特許第5791801号(P5791801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791801
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】放熱板用ダイキャストアルミニウム合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/02 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   C22C21/02
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-521541(P2014-521541)
(86)(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公表番号】特表2014-520967(P2014-520967A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】KR2012004697
(87)【国際公開番号】WO2013015525
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2014年1月21日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0072955
(32)【優先日】2011年7月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514017699
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オヴ・インダストリアル・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・イク・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・チャン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チェル・ウー・キム
(72)【発明者】
【氏名】セ・ウォン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ソグ・カン
【審査官】 相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−226932(JP,A)
【文献】 特開2011−100672(JP,A)
【文献】 特開2007−009262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00−21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01〜0.5wt%のCuと、0.3〜0.6wt%のFeと、1.0〜1.5wt%のSiとを含み、残部がアルミニウムからなる放熱板用ダイキャストアルミニウム合金。
【請求項2】
0.0035〜0.01wt%のMnをさらに含む、請求項1に記載の放熱板用ダイキャストアルミニウム合金。
【請求項3】
0.0001〜0.001wt%のMgをさらに含む、請求項1に記載の放熱板用ダイキャストアルミニウム合金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金に関し、特に0.01〜0.5wt%のCuと、0.3〜0.6wt%のFeと、1.0〜1.5wt%のSiとを含み、放熱性と鋳造性を同時に向上させることができる放熱板用ダイキャストアルミニウム合金に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、カーオーディオ用放熱板部品は、現在Al−Si−Cu系合金を利用してダイキャストで製造する。
【0003】
このような放熱板部品は、鋳造性に優れているが、放熱性が低い合金を使用するため、オーディオ部品の放熱機能の低下が問題になっている。
【0004】
このような問題を解決するために、放熱特性に優れた工業用純アルミニウムが提案された。
上記純アルミニウムは、優れた放熱特性(234W/mK)を示すが、ダイキャスト鋳造後に欠陥が発生するという問題点があった。
【0005】
また、このような問題を解決するために、優れた流動特性を示すAl−Si−Cu系ダイキャスト合金であるALDC 12種が提案されたが、上記ALDC 12種は、低い放熱特性(96W/mK)を示すという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した問題点を解決するためのものであって、優れた放熱特性及び鋳造性を有する放熱板用ダイキャストアルミニウム合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、0.01〜0.5wt%のCuと、0.3〜0.6wt%のFeと、1.0〜1.5wt%のSiとを含む放熱板用ダイキャストアルミニウム合金である。
【0008】
この際、0.0035〜0.01wt%のMnをさらに含むことができる。
【0009】
また、0.01〜0.5wt%のCuと、Fe0.3〜0.6wt%とをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したような本発明によって、放熱特性と鋳造性が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】アルミニウム合金の流動性をテストするための装置に対する概念図である。
図2a】上記流動性テスト装置による流動性実験写真である。
図2b】上記流動性テスト装置による流動性実験写真である。
図2c】上記流動性テスト装置による流動性実験写真である。
図2d】上記流動性テスト装置による流動性実験写真である。
図2e】上記流動性テスト装置による流動性実験写真である。
図3】上記流動性テスト装置による実験結果を取り集めたグラフである。
図4】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図5a】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図5b】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図5c】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図5d】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図5e】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図6a】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図6b】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図6c】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図6d】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図6e】本発明のアルミニウム合金を利用して鋳造した放熱板の写真である。
