(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5791835
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】回転運動伝達装置及びそれを用いた発電機
(51)【国際特許分類】
F16H 49/00 20060101AFI20150917BHJP
F03D 11/02 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
F16H49/00 A
F03D11/02
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-18215(P2015-18215)
(22)【出願日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515030428
【氏名又は名称】堀 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100194456
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 勇
(72)【発明者】
【氏名】堀 博一
【審査官】
増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−72764(JP,A)
【文献】
特開2004−301087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
F03D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の回転に応じて出力軸を回転させる回転運動伝達装置において、
前記出力軸を有している筒状体と、
前記筒状体が回転可能なように、前記出力軸を挟んで向かい合って配置される一対の第1、第2棒磁石と、
前記入力軸の回転に伴って前記第1、第2棒磁石を交互に前記筒状体から離す操作部と、を備えており、
前記筒状体の外周面には、軸方向長さの中点にある始点から前記出力軸を挟んで反対側にある両端に向かって並べられ、第1、第2棒磁石の両端に引き寄せられる引力が作用するように極性が設定されている複数の磁石と、当該外周面の前記複数の磁石の無い側に前記両端から前記始点に向かって並べられ、第1、第2棒磁石の両端から離れようとする斥力が作用するように極性が設定されている複数の磁石とを有しており、
前記操作部によって、前記第1棒磁石が前記筒状体から離れている間に前記第2棒磁石が前記引力及び斥力の作用によって前記筒状体を予め定めた向きに半回転させ、前記第2棒磁石が前記筒状体から離れている間に前記第1棒磁石が前記引力及び斥力の作用によって前記筒状体を前記予め定めた向きに半回転させる動作を繰り返し、これによって前記筒状体を一回転させて前記入力軸の回転運動を前記出力軸に伝達させる、ことを特徴とする回転運動伝達装置。
【請求項2】
前記外周面に並べられている複数の磁石の軸が、前記筒状体の外周面に接する向きで、前記一対の棒磁石に対して30度から60度の間の角度に配置されている請求項1に記載の回転運動伝達装置。
【請求項3】
外力を受けて回転される羽根車と、
前記羽根車の回転軸に連結された前記入力軸を有している、請求項1又は請求項2に記載の回転運動伝達装置と、
前記回転運動伝達装置の出力軸に接続された発電モーターと、を備えている発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸に与えられた回転運動を出力軸に伝達する回転運動伝達装置に関し、特に、当該回転運動伝達装置を用いた発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力により回転される羽根車と、当該羽根車の回転軸の回転に伴い発電を行う発電装置と、単位時間当たりの回転軸の回転数が制限値を超えた場合、前記発電装置保護のために当該回転軸の回転数を抑えるブレーキ機構とを備えた発電機が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−231765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ブレーキ機構を有していても、台風又は爆弾低気圧の発生により生じる突風及び強風によって、羽根車が壊される被害が発生している。
