさらに記載されており、その内容を参照して本明細書に組み込む。当該実施形態では、先ず、オーディオクリップ141を処理して、安定化聴覚イメージ(SAI)を作成する。SAIは、ヒトの聴覚系がどのように音を処理および表現するかをシミュレートするために設計された聴覚モデルを使用して、オーディオクリップ141を表す。SAIを使用することによって、ヒトの耳が認識するオーディオ特徴の特性である、オーディオクリップ141の表現の特徴を抽出することができる。例えば、入力オーディオクリップ141で認識される主要な楽音は、当該入力オーディオクリップ141全体に亘って一定時間ごとに抽出可能である。抽出したこれらの楽音は、該入力オーディオクリップの製作に使用した器楽編成、録音パラメータ、エンコード手法または信号処理手法に対して概ね不変である。抽出した楽音のそれぞれは、例えば、12音階の1音と対応可能である。代替として、さらに細かい音階を使用してもよい(例えば、12音階の代わりに1オクターブあたり可能な36音階)。従って、入力オーディオクリップ141は、該オーディオクリップ141において生じる一連の認識可能な楽音を備える1つの表現に縮小される。該表現を調性に対して不変な表現に変換するために、抽出した一連の楽音をさらに処理して、時間的に連続する楽音間の
音程(例えば、全音および/または半音の度数)を決定する。この一連の
音程が、調性に対して不変なメロディ指紋を形成する。さらに、該メロディ指紋は、器楽編成、テンポ変化、ならびに他の演奏、録音および処理の違いに対して実質的に不変である。コンテンツ認識システムは、該メロディ指紋の表現によって、現行の著作権法で同一作品の具現化と認識される程度に類似している作品の参照記録物を検索できる。従って、該メロディ指紋を使用することによって、例えば、或る作品の生演奏および/またはカバー演奏と、当該作品の異なる参照記録物とを正確に照合(マッチング)することができる。
【0038】
索引付けモジュール138は、オーディオIDデータベース144およびメロディIDデータベース142のそれぞれに格納された参照オーディオ指紋および参照メロディ指紋の索引(インデックス)を作成する。様々な索引スキームを使用できるが、一般的に、索引スキームは、オーディオクリップ141の入力指紋と参照データベース142、144の参照指紋とを比較および照合(マッチング)する際の効率性を向上するように設計される。一実施形態において、索引付けモジュール138は、局所性鋭敏型ハッシュ(LSH)帯域の索引スキームを適用する。LSH帯域の索引時において、参照データベース142、144の参照指紋は、一意な固定長バイト列のセット(即ち、「索引キー」)で索引されるが、これは一実施形態において4バイト長である。各索引キー(即ち、一意の4バイト列)に関し、LSHの索引は、その特定のバイト列を含む、参照データベース142、144内の全ての参照指紋に対するポインタを格納する。従って、例えば、各参照指紋A、DおよびXが4バイト列{A5 B1 43 67}を含む場合、LSHの索引は、索引キー{A5 B1 43 67}に関連して、参照データベース142、144内の参照指紋A、DおよびXの位置に対するポインタを格納する。入力した録音の指紋から得られる索引キーによってLSHの索引を問い合わせることができ、LSHの索引は、特定の索引キーを含む参照データベース142、144に格納された各参照オーディオクリップの指紋に対するポインタを返送することができる。LSH帯域の索引付けは、参照データベース142、144の参照指紋を索引付けするための索引スキームの一例に過ぎない。代替の実施形態において、索引付けモジュール138は、異なる索引スキームに従って参照指紋を索引付けできる。
【0039】
照合(マッチング)モジュール140は、オーディオクリップ141を表すオーディオ指紋およびメロディ指紋(IDファイル)と、参照データベース142、144の参照オーディオ指紋および参照メロディ指紋とを比較して、オーディオクリップ141と最もマッチする参照サウンド記録および/または参照作品を決定する。照合(マッチング)の結果に基づいて、様々な動作が行われる。
【0040】
先ず、オーディオIDのマッチとは、オーディオクリップ141が参照サウンド記録の1つとマッチすることを意味する。また、オーディオIDのマッチとは、オーディオクリップ141で具現化された作品が、参照サウンド記録で具現化された作品とマッチすることを意味する。従って、オーディオIDのマッチについて、照合モジュール140は、通常、サウンド記録の所有権と作品の所有権の両方を識別する。
【0041】
次に、オーディオIDがマッチしない状況でのメロディIDのマッチとは、例えサウンド記録とマッチしない場合であっても、当該オーディオクリップ141において具現化された作品が、参照サウンド記録の少なくとも1つにおいて具現化された該作品とマッチすることを意味する。メロディIDのマッチは、例えば、オーディオクリップ141が該作品のカバー演奏または生演奏を具現化する一方で、参照データベースが当該作品の別の録音(例えば、スタジオ録音)を含む場合に起こり得る。従って、オーディオIDがマッチしない状況でのメロディIDのマッチについて、照合モジュールは、通常、作品の所有権のみを識別(特定)し、サウンド記録の所有権を識別(特定)することはない。
【0042】
照合モジュール140は、前述の結果に基づいて、前記オーディオクリップ141の所有権を有すると識別(特定)された事業体(エンティティ)を指し示す所有権情報143を出力する。
