【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、トリメトキシシリル基及びウレタン結合を有
し、主鎖骨格がポリオキシプロピレンであり且つ25℃における粘度が1,000〜30,000mPa・sであるポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部、加水分解性シリル基を有し、主鎖骨格にエチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートの共重合体、又はメチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートの共重合体を
含み、且つ重量平均分子量が2,000〜50,000である(メタ)アクリレート系重合体(B)10〜100重量部、及びジオクチル錫化合物を含有することを特徴とする。
【0010】
[ポリオキシアルキレン系重合体(A)]
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、トリメトキシシリル基(-Si(OCH
3)
3)を有してい
る。
【0011】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格としては、
ポリオキシプロピレンが挙げられる
。ポリオキシプロピレンによれば、硬化性組成物の硬化速度を向上できるだけでなく、硬化性組成物の接着性を向上させることもでき、さらに硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物に優れた柔軟性及び伸び性を付与することができる。
【0012】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、トリメトキシシリル基の他に、ウレタン結合をさらに有してい
る。ウレタン結合は、トリメトキシシリル基の加水分解反応及び脱水縮合反応を促進させて、硬化性組成物の硬化速度を向上させることができる。さらに、ウレタン結合は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)に極性を付与することができ、これにより硬化性組成物の接着性を向上させることも可能となる。
【0013】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、主鎖骨格の両末端にウレタン結合を介してトリメトキシシリル基を有していることが好ましい。トリメトキシシリル基の近傍にウレタン結合を有しているポリオキシアルキレン系重合体(A)によれば、硬化性組成物の硬化速度及び接着性のさらなる向上が図れる。
【0014】
主鎖骨格の両末端にウレタン結合を介してトリメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)は、例えば、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマーと、トリメトキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより得られる。
【0015】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマーとしては、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシブチレン)グリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)グリコール、及びポリ(オキシプロピレン)−ポリ(オキシブチレン)グリコールなどが挙げられる。
【0016】
トリメトキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物としては、1−イソシアネートメチルトリメトキシシラン、2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートブチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートペンチルトリメトキシシラン、及び1−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0017】
ポリオキシアルキレン鎖の両末端にウレタン結合を介してトリメトキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)を合成するには、ポリオキシアルキレン鎖の両末端にヒドロキシ基を有するプレポリマーと、トリメトキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物とを混合して混合物を得、この混合物を撹拌して上記プレポリマーのヒドロキシ基と、上記化合物のイソシアネート基とを反応させてウレタン結合を形成させることにより行うことができる。また、上記混合物を加熱しながら撹拌することにより、反応を促進させることができる。
【0018】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、5,000〜50,000が好ましく、8,000〜30,000がより好ましく、8,000〜20,000が特に好ましい。数平均分子量が5,000以上であるポリオキシアルキレン系重合体(A)によれば、硬化性組成物の硬化物の接着力、機械的強度及び伸び性をさらに向上させることができる。また、数平均分子量が50,000以下であるポリオキシアルキレン系重合体(A)によれば、硬化性組成物の粘度を低く維持することができ、これにより硬化性組成物の優れた塗工性を確保することができる。
【0019】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量の測定は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて、ポリスチレンによって換算することにより行われる。具体的には、ポリオキシアルキレン系重合体(A)6〜7mgを試験管に供給した後、試験管に0.05重量%のジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含むオルトジクロロベンゼン(o−DCB)溶液を加えて、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の濃度が1mg/mLである希釈液を作製する。
【0020】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って希釈液を振とうさせて、ポリオキシアルキレン系重合体(A)をo−DCB溶液に溶解させて測定試料を得る。この測定試料を用いてGPC法によってポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量を測定することができる。
【0021】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)における数平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0022】
なお、後述する(メタ)アクリレート系重合体(B)の重量平均分子量の測定も、上述したポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量の測定方法と同じ方法により行うことができる。
【0023】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の25℃における粘度は、1,000〜30,000mPa・s