【0005】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、発電機などで用いることができ、上記羽根車が停止状態から急に高速回転されることによって発電装置に与えられる高負荷、上記羽根車が想定値以上に高速に回転することによって発電装置に与えられる過剰な負荷を、ブレーキ機構を用いることなく抑制できる回転運動伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、入力軸の回転に応じて出力軸を回転させる回転運動伝達装置において、前記出力軸を有している筒状体と、前記筒状体が回転可能なように、前記出力軸を挟んで向かい合って配置される一対の第1、第2棒磁石と、前記入力軸の回転に伴って前記第1、第2棒磁石を交互に前記筒状体から離す操作部と、を備えており、前記筒状体の外周面には、軸方向長さの中点にある始点から前記出力軸を挟んで反対側にある両端に向かって並べられ、第1、第2棒磁石の両端に引き寄せられる引力が作用するように極性が設定されている複数の磁石と、当該外周面の前記複数の磁石の無い側に前記両端から前記始点に向かって並べられ、第1、第2棒磁石の両端から離れようとする斥力が作用するように極性が設定されている複数の磁石とを有しており、前記操作部によって、前記第1棒磁石が前記筒状体から離れている間に前記第2棒磁石が前記引力及び斥力の作用によって前記筒状体を予め定めた向きに半回転させ、前記第2棒磁石が前記筒状体から離れている間に前記第1棒磁石が前記引力及び斥力の作用によって前記筒状体を前記予め定めた向きに半回転させる動作を繰り返し、これによって前記筒状体を一回転させて前記入力軸の回転運動を前記出力軸に伝達させる、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の回転運動伝達装置は、前記外周面に並べられている複数の磁石の軸が、前記筒状体の外周面に接する向きで、前記一対の棒磁石に対して30度から60度の間の角度に配置されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の発電機は、外力を受けて回転される羽根車と、前記羽根車の回転軸に連結された前記入力軸を有している、前記いずれかの回転運動伝達装置と、前記回転運動伝達装置の出力軸に接続された発電モーターと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入力軸が停止状態から急に高速回転された場合、または入力軸が想定値以上に高速に回転された場合、操作部によって操作される一対の棒磁石の動きに筒状体は追随できず、いわゆる脱調状態となる。すなわち、一対の棒磁石及び筒状体は、急に高い負荷が印加された時に出力軸への回転運動の伝達を自動でキャンセルする機能を有する。これにより、出力軸に伝えられる回転運動を抑えるために、入力軸に与えられた回転運動を減速する必要を無くし、入力軸又は当該入力軸に連結される羽根車が壊れるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明の回転運動伝達装置を備えた発電機の斜視図、(b)は前記発電機の構成図。
【
図2】同回転運動伝達装置の構成を示す分解斜視図であり、同回転運動伝達装置の操作部によって、一対の棒磁石の両方が筒状体を挟む位置にある状態を示す斜視図。
【
図3】同回転運動伝達装置の操作部によって、一方の棒磁石が筒状体から離れた位置にある状態を示す斜視図。
【
図4】同回転運動伝達装置の操作部によって、一対の棒磁石の両方が筒状体を挟む位置にある状態を示す斜視図。
【
図5】同回転運動伝達装置の操作部によって、他方の棒磁石が筒状体から離れた位置にある状態を示す斜視図。
【
図6】筒状体の外周面に埋め込まれている複数の磁石の状態を説明するため、同筒状体の外周面を展開して表した展開図。
【
図7】(a)は一方の棒磁石を筒状体から引き離す際に、当該筒状体外周面に埋め込まれている複数の磁石と他方の棒磁石との間に作用する引力を示す上面図、(b)は(a)の状態を下側から見た底面図、(c)(d)は(a)に示す筒状体及び一対の棒磁石を矢印C方向から見た側面図。
