(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
柱状の鉄筋コンクリート構造体は、先ず、複数の主筋を周方向に並べて配置し、配置した複数の鉄筋の周囲にせん断補強筋を巻付けて鉄筋籠を編成し、次に、編成した鉄筋籠にコンクリートを打設することによって構成される。
【0003】
複数の主筋とせん断補強筋とはコンクリート打設により一体化されるため、これらが接合されていなくても鉄筋コンクリート構造体を構成することは可能である。
しかし、複数の主筋が所定位置に正確に配筋された鉄筋コンクリート構造体を構成するためには、せん断補強筋を複数の主筋に接合して複数の主筋の位置を保持することが望ましい。
【0004】
鉄筋どうしを接合する技術としては、溶接によるものと、機械的な結束によるものとが知られている。
せん断補強筋と主筋との溶接接合については特許文献1に開示されている。
特許文献1では、主筋をその軸方向に移動させながらせん断補強筋としてのスパイラル筋を巻付け、次に主筋とスパイラル筋との交点に電極を圧接し、印加することで、電気溶接(抵抗溶接)を行っている。
【0005】
一方、鉄筋どうしの機械的な結束接合については特許文献2に開示されている。
特許文献2では、鉄筋どうしの交点に針金などの線材(ワイヤー)を巻き回して捻ることで、鉄筋どうしを機械的に結束している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、鉄筋コンクリート構造体に利用される複数の主筋には、一般に、鉄筋コンクリート構造体用の鉄筋(以下、RC鉄筋という)が採用される。
また、プレストレスを導入した鉄筋コンクリート構造体に利用される複数の主筋には、前述したRC鉄筋ではなく、プレストレストコンクリート用の高強度の鉄筋(以下、PC鉄筋という)が採用される。
【0008】
前述したPC鉄筋は、引張強度が高いためプレストレストコンクリートの複数の主筋を構成するのに適しているが、このコンクリートの曲げ強度を高めるべく、複数の主筋をPC鉄筋と曲げ応力対応用のRC鉄筋とで構成することが望まれる。
複数の主筋がPC鉄筋と曲げ応力対応用のRC鉄筋とで構成されると、引張強度と曲げ強度との両方に優れた複数の主筋を構成できる。しかも、PC鉄筋に比べて安価なRC鉄筋を部分的に採用するため、コスト削減が期待できる。
【0009】
このように構成される複数の主筋においても、これらの位置を保持するためせん断補強筋と接合されることが望ましいが、溶接接合では表面に軟化層を有するPC鉄筋がその部分の機械的強度の低下を招く。しかしながら、結束接合では、溶接接合に比べて機械的動作が多く工数がかかる。このため、結束接合する箇所が多いと多くの作業時間を要する。
【0010】
本発明は、特性が異なる鉄筋で構成される複数の主筋にせん断補強筋を確実に接合できるとともに、接合作業効率の向上を図れる編成機および編成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の編成機は、周方向に並んで配置された複数の主筋にせん断補強筋が巻付けられて構成される鉄筋籠の前記複数の主筋と前記せん断補強筋との交点をそれぞれ接合する接合設備を備え、前記複数の主筋は、鉄筋コンクリート構造体用の鉄筋と前記鉄筋よりも高強度の高強度鉄筋とが周方向に配筋されて構成され、
前記鉄筋と前記高強度鉄筋とが交互に配置され、前記接合設備は、前記せん断補強筋と前記鉄筋との交点を溶接する溶接設備と、前記せん断補強筋と前記高強度鉄筋との交点を線材により機械的に結束する結束設備とを備え、前記溶接設備は、機枠と、前記複数の主筋の内周側に配置された主筋電極と、前記主筋電極に対向した電極接触子と、前記主筋電極を支持し前記主筋電極から主筋の長さ方向に離れた位置に配置された支持機構とを有し、前記支持機構は、前記主筋電極に軸を介して連結され前記主筋の円周方向の回転とともに回転可能な支持ドラムと、前記支持ドラムを前記機枠に連結しているローラとを有し、前記支持ドラムには、前記複数の主筋が挿通される複数の貫通孔が形成され、前記結束設備は、機枠と、前記機枠に設けられ
