特許第5791823号(P5791823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791823
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】北極圏海氷の融解抑制方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 1/00 20060101AFI20150917BHJP
   E02B 7/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   E02B1/00 Z
   E02B7/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-543046(P2014-543046)
(86)(22)【出願日】2012年10月23日
(86)【国際出願番号】JP2012077324
(87)【国際公開番号】WO2014064763
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2015年3月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514093866
【氏名又は名称】中石 昌典
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】中石 昌典
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−202106(JP,A)
【文献】 特開平10−331137(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0173414(US,A1)
【文献】 Jill Burke,"Could a massive dam between Alaska and Russia save the Arctic?",Alaska Dispatch News,2010年11月26日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00−15/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーリング海峡を通過して太平洋から北極海へ海が流入することを抑制することにより北極圏の海氷の融解を抑制する北極圏海氷の融解抑制方法であって、ベーリング海峡が海氷で閉ざされている間、ベーリング海峡を閉鎖する海氷に太平洋側からの海水が当たらないように、ベーリング海峡を閉鎖する海氷の太平洋側の側面に沿ってベーリング海峡に海面から2メートル以上3m以下の高さまでを遮断する軟質性樹脂からなる帯状のシート部をブイで支持したフェンスを設けて、ベーリング海峡を閉鎖する海氷の融解を抑制してベーリング海峡が海氷で閉ざされる期間を延長させ、このベーリング海峡を閉鎖する海氷により太平洋から北極海へ流入する海水のうち海面近傍を流れる海水の北極海への流入を抑制し、
前記フェンスを複数並列して、隣接するフェンス間に海水の閉じ込められる領域を設けることを特徴とする北極圏海氷の融解抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、北極圏の海氷がベーリング海峡を通して太平洋から北極海へ流入する海水により融解することを人的にコントロールする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の進行により世界各地で洪水や干ばつが頻発しており、地球温暖化の抑制が人類共通の課題となっている。地球温暖化は、直接的には二酸化炭素等大気中の温室効果ガスの増大が原因であるが、地球の温暖化により北極海等の海氷や氷河が融解して減少したことが、海氷や氷河により反射される太陽光を減少させ、副次的に地球温暖化を促進させる原因となっている。
【0003】
そこで、海氷や氷河の融解を抑制する各種の装置が提案されている。例えば、特許文献1では、海水中に延出するヒートパイプに封入した流体の気化潜熱により海水を冷却することで海氷の融解を抑制する装置が提案されており、特許文献2では、同様の仕組みにより氷河の地盤を冷却して氷河の融解を抑制する装置が提案されている。
【0004】
ところが、特許文献1や特許文献2に係る装置では、装置周辺の海水の循環や周囲の地盤からの熱の流入により、海水や地盤の冷却が妨げられる虞がある。また、海氷や氷河の融解抑制のためには広範囲にわたって海水や地盤を冷却する必要が有るため、無数の装置が必要になってコストが膨大になる虞が有る。
【0005】
一方、北極海へは、太平洋と北極海との海水面の高低差と塩分濃度の違いにより、冬の間ベーリング海峡が凍結されても、あるいは月の運行によって潮の干満が変化しても、途切れることなくベーリング海峡を通して太平洋から海水が流入している。北極圏の海氷の融解は、まさにこれが原因であるとし、ベーリング海峡を通過して太平洋から北極海へ流入する海水をダムを設けて遮断することにより、北極圏の海氷の融解を抑制する方法が提案されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−249383号公報