図5を参照して、この処理を以下に詳述する。
【0043】
上述したように、照合モジュール140は、オーディオクリップ141の入力指紋と、参照データベース142、144内の1つ以上の参照指紋とのマッチを判定する。検索効率を向上するために、照合モジュール140は、通常、索引付けモジュール138と共に動作し、先ず、オーディオクリップ141の指紋と最もマッチする可能性が高い参照指紋の候補を挙げる。例えば、LSH帯域の索引付けを使用する一実施形態において、索引付けモジュール138は、オーディオクリップ141の入力指紋を、索引キーのセットとなる複数の帯域(例えば、4バイト長の帯域)に分割する。索引付けモジュール138は、これらの索引キーを使用してLSH帯域の索引を問い合わせ、LSH帯域の索引は、参照データベース142、144内の少なくとも1つの索引キーを含む参照指紋候補のポインタセットを返送する。参照指紋候補のセットが識別されると、照合モジュール140は、入力指紋と各参照指紋候補とのマッチメトリック(マッチ計量値)を計算する。マッチメトリックは、マッチの質(例えば、スコア、距離、確率、または他の測定参照)に関する評価指数を示す。例えば、一実施形態において、マッチメトリックは、オーディオクリップ141の指紋と、参照データベース142、144内の1つ以上の参照指紋候補との間のユークリッド距離またはマハラノビス距離である。算出した参照指紋候補とオーディオクリップ141の指紋との間のユークリッド距離またはマハラノビス距離が閾値未満の場合に、参照指紋候補は、入力オーディオクリップ141の指紋とマッチするとみなされる。
【0044】
代替の実施形態において、索引付けモジュール138または照合モジュール140は、指紋モジュール134、136のうちの1つではなく、コンテンツ認識システム130の外部にある指紋ソースから、オーディオクリップ141の指紋表現を受信することができる。これらの実施形態では、指紋モジュール134、136が除かれて、インジェストサーバ132は、オーディオクリップ141自体を受信する代わりに、オーディオクリップ141を表す指紋を受信するように構成される。例えば、一実施形態において、シンジケーションシステム100は、参加メディアホストサービスシステムに対して、指紋モジュール134、136のインスタンスを提供する。本実施形態において、個々のメディアホストサービスシステム110によって指紋の付与が行われ、指紋は次いで、シンジケーションシステム100による処理用として提供される。別の実施形態では、メロディ指紋モジュール134および指紋モジュール136とは異なる指紋モジュールが、参加メディアホストサービスシステムに提供される。この指紋モジュールによって、メディアホストサービスシステム110は、ホストメディアファイルのコンパクトな中間表現を作成し、これをシンジケーションシステム100に提供できる。次いで、コンテンツ認識システム130は、この中間表現からメロディ指紋およびオーディオ指紋を得てもよい。
【0045】
メロディID参照データベース142は、複数の参照記録物の参照メロディ指紋を格納し、各参照メロディ指紋は、それぞれ特定の作品を表す。同様に、オーディオID参照データベース144は、複数の参照記録物の参照オーディオ指紋を格納し、各参照オーディオ指紋は、それぞれ特定のサウンド記録を表す。
【0046】
所有権データベース146は、参照記録物163として具現化された参照サウンド記録および/または作品に関連する所有権を識別(特定)する所有権メタデータを格納する。所有権データベース146に格納される所有権メタデータの例を、
図3乃至4を参照して以下でさらに詳細に説明する。また、所有権メタデータは、コンテンツのオーナーが、仮にも、サウンド記録および/または作品に関連する権利の行使(例えば、遮断、追跡または収益化)をどのように希望するかを示す所有権ポリシーを含む。様々な所有権ポリシーを扱う処理を、
図6を参照して以下でさらに詳細に説明する。
【0047】
別の実施形態において、作成したオーディオクリップ141のオーディオ指紋および/またはメロディ指紋は、追加の参照指紋としてメロディID参照データベース142およびオーディオID参照データベース144に格納される。このように、コンテンツオーナーは、特定の作品の追加記録物または特定のサウンド記録の追加インスタンスを提供することによって、参照データベース142、144を補完できる。
【0048】
シンジケーションサーバ180は、コンテンツ認識システム130から所有権情報143を受信し、メディアホストサービスシステム110に権利管理情報145を提供して、権利管理ポリシーを実行する。一実施形態において、シンジケーションサーバ180は、広告データベース122と、広告管理エンジン(モジュール)118と、権利管理エンジン116とを備える。代替の構成において、メディアホストサービスシステム110は、別のモジュールまたは追加モジュールを備えてもよい。
【0049】
