(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切削工具情報と、前記根管延伸方向とに基づき、前記根管に沿った前記切削工具の侵入経路を示す侵入経路画像を作成するとともに、前記侵入経路画像を前記歯牙画像に対応させて前記表示部に表示する侵入経路画像処理部を備えた
請求項9に記載の根管治療用表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明は、根管治療において、根管治療の方向を示し、所望の根管に切削工具を導くことで、歯牙における健全部位の切削を最小限に留めることができる根管治療用表示装置、根管治療ユニット及び
根管治療用表示装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、X線CT撮影装置で撮影した歯牙の根管に関する情報を含む三次元情報を記憶する三次元情報記憶部と、関心対象である歯牙
の指定
を受け付ける歯牙指定部と、
前記歯牙に関する歯牙画像を作成し、表示部に表示する歯牙画像処理部と、前記三次元情報に基づいて、前記歯牙の根管に沿うとともに、根管延伸方向を示す根管延伸方向画像を作成し、該根管延伸方向画像を前記歯牙画像に対応させて前記表示部に重畳表示する根管延伸方向処理部とを備え、
前記歯牙画像処理部を、前記三次元情報記憶部に記憶された前記三次元情報に基づいて、指定を受け付けた前記歯牙に関する前記歯牙画像を作成し、直線状の前記根管延伸方向を回転軸として設定し、該回転軸を含む前記歯牙の第1の断面を示す歯牙断面画像、あるいは該第1の断面から前記回転軸を中心として回転させた第2の断面を示す歯牙断面画像を、前記歯牙画像として
前記表示部へ表示する構成とした根管治療用表示装置及び
根管治療用表示装置の作動方法であることを特徴とする。
【0015】
上述の歯牙に関する歯牙画像とは、X線CT撮影装置で撮影した歯牙の根管に関する三次元情報に基づいて作成したCT画像等の三次元画像、断面画像、二次元化した二次元画像、あるいは可視光カメラで撮影した二次元撮像画像、さらにはステレオカメラで撮像した三次元可視光画像などを含む概念である。
【0016】
上記歯牙の指定は、前記三次元情報から作成された歯牙画像を表示部に表示し、前記表示部に表示された前記歯牙画像から指定すること、歯牙の番号などを入力することにより指定すること、表示部に表示されている歯列弓に関するイラストなど他の画像に基づいて指定することなど、適宜の指定方法を含む概念である。
【0017】
上記根管延伸方向とは、根管に沿う方向を示すものである。具体的には、根管形状に沿うとともに、根尖から根管口を通り、歯冠外部に延びる方向を示すものであってもよく、歯冠外部から根管口までの施術においては、根管形状に沿うとともに、根管の端部である根管口から歯冠外部に延びる直線方向としても良い。また、根管口から根尖に向かう根管治療においては、根管形状に沿う方向、具体的には、根管治療に用いる切削工具の先端位置から根尖に向けて根管が延びる方向とすることができる。
【0018】
根管延伸方向画像の表示は、直線状のものや、曲折や分岐した根管の形状に合わせた曲線状のものも含む概念である。
また、上述の重畳表示するとは、前記根管延伸方向画像を前記歯牙画像に対して大きさや向きを対応させて重畳表示することを意味している。
【0019】
この発明により、根管治療において、根管治療の方向を示し、所望の根管に切削工具を導くことで、歯牙における健全部位の切削を最小限に留めることができる。
【0020】
詳述すると、X線CT撮影装置で撮影した歯牙の三次元情報に基づいて、歯牙の内部にある根管に沿うとともに、根管口を通り、歯冠外部に延びる方向や切削工具を根尖に向けて進めるべき方向を示す根管延伸方向画像を作成し、前記根管延伸方向画像を対象歯牙の歯牙画像に正確に対応させて表示部に重畳表示することにより、前記対象歯牙の歯冠外部から前記対象歯牙の内部にある根管口及び根管に沿って根尖に向かう方向を明示することができる。したがって、前記根管口を通り、かつ根管に沿って根尖に向かうような切削工具の侵入方向が明確になる。これにより、歯冠外部において根管口の方向を示す根管延伸方向画像は、根管口に向けて切削工具を誘導する際の案内となり、また、切削中の切削工具の先から根尖方向に向けての根管が延びる方向を示す根管延伸方向画像は、切削工具を根尖に向けて誘導する際の案内となる。したがって、前記根管に対する切削工具の侵入方向が明確になり、切削工具を関心対象である前記歯牙の根管に沿うように正しく導くことができる。
これにより、所望の根管を治療するために、歯牙における健全部位の切削を最小限に留めることができる。
【0021】
また、前記歯牙画像処理部を、前記三次元情報記憶部に記憶された前記三次元情報に基づいて、前記歯牙指定部で指定した前記歯牙画像を作成する構成とすること
により、X線CT撮影装置で撮影した歯牙の三次元情報に基づいて、根管口及び根管を表示した歯牙画像と根管延伸方向画像とを対応させて表示部に重畳表示することができる。そのため、切削工具を正確に前記歯牙の根管に導くことができ、根管治療において、所望の根管に切削工具を導くことができるとともに、歯質の健全部位の切削を最小限に留めることができる。
【0022】
さらに、前記歯牙画像処理部を、直線状の前記根管延伸方向を回転軸に設定し、
直線状の前記根管延伸方向を回転軸として設定し、該回転軸を含む前記歯牙の第1の断面を示す歯牙断面画像、あるいは該第1の断面から前記回転軸を中心として回転させた第2の断面を示す歯牙断面画像を、前記歯牙画像として
前記表示部へ表示すること
により、関心対象である歯牙の根管をあらゆる角度の断面図で表示することができ、複雑な形状である根管であっても、その形状を視覚的に容易に認識することができる。
詳述すると、根管延伸方向は根管に沿った方向に延びているため、前記根管延伸方向を含む面は、根管の断面を表示することができ、根管の形状を正確に表示できる。
【0023】
より詳しくは、直線状の根管延伸方向を回転軸として、
該回転軸を含む前記歯牙の第1の断面を示す歯牙断面画像、あるいは該第1の断面から前記回転軸を中心として回転させた第2の断面を示す歯牙断面画像を、前記歯牙画像として
前記表示部へ表示する構成とすることにより、三次元方向において曲折や分枝などしている複雑な形状の根管であっても、直線状の前記根管延伸方向を回転軸として、根管延伸方向に沿った根管の断面を回転することにより、例えば、曲折した根管の曲折方向を含む断面を表示することができ、その根管の形状を正確に把握することができる。なお、根管延伸方向画像は、直線や曲線に留まらず、根管の太さに対応する幅を持たせても良い。
【0024】
この発明の態様として、
関心対象である前記歯牙の可視光による二次元撮像画像を咬合面方向から撮像する可視光カメラを備え、前記歯牙画像処理部を、前記歯牙画像として、前記三次元情報に基づい
た、
前記咬合面に平行な所定面に対して二次元化表示した二次元変換画像を作成し、前記可視光カメラにより、関心対象である前記歯牙を咬合面方向から撮像した二次元撮像画像と前記二次元変換画像とを対応させて前記表示部に表示する構成とすることができる。
【0025】
また、この発明は、X線CT撮影装置で撮影した歯牙の根管に関する情報を含む三次元情報を記憶する三次元情報記憶部と、関心対象である歯牙
の指定
を受け付ける歯牙指定部と、
前記歯牙に関する歯牙画像を作成し、表示部に表示する歯牙画像処理部と、前記三次元情報に基づいて、前記歯牙の根管に沿うとともに、根管延伸方向を示す根管延伸方向画像を作成し、該根管延伸方向画像を前記歯牙画像に対応させて前記表示部に重畳表示する根管延伸方向処理部
と、関心対象である前記歯牙の可視光による二次元撮像画像を咬合面方向から撮像する可視光カメラとを備え、
前記歯牙画像処理部を、指定
を受け付けた前記歯牙に関する前記歯牙画像として、前記三次元情報に基づいた、前記咬合面に平行な所定面に対して二次元化表示した二次元変換画像を作成し、前記可視光カメラにより、関心対象である前記歯牙を咬合面方向から撮像した二次元撮像画像と前記二次元変換画像とを対応させて前記表示部に表示する構成とした根管治療用表示装置であることを特徴する。
【0026】
上述の咬合面方向とは、咬合面を観察する方向を意味しており、換言すると歯軸方向であり、より具体的には、歯軸に対して±約30度の範囲で交差する方向に沿って観察した方向までを含む概念である。
【0027】
上記所定面とは、歯軸方向に対して交差する方向の面であり、当該面は、歯牙内部を通過する断面のみならず、例えば目視できない、つまり露出していない側の歯牙表面や歯牙表面から離間する面であることを含む概念である。
【0028】
上記可視光カメラは、根管治療用ハンドピースに装着したり、内蔵したりすることにより、前記根管治療用ハンドピースと一体化した可視光カメラのみならず、独立した構成である口腔内カメラや顕微鏡などを含む概念である。また、上記二次元撮像画像は、静止画のみならず動画を含む概念である。
【0029】
この発明により、可視光による二次元撮像画像に対して内部の根管の形状及び根管に沿うとともに根管口を通る方向を明示することできる。
詳しくは、関心対象である歯牙を咬合面方向から撮像した可視光の二次元撮像画像と、前記歯牙の内部の根管に関する情報も含む前記歯牙について取得した三次元情報を所定面に対して二次元化した二次元変換画像とを対応させて表示部に表示し、さらに三次元情報に基づいて作成した前記根管延伸方向画像も正確に対応させて前記表示部に重畳表示することができる。
なお、二次元撮像画像を動画にする場合には、根管治療用ハンドピースの位置や方向を検出して、この検出情報に追随するように前記X線CT画像情報の表示画像に重畳表示してもよい。
【0030】
これにより、三次元情報を所定面に対して二次元化表示した二次元変換画像に、歯牙内部にある根管口の位置や大きさなどを表示できるため、歯牙表面を撮像した可視光による二次元撮像画像と前記二次元変換画像とを重畳表示し、さらに、前記二次元撮像画像に歯牙内部にある根管口の位置や大きさなどを表示することができる。したがって、歯牙表面を撮像した二次元撮像画像を用いながら、内部の根管口の位置や大きさ、さらには根管に沿うとともに根管口を通る方向、つまりは切削工具を侵入させる方向を把握することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記根管延伸方向処理部を、
前記根管延伸方向画像を前記所定面に対して二次元化表示した根管延伸方向変換画像を作成し、該根管延伸方向変換画像を前記歯牙画像に対応させて前記表示部に表示する構成とすることができる。
【0032】
この発明により、X線CT撮影装置で撮像した三次元情報に基づいて作成した二次元変換画像に対し重畳表示又は並べて表示した歯牙表面を撮像した可視光による二次元撮像画像に根管延伸方向画像を重畳表示することにより、根管の位置や大きさを表示するだけでなく、歯牙内部の根管に沿った方向を示す根管延伸方向を明示することができ、正確に施術することができる。
【0033】
またこの発明の態様として、前記根管における任意の点の指定を受け付ける任意点指定部を備え、前記根管延伸方向処理部を、前記任意点指定部に
おいて指定
された任意の点に基づき前記根管延伸方向画像を作成する構成とすることができる。
上述の任意の点の指定とは、根管延伸方向を定めるために、根管上の任意の2点以上を指定すること、あるいは1点を指定したうえでその1点を基準として角度調整することなどを含む概念である。
【0034】
この発明により、曲折や枝分かれをしている等の複雑な形状の根管であっても、根管の形状に沿って任意の点を指定することにより、根管に沿った根管延伸方向を適切に設定し、表示することができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記任意点指定部を、所定の間隔を有する複数の任意の点
の指定を受け付ける構成とすることができる。
この発明により、指定した複数の任意点を通るように延伸方向を定めるため、設定する根管延伸方向の自由度を高めることができる。
【0036】
またこの発明の態様として、
前記任意点指定部を、少なくとも歯冠上の切削工具の侵入口又は前記歯牙の根管口を、前記任意の点の一部として指定させる構成とすることができる。
この発明により、例えば、根管口が複数ある場合であっても、関心対象である根管の根管口を正確に指定することできる。
【0037】
またこの発明は、X線CT撮影装置で撮影した歯牙の根管に関する情報を含む三次元情報を記憶する三次元情報記憶部と、関心対象である歯牙
の指定
を受け付ける歯牙指定部と、
前記歯牙に関する歯牙画像を作成し、表示部に表示する歯牙画像処理部と、前記三次元情報に基づいて、前記歯牙の根管に沿うとともに、根管延伸方向を示す根管延伸方向画像を作成し、該根管延伸方向画像を前記歯牙画像に対応させて前記表示部に重畳表示する根管延伸方向処理部
と、関心対象である前記歯牙を咬合面方向から撮像する可視光カメラとを備え、前記歯牙画像処理部を、該可視光カメラによって咬合面方向から前記歯牙を撮像した二次元撮像画像を前記歯牙画像とする構成とした根管治療用表示装置であることを特徴とする。
【0038】
この発明により、根管治療用ハンドピースに内蔵又は装着した可視光カメラを含めた口腔内カメラやマイクロスコープなどの顕微鏡等の可視光カメラで撮像した二次元撮像画像と根管口の方向を示す根管延伸方向画像とを重畳表示することができる。これにより、施術者は関心対象である歯牙の根管口の方向を、実治療で視認する状況を二次元撮像画像に基づいて認識できるため、安全かつ正確に施術することができる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記歯牙に対して施術する切削工具に関する切削工具情報を記憶する切削工具情報記憶部と、前記表示部に表示する前記切削工具の指定を受け付ける切削工具指定部と、前記切削工具指定部
において指定
を受け付けた
前記切削工具に関する前記切削工具情報に基づいて切削工具画像を作成するとともに、該切削工具画像を前記歯牙画像に対応させて前記表示部に重畳表示する切削工具画像処理部とを備えることができる。
【0040】
上記切削工具は、関心対象である歯牙の天蓋部分、歯質、歯髄などを切削する切削工具であり、天蓋部分を切削するエアータービンや、根管治療に用いるリーマやファイル、あるいは超音波やレーザによる切削工具などを含む概念である。
【0041】
上記切削工具情報は、各切削工具の長さや口径、刃の形状及び剛性などに関する情報を含む概念である。また、上述の切削工具情報を記憶するは、従来から有する切削工具に関する情報を予め記憶している場合、新たにダウンロードした切削工具に関する情報を記憶する場合、あるいは新規に作成した切削工具に関する情報を記憶する場合などが含まれる概念である。
【0042】
上述の切削工具指定部により行われる切削工具の指定は、施術する際に施術者が切削工具を指定する場合、前記表示部において表示された選択画面に基づき切削工具を選択指定する場合、施術装置に備えた切削工具を識別する識別部により読取った識別信号に基づいて切削工具を指定する場合等も含む概念である。
【0043】
また、上述の切削工具画像の表示とは、切削工具のみの表示、切削工具と切削工具を装着する施術装置の一部、または切削工具と施術装置全体の表示することもできる。
この発明により、切削工具の画像を歯牙画像に対応して表示部に重畳表示することができる。また、例えば、切削工具を表示する際に、根管延伸方向に沿って表示することにより視覚的に切削工具の侵入方向を容易に把握することができる。
【0044】
またこの発明の態様として、前記切削工具情報と、前記根管延伸方向とに基づき、前記根管に沿った前記切削工具の侵入経路を示す侵入経路画像を作成するとともに、前記侵入経路画像を前記歯牙画像に対応させて前記表示部に表示する侵入経路画像処理部を備える構成とすることができる。
【0045】
この発明により、切削工具の侵入方向を視覚的に明示することができ、施術者は正確かつ安全に施術することができる。
詳述すると、施術者は施術する前に、X線CT撮影装置で撮影した歯牙の三次元情報、施術で使用する予定の前記切削工具に関する情報及び前記根管延伸方向とに基づいて、前記切削工具が根管に沿って侵入する侵入経路を表示部に表示することができる。
【0046】
したがって、施術者は、施術前に、前記切削工具を根管延伸方向に沿って侵入させた場合の切削工具の侵入状態を視覚的にイメージすることができ、得られた前記
侵入経路画像に基づいて施術するかを事前に判断することができ、施術できると判断した場合でも、前記切削工具を根管延伸方向に沿って侵入させることにより、健全部位の切削を最小限に留めるとともに、所望の根管に切削工具を導くことができる。
【0047】