であるが、4,000〜25,000mPa・s
が好ましく、5,000〜15,000mPa・sが
より好ましい。粘度が1,000mPa・s以上であるポリオキシアルキレン系重合体(A)によれば、硬化性組成物の硬化物の接着力、機械的強度及び伸び性をさらに向上させることができる。また、粘度が30,000mPa・s以下であるポリオキシアルキレン系重合体(A)によれば、硬化性組成物の粘度を低く維持することができ、これにより硬化性組成物の優れた塗工性を確保することができる。
【0024】
なお、本発明において、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の25℃における粘度は次の通りにして測定することができる。先ず、ポリオキシアルキレン系重合体(A)を25℃にて24時間に亘って放置し、その後、JIS K7117−1に準拠して、B型粘度計を用いて、回転数10rpmの条件下にてポリオキシアルキレン系重合体(A)の粘度を測定することができる。
【0025】
トリメトキシシリル基を含有するポリオキシアルキレン系重合体(A)は、市販されている製品を用いることができる。例えば、主鎖骨格がポリオキシプロピレンであり、主鎖骨格の末端にトリメトキシシリル基を有し且つウレタン結合を有していないポリオキシアルキレン系重合体としては、旭硝子株式会社製 エクセスターA2551;株式会社カネカ製 サイリル SAX510、SAX520、SAX530、SAX580が挙げられる。また、主鎖骨格がポリオキシプロピレンであり、主鎖骨格の末端にウレタン結合を介してトリメトキシシリル基を有しているポリオキシアルキレン系重合体としては、バイエル社製 Desmoseal(登録商標)XP2749が挙げられる。
【0026】
[(メタ)アクリレート系重合体(B)]
(メタ)アクリレート系重合体(B)は加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基とは、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合している基である。(メタ)アクリレート系重合体(B)によれば、ポリオキシアルキレン系重合体(A)による硬化性組成物の硬化速度の向上を阻害することなく、硬化性組成物の接着性を向上させることができる。
【0027】
加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、及びアルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0028】
なかでも、加水分解性シリル基としては、硬化性組成物の硬化速度を向上させることができることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、及びジエトキシメチルシリル基などのジメトキシシリル基;並びに、メトキシジメトキシシリル基、及びエトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0029】
(メタ)アクリレート系重合体(B)の主鎖骨格は、エチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートの共重合体、又はメチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートの共重合体を含む。このような(メタ)アクリレート系重合体(B)によれば、ポリオキシアルキレン系重合体(A)による硬化性組成物の硬化速度の向上を阻害することなく、硬化性組成物の接着性をより向上させることができる。なかでも、(メタ)アクリレート系重合体(B)の主鎖骨格は、エチルアクリレート及びn−ブチルアクリレートの共重合体であることが好ましい。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0030】
(メタ)アクリレート系重合体(B)の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法が挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリレート系重合体(B)への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、エチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートの共重合体、又はメチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレートの共重合体に分子中に不飽和基を導入した後、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法などを利用することができる。
【0032】
(メタ)アクリレート系重合体(B)の重量平均分子量は、2,000〜50,000
であるが、2,500〜10,000
が好ましく、2,500〜5,000が
より好ましい。重量平均分子量が2,000以上である(メタ)アクリレート系重合体(B)によれば、硬化性組成物の硬化物の接着力、機械的強度及び伸び性をさらに向上させることができる。また、重量平均分子量が50,000以下である(メタ)アクリレート系重合体(B)によれば、硬化性組成物の粘度を低く維持することができ、これにより硬化性組成物の優れた塗工性を確保することができる。
【0033】
硬化性組成物中における(メタ)アクリレート系重合体(B)の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、10〜100重量部であるが、10〜60重量部が好ましく、30〜50重量部がより好ましい。硬化性組成物中における(メタ)アクリレート系重合体(B)の含有量を10重量部以上とすることにより、硬化性組成物の接着性を十分に向上させることができる。また、硬化性組成物中における(メタ)アクリレート系重合体(B)の含有量を100重量部以下とすることにより、硬化性組成物の高い硬化速度を確保することができる。
【0034】
[シラノール縮合触媒]
本発明の硬化性組成物は、シラノール縮合触媒として、ジオクチル錫化合物を含有している。シラノール縮合触媒とは、シラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。なお、シラノール基とは、ケイ素原子に直接結合しているヒドロキシ基(≡Si−OH)を意味する。シラノール基は、トリメトキシシリル基などの加水分解性シリル基が加水分解することにより形成される。
【0035】
ジオクチル錫化合物としては、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫モノデカネート、ジオクチル錫ビスエトキシシリケート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫モノデカネート、ジオクチル錫ビスエトキシシリケート、ジオクチル錫オキサイドとアルコキシシラン化合物との反応物、及びジオクチル錫ジカルボキシレートとアルコキシシラン化合物との反応物も挙げられる。これらのジオクチル錫化合物によれば、硬化性組成物の接着性や貯蔵安定性を向上させることができる。ジオクチル錫化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0036】