権利管理エンジン116は、メディアコンテンツに関する所有権ポリシーの管理および行使を実行し、権利管理情報145をメディアホストサービスシステム110に提供する。例えば、一実施形態において、コンテンツオーナーは、メディアアイテムに関する所有権ポリシーを設定して、当該メディアアイテムを「追跡」、「収益化」または「遮断」(ブロック)することができる。コンテンツオーナーがコンテンツの遮断を選択する場合、権利管理情報145は、コンテンツデータベース120からの該当コンテンツの削除を求め、または、そうしない場合は、ユーザ・クライアント装置150による該当コンテンツへのアクセスの禁止を求める、メディアホストサービスシステム110への命令を含む。コンテンツオーナーが該当コンテンツの収益化を選択する場合、権利管理情報145は、ユーザ要求メディア153と共に提示される広告を含む。さらに、権利管理エンジン116は、通常、メディアホストサービスシステム110とコンテンツオーナーとのライセンス契約に基づいて、広告によって生じるロイヤリティをメディアホストサービスシステム110とコンテンツオーナーとに分配する。コンテンツオーナーが該当コンテンツの追跡を選択する場合、権利管理情報145は、シンジケーションサーバ180へのコンテンツに関する統計情報(例えば、閲覧数)の提供を求める、メディアホストサービスシステム110への命令が含まれる。次いで、権利管理エンジン116は、コンテンツオーナーに対して、該追跡した統計情報を提供し得る。
【0050】
広告データベース122は、コンテンツオーナーがコンテンツの収益化を選択する際に、ユーザ要求メディア153と共に提示される広告コンテンツを格納する。広告コンテンツは、画像(イメージ: image)形式、動画(ビデオ: video)形式、音声(オーディオ: audio)形式、テキスト形式、ハイパーリンク形式であってもよく、またはこれらのフォーマットの組み合わせであってもよい。広告管理モジュール118は、広告データベース122に格納される広告コンテンツへのアクセスを管理し、特定のユーザ要求メディア153と広告コンテンツとを関連付ける。一実施形態において、広告管理モジュール118は、ユーザ要求コンテンツ153に含まれるサウンド記録および/もしくは作品の特徴、ならびに/または当該コンテンツに関連する所有権情報に基づいて広告を選択する。例えば、広告管理モジュール118は、ユーザ要求メディア153で具現化されたサウンド記録の所有権を有するレコード会社のウェブサイトへのハイパーリンクを含んだ広告を選択してもよい。他の実施形態において、広告コンテンツは、ユーザに固有な情報およびユーザの好みなど、他の要因に基づいて選択される。
【0051】
代替の実施形態において、シンジケーションサーバ180の代わりに、個別のメディアホストサービスシステム110が広告管理モジュール118、広告データベース122および権利管理エンジン116が実行する1つ以上の機能を代わりに実行してもよい。例えば、一実施形態において、シンジケーションシステム100は、所有権の識別のみに関与し、メディアホストサービスシステム110が、コンテンツオーナーと共に、権利の管理方法の決定に関与する。別の実施形態において、シンジケーションシステム100は、権利管理ポリシーの識別およびロイヤリティの分配に関与するが、個別のメディアホストサービスシステム110が、広告の選択および付与に関与する。
【0052】
例えば、インジェストサーバ112、メディアサーバ114、権利管理エンジン116、広告管理システム118、インジェストサーバ132、メロディ指紋モジュール134、オーディオ指紋モジュール136、索引付けモジュール138および照合モジュール140を含む、メディアホストサービスシステム110およびシンジケーションシステム100の様々な構成要素(代替的にはモジュール)のそれぞれは、CPU、メモリ、ネットワーク・インターフェース、周辺機器インターフェースおよび他の周知のコンポーネントを備えた1つ以上のコンピュータを含む、サーバクラスのコンピュータシステムの一部として実装される。コンピュータ自体は、オペレーティングシステム(例えば、LINUX(登録商標))を実行することが好ましく、かつ超高性能CPUと、1G以上のメモリと、100G以上のディスク容量とを有することが好ましい。もちろん、データベースの容量が巨大化しない場合は、パーソナル・コンピュータおよび携帯用コンピュータを含む他種類のコンピュータを使用することができ、また、今後さらなる高性能コンピュータの開発が見込まれる場合は、本明細書の教示に従ってそれらを構成可能になることが予想される。モジュールは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えば、ハードディスク)に格納されたコンピュータ実行可能プログラムの命令を備える。コンピュータ実行可能プログラムの命令は、実行中にメモリにロードされ、システムの一部として含まれる1つ以上のプロセッサによって実行される。本明細書に記載した様々な動作を実行するように汎用コンピュータを構成すると、当該コンピュータが格納する特定の機能やデータは、その根底を成すオペレーティングシステムやハードウェア論理が提供し得る固有の能力とは異なる方式で当該コンピュータを構成する。従って、当業者には自明であるが、当該汎用コンピュータは専用コンピュータとなる。メディアホストサービスシステム110の一例として、例えば、YOUTUBE(登録商標)のウェブサイトが挙げられるが、他のメディアホストシステムも周知であり、これらのシステムは、本明細書に開示した教示内容に従って動作するように適合可能である。本明細書に記載し、名称を付けたメディアホストサービスシステム110およびシンジケーションシステム100の構成要素は、本明細書の一実施形態を示し、他の実施形態は、異なる名称の構成要素を含み得ることは言うまでもない。また、他の実施形態では本明細書に記載の構成要素が欠けていてもよく、および/または記載した機能を異なる方法でモジュール間に割り振ってもよい。さらに、1つ以上の構成要素に帰属する機能を1つの構成要素に組み込むこともできる。
【0053】
説明を分り易くするために、