前記高強度鉄筋と前記せん断補強筋との複数箇所の交点を併行して結束する複数の結束装置とを備え、前記結束装置は、前記機枠に円筒状の支持部材を介して支持され、前記支持部材は、前記主筋電極を挟んで前記支持機構とは離れて配置され、かつ、内周に
前記せん断補強筋が接合された前記複数の主筋が挿通されることを特徴とする。
この構成の本発明では、複数の主筋にせん断補強筋を接合するため、複数の主筋の位置を保持することができ、これらが所定位置に配筋された鉄筋コンクリート構造体を構成できる。また、高強度鉄筋を備えるので、プレストレスを導入した鉄筋コンクリート構造体を採用できる。一方、複数の主筋の全てを高強度鉄筋とせずに鉄筋コンクリート構造体用の通常の鉄筋も採用したので、高強度鉄筋を形成するための表面焼入れなどの工数を減らすことができ、コストを抑えることができる。
また、せん断補強筋と鉄筋との交点を溶接接合するため、せん断補強筋と鉄筋とを短時間で確実に接合できる。一方、せん断補強筋と高強度鉄筋との交点を線材により機械的に結束するため、せん断補強筋と高強度鉄筋とを確実に接合できる。さらに、複数の主筋のうち、溶接接合された鉄筋を機械的に結束する必要をなくせるので、結束接合を短時間で行うことができる。
従って、複数の主筋にせん断補強筋を確実に接合できるとともに、接合作業効率の向上を図ることができる。
【0012】
本発明では、前記複数の主筋の端部を保持して軸方向に引取る引取り設備と、前記引取り設備により引取られる複数の主筋に前記せん断補強筋を巻付ける巻付け設備とを備え、前記接合設備は、前記引取り設備により引取られる前記複数の主筋と前記せん断補強筋との交点をそれぞれ接合することが好ましい。
この構成の本発明では、引取り設備により引取られる複数の主筋に対して、巻付け設備によりせん断補強筋を巻付け、接合設備によりこれらの交点を接合するため、一連の作業で鉄筋籠を編成でき、作業効率の向上を図ることができる。
【0013】
本発明では、前記結束設備は、前記溶接設備よりも前記引取り設備側に配置されることが好ましい。
この構成の本発明では、結束設備が溶接設備よりも引取り設備側に配置されるため、結束接合よりも先に溶接接合を行える。このため、溶接設備の鉄筋支持部材(主筋電極)などの構成部材を結束接合に用いられる線材から回避動作させる必要がなく、溶接接合を速やかにかつ円滑に行うことができる。
【0016】
本発明では、前記高強度鉄筋は、その全体に対する硬さよりも低くされた軟化部を有することが好ましい。
この構成の本発明では、軟化部を有していない高強度鉄筋を利用した場合に比べ、耐遅れ破壊性に優れた鉄筋籠を編成できる。
【0017】
本発明の編成方法は、
前述の構成の編成機を用いた編成方法であって、前記複数の主筋にせん断補強筋が巻き付けられて構成される鉄筋籠の前記複数の主筋と前記せん断補強筋との交点をそれぞれ接合する接合工程を備え、前記接合工程は、前記せん断補強筋と前記鉄筋との交点を溶接する溶接工程と、前記せん断補強筋と前記高強度鉄筋との交点を線材により機械的に結束する結束工程とを備えることを特徴とする。
この構成の本発明では、複数の主筋にせん断補強筋を接合するため、複数の主筋の位置を保持することができ、これらが所定位置に配筋された鉄筋コンクリート構造体を構成できる。また、高強度鉄筋を備えるので、プレストレスを導入した鉄筋コンクリート構造体を採用できる。一方、複数の主筋の全てを高強度鉄筋とせずに鉄筋コンクリート構造体用の通常の鉄筋も採用したので、高強度鉄筋を形成するための表面焼入れなどの工数を減らすことができ、コストを抑えることができる。