またこの発明の態様として、前記表示部に重畳表示された画像の少なくとも一部について透過度の指定操作を受け付ける透過度指定操作部を備え、前記歯牙画像処理部を、前記透過度指定操作部
において指定
操作を受け付けた透過度に応じて透過した透過画像を作成する構成とすることができる。
【0048】
上述の透過度の指定操作とは、重畳表示する画像の少なくとも一方を半透明にする指定操作のみならず透明や不透明にする指定操作を含む概念である。
上述の画像の少なくとも一部について透過度の指定操作とは、表示部に表示された画像全部を半透明にする指定操作のみならず、前記画像の一部、例えば、切削工具画像の施術装置部分を半透明にし、切削工具を不透明に指定操作する場合や、三次元情報に基づいて表示部に表示された歯牙画像の根管口及び根管を除いた歯牙画像を半透明にすることなどを含む概念である。
【0049】
この発明により、例えば、根管延伸方向画像を半透明化することにより、歯牙画像に示されている根管の根管口の位置を明確に表示しながら、根管延伸方向が根管に沿っている状態を明示することができる。また、可視光画像を半透明化して、三次元情報に基づいて作成した歯牙画像に示される根管を明確に表示する、逆に、前記歯牙画像を半透明化して、可視光画像を明確に表示するなどにより、重畳表示された前記歯牙画像、及び前記可視光画像のうち一方を他方に比べて明確に表示することで、より精密で正確な根管治療を行うことができる。さらに、一方の画像を明確に表示しながら、他方の画像を透明化したり、表示させたりして、明確に表示された一方の画像を主として確認しながら、根管を治療することができる。
【0050】
またこの発明の態様として、前記表示部に重畳表示された画像の少なくとも一部について色彩の指定操作を受け付ける色彩指定操作部を備え、前記歯牙画像処理部を、前記色彩指定操作部
において指定
操作を受け付けた色彩に応じた色彩画像を作成する構成とすることができる。
【0051】
上述の画像の少なくとも一部について色彩の指定操作とは、表示部に表示された画像全部について色彩を指定できるのみならず、前記画像の一部、具体的には、三次元情報に基づいて表示部に表示された歯牙画像のうち関心対象である歯牙の根管領域のみを色彩を指定することができる。
【0052】
この発明により、例えば、三次元情報に基づき作成した歯牙画像に示される根管を色彩表示するなどにより、重畳表示された前記歯牙画像、及び前記可視光画像のうち一部を他方に比べて明確に表示することで、さらに、精密で正確な根管治療を行うことができる。また、根管を色彩表示し、切削工具の先端の位置を検出部からの出力又は根管長測定装置からの出力に基づいて重畳表示すれば、リアルタイムで切削工具が根尖に近づきつつある状況を把握しつつ施術できる。さらに、切削工具の先端の位置から根尖までの間の領域を色彩表示することも出来、この場合には、根管領域の色彩表示自体が切削工具の侵入方向を表示する機能を持たせることができる。
【0053】
またこの発明は、上述の根管治療用表示装置と、前記歯牙に対して施術する施術装置とを備えた根管治療ユニットとすることができる。
上記施術装置は、エアータービンハンドピース、モータハンドピース、超音波ハンドピースあるいはレーザーハンドピースなどのハンドピースを含む概念である。
【0054】
この発明により、関心対象である歯牙の根管口の方向を歯科用画像表示装置の前記表示部に表示された三次元表示情報、及び/又は二次元撮像画像で確認しながら口腔内の対象歯牙を施術することができる。
【0055】
この発明の態様として、前記施術装置に装着し
た切削工具を駆動する駆動部と
該駆動部を駆動制御する駆動制御部とを備え、該駆動制御部を、前記切削工具に応じた駆動制御をする構成とすることができる。
【0056】
上述の駆動制御とは、施術装置に装着した切削工具を、前記切削工具に適した駆動を行うように制御する場合のみならず、シミュレーション結果に基づいて駆動するように制御する場合なども含む概念である。
【0057】
この発明により、施術者は安全かつ正確に施術することができる。
詳しくは、切削工具は、種類に応じて長さや径や形状が異なり、上下に動いて切削するものや回転で切削するもの、また、切削方向と非切削方向に回転を交互に繰り返して切削するものなどがあり、切削工具の種類によって駆動制御を変える必要がある。また、一般的に根管治療では径や長さの異なる複数の切削工具を使用することが多く、その種類に応じて湾曲度合いが異なる。そこで、該駆動制御部を、施術装置に装着した前記切削工具に応じて駆動制御することにより、前記切削工具の種類に応じて適切に駆動制御することができ、施術者は安全かつ正確に施術することができる。
【0058】
この発明の態様として、
前記施術装置に取り付けた
前記切削工具の前記歯牙に対する施術方向及び前記施術装置の位置の少なくとも一方を検出する検出部を備えることができる。
上記施術方向とは、前記施術装置に装着した切削工具の回転軸方向、レーザの照射方向、超音波の照射方向などを含む概念である。
【0059】
上記検出は、例えば前記施術装置に装着した切削工具を、関心対象である歯牙に合わせるキャリブレーションと前記施術装置に内蔵したジャイロ、前記施術装置における2点以上の三次元位置の計測、前記施術装置に内蔵したジャイロと施術装置における少なくとも1点の三次元位置計測、あるいは、施術装置における2点以上の二次元位置の計測とジャイロなどの組み合わせによる位置検出などを含み、また検出部による直接的な位置検出のみならず、検出部による検出結果に基づいて算出した位置検出も含み、さらには、施術装置の絶対的三次元位置の検出のみならず、例えば、関心対象の歯牙に対する相対的三次元位置の検出を含むものとする。
【0060】
なお、位置の計測方法としては、前記施術装置に赤外線検出器で検出可能な三次元位置測定マーカを装着し、外部より赤外線で三次元位置検出を行う三次元位置測定方法や、測定対象に設けた磁気センサを三次元磁気検出器で測定する方法、赤外線を用いて三次元位置を測定する方法、GPSを用いることで位置を計測する方法などを含む概念である。
【0061】
この発明により、切削工具を前記表示部に表示された歯牙画像と対応して三次元的に表示部に表示することができる。
詳しくは、前記施術装置の位置及び方向の少なくとも一方を検出する検出部を備えることにより、関心対象である歯牙に対する施術装置の相対位置関係を検出し、前記施術装置を歯牙画像に対応させて表示部に表示することができる。したがって、施術者は前記表示部を見ながら正確に施術することが可能となる。
これにより、施術者は根管口の位置などが表示された歯牙画像と患者の口腔内とを見比べながら施術することなく、安全かつ正確に施術することができる。
【0062】
またこの発明の態様として、前記検出部で
位置が検出された前記施術装置に装着された前記切削工具の位置
が前記根管の所定位置となる場合、又は、前記施術方向
が前記歯牙の所定の位置における前記根管延伸方向に対して所定の方向となる場合に所定動作を行う所定動作部を備えることができる。
【0063】
上述の所定の位置となる場合とは、予め設定した根尖の手前数ミリの位置となる場合、あるいは根管延伸方向に対して幅方向の一定範囲から外れる場合や、該一定範囲に含まれる場合とすることができる。
上述の所定の方向とは、根管延伸方向を中心とした一定の角度範囲から外れる場合とすることができる。
【0064】
上記所定動作とは、音声、ブザー音やメロディ、振動による報知又はLED等の点灯や点滅による照明に基づく表示等の報知、切削工具の駆動の停止、駆動出力の低下、または回転駆動の逆転などの切削工具の駆動制御とすることができる。
【0065】
この発明により、例えば、切削工具の位置が所定の位置にない場合や切削工具の回転軸の方向が所定の方向にない場合に、音声、ブザー音やメロディ、振動による報知又はLED等の点灯や点滅による照明に基づく表示等の報知することにより、切削工具の位置が所定の位置に、又は切削工具の回転軸の方向が所定の方向にあることを認識して慎重かつ確実丁寧に施術することができ、また、切削工具の位置が所定の位置になった場合や切削工具の回転軸の方向が所定の方向にある場合に、切削工具が駆動しているため、歯牙における健全部位を不用意に切削したり切削工具が突き抜けたりすることを防止できる。
【0066】
またこの発明の態様として、装着した切削工具の先端位置を測定する根管長測定部と、該根管長測定部で
測定した情報を記憶する根管長情報記憶部とを備え、
前記検出部を前記根管長測定部で構成し、前記所定動作部を、前記
根管長測定部で測定した前記先端位置が、予め設定した根管の所定位置となる場合に予め設定した所定動作を行う構成とすることができる。
【0067】
上述の所定動作は、音声、ブザー音やメロディ、振動による報知又はLED等の点灯や点滅による照明に基づく表示等の報知あるいは、切削工具の駆動の開始、停止、駆動出力の低下、または回転駆動の逆転等の切削工具の駆動制御とすることができる
【0068】
この発明により、例えば、根管長測定部からの出力により前記切削工具の先端位置が根尖に近づいてきていることを施術者が認識して慎重かつ確実丁寧に施術することができる。仮に、前記切削工具が根尖に近づきつつあることを施術者が認識しなかった場合であっても、自動的に駆動力を停止したり、駆動力を低減したり、逆転したりすることで駆動制御するため、安全に治療することができる。
【0069】
またこの発明の態様として、前記所定動作部を、前記切削工具の先端位置が予め設定した
前記根管における所定位置となったこと、又は、
前記施術方向が前記歯牙の所定の位置において、前記根管延伸方向に対する所定の方向になったことを報知する報知部で構成することができる。
【0070】
この発明により、例えば、施術装置が根管延伸方向から外れた場合や施術装置に装着した切削工具の先端が、施術者が任意に設定した根尖の手前数ミリの位置に達した場合に、音声、ブザー音やメロディ、振動による報知又はLED等の点灯や点滅による照明に基づく表示等により報知することにより、施術方向が正しい方向を向いてないことや根尖に至る前に根尖に近づいてきていることを認識して慎重に且つ確実丁寧に施術することができる。
【0071】
またこの発明の態様として、前記所定動作部を、
前記切削工具に所定動作を行わせる構成とすることができる。
この発明により、例えば、施術装置が、施術者が予め設定した根管延伸方向から外れた場合や施術装置に装着した切削工具の先端が、施術者が任意に設定した根尖の手前数ミリに達した場合に、前記施術装置の駆動制御することにより、切削工具が根管上の目的以外の箇所を切削することや、根尖を突き抜けるいわゆるパーフォレーションなどを回避するように駆動制御できるため、安全に施術することができる。
【発明の効果】
【0072】
本発明により、根管治療において、根管治療の方向を示し、所望の根管に切削工具を導くことで、歯牙における健全部位の切削を最小限に留めることができる根管治療用表示装置、根管治療ユニット及び
根管治療用表示装置の作動方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下、本発明による診療システム1について、
図1乃至
図19とともに説明する。
図1は診療システム1のブロック図を示し、
図2は診療システム1の概略斜視図を示し、
図3は可視光カメラ付き根管治療用ハンドピース20の概略斜視図を示し、
図4はX線CT撮影装置60の概略図を示し、
図5は選択歯牙画像表示操作画面200の説明図を示し、
図6は根管延伸方向表示操作画面300の説明図を示し、
図7は根管延伸方向表示操作画面300の他の実施例の説明図を示し、
図8は施術操作画面400の説明図の説明図を示している。なお、
図2では、X線CT撮影装置60の図示を省略している。
【0075】
図9は根管診療の概略フローチャートを示し、
図10は歯牙の画像表示のフローチャートを示し、
図11,12は根管延伸方向の画像表示のフローチャートを示し、
図13は二次元撮像画像Ipと二次元変換画像ItPの重ね合わせの説明図を示し、
図14,15は根管延伸方向の指定方法についての説明図を示し、
図16は
侵入経路画像Ieの説明図を示し、
図17は施術のフローチャートを示し、
図18は根管断面画像ItCの説明図を示し、
図19はマイクロスコープ付き歯科診療台150を示している。
【0076】
診療システム1は、
図1に示すように、歯牙画像処理装置10、可視光カメラ付き根管治療用ハンドピース20、チェアーユニット50、及びX線CT撮影装置60で構成している。
歯牙画像処理装置10は、処理装置制御部11、指定操作部12、モニタ13、処理装置側通信インターフェイス14(以下において、処理装置側通信I/F14という)、記憶部15、切削工具位置検出部16で構成されている。
【0077】
処理装置制御部11は、CPUとROMとRAMで構成されており、指定操作部12により入力された操作信号に基づいてモニタ13、処理装置側通信I/F14、記憶部15、及び切削工具位置検出部16を備えるとともに、以下の機能的構成を備えている。
【0078】
詳述すると、処理装置制御部11は、歯牙画像処理部11a、根管延伸方向処理部11b、直線画像処理部11c、切削工具画像処理部11d、侵入画像処理部11e、施術切削工具処理部11f、及び施術切削工具制御部11gという機能的構成を備えている。
【0079】
歯牙画像処理部11aは、歯牙に関する歯牙画像Iを作成し、後述する歯牙画像操作画面100を表示するモニタ13に表示する処理を行う処理部である。
なお、歯牙画像Iとして、三次元歯牙画像Ic、二次元変換画像It、二次元撮像画像Ipがあるが、それぞれの詳細については後述する。
【0080】
根管延伸方向処理部11bは、X線CT撮影装置60で取得した三次元情報に基づいて、後述する根管任意点指定部12bにより指定された任意の点P及び後述する根管延伸方向指定部12cにより指定された方向に基づいて、根管Rに沿う根管延伸方向を示す根管延伸方向画像Idを作成し、歯牙画像Iに対応させてモニタ13に表示する処理を行う処理部である(
図6参照)。
【0081】
根管延伸方向は、根管に沿うとともに、根尖から根管口を通り歯冠外部に延びる方向、根管に沿うとともに、根管の端部である根管口から歯冠外部に延びる方向、及び根管に沿うとともに根尖に向かう方向としてもよい。なお、根尖に向かう方向を換言すると、根管治療に用いる切削工具の先端から根管に沿って根尖に向かう方向である。
【0082】
直線画像処理部11cは、後述する根管任意点指定部12bにより指定された任意の点Pを基準とした直線画像Ifを歯牙画像Iに対応させてモニタ13に表示する処理を行う処理部である(
図14(b)参照)。
切削工具画像処理部11dは、後述する切削工具指定部12dで指定した切削工具26の切削工具画像Isをモニタ13に表示する処理を行う処理部である(
図16参照)。
【0083】
侵入画像処理部11eは、後述する切削工具選択部12dで指定した切削工具26を根管延伸方向に沿って根管口Roから根管Rに侵入した場合に、切削工具26の切削工具先端26aが根管Rの根尖Rtに到達可能かを判定し、その判定結果の
侵入経路画像Ieを作成し、二次元変換画像Itと対応させてモニタ13に表示する処理を行う処理部である(
図16参照)。
【0084】
施術切削工具処理部11fは、施術の際に使用する切削工具26がシミュレーションの際に指定した切削工具26と対応しているかを判定するとともに、後述する切削工具記憶部15cに記憶されている切削工具に関する情報に基づいて、切削工具26の施術工具画像Ihを後述する切削工具位置検出部16により検出した位置に合わせてモニタ13に表示する処理を行う処理部である(
図8参照)。
【0085】
施術切削工具制御部11gは、例えば、後述する切削工具位置検出部16により検知した切削工具26の切削工具先端26aが、根管延伸方向を基準とした一定の範囲から外れた場合などに、可視光カメラ付き根管治療用ハンドピース20の駆動を制御するための制御信号を、通信ケーブルを介して歯牙画像処理装置10から可視光カメラ付き根管治療用ハンドピース20に送る制御部である。
【0086】
さらに、上述の歯牙画像処理部11aは、三次元歯牙画像処理部11aa、可視光画像処理部11ab、二次元変換画像処理部11ac、透過画像処理部11ad、色彩画像処理部11ae、画像表示処理部11af、及び断面画像処理部11agにより構成されている。
【0087】
三次元歯牙画像処理部11aaは、X線CT撮影装置60で取得した三次元情報(以下において、3D情報という)に基づいて、歯牙Tに関する三次元歯牙画像Icを作成し、例えば、
図5に示すように、後述する選択歯牙画像表示操作画面200の対象歯牙画像表示部220などに三次元歯牙画像Icを表示する処理を行う処理部である。
【0088】
可視光画像処理部11abは、例えば、