【
図8】(a)は他方の棒磁石を筒状体から引き離す際に、当該筒状体外周面に埋め込まれている複数の磁石と他方の棒磁石との間に作用する引力を示す上面図、(b)は(a)の状態を下側から見た底面図、(c)(d)は(a)に示す筒状体及び一対の棒磁石を矢印E方向から見た側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、水(川水、海水)、風、蒸気、空気、粒状物等の流体による外力で回る羽根車に連結されている入力軸の回転に応じて、発電モーターに連結されている出力軸を回転させる回転運動伝達装置に関し、前記出力軸を有している筒状体と、前記筒状体が回転可能なように、前記出力軸を挟んで向かい合って配置される一対の第1、第2棒磁石と、前記入力軸の回転に伴って前記第1、第2棒磁石を交互に前記筒状体から離す操作部と、を備えている。前記筒状体の外周面には、軸方向長さの中点にある始点から前記出力軸を挟んで反対側にある両端に向かって並べられ、第1、第2棒磁石の両端に引き寄せられる引力が作用するように極性が設定されている複数の磁石と、当該外周面の前記複数の磁石の無い側に前記両端から前記始点に向かって並べられ、第1、第2棒磁石の両端から離れようとする斥力が作用するように極性が設定されている複数の磁石とを有している。前記操作部によって、前記第1棒磁石が前記筒状体から離れている間に前記第2棒磁石が前記引力及び斥力の作用によって前記筒状体を予め定めた向きに半回転させ、前記第2棒磁石が前記筒状体から離れている間に前記第1棒磁石が前記引力及び斥力の作用によって前記筒状体を前記予め定めた向きに半回転させる動作を繰り返し、これによって前記筒状体を一回転させて前記入力軸の回転運動を前記出力軸に伝達させることを特徴とする。
当該構成を採用する回転運動伝達装置は、入力軸が停止状態から急に高速回転された場合、または入力軸が想定値以上に高速に回転された場合、操作部によって操作される一対の棒磁石の動きに筒状体は追随できず、いわゆる脱調状態となる。すなわち、一対の棒磁石及び筒状体は、急に高い負荷が印加された時に出力軸への回転運動の伝達を自動でキャンセルする機能を有する。これにより、入力軸に与えられた回転運動を抑える必要を無くし、入力軸及び当該入力軸に連結される羽根車が壊れるのを防ぐことができる。
【0012】
本発明の一実施の形態に係る回転運動伝達装置を用いた風力発電機について説明する。
図1(a)に示す風力発電機1は、風力を外力として受けて回転する羽根車2と、羽根車2の回転軸に連結された入力軸を有し、羽根車2の回転によって発電を行う発電部3と、発電部3を支持している支柱4とで構成されている。発電部3で発電された電気は、支柱4、変圧器を含む制御部5、電線6を介して電気を必要とする機器(図示せず)へと出力される。
【0013】
図1(b)に示すように、発電部3は、回転運動伝達装置7と、当該回転運動伝達装置7の出力軸に接続された発電モーター8とで構成されている。回転運動伝達装置7の入力軸9の先端にはフェースギヤ10が取り付けられており、当該フェースギヤ10は羽根車2の回転軸2aの先端に取り付けられている平歯車2bと噛合している。回転運動伝達装置7の出力軸11の先端には平歯車11aが取り付けられており、当該平歯車11aは発電モーター8の回転軸8aの先端に取り付けられている平歯車8bと噛合している。
【0014】
図2に示すように、回転運動伝達装置7は、それぞれ矩形の側壁12a、12b、12c、12dで構成される直方体の本体12を有している。側壁12bには出力軸11用の孔12eが設けられている。側壁12bの構成は、側壁12aと同様の構成となっており、図示及び重複した説明は省略する。本体12の内部には、出力軸11を有している筒状体13と、筒状体13が回転可能なように、出力軸11を挟んで向かい合って配置される一対の棒磁石14、15(第1、第2棒磁石)と、入力軸9の回転に伴って棒磁石14、15を交互に筒状体13から離す操作部16と、を備えている。筒状体13の外周面には、複数の磁石が埋め込まれている(
図6を参照)。
【0015】