ジオクチル錫オキサイドとアルコキシシラン化合物との反応物において、アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、及びテトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン及びその加水分解物;トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシプロピルシラン、トリエトキシイソプロピルシラン、トリエトキシブチルシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン及びその加水分解物;ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジエトキシジプロピルシラン、ジエトキシジイソプロピルシラン、及びジエトキシジブチルシランなどのジアルキルジアルコキシシラン及びその加水分解物;エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、エトキシトリプロピルシラン、エトキシトリイソプロピルシラン、及びエトキシトリブチルシランなどのトリアルキルモノアルコキシシラン及びその加水分解物などが挙げられる。
【0037】
ジオクチル錫オキサイドとアルコキシシラン化合物との反応物は、ジオクチル錫オキサイドにおける−Sn(=O)−で示される基と、アルコキシシラン化合物においてケイ素原子に結合しているアルコキシ基とが反応することによって形成される化合物である。ジオクチル錫オキサイドとアルコキシシラン化合物との反応物として、具体的には、ジオクチル錫オキシビスエトキシシリケート、ジオクチル錫オキシビスメトキシシリケート、ジオクチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、及びジオクチル錫ビス(トリメトキシシリケート)などが挙げられる。
【0038】
ジオクチル錫ジカルボキシレートとアルコキシシラン化合物との反応物において、ジオクチル錫ジカルボキシレートとしては、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジステアレートなどが挙げられる。また、ジオクチル錫ジカルボキシレートとアルコキシシラン化合物との反応物において、アルコキシシラン化合物としては、ジオクチル錫オキサイドとアルコキシシラン化合物との反応物において上述したアルコキシシラン化合物と同様のものが挙げられる。
【0039】
ジオクチル錫ジカルボキシレートとアルコキシシラン化合物との反応物は、ジオクチル錫ジカルボキシレートにおけるカルボキシレート基と、アルコキシシラン化合物においてケイ素原子に結合しているアルコキシ基とが反応することによって形成される化合物である。ジオクチル錫ジカルボキシレートとアルコキシシラン化合物との反応物として、具体的には、ジオクチル錫オキシビスエトキシシリケート、ジオクチル錫オキシビスメトキシシリケート、ジオクチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジオクチル錫ビス(トリメトキシシリケート)などが挙げられる。
【0040】
なかでも、ジオクチル錫化合物としては、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫オキサイドとアルコキシシラン化合物との反応物が好ましく、ジオクチル錫オキサイドとアルコキシシラン化合物との反応物がより好ましく、ジオクチル錫オキシビスエトキシシリケート、及びジオクチル錫ビス(トリエトキシシリケート)が特に好ましい。
【0041】
硬化性組成物中におけるジオクチル錫化合物の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、1〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。硬化性組成物中におけるジオクチル錫化合物の含有量を上記範囲内とすることによって、硬化性組成物の優れた貯蔵安定性や取り扱い性を維持しつつ、硬化性組成物の硬化速度を向上させることができる。
【0042】
[アミノシランカップリング剤]
本発明の硬化性組成物は、アミノシランカップリング剤をさらに含有していることが好ましい。アミノシランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを有している化合物を意味する。アミノシランカップリング剤を上述した(メタ)アクリレート系重合体(B)と組合せて用いると、これらの相乗効果により、ポリオキシアルキレン系重合体(A)による硬化性組成物の硬化速度の向上を阻害することなく、硬化性組成物の接着性をより向上させることができる。
【0043】
アミノシランカップリング剤として、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらのアミノシランカップリング剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0044】
なかでも、アミノシランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましく挙げられ、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましく挙げられる。これらのアミノシランカップリング剤によれば、(メタ)アクリレート系重合体(B)との相乗効果が得られ易く、硬化性組成物の接着性をより向上させることができる。
【0045】
硬化性組成物中におけるアミノシランカップリング剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。硬化性組成物中におけるアミノシランカップリング剤の含有量を上記範囲内とすることによって、硬化性組成物の優れた貯蔵安定性や取り扱い性を維持しつつ、硬化性組成物の接着性を向上させることができる。
【0046】
[脱水剤]
本発明の硬化性組成物は、脱水剤をさらに含んでいることが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0047】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0048】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、0.5〜20重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましく、7〜12重量部が特に好ましい。硬化性組成物中における脱水剤の含有量を上記範囲内とすることによって、適度な脱水を行うことができ、これにより硬化性組成物の優れた硬化性や接着性を確保することができる。
【0049】
[充填剤]
本発明の硬化性組成物は、充填剤をさらに含んでいることが好ましい。充填剤によれば、機械的強度に優れている硬化物を得ることが可能な硬化性組成物を提供することができる。
【0050】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、及びガラスバルーンなどを挙げることができる。これらの充填剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0051】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシムによれば、機械的強度及び伸び性に優れている硬化物を得ることができ、且つ優れた接着性を有している硬化性組成物を提供することができる。
【0052】
