【実施例】
【0043】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
なお、実施例2−5において、賦形剤としては乳糖、白糖、ショ糖、マンニトール、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、及びデキストランから選択された賦形剤を、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース及びポリビニルアルコールから選択された結合剤を、崩壊剤としてはクロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから選択された崩壊剤を、滑沢剤としては硬化油、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル及びステアリン酸から選択された滑沢剤を、コーティング剤としてはエチルセルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロースフタル酸エステル、マクロゴール及びオパドライから選択されたコーティング剤を、着色剤としては食用黄色5号色素、食用青色2号色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄及び酸化チタンから選択された着色剤が使用可能であり、いずれの賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤及び着色剤を用いても、製剤の溶出性又は吸収性の評価に実質的な影響を及ぼさない。
【0045】
実施例1 配合変化試験
4-((1-メチルピロール-2-イル)-カルボニル)-N-(4-(4-モルホリン-1-イル-カルボニルピペリジン-1-イル)-フェニル)-1-ピペラジンカルボキサミド(化合物1)一水和物及び有機酸を、それぞれ0.5g量り乳鉢で混合し、混合末を作製した。つぎに化合物1一水和物のみを0.5g量り、有機酸の混合末の作製時と同じ方法により化合物1一水和物の粉末を作製した。
【0046】
上記各有機酸の混合末および化合物1一水和物の粉末をそれぞれ0.04g、0.02gガラス瓶に量りとった。ガラス瓶の蓋をしない状態(開封)とガラス瓶の蓋をした状態(密閉)のものを60℃相対湿度60%条件下にて2週間放置した後、HPLC法により化合物1一水和物の類縁物質の生成量を調べることによって安定性を評価した。評価は高速液体クロマトグラフ(株式会社島津製作所)を使用した。結果を表2に示す。
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:260nm)
カラム:内径4.6mm、長さ10cmのステンレス管に、3.5μmの液体クロマトグラフィー用フェニル化シリカゲルを充填する(XBridgePhenyl、日本ウォーターズ株式会社)。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相
移動相A:リン酸塩緩衝液(pH 7)
移動相B:アセトニトリル
移動相の送液:移動相A及びBの混合比を表1のように変えて濃度勾配制御する。
【0047】
【表1】
【0048】
酸性添加物として無水クエン酸、L-酒石酸、DL-酒石酸、又はDL-リンゴ酸を添加した場合には、開封条件及び密閉条件のいずれか又は両方において、類縁物質の量が著しく増加した。一方、アジピン酸、コハク酸、フマル酸、L-アスパラギン酸、及びL-グルタミン酸のいずれかの有機酸を添加した場合の類縁物質量は、開封条件、密閉条件のいずれにおいても初期値とほぼ同一であり、化合物1の安定性に影響を与えることがなかった(表2)。
【0049】
【表2】
【0050】
実施例2 有機酸を含有する製剤の溶出性の評価
配合例1、配合例2及び比較例1の錠剤を製造した。各錠剤の処方を表3に示す。
【0051】
配合例1
錠剤粉砕機(小西製作所)にて化合物1一水和物を1g、酸性添加物としてフマル酸1gを入れて粉砕し、フマル酸混合粉砕品を得た。フマル酸混合粉砕品1.50g、賦形剤を4.17g、崩壊剤を0.30g、滑沢剤を0.030g添加して、それぞれガラス瓶内にて混合を行った後、打錠機で打錠し200mgの錠剤を得た。
【0052】
配合例2
酸性添加物として配合例1の
フマル酸1gの代わりに
コハク酸1gを入れて粉砕して
コハク酸混合粉砕品を得、配合例1と同様の方法で200mgの錠剤を得た。
【0053】
比較例1
対照として、酸性添加物を添加しない以外は、配合例1及び2と同様の方法で錠剤を得た。
【0054】
溶出試験
配合例1、配合例2及び比較例1について、第十六改正日本薬局方の溶出試験法パドル法に準じて、試験液に溶出試験第2液900mL(37℃)を用いて50rpmにて溶出試験を実施した。測定機器は溶出試験器(富山産業株式会社)、溶出試験モニター(大塚電子株式会社)を使用した。
結果は