図7】本発明のアルミニウム合金の放熱特性を示すグラフである。
図8】本発明のアルミニウム合金組職を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の様々な実施例を詳しく説明する前に、次の詳細な説明において本発明が記載されるが、図面に示された構成要素の構成及び配列の詳細にその応用が制限されるものではないことが分かる。
【0013】
本発明は、他の実施例に具現されて実施されることができ、多様な方法で行われることができる。
【0014】
また、装置または要素方向(例えば、前(front)、後(back)、上(up)、下(down)、上(top)、下(bottom)、左(left)、右(right)、横(lateral)など)のような用語について本発明で使用された表現及び述語は、単に本発明の説明を単純化するために使用され、関連した装置または要素が単純に特定方向を有しなければならないことを示さず、また意味しないことが分かる。
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。なお、本明細書及び請求の範囲に使用された用語や単語は、一般的な意味や辞書的な意味に限定して解釈すべきものではなく、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味や概念として解釈されなければならない。
【0016】
したがって、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0017】
本発明は、前述したように、放熱特性と鋳造特性を同時に向上させることができるものであって、0.01〜0.5wt%のCuと、0.3〜0.6wt%のFeと、1.0〜1.5wt%のSiとを含む放熱板用ダイキャストアルミニウム合金である。
【0018】
この際、熱伝導度に影響を及ぼすMnは、0.0035〜0.01wt%でさらに含むことが好ましい。
【0019】
また、Mgの場合、0.0001〜0.001wt%でさらに含むことが好ましい。
【0020】
以下、前述した本発明によるアルミニウム合金を比較例とともに説明する。
【0021】
【表1】
【0022】
流動性テスト
鋳造性を評価するために流動性テストを実施した。
上記流動性テストのために、図1に示されたように、円板形状の本体110の中央部に投入口120が形成された流動性テスト装置100を使用する。
【0023】
この際、上記本体110の投入口120から一定角度だけ離隔され、直線形状を有する流動チャネル130が6個形成される。
【0024】
上記流動チャネル130は、幅Wが5mmであり、長さLが200mmであって、同一である。
但し、深さtは、それぞれ1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mmである。
【0025】
このようなテスト装置100の投入口120に上記比較例1、比較例2、比較例3、実施例1、実施例2に該当する合金を投入した。
【0026】
図2aは比較例1の場合を示すものであり、図2bは比較例2、図2cは比較例3、図2dは実施例1、図2eは実施例2の場合を示すものである。
【0027】
上記テスト装置100によって各チャネル130に合金が流動した距離を合算して図示したものが図3である。
すなわち、図3の横軸は、比較例1、比較例2、比較例3、実施例1、実施例2を示し、縦軸は、合金が流動した距離を示す。
【0028】
図示のように、実施例1及び実施例2と比較例1及び比較例2の流動距離は720mm以上であって、良好な鋳造性を確認することができる。
これにより、鋳造性のためにはSiが1.0wt%以上含まれなければならないことが分かる。
【0029】
鋳造欠陥発生可否テスト
鋳造性の他の側面のテストとして、鋳造の結果、生産された製品に欠陥が発生するか否かをテストした。
【0030】
鋳造された形状は、図4に示されたように放熱板形状とした。
また、鋳造のためのダイキャスト装備条件は、下記の表2に記載された通りである。
【0031】
【表2】
【0032】
また、ダイキャスト射出条件は、次の表3に記載された通りである。
【0033】
【表3】
【0034】
比較例1の場合、上記条件によって鋳造した結果、図5aの円形表示部分に欠陥が発生した。
比較例2及び比較例3の場合も、それぞれ円形で表示された部分に欠陥が発生した。
【0035】
このような欠陥は、鋳造時に発生する熱間割れ(hot tearing)欠陥であり、上記欠陥の代表的な写真が図5d及び図5eである。
【0036】
上記試験から分かるように、比較例1、比較例2、比較例3では、前述した欠陥が発生したが、本実施例1及び実施例2では、上記欠陥が発生せず、優れた鋳造性能を確認することができた。
【0037】
また、図6a〜図6eから確認することができるように、比較例1(図6a)、比較例2(図6b)、比較例3(図6c)では、欠陥が観測されたが、実施例1(図6d)、実施例2(図6e)では、欠陥が観測されなかった。
【0038】
したがって、上記実施例1及び実施例2の組成による合金の場合、鋳造性能に優れていることが分かった。
【0039】
放熱特性テスト
放熱特性をテストするために、上記比較例2、実施例1、実施例2で作られた合金を利用して直径12.7mm、厚さ2mmの円板形状の試験片を製作し、熱伝導度をテストした。
【0040】
図7に示されたように、比較例2の場合、略150W/mKを示したが、実施例1の場合、198.472W/mK、実施例2の場合、185.999W/mKを示した。
【0041】
言い換えると、従来のALDC 12の熱伝導度である96.2W/mKよりも格別に高い熱伝導度を有し、放熱特性が高いことが分かる。
【0042】
以上説明したように、実施例1及び実施例2の組成を有する合金が鋳造性と放熱特性に優れていることが分かり、このような合金を利用すれば、鋳造が容易であり、放熱性能が良好な放熱板を製作することができることを確認することができる。
【符号の説明】
【0043】
100 流動性テスト装置
110 本体
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7