(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791825
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−ホルムアミジン塩酸塩の合成方法
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20150917BHJP
A61K 31/506 20060101ALN20150917BHJP
A61P 7/02 20060101ALN20150917BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
C07D471/04 106C
!A61K31/506
!A61P7/02
!C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-545075(P2014-545075)
(86)(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公表番号】特表2015-500248(P2015-500248A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】CN2012085451
(87)【国際公開番号】WO2013086935
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】201110414004.0
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514145707
【氏名又は名称】ファーマブロック (ナンジン) アールアンドディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PHARMABLOCK (NANJING) R&D CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シャオユ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ジンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ミンミン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,シーハン
【審査官】
谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/147809(WO,A1)
【文献】
特表2011−513331(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/147810(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/149921(WO,A1)
【文献】
LI,L. et al,Synthesis of riociguat in the treatment of pulmonary hypertension,CHINESE JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2011年 4月,Vol.21, No.2,p.120-125
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/04
A61K 31/506
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応工程
【化1】
を含む化合物(11)の製造方法において、
反応工程VIIで、炭酸カリウムを添加し;
反応工程VIIIで、亜鉛粉、シアン化亜鉛、1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを添加し;
反応工程Vで、メチルアルコール及びナトリウムメトキシドを添加し;
反応工程VIで、塩化アンモニウム及び酢酸を添加し;
反応工程IXで、塩酸液又は塩酸ガスを添加する方法。
【請求項2】
化合物(9)とフルオロベンジルブロミドと炭酸カリウムのモル比は、1:1.0〜1.5:1.5〜3.0である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
反応工程VIIの反応溶剤は、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドである請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
反応工程VIIIの反応温度は、100〜150℃であり、
反応溶剤は、N,N−ジメチルアセトアミドである請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
反応工程VIIIの化合物(10)とシアン化亜鉛とのモル比は、1:0.7〜1:1.2である請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
反応工程IXの反応溶剤は、メチルターシャルブチルエーテルである請求項1記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学合成方法に関し、特に抗血栓塞栓疾患薬リオシグアト(Riociguat)を合成する重要な中間体である1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−ホルムアミジン塩酸塩の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リオシグアト(Riociguat)は慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)又は肺高血圧症の治療に用いられ、その構造は以下の化学式で示される。