図1Bにメディアホストサービスシステム110を1つだけ示すが、
図1Aに示すように、任意の数の異なるメディアホストサービスシステム110によってシンジケーションシステム100が使用されてもよい。他の代替の実施形態において、コンテンツ認識システム130は、メディアホストサービスシステム110の構成要素として組み込まれてもよい。さらに、メディアホストサービスシステム110は、多数のユーザ・クライアント装置150と交信してもよい。同様に、コンテンツ認識システム130は、任意の数のコンテンツオーナークライアント装置170と交信してもよい。さらに、1つのクライアント装置を、ユーザ・クライアント装置150およびコンテンツオーナークライアント装置170として使用できる。
【0054】
一実施形態において、メディアホストサービスシステム110は、メディアホストサービスシステム110によるアップロード・フローの一部として、オーディオクリップ141をコンテンツ認識システム130に提供する。従って、本実施形態において、ユーザ提供メディアコンテンツ151は、コンテンツデータベース120に格納される前、格納されると同時、または格納された直後に識別されて、所有権データベース146内の所有権メタデータが許可する場合に、他のユーザによるダウンロードまたは閲覧用にアクセス可能とされる。別の実施形態において、コンテンツ認識システム130は、コンテンツデータベース120に予め格納されている旧式コンテンツのスキャンを実行するように構成される。本実施形態によって、コンテンツ認識システム130は、例えば、コンテンツ認識システム130の初回使用以前に(例えば、メディアホストサービスシステム110がシンジケーションシステム100に参加する以前に)存在していたホストコンテンツに係る所有権を識別することができる。さらに、旧式コンテンツのスキャンは、コンテンツデータベース120に関連する所有権情報および使用ポリシーの更新に有用であり、これによってコンテンツ認識システム130は、新たな参照サウンド記録163、および随時変更される所有権メタデータ161を利用できるようになる。
動作および使用
【0055】
図2は、コンテンツ認識システム130が参照データベース142、144、146を作成する際に実行するための処理の一実施形態を示す。コンテンツ認識システム130は、コンテンツオーナークライアント装置170を介して、サウンド記録(所望の所有権ポリシーを含む)に対応する参照サウンド記録163および/または所有権メタデータ161をコンテンツオーナーから受信する(202)。場合によっては、参照サウンド記録163および/または所有権メタデータ161の一部分のみが、単一のコンテンツオーナーから提供される。例えば、出版社は、参照サウンド記録を提供せずに、作品に関連する所有権メタデータのみを提供してもよい。他の場合において、レコード会社は、サウンド記録の根底にある作品の所有権を有する単数または複数の出版社を特定せずに、該サウンド記録に関する所有権情報を提供してもよい。さらに別の場合において、コンテンツオーナーは、作品の所有権の一部のみ(例えば、50%の所有権)を有することを示してもよく、残りの所有権を有する他の事業体(エンティティ)を必ずしも特定しなくてもよい。断片的な情報を整理するために、コンテンツ認識システム130は、受信した情報を関連付け、これらの情報を一群のエントリにまとめ、各エントリを1つのサウンド記録または作品に対応させる(204)。さらに、当該作品を具現化する1つ以上のサウンド記録のエントリと作品のエントリとをリンク付けしてもよい。通常、断片的に提出された情報に共通する様々なメタデータ・フィールド(例えば、曲名、アーティスト名、識別番号など)を照合することによって、関連付けが行われる。
【0056】
オーディオ指紋モジュール136は、参照サウンド記録の参照オーディオ指紋を作成し(206)、サウンド記録の所有権メタデータと関連付けて参照オーディオ指紋を格納する(208)。メロディ指紋モジュール134は、該参照サウンド記録において具現化された作品を表す参照メロディ指紋を作成し(210)、該作品の所有権メタデータと関連付けて参照メロディ指紋を格納する(212)。従って、コンテンツ認識システム130は、提供された各参照記録物の参照オーディオ指紋および参照メロディ指紋の両方を作成する。
【0057】
図3は、或る作品に関連する所有権メタデータエントリの一例を示すグラフィックインターフェースである。例えば、コンテンツ認識システム130およびメディアホストサービスシステム110の管理者、ならびに/またはコンテンツのオーナーが、当該グラフィックインターフェースを使用してもよい。代替として、
図3に示すメタデータの全てまたは一部の使用を内部に限定してもよく、この場合はグラフィックインターフェースにメタデータを表示しなくてもよい。
【0058】
所有権メタデータは、異なる識別フィールドを備える幾つかのカテゴリに分類される。例えば、本実施形態において、所有権メタデータは、メタデータ302、所有権情報304、権利306、関連アセット308および参照コンテンツ310のカテゴリに分類される。メタデータカテゴリ302は、当該作品を識別する様々なフィールドを提供し、これには、例えば、識別子フィールド(例えば、CMSアセットID)、種類(例えば、作品またはサウンド記録)、提供者(例えば、参照データを提出した事業体)、ソース、カスタムID、追加日時(例えば、提出日/時間)、国際標準音楽作品コード(ISWC)、曲名、カテゴリおよび作曲者が含まれる。図示するように、幾つかのフィールドは、空欄であってもよく、この場合は現時点において情報が不明または未確認であることを示す。