図6で示すように、根管延伸方向表示操作画面300の構成であるXY平面根管延伸方向表示部320に表示する二次元撮像画像Ipを、可視光カメラ30により撮像した情報に基づいて作成し、二次元撮像画像IpをXY平面根管延伸方向表示部320に表示する処理を行う処理部であり、二次元変換画像処理部11acは、X線CT撮影装置60で取得した3D情報に基づいて二次元化表示した二次元変換画像Itを作成し、後述する根管延伸方向表示操作画面300のXY平面根管延伸方向表示部320等に表示する処理を行う処理部である(
図7参照)。
【0089】
透過画像処理部11adは、後述する透過度指定操作部12eで所望の透過度に操作した透過歯牙画像を作成する処理部であり、色彩画像処理部11aeは、後述する色彩設定操作部12fにより、指定した歯に対して色彩を付した色彩歯牙画像色彩画像を作成する処理部である(図示省略)。
【0090】
画像表示処理部11afは、上述の画像の回転、拡大、縮小、強調、移動などの表示、及び上述の画像を他の画像と対応させて表示部に表示する処理を行う処理部であり、断面画像処理部11agは、歯冠の外部から根管口Roを通り根管Rに沿った方向に延びる直線状の根管延伸方向を含む平面であって、根管延伸軸方向Dを中心として回転することができる根管断面画像ItCを作成し、表示部に表示する処理を行う処理部である。
【0091】
また、指定操作部12は、機能的構成として、対象歯牙指定操作部12a、根管任意点指定部12b、根管延伸方向指定部12c、切削工具指定部12d、透過度指定操作部12e、色彩設定操作部12f、表示方法設定部12g、及び表示変更指定操作部12hを備えている。
【0092】
対象歯牙指定操作部12aは、
図5に示すように、後述する歯列弓画像表示部210に表示された歯列弓を示す画像から関心対象である歯牙Tの指定を受け付け、後述する三次元情報記憶部15aに記憶した複数の3D情報から該当する歯牙Tの3D情報の抽出を指定する操作部である。
【0093】
根管任意点指定部12bは、例えば、根管延伸方向を設定するために指定する根管R上の点を、任意の点Pとする指定を受け付ける指定部である(
図14(a)参照)。
根管延伸方向指定部12cは、
図14(b)に示すように、根管任意点指定部12bで指定された一つの任意点Pを基準として根管Rに沿うとともに根管口Roを通る方向の指定を受け付ける指定部である。
【0094】
切削工具指定部12dは、切削工具26の選択指定を受け付ける指定部であり、透過度調整操作部12eは、モニタ13において重畳表示された画像の全部または一部の画像の透過度の調整を受け付ける操作部であり、色彩設定操作部12fとは、モニタ13において重畳表示された画像の一部または全部について色彩の設定操作を受け付ける操作部である。
【0095】
表示方法設定部12gは、例えば、モニタ13上に表示する後述する歯牙画像操作画面100の主要部分であって、後述する対象歯牙画像表示部220に表示する三次元歯牙画像Ic(
図5参照)を、咬合面方向から観察した二次元変換画像ItPに変更するなど、歯牙画像Iの表示方法を設定する設定部である。
【0096】
表示変更指定操作部12hは、モニタ13に表示された画面の指定操作を受け付ける指定操作部である。具体的には、後述する歯牙画像操作画面100の主要部分に表示する操作画面の切り換え(
図5参照)、モニタ13に表示する3D情報に基づいて作成された三次元歯牙画像Icまたは二次元変換画像Itを線図、表面図として表示する旨の指定を受け付けるほか、表示する画像の移動、回転、拡大・縮小及び強調する操作を受け付ける操作指定部である。
また、処理装置側通信部I/F14は、通信ケーブルを介して歯牙画像処理装10と可視光カメラ付き根管治療用ハンドピース20などの周辺機器と通信するためのインターフェイスである。
【0097】
記憶装置15は、HDDやSSDなどで構成され、以下の機能的構成を備えている。
記憶装置15は、X線CT撮影装置60で取得した3D情報を記憶する三次元情報記憶部15a、可視光カメラ30で撮像した二次元撮像画像Ipを記憶する二次元情報記憶部15b、切削工具26に関する情報を記憶する切削工具情報記憶部15c、根管長測定装置40で測定した根管長などの根管測定情報を記憶する根管長測定情報記憶部15dを備えており、また、各種処理プログラムを処理装置制御部11によって各画像を処理するための各種処理プログラムや施術者及び被施術者に関する情報等を記憶する記憶部である。
【0098】
なお、切削工具位置検出部16は、後述する可視光カメラ付き根管治療用ハンドピース20に装着された切削工具26の切削工具先端26aの位置及び切削工具26の傾きの少なくとも一方を検出する検出部である。その検出方法は、従来の検出方法を用いてもよく、例えば、後述する可視光カメラ付き根管治療用ハンドピース20に赤外線検出器で検出可能な3次元位置測定マーカや3次元磁気検出器で検出可能な磁気センサを付けておくことで、可視光カメラ付き根管治療用ハンドピース20の切削工具26の切削工具先端26a及び、切削工具26の傾きを推定することができる。
【0099】
可視光カメラ付き根管治療用ハンドピース20(以下において、根管治療用ハンドピース20という)は、
図1及び
図3に示すように、先端のヘッド部21aに回転する切削工具26を交換可能に装着する構成であり、ハンドピース本体21の内部に、切削工具26を回転駆動するマイクロモータ等の駆動部22、ハンドピース制御部23、ハンドピース側通信インターフェイス24(以下において、ハンドピース側通信I/F24という)、報知部25、切削工具トルク検出部28、切削工具位置検出設定部29を備え、根管長測定装置40を内蔵し、後端側の接続ケーブル(図示省略)によって、図示省略する口腔電極に接続されている。また、ヘッド部21aの先端側に可視光カメラ30を配置し、ハンドピース本体21に後端側の上面に、後述する根管長測定装置40による測定結果を表示する測定結果表示部27を備えている。
【0100】
このように構成した根管治療用ハンドピース20は、ハンドピース本体21の内部に設けたハンドピース制御部23を介して、駆動部22によって駆動し、施術対象である歯牙Tの齲蝕部や汚染された根管壁を切削したりする。
【0101】
また、根管治療用ハンドピース20は、処理装置側通信I/F14とハンドピース側通信I/F24とを通信部接続ケーブル(図示省略)を介して接続しているため、歯牙画像処理装置10と通信可能に構成している。
なお、本構成ではケーブルを用いて歯牙画像処理装置10と通信しているが、赤外線などの無線通信を利用してもよい。
【0102】
また、報知部25は、位置検出報知部251及び方向検出報知部252の制御によってブザーなどの音声や照明で報知する装置である。
【0103】
また、切削工具トルク検出部28は、切削工具に掛かるトルク値を検出してトルク設定部(不図示)で予め設定したトルク値を超える場合、ハンドピース制御部23で所定の動作即ち、切削工具の回転を停止したり、逆転させたり、駆動力を低減したりするためのトルク値を検出する検出部であり、切削工具位置検出設定部29は、例えば、根管長測定装置40で切削工具先端26aが根尖Rtから任意の予め設定した設定位置に到達した時点において、ハンドピース制御部23により上記の所定の動作を行う場合などにおいて、該所定位置を予め設定する位置検出設定部である。
【0104】
可視光撮影装置のひとつの例として機能する可視光カメラ30は、
図3に示す根管治療用ハンドピース20のヘッド部21aに配置され、患者M1(
図4参照)の口腔内に挿入したヘッド部21aから照明光を関心領域である撮像対象箇所に照射し、撮像対象箇所で反射した反射光を図示省略するCMOS等の固体撮像センサで受光し、二次元撮像画像Ipを撮像する装置である。なお、可視光カメラ30によって撮影した二次元撮像画像Ipは、記憶装置15の二次元情報記憶部15bに記憶される。
【0105】
根管長測定部40は、例えば根管治療用ハンドピース20のハンドピース本体21に内蔵され、歯牙Tの根管Rの先端である根尖Rtに対する切削工具26の切削工具先端26aの位置を電流値によって測定する測定部であり、ヘッド部21aに装着する切削工具26と、患者M1の口角部に引っかけるフック状の口腔電極(図示省略する)とで通電して根管長を測定する構成である。
【0106】
具体的には、患者M1の口角部に口腔電極を引っかけるとともに、歯牙Tの根管Rに切削工具26を挿入し、切削工具26の切削工具先端26aから歯牙Tの根管Rにおける根尖Rtまでの位置を電流値等によって測定する周知の構成を使用することができる。
【0107】
なお、根管長測定部40によって測定した測定結果は、ハンドピース本体21に配置した測定結果表示部27に表示するとともに、記憶装置15の根管長測定情報記憶部15dに記憶されるように構成している。
【0108】
チェアーユニット50は、
図2に示すように、操作駆動部51、唾液や冷却水等の吸引装置やうがいを行うための装置が装備されているベースンユニット52、背面シートの傾動や座面の昇降が可能な診療椅子53、診療椅子53に接続され、施術者の足によって操作され、踏み込み及び踏み込み量を検出できるペダル54aを備えたフートコントローラ54、根管治療用ハンドピース20を配置するハンドピースホルダー55、及びトレーテーブル56で構成されている。
【0109】
トレーテーブル56の前部に設けられたハンドピースホルダーは、
図2に示すように、上面に備えた各種操作デバイス101、各種操作デバイス101の前側のホルダに配置される根管治療用ハンドピース20を配置するハンドピースホルダー55で構成されている。
【0110】
なお、操作パネルに設けられた各種操作デバイス101は、タッチスクリーンやポインティングスティック、あるいはスイッチ等で構成している。また、マウスなどの適宜の入力デバイスを備えてもよい。
【0111】
X線CT撮影装置60は、
図4に示すように、中空の縦長直方体状の防X線室60aに収容され、CT撮影を実行して、投影データを収集する装置であり、患者M1に向けてX線の束で構成するX線コーンビームを出射するX線発生部61aと、X線発生部61aで出射されたX線を検出するX線検出部61bとをそれぞれ支持するとともに、支柱に対して昇降移動し、旋回する旋回アーム61を備えている。
【0112】
このように構成したX線CT撮影装置60は、旋回アーム61のX線発生部61aとX線検出部61bとの間に患者M1を挟むように配置し、患者M1の周囲を旋回アーム61が旋回しながら、X線発生部61aで出射され、患者M1を透過するX線コーンビームをX線検出部61bで検出して、3D情報を取得することができる。
【0113】
なお、X線CT撮影装置60は、処理装置制御部11を介して記憶装置15に接続され、X線CT撮影装置60によって取得した3D情報を記憶装置15の三次元情報記憶部15aに記憶する。
【0114】
なお、上述の説明では、X線CT撮影装置30で撮影した3D情報を記憶装置15の三次元情報記憶部15aに記憶するとともに、3D情報に基づく歯牙画像Iなどを作成してモニタ13に表示したが、
図19に示すマイクロスコープ付き歯科診療台150における顕微鏡70の視準画面に、歯牙画像Iなどを表示してもよい。
【0115】
顕微鏡付き歯科診療台150は、診療椅子53と、診療椅子53の側部に配設された顕微鏡ユニット151とより構成される。顕微鏡ユニット151は、多関節に連接されたハンガーアーム152とその先端に取付けられた顕微鏡70と、ハンガーアーム152の基部が取り付けられるライト支柱153とで構成し、ハンガーアーム152との関節部によって、顕微鏡本体70Aを、診療椅子13のヘッドレストの上方近傍位置に位置付け、診療椅子13の上に仰臥した施術対象者M1(図示省略)の口腔内を観察することができる。
【0116】
詳述すると、顕微鏡70は、顕微鏡本体70A、接眼レンズ70Aa、対物レンズ70Ab及びピント合わせ機構等を備えた公知の顕微鏡であり、施術者は、対物レンズ70Abを視準対象である歯牙Tに向けて、接眼レンズ70Aaから覗き込んで視準する構成である。
【0117】
次に、
図5に基づき、施術の対象である歯牙Tの歯牙画像Iをモニタ13に表示する歯牙画像操作画面100について説明する。
歯牙画像操作画面100は、右端部分とそれ以外の主要部分に分かれており、主要部分には、歯牙Tの選択及び歯牙Tの歯牙画像Iを表示するための選択歯牙画像表示操作画面200(
図5参照)、根管延伸方向画像Idを歯牙画像Iに対応させて表示するための根管延伸方向表示操作画面300(
図6参照)、及び表示された根管延伸方向画像Idに沿って施術を行うための施術操作画面400(
図8参照)を目的に合わせて切り換えて表示する構成である。一方で、右端部分は、各操作画面に共通な項目を表示する構成であり、詳細については後述する。
なお、共通項目を表示する箇所は、右端部に限らず、上端、下端、左端などの位置にも配置してもよい。
【0118】
歯牙画像操作画面100の右端部分は、上述のように選択歯牙画像表示操作画面200及び根管延伸方向表示操作画面300、施術操作画面400とで共通する項目であり、右側上段のFile部110、右側中段のDisplay部120、右側下段のInformation部130により構成する。
【0119】
ファイル指定処理部110は、File Open指定処理部111、及びFile Save指定処理部112を備えている。
File Open指定処理部111は患者M1に関する情報、換言すると後述するInformation表示部130に表示される患者M1の氏名などの情報及び三次元情報記憶部15aに記憶されている患者M1の3D情報や後述する選択歯牙画像表示操作画面200や根管延伸方向表示操作画面300で行った処理により得られた情報であって、後述するFile Save指定処理部112により保存する情報などを読み出す指定処理部である。
【0120】
File Save指定処理部112は、例えば、後述する選択歯牙画像表示操作画面200において行う関心対象である歯牙Tの選択及び表示した歯牙Tの歯牙画像Iなど、選択歯牙画像表示操作画面200や根管延伸方向表示操作画面300で行った処理により得られた情報を記憶部15に保存することを受け付ける指定処理部である。
Display部120は、Change Display選択部121、Move選択部122、Rotation選択部123、Scale選択部124、Surface選択部125、Diagram選択部126、Emphasis選択部127、Permeability選択部128を備えている。
【0121】
Change Display選択部121は、表示変更指定操作部12hとして機能し、歯牙画像操作画面100に表示する操作画面の選択を受け付ける選択部である。
詳しくは、後述する
図9のフローチャートのステップs1、s2、s3の各ステップに対し、施術の目的とする処理に適した操作画面を歯牙画像操作画面100の主要部分に表示する選択操作を受け付ける選択部である。
【0122】
Move選択部122は、表示変更指定操作部12hとして機能し、表示する歯牙画像Iなどの移動操作をできるようにするために選択を受け付ける選択部であり、Rotation選択部123は、表示変更指定操作部12hとして機能し、表示する二次元変換画像Itなどの回転操作の選択を受け付ける選択部である。
【0123】
Move選択部122とRotation選択部123により、施術者はモニタ13に表示する歯牙画像Iの移動や回転を行うことができるため、施術者は根管Rの位置や形状を視覚で認識することができる。
【0124】
Scale選択部124は、表示された歯牙画像Iなどの拡大または縮小の選択を受け付ける選択部であり、Surface選択部125は、表示変更指定操作部12hとして機能し、表示された歯牙画像が3D情報に基づいて作成された画像である場合に、歯牙画像の表面の表示を受け付ける選択部である。なお、表面の表示だけでなく、歯牙の内部にある根管Rや根管口Roの歯牙画像の表面を表示することができる。
一方で、Diagram選択部126は、対象歯牙の歯牙画像を線図による表示の選択を受け付ける選択部である。
【0125】
Emphasis選択部127、表示変更指定操作部12hとして機能し、表示された画像の全部または一部の強調表示を受け付ける選択部である。例えば、根管Rや根管口Roを強調表示することにより、根管Rや根管口Roの位置及び形状が明確にすることができ、施術者は根管Rや根管口Roを視覚ではっきりと認識することができる。
【0126】
Permeability選択部128は、透過度指定操作部12eの機能として、モニタ13に表示された歯牙画像の一部または全部を透過して表示する選択を受け付ける選択部である。具体的には、透過表示したい画像を後述するカーソル270で選択し、Permeability選択部128で透過度の値を適宜変更することで、カーソル270で選択した画像を所望の透過度で表示することができる。
