(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791754
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】排ガスシステム用音響発生装置
(51)【国際特許分類】
F01N 1/00 20060101AFI20150917BHJP
F01N 13/12 20100101ALI20150917BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
F01N1/00 A
F01N1/00 D
F01N13/12
B60K13/04 A
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-93878(P2014-93878)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-219003(P2014-219003A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2014年4月30日
(31)【優先権主張番号】10 2013 208 186.3
(32)【優先日】2013年5月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513212291
【氏名又は名称】エーバーシュペッヒャー・エグゾースト・テクノロジー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100124132
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 和俊
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク ヴィルト
(72)【発明者】
【氏名】フランク ザウター
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ヘルシュ
【審査官】
山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−073517(JP,U)
【文献】
特開2009−250244(JP,A)
【文献】
特表2012−519254(JP,A)
【文献】
特開2000−130146(JP,A)
【文献】
特開平11−257071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00
F01N 13/12
B60K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力車両(3)の内燃機関の排ガスシステム(2)用音響発生装置であって、
ハウジング(4)と、
前記ハウジング(4)内に配置され、振動板(6)が前記ハウジング(4)内で、後部空間(9)を前部空間(10)から分離する、少なくとも一つの電気音響変換器(5)と、
前記音響発生装置(1)を、前記排ガスシステム(2)の排ガスを移送する排気管(12)に接続する接続パイプ(11)とを備え、
前記接続パイプ(11)は、接続された状態で、前記前部空間(10)を、前記排気管(12)に、流体的、かつ、音響的に接続し、
圧力平衡管(15)は、前記圧力平衡管(15)の基端(16)で、前記ハウジング(4)の外側に接続され、前記基端(16)で、前記ハウジングの開口(18)を介して、前記後部空間(9)に流体的に接続され、前記圧力平衡管(15)の末端(17)は前記ハウジング(4)から離間して配置され、
前記圧力平衡管(15)内には少なくとも一つの絞り装置(27)が配置され、前記絞り装置(27)は前記後部空間(9)のために、静的な圧力平衡を可能にし、動的な圧力平衡を阻止することを特徴とする音響発生装置。
【請求項2】
動力車両(3)の内燃機関の排ガスシステム(2)用音響発生装置であって、
ハウジング(4)と、
前記ハウジング(4)内に配置され、振動板(6)が前記ハウジング(4)内で、後部空間(9)を前部空間(10)から分離する、少なくとも一つの電気音響変換器(5)と、
前記音響発生装置(1)を、前記排ガスシステム(2)の排ガスを移送する排気管(12)に接続する接続パイプ(11)とを備え、
前記接続パイプ(11)は、接続された状態で、前記前部空間(10)を、前記排気管(12)に、流体的、かつ、音響的に接続し、
圧力平衡管(15)は、前記圧力平衡管(15)の基端(16)で、前記ハウジング(4)の外側に接続され、前記基端(16)で、前記ハウジングの開口(18)を介して、前記後部空間(9)に流体的に接続され、前記圧力平衡管(15)の末端(17)は前記ハウジング(4)から離間して配置され、