図1(n=3、平均溶出率±標準偏差)に示すとおりであり、酸性添加物を含有しない比較例1では15分の溶出率が65%であったのに比べ、フマル酸及びコハク酸をそれぞれ含有する配合例1及び配合例2では15分の溶出率がそれぞれ93%、76%であり、本発明の酸性添加物による溶出性の改善効果が確認された。
【0055】
【表3】
【0056】
実施例3 フマル酸を含有する製剤の溶出性の評価
配合例3、配合例4、配合例5、配合例6及び比較例2の錠剤を製造した。各錠剤の処方を表4に示す。
【0057】
配合例3
化合物1一水和物、フマル酸、賦形剤をそれぞれ流動層造粒機(株式会社パウレック)に入れ、結合剤溶液を噴霧しながら造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物に崩壊剤及び滑沢剤を加えて混合した後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、282mgの錠剤を得た。得られた錠剤に、コーティング剤、着色剤及び精製水(コーティング溶液に対し約92%)からなるフィルムコーティング液をコーティング機(株式会社パウレック)にてスプレーし、296mgのフィルムコーティング錠を得た。配合例3では、化合物1一水和物1質量部に対し、フマル酸が約0.25質量部である。
【0058】
配合例4
化合物1一水和物1質量部に対しフマル酸を約0.5とし、フマル酸と賦形剤の配合量を変更した以外は配合例3と同様の方法でフィルムコーティング錠を得た。
【0059】
配合例5
化合物1一水和物1質量部に対しフマル酸を約0.8とし、フマル酸と賦形剤の配合量を変更した以外は配合例3と同様の方法で、296mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0060】
配合例6
化合物1一水和物1質量部に対しフマル酸を約1.0とし、フマル酸と賦形剤の配合量を変更した以外は配合例3と同様の方法で、296mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0061】
比較例2
対照として、フマル酸を添加せず、賦形剤の配合量を変更した以外は配合例3と同様の方法で、296mgのフィルムコーティング錠を得た。
【0062】
溶出試験
配合例3、配合例4、配合例5、配合例6及び比較例2について、第十六改正日本薬局方の溶出試験法パドル法に準じて、試験液に溶出試験第2液900mL(37℃)を用いて50rpmにて溶出試験を実施した。評価は高速液体クロマトグラフ(株式会社島津製作所)を使用した。結果は
図2(n=3、平均溶出率±標準偏差)に示す。フマル酸を含有しない比較例2に比べ、フマル酸を含有する配合例3、配合例4、配合例5及び配合例6は溶出性が向上していた。
【0063】
【表4】
【0064】
実施例4 フマル酸を含有する製剤の吸収性の評価
配合例7及び比較例3の錠剤を製造した。各錠剤の処方を表6に示す。
【0065】
配合例7
化合物1一水和物を2.40g、フマル酸を2.40g、賦形剤を1.2gを、それぞれ乳鉢内にいれ、結合剤溶液を1.28g加えて造粒し、造粒物を得た。造粒物を整粒した後に60℃、1時間にて静置乾燥し、乾燥造粒物を得た。得られた乾燥造粒物5.08gに崩壊剤を0.26g、滑沢剤を0.02g加えて混合を行った後、打錠機(株式会社島津製作所)で打錠し268mgの錠剤を得た。
【0066】
比較例3
対照として、フマル酸を添加せず、賦形剤を3.60gに増量して造粒物を得た以外は、配合例7と同様の方法で268mgの錠剤を得た。
吸収実験条件
使用動物:ビーグル犬(北山ラベス、雄6頭)
食事条件:前日より20時間絶食
投与量:100mg/body
投与サンプル:配合例7及び比較例3をそれぞれ1錠
投与方法:水50mLと共に投与
前処置:投与サンプルの投薬30分前に硫酸アトロピン静注液10μg/0.1mL/kg及びオメプラゾール静注液1mg/0.25mL/kgを静脈内投与し、投薬30分後に、オメプラゾール静注液1mg/0.25mL/kgを静脈内投与した。
吸収性の測定方法:イヌより採取した血液を遠心分離(12,000rpm、5℃、3分)し、得られた血漿25μLをポリプロピレン製マイクロチューブに採取し、純水25μLを加えた。さらに、アセトニトリル100μL、内標準溶液50μLを加え、ボルテックスミキサーで混合した。遠心分離(15,000×g、5℃、2分)後、ポリプロピレン製オートサンプラーチューブに上清60μLを採取し、純水120μLを加えてボルテックスミキサーで混合した。得られた測定試料を高速液体クロマトグラフ/質量分析計(日本ウォーターズ株式会社)を用いて定量した。
装置:高速液体クロマトグラフ/質量分析計(日本ウォーターズ株式会社)
液体クロマトグラフィー測定条件
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18(1.7μm、内径2.1mm、長さ50mm)
カラム温度:40℃
移動相
移動相A:10mmol/L ギ酸アンモニウム
移動相B:アセトニトリル