【0127】
これにより、仮に二つの画像、例えば、
図6の後述するXY平面根管延伸方向表示部320に表示するように咬合面から撮影した二次元撮像画像Ipと、根管口Roなどが表示された二次元変換画像ItPを重畳表示した場合であっても、二次元撮像画像Ipの透過度を調整することにより、二つの画像を同時に観察し、根管口Roの位置を表示することができる(図示省略)。
なお、Permeability選択部128はこの構成に限らず、スクロールバーとして歯牙画像操作画面100に表示してもよい。
【0128】
Information部130は記憶部に記憶されている患者M1に関する情報を表示する表示部であり、名前を表示するName部131、性別を表示するM/N部132、年齢を表示するAge部133、治療の履歴を表示するRecord部134から構成されている。
上述の記憶部に記憶されている情報とは、患者M1の氏名、性別、年齢や治療履歴などの情報であるが、これらに限られるものでなく、例えば施術者の氏名や診療日などでもよい。
【0129】
次に、関心対象である歯牙Tの選択を行い、歯牙Tの歯牙画像Iを表示する選択歯牙画像表示操作画面200を、
図5に基づいて説明する。
図5に示すように、選択歯牙画像表示操作画面200は、上段の表示画面と下段の操作画面に分かれており、上段の表示画面は、右側の歯列弓画像表示部210、左側の対象歯牙画像表示部220で構成し、下段の操作画面は、右側の対象歯牙選択部230、左側の対象歯牙画像表示パターン選択部240で構成されている。また、歯列弓画像表示部210と対象歯牙選択部230との間であって、表示画面の右下には、上顎歯列弓または下顎歯列弓を選択する顎指定部260で構成し、さらに、上述の各種操作デバイス101におけるポインティングデバイスによって操作され、表示画面及び操作画面の双方に移動し、操作することができるカーソル270(マウスで操作する場合にマウスポインタまたは単にポインタと呼ばれることがある)で構成している。
【0130】
歯列弓画像表示部210は、施術対象である歯牙Tを含むは歯列弓を表示する表示部である。具体的には、施術対象である歯牙Tが上顎にあれば上顎の歯列弓画像を表示し、歯牙Tが下顎にある場合は下顎の歯列弓画像を表示するが、上下の歯列弓すべての歯列弓画像を表示する構成としてもよい。
【0131】
なお、本実施例においては、歯牙Tが下顎にあるとして、下顎の歯列弓画像Ilを表示しているが(
図5参照)、後述する対象歯牙選択部230で選択する歯牙の範囲に基づいて作成する三次元歯牙画像Icや可視光カメラ30で撮像した二次元撮像画像Ipを表示する構成としてもよい(図示省略)。
【0132】
対象歯牙画像表示部220は、X線CT撮影装置60で撮影された3D情報に基づいて、歯列弓画像表示部210に表示する歯列弓画像から選択した施術の対象である歯牙Tの歯牙画像Iを表示する表示部である。対象歯牙画像表示部220に表示する歯牙画像Iは、本実施例のように、X線CT撮影装置により取得した3D情報に基づいた三次元歯牙画像Icでもよいし(
図5参照)、前記3D情報に基づき作成する二次元化表示した二次元変換画像Itとしてもよい(図示省略)。
【0133】
なお、対象歯牙画像表示部220に二次元撮像画像Ipを表示する場合は、咬合面方向から可視光カメラ30又は顕微鏡70で撮像した画像を拡大表示してもよいし、顕微鏡70による二次元撮像画像Ipの場合には、天蓋を除去し、根管口Roが視認できる二次元撮像画像Ipとしてもよい。
【0134】
対象歯牙選択部230は、対象歯牙指定操作部12aとして機能し、歯列弓画像表示部210に表示する歯列弓画像から対象歯牙Tを選択する選択部でありAppoint Tooth選択部231、Appoint Range選択部232、Input Tooth No.選択部233を備えている。
【0135】
Appoint Tooth選択部231は、歯列弓画像表示部210に表示する歯列弓画像より対象歯牙Tの選択を受け付ける選択部である。
Appoint Range選択部232は、歯列弓画像表示部210に表示する歯列弓画像から対象歯牙を含む所定の範囲についての選択を受け付ける選択部である。
Input Tooth No.選択部233は、歯列弓画像表示部210に表示する歯列弓画像から対象歯牙Tを選択せず、歯牙の番号を指定し、対象歯牙の選択を受け付ける選択部である。
【0136】
対象歯牙画像表示パターン選択部240は、表示方法設定部12gとして機能し、対象歯牙画像表示部220に表示された歯牙画像Iの表示方法を選択する選択部であり、2D選択部241、3D選択部242、Oral Camera選択部243、XY Section選択部244、XZ Section選択部245、YZ Section選択部246を備えている。
【0137】
2D選択部241は、例えば、対象歯牙画像表示部220に表示する歯牙画像Iが歯列弓画像表示部210で選択する歯牙Tの3D情報に基づいて作成した三次元歯牙画像Icである場合に、対象歯牙画像表示部220に表示する歯牙画像Iを二次元変換画像Itに切り替えて表示することを受け付ける選択部であり、3D選択部242も同様に、対象歯牙画像表示部220に表示する歯牙画像Iが二次元変換画像Itの場合に、歯列弓画像表示部210で選択された歯牙Tを3D情報に基づいて作成した三次元歯牙画像Icに切り替えて表示することを受け付ける選択部である(図示省略)。
【0138】
Oral Camera選択部243は、対象歯牙画像表示部220に表示する歯牙画像I
として、可視光カメラ30や顕微鏡70により撮像された二次元撮像画像Ipを表示す
ることを受け付ける選択部である(図示省略)。
XY Section選択部244、XZ Section選択部245、YZ Section選択部246とはそれぞれ、歯牙T
の所定の位置における三次元歯牙画像IcのXY平面、XZ平面、YZ平面を表示することを受け付ける選択部である(図示省略)。
【0139】
ここで、XY平面とは咬合面に平行な面をいい、
図6で示すように、X軸方向とは患者M1の左右方向をいい、患者M1の左方向を+X方向とする。また、Y軸方向については患者M1の前後方向をいい、患者M1の後方向を+Y方向とし、Z軸方向は上下方向をいい、鉛直方向上向きを+Z方向とする。また、咬合面に平行とは、厳密に咬合面に対して平行な面のみならず、咬合面における垂線と、所定面における垂線とが±約30度で交差する範囲の方向までを含む概念であり、換言すると、咬合面に対して±30度以下の角度で交差する面ということができる。
【0140】
続いて、根管延伸方向表示操作画面300について
図6に基づいて説明する。根管延伸方向表示操作画面300は、上段の表示画面と下段の操作画面に分かれており、上段の表示画面は、上段左側の3D根管延伸方向表示部310、上段中央上側のXY平面根管延伸方向表示部320、上段中央下側のXZ平面根管延伸方向表示部330、上段右下側のYZ平面根管延伸方向表示部340、XZ平面根管延伸方向表示部330とYZ平面根管延伸方向表示部340の間にあるXY断面位置指定操作部331、及び上段右上側の歯列弓表示部350で構成され、下段の操作画面は、下段右側の根管延伸方向表示操作部360、下段左側のSimulation操作指定部370で構成し、さらに、上述の各種操作デバイス101におけるポインティングデバイスによって操作され、表示画面及び操作画面の双方に移動し、操作することができるカーソル270(マウスで操作する場合にマウスポインタまたは単にポインタと呼ばれることがある)で構成している。
【0141】
3D根管延伸方向表示部310は、選択歯牙画像表示操作画面200において指定した歯牙の三次元歯牙画像Icを表示するとともに、後述する根管延伸方向表示操作部360を操作することにより、3D根管延伸方向表示部310上において任意の点Pの指定操作の受け付け(図示省略)、任意の点Pと根管口Roを通り、根管に沿って歯冠の外部に延びる根管延伸方向を示す根管延伸方向画像Idを三次元歯牙画像Icと位置を合わせて重畳表示する表示部である。
【0142】
XY平面根管延伸方向表示部320は、根管治療用ハンドピース20に備える可視光カメラ30で撮影した二次元撮像画像Ip、及び上述の選択歯牙画像表示操作画面200において作成した三次元歯牙画像IcのXY平面を観察した画像、つまり、対象歯牙Tの三次元歯牙画像Icを咬合面方向から見た歯牙画像Iである二次元変換画像ItPを二次元撮像画像Ipと対応させて重畳表示する表示部である。さらに、3D情報に基づいて作成した前記根管延伸方向画像Idを、二次元撮像画像Ip及び二次元変換画像ItPに位置を対応させて重畳表示する表示部である。
【0143】
XY平面根管延伸方向表示部320において、根管延伸方向は根管に沿うとともに根管口を通る方向を示すため、根管延伸方向画像Idを二次元撮像画像Ip及び二次元変換画像ItPに対応して重畳表示することにより、施術者は施術するに際し、根管Rの湾曲方向を念頭に置いて施術することができる。また、XY平面根管延伸方向表示部320に表示する二次元変換画像ItPの表示位置は、前記XY断面位置指定操作部331の操作により位置を変更できるため、根管Rから根管口Roに至るまでにおいても、最短距離で、しかも無用な健全部位に対する歯牙切削を最小限として、切削工具26を施術する根管Rに導入することができる。
【0144】
なお、XY平面根管延伸方向表示部320は、二次元撮像画像Ipと二次元変換画像ItPを重畳表示する場合のほか、上述の選択歯牙画像表示操作画面200において作成した三次元歯牙画像IcのXY平面を観察した画像、つまり、対象歯牙Tの三次元歯牙画像Icを咬合面方向から見た歯牙画像Iである二次元変換画像ItPを表示することもでき(
図7)、また二次元撮像画像Ipを表示することもできる(図示省略)。
【0145】
さらに、XY平面根管延伸方向表示部320には、XZ平面根管延伸方向表示部330及びYZ平面根管延伸方向表示部340に表示する歯牙Tの断面画像の位置の設定操作を受け付ける断面位置調整スクロールバー321を備えている。
【0146】
詳しくは、断面位置調整スクロールバー321は、バー321b内においてアロー321aをカーソル270で操作することで、XZ平面根管延伸方向表示部330及びYZ平面根管延伸方向表示部340に表示する二次元変換断面画像ItSの断面位置を設定でき、その設定する位置の目安となる断面表示線322を表示している。
【0147】
そして、カーソル270の操作によって、断面表示線322を把持していわゆるドラッグアンドドロップの操作で所望の位置に移動させて断面位置を設定することができる。なお、バー321b、アロー321aを省略して、直接断面表示線322を把持して移動するようにしてもよい。
【0148】
このようにXY平面根管延伸方向表示部320は、断面位置調整スクロールバー321を備えることにより、後述するXZ平面根管延伸方向表示部330及びYZ平面根管延伸方向表示部340に所望の歯牙Tの二次元変換断面画像ItSを表示することができる。
【0149】
XZ平面根管延伸方向表示部330は、3D根管延伸方向表示部310に表示する三次元歯牙画像IcのXY平面根管延伸方向表示部320に表示する断面表示線322yにより切断した切断面を前歯方向から観察した切断面、つまり歯牙Tを断面表示線322yで切断した場合のXZ断面を+Y軸方向から観察した切断面である二次元変換断面画像ItS1を表示する表示部である。なお、XZ平面根管延伸方向表示部330は、−Y軸方向から観察した二次元変換断面画像ItS1を表示してもよい。
【0150】
YZ平面根管延伸方向表示部340は、3D根管延伸方向表示部310に表示する三次元歯牙画像IcをXY平面根管延伸方向表示部320に表示する断面表示線322xでの断面を右方向から観察した切断面、つまり歯牙Tを断面表示線322xの切断した場合のYZ断面を−X軸方向から観察した切断面である二次元変換断面画像ItS2を表示する表示部である。なお、YZ平面根管延伸方向表示部340は、+X軸方向から観察した二次元変換断面画像ItS2を表示してもよい。
【0151】
さらに、XZ平面根管延伸方向表示部330とYZ平面根管延伸方向表示部340は、3D根管延伸方向表示部310と同様に、後述する根管延伸方向表示操作部360を操作することにより、根管延伸方向を示す根管延伸方向画像Idをそれぞれの表示部に表示された二次元変換断面画像ItSに対応させて表示する表示部である(
図14参照)。
また、XZ平面根管延伸方向表示部330とYZ平面根管延伸方向表示部340の間にあるXY断面位置指定操作部331は、XY平面根管延伸方向表示部320に表示する二次元変換画像ItPの断面の位置を指定する指定操作部である。
【0152】
歯列弓表示部350は、上述の歯列弓画像表示部210に表示されている歯列弓を表示するとともに、関心対象である歯牙Tを明示する表示部である。
【0153】
根管延伸方向指定操作部360は、根管延伸方向を設定するために指定操作する指定操作部であって、Appoint Any Point指定部361、Appoint Direction指定部362、Auto指定部363及びSet処理部364を備えている。
【0154】
Appoint Any Point選択部361は、例えば、XZ平面根管延伸方向表示部330に表示する二次元変換断面画像ItS1上の任意の点Pの数や位置の設定をカーソル270のクリックなどによる指定を受け付ける指定部であり、根管任意点指定部12bとして機能する。
なお、任意の点Pの指定は、XZ平面根管延伸方向表示部330に表示された二次元変換断面画像ItS1のみならず、YZ平面根管延伸方向表示部340に表示された二次元変換断面画像ItS2上、又は、3D根管延伸方向表示部310に表示された三次元歯牙画像Ic上の任意の点Pを指定してもよい。
【0155】
Appoint Direction指定部362は、根管延伸方向指定部12cとして機能し、Appoint Any Point指定部361で指定した任意の1点を基準として、根管に沿った任意の方向を指定する指定部である。
【0156】
なお、根管延伸方向は、上述のように任意の2点の位置に基づいて定めてもよいし、任意の1点を基準に角度を定めてもよい。また、根管は一般に湾曲しているため、湾曲した根管形状に沿って複数点を設定してスプライン補間などの適切な補間法を使用して湾曲した根管延伸方向を算出してもよい(
図15参照)。
【0157】
Auto指定部363は、施術者による任意の点Pの指定を受け付けることなく、3D情報に基づいて自動で根管延伸方向を算出することを受け付ける指定部である。なお、このAuto指定部363が受け付けられると、施術中において、切削工具位置検出部16又は根管長測定装置40からの信号に基づいて、現時点での切削工具26の先端位置またはその数ミリ根尖に近い位置を自動的に切削工具26の施術の進展に対応して根管延伸方向画像を歯牙画像に対応して重畳表示することができる。このように、根管延伸方向画像とは、切削工具26の先端26aの位置と該先端26aから根尖方向に向けて数ミリ先に至る直線、又は曲線を表示しても良い。また、根管延伸方向画像Idとして根管Rの太さに対応する幅を持たせて表示しても良い。
【0158】
Set処理部364は、Appoint Any Point指定部361又はAppoint Direction指定部362で指定した任意の点Pの選択の決定を指定する処理部である。
なお、Set処理部364を、上述のAppoint any point指定部361、Appoint direction指定部362で任意の点P及び方向を指定し、これらの情報に基づいて根管Rに沿うとともに、根管口Roを通り歯冠の外部に延びる根管延伸方向を算出し、根管延伸方向を示す根管延伸方向画像Idを3D根管延伸方向表示部310、XY平面根管延伸方向表示部320、XZ平面根管延伸方向表示部330、YZ平面根管延伸方向表示部340に対応させて表示する表示処理部としてもよい。
【0159】
Simulation操作指定部370は、所望の切削工具26を用いて施術を行えるか否かを判定するとともに、判定結果を3D根管延伸方向表示部310などに表示することができ、Select Tool選択部371、Run Simulation指定操作部372、Display Result表示処理部373を備えている。
Select Tool選択部371は、所望の切削工具26を選択する選択部であり、切削工具指定部12dとして機能する。
【0160】
Run Simulation指定操作部372は、Select Tool選択部371で選択した切削工具26により、根管治療を安全かつ確実に行うことができるか否かのシミュレーションの実行を受け付ける指定操作部であり、後述するDisplay Result表示処理部373と併せて、侵入画像処理部11eとして機能する。