【0059】
所有権情報カテゴリ304は、当該作品の所有権を有する事業体と、所有権を適用する国(所有権は国ごとに異なり得るため)と、該当する場合に所有権のパーセンテージまたは割合(国によっては所有権が2つ以上の事業体に分割されるため)を識別する。図示した例において、所有権情報は、「出版社A」が米国で当該作品の66.66%の所有権を有し、「出版社B」が米国で当該作品の33.34%の所有権を有することを示す。
【0060】
権利カテゴリ306は、コンテンツオーナーが選択した所有権ポリシー(「オーナーポリシー」)と、既知の場合は、ホストサービスが実際に適用するポリシー(「適用ポリシー」)とを示す。上記で説明したように、ポリシーには、例えば、収益化、追跡または遮断を含めることができる。権利カテゴリ306は、ドロップダウンボックス307を含み、閲覧者が(図で選択されているように)「マッチ請求」または「埋め込み請求」(図示せず)を選択できる。「マッチ請求」を(図示のように)選択すると、表示される所有権ポリシーは、マッチする作品が検出された場合に選択および/または適用される所有権ポリシーとなる。図示の例において、オーナーは「閲覧者の位置情報が米国である場合に収益化(および追跡)」を選択しており、ホストサービスシステムは同一のポリシーを適用する。代替として、ドロップダウンボックス307から「埋め込み請求」を選択すると、作品を埋め込むサウンド記録の所有権ポリシーが表示される。これによって、例えば、サウンド記録を所有するレコード会社が追跡または収益化を選択する場合であっても、出版社は当該サウンド記録の使用を遮断することができる。
【0061】
関連アセットカテゴリ308は、作品を埋め込む他のアセット(例えば、サウンド記録)を識別する。図示の例において、関連アセットカテゴリは、作品を具現化しているサウンド記録(「作品イ長調」)を識別する。
【0062】
参照コンテンツカテゴリ310は、当該作品のコンテンツオーナーが参照記録物を提供する場合に、該参照記録物を識別する。ここでは、何れの出版社も当該作品を表す参照記録物を提供していない。但し、関連アセット(例えば、曲名「作品イ長調」に関連するサウンド記録)の参照記録物の場所が判明している場合は、作品のマッチを判定する目的で、該作品を参照記録物とリンクさせるようにしてよい。
図3に示すエントリは、作品のメタデータエントリの一例に過ぎない。他の実施形態において、エントリは、異なるカテゴリ、フィールド、データおよび組織図を含み得る。
【0063】
図4は、参照サウンド記録に関連する所有権メタデータエントリの一例を示すグラフィックインターフェースである。サウンド記録の所有権メタデータは、
図3に示した作品の所有権メタデータと同様に、内部使用に限定されてもよく、従って、グラフィックインターフェースにメタデータを表示しなくてもよい。サウンド記録の所有権メタデータは、異なる識別フィールドを備える幾つかのカテゴリに分類される。例えば、本実施形態において、所有権メタデータは、メタデータ402と、所有権情報404と、関連アセット408と、参照コンテンツ410のカテゴリに分類される。
【0064】
メタデータカテゴリ402は、参照サウンド記録を識別する様々な情報を提供し、上述した作品メタデータと同一のフィールドを多数含む。さらに、メタデータカテゴリ402は、例えば、ジャンル、レコード会社、オーディオの国際標準レコーディングコード(ISRC)、商品コード(UPC)および音楽データ識別コード(GRid)など、サウンド記録に特有のフィールドを含んでもよい。
【0065】
所有権情報カテゴリ404は、サウンド記録の所有権を有する1つ以上の事業体(エンティティ)を指し示す。この場合、「レコード会社A」が全世界で該サウンド記録の所有権を有する。関連アセットカテゴリ408は、該サウンド記録が具現化しているその他のアセット(例えば、作品)を識別する。図示の例において、サウンド記録は、
図3を参照して前述した作品「作品イ長調」を具現化している。
【0066】
参照コンテンツカテゴリ410は、サウンド記録に関連する1つ以上の参照記録物を識別する。図示の例において、オーナー(レコード会社A)は、コンテンツ認識システム130によるサウンド記録の識別に使われる2種類の参照記録物を提供している。各参照記録物には様々な識別フィールドが設けられ、これには、例えば、参照ID、日時(例えば、提出日/時間)、種類(オーディオまたは動画)、提供者(例えば、提出した事業体)およびステータス(アクティブまたは非アクティブ)が含まれる。
図4に示すエントリは、サウンド記録のメタデータエントリの一例に過ぎない。他の実施形態において、エントリは、異なるカテゴリ、フィールド、データおよび組織図を含み得る。
【0067】
図5は、コンテンツ認識システム130がオーディオクリップ141に関連する所有権情報143を決定する際に実行するための処理を示すフローチャートである。コンテンツ認識システム130は、502:オーディオクリップ141を受信して、504:オーディオクリップ141を表すオーディオ指紋(例えば、オーディオIDファイル)を作成する。次いで、コンテンツ認識システム130は、506:オーディオクリップ141のオーディオ指紋が、オーディオIDデータベース144内の参照オーディオ指紋とマッチするか否かを判定する。オーディオ指紋のマッチが見つかった場合は、508:サウンド記録のコンテンツオーナーの代わりに、請求(クレーム)が作成される。オーディオ指紋の照合に関して、通常、サウンド記録のオーナー(通常はレコード会社)と作品のオーナー(通常は出版社)双方の代わりに請求が作成される。上記で説明したように、クリップ141のオーディオ指紋が参照オーディオ指紋とマッチすると、このマッチによって、該サウンド記録の所有権および該サウンド記録で具現化された作品の所有権が判明する。