【特許文献2】特開2010−249384号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】山口克也(やまぐちかつや)のホームページのベーリング海峡および世界みどり公社の提案、平成24年9月19日検索、<URL:http://yamaguchikatsuya.net/messege/messege2.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1のように、ベーリング海峡全体を海面から海底までダムのようなもので遮断することは、あまりにも莫大な費用がかかるため非現実的である。また、ベーリング海峡を通過する深層水まで遮断することは、地球環境に予測できない悪影響を及ぼす虞がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、膨大な費用を必要とすることなく、また、地球環境に与える影響を可及的に抑えながら、北極圏の海氷の融解を抑制する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、ベーリング海峡を通過して太平洋から北極海へ海が流入することを抑制することにより北極圏の海氷の融解を抑制する北極圏海氷の融解抑制方法であって、ベーリング海峡が海氷で閉ざされている間、ベーリング海峡を閉鎖する海氷に太平洋側からの海水が当たらないように、ベーリング海峡を閉鎖する海氷の太平洋側の側面に沿ってベーリング海峡に海面から2メートル以上3m以下の高さまでを遮断する軟質性樹脂からなる帯状のシート部をブイで支持したフェンスを設けて、ベーリング海峡を閉鎖する海氷の融解を抑制してベーリング海峡が海氷で閉ざされる期間を延長させ、このベーリング海峡を閉鎖する海氷により太平洋から北極海へ流入する海水のうち海面近傍を流れる海水の北極海への流入を抑制し、前記フェンスを複数並列して、隣接するフェンス間に海水の閉じ込められる領域を設けることを特徴とする。こうすることで、より効果的にベーリング海峡の海氷を保護することができる。
【0010】
海水は、海面に近いほど高温であるため、このように、海面から所定の深さまでを遮断するフェンスを設けて、海面近傍を流れる高温の海水のみを遮断することにより、北極海の温度上昇を効果的に抑制して北極圏海氷の融解を抑制することができる。また、フェンスの下方においては、海峡が連通しているため、深層水の流れが妨げられることが無く、深層水を遮断することによる地球環境への悪影響を抑制できる。
【0011】
本発明の参考となる北極圏海氷の融解抑制方法として、ベーリング海峡の海氷で閉ざされない領域において前記フェンスを設ける方法がある。ベーリング海峡は、冬の間、海面が海氷で閉ざされて海面近傍の海水が太平洋から北極海へと流入することが抑制されている。ところが夏になるとベーリング海峡の海氷が融解して、海面近傍の海水まで太平洋から北極海へと流入するようになる。従って、海氷が融解する夏の間、海氷の代わりにフェンスを設けることで夏の間も太平洋から北極海へ海面近傍の海水が流入することを抑制することができる。
【0012】
本発明の北極圏海氷の融解抑制方法は、冬の間、ベーリング海峡に出現する海氷の太平洋側にフェンスを設けることで、フェンスが北極海側へ流されることを防止でき、また、太平洋側からベーリング海峡の海氷に海面近傍の高温の海水が当たることを抑制してベーリング海峡の海氷が融解することを遅らせることができるため、ベーリング海峡が海氷で閉ざされる期間を延長することができる。
【0013】
本発明の参考となる別の北極圏海氷の融解抑制方法として、ベーリング海峡が海氷で閉ざされているうちに当該海氷の太平洋側の側面に沿って前記フェンスを設け、海氷が融解したのち再凍結する前にフェンスを撤去する方法がある。北極海の海氷を保護するためには、フェンスは1年中設置しておくのが好ましいのであるが、このように、ベーリング海峡の海氷が再凍結する前に一度フェンスを撤去することで、海氷が融ける際にフェンスが壊れてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の北極圏海氷の融解抑制方法によれば、低コストで地球環境に大きな影響を及ぼすことなく北極圏の海氷の融解を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ベーリング海峡から北極海に海水が流入するようすを示した北極海周辺の地図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るフェンスの(a)斜視図、及び(b)海面に設置時の北極海側から見た背面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るフェンスを設置した状態を示す平面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る2列のフェンスのうち、(a)は北極海側のフェンスを、(b)は太平洋側のフェンスを、それぞれ太平洋側から見た正面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る北極海側のフェンスの背面側(北極海側)を示した斜視図である。
図6】フローティングワイヤの(a)構造を示す斜視図、及び(b)端部の斜視図である。
図7】(a)は、フローティングワイヤをブイに連結するブイ締結金具の斜視図、(b)は、フローティングワイヤをフェンス本体に固定する固定バンドの斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るフェンスを設置した状態を示す平面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るフェンスの(a)北極海側から見た背面図である。(b)太平洋側から見た正面図である。(c)太平洋側から見た斜視図である。
図10】フェンス本体の他の例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0017】