また、せん断補強筋と鉄筋との交点を溶接接合するため、せん断補強筋と鉄筋とを短時間で確実に接合できる。一方、せん断補強筋と高強度鉄筋との交点を線材により機械的に結束するため、機械的性質を低下させることなく、接合できる。さらに、複数の主筋のうち、溶接接合された鉄筋を機械的に結束する必要をなくせるので、結束接合を短時間で行うことができる。
従って、複数の主筋にせん断補強筋を確実に接合できるとともに、接合作業効率の向上を図ることができる。
【0018】
本発明では、前記複数の主筋の端部を保持して軸方向に引取る引取り工程と、引取り工程で引取られる複数の主筋に前記せん断補強筋を巻付けて巻付け工程とを備え、前記接合工程は、前記引取り工程で引取られる前記複数の主筋と前記せん断補強筋との交点をそれぞれ接合することが好ましい。
この構成の本発明では、引取り工程で引取られる複数の主筋に対して、巻付け工程におけるせん断補強筋の巻付け、接合工程におけるこれらに交点の接合を行えるため、一連の作業で鉄筋籠を編成することができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0019】
本発明では、前記溶接工程は、前記引取り工程で軸方向に引取られる複数の主筋に対し、前記結束工程よりも先に行われることが好ましい。
この構成の本発明では、結束接合よりも先に溶接接合が行われるため、溶接工程で用いられる鉄筋支持部材(主筋電極)などの構成部材を結束接合に用いられる線材から回避動作させる必要がなく、溶接接合を速やかにかつ円滑に行うことができる。
【0020】
本発明では、前記結束工程は
、前記線材を前記せん断補強筋と前記高強度鉄筋との交点の周囲に巻き回し、巻き回した前記線材を捻ることが好ましい。
この構成の本発明では、周方向に沿って配置された結束装置を使用することで、鉄筋籠の編成の一作業であるせん断補強筋と高強度鉄筋との結束を速やかに行うことができる。
【0021】
本発明では、前記結束工程は、前記高強度鉄筋と前記せん断補強筋との複数箇所の交点を併行して結束することが好ましい。
この構成の本発明では、高強度鉄筋とせん断補強筋との複数箇所の交点をそれぞれ併行して結束接合できるため、結束接合にかかる時間を短縮できる。
また、結合工程で併行して結束接合する交点の箇所が、溶接工程で併行して溶接接合する箇所よりも多い場合、溶接接合と結束接合との作業時間の差分を少なくできるか、または差分をなくすことができる。従って、編成機全体の作業効率の向上を図ることができる。
【0022】
本発明では、前記高強度鉄筋は、その全体に対する硬さよりも低くされた軟化部を有することが好ましい。
この構成の本発明では、軟化部を有していない高強度鉄筋を利用した場合に比べ、耐遅れ破壊性に優れた鉄筋籠を編成できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、特性が異なる複数の主筋にせん断補強筋を確実に接合できるとともに、接合作業効率の向上を図れる編成機および編成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[実施形態の構成]
本発明の実施形態に係る編成機1は、プレストレスが導入された鉄筋コンクリート製の電柱に利用される軸方向Xに延びた鉄筋籠2を編成するものである。
図1において、機枠3,4および引取り設備5が軸方向Xで並んで配置されている。機枠3は、鉄筋籠2を編成するための複数の主筋6の挿入側に配置されている。引取り設備5は、複数の主筋6の引取り側に配置されている。機枠4は、機枠3と引取り設備5との間に配置されている。
【0026】