【化1】
非特許文献1には、関連化合物の合成方法が以下の化学式で開示されている。
【化2】
【0003】
1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−ホルムアミジン塩酸塩は、リオシグアト(Riociguat)を合成する重要な中間体である。
【0004】
1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−ホルムアミジン(以下、化合物8という)の塩酸塩化合物(以下、化合物11という)の製造について、特許文献1には、関連化合物の合成方法が以下の化学式で開示されている。
【化3】
【0005】
各反応工程の反応試薬及び収率は以下のように示される。(I)トリフルオロ酢酸(TFA)、1,4−ジオキサン;(II)3−(ジメチルアミノ)アクロレイン、TFA、前記二工程の収率は49.9%であり;(III)アンモニア(NH
3)、メチルアルコール、収率は100%であり;(IV)無水トリフルオロ酢酸、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、収率は100%であり;(V)ナトリウムメトキシド、メチルアルコール(MeOH)、収率は100%であり;(VI)塩化アンモニウム、酢酸(CH
3COOH)、メチルアルコール、収率は76.4%である。
【0006】
前記特許文献1に開示された合成方法には、以下の不都合がある。原料(1)及び原料(2)は購入困難で価格が高く;反応工程(I)及び反応工程(II)の収率が比較的に低く;工程(II)以降の処理にはカラムクロマトグラフィーが必要であり;大規模生産ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0173514号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chem.Med.Chem.2009,4,853−865
【0009】
本発明は、1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−ホルムアミジン塩酸塩(化合物11)の製造方法を開示している。さらに、本発明は、従来の1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−ホルムアミジン塩酸塩の製造収率が低く;大規模生産ができないという技術課題を解決することを目的とする。
【0010】
本発明の製造方法は、以下のように示される。
本発明は、3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジンを原料とし;フルオロベンジルブロミドと反応させて化合物10を得て;前記化合物10をシアン化亜鉛と反応させて化合物6を得て;前記化合物6をナトリウムメトキシド、塩化アンモニウム、酢酸およびメチルアルコールと反応させて化合物8を得て;前記化合物8を塩酸ガスと反応させて1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−ホルムアミジン塩酸塩を得る。
【0011】
前記反応は、以下の化学式で示される。
【0012】
【化4】
【0013】
化学式中、反応工程VIIにおいて、炭酸カリウムを添加し;
反応工程VIIIにおいて、亜鉛粉、シアン化亜鉛、1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh
3)
4)を添加し;
反応工程Vにおいて、メチルアルコール及びナトリウムメトキシドを添加し;
反応工程VIにおいて、塩化アンモニウム及び酢酸を添加し;
反応工程IXにおいて、塩酸液及び塩酸ガスを添加する。
【0014】
化学式中の化合物9とフルオロベンジルブロミドと炭酸カリウムの三者のモル比は、1:1.0〜1.5:1.5〜3.0であることが望ましい。
【0015】
反応工程VIIの反応溶剤は、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)又はジメチルスルホキシドであることが望ましい。さらに、N,N−ジメチルホルムアミドであることが望ましい。
【0016】
反応工程VIIIの反応温度は100〜150℃であり、反応溶剤はN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)であることが望ましい。
【0017】
反応工程VIIIの化合物10とシアン化亜鉛とのモル比は、1:0.7〜1:1.2であることが望ましい。
【0018】
反応工程IXの反応溶剤は、メチルターシャルブチルエーテルであることが望ましい。
【0019】
本発明の製造方法の特徴は、以下のように示される。3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジンを原料とすることにより、原料を安価で容易に入手可能である。第一反応工程において、炭酸カリウム(K
2CO
3)が作用することにより、原料である3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジンをフルオロベンジルブロミドと室温で反応させて化合物10を取得することができ、収率は71.16%であり;第二反応工程では、前記化合物10をシアン化亜鉛と反応させて化合物6を得て、収率は63.7%であり;第三反応工程では、前記化合物6をナトリウムメトキシド、塩化アンモニウム、酢酸、メチルアルコールと反応させて化合物8を得て;第四反応工程では、前記化合物8を塩酸ガスと反応させて1−(2−フルオロベンジル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン−3−ホルムアミジン塩酸塩を得て、前記第三及び第四反応工程の総収率は99%である。本製造方法は、原料を安価で容易に入手可能でき、総収率を大幅に向上させ、反応条件が緩やかであり、大規模生産を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施例1]