B ベーリング海峡
P 太平洋
N 北極海
IN 北極圏海氷
IB ベーリング海峡の海氷
11,12,211,212,311,312 フェンス
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。図1は、北極圏及びベーリング海峡周辺を示しており、図中符号Aがアメリカ合衆国(アラスカ)を示し、符号Rはロシアを示している。また、符号B、符号N、及び符号Pがそれぞれベーリング海峡、北極海、及び太平洋を表し、符号INは北極圏の海氷を表している。北極海Nと太平洋Pとは、海水面の高低差や塩分の濃度差を有しており、このため、図1に矢印で示したように、太平洋Pからベーリング海峡Bを通って北極海Nへと海水が流入している。この太平洋Pから北極海Nへ流入する海水が北極海Nの海氷INが融解する要因となっており、特に、冬にベーリング海峡に形成される海氷IBが融解してベーリング海峡が開放される夏季に、温度の高い海面から2〜3m程度の海面近傍の海水が、海氷が融解する要因の大部分を占めている。本発明は、この海面近傍の海水が北極海へ流入することを抑制し、これにより北極圏の海氷INが融解することを抑制するものである。尚、本発明の北極圏海氷の融解抑制方法は、以下の実施の形態に限られるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
図2及び図3は、第1実施形態に係る北極圏海氷の融解抑制方法を示しており、ベーリング海峡の海氷IBが融解する夏季に行う実施形態である。図示の例では、フェンスを2列並列に並べて設置しており、符号11は、北極海側の第1フェンスを、符号12は、太平洋側の第2フェンスを表している。第1フェンス11、及び第2フェンス12は、図2(a)に示すように、大型ブイ2と、小型ブイ3と、フェンス本体4とを備えている。
【0020】
フェンス本体4は、一例で幅(特許請求の範囲の「所定の深さ」)が2〜3m、長さが200mの帯状をなすシート部4aと、シート部4aの上辺に沿って設けられ円柱状の発泡スチロール4fを多数内包した浮体4bと、シート部4aの下辺に取り付けられるフェンス用錘4cとを備えている。シート部4aの長手方向の端辺には、隣接するフェンス本体4と連結するためのファスナー4dとジャックル4eとが設けられている。シート部4aの材料としては特に限定されず、金属や木、硬質樹脂、軟質樹脂、その他公知の材料を適宜用いることができ、一例としてポリ塩化ビニルがあげられる。浮体4bには、発砲スチロール4fの代わりに木や空気袋を用いることもできる。
【0021】
大型ブイ2、及び小型ブイ3は、フェンス本体4の一面(設置時には、北極海側となる面)側に複数を並べて接続され、図2(b)の例では、隣り合う大型ブイ2、2の間に小型ブイ3が各3個ずつ設けられている。大型ブイ2及び小型ブイ3としては、公知のブイを適宜用いることができるが、例えば、大型ブイ2に、株式会社緑星社製のRW−380型を用い、小型ブイ3に同社製のM−100S型を用いることができる。大型ブイ2及び小型ブイ3は、海面に浮かぶ本体2a,3aと、本体2a,3aの下部にロープ2b,3bを介して垂下する錘2c,3cを備えている。
【0022】
第1フェンス11、及び第2フェンス12は、図3に示すように、フェンス本体4を太平洋P側、ブイ2,3を北極海N側にして、ベーリング海峡のアメリカA側とロシアR側の間に架け渡される。図示の例では、フェンス11,12は、アメリカA側のプリンスオブウェールズ岬とロシアR側のテジニョーフ岬の間に架け渡されている。第1フェンス11、及び第2フェンス12は、適宜の間隔(一例で2km)を空けて並列に並べられ、両フェンス11,12の間に海水の閉じ込められる領域6が設けられている。尚、図中Dはダイオミート諸島を示している。
【0023】
図2(b)に示すように、第1フェンス11、及び第2フェンス12の下辺と、ベーリング海峡の海底との間は遮断されておらず、太平洋P側と北極海N側とが連通している。
【0024】
次に第1実施形態のフェンスの設置方法及び効果について説明する。第1実施形態では、5月ごろベーリング海峡を閉鎖していた海氷が融解した後、フェンス11,12を設置する。まず、フェンス11を構成する各部材を積み込んだフェンス設置用船舶(図示せず)をアメリカ側又はロシア側のうちの一側海岸に配置する。次に、フェンス本体4の1枚分に相当する大型ブイ2及び小型ブイ3を適宜の間隔を空けて海中へ投入してベーリング架橋の一側海岸から他側海岸に向かって1列に並べる。続けて、ロール状に巻かれたフェンス本体4を広げながら海中へ投入し、フェンス本体4をカラビナ等の連結具(図示せず)でブイ2,3へ連結する。図3においては、フェンス本体4がブイ2、3の太平洋P側となるようにフェンス11を設置しているが、北極海側に設置してもよい。フェンス本体をブイ2,3に連結すると、また次のフェンス本体1枚分に相当するブイ2,3を海中へ投入し、次のフェンス本体4をブイ2、3に設置する。隣接するフェンス本体4は、チャック4d及びジャックル4eで連結する。フェンス11をベーリング海峡Bを横断するまで連結すると、同様にしてフェンス12を設置する。フェンス12は、フェンス11と並列に、かつフェンス11の太平洋側に設置する。
【0025】
このように、夏の間、ベーリング海峡をフェンス11,12で遮断することにより、太平洋Pから北極海Nへと流入しようとする海水の海面近傍の高温水を遮断することができる。これにより、北極海の海水の温度上昇を抑制して北極圏海氷の融解を抑制することができる。また、フェンス11,12の下方で海峡が連通していることで、太平洋から北極海へ流入する深層水を遮断することがなく、地球環境へ与える悪影響を抑制できる。