Display Result表示処理部373は、Run Simulation指定操作部372で受け付けられたシミュレーションの結果の表示を受け付ける表示処理部である。
【0161】
次に、施術の際に使用する施術操作画面400を、
図8とともに説明する。
なお、
図6や
図7に示した根管延伸方向表示操作画面300とで共通する画面についての説明は省略する。
【0162】
施術操作画面400は、
図5に示す選択歯牙画像表示操作画面200や
図6に示す根管延伸方向表示操作画面300と同様に、上段の表示画面と下段の操作画面に分かれており(
図8参照)、上段の表示画面は、
図6に示す根管延伸方向表示操作画面300の上段の表示画面と共通の構成である。すなわち、施術操作画面400は、根管延伸方向表示操作画面300の上段と同じように、上段左側に3D根管延伸方向表示部310、上段中央上側にXY平面根管延伸方向表示部320、上段中央下側にXZ平面根管延伸方向表示部330、上段右下側にYZ平面根管延伸方向表示部340、XZ平面根管延伸方向表示部330とYZ平面根管延伸方向表示部340の間にあるXY断面位置指定操作部331、及び上段右上側に歯列弓表示部350で構成している。
【0163】
なお、施術操作画面400を構成する3D根管延伸方向表示部310などは、上述の歯牙画像Iや根管延伸方向画像Idの重畳表示などの他、後述するSelect Tool指定操作部471により選択した切削工具26の施術工具画像Ihを歯牙画像Iなどに対応して重畳表示することができる。
【0164】
一方で、操作画面は、下段右側にコマンドツールボックス部460、下段左側にOperation処理部470により構成し、さらに、上述の各種操作デバイス101におけるポインティングデバイスによって操作され、表示画面及び操作画面の双方に移動し、操作することができるカーソル270(マウスで操作する場合にマウスポインタまたは単にポインタと呼ばれることがある)で構成している。
【0165】
コマンドチェックツールボックス部460は、Extra Screenチェックボックス461、Screen Changeチェックボックス462、Drive Controlチェックボックス463、及びWarning Informationチェックボックス464で構成している。
【0166】
Extra Screenチェックボックス461は、モニタ13に3D根管延伸方向表示部310を別画面表示する際にチェックするチェックボックスである。
Screen Changeチェックボックス462は、フートコントローラ14の踏込操作によって、3D根管延伸方向表示部310を、XY平面根管延伸方向表示部320、XZ平面根管延伸方向表示部330、YZ平面根管延伸方向表示部340に切り替えて表示する際にチェックするチェックボックスである。
【0167】
なお、Extra Screenチェックボックス461にチェックしている場合には、別画面に表示する3D根管延伸方向表示部310を、例えばXY平面根管延伸方向表示部320に切り替えて表示することができる。
【0168】
Drive Controlチェックボックス463は、例えば、根管治療用ハンドピース20に過負荷が作用した場合や、根管治療用ハンドピース20の切削工具26aの先端が根尖Rtに近接する際に、根管治療用ハンドピース20の駆動を制御する際にチェックするチェックボックスである。具体的には、切削工具26の駆動停止、逆転又は駆動力の低減等を行う。
【0169】
Warning Informationチェックボックス464は、例えば、画像装置処理部11に基づいて切削工具位置検出部16で根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26の切削工具先端26aが根管から外れる際に報知する際にチェックするチェックボックスである。なお、報知する場合は、根尖Rtに切削工具26の切削工具先端26aが近接した場合のほか、上述したシミュレーションにより算出した侵入方向や侵入位置から外れた場合に報知するなどでも良い。
【0170】
Operation処理部470は、Select Tool指定操作部471、Detect Position指定操作部472、Calibration指定操作部473、及びDisplay Tool処理部474で構成している。
【0171】
Select Tool指定操作部471は、切削工具指定部12dとして機能し、施術する際に施術者が使用する切削工具26の選択を受け付ける指定操作部である。
Detect Position指定操作部472は、根管治療用ハンドピース20の三次元位置の検出の開始を受け付ける指定操作部である。
【0172】
Calibration指定操作部473は、根管治療用ハンドピース20に装着する切削工具26の切削工具先端26aのキャリブレーションの開始を受け付ける指定動作部である。
Display Tool指定操作部474は、施術切削工具処理部11fとして機能し、根管治療用ハンドピース20を、例えば、3D根管延伸方向表示部310に重畳表示の開始を受け付ける指定操作部である。
【0173】
このように構成する診療システム1で、X線CT撮影装置60により取得した3D情報に基づいて、施術対象である歯牙Tの根管Rを診療する際の表示方法及び施術方法の全体像について、
図9に示すフローチャートに基づいて簡単に説明する。
【0174】
先ず、施術対象である歯牙Tの根管Rの位置を明確にするために、歯牙Tを指定し、X線CT撮影装置60により撮像した3D情報を基づいて、歯牙Tの歯牙画像Iをモニタ13に表示する(ステップs1)。
【0175】
次に、
図6に示すように、3D情報に基づいて歯牙Tの根管Rに沿うとともに、根管口Roを通り歯冠に向けて延びる方向を示す根管延伸方向を算出し、根管延伸方向に関する情報と切削工具26に関する情報、3D情報に基づき、根管延伸方向に沿って切削工具26を挿入し、切削を行うとした場合に、切削工具26の切削工具先端26aが根尖Rtに到達するか否かを判定する。この判定の結果、切削工具26の切削工具先端26aが根尖Rtに到達すると判定された場合に、根管延伸方向を示す根管延伸方向画像Idを歯牙画像Iと対応させて表示する(ステップs2)。
【0176】
続いて、
図8に示すように、歯牙Tの歯牙画像Iと歯牙画像Iに対応して表示した根管延伸方向画像Idとが表示されたモニタ13に、ステップs2で選択した施術具26の施術工具画像Ihを歯牙画像Iなどに対応して重畳表示し、モニタ13を見ながら歯牙Tの根管治療を行い(ステップs3)、根管治療が終了すると施術を終了する。
【0177】
次に、
図9のステップs1に該当する、施術対象である歯牙Tの歯牙画像Iの
図5に示す選択歯牙画像表示操作画面200への表示方法について、
図10に示すフローチャートに基づいて詳しく説明する。
なお、対象歯牙画像表示部220に表示する歯牙画像Iは二次元変換画像Itを表示してもよいし、三次元歯牙画像Icを表示してもよいが、本実施例では三次元歯牙画像Icの表示に基づいて説明する。
【0178】
まず、施術対象である歯牙Tの根管Rを診察するためには、施術者は、予め、X線CT撮影装置60で歯牙Tを中心に、内部の根管Rを含む3D情報を取得し、三次元情報記憶15aに記憶しておく。
【0179】
そして、施術対象である歯牙Tの根管Rを診察するために、モニタ13に歯牙画像操作画面100を表示し、Display部120に備えてあるChange Display選択部121を用いて、
図5に示すように、歯牙画像操作画面100の主要部分に選択歯牙画像表示操作画面200を表示する(ステップt1)。
その後、ファイル選択部110の、File Open指定処理部111からInformation部130に表示する患者M1に関する情報を読み出す(ステップt2)。
【0180】
次に、施術の対象である歯牙Tがある歯列弓を、顎指定部260を用いて選択し(ステップt3)、施術の対象である歯牙Tを含んだ歯列弓画像(
図5においては下顎の歯列弓画像Il)を歯列弓画像表示部210に表示する(ステップt4)。
【0181】
施術者は、歯列弓画像表示部210に表示された下顎の歯列弓画像Ilに対して、対象歯牙指定操作部12aとして機能するAppoint Tooth選択部231が操作するとともに、カーソル270で歯列弓画像Il上の関心対象である歯牙Tを選択指定すると(ステップt5)、処理装置制御部11は、記憶部15の三次元情報記憶部15aに記憶する3D情報の中から歯牙Tの3D情報を読出し、その対象歯牙Tを3D情報に基づいて三次元歯牙画像Icとして表示するか否かの選択を受け付ける画面(図示省略)を表示する(ステップt6)。
【0182】
施術者が、三次元歯牙画像Icの表示を選択した場合(ステップt6:Yes)、歯牙画像処理部11aの三次元歯牙画像処理部11aaにおいて、3D情報に基づき三次元歯牙画像Icを作成し、対象歯牙画像表示部220に三次元歯牙画像Icを表示する(ステップt7、ステップt9)。一方、図示省略するが、三次元歯牙画像Icの表示を選択しない場合は(ステップt6:No)、三次元記憶部15aに記憶する3D情報に基づいて、歯牙画像処理部11aの二次元象歯牙表示部11acで歯牙Tの二次元変換画像Itを対象歯牙画像表示部220に表示する(ステップt8、ステップt9)。
【0183】
また、ステップt6で3次元表示にするか否かを判断しているが、3D情報に基づいて三次元歯牙画像処理部11aaや二次元象歯牙表示部11acにより三次元歯牙画像Icまたは二次元変換画像Itを自動で表示し、後に画像表示処理部11afとして機能する対象歯牙画像表示パターン選択部240の2D選択部241や3D選択部242を指定操作することにより歯牙画像を変換する構成としてもよい。
【0184】
以上のステップt1〜t9により、三次元歯牙画像Icなどを対象歯牙画像表示部220に表示することができる。三次元歯牙画像Icは、X線CT撮影装置により取得し三次元情報記憶部15aに記憶する3D情報に基づいて作成しているため、根管Rや根管口Roについても表示することができ、関心対象である歯牙Tの根管に関する根管Rなどの情報を正確に認識することができる。
【0185】
なお、根管Rが明確に見えるように、三次元歯牙画像Icの外観、すなわち歯牙の歯冠やエナメル質や象牙質に当たる部分などを半透明となるようにPERMEABLITY選択部128で透過度を調整し、根管Rや根管口Roを明示できるように対象歯牙画像表示部220に表示することができ、さらに根管Rなどに色彩を付した色彩画像を三次元歯牙画像Icに対応させて対象歯牙画像表示部220に表示することもできる(図示省略)。
これにより、施術者は、根管Rの形状をより正確に把握することができる。
【0186】
次に、
図9に示したフローチャートのステップs2の表示処理において、根管延伸方向画像Idを対象歯牙Tの歯牙画像Iと対応させて表示する方法について、
図11及び
図12のフローチャートとともに詳しく説明する。
【0187】
まず、施術者が、Display部120の画像表示処理部11afとして機能するChange Display選択部121を指定操作することにより、
図6で示すように、歯牙画像操作画面100の主要部分に根管延伸方向表示操作画面300を表示し(ステップu1)、
図9のステップs1において対象歯牙画像表示部220上に表示した三次元歯牙画像Icを、3D根管延伸方向表示部310上に表示する(ステップu2)。
【0188】
続いて、歯牙TをX、Y、Z方向から観察した歯牙画像Iを作成し表示するため、三次元情報記憶部15aに保存された歯牙Tに関する3D情報を読出し、二次元変換画像処理部11acにより、歯牙Tを咬合面方向から観察した二次元変換画像ItPを作成し、XY平面根管延伸方向表示部320に表示するとともに(
図6参照)、Y軸方向から歯牙Tを表示する二次元変換断面画像ItS1と、X軸方向から見た歯牙Tを表示する二次元変換断面画像ItS2を作成し、
図6に示すように、それぞれXZ平面根管延伸方向表示部330及びYZ平面根管延伸方向表示部340に表示する(ステップu3)。
【0189】
なお、選択歯牙画像表示操作画面200で行う画像表示操作(
図9ステップs1)から連続して根管遠心方向表示(
図9ステップs2)を行う場合には、画像表示処理部11afとして機能するChange Display選択部121を操作し、歯牙画像操作画面100の主要部分に表示する画面を切り替えることにより、自動的に三次元歯牙画像Icを3D根管延伸方向表示部310に表示するが、例えば、歯牙画像の表示(
図9ステップs1)と根管遠心方向表示(
図9ステップs2)とを異なる日に行う場合や、時間の間隔が空く場合などには、ステップs2で作成された情報を、File Save部112を用いて三次元歯牙画像Icなど情報を記憶部15に記憶させ、ステップs2を行う際にFile Open部111を操作し、記憶部15に記憶された三次元歯牙画像Icなど情報を読み込むことによって三次元歯牙画像Icなどを3D根管延伸方向表示部310などに表示することができる。
【0190】
次に、予め根管治療用ハンドピース20に内蔵する可視光カメラ30や顕微鏡70等により撮像した二次元撮像画像Ipを記憶する二次元情報記憶部15bより、歯牙Tの二次元撮像画像Ipを読み込み、XY平面根管延伸方向表示部320に表示し、XY平面根管延伸方向表示部320に表示する二次元変換画像ItPと二次元撮像画像Ipとが対応するように調整し、二次元変換画像ItPと二次元撮像画像IpをXY平面根管延伸方向表示部320に重畳表示する(ステップu4)。
【0191】
具体的には、二次元変換画像ItPと二次元撮像画像Ipの位置が異なる場合はMOVE選択部122を操作することにより画像の移動を可能とし、画像をドラッグして位置調整を行い、またサイズや向きが異なる場合、表示変更指定操作部12hとして機能するDisplay部120に備えてあるROTATION選択部123、SCALE選択部124を選択し、二次元変換画像ItPのサイズや向きを二次元撮像画像Ipの歯牙Tに適合するように調整する。
【0192】
例えば、
図13(a)、(b)に示すように、二次元撮像画像Ipに対して、歯牙Tにおける最大径となる歯軸方向の位置の二次元変換画像ItPが大きく、向きが異なる場合、二次元撮像画像Ipの歯牙Tにおける最大径となる部分を指定するとともに(
図13(a)参照)、二次元変換画像ItPの歯牙Tにおける最大径となる部分を指定する(
図13(b)参照)。
【0193】
このとき、最大径部分を結ぶラインLp、Ltを比較すると、二次元撮像画像Ipの歯牙TのラインLpに対して、二次元変換画像ItPの歯牙TのラインLtは長く、反時計方向に向きが異なっている。そこで、二次元変換画像ItPの歯牙TのラインLtの角度が二次元撮像画像Ipの歯牙TのラインLpの角度に適合するように、二次元変換画像ItPを時計回りに回転するとともに、二次元変換画像ItPのラインLtの長さが二次元撮像画像IpのラインLpの長さに適合するように二次元変換画像ItPを縮小する。これにより、
図13(c)に示すように、二次元変換画像ItPの歯牙Tは、二次元撮像画像Ipの歯牙Tに対して、向きも大きさも適合し、歯列弓画像表示部210に重畳表示することができる。
【0194】
なお、二次元変換画像ItPの二次元撮像画像Ipに対するサイズ調整としては、画像解析によって、二次元撮像画像Ipにおける歯牙Tの面積と、二次元変換画像ItPの歯牙Tの面積とを算出し、面積が適合するように二次元変換画像ItPのサイズを調整してもよい。
【0195】
また、二次元撮像画像Ipは可視光カメラ30や顕微鏡70等を用いて、その場で撮像し、XY平面根管延伸方向表示部320に表示してもよい。この場合、二次元情報記憶部15bは必要なくなる。
さらに、可視光カメラ30や顕微鏡70等を用いて撮像する二次元撮像画像Ipは動画とし、動画である二次元撮像画像Ipに対し、二次元変換画像ItPを追随させて重畳表示してもよい。
【0196】
次に、XY平面根管延伸方向表示部320に表示されたXY平面に対する二次元変換画像ItPに基づき、XZ平面根管延伸方向表示部330及びYZ平面根管延伸方向表示部340に表示する二次元変換断面画像ItS1(XZ面)、ItS2(YZ面)の表示箇所の調整を行う。
【0197】
詳述すると、XY平面根管延伸方向表示部320に備えるXY平面のバー321b上のアロー321aを、カーソル270を用いてスライドさせ、二次元変換画像ItPの平面上にある断面表示線322を移動させることにより、XZ平面根管延伸方向表示部330及びYZ平面根管延伸方向表示部340に表示する二次元変換断面画像ItSの断面を指定することができる。
【0198】
これにより、所望の箇所、例えば
図6に示すように、施術の対象である根管口Roの断面を表示する二次元変換断面画像ItS1,ItS2をそれぞれXZ平面根管延伸方向表示部330及びYZ平面根管延伸方向表示部340に表示することができる。