前記電気音響変換器(5)の振動板駆動装置(7)を駆動する制御装置(31)は緊急遮断器(34)を備え、前記緊急遮断器(34)は、前記前部空間(10)に液体が氾濫した場合、前記氾濫が終わるまで、前記振動板駆動装置(7)への電力供給を減らすか、または、遮断することを特徴とする音響発生装置。
【請求項3】
前記末端(17)に関し、前記ハウジング(4)までの距離(21)が、前記ハウジング(4)から離間したパイプ端(23)における前記接続パイプ(11)の直径(22)より大きいか、または、前記振動板(6)の直径(24)より大きいか、または、前記後部空間(9)における前記ハウジング(4)の直径(25)よりも大きくなるように調整できる程度に、前記圧力平衡管(15)の管長(19)は大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の音響発生装置。
【請求項4】
前記圧力平衡管(15)内には少なくとも一つのフィルタ装置(28)が配置され、前記フィルタ装置(28)は、汚染物質が前記後部空間(9)内に侵入するのを防止することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の音響発生装置。
【請求項5】
前記圧力平衡管(15)は、前記圧力平衡管(15)の両端(16、17)の間に、弾性チューブ(30)、または、剛体のパイプ(29)を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の音響発生装置。
【請求項6】
前記後部空間(9)内に配置された、前記音響発生装置(1)の少なくとも一つの電気部品への電力供給、および/または、電気駆動を行うためのケーブルハーネス(32)は、前記圧力平衡管(15)全体、または、少なくとも、前記基端(16)を備えた前記圧力平衡管(15)の基端部(37)を通して配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の音響発生装置。
【請求項7】
車両(3)の内燃機関からの排ガスを排出する排ガスシステム(2)と、
前記車両(3)が駐車するか、または、走行する地面(41)に面する車両下部(40)に配置される基台(39)とを備え、
少なくとも、前記内燃機関から離間した端部(42)において、前記地面(41)に面した基台下部(43)に前記排ガスシステム(2)が配置され、
前記排ガスシステム(2)は、請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくとも一つの音響発生装置(1)を、前記排ガスシステム(2)の端部(42)に備え、
前記排ガスシステム(2)は、前記排ガスシステム(2)の端部(42)に、排ガス移送用の排気管(12)を備え、前記排気管(12)に、前記音響発生装置(1)の接続パイプ(11)が接続され、
前記圧力平衡管(15)は、前記圧力平衡管(15)の末端(17)が、前記音響発生装置(1)のハウジング(4)の上方に配置されていることを特徴とする車両。
【請求項8】
前記圧力平衡管(15)の末端(17)は前記基台下部(43)に配置され、
前記末端(17)を備えた前記圧力平衡管(15)の末端部(47)は、前記末端(17)が下方に開くように屈曲していることを特徴とする請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記末端部(47)は、少なくとも90°の屈曲を構成する屈曲部(48)を備えていることを特徴とする請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記圧力平衡管(15)は前記基台(39)を通過し、前記末端(17)は、前記地面(41)から離間した基台上部(51)に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の車両。
【請求項11】
前記排ガスシステム(2)の端部(42)は、前記排気管(12)および前記音響発生装置(1)のハウジング(4)と共に、前記車両(3)の所定の最大浸水深度(50)の下方に配置され、前記圧力平衡管(15)の末端(17)は前記浸水深度(50)の上方に配置されていることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の車両。
【請求項12】
前記排気管(12)は、周囲の雰囲気(46)に開いた前記排ガスシステム(2)のテールパイプ(44)まで伸びるか、または、前記テールパイプ(44)によって実現されることを特徴とする請求項11に記載の車両。
【請求項13】