化合物10の合成は、以下の化学式で示される。
【0022】
5Lの四つ口フラスコに、400gの3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン(1.63mol、1.0eq)、369gのフルオロベンジルブロミド(1.96mol、1.2eq)、450gのK
2CO
3(3.27mol、1.5eq)が溶解された4LのDMFを添加し、室温で10時間反応させた。TLCで完全反応を検出し、反応液を水中に流入させ、攪拌して大量の灰色固体が析出し、濾過し、PE:EA=5:1で再結晶させ薄い黄色固体を411g得て、収率は71.16%であった。
【0023】
1H NMR(400 MHz,CDC13)δ(ppm):8.62(d,1H),7.85(d,1H),7.27(dd,1H),7.11(dd,1H);6.96−7.08(m,3H),5.82(s,2H)。
【0024】
化合物6の合成は、以下の化学式で示される。
【0026】
10Lの四つ口フラスコに、順に625gの化合物10(1.77mol、1.0eq)、11.8gの亜鉛粉(0.18mol、0.1eq)、49.1gのdppf(0.0885mol、0.05eq)、145.6gのZn(CN
2)(1.24mol、0.7eq)、208gのPd(PPh
3)
4(0.18mol、0.1eq)、7.5LのDMACを添加し、120℃までに加熱し、13時間反応させた。TLCで完全反応を検出し、12LのDCMを添加し、大量の水で洗浄した。水層DCMを抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧蒸留して半分の溶剤を除去し、適量のシリコーン層を通過させ、濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、濃縮して272gの薄い黄色固体を得た。収率は63.7%であった。
【0027】
1H NMR(400 MHz,CDC13)δ(ppm):8.73(d,1H);8.23(dd,1H);7.39(dd,1H);7.26−7.33(m,2H);7.03−7.19(m,2H),5.83(s,2H)。
【0028】
化合物8の合成は、以下の化学式で示される。
【0030】
10Lの四つ口フラスコに、919.7gの化合物6(3.646mol、1.0eq)、7LのMeOHを添加し、攪拌して295gのMeONa(5.469mol、1.5eq)を添加し、室温で2時間攪拌し、TLCで原料が既に消失し、且つ完全に中間体7に反応したことを検出し、329gのCH
3CO
2H(5.469mol、1.5eq)、293gのNH
4CL(5.469mol、1.5eq)を添加し、加熱逆流して一夜反応させ、TLCで完全反応を検出し、温度を下げ、大量の固体を析出させ、濾過し、DCMで洗浄した。取得した981gの白色固体は化合物8であり、前記化合物8は次の反応工程に直接用いた。
【0031】
化合物11の合成は、以下の化学式で示される。
【0033】
5Lのメチルターシャルブチルエーテルに981.0gの化合物8(3.646mol、1.0eq)を添加し、攪拌し、サスペンションとなり、HCLガスを約2.5時間添加し、濾過し、DCMで洗浄し、濾過して乾燥させ、1103.7gの白色固体を得た。前記二工程の総収率は99.0%であった。純度は99%であった。
【0034】
1H NMR(400MHz,D2O)δ(ppm):9.58(d,4H);8.77(t,1H);8.65(d,1H);7.54(dd,1H);7.41(m,1H);7.30(m,2H);7.16(t,1H)5.90(s、2H)。
【0035】
[実施例2]
化合物10の合成は、以下の化学式で示される。
【0037】
1Lの四つ口フラスコに、40gの3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン(0.163mol、1.0eq)、86.25gのフルオロベンジルブロミド(0.245mol、1.5eq)、45gのK
2CO
3(0.327mol、1.5eq)を溶解した500mLのDMSOを添加し、室温で10時間反応させた。TLCで完全反応を検出し、濃縮した後、水の中に流入させ、攪拌して大量の灰色固体が析出し、濾過し、PE:EA=5:1で再結晶させ薄い黄色固体を404g得た。収率は69.5%であった。
【0038】
1H NMR(400MHz,CDC13)δ(ppm):8.62(d,1H)、7.85(d,1H)、7.27(dd,1H)、7.11(dd,1H);6.96−7.08(m,3H)、5.82(s、2H)。
【0039】
化合物6の合成は、以下の化学式で示される。
【0041】
10Lの四つ口フラスコに、順に62.5gの化合物10(0.177mol、1.0eq)、1.18gの亜鉛粉(0.018mol、0.1eq)、4.91gのdppf(0.00885mol、0.05eq)、2.50gのZn(CN)
2(0.212mol、1.2eq)、20.8gのPd(PPh
3)
4(0.018mol、0.1eq)、750mLのDMACを添加し、150℃までに加熱し、10時間反応させる。TLCで完全反応を検出し、1LのDCMを添加し、大量の水で洗浄した。水層DCMを抽出し、有機相を合併し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧蒸留して半分の溶剤を除去し、適量のシリコーン層に通過させ、濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、濃縮して27.2gの薄い黄色固体を得た。収率は63.7%であった。
【0042】
1H NMR(400MHz,CDC13)δ(ppm):8.73(d,1H);8.23(dd,1H);7.39(dd,1H);7.26−7.33(m,2H);7.03−7.19(m,2H);5.83(s、2H)。