【0068】
オーディオ指紋のマッチが見つからない場合、コンテンツ認識システム130は、510:オーディオクリップ141の根底を成すメロディを表すメロディ指紋を作成する。次いで、コンテンツ認識システム130は、512:入力オーディオクリップ141のメロディ指紋が、メロディIDデータベース142内の参照メロディ指紋とマッチするか否かを判定する。指紋がマッチした場合は、514:オーディオクリップ141で具現化された作品のコンテンツオーナーの代わりに、請求が作成される。但し、オーディオIDのマッチは見つからなかったので、オーディオクリップ141で具現化されたサウンド記録のオーナーの代わりに、請求を作成することはできない。
【0069】
オーディオIDおよびメロディIDとのマッチが見つからない場合は、516:オーディオクリップ141とマッチするものがコンテンツ認識システム130には存在しないので、請求は作成されない。
【0070】
効率化のため、ステップ506においてオーディオIDのマッチが見つかる場合には、通常、ステップ510‐514におけるメロディ指紋の作成および比較が不要となる。その代わり、サウンド記録のマッチが検出されると、通常、サウンド記録で具現化された作品を識別する関連アセットメタデータ408などのサウンド記録のメタデータから、根底を成す作品が判明する。他の実施形態では、マッチが見つかる場合であっても、オーディオ指紋と共にメロディ指紋を作成することができる。
【0071】
代替の実施形態では、オーディオクリップ141が入力される毎に、オーディオ指紋およびメロディ指紋の照合(マッチング)が行われる。本実施形態では、最もマッチするオーディオ指紋およびメロディ指紋のマッチの程度が、オーディオ指紋および/またはメロディ指紋のマッチを判定する際に考慮される。例えば、参照サウンド記録に対するメロディ指紋のマッチの程度が高い場合に(高信頼度)、同一の参照サウンド記録に対して本来は低いオーディオ指紋の信頼度(低信頼度)を高めてもよい。オーディオ指紋のみの比較ではマッチの程度が不明瞭な場合は、このような方法でオーディオ指紋のマッチを検出してもよい。通常、最もマッチするオーディオ指紋およびメロディ指紋の指標への重み付けが可能であり、これらの加重した指標を組み合わせる様々な方法を採用することによって、最もマッチするオーディオ指紋および/またはメロディ指紋が、マッチするオーディオ指紋および/またはメロディ指紋と見なされるか否かを決定することができる。
【0072】
コンテンツオーナーの代わりに作成される請求(クレーム)は、識別されたメディアコンテンツに関連する所有権ポリシーを呼び出す。
図6は、作成した請求に基づいて、(例えば、権利管理エンジン116によって実行される)所有権ポリシーを実施する方法の一例を示す。権利管理エンジン116は、602:所有権データベース146の所有権情報にアクセスすることによって、コンテンツ認識システム130が識別したメディアコンテンツの所有権ポリシーを識別する。権利管理エンジン116が、604:オーナーの100%がコンテンツの収益化を要求していると判断する場合、権利管理エンジン116は、606:コンテンツの収益化、および比率に基づいて収益をコンテンツオーナーに分配するための措置を講じる。収益の分配を含む収益化ポリシーの詳細は、通常、メディアホストサービスシステムと1人以上のコンテンツオーナーとの間のライセンス契約によって決定される。通常、コンテンツの収益化には、的を絞った広告をユーザ要求コンテンツと共に流すことと、広告主から得た収益の少なくとも一部をコンテンツオーナーに分配することを含む。一方、権利管理エンジン116が、604:100%未満のオーナーがコンテンツの収益化を要求していると判断する場合、権利管理エンジン116は、次に、608:少なくとも1人のオーナーがコンテンツの遮断を要求しているかどうかを判断する。少なくとも1人のオーナーがコンテンツの遮断を要求する場合、610:当該コンテンツは遮断される。遮断には、コンテンツデータベース120からコンテンツを削除すること、またはユーザ・クライアント装置150による当該コンテンツへのアクセスを防止することを含んでもよい。何れのオーナーもコンテンツの遮断を要求しておらず、また少なくとも1人のオーナーがコンテンツの収益化を要求しない場合には、権利管理エンジン116は、612:コンテンツの利用数を追跡し、追跡データをオーナーに提供する。通常、追跡には、コンテンツに対するユーザの要求に関する統計情報を収集することと、これらの統計情報をコンテンツオーナーに提供することが含まれる。
【0073】
図7は、アップロードされたメディアコンテンツの識別に応えて権利管理エンジン116が作成する、請求メタデータの例を示すグラフィックインターフェースである。メタデータは、ユーザがアップロードしたメディアコンテンツに「作品イ長調」の生演奏の映像が含まれることを示している。ユーザ提供コンテンツと完全にマッチするサウンド記録は無かったが(即ち、オーディオIDのマッチは見つからなかったが)、コンテンツ認識システムは、ユーザ提供コンテンツのメロディが既知の作品「作品イ長調」のメロディ指紋とマッチすると判断した。作成した請求に関するメタデータには、ユーザ提供コンテンツおよびマッチした作品の他にも、所有権情報および関連する請求ポリシーに関する様々な情報が含まれる。