機枠3には、その挿入側に巻付け設備7が装着され、かつ、その引取り側に溶接設備81が装着されている。機枠3に隣接配置された機枠4には、結束設備82が装着されている。溶接設備81と結束設備82とは、複数の主筋6とせん断補強筋9との交点P1,P2を接合する接合設備8を構成している。引取り設備5と、巻付け設備7と、接合設備8とは編成機1を構成している。
【0027】
複数の主筋6は、円周方向Rで交互に配筋された複数のRC鉄筋61及びPC鉄筋62で構成される(
図1〜
図4参照)。RC鉄筋61は、鉄筋コンクリート構造体用の鉄筋として構成される。PC鉄筋62は、RC鉄筋61よりも高強度とされた高強度鉄筋として構成される。RC鉄筋61は、曲げ強度が高く、曲げ応力対応用の鉄筋として主筋6の一部として採用されている。PC鉄筋62は、その表面が焼入れされることで高強度化される。このPC鉄筋62は引張強度が高く、引張応力対応用の鉄筋として主筋6の一部として採用されている。複数のRC鉄筋61及びPC鉄筋62を交互に配筋することで、これらのいずれかの本数が円周方向Rで偏ることがなく、複数の主筋6の曲げ強度や引張強度も偏ることがない。 せん断補強筋9には、複数の主筋6に螺旋状に連続して巻付けられるスパイラル筋91が採用される。スパイラル筋91は巻付け設備7に備えられる。
【0028】
引取り設備5は、複数の主筋6の引取り側の端部6Aを保持する円板状の保持ヘッド51と、保持ヘッド51を駆動させる駆動機構52とを備えている。
駆動機構52は、図示しないが、保持ヘッド51を軸方向Xに引取り移動させるボールねじ機構やリニアモータ機構などで構成される引取り駆動機構と、保持ヘッド51を円周方向Rに回転させる回転機構とを備えている。
駆動機構52は、回転機構により保持ヘッド51を円周方向Rに回転させながら、引取り駆動機構により保持ヘッド51を軸方向Xで引取り移動させる。
なお、引取り設備5は、保持ヘッド51に近接して複数の主筋6の内周側に配置されるリング状スペーサ53をさらに備える。
【0029】
巻付け設備7は、スパイラル筋91が巻き回されたドラム71を備え、複数の主筋6に対して円周方向Rに相対回転可能である。ここでは、引取り設備5による保持ヘッド51の回転により複数の主筋6が機枠3に装着されたドラム71に対して回転されることで、相対回転可能とされている。
巻付け設備7は、引取り設備5により軸方向Xで引取られる複数の主筋6に対して円周方向Rに相対回転することで、ドラム71からスパイラル筋91を繰り出し、連続して螺旋状に複数の主筋6の外周に巻付け可能である。
【0030】
接合設備8は、前述の通り溶接設備81と結束設備82とで構成され、巻付け設備7により複数の主筋6に巻付けられたスパイラル筋91と複数の主筋6との交点P1,P2を接合する。
溶接設備81と結束設備82とは、軸方向Xで互いに隣接配置される。溶接設備81は巻付け設備7側に配置される。結束設備82は、引取り設備5側に配置される。
【0031】
溶接設備81は、
図1及び
図2に示すように、巻付け設備7よりも引取り設備5側に配置された主筋電極811と、主筋電極811に軸方向Xに直交する方向で対向した電極接触子812と、主筋電極811を支持する支持機構813とを備えている。
【0032】
主筋電極811は、円板状であり、複数の主筋6の内周側に配置されている。
電極接触子812は、軸方向Xに直交する方向に移動可能であり、RC鉄筋61とスパイラル筋91との交点P1が主筋電極811との間に位置する際に交点P1に接近移動し、圧接し、印加する。この印加によりRC鉄筋61とスパイラル筋91とは交点P1で溶接される。
【0033】
支持機構813は、主筋電極811に軸814を介して連結された支持ドラム815と、支持ドラム815を機枠3に連結している複数のローラ816とを備える。支持ドラム815には、複数の貫通孔が形成され、この複数の貫通孔には複数の主筋6がそれぞれ挿通されている。支持ドラム815は、複数の主筋6の円周方向Rの回転とともに回転可能である。
