【文献】
SAIN, B.,Journal of Scientific and Industrial Research,1982年,Vol.41,pp.431-438
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸触媒と、界面活性剤、脂肪族アルコール、多価アルコール及び芳香族アルコールから選ばれる1種以上の濡らし剤とを接触させたヘミセルロースを含むバイオマス原料に対して、過熱水蒸気を接触させる、フルフラールの製造方法。
前記酸触媒が、硫酸、塩酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、及びレブリン酸から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のフルフラールの製造方法。
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤から選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
前記脂肪族アルコールに対する前記非イオン性界面活性剤の質量比[非イオン性界面活性剤/脂肪族アルコール]が、1/9〜9/1である、請求項6に記載のフルフラールの製造方法。
前記バイオマス原料100質量部(乾燥質量)に対する前記酸触媒の量が0.01質量部以上、20質量部以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
前記バイオマス原料100質量部(乾燥質量)に対する前記濡らし剤の量が0.0