【0026】
(第2実施形態)
図4乃至図8は、第2実施形態に係る北極圏海氷INの保護方法を示しており、ベーリング海峡Bが海氷IBで閉鎖される冬季に行う実施形態である。符号211は、第1フェンスを表し、符号212は、第2フェンスを表している。第1フェンス211、及び第2フェンス212は、図4及び図5に示すように、ブイ2と、支柱23と、フェンス本体4と、フローティングワイヤ6とを備えている。第2実施形態においても第1フェンス211と第2フェンス212とを並列させて設置する。尚、第2実施形態及び後述する第3実施形態において、第1実施形態と共通する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
フローティングワイヤ6は、図6に示すようにワイヤ6aを内側から塩化ビニルコーティング6b、ウレタンフォーム6c及び塩化ビニルコーティング6dで被覆して形成さている。フローティングワイヤ6は端部に隣接するフローティングワイヤ6と連結するためのフック6eを備えている。また、図7(a)は、フローティングワイヤ6をブイ2に連結するブイ固定金具7を示し、図7(b)は、フローティングワイヤ6をフェンス本体4に固定する固定バンド8を示している。フローティングワイヤ6は、図5に示したようにフェンス本体4の背面側に固定バンド8で固定され、ブイ固定金具7でブイ2に連結される。ウレタンフォーム6cの代わりに発泡スチロール等を用いることができ、発泡スチロールのような硬質樹脂を用いる場合は、フローティングワイヤが巻回可能なように短筒状のものを縦列させてワイヤに外嵌するとよい。
【0028】
図5及び図8に示すように、第1フェンス211は、ベーリング海峡Bを閉鎖した海氷IBの太平洋側の壁面にブイ2が取り付けられた背面側を対向させて設置し、第2フェンス212は、第1フェンス211と適宜の間隔を設けて設置して両フェンス211,212の間に海水の入る領域26を設ける。図4の例では、フェンス211,212はブイ2に加えて支柱23を用いて設置しているが、支柱を用いずにブイのみで設置してもよい。支柱23は、図4(a)に示すように、海底が軟弱な場合は、下端が尖るよう形成して海底に突き立て、海底が強固な場合には、下端に重石23aを設けて設置するとよい。尚、図8の例では、フェンス本体4が海氷IBにぶつからないようフェンス211をブイ2が北極海側(海氷IB側)になるよう設置しているが、ブイ2が太平洋側になるよう設置してもよい。
【0029】
このように、海氷の太平洋側にフェンス211,212を設置することにより、フェンス211,212が北極海側へ流されることを抑制できる。また、海氷に海水が当たることを抑制して海氷が融ける時期を遅らせることができ、当該海氷によって海峡を流れる海水を遮断する期間を延長することができる。
【0030】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る北極圏海氷INの融解抑制方法を示している。図9の例も、第1フェンス311と、第2フェンス312と2つのフェンスを並列に並べる場合を示している。第1フェンス311、及び第2フェンス312は、図9に示すように、大型ブイ2と、小型ブイ3と、フェンス本体4と、網35とを備えている。第3実施形態では、図9に示すように、海中に並べたブイ2,3に、まず網35を取り付ける。網35の下端には、錘35aが設けられる。その後、図9(b)に示すように、網35の太平洋側にフェンス本体4を取付ける。このように、フェンス本体4の北極海側に網35を設けることにより、海流によりフェンス311が流れることを抑制することができる。
尚、網35は、海水の流れの強い場所にのみ設置してもよい。
【0031】
第3実施形態では、5月ごろベーリング海峡が海氷で閉ざされているうちに第2実施形態と同様(図8参照)、海氷の太平洋側の側面に沿って、フェンス311,312を設置する。そのあと、この海氷が夏の間一端融解した後も、続けて設置を継続し、第1実施形態(図2参照)のように、海氷が融解したベーリング海峡をフェンス311,312で封鎖し続ける。そして、9月から10月にかけて海氷が再凍結するまでにフェンス311,312を撤去する。このように、海氷が再凍結する前に一旦フェンスを撤去することで再凍結する海氷でフェンスが破損することを防止できる。
【0032】
上記の各実施形態において、フェンス本体4は、図10(a)に示すように、孔4gを備えていてもよい。また、図10(b)のようにフェンス本体4の下端にのれん4hを設けてもよい。こうすることにより、フェンス本体4に衝突する水流の圧力を抑制することができる。孔4gの形状としては、円形や四角形、六角形の他、公知の形状を適宜用いることができる。
【0033】
本発明の北極圏の海氷の融解防止方法は、上記の実施形態に限らず、本発明の趣旨の範囲内であれば、各種の変更が可能である。例えば、フェンスを支持するブイを、3種類以上用いてもよいし、ブイを用いず支柱のみでフェンスを設置してもよい。また、ブイの代わりに船を用いることもできる。上記各実施形態のフェンスや設置方法を交換して実施可能である他、上記以外の公知のフェンスや設置方法を適宜使用することができる。フェンスの設置場所は、プリンスオブウェールズ岬とテジニョーフ岬の間以外の場所に架け渡してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の北極圏海氷の融解抑制方法は、低コストで地球環境に大きな影響を及ぼすことなく北極圏の海氷の融解を抑制することができるため、地球環境保全の手段として好適である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10