棒磁石14、15は、筒状体13に接し、又は筒状体13の近接位置に配置され、かつ、配置されている位置から図中左右方向に離れた位置にスライド移動可能に側壁12a、12bに取り付けられている。詳しくは、棒磁石14、15は、ローラー形状で、矩形の枠14a、15a内に当該枠内においてスライド移動可能に収められているプレート14b、15bに回転可能に取り付けられている。棒磁石14、15は、一端が枠14a、15aに取り付けられ、他端がプレート14b、15bに取り付けられているばね14c、15cの働きによって筒状体13に接し、又は予め定めた近接位置に配置される。本明細書において近接位置とは、棒磁石14、15から筒状体13を回転させるのに必要な磁力が作用する、筒状体13とは非接触の位置、好ましくは略接している位置を意味する。筒状体13が最も回転しやすく、かつ、棒磁石14、15の磁力を最も強く受けることができるからである。
【0016】
棒磁石14、15の磁力を効率よく筒状体13の外周面に埋め込まれている複数の磁石に作用させるには、棒磁石14、15は筒状体13に接しているのが好ましい。棒磁石14、15は、筒状体13に接した時の動摩擦抵抗を低減する目的で、出力軸に平行な軸で回転可能なローラー形状となっている。棒磁石14、15がローラー形状となっていても、棒磁石14、15が筒状体13に強く押し当てられていると、筒状体13が回転しようとする際の摩擦が高くなる。棒磁石14、15を押し当てるばね14c、15cが強い場合、棒磁石14、15が筒状体13に接近できる位置を制限して例えば0〜0.5mm程離れた近接位置に配置する。なお、棒磁石14、15に回転しない円柱状又は四角柱状のものを用いる場合、筒状体13の回転を妨げず、かつ、棒磁石14、15からの磁力によって筒状体13を回転できるという条件を満たす限りにおいて、筒状体13から離れた近接位置、例えば0.1mm〜1mm程離れた近接位置に棒磁石14、15を配置する。
【0017】
操作部16は、入力軸9の回転に伴い回転するカム16aと、当該カム16aが当接して押すことによって、棒磁石14又は棒磁石15を筒状体13から離れた位置にスライド移動させるレバー14d、15dと、を備えている。本図においてレバー14d、15dは、側壁12bに設けられているレバー14e、15eに繋がっている。
図2において、カム16aはレバー14e、15eの何れにも当たっておらず、結果、棒磁石14、15は、筒状体13に接し、又はその近接位置に配置されている。
【0018】
図3に示すように、入力軸9が回転すると、カム16aがレバー14dに当接し、棒磁石14を筒状体13から引き離す。レバー14dによって引き離す位置は、棒磁石14が筒状体13の外周面に埋め込まれている複数の磁石に及ぼしている磁力による引力を減少し、筒状体13が棒磁石15からの磁力による引力及び斥力に応じて回転動作を始める位置よりも離れた位置であればよい。
【0019】
ばね14c、15cの強さと棒磁石14、15の強さは、入力軸9を回転させる力の大きさに応じて設定する。即ち、
図3において入力軸9を回転させる力(想定値)によって、カム16aがレバー14dを押す力が、ばね14cが棒磁石14を筒状体13に押さえつける力と棒磁石14が筒状体13に埋め込まれている複数の磁石を引き寄せる力との合計の力よりも強くなるように、ばね14c、15cの強さと棒磁石14、15の磁力の強さを設定する。さらに、ばね14c、15cの強さは、棒磁石14、15が筒状体13に埋め込まれている複数の磁石からうける斥力に抗して棒磁石14、15を筒状体13に接し、又はその近接位置に配置させる強さであることも必要である。
【0020】
図4に示すように、入力軸9が回転すると、カム16aは再びレバー14d、15dに当たらない位置になり、棒磁石14、15の両方が筒状体13に接し、又はその近接位置に配置される。
【0021】
図5に示すように、入力軸9が更に回転すると、カム16aがレバー15dに当接し、棒磁石15を筒状体13から引き離す。レバー15dによって引き離す位置は、棒磁石15が筒状体13の外周面に埋め込まれている複数の磁石に及ぼしている磁力による引力を減少し、筒状体13が棒磁石14からの磁力による引力に応じて回転動作を始める位置よりも離れた位置であればよい。
【0022】