図7に示すメタデータは、作成した請求に関するメタデータエントリの一例に過ぎない。他の実施形態では、異なるメタデータまたは追加のメタデータを含んでもよい。
【0074】
図8は、メディアコンテンツオーナーとメディアホストサービスシステムとの間の権利管理サービスを支援するための該処理の一実施形態を示す。シンジケーションシステム100は、先ず、802:コンテンツオーナー(例えば、コンテンツオーナーAを含む)に対して、権利管理サービスに参加する場合の通常オプションを提示する。このオプションは、例えば、コンテンツオーナーAが使用可能なオンライン・ユーザインターフェースを介して提示されてもよい。コンテンツオーナーAは、804:通常オプションを受諾してサービスシステムに参加するか否かを決定し、インターフェースを介してこの決定を入力する。オーナーAが拒絶する場合、オーナーAに対してシンジケーションが呼び出されることはない。オーナーAは権利管理サービスに参加せず、該処理は806で終了する。
【0075】
一方、コンテンツオーナーAが(例えば、オンライン・インターフェースを介して)参加に合意する場合、シンジケーションシステム100は、808:複数のメディアホストサービスシステム(例えば、メディアホストサービスシステムZを含む)に対して、コンテンツオーナーAと共に権利管理サービスに参加するオプションを提示し、かつ、同じように参加に合意した他のコンテンツオーナーに対してもこれを提示する。繰り返すが、このオプションは、メディアホストサービスシステムZが使用可能なオンライン・ユーザインターフェースを介して、提示されてもよい。
【0076】
メディアホストサービスシステムZは、810:コンテンツオーナーAとの共同参加の是非を決定する。メディアホストサービスシステムZがコンテンツオーナーAとの共同参加を断る場合、AとZとの間の権利管理サービスは支援(促進)されず、処理が終了する:812。
【0077】
一方、メディアホストサービスシステムZがコンテンツオーナーAと共に参加すること(共同参加)に合意する場合、シンジケーションシステム100は、814:コンテンツオーナーAに対して、メディアホストサービスシステムZと共に参加すること(共同参加)のオプションを提示する。コンテンツオーナーAは、816:メディアホストサービスシステムZとの共同参加の是非を決定する。コンテンツオーナーAがメディアホストサービスシステムZとの共同参加を断る場合、コンテンツAとメディアホストサービスシステムZとの間の権利管理サービスは支援(促進)されず、該処理が終了する:818。さもなければ、シンジケーションシステムは、820:AとZとの間の権利管理サービスを支援(促進)する。
【0078】
説明のために、特定のコンテンツオーナーAおよびメディアホストサービスシステムZに関して
図8の処理を記載したが、実際には、コンテンツオーナー/ホストサービスシステムの組み合わせの数だけ処理が繰り返される。処理の結果、シンジケーションシステム100は、シンジケーションシステム100への参加および相互の共同参加に合意したコンテンツオーナーおよびメディアホストサービスシステムの組み合わせを決定する。
【0079】
図9は、コンテンツオーナーが様々なメディアホストサービスシステムに対するシンジケーションポリシーを管理でき、かつコンテンツオーナーに対して提示されるオンライン・インターフェース900の一例を示す。910列の「CID(コンテンツID)シンジケーションパートナー」には、コンテンツオーナーとの共同参加に合意した複数のメディアホストサービスシステムが挙げられる。920列の「URL」には、各シンジケーションパートナーのユニフォーム・リソース・ロケータのアドレスが提供される。「シンジケーションへの参加」のチェックボックス930は、コンテンツオーナーが特定のホストサービスシステム(
図8の決定ボックス816に対応)への参加に合意したか否かを示す。コンテンツオーナーが参加する各ホストサービスシステムについて、コンテンツオーナーは、オンライン・インターフェースによって、そのホストサービスシステムに特有の利用ポリシー940を指定することができる。例えば、図示のインターフェースにおいて、コンテンツオーナーは、「グローバル・デフォルト」、「グローバルな遮断」および「不特定」の中から選択することができる。「グローバル・デフォルト」が選択されると、そのホストサービスシステムでコンテンツがマッチした際に、コンテンツオーナーのデフォルトポリシー(例えば、収益化、遮断または追跡)が適用される。「グローバルな遮断」が選択されると、オーナーのデフォルトポリシーに関係なく、そのホストサービスシステムでマッチしたコンテンツが遮断される。「不特定」が選択されると、そのホストサービスシステムでのマッチに対して適用されるポリシーが、コンテンツオーナーとメディアホストサービスシステムとの間の外部契約によって管理され、シンジケーションシステムは、収益の共有(分配)について支援(促進)を行わない。
【0080】
従って、シンジケーションシステム100は、メディアホストサービスシステム110と協働して有益に動作して、ホストしたメディアコンテンツの識別を行い、所有権を決定し、参加コンテンツオーナーの所有権を行使するために請求ポリシーを適用する。さらに、システムは、コンテンツオーナーのメディアコンテンツを収益化するプラットフォームを提供することによって、コンテンツオーナーに利益をもたらす。また、システムは、閲覧許可されているメディアコンテンツの膨大なコレクションへのアクセスを可能にすることによって、メディアホストサービスのユーザに対しても恩恵をもたらす。