【0034】
結束設備82は、
図3に示すように、複数の結束装置821,822,823を備える。結束装置821,822,823は、機枠4に円筒状の支持部材824を介して支持されている。ここで、RC鉄筋61とPC鉄筋62とは三本ずつであり、円周方向Rで交互に配列されている。このため、結束設備82は、三本のPC鉄筋62の近傍外側にそれぞれ配置された三つの結束装置821,822,823を備えている。結束装置821,822,823はそれぞれ併行してPC鉄筋62とスパイラル筋91との結束を行う。
【0035】
結束装置821,822,823は、それぞれ互いに同様に構成される。従って、以下、結束装置821について詳細に説明し、結束装置822,823については結束装置821と同符号を付してこれらの詳細な説明を省略する。
結束装置821は、針金などの鋼線で構成される線材82AをPC鉄筋62とスパイラル筋91との交点P2の周囲に巻き回す巻き回し装置82Bと、巻き回し装置82Bにより巻き回した線材82Aの二箇所を把持して捻る捻り装置82Cとを備える。
【0036】
巻き回し装置82Bは、線材82Aを繰り出す繰り出し装置(図示省略)と、この繰り出し装置により繰り出される線材82Aをガイドするガイド部材82D及び82Eと、ガイド部材82D及び82Eを駆動させる駆動機構(図示省略)とを備える。この駆動機構は、ガイド部材82D及び82Eをガイド位置と待機位置とに配置する。
【0037】
ガイド部材82D及び82Eは、駆動機構により
図3に点線で示す待機位置から実線で示すガイド位置に移動され、互いに当接する。この当接時には、ガイド部材82D及び82Eは互いに協働してPC鉄筋62とスパイラル筋91との交点P2の周囲を覆う湾曲面を形成する。線材82Aは、この湾曲面に沿って繰り出される。この結果、線材82AはPC鉄筋62とスパイラル筋91との交点P2の周囲に巻き回される。
【0038】
捻り装置82Cは、線材82Aを把持する把持部材82Fと、把持部材82Fをr方向に回転させるモータなどで構成される回転装置82Gとを備える。
把持部材82Fは、PC鉄筋62に巻き回された線材82Aの先端と繰出し側の一部とを把持する。
回転装置82Gは、線材82Aを把持した把持部材82Fをr方向に回転させる。これにより、線材82Aは環状部を形成してPC鉄筋62とスパイラル筋91との交点P2を機械的に結束する。
【0039】
[実施形態の編成方法]
以下、前述した編成機1を用いた鉄筋籠2の編成方法を詳細に説明する。この編成方法は、引取り工程と、巻付け工程と、接合工程とを備える。
【0040】
先ず、複数の主筋6を準備し、これらを支持ドラム815の貫通孔にそれぞれ通し、かつ、これらの端部6Aを保持ヘッド51にそれぞれ設置する。これにより、RC鉄筋61とPC鉄筋62とを円周方向Rで交互に配筋し、複数の主筋6を円筒状に配列する。また、スパイラル筋91の先端を主筋6に接続する。
【0041】
次に、引取り設備5を動作させて引取り工程を開始する。この工程では、駆動機構52を駆動させ、保持ヘッド51を円周方向Rに回転させながら軸方向Xで引取り側に移動させる。この引取り工程は、巻付け工程及び接合工程とともに実行される。
【0042】
次に、巻付け設備7を動作させて巻付け工程を開始する。この工程S2では、引取り工程で回転されながら引取り移動する複数の主筋6の外周にスパイラル筋91を巻付ける。ドラム71は、複数の主筋6の回転がスパイラル筋91を介して伝達されて従動回転する。
【0043】
次に、接合設備8を動作させて接合工程を開始する。接合工程は、溶接工程と結束工程とを備え、先に溶接設備81を動作させて溶接工程を行い、後に結束設備82を動作させて結束工程を行う。
【0044】
溶接工程では、