請求項12に記載の車両(3)の運転方法であって、前記ハウジング(4)の前部空間(10)が、前記テールパイプ(44)を介して浸水するとすぐ、かつ、浸水している間、前記電気音響変換器(5)の振動板駆動装置(7)を駆動する制御装置(31)に備えられる緊急遮断器(34)が、前記振動板駆動装置(7)への電力供給を減らすか、または、遮断する運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力車両の内燃機関の排ガスシステム用音響発生装置に関する。さらに、本発明は、この種の音響発生装置を備えた動力車両に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの音響発生装置は、好ましくは、ハウジング内に、少なくとも一つの、スピーカ形式の電気音響変換器を有している。前記変換器の振動版は、ハウジング内で、後部空間と前部空間を分離している。接続パイプを介して、前記音響発生装置は、排ガスシステムの排ガス移送用の排気管に接続され、前記接続パイプは、前記前部空間内に接続された状態では、前記排気管に、流体的、かつ、音響的に接続される。
【0003】
このような音響発生装置は、例えば、能動サイレンサとして使用することが可能で、空気音として排気管を伝播する、好ましくないノイズを軽減する。また、前記電気音響変換器を用いて、対応する逆音響、つまり、反音響を生成し、位相をシフトして出射し、これによって、音響と反音響が重なって、不愉快な音響の振幅が軽減されることになる。加えて、または、代わりに、このような音響発生装置は、目的に応じて、特定のエンジンノイズを増幅及び/又は生成するためにも使用される。このように、このような音響発生装置を用いて、前記排ガスシステムの音、または、前記内燃機関の音を目的に応じて制御することが可能である。
【0004】
前記音響発生装置のハウジングに囲まれた前記後部空間は、ハウジング内圧を有し、これは、振動板が動いていないときは、前記前部空間の外圧と、ほぼ、平衡していなければならず、これによって、前記振動板はそのニュートラルな中立位置を取ることが可能である。前記ハウジングの後部空間と、前部空間との間で静的な圧力平衡を可能にする圧力平衡開口を、前記ハウジングに、従来の方法で設けても良く、その結果、温度変化、および、周囲の圧力変化を伴う気象変動において、前記振動板がその中立位置から継続的にずれて破損することはない。このような圧力平衡開口により、静的な圧力平衡のみを可能にする一方で、動的な圧力平衡を阻止するために、このような圧力平衡開口は、たいてい、適切な小さな開口断面に形成されている。静的な圧力平衡は、通常、1Hzより小さい周波数で発生する。これに対して、動的な圧力平衡は、たいてい、10Hzより大きな周波数で発生する。前記変換器の変換能力を保証するためには、動的な圧力平衡は避けなければならない。
【0005】
車両の運転中に、水しぶきが前記圧力平衡開口を介して、ハウジング内に浸入するのを防止するために、前記圧力平衡開口に、対応する水しぶき保護部を設けることが可能である。同様に、前記圧力平衡開口に、液体は通さずに、気体は通す半透過性の振動板を備えることも考えられる。このような半透過性の振動板の気体透過度は、この場合、所望の静的圧力平衡が可能なように選択される。
【0006】
クロスカントリ用車両、ならびに、オフロード車両、特に、「Sport Utility Vehicle」を表す、所謂SUV車の場合、水がある所を通過する際に、前記音響発生装置のハウジジング全体が冠水するのではないかという問題がある。確かに、半透過性の振動板は、ハウジング内への水の浸入うを防止することはできるが、外部に加わる水圧に対して、後部空間の圧力平衡を保つことはできない。特に、後部空間内へ周囲の空気が入るための流路は、ハウジングを囲む水によって遮断される。車両の正常運転中は、排ガスシステムの温度は、周囲に対してかなり上昇する。特に、音響発生装置のハウジングも温度上昇する。この場合、後部空間内の、温度に比例して上昇する圧力は、周囲の雰囲気と平衡を保つことが可能であり、空気は温度の上昇に比例して、後部空間から圧力平衡開口を介して周囲に流出する。今、水がハウジングに氾濫するくらい深い水がある所を車両が通過すると、前記ハウジングは比較的短時間で急激に冷え、同様に、後部空間内に閉じ込められた空気も冷える。このとき、圧力が平衡するには、周囲から後部空間内に空気が入らなければならない。しかし、この経路は、ハウジングを囲んでいる水によって遮断される。したがって、この特別な場合には、静的な圧力平衡は不可能である。前記振動板は、この場合、後部空間の方に大きく移動し、永久に破損してしまう可能性がある。
【0007】