また、炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されていることが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシムが凝集することを抑制することができる。
【0053】
硬化性組成物中における充填剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、1〜700重量部が好ましく、10〜200重量部がより好ましい。硬化性組成物中における充填剤の含有量を上記範囲内とすることによって、硬化性組成物が機械的強度及び伸び性に優れている硬化物を形成することができる。このような硬化物は、接着力に優れる。
【0054】
[耐候安定剤]
本発明の硬化性組成物は、耐候安定剤をさらに含んでいることが好ましい。耐候安定剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び光安定剤が好ましく挙げられる。耐候安定剤は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0055】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。なかでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](融点118℃)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](融点52℃)、及びN,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)](融点158℃)、及び3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル(融点5℃)などが挙げられる。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、BASF社製 IRGANOX(登録商標)1135(融点5℃)などの市販品を用いることもできる。
【0056】
硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.3〜10重量部がより好ましい。
【0057】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。なかでも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、具体的には、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(融点130℃)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(融点139℃)、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール(融点139℃)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール(融点84℃)、及び2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(融点104℃)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、BASF社製 TINUVIN(登録商標)384−2(融点10℃以下)などの市販品を用いることもできる。
【0058】
硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0059】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物(融点10℃以下)、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物(融点135℃)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](融点118℃)、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物(融点63℃)などが挙げられる。
【0060】
硬化性組成物中における光安定剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0061】
耐候安定剤の融点は、10℃以下が好ましく、−20〜10℃がより好ましく、−20〜5℃が特に好ましい。融点が10℃以下である耐候安定剤によれば、硬化性組成物に優れた接着性を付与することができる。
【0062】
なお、複数種の耐候安定剤を用いる場合、耐候安定剤の融点とはそれぞれの耐候安定剤の融点を意味する。本発明において、耐候安定剤の融点は、JIS K0064(1922年)に準拠した目視法により測定された値とする。
【0063】
本発明の硬化性組成物は、上述した成分の他にも、チキソ性付与剤、顔料、染料、及び沈降防止剤などの他の添加剤、並びに溶剤などを含んでいてもよい。他の添加剤や溶媒は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0064】
チキソ性付与剤は、硬化性組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0065】
硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して、0.1〜200重量部が好ましく、1〜150重量部がより好ましい。
【0066】
本発明の硬化性組成物の製造は、トリメトキシシリル基を含有するポリオキシアルキレン系重合体(A)、加水分解性シリル基を含有する(メタ)アクリレート系重合体(B)、ジオクチル錫化合物、並びに必要に応じて他の添加剤及び溶剤をそれぞれ所定の重量比となるように混合する方法により行うことができる。混合は減圧下で行うことが好ましい。
【0067】
本発明の硬化性組成物は、空気中の湿気や、被着体に含まれている湿気によって迅速に硬化し、各種基材に対して優れた接着力を有している硬化物を形成することができる。このような基材としては、特に制限されず、フッ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、及びメラミン樹脂等の合成樹脂を含む合成樹脂板;天然木材、合板、ミディアムデンシティファイバーボード(MDF)パーティクルボード、硬質ファイバーボード、半硬質ファイバーボード、及び集成材等の木材;無機ボード;並びにアルミニウム、鉄、ステンレス、及び鋼板等の金属を含む金属板などが挙げられる。
【0068】
また、基材としては、金属板の表面の少なくとも一部が、合成樹脂によって塗装されてなる合成樹脂塗装金属板も挙げられる。合成樹脂塗装金属板に用いられる合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びフッ素系樹脂などが挙げられる。合成樹脂塗装金属板に用いられる金属板としては、アルミニウム、鉄、ステンレス、及び鋼板等の金属からなる金属板が挙げられる。
【0069】
なかでも、本発明の硬化性組成物は、合成樹脂板や合成樹脂塗装金属板などの基材に好適に用いられる。これらの基材に対して従来の硬化性組成物は接着性が低く、本発明による効果を特に発揮することができる。
【0070】
このように本発明の硬化性組成物は、優れた接着性を有していることから、土木用、建築用、車両用、電気製品用、電子部品用、雑貨用の接着剤、シーリング剤、コーティング剤、シーラント及び目止め剤や、土木用又は建築用基材の被覆剤及びプライマー剤などとして、様々な用途に用いることができる。