移動相の送液:移動相A及びBの混合比を表5のように変えて濃度勾配制御する。
【0067】
【表5】
MS/MS測定条件
Ionization source: Electrospray ionization(ESI)-positive
Scan mode: MRM
【0068】
結果は
図3(n=6、平均血漿中濃度+標準偏差)に示すとおりである。フマル酸を含有する配合例7のAUC(17,783±3,813)及びCmax(5,067±1,334)は、フマル酸を含有しない比較例3のAUC(3,518±2,932)及びCmax(842±850)に比べ、AUCは5倍,Cmaxは6倍であった。フマル酸を含有する配合例7では、フマル酸を含有しない比較例3に比べ吸収性が向上し、フマル酸による吸収性の改善が確認された。
【0069】
【表6】
【0070】
実施例5 フマル酸の含有量が異なる製剤の吸収性の評価
配合例8及び配合剤9の錠剤を製造した。各錠剤の処方を表8に示す。
【0071】
配合例8
化合物1一水和物を42.5g、フマル酸を40.9g、賦形剤を204.4
g、をそれぞれ流動層造粒機(フロイント産業株式会社)にいれ、結合剤溶液123.0gを噴霧しながら造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物250.0gに崩壊剤を13.6g、滑沢剤を1.7g加えて混合した後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、77.9mgの錠剤を得た。得られた錠剤に、コーティング剤を27.0g、着色剤を3.0g、精製水を270.0gからなるフィルムコーティング液をコーティング機(株式会社パウレック)にてスプレーし、フィルムコーティング錠を得た。
【0072】
配合例9
化合物1一水和物を37.4g、フマル酸を71.9g、賦形剤を179.9gに、結合剤溶液108.1gを加えて造粒し造粒物を得た。得られた造粒物250.2gに崩壊剤を12.0g、滑沢剤を1.5g加えて混合した後、打錠機(株式会社菊水製作所)で打錠し、87.9mgの錠剤を得た。得られた錠剤に、コーティング剤を45.0g、着色剤を5.0g、精製水を450.0gからなるフィルムコーティング液をコーティング機(株式会社パウレック)にてスプレーし、フィルムコーティング錠を得た。
吸収実験条件
使用動物:ビーグル犬(北山ラベス、雄3頭もしくは6頭)
食事条件:前日より20時間絶食
投与量:10mg/body又は100mg/body
投与サンプル:配合例8若しくは配合例9、又は配合例4、配合例5、配合例6若しくは比較例3をそれぞれ1錠
投与方法:水50mLと共に投与
前処置:投薬30分前に硫酸アトロピン静注液10μg/0.1mL/kg及びオメプラゾール静注液1mg/0.25mL/kgを静脈内投与し、投薬30分後に、オメプラゾール静注液1mg/0.25mL/kgを静脈内投与した。
【0073】
吸収性の測定方法:
イヌより採取した血液を遠心分離(12,000rpm、5℃、3分)し、得られた血漿25μLをポリプロピレン製マイクロチューブに採取し、純水25μLを加えた。さらに、アセトニトリル100μL、内標準溶液50μLを加え、ボルテックスミキサーで混合した。遠心分離(15,000×g、5℃、2分)後、ポリプロピレン製オートサンプラーチューブに上清60μLを採取し、純粋120μLを加えてボルテックスミキサーで混合した。得られた測定試料を高速液体クロマトグラフ/質量分析計(日本ウォーターズ株式会社)を用いて定量した。
装置:高速液体クロマトグラフ/質量分析計(日本ウォーターズ株式会社)
液体クロマトグラフィー測定条件
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18(1.7μm、内径2.1mm、長さ50mm)
カラム温度:40℃
移動相
移動相A:10mmol/L 酢酸アンモニウム
移動相B:アセトニトリル
移動相の送液:移動相A及びBの混合比を表7のように変えて濃度勾配制御する。
【0074】
【表7】
MS/MS測定条件
Ionization source: Electrospray ionization(ESI)-positive
Scan mode: MRM
【0075】
結果は
図4(n=6,平均血漿中濃度+標準偏差)及び
図5(n=3,平均血漿中濃度+標準偏差)に示した。
図4において、化合物1に対しフマル酸が1質量部である配合例8及びフマル酸が2質量部である配合例9は十分な吸収性を示した。また、
図5の結果より、配合例4、配合例5及び配合例6のAUC(7,890±1,513,15,033±1,250,20,324±2,856)及びCmax(2,073±922,4,230±540,5,023±1,258)は比較例3のAUC(3,518±2,932)及びCmax(842±850)に対しいずれも1.5倍以上であり、フマル酸を含有する配合例4、配合例5及び配合例6は比較例3と比べ、優れた吸収性を示した。
【0076】
【表8】