【0081】
コンテンツ認識システム130は、従来のシステムと異なり、ホストされたメディアコンテンツにおいて具現化されている作品を効率的に識別するために、メロディ認識を効果的に使用する。従って、コンテンツ認識システムは、例えば、カバー演奏および生演奏など、これまで知られていなかった演奏または目録未作成の演奏において具現化されている既知の作品を検出することができる。その結果、シンジケーションシステム100は、ホストメディアコンテンツに対する所有権行使の問題について、効率的かつ拡張可能なソリューションを提供する。
【0082】
本発明のごく少数の実施形態について詳述してきたが、本発明をさらに他の実施形態において実施できることは、当業者にとっては言うまでもない。先ず、コンポーネントの特定名称、用語の大文字表記、属性、データ構造、またはその他のプログラムの特徴もしくは構造的な特徴は、必須でもなければ重要でもなく、本発明またはその特徴を実施する機構は、異なる名称、フォーマットまたはプロトコルであってもよい。さらに、記載とは異なるハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせで、システムを実施してもよい。また、本明細書では、様々なシステムコンポーネントに機能を分担させたが、これは例示に過ぎず、必須ではない。1つのシステムコンポーネントが実行する機能を複数のコンポーネントが実行してもよく、複数のコンポーネントが実行する機能を1つのコンポーネントが実行してもよい。
【0083】
以上の詳述な説明の一部は、情報に関する動作のアルゴリズムおよび記号列表現の観点から本発明の特徴を提示した。これらのアルゴリズム記述および表示は、他の当業者に対して自身の研究の内容を最も効果的に伝えるために、データ処理分野の当業者が使用する手段である。これらの動作について機能的または論理的に記載したが、メモリに格納されて1つ以上のプロセッサが実行するコンピュータプログラムがこれらの動作を実行することは、言うまでもない。さらに、一般性を喪失することなく、これらの動作の配置構成をモジュールまたは符号化デバイスと呼ぶことに時として利便性があることも証明されている。
【0084】
説明から明らかになるように、特に断りの無い限り、本明細書の記載全体を通して、例えば「処理」、「演算」、「計算」、「決定」または「表示」などの用語を用いる説明が、コンピュータシステムまたは同様な電子計算装置の作用およびプロセスを指し、当該コンピュータシステムまたは同様な電子計算装置は、コンピュータシステムのメモリ、レジストリおよびメモリ内で物理(電子)量として表現されたデータを操作し、そしてこれをコンピュータシステムのメモリ、レジストリ、または他の情報ストレージ装置、転送装置もしくは表示装置内で同様に物理(電子)量として表現される、他のデータに変換することを理解されたい。
【0085】
本発明の態様は、本明細書に記載の処理のステップおよび指示をアルゴリズムの形式で含む。なお、本発明の処理のステップおよび指示を、ソフトウェア、ファームウェアまたはハードウェアで実現することができ、またソフトウェアで実現する場合は、リアルタイムのネットワーク・オペレーティングシステムにダウンロードして、リアルタイムのネットワーク・オペレーティングシステムが使用する他のプラットフォーム上で実行することができる。
【0086】
また、本発明は、本明細書に記載の動作を実行する装置に関する。この装置は、要求される目的を果たすために特別に構成されてもよく、または格納するコンピュータプログラムによって選択的に起動または再構成される汎用コンピュータを備えてもよい。このようなコンピュータプログラムを読み取り可能な記憶媒体に格納してもよく、読み取り可能な記憶媒体には、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、CD-ROM、光磁気ディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カードもしくは光カード、特定用途向け集積回路(ASIC)または電子的な指示の格納に適した如何なる種類の媒体などであって、コンピュータ・システムバスに接続される何れの種類のディスクが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本明細書で呼ぶコンピュータは、シングルプロセッサを含んでもよく、または計算能力を高めるためにマルチプロセッサの設計を採用する構成であってもよい。
【0087】
本明細書で提示するアルゴリズムおよび表示は、本質的に、何らかの特定のコンピュータまたはその他の装置と関連するものではない。様々な汎用システムが、本明細書の教示に従うプログラムと共に使用され得るか、または要求される方法ステップを実行するために、さらに専用化された装置を構成することが便利であることが判明し得る。様々なこれらのシステムに対して要求される構造は、上記から明らかになる。
【0088】
最後に、本明細書で使用する言い回しは、主に読み易さおよび例示の目的で選択されており、本発明の主題を記述または制限する目的では選択されていないことに留意されたい。従って、本発明の開示は、一例に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。