図6は、筒状体13の外周面13aに埋め込まれている複数の磁石17a〜17dの状態を説明するための展開図である。筒状体13の外周面13aには、出力軸11の方向の長さの中点にある始点P1から前記出力軸を挟んで反対側にある両端P2、P3に向かって並べられ、棒磁石14、15の両端に引き寄せられる引力が作用するように極性(N極、S極)が図示するように設定されている複数の磁石17a、17bを備えている。また、外周面13aには、外周面13aの複数の磁石17a、17bの無い側に両端P2、P3から始点P1に向かって並べられ、棒磁石14、15の両端から離れようとする斥力が作用するように極性が図示するように設定されている複数の磁石17c、17dとを有している。
【0023】
複数の磁石17a〜17dは、短い円柱状の棒磁石であり、外周面に並べられている複数の磁石の軸が、筒状体13の外周面13aに接する向きで、一対の棒磁石14、15に対して30度から60度の間の角度α、好ましくは図示するようにα=45度の角度に配置されている。円柱状の棒磁石17a〜17dを、その軸を外周面13aに垂直な向き(本図に示す展開図において表裏方向)となるように埋め込んだ場合に比べて、筒状体13の回転がスムーズで、カム16aの回転に伴う筒状体13の追随性が良いという実験結果が得られている。
【0024】
棒磁石14、15は、その両端の磁力S又はNが一番強く、中間位置での磁力は両端に比べて弱い。例えば、
図6に示す展開図のように平らな板に複数の磁石17a〜17dを並べる場合を考える。この場合において、図示するような棒磁石18(棒磁石14、15と同じ)を矢印A方向に転がした場合、磁石17c、17dは、棒磁石18の両端を引き寄せる引力を作用し、棒磁石18を矢印方向Aの向きに素早く移動する。位置P2、P3近傍の位置で、磁石17a、17bは棒磁石18に斥力を与える。この結果、棒磁石18は、上記引力と斥力の釣り合う位置、位置P2、P3の近傍位置で止まる。
【0025】
上記構成の回転運動伝達装置7において、入力軸9が回転してカム16aがレバー14d、15dに交互に当接し、棒磁石14、15を交互に筒状体13から離す動作を行う場合の筒状体13の回転の様子を説明する。
【0026】
まず、
図2の状態、すなわち、装置7を上から見た場合に筒状体13に埋め込まれている複数の磁石17a〜17dが
図7(a)(b)に示すように、並んでいる場合を考える。この場合において、
図3の状態、すなわち、
図7(a)に示すように、棒磁石14が太線で示す矢印B方向に引き離された場合、筒状体13の外周面13aに埋め込まれた複数の磁石17c及び17dには棒磁石15に引き寄せられる引力が働き、複数の磁石17a及び17bには棒磁石15から離れようとする斥力が働く。この結果、
図7(c)(d)に示すように筒状体13には矢印C方向から見て時計回りの方向に回転しようとする力が働き、外周面13aの位置P2、P3が棒磁石15近くの位置にくる。このように操作部16は、棒磁石14が筒状体13から離れている間に棒磁石15が前記引力及び斥力の作用によって筒状体13を予め定めた向き(矢印C方向から見て時計回りの向き)に筒状体13を半回転させる。
【0027】
次に、
図4の状態、すなわち、装置7を上から見た場合に筒状体13に埋め込まれている複数の磁石17a〜17dが
図8(a)(b)に示すように、並んでいる場合を考える。この場合において、
図5の状態、すなわち、
図8(a)に示すように、棒磁石15が太線で示す矢印D方向に引き離された場合、筒状体13の外周面13aに埋め込まれた複数の磁石17c及び17dには棒磁石14に引き寄せられる引力が働き、複数の磁石17a及び17bには棒磁石14から離れようとする斥力が働く。この結果、
図8(c)(d)に示すように筒状体13には矢印E方向から見て時計回りの方向に回転しようとする力が働き、外周面13aの位置P2、P3が棒磁石14近くの位置にくる。このように操作部16は、棒磁石15が筒状体13から離れている間に棒磁石14が前記引力及び斥力の作用によって筒状体13を予め定めた向き(矢印E方向から見て時計回りの向き)に筒状体13を半回転させる。この結果、入力軸9の一回転に応じて、筒状体13と、その出力軸11は、一回転する。
【0028】