図2に示すように、巻付け工程でスパイラル筋91が巻付けられたRC鉄筋61とスパイラル筋91との交点P1が主筋電極811の周囲の所定位置に配される際に、電極接触子812を交点P1に接近、当接させる。つづいて印加して交点P1を電気溶接(抵抗溶接)する。その後、電極接触子812は交点P1から離れ、他の交点P1が主筋電極811の周囲の所定位置に配されるまで待機する。他の交点P1が主筋電極811の周囲の所定位置に配される際には、前述した動作を繰り返す。
【0045】
結束工程では、
図3に示すように、溶接工程で交点P1が溶接された複数の主筋6のうちのPC鉄筋62とスパイラル筋91との交点P2が結束装置821,822,823の近傍内側に配される際に、結束装置821,822,823を併行して動作させる。
結束装置821は次のように動作する。先ず、ガイド部材82D,82Eを待機位置からガイド位置へ移動させ、次に線材82Aを繰り出し、ガイド部材82D,82EにガイドさせてPC鉄筋62とスパイラル筋91との交点P2に巻き回す。つづいて、把持部材82Fにより線材82Aの先端と繰出し側の一部とを把持し、この把持部材82Fを回転装置82Gによりr方向に回転させて、線材82Aを捻り止めする。
結束装置822,823も前述同様に動作する。このようにして、PC鉄筋62とスパイラル筋91との交点P2を線材82Aを用いて機械的に自動結束する。
【0046】
このようにして、
図2に示すように、交点P1で溶接され、交点P2で機械的に結束された軸方向Xに延びた鉄筋籠2を編成する。
【0047】
[実施形態の効果]
本実施形態では、以下の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態の編成機1では、複数の主筋6にせん断補強筋9を接合するため、複数の主筋6の位置を保持することができ、これらが所定位置に配筋された柱状の鉄筋コンクリート構造体としての電柱を構成できる。また、PC鉄筋62を備えるので、プレストレスを導入した鉄筋コンクリート構造体を採用できる。一方、複数の主筋6の全てをPC鉄筋62とせずに鉄筋コンクリート構造体用の通常のRC鉄筋61も採用したので、PC鉄筋62を形成するための表面焼入れなどの工数を減らすことができ、コストを抑えることができる。
(2)編成機1では、せん断補強筋9とRC鉄筋61との交点P1を溶接接合するため、せん断補強筋9とRC鉄筋61とを短時間で確実に接合できる。一方、せん断補強筋9とPC鉄筋62との交点P2を線材82Aにより機械的に結束するため、せん断補強筋9とPC鉄筋62とを確実に接合できる。さらに、複数の主筋6のうち、溶接接合されたRC鉄筋61を機械的に結束する必要をなくせるので、結束接合を短時間で行うことができる。
従って、複数の主筋6にせん断補強筋9を確実に接合できるとともに、接合作業効率の向上を図ることができる。
(3)編成機1では、引取り設備5により引取られる複数の主筋6に対して、巻付け設備7によりせん断補強筋9を巻付け、接合設備8によりこれらの交点P1,P2を接合するため、一連の作業で鉄筋籠2を編成でき、作業効率の向上を図ることができる。
(4)結束設備82が溶接設備81よりも引取り設備5側に配置されるため、結束接合よりも先に溶接接合を行える。このため、溶接設備81の鉄筋支持部材(主筋電極811)などの構成部材を結束接合に用いられる線材82Aから回避動作させる必要がなく、溶接接合を速やかにかつ円滑に行うことができる。
(5)結束装置821,822,823が円周方向Rに沿って配置されるため、鉄筋籠2の編成の一作業であるせん断補強筋9とPC鉄筋62との結束を速やかに行うことができる。