【0199】
次に、根管に沿うとともに、根管口を通り、歯冠外部に延びる根管延伸方向をXZ平面根管延伸方向表示部330及びYZ平面根管延伸方向表示部340に表示された二次元変換断面画像ItSに基づいて算出する方法を、
図11、
図12のフローチャート及び
図14(a)を用いて説明する。
なお、
図14(a)は、根管延伸方向表示操作画面300の構成であるXZ平面根管延伸方向表示部330及びYZ平面根管延伸方向表示部340を抜き出し拡大表示した図である。
【0200】
まず、根管延伸方向の設定を行うにあたり(ステップu5)、施術者は、根管延伸方向を算出するための基準となる任意の点Pを指定するか否かを決定する必要がある(ステップu6)。
【0201】
ここで、任意の点Pを指定する場合は(ステップU6:Yes)、施術者は、
図6に示す、根管任意点指定部12bとして機能するAppoint Any Point指定部361を操作した後にSet処理部364を操作し、カーソル270を、例えば、XZ平面根管延伸方向表示部330などに表示された二次元変換断面画像ItS1上の所望の位置に移動させクリックすることで、例えば
図14(a)に示す任意点P1のように、任意の点Pを所望の位置に指定することができる(ステップu7)。
【0202】
任意の点Pを指定すると、他の任意の点Pを指定するか否かを選択するメッセージ画面(図示省略)がモニタ13上に表示され、施術者は他の任意の点Pを指定するか否かを判断する(ステップu8)。仮に、他の任意の点Pを指定する場合は(ステップu8:Yes)、施術者はステップu7に戻り、同様に、カーソル270を、例えばXZ平面根管延伸方向表示部330に表示された二次元変換断面画像ItS1上の他の所望の位置に移動させクリックすることで、
図14(a)に示すように、他の任意の点P2を指定することができる(ステップu7)。このようにして、他の任意の点Pを指定しなくなるまでステップu7とステップu8とを繰り返し、任意の点Pの指定を終了した場合、施術者は施術シミュレーションを行うか否かを判断する(ステップu9)。
【0203】
なお、施術者が、他の任意点Pの指定しない場合は(ステップu6:No)、Auto指定部363を選択操作することにより、任意の点Pを三次元情報記憶部15aに記憶する歯牙Tの3D情報に基づいて自動的に任意の点を指定し、根管延伸方向を算出するための基準となる任意点Pの指定を終了する。その後、施術者は施術シミュレーションを行うか否かを判断する(ステップu9)。
【0204】
指定した任意の点Pに基づいて、施術シミュレーションを行わない場合は(ステップu9:No)、Display Result表示処理部373を指定操作することにより、三次元情報記憶部15aに記憶されている3D情報を読み込み、3D情報及び任意の点Pに基づいて、根管Rに沿うとともに根管口Roを通り歯冠外部に延びる方向を示す根管延伸方向の根管延伸方向画像Idを作成し、歯牙画像Iに対応して根管延伸方向表示操作画面300の各表示部に重畳表示する(ステップu15)。
【0205】
なお、任意の点Pに基づいて、根管口Roを通り、根管Rに沿った根管延伸方向を算出するため、任意の点のうち少なくとも1点は根管R内の点を指定することが好ましいが、根管R以外の点、例えば、歯冠上を任意の点Pとして指定してもよい。
【0206】
また、本実施例では、他の任意の点Pの指定をするか否かの選択を受け付けるメッセージ画面を表示する形式を採用しているが、例えば、事前に指定する任意の点Pの数を指定する構成や、メッセージ画面の表示がなく、カーソル270で画面XZ平面根管延伸方向表示部330又はYZ平面根管延伸方向表示部340上の複数点をクリックし、任意の点Pの指定が終了した場合に、終了を受け付けることで複数の任意点を選択する構成としてもよい。
【0207】
本実施例において、根管延伸方向を算出する方法は、
図14(a)で示すように、根管R上の任意の2点をとる形式としているが、例えば、
図14(b)に示すように、任意の1点を指定し、その1点を基準として根管Rに沿った方向を設定することもできる。
【0208】
詳述すると、根管任意点指定部12bとして機能するAppoint Any Point指定部361を指定操作し、その後にSet処理部364を操作し、上述のように、カーソル270を用いて
図14(b)に示すように根管R上の任意の1点をクリックすることで任意の点Pを指定する。その後に、根管延伸方向指定部12cとして機能するAppoint Direction指定部362を指定操作し、Set処理部364を操作することにより、
図14(b)で示すように、任意の点Pを基準とした直線画像Ifを直線画像処理部11cで作成し、二次元変換歯牙画像と対応させてXZ平面根管延伸方向表示部330等に表示する。この直線画像Ifをカーソル270により操作することで、根管Rに沿った所望の方向を決めることができる。
【0209】
この方法により、任意の点P、例えば、施術者は、根管口Roの中央を任意の点Pとし、任意の点Pを基準として根管Rの沿った方向を根管延伸方向と設定することができる。したがって、施術者は根管延伸方向を所望な方向に設定することができる。
【0210】
また、一般に根管は湾曲しているが、根管任意点指定部12bとして機能するAppoint Any Point指定部361を操作し、Set処理部364を操作することにより、複数の任意の点Pを湾曲した根管に沿って設定することができるため、曲折などのある複雑な形状の根管Rであっても、複数の任意点Pを指定し、スプライン補間などの適切な補間法を使用して、根管Rに沿った根管延伸方向を定めることができる(
図15参照)。
【0211】
次に、施術シミュレーションについて説明する(ステップu9:Yes)。
ステップu6からステップu8において任意の点Pを指定した後に、切削工具指定部12dとして機能するSelect Tool選択部371を操作することにより、切削工具リストをモニタ13上に表示し、施術者は、切削工具リストの中から施術に用いる予定の切削工具26を選択する(ステップu10)。
切削工具の選択が受け付けられると(ステップu10)、切削工具情報記憶部15cに記憶されている切削工具26に関する情報が読み出される(ステップu11)。
【0212】
なお、本実施例において、切削工具記憶部15cに保存されている既存の切削工具に関する情報を想定しているが、新たにダウンロードした切削工具に関する情報や新規に作成した切削工具に関する情報とすることもできる。
【0213】
次に、施術者は、Run Simulation指定操作部372を操作することで、侵入画像処理部11eにより、三次元情報記憶部15aに記憶する3D情報、根管長測定情報記憶部15dに記憶する根管切削工具26の径や湾曲変形性に関する情報、及び任意の点Pに基づき、切削工具26の切削工具先端26aが根管Rに沿って根尖Rtに到達できるか否かのシミュレーションを行う(ステップu12)。
【0214】
施術シミュレーションの結果、侵入画像処理部11eにより切削工具26の切削工具先端26aが施術対象である歯牙Tの根管Rに沿って根尖Rtに到達可能であると判定した場合は(ステップu12:Yes)、根管延伸方向処理部11bにより、根管延伸方向画像Idを歯牙画像Iに対応させて3D根管延伸方向表示部310などに表示する(ステップu13)。
【0215】
さらに、施術者が、侵入画像処理部11eによる施術シミュレーションの結果をモニタ13に表示することを望む場合(ステップu14:Yes)、施術者はDisplay Result表示処理部373を指定操作することで、切削工具画像処理部11dにより、根管延伸方向画像Idに沿った切削工具画像Isを歯牙画像Iに対応させてXZ平面根管延伸方向表示部330などの各表示部に重畳表示するとともに、侵入画像処理部11eにより、切削工具26が施術対象である歯牙Tの根管Rに沿って根尖Rtに到達した切削工具26の
侵入経路画像Ieを歯牙画像Iに対応させてXZ平面根管延伸方向表示部330などの各表示部に表示し、施術シミュレーションを終了する。
なお、施術シミュレーションを行わなかった場合(ステップu9:No)及び施術者が施術シミュレーションの結果の表示を望まない場合は(ステップu14:No)、施術シミュレーションを終了する。
【0216】
一方、侵入画像処理部11eにより、切削工具26が根管Rに沿って根尖Rtに到達できないと判定された場合(ステップu12:No)、そのシミュレーション結果を表示するか否かを受け付けるメッセージ画面を表示し(ステップu16)、シミュレーション結果を表示する場合は(ステップu16:Yes)、侵入画像処理部11eにより、その結果を表示する(ステップu17)。
【0217】
なお、この結果の表示は、切削可能な位置まで切削した切削工具26の画像を表示する
侵入経路画像Ieを、歯牙画像Iに対応させて表示するとしているが、施術可能でない理由、例えば切削工具26の径の大きさや湾曲変形性に問題があるなどといった表示としてもよい。
【0218】
施術できない旨のシミュレーション結果を表示した場合(ステップu17)、又はシミュレーション結果を表示しない場合(ステップu16:No)、施術者は切削工具26が適切か否かを判断し(ステップu18)、切削工具26が適切でないと判断した場合は(ステップu18:No)、ステップu10に戻り、異なる切削工具26を選択し再度シミュレーションを行う(ステップu10以下)。
【0219】
一方で、切削工具26が適切な場合は(ステップu18:Yes)は、ステップu5に戻り、任意の点Pの指定(ステップu5〜ステップ8)及び施術のシミュレーション(ステップ9以下)を行う。
【0220】
以上の方法により、X線CT撮影装置60で撮影した歯牙Tの3D情報に基づいて、歯牙Tの内部にある根管Rに沿うとともに、根管の端部である根管口Roを通り、歯冠外部に延びる方向を示す根管延伸方向画像Idを作成し、前記根管延伸方向画像Idを対象歯牙Tの歯牙画像Iに正確に位置を対応させて根管延伸方向表示操作画面300に重畳表示することができる(
図6参照)。
【0221】
これにより、施術者は、施術をする前に、対象歯牙Tの歯冠外部から対象歯牙Tの内部にある根管口Roを通り、根管Rに沿う根管延伸方向を示す根管延伸方向画像Idを歯牙画像Iに位置を対応させて明示することができ、根管口Roを通り、かつ根管Rに沿う切削工具26の侵入方向が明確になる。したがって、切削工具26を関心対象である歯牙Tの根管Rに沿うように正しく導くことができる。
【0222】
また、例えば、根管Rの曲りがきつかったり、極端に細くなったりして、前記切削工具先端26aが根管Rに沿って、所定の位置や根尖Rtに到達できないと予想される場合は、到達できなかった旨の結果をモニタ13に表示するため、施術者は、施術前に指定した切削工具26により根管Rを治療することができないことを判断することができる。
【0223】
続いて、施術操作画面400のXY平面根管延伸方向表示部320に表示する二次元撮像画像Ip及び二次元変換画像ItPに対して根管治療用ハンドピース20の施術工具画像Ihを重畳表示しながら(
図8参照)、施術対象である歯牙Tの根管Rを診療する際の施術方法について、
図17に示すフローチャートに基づいて詳しく説明する。
【0224】
なお、切削工具画像Isを歯牙画像Iに対応させて表示する際に、切削工具画像Isとして切削工具26の画像(図示省略)のみを表示してもよいし、切削工具26と根管治療用ハンドピース20の可視光カメラ30で撮像した二次元撮像画像Ipを表示してもよいし(
図8参照)、根管治療用ハンドピース20の全体像(図示省略)を表示してもよい。
【0225】
まず、Display部120の表示方法設定部12gとして機能する、Change Display選択部121を操作することにより、歯牙画像操作画面100の主要部分に施術操作画面400を表示し、ステップs2において表示した根管延伸方向画像Id及び歯牙画像Iを対応させて、施術操作画面400の各表示部に重畳表示する(
図17ステップv1)。
【0226】
なお、
図9ステップs3の施術操作を、
図9ステップs2の画像表示操作から連続して行う場合には、画面を切り替えることにより、自動的に歯牙画像I及び根管延伸方向画像Idを施術操作画面400の各表示部に重畳表示することができる。また仮に、
図9ステップs2の根管延伸方向の表示とステップs3の施術とを異なる日に行う場合や施術までに時間の間隔が空く場合には、File Save部112を操作することにより、根管延伸方向表示操作画面300で表示した歯牙画像Iに関する情報、根管延伸方向に関する情報、施術シミュレーションに関する情報などを、記憶部15に記憶させ、施術(ステップs3)を行う際にFile Open部111を差往査することにより、記憶部15から記憶させた情報を読み込むことによって歯牙画像を表示することができる。
【0227】
次に、Operation処理部470のSelect Tool部471を操作することにより、施術の際に使用する予定の切削工具26の選択指定を受け付け(ステップv2)、その切削工具26が
図9ステップs2で行った施術シミュレーションで施術が可能と判断された切削工具26と適合しているかを判定する(ステップv3)。
【0228】
なお、本実施例では、施術者が切削工具26の選択指定を行っているが、切削工具にRFIDなどの識別部を付けて根管治療用ハンドピース20でRFIDを読取り、切削工具26を選択指定する形式としてもよい。
【0229】
判定の結果、切削工具が適合しないと判定された場合は(ステップv3:No)、ステップv2に戻り、切削工具26の選択を受け付ける。一方で、切削工具26が適合すると判定された場合は、切削工具の位置のキャリブレーションを行い(ステップv4)、切削工具の施術工具画像Ihを、例えばXY平面根管延伸方向表示部320などに表示された二次元撮像画像Ipなどの歯牙画像Iに重畳表示する(ステップv5)。その後、施術者は、XY平面根管延伸方向表示部320を見ながら歯牙Tの根管治療を行うことができ、治療の間は切削工具26の位置の検出を繰り返し行われる(ステップv6〜v8)。
【0230】
詳述すると、切削工具26が、シミュレーションに基づき施術可能であると判定された切削工具26と適合すると判定する場合(ステップv3:Yes)、施術者は、Operation処理部470に備えてあるdetect position部472及びcalibration部473を用いて切削工具26の切削工具先端26aの検出とキャリブレーションを行い(ステップv4)、キャリブレーションによる位置情報に基づいて、施術に用いる切削工具の施術工具画像IhをXY平面根管延伸方向表示部320に表示された二次元撮像画像Ip及びItPなどの歯牙画像Iと対応させて重畳表示する(ステップv5)。これにより、施術者は、例えばXY平面根管延伸方向表示部320に表示された二次元撮像画像Ip及び施術工具画像Ihを見ながら歯牙Tの根管治療を行うことができる。
【0231】
具体的には、施術者の選択した切削工具26が、シミュレーションにおいて施術が可能と判定された施術具26と適合すると判定した後、施術者により、Detect Position部472を操作すると、切削工具位置検出部16により、根管治療用ハンドピース20の三次元位置を検出する。続いて、Calibration部473を操作することにより、切削工具26の切削工具先端26aと歯牙Tの相対位置を切削工具位置検出部16及び根管長測定装置40からの出力を用いて検出し(ステップv4)、施術切削工具処理部11fより、根管延伸方向画像Idを対応させて重畳表示する歯牙画像Iに施術工具画像Ihを対応させて、XY平面根管延伸方向表示部320などに重畳表示する(ステップv5)。
【0232】
ここで、根管治療用ハンドピース20の位置検出方法は、切削工具位置検出部16として、GPSを用いたハンドピースの絶対位置の検出としてもよく、また、根管治療用ハンドピース20に赤外線検出器で検出可能な三次元位置測定マーカを用いた三次元位置測定方法や、根管治療用ハンドピース20に設けた磁気センサを三次元磁気検出器で測定する方法、赤外線を用いて三次元位置を測定する方法により検出することができる。このような周知の非接触型の三次元位置測定法である光学的又は磁気的な位置検出方法を用いることで、根管治療用ハンドピース20と施術中の歯牙Tとの相対的な位置関係が検出できるので、前述のように表示部13で表示される歯牙画像Ip、Ic又はIt、や根管延伸方向画像Id、切削工具画像Isを対応させて重畳表示できる。
【0233】