以上に説明したように、操作部16は、入力軸9の回転に伴って、棒磁石14、15を交互に筒状体13から引き離す動作を繰り返すことにより入力軸9の回転運動を出力軸11に伝達させる。回転運動伝達装置7は、入力軸9の回転方向によらず、出力軸11を予め定めた一方向に回転させる。
【0029】
なお、前述するように筒状体13は、入力軸9の回転に伴って予め定めた一方向に回転するが、より安定した回転を目的として筒状体13の出力軸11に逆回転防止手段として例えばラチェット機構を備えてもよい。
【0030】
上記構成の回転運動伝達装置7は、入力軸9が停止状態から急に高速回転された場合、または入力軸9が想定値以上に高速に回転された場合、操作部16によって操作される一対の棒磁石14、15の動きに筒状体13は追随できず、いわゆる脱調状態となる。すなわち、一対の棒磁石14、15及び筒状体13は、急に高い負荷が印加された時に出力軸11への回転運動の伝達を自動でキャンセルする機能を有する。これにより、出力軸11に伝えられる回転運動を抑えるために、入力軸9に与えられた回転運動を減速する、例えばブレーキ機構を備える必要を無くし、入力軸9又は当該入力軸9に連結される羽根車2が壊れるのを防ぐことができる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、磁石の極性を反転させるなど、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えばカム16aの形状は、図示する物に限られず、その先端に回転ローラーを備えたカムを用いてもよい。この場合、レバー14d、15dとの摩擦が少なくなり、よりスムーズな回転運動の伝達を行うことができる。
【0032】
さらに、棒磁石14、15は、ばね14c、15cの力によって筒状体13寄りの位置に配置されるが、これに限られず、ゴムの引っ張る力によって筒状体13寄りの位置に配置されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の回転運動伝達装置は、風力発電機に限らず、川の流れにより羽根車を回転させる発電機、海岸に打ち寄せる波及び引く波の力により羽根車を回転させる発電機、波の上下動を利用して羽根車を回転させる波力発電機等に用いることができる。また、エンジン式の発電機において、内燃機関の出力軸と回転運動伝達装置の入力軸を連結し、回転運動伝達装置の出力軸を発電モーターに接続する構成を採用することもできる。さらには、発電機に限らず、突発的な急回転、想定外の高速回転が好ましくない事象として発生した場合に、出力軸への回転運動の伝達を自動的にキャンセルする機能を有する回転運動伝達装置として一般に使用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 発電機
2 羽根車
2a 回転軸
2b、8b、11a 平歯車
3 発電部
4 支柱
5 制御部
6 電線
7 回転運動伝達装置
8 発電モーター
8a 回転軸
9 入力軸
10 フェースギヤ
11 出力軸
12 本体
13 筒状体
14、15 棒磁石(第1、第2棒磁石)
14a、15a 枠
14b、15b プレート
14c、15c ばね
14d、14e、15d、15e レバー
16 操作部
16a カム
17a、17b、17c、17d 複数の磁石
18 棒磁石
P1 始点
P2、P3 両端の位置
【要約】 (修正有)
【課題】急に高速回転等された場合に回転運動を伝達しない回転運動伝達装置を提供する。
【解決手段】本発明の回転運動伝達装置7は、出力軸11を有している筒状体13と、筒状体が回転可能なように、出力軸を挟んで向かい合って配置される一対の第1、第2棒磁石14、15と、入力軸9の回転に伴って第1、第2棒磁石を交互に筒状体から離す操作部16とを備え、筒状体の外周面には、軸方向長さの中点にある始点から出力軸を挟んで反対側にある両端に向かって並べられ、第1、第2棒磁石の両端に引き寄せられる引力が作用するように極性が設定されている複数の磁石と、外周面の複数の磁石の無い側に両端から前記始点に向かって並べられ、第1、第2棒磁石の両端から離れようとする斥力が作用するように極性が設定されている複数の磁石とを有している。操作部によって筒状体を一回転させて入力軸の回転運動を出力軸に伝達させる。
【選択図】
図2