(6)結束設備82が複数の結束装置821,822,823を備えるため、PC鉄筋62とせん断補強筋9との複数箇所の交点P2をそれぞれ併行して結束接合できる。このため、結束接合にかかる時間を短縮できる。また、結束設備82により併行して結束接合する交点P2の箇所が、溶接設備81により併行して溶接接合する箇所よりも多い場合、溶接接合と結束接合との作業時間の差分を少なくできるか、または差分をなくすことができる。従って、編成機1全体の作業効率の向上を図ることができる。
(7)本実施形態の編成方法では、複数の主筋6にせん断補強筋9を接合するため、複数の主筋6の位置を保持することができ、これらが所定位置に配筋された柱状の鉄筋コンクリート構造体としての電柱を構成できる。また、PC鉄筋62を備えるので、プレストレスを導入した鉄筋コンクリート構造体を採用できる。一方、複数の主筋6の全てをPC鉄筋62とせずに鉄筋コンクリート構造体用の通常のRC鉄筋61も採用したので、PC鉄筋62を形成するための表面焼入れなどの工数を減らすことができ、コストを抑えることができる。
(8)せん断補強筋9とRC鉄筋61との交点P1を溶接接合するため、せん断補強筋9とRC鉄筋61とを短時間で確実に接合できる。一方、せん断補強筋9とPC鉄筋62との交点P2を線材82Aにより機械的に結束するため、せん断補強筋9とPC鉄筋62とを確実に接合できる。さらに、複数の主筋6のうち、溶接接合されたRC鉄筋61を機械的に結束する必要をなくせるので、結束接合を短時間で行うことができる。
従って、複数の主筋6にせん断補強筋9を確実に接合できるとともに、接合作業効率の向上を図ることができる。
(9)さらに、本実施形態の編成方法では、前述した作用効果に加えて、編成機1と同様の作用効果を発揮できる。
【0048】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、RC鉄筋61とPC鉄筋62とを交互に配筋して複数の主筋6を構成したが、これに限定されず、例えば、円周方向RでRC鉄筋61を二本以上並べてもよく、また、PC鉄筋62を二本以上並べてもよい。
また、前記実施形態では、RC鉄筋61とPC鉄筋62とを三本ずつ並べたが、これに限定されず、それぞれの本数が三本より多くても少なくてもよい。
【0049】
前記実施形態では、せん断補強筋9としてスパイラル筋91を採用したが、これに限定されず、例えば、1ターンの複数のフープ筋(図示省略)を採用してもよい。この複数のフープ筋は、引取り設備5に引取られる複数の主筋6に順次巻き付けられる。
【0050】
前記実施形態では、結束設備82が複数の結束装置821,822,823を備えているが、これに限定されず、例えば一つまたは二つの結束装置を備えていてもよく、また、四つ以上の結束装置を備えていてもよい。
【0051】
前記実施形態では、表面が焼入れされることで高強度化されたPC鉄筋62を利用しているが、これに限定されず、例えば、焼戻しが施されて全体に対する硬さよりも低くされた軟化部(軟化層)を有したPC鉄筋62を利用してもよい。このような軟化部を有したPC鉄筋62を利用する場合、耐遅れ破壊性に優れた鉄筋籠2を編成できる。
【0052】
前述したPC鉄筋62の軟化部は、その表層部付近の硬さと、半径方向で表層から10%の位置よりも中心側の硬さの差がHV50以上であり、かつ、JISZ22−1の2号試験片で引張試験を行った場合の引張強さが1420N/mm
2以上であってもよい。
また、軟化部は、全断面焼戻しマルテンサイト組織となっており、かつ、その表層部の硬さがHV380以下であり、かつJISZ2201の2号試験片で引張試験を行った場合の引張強さが1420N/mm
2以上であり、表層よりも中心側の硬さが均一であってもよい。
さらに、軟化部は、全断面焼戻しマルテンサイト組織となっており、かつ、その表層部の硬さがHV420以下であり、かつJIS2201の2号試験片で引張試験を行った場合の引張強さが1600N/mm
2以上であり、表層よりも中心側の硬さが均一であってもよい。