また、根管治療用ハンドピース20のキャリブレーションの例について説明すると、例えば、根管治療用ハンドピース20に先端部分に装着する切削工具26の切削工具先端26aについての位置検出部、及び根管治療用ハンドピース20の傾きを検出するジャイロを備えている場合、切削工具位置検出部16により検出された切削工具26の切削工具先端26aを、XY平面根管延伸方向表示部320の画面上の表示された任意の2点に対応する歯牙上の2点と接触させることにより、根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26の切削工具先端26aと歯牙Tとの相対位置を検出することができ、続いてジャイロを用いることで、根管治療用ハンドピース20の傾きを検出することができる。
【0234】
これにより、歯牙Tに対する切削工具26の切削工具先端26aの相対位置をキャリブレーションすることができ、モニタ13に表示された歯牙画像Iと施術工具画像Ihの位置関係と、実治療における歯牙Tと切削工具26の切削工具先端26aの位置関係を対応させることができる。したがって、歯牙画像Iに対応して施術工具画像Ihをモニタ13に重畳表示することができる。
【0235】
なお、上述の相対位置の調整は、任意の2点以上を選択することによる三次元位置計測、ジャイロと三次元位置計測の組み合わせ、あるいは、2点以上の二次元位置計測とジャイロの組み合わせによる検出としてもよく、また、直接的な位置の検出のみならず、検出部による位置の検出結果に基づいて算出した位置検出としてもよい。
【0236】
また、キャリブレーションとしては、例えば切削工具位置検出部16の検出出力に基づいて、切削工具26の切削工具先端26aの位置をキャリブレーションするのみならず、根管長測定装置40からの出力に基づいて切削工具26の切削工具先端26aの位置をキャリブレーションしてもよいし、これらを択一的に切り替えても良い。さらには、これらの両方の出力の組み合わせを使用してキャリブレーションしても良い。
【0237】
これにより、根管口までの施術では、前記切削工具位置検出部16の検出出力を基にして、また、根管口から根尖に近づくと根管長測定装置40からの出力に基づくようにすることができる。一般に、臼歯等の根管は湾曲しているため、
切削工具26が直線状の状態で位置のキャリブレーションを行っても、切削工具26の切削工具先端26aの位置とは限らない。そのため、切削工具先端26aが根尖に近づいた場合、根管長測定装置40からの測定信号に基づき位置のキャリブレーションを行うことにより、より正確な切削工具先端26aの位置を検出することができる。また、咬合面方向からの根管口Roの表示においては、切削工具位置検出部16からの出力に応じて前記表示部13で表示される歯牙画像Ip、Ic又はIt、や根管延伸方向画像Id、切削工具画像Isを追随させて対応させて重畳表示しても良い。
【0238】
上述の方法により、XY平面根管延伸方向表示部320にキャリブレーションされた切削工具26の施術工具画像Ihが二次元撮像画像Ip及び二次元変換画像ItPに対応して重畳表示されるため、施術者はXY平面根管延伸方向表示部320を見ながら歯牙Tの施術を行うことができる。施術が終了していない場合は(ステップv7:No)、切削工具26の変更をするか否かを検討し(ステップv8)、切削工具26の変更を行う場合は、シミュレーションの切削工具26の選択(ステップu8)において、施術者が使用する予定の切削工具26を用いて施術できるかのシミュレーションを行い、施術可能ならば根管延伸方向を3D根管延伸方向表示部310に表示し、その切削工具26を用いて施術を再開する(ステップv1〜v7)。
【0239】
切削工具26の変更がない場合(ステップv8:No)は、施術が完了するまで、根管治療用ハンドピース20の位置の検出と施術を繰り返し、(ステップv6)、施術が終了したと判断した場合は(ステップv7:Yes)、施術を終了する。
【0240】
以上の方法により、根管延伸方向画像Idを対応させて重畳表示した二次元撮像画像Ip及び二次元変換画像ItPに、根管治療用ハンドピース20の施術工具画像Ihを対応して重畳表示することができる。これにより、例えば、施術工具画像Ihや二次元撮像画像Ipなどが重畳表示されたXY平面根管延伸方向表示部320を見ながら根管Rの治療を行うことができる。
【0241】
また、歯冠部から根管口Roまでの施術においては、根管延伸方向画像Idは、根管形状に沿うとともに、根管Rの端部である根管口Roを通り歯冠外部に延びる根管延伸方向を表示する画像であるため、
図6や
図7に示すように歯冠上方まで直線状に表示することにより、切削工具26を導入する案内の役割を持たせることができる。したがって、施術者は、例えば、XY平面根管延伸方向表示部320を見ながら、施術工具画像Ihが根管延伸方向画像Idに沿うように根管治療用ハンドピース20を操作することにより、切削工具26の切削工具先端26aが根管口Roに到達することができ、天蓋部分の切削を最小限にするとともに、根管Rの治療を行うことができる。
【0242】
さらに、XZ平面根管延伸方向表示部330などにも根管延伸方向画像Id及び施術工具画像Ihが重畳して表示されているため、咬合面方向以外の方向、例えばXZ平面根管延伸方向表示部330に表示されている歯牙TのXZ断面から根管延伸方向と根管R方向を確認できるため、天蓋部分の切削を最小限にするとともに、安全かつ慎重に施術を行うことができる。
【0243】
また、切削工具26の切削工具先端26aの位置が根尖に近づいてきた場合には、根管治療用ハンドピース20の切削工具位置検出部16により検出する位置情報に基づいて表示する施術工具画像Ihを、根管長測定装置40の測定結果に基づいて切削工具先端26aの位置を表示する施術工具画像Ihに切り替えて、
図8で示す各歯牙画像Iに重畳表示してもよいし、根管治療用ハンドピース20の切削工具位置検出部16により検出する位置情報と根管長測定装置40の測定結果に基づいて切削工具先端26aの位置情報とを組み合わせることにより、切削工具先端26aの位置を定め、歯牙画像Iと対応させて施術工具画像Ihを重畳表示してもよい。なお、この切削工具位置検出部16としては、前述した周知の非接触型の三次元位置測定法による検出が使用できる。また、非接触型の三次元位置測定法に代えて、根管長測定装置40を使用しても良いし、根管口から根尖に近づいた位置で周知の非接触型の三次元位置測定法による検出から、根管長測定装置40に切り替えることも出来るし、根管の形状によっては、これらを併用してもよい。この位置情報の切り替えを行う位置は、図示しない切り替え設定部を設けることによりそれぞれの根管Rの湾曲度合いに応じて最適な位置で切り替えられるように構成してもよい。また、この位置情報は、切削する部位や根管の形状に応じて周知の非接触型の三次元位置測定法だけを切削工具位置検出部16として使用することも出来るし、また、根管長測定装置40のみを使用することも出来る。
【0244】
また、施術の際に、切削工具位置検出部16及び根管長測定装置40からの信号に基づいて、現時点での切削工具26の切削工具先端26aの位置又はその数ミリ根尖に近い位置を自動的に切削工具26の施術の進展に対応して根管延伸方向画像Idを歯牙画像Iに重畳表示してもよく、これによりリアルタイムでの切削工具26の切削工具先端26aの数ミリ先の根管湾曲形状を表示することができる。また、今までの切削工具先端26aの位置の軌跡の表示やシミュレーション結果を表示してもよい。
【0245】
さらには、Drive Controlチェックボックス463やWarning informationチェックボックス464にチェックを入れておくことで安全かつ慎重に施術することができる。
【0246】
具体的には、切削工具位置検出部16又は根管長測定装置40により、切削工具26の切削工具先端26aの位置を検出し、その切削工具先端26aが根管延伸方向を基準とした一定の範囲から外れたり、根尖に対して予め設定した所定距離になった場合に、施術切削工具制御部11gにより根管治療用ハンドピース20の駆動を制限したり、報知部25に備える位置検出報知部251によりブザーなどの音声や照明で報知したりし、施術者は安全かつ丁寧に施術することができる。
【0247】
また、切削工具位置検出部16により、切削工具26が根管延伸方向を中心とした一定の角度範囲から外れた場合も、同様に、施術切削工具制御部11gにより根管治療用ハンドピース20の駆動を制限したり、報知部25に備える方向検出報知部252によりブザーなどの音声や照明で報知したりして、施術者は安全かつ丁寧に施術することができる。
【0248】
さらに、根尖Rtに対する装着した切削工具26の切削工具先端26aの位置を測定する根管長測定装置40を備えている根管治療用ハンドピース20を用いる場合は、根管長測定装置40により切削工具26の切削工具先端26aと根尖Rtまでの位置を測定できるため、根管長測定装置40により切削工具26の切削工具先端26aが根尖Rtに近づいてきていることを認識して慎重かつ確実丁寧に施術することができる。
この場合、根管長測定情報記憶部15dは不要となる。
【0249】
また、本実施例のように、根管治療用ハンドピースに内蔵されている場合には、術者がハンドピースを持ち替える必要が無いのでスムーズに治療を進められるが、二次元撮像画像Ipを撮像する可視光カメラ30は、単独のインスツルメントとして診療システム1に配置されていても良い。また、可視光カメラ30の代わりに、
図19に示すように、顕微鏡付き歯科診療台150に備える顕微鏡70を使用してもよく、この場合、診療システム1は、処理装置制御部11の可視光画像処理部11abと、記憶装置15の二次元情報記憶部15bが不要となる。
【0250】
顕微鏡70を用いた場合、接眼レンズ70Aaから覗きこんで見える画面に、上述するように、顕微鏡本体70Aで視準した二次元撮像画像Ipの歯牙Tに対応させて、3D情報に基づいて作成した二次元変換画像ItPを重畳表示するとともに、根管延伸方向画像Id及び施術工具画像Ihを二次元撮像画像Ipに対応させて表示する。
【0251】
これにより、施術者は根管延伸方向画像Idなどが表示された接眼レンズ70Aaを覗きこんで見える画面を用いて施術することができるため、施術者は根管口Roの位置などが表示された歯牙画像Iと患者の口腔内とを見比べながら施術することなく、安全かつ正確に施術することができる。
【0252】
次に、上述の施術対象である歯牙Tの根管Rを診療する際の表示方法及び施術方法おいて、根管延伸方向画像Idを含む平面を用いた根管Rの形状を表示する表示方法について、
図18とともに説明する。
【0253】
まず、断面画像処理部11agにより、図
9ステップs2において表示する直線状の根管延伸方向画像Id含む平面であって、根管延伸方向画像Idを中心軸Xrとして回転可能な根管断面画像ItCを作成し、例えば3D根管延伸方向表示部310に表示する。
【0254】
直線状の根管延伸方向画像Idは根管口Roを通り根管Rに沿っているため、根管断面画像ItCは根管Rの断面を表示する断面図となる。(
図18参照)。
図18(a)に示すように、一般的に根管Rは曲折しているため、根管延伸方向画像Idを含む根管断面画像ItC1は、表示する断面図によっては根管Rの根尖Rt付近を表示することができず(
図18(b)参照)、根管Rの形状、特に根尖Rt部分の形状を正確に把握することができない。しかし、根管断面画像ItCは、直線状の根管延伸方向画像Idを中心軸Xrとして回転可能であるため(
図18(a)参照)、根管Rの曲折を観察することが可能な面を表示する根管断面画像ItCを回転することにより、根尖Rt部分の形状を表示した根管断面画像ItC2を表示する(
図18(c)参照)ことができる。
【0255】
これにより、根管Rが曲折や枝分かれしている場合であっても、根管延伸方向画像Idを含む根管断面画像ItCを、根管延伸方向を中心軸Xrとして回転可能とすることにより、根管Rの形状を正確に把握することができる。
【0256】
なお、ステップs2(
図9参照)において算出した根管延伸方向は直線状とは限らず、曲線状の場合も含まれている。この曲線状根管延伸方向の場合、曲線状の根管延伸方向に基づいて、根管口Roを通るとともに、根管Rから歯冠外部に向けて直線状に延びる根管延伸方向を算出し、この根管延伸方向を示す根管延伸方向画像Idsを含む平面を根管断面画像ItCとして表示してもよい(図示省略)。
【0257】
このように、表示装置として機能する診療システム1は、X線CT撮影装置60で撮影した歯牙の根管Rに関する情報を含む3D情報を記憶する三次元情報記憶部15aと、関心対象である歯牙を指定する対象歯牙指定操作部12aと、歯牙に関する歯牙画像Iを作成する歯牙画像処理部11aと、歯牙画像Iを表示するモニタ13と、3D情報に基づいて、歯牙の根管Rに沿う根管延伸方向を示す根管延伸方向画像Idを作成し、根管延伸方向画像Idを歯牙画像Iに対応させてモニタ13に重畳表示する根管延伸方向処理部11bとを備えた歯牙画像操作画面100に表示するため、根管治療において、根管の方向を示し、所望の根管Rに切削工具26を導くことで、歯牙Tにおける健全部位の切削を最小限に留めることができる。
【0258】
詳述すると、X線CT撮影装置60で撮影した歯牙の3D情報に基づいて、歯牙の内部にある根管Rに沿うとともに、根管口Roを通り、歯冠外部に延びる方向や切削工具26を根尖Rtに向けて進めるべき方向を示す根管延伸方向画像Idを作成し、根管延伸方向画像Idを対象歯牙の歯牙画像Iとを正確に対応させてモニタ13にと重畳表示することにより、歯牙Tの歯冠外部から歯牙Tの内部にある根管口Ro及び根管Rに沿って根尖Rtに向かう方向を明示することができる。したがって、前記根管口を通り、かつ根管Rに沿って根尖Rtに向かうような切削工具の侵入方向が明確になる。これにより、歯冠外部において根管口Roの方向を示す根管延伸方向画像Idは、根管口Roに向けて切削工具26を誘導する際の案内となり、また、切削中の切削工具26の先から根尖Rt方向に向けての根管Rが延びる方向を示す根管延伸方向画像Idは、切削工具26を根尖Rtに向けて誘導する際の案内となる。したがって、根管Rに対する切削工具26の侵入方向が明確になり、切削工具26を関心対象である歯牙Tの根管Rに沿うように正しく導くことができる。
【0259】
また、歯牙画像処理部11aを、三次元情報記憶部15aに記憶された3D情報に基づいて、対象歯牙指定操作部12aで指定した歯牙画像Iを作成する構成とすることにより、X線CT撮影装置60で撮影した歯牙の3D情報に基づいて、根管口Roおよび根管Rを表示した歯牙画像Iと根管延伸方向画像Idとを対応させてモニタ13に重畳表示することができ、切削工具26を正確に歯牙の根管Rに導くことができ、根管R治療において、歯質の健全部位の切削を最小限に留めると共に、所望の根管Rに切削工具26を導くことができる。
【0260】
また、根管Rにおける任意の点Pの指定を受け付ける根管任意点指定部12bを備え、根管延伸方向処理部11bを、根管任意点指定部12bにより指定した任意の点Pに基づき根管延伸方向画像Idを作成する構成とすることにより、曲折や枝分かれをしている等の複雑な形状の根管Rであっても、根管Rの形状に沿って任意の点Pを指定することにより、根管Rに沿った根管延伸方向を適切に設定し、表示することができる。
【0261】
また、根管任意点指定部12bを、所定の間隔を有する複数の任意の点Pを受け付ける構成とすることにより、指定した複数の任意点を通るように延伸方向を定めるため、設定する管延伸方向の自由度を高めることができる。
【0262】
また、根管任意点指定部12bで指定する任意の点Pの一部を、少なくとも歯冠上の切削工具26の侵入口又は歯牙の根管口Roとすることにより、例えば、根管Rの根管口Roが複数ある場合であっても、関心対象である根管口Roを正確に指定することできる。
【0263】
また、歯牙画像処理部11aを、直線状の根管延伸方向を回転軸Xrに設定し、歯牙画像Iとして、回転軸Xrを通る歯牙の断面を示す歯牙断面画像ItCを作成するとともに、回転軸Xrを中心として回転可能に、モニタ13に歯牙断面画像ItCを表示する構成とすることにより、関心対象である歯牙Tの根管Rをあらゆる角度の断面図で表示することができ、複雑な形状である根管Rであっても、その形状を視覚的に容易に認識することができる。
詳述すると、根管延伸方向は歯冠の外部から根管口Roを通り根管Rに沿った方向に延びているため、根管延伸方向を含む面は、根管口Roから根管Rに沿った根管Rの断面を表示することができ、根管Rの形状を正確に表示できる。
【0264】
さらに、根管延伸方向を回転軸Xrとして根管断面
図ItCを回転表示できる構成とすることにより、三次元方向において曲折や分枝などしている複雑な形状の根管Rであっても、根管延伸方向を回転軸Xrとした根管延伸方向に沿った根管Rの断面を回転することにより、例えば、曲折した根管Rの曲折方向を含む断面を表示することができ、その根管Rの形状を正確に把握することができる。なお、根管延伸方向画像は、直線や曲線に留まらず、根管の太さに対応した幅を持たせても良い。