さらに、水のある所を通過する場合、水が排ガスシステムのテールパイプを介して浸入して音響発生装置に到達し、前記音響発生装置には、いわば、前部空間の方へ向かって水が押し寄せる。この場合、後部空間内において、前記振動板に一様に水の衝撃圧が加わる。この衝撃圧に対して、変換器の振動板駆動装置は、前記振動板をそれ以上駆動できないか、または、非常に制限される。この場合、電磁振動板駆動装置の出力は、通常、振動板の移動に変換できないので、前記振動板駆動装置が過熱する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、冒頭で述べたタイプの音響発生装置、および、前記音響発生装置を備えた車両のための改良された実施形態であって、特に、水のある所を通過する際に、音響発生装置の破損のリスクを軽減する実施形態を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記の課題は独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【0010】
本発明は次の基本的な考えに基づいている、つまり、ハウジングは圧力平衡管を備え、前記圧力平衡管は、基端で、前記ハウジングの外側に接続され、そこで、前記ハウジングの開口を介して、後部空間に流体的に接続されるのと同時に、前記圧力平衡管の末端は前記ハウジングから離間して配置され、その周囲の雰囲気に対して開放されている。このような圧力平衡管を使用し、前記圧力平衡管の長さを適切な長さにすることによって、前記圧力平衡管の末端を、容易に、前記ハウジングから離間して上方に位置決めし、前記ハウジングが完全に冠水している場合も、周囲の雰囲気との圧力平衡が可能である、これは、前記圧力平衡管の末端も水位より上方に位置するからである。前記圧力平衡管は、それ故、ある種のシュノーケルとして機能し、前記ハウジングが完全に冠水している場合も、前記後部空間のための静的圧力平衡を可能にする。
【0011】
有利な実施形態では、前記末端に関し、前記ハウジングまでの距離が、前記ハウジングから離間したパイプ端における前記接続パイプの直径より大きいか、または、前記振動板の直径より大きいか、または、前記後部空間における前記ハウジングの直径よりも大きくなるように調整できる程度に、前記圧力平衡管の管長を大きくして良い。したがって、前記圧力平衡管が、例えば、従来の圧力平衡開口を実現するハウジングに取り付け可能な接続スリーブより、かなり大きく寸法が決められていることは明らかである。適切に選択された管長によって、前記圧力変換管の末端は、任意の位置で、前記車両の内部または外部に位置決めして良い。前記圧力平衡管は、その末端で、前記圧力平衡管の周囲の雰囲気に流体的に接続され、これにより、特に、空気交換が可能であり、したがって、周囲の雰囲気と後部空間の間の圧力平衡が可能である。
【0012】
他の有利な実施形態では、前記圧力平衡管内には少なくとも一つの絞り装置を配置しても良く、前記絞り装置は前記後部空間のために、静的な圧力平衡を可能にし、動的な圧力平衡を阻止する。これにより、前記圧力平衡管自身、特に、基本的に、動的な圧力平衡も可能となるように、比較的大きく開いた開口断面で実現することが可能である。絞り装置を使用することにより、特定の絞り動作を設定することが可能であり、この結果、前記圧力平衡管は高い動作信頼性を有する。このような絞り装置は、例えば、気体を通して液体は通さない半透過性の振動板で形成しても良い。
【0013】
他の有利な実施形態では、前記圧力平衡管内には、汚染物質が前記後部空間内に侵入するのを防止する、少なくとも一つのフィルタ装置が配置されていても良い。このようなフィルタ装置は、例えば、半透過性の振動板で形成しても良い。代わりに、フィルタ装置は多孔性の発泡体で形成しても良い。
【0014】
他の有利な実施形態では、前記圧力平衡管は、その両端の間に、弾性チューブか、または、剛体のパイプを備えていても良い。前記圧力平衡管を実現するために弾性チューブを使用することによって、前記圧力平衡管を車両に容易に設置する可能性が開ける。前記圧力平衡管を実現するために剛体パイプを使用することによって、例えば、前記ハウジングを、前記車両の外側に固定するのに役立つ。
【0015】
前記課題に対する独立した解決策を提供できる他の有利な実施形態では、基本的に、上述の圧力平衡管を使用せずに実現することも可能なため、緊急遮断器を有し、スピーカの振動板駆動装置を駆動する制御装置を備えていても良い。前記緊急遮断器は、前記前部空間が液体で氾濫した場合、前記振動板駆動装置への電力供給を減らすか、または、遮断するように構成されている。この場合、前記氾濫が終わるまで、前記電力供給を減らすか、または、遮断するのが有利である。例えば、前記制御装置は前記振動板駆動装置の電力消費を監視し、その電力消費に大きな変化があった場合、前記前部空間の氾濫を識別する。同様に、前記排ガスシステムの氾濫を識別する、適切なセンサシステムを備えることも可能である。このようなセンサシステムは、前記車両にすでに備えられているものであっても良い。そして、前記音響発生装置の制御装置を、適切な方法で、例えば、前記車両の制御装置に接続して、前記前部空間の氾濫を検出することが可能である。
【0016】
他の有利な実施形態では、前記後部空間内に配置された、前記音響発生装置の少なくとも一つの電気部品、例えば、振動板駆動装置への電力供給、および/または、電気駆動を行うためのケーブルハーネスは、前記圧力平衡管全体、または、少なくとも、前記基端を備えた前記圧力平衡管の基端部を通して配置されていても良い。これにより、前記圧力平衡管は、また、前記ケーブルハーネスをハウジングの壁を通して配置するのに使用しても良く、これにより、前記ケーブルハーネスのための、別途の壁貫通を不要にすることが可能である。少なくとも、前記ケーブルハーネスを、前記圧力平衡管全体を通して配置する場合、例えば、別途の壁貫通の際に避けられない、ケーブル通しのための別途の密閉を不要にすることが可能である。
【0017】
ここで紹介する音響発生装置は能動サンレンサとして設計しても良く、これにより、その変換器を用いて生成された音響を、適切に位相シフトすることにより、前記排ガスシステム内を伝播する、好ましくない周波数の振幅を小さくすることが可能である。加えて、または、代わりに、前記音響発生装置も、音発生器として使用し、特定の周波数を特定の方法で増幅、または、生成しても良い。組み合わせて使用することは特に有利であり、この場合、前記音響発生装置を用いて、所定の周波数の振幅を、反音響で軽減するのと同時に、他の所定の周波数の振幅を増幅、または、生成する。
【0018】
本発明による車両は、前記車両を運転するための内燃機関と、前記内燃機関からの排ガスを排出するための排ガスシステムを備えている。前記車両は、さらに、基台を有し、前記基台は、前記車両が駐車するか、または、走行する地面に面する車両下部に配置されている。前記排ガスシステムの少なくとも前記内燃機関から離間した端部は、前記地面に面した基台下部に配置されている。さらに、前記排ガスシステムの端部には、上述したタイプの少なくとも一つの音響発生装置が備えてある。前記排ガスシステムの端部は排ガスを移送する排気管を有し、この排気管には前記音響装置の接続パイプが接続されている。さらに、前記音響発生装置の圧力平衡管の末端は、前記音響発生装置のハウジング上方において、前記車両に配置されている。
【0019】
有利な実施形態では、前記圧力平衡管の末端は前記基台下部に配置しても良く、前記末端を備えた前記圧力平衡管の末端部は、前記末端が下方に開くように屈曲、つまり、曲がっている。これによって、改良された水しぶき保護が得られる。
【0020】
有利な実施形態では、前記末端部は、少なくとも90°、特に、最大180°の屈曲を構成する屈曲部を備えていても良い。
【0021】
前記圧力平衡管の末端が前記基台下部に配置されていると、前記末端は、例えば、車輪ハウジング内に配置可能で、好ましくは、その車輪ハウジングの上方に配置される。さらに、前記圧力平衡管の前記末端は、便宜上、車両ごとに設定された所定の最大浸水深度の上方で位置決めされる。例えば、浸水深度は地面から少なくとも500mmが望ましい。
【0022】
他の実施形態では、前記圧力平衡管は前記基台を密閉された状態で通過しても良く、その結果、前記末端は、前記地面から離間した基台上部に配置される。そして、例えば、前記末端は前記車両の後部トランクか、または、前記車両の内部空間に開いていても良い。これによって、水が前記圧力平衡管内に浸入するのはほとんど不可能である。
【0023】
他の有利な実施形態では、前記排ガスシステムの端部は、前記排気管および前記音響発生装置のハウジングと共に、前記車両の所定の最大浸水深度の下方に配置されても良い。前記テールパイプも、前記浸水深度の下方に配置されている。これに対して、前記圧力平衡管の末端は前記浸水深度の上方に配置されている。
【0024】
有利な変形例では、前記排気管は、周囲の雰囲気に開いた前記排ガスシステムのテールパイプまで伸びるか、または、前記テールパイプによって実現され、同様に、前記最大浸水深度の下方に開いていても良い。この場合、水のある所を通過する際に、水が前記音響発生装置の前部空間まで達するくらい、前記排ガスシステムの端部は冠水する可能性がある。
【0025】
最後に、本発明は、また、上述したタイプの車両の運転方法に関する。この運転方法は、前記ハウジングの前部空間が、前記テールパイプを介して浸水するとすぐ、または、浸水している間、前記電気音響変換器の振動板駆動装置への電力供給を減らすか、または、遮断することを特徴としている。これによって、前記振動板駆動装置の過熱を効果的に避けることが可能である。
【0026】
本発明の他の重要な特徴ならびに効果は、従属請求項、図面、および関連する図面に基づく説明より明らかになる。
【0027】
上述した特徴、および以下に述べる特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、記載している各組み合わせにおいてだけでなく、他の組み合わせ、あるいは、単独で利用できることは明白である。
【0028】
本発明の好適な実施例は図示されるとともに、以下に、詳細に説明されるが、同一か、類似しているか、または、機能的に同一の構成要素は同一の参照符号で示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】音響発生装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図3】音響発生装置を備えた車両の後部の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1〜
図3に本発明に係る音響発生装置1を示す。音響発生装置1は、車両(その一部を
図3に示す)の内燃機関(図示せず)の排気システム2(その一部を
図3に示す)に設けられる。音響発生装置1はハウジング4を有し、該ハウジング4内に少なくとも1つの電気音響変換器5を備える。電気音響変換器5は例えばスピーカ形式である。電気音響変換器5は振動板6と、振動板駆動器7と、フレーム8からなる。振動板6によってハウジング4の内部が後部空間9と前部空間10に隔てられる。振動板駆動器7は例えば電磁的に作動することによって振動板6を駆動する。フレーム8は振動板6に張力を与えつつ、振動板駆動器7を支持する。
【0031】
音響発生装置1はまた接続パイプ11を備える。該接続パイプ11を介して音響発生装置1を排気システム2の、排気がその中を通る排気管12に接続することができる。そのように接続されると、接続パイプ11は前部空間10と排気管12、つまりは排気管12の内部、とが流体的かつ音響的に結合された状態に維持する。これにより、振動板6から発せられる音波を、前部空間10と接続パイプ11とを介して排気管12に導入することができる。このようにして、排気管12内を伝わる排気音の調整が可能になる。
【0032】
図1に示すように、ハウジング4は例えば、椀状ハウジング部材13と、その開口部を塞ぐように椀状ハウジング部材13に固定される蓋状ハウジング部材14とからなる。図示の例では、蓋状ハウジング部材14には接続パイプ11が取り付けられているとともに、電気音響変換器5がフレーム8を介して取り付けられている。蓋状ハウジング部材14が前部空間10を画定し、椀状ハウジング部材13が後部空間9を画定する。
【0033】
本例の音響発生装置1はさらに圧力平衡管15を備える。圧力平衡管15はハウジング4に関して基端16と末端17を有する。圧力平衡管15の基端16はハウジング4の外面に接続され、ハウジング4に形成された孔18を介して後部空間9と流体的に連通している。圧力平衡管15の末端17は、ハウジング4から距離を置いて設けられる。
【0034】
図2に示すように、圧力平衡管15は管長19が直径20より大きい。具体的には、管長19は管直径20の少なくとも10倍である。このように管長19が大きいことの結果として、
図1に示すように、末端17とハウジング4との間の距離21が接続パイプ11のハウジング4から最も離れている端23の直径22より大きくなる。
図2および
図3に示す例のように、距離21を、
図1に示した振動板6の直径24より大きくしてもよい。
図2に示すように、距離21はハウジング4の後部空間9における直径25より大きくしてもよい。周辺雰囲気26に開口する末端17は、このようにしてハウジング4から比較的離れた位置に設けられる。
【0035】
図2に示すように、圧力平衡管15には少なくとも1つの絞り手段27を設けてもよい。絞り手段27は、後部空間9と周辺雰囲気26との間の静的な圧力平衡を保ち、後部空間9と周辺雰囲気26との間の動的な圧力平衡を阻止する一方で、ガス透過可能なように構成される。
【0036】
図2に示すように、圧力平衡管15にはまたフィルタ手段28を設けてもよい。フィルタ手段28は、液体および/または固体の異物が後部空間9に侵入するのを防ぐ一方で、ガス透過可能なように構成される。
【0037】
図2に示すように、圧力平衡管15はその両端16、17間において剛体のパイプ29からなる。これに代えて、
図1に示すように、両端16、17間を弾性チューブ30としてもよい。
【0038】
図1に示すように、音響発生装置1にはさらに、振動板駆動器7を駆動するための制御手段31を設けてもよい。制御手段31はハウジング4外の、例えば車両3の適当な周辺装置上に設けられる。ケーブルハーネス32を適当な方法でハウジングの壁を貫通させて設け、該ケーブルハーネス32によって、制御手段31と振動板駆動器7とを接続する。ケーブルハーネス32を介して電力が供給され、また振動板駆動器7や必要に応じて電気音響変換器5および/または音響発生装置1の他の電気部品および/または電子部品が電気的に駆動される。
【0039】
制御手段31は緊急遮断器34を備える。緊急遮断器34は、前部空間10が液体に浸水した場合に、好ましくはそのような浸水が止むまでの間、振動板駆動器7への電力の供給を低減または好ましくは停止するように構成される。これを可能とするため、例えば制御手段31に信号線35を介してセンサー系(図示せず)を接続する。制御手段31を、振動板駆動器7の電力消費量に基づいて前部空間10の浸水の有無を確認するように構成してもよい。