【0265】
また、関心対象である歯牙Tを咬合面方向から撮像した可視光の二次元撮像画像Ipを撮像する可視光カメラ30とを備え、歯牙画像処理部11aを、歯牙画像Iとして、3D情報に基づいて所定面に対して二次元化表示した二次元変換画Itを作成し、可視光カメラ30により、関心対象である歯牙Tを咬合面方向から撮像した二次元撮像画像Ipに二次元変換画Itを対応させてモニタ13に表示する構成とすることにより、可視光による二次元撮像画像Ipに対して内部の根管Rの形状及び根管Rに沿うとともに根管口Roを通る方向を明示することできる。
【0266】
詳しくは、関心対象である歯牙Tを咬合面方向から撮像した可視光の二次元撮像画像Ipと、歯牙Tの内部の根管Rに関する情報も含む歯牙Tについて取得した3D情報を所定面に対して二次元化表示した二次元変換画像ItPとを対応させてモニタ13に表示し、さらに3D情報に基づいて作成した前記根管延伸方向画像Idも正確に対応させてモニタ13に重畳表示することができる。
【0267】
そのため、3D情報を所定面に対して二次元化表示した二次元変換画像ItPには、歯牙表面を撮像した可視光による二次元撮像画像Ipに歯牙内部にある根管口Roの位置や大きさなどを表示でき、歯牙表面を撮像した二次元撮像画像Ipを用いながら、内部の根管口Roの位置や大きさ、さらには根管Rに沿うとともに根管口Roを通る方向、つまりは切削工具26を侵入させる方向を把握することができる。
【0268】
また、根管延伸方向処理部11bを、根管延伸方向画像Idとして、根管延伸方向画像Idを所定面に対して二次元化表示した根管延伸方向変換画像Idtを作成し、根管延伸方向変換画像を歯牙画像Iに対応させてモニタ13に重畳表示する構成とすることにより、歯牙表面を撮像した可視光による二次元撮像画像Ipに根管Rの位置や大きさだけでなく、歯牙内部の根管R沿った方向である根管延伸方向を明示することができ、正確に施術することができる。
【0269】
また、関心対象である歯牙Tを咬合面方向から撮像する可視光カメラ30を備え、歯牙画像処理部11aを、可視光カメラ30により、歯牙Tを咬合面方向から撮像した二次元撮像画像Ipを歯牙画像Iとして作成する構成とすることにより、根管治療用ハンドピース20に内蔵又は装着した可視光カメラ30を含めた可視光カメラ30や顕微鏡70などで撮像した二次元撮像画像Ipと根管口Roの方向を示す根管延伸方向画像Idとを重畳表示することができる。これにより、施術者は関心対象である歯牙Tの根管口Roの方向を、実治療で視認する状況を二次元撮像画像に基づいて認識できるため、安全かつ正確に施術することができる
【0270】
また、歯牙Tに対して施術する切削工具26に関する切削工具情報を記憶する切削工具情報記憶部15cと、モニタ13に表示する切削工具26の指定を受け付ける切削工具指定部12dと、切削工具指定部12dによって指定を受けた切削工具情報に基づいて切削工具画像Isを作成するとともに、切削工具画像Isを歯牙画像Iに対応させてモニタ13に重畳表示する切削工具画像処理部11dとを備えることにより、切削工具26をモニタ13に表示することができる。また、例えば、切削工具26を表示する際に、根管延伸方向に沿って表示することにより視覚的に切削工具26の侵入方向を容易に把握できる。
【0271】
また、切削工具情報と、根管延伸方向とに基づき、根管Rに沿った切削工具26の侵入経路を示す侵入経路画像Ieを作成するとともに、侵入経路画像Ieを歯牙画像Iに対応させてモニタ13に表示する侵入経路画像処理部11eを備える構成とすることにより、切削工具26の侵入方向を視覚的に明示することができ、施術者は正確かつ安全に施術することができる。
【0272】
詳述すると、施術者は施術する前に、X線CT撮影装置60で撮影した歯牙の3D情報、施術で使用する予定の切削工具26に関する情報及び根管延伸方向とに基づいて、切削工具26が根管に沿って侵入する侵入経路をモニタ13に表示することができる。
【0273】
したがって、施術者は、施術前に、切削工具26を根管延伸方向に沿って侵入させた場合の切削工具26の侵入状態を視覚的にイメージすることができ、得られた
侵入経路画像Ieに基づいて施術するかを判断することにより、健全部位の切削を最小限に留めると共に、所望の根管Rに切削工具26を導くことができる。
【0274】
また、モニタ13に重畳表示された画像の少なくとも一部について透過度の指定操作を受け付ける透過度指定操作部12eを備え、歯牙画像処理部11aを、透過度指定操作部12eで指定した透過度に応じて透過した透過画像を作成する構成とすることにより、例えば、根管延伸方向画像Idを半透明化することにより、歯牙画像Iに示されている根管Rの根管口Roの位置を明確に表示しながら、根管延伸方向が根管Rに沿っている状態を明示することができる。また、可視光画像を半透明化して、3D情報に基づき作成した歯牙画像Iに示される根管Rを明確に表示する、逆に、歯牙画像Iを半透明化して、可視光画像を明確に表示するなどに、重畳表示された歯牙画像I、及び可視光画像のうち一方を他方に比べて明確に表示することで、さらに、精密で正確な根管R治療を行うことができる。また、一方の画像を明確に表示しながら、他方の画像を透明化したり、表示させたりして、明確に表示された一方の画像を中心に確認しながら治療することができる。
【0275】
また、モニタ13に重畳表示された画像の少なくとも一部について色彩の指定操作を受け付ける色彩指定操作部12fを備え、歯牙画像処理部11aを、色彩指定操作部12fで指定した色彩に応じた色彩画像を作成する構成とすることにより、例えば、3D情報に基づき作成した歯牙画像Iに示される根管Rを色彩表示するなどにより、重畳表示された歯牙画像I、及び可視光画像のうち一部を他方に比べて明確に表示することで、さらに、精密で正確な根管治療を行うことができる。根管Rを色彩表示し、切削工具26の先端26aの位置を切削工具位置検出部16からの出力又は根管長測定装置40からの出力に基づいて重畳表示すれば、リアルタイムで切削工具26が根尖Rtに近づきつつある状況を把握しつつ施術できる。また、切削工具26の先端26aの位置から根尖Rtまでの間の領域を色彩表示することも出来る。この場合には、根管領域の色彩表示自体が切削工具26の侵入方向を表示する機能を持たせることができる。
【0276】
また上述の歯牙画像操作画面100と、歯牙Tに対して施術する根管治療用ハンドピース20とを備えた診療システム1は、関心対象である歯牙Tの根管口Roの方向をモニタ13に表示された歯牙画像I、及び/又は二次元撮像画像Ipで確認しながら口腔内の対象歯牙Tを施術することができる。
【0277】
また、根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26を駆動する駆動部22と駆動部22を駆動制御するハンドピース制御部23とを備え、ハンドピース制御部23を、切削工具26に応じた駆動制御をする構成とすることにより、施術者は安全かつ正確に施術することができる。
【0278】
詳しくは、切削工具26は、種類に応じて長さや径や形状が異なり、上下に動いて切削するものや回転で切削するもの、また、切削方向と非切削方向に回転を交互に繰り返して切削するものがあり、切削工具26の種類によって駆動制御を変える必要がある。また、一般的に根管治療では径や長さの異なる複数の切削工具26を使用することが多く、その種類に応じて湾曲度合いが異なる。そこで、ハンドピース制御部23を、切削工具26に応じて駆動制御する構成とすることにより、切削工具26の種類に応じて適切に駆動制御することができる。
【0279】
また、関心対象である歯牙Tに対する根管治療用ハンドピース20に取り付けた切削工具26の歯牙Tに対する施術方向、及び根管治療用ハンドピース20の位置の少なくとも一方を検出する切削工具位置検出部16を備えることにより、根管治療用ハンドピース20を歯牙画像Iと対応してモニタ13に表示することができる。
【0280】
詳しくは、根管治療用ハンドピース20の位置及び方向の少なくとも一方を検出する切削工具位置検出部16を備えることにより、関心対象である歯牙Tに対する根管治療用ハンドピース20の相対位置関係を検出し、根管治療用ハンドピース20を歯牙画像Iに対応させてモニタ13に表示することができる。したがって、施術者はモニタ13を見ながら正確に施術することが可能となる。
これにより、施術者は根管口Roの位置などが表示された歯牙画像Iと患者の口腔内とを見比べながら施術することなく、安全かつ正確に施術することができる。
【0281】
また、切削工具位置検出部16で検出した切削工具26の切削工具先端26aが、根管Rの所定位置となる場合、又は、施術方向が、歯牙Tの所定の位置における根管延伸方向に対して所定の方向となる場合に所定動作を行う所定動作部とを備えることにより、例えば、切削工具26の位置が所定の位置にない場合や切削工具26の回転軸の方向が所定の方向にない場合に、音声、ブザー音やメロディ、振動による報知又はLED等の点灯や点滅による照明に基づく表示等の報知することにより、切削工具26の位置が所定の位置に、又は切削工具26の回転軸の方向が所定の方向にあることを認識して慎重かつ確実丁寧に施術することができ、また、切削工具26の位置が所定の位置になった場合や切削工具26の回転軸の方向が所定の方向にある場合に、切削工具26が駆動しているため、歯牙Tにおける健全部位を不用意に切削したり、切削工具が突き抜けたりすることを防止することができる。
【0282】
また、装着した切削工具26の切削工具先端26aを測定する根管長測定装置40と、該根管長測定装置40で検出した根管長に関する情報を記憶する根管長測定情報記憶部15dとを備え、所定動作部を、切削工具位置検出部16で検出した先端位置が、根管長に基づく根管Rの所定位置となる場合に所定動作を行う構成とすることにより、例えば、根管長測定装置40により切削工具26の切削工具先端26aが根尖Rtに近づいてきていることを施術者が認識して慎重かつ確実丁寧に施術することができる。仮に、前記切削工具が根尖Rtに近づきつつあることを施術者が認識しなかった場合であっても、自動的に駆動力を停止したり、駆動力を低減したり、逆転したりすることで駆動制御するため、安全に治療することができる。
【0283】
また、所定動作部を、切削工具26の位置が根管長に対する所定位置となったこと、又は、歯牙Tの所定の位置において、根管延伸方向に対する所定の方向になったことを、報知する報知部25で構成することにより、例えば、根管治療用ハンドピース20が根管延伸方向から外れた場合や根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26の切削工具先端26aが、施術者が任意に設定した根尖Rtの手前数ミリの位置に達した場合に、音声、ブザー音やメロディ、振動による報知又はLED等の点灯や点滅による照明に基づく表示等で報知することにより、施術方向が正しい方向を向いてないことや根尖Rtに至る前に根尖Rtに近づいてきていることを認識して慎重に且つ確実丁寧に施術することができる。
【0284】
また、根管治療用ハンドピース20の駆動を制御するハンドピース制御部23を備えたことにより、例えば、根管治療用ハンドピース20が、施術者が予め設定した根管延伸方向から外れた場合や根管治療用ハンドピース20に装着した切削工具26の切削工具先端26aが、施術者が任意に設定した根尖Rtの手前数ミリに達した場合に、停止、逆転又は駆動力の低減等の根管治療用ハンドピース20の駆動制御することができる。したがって、切削工具26が根管R上の目的以外の箇所を切削することや、根尖Rtを突き抜けるいわゆるパーフォレーションなどを回避するように駆動制御できるため、安全に施術することができる。
【0285】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の三次元情報は、3D情報に対応し、
以下同様に、
歯牙指定部は、対象歯牙指定操作部12aに対応し、
表示部は、モニタ13に対応し、
根管治療用表示装置は、歯牙画像操作画面100に対応し、
任意点指定部は、根管任意点指定部12bに対応し、
歯牙断面画像は、根管断面画像ItCに対応し、
可視光カメラは、根管治療用ハンドピースに内蔵又は挿着された可視光カメラ30又は顕微鏡70に対応し、
施術装置は、可視光カメラ付き根管治療用ハンドピース20に対応し、
根管治療ユニットは、診療システム1に対応し、
駆動制御部は、ハンドピース制御部23に対応し、
検出部は、切削工具位置検出部16に対応し、
所定動作部は、施術切削工具制御部11g及び報知部25に対応し、
根管長測定部は、根管長測定装置40に対応するが
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0286】
例えば、ステップt3において、本実施形態では、上顎の歯列弓または下顎の歯列弓の表示の選択を受け付ける顎指定部260を備える構成としているが、ステップt2において読み込まれる患者M1に関する情報の中に、施術の対象である歯牙Tが上顎または下顎のいずれかに存在するかを含む情報とすることにより、上顎または下顎の選択を自動で行う構成としてもよい。
【0287】
また、根管延伸方向表示操作画面300などに表示する歯牙画像Iを表示する画面の位置は、本実施例の位置に限られるものでない。また、施術者の所望の場所に3D根管延伸方向表示部310などの表示画面を入れ替えることも可能としてもよく、また、一画面を拡大表示し、その他の画面を縮小表示するとともに、これらの画面を切り換えて拡大表示画面に表示する形式としてもよい。
【0288】
また、XZ平面根管延伸方向表示部330、YZ平面根管延伸方向表示部340に歯牙Tの断面図である二次元変換歯牙画像を表示したが、歯牙Tの側面図であってもよし、XY平面根管延伸方向表示部320には咬合面方向から観察した二次元変換画像ItPを表示しているが、咬合面方向から見た歯牙Tの断面画像を表示してもよい。
【0289】
また、XY断面位置指定操作部331はXY平面根管延伸方向表示部320に表示する二次元変換画像ItPの断面位置を指定操作する指定操作部が、切削工具26の切削工具先端26aの位置に対応する二次元変換画像ItPを表示する構成としてもよい。
【0290】
また、歯牙画像Iとしては、根管R及び根管口Roを着色し、着色した根管R及び根管口Roのみを歯牙画像Iに重畳表示してもよく、さらには、歯牙画像Iにおける歯牙Tや根管口Roの輪郭を強調表示して、歯牙画像Iに重畳表示してもよい。
【0291】
また、歯牙画像Iを咬合面方向から観察した二次元変換画像ItPを可視光カメラ50により撮像した二次元撮像画像Ipに適合するようにサイズや向きを調整したが、逆に、二次元撮像画像Ipを二次元変換画像ItPに適合するように調整してもよく、さらには、二次元変換画像ItPと二次元撮像画像Ipとをともに調整して、二次元撮像画像Ipと二次元変換画像ItPとが適合するように構成してもよい。
【0292】
また、切削工具位置検出部16により、切削工具26の切削工具先端26aを検出し、その切削工具先端26aが根管延伸方向を基準とした一定の範囲から外れた場合に、ハンドピース制御部23により根管治療用ハンドピース20の駆動を制限したり、報知部25に備える位置検出報知部251によりブザーなどの音声や照明で報知したりする構成としたが、切削工具26の位置が予め設定した所定の位置になった場合や切削工具26の回転軸の方向が所定の方向にある場合に、切削工具26が駆動するように駆動制御したり、報知部25に備える位置検出報知部251によりブザーなどの音声や照明で報知したりする構成としてもよい。
【0293】
また、直接的又は間接的に根管切削時のトルクを測定する切削工具トルク検出部28により検出したトルク値に応じて、トルクが予め設定した所定値を越す場合にハンドピース制御部23で根管治療用ハンドピース20の切削工具先端26aの駆動の逆転、停止、又は駆動力の低減を行ってもよい。
これにより、切削工具が根管に食い込むことや、切削工具が破損することを防ぐことができる。
【課題】本発明は、根管R治療において、歯牙における健全部位の切削を最小限に留めると共に、所望の根管Rに切削工具を導くことができる根管治療用表示装置、根管R治療ユニット及び歯科用画像表示方法を提供することを目的とする。
【解決手段】X線CT撮影装置60で撮影した歯牙の根管Rに関する情報を含む3D情報を記憶する三次元情報記憶部15aと、関心対象である歯牙を指定する対象歯牙指定操作部12aと、歯牙に関する歯牙画像Iを作成する歯牙画像処理部11aと、歯牙画像Iを表示するモニタ13と、3D情報に基づいて、歯牙の根管Rに沿う根管延伸方向を示す根管延伸方向画像Idを作成し、根管延伸方向画像Idを歯牙画像Iに対応させて、モニタ13に重畳表示した