【0040】
図2に示すように、前述のケーブルハーネス32をハウジングの壁を貫通させて設けるにあたっては、従来通りケーブル通過部36を用いて密閉するとよい。より好ましくは、
図1に示すように、ケーブルハーネス32を圧力平衡管15内に通すことでハウジングの壁を貫通させてもよい。こうすればケーブルハーネス32用のケーブル通過部36を別途設ける必要がなくなる。
図1では、ケーブルハーネス32は圧力平衡管15の全長にわたってその中を通っている。ケーブルハーネス32を圧力平衡管15の一部、好ましくは基端16を含む圧力平衡管15の基端部分37、だけに通してもよい。
【0041】
図3に示す車両3は通常通り内燃機関(図示せず)を備え、これに駆動される。
図3に示されているのは車両3の後部38である。内燃機関は、好ましくは車両3の前部(図示せず)に設けられる。また、前に述べたように、車両3は排気システム2(その一部が後部38内に示されている)を備える。内燃機関で発生する排気ガスが排気システム2を介して通常の方法で排出される。
【0042】
車両3はさらに基台39を有する。基台39は、通常通り車両の下部40に位置しており、車両が停車または走行する地面41に対向している。排気システム2が設けられる場所は、少なくとも内燃機関から離れた端部42において、地面41に対向する基台の下部43である。この端部42において、排気システム2に音響発生装置1と排気管12とが設けられる。本例において、排気管12はテールパイプ44であって、このテールパイプ44の出口端45は周辺雰囲気46に開口している。車両3上において、圧力平衡管15はその末端17がハウジング4より上に位置するように配されている。
図3に示す例では、末端17は基台の下部43に配されている。
【0043】
図1〜
図3に示すように、圧力平衡管15の末端17を含む末端部分47は曲がっていて、末端17が下向きに開口する。すなわち、これらの例では末端部分47は曲線部48を有していて、この曲線部48が約180度の弧状とされている。
図3に示す例では、末端部分47は車輪ハウシング49に配されている。いずれにせよ、末端17は所定の最大浸水深さ50より上に配される。
図3において、最大浸水深さ50は一点鎖線で示されている。最大浸水深さ50は例えば、地面41から500mmである。
【0044】
図示しないが、他の実施形態として、圧力平衡管15を、十分なシーリングを施したうえで基台39を貫通させて設けてもよい。この場合末端17は基台の上部51に配され、地面41に背向する。こうすれば末端17を例えば車両3の荷物室、後部、または内部空間に妨げなく開口させることができる。
【0045】
図3から明らかなように、前述の排気システム2の端部42は、少なくとも排気管12の領域において、つまりテールパイプ44の領域において、よって音響発生装置1のハウジング4の領域において、最大浸水深さ50より下に配される。したがって特にテールパイプ44の出口開口45は最大浸水深さ50より下に配される。
【0046】
静水中の走行において、
図3に示すように、排気システム2が端部42の領域において外側から浸水することがある。そのような場合にあり得る水位を
図3に参照番号52で示す。また、端部42がテールパイプ44を介して内側からからも浸水することがある。外側からの浸水により、ハウジング4が急速に冷却され、後部空間9内の圧力が降下する。この圧力降下は圧力平衡管15を介して静的に補償することができるので、電気音響変換器5の振動板6は損傷を免れる。排気システム2の端部42が浸水すると、前部空間10が内側から浸水することがあり、これは振動板6の後部空間9側への変位を招き、望ましくない。この場合さらに深刻なのは、前部空間10が浸水すると、振動板駆動器7がもはや振動板6を駆動できずに過熱することである。前に述べたように、制御手段31は前部空間10の浸水を認識できるので、振動板駆動器7への電力の供給を適切に低減または停止して振動板駆動器7の加熱を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 音響発生装置
2 排気システム
3 車両
4 ハウジング
5 電気音響変換器
6 振動板
7 電気部品
9 後部空間
10 前部空間
11 接続パイプ
12 排気管
15 圧力平衡管
16 基端
17 末端
18 孔
19 管長
21 距離
22 直径
23 端
24 直径
25 直径
27 絞り手段
28 フィルタ装置
29 剛体のパイプ
30 弾性チューブ
31 制御手段
32 ケーブルハーネス
37 基端部分
39 基台
40 下部
41 地面
42 端部
43 下部
44 テールパイプ
47 末端部分
48 曲線部
50 浸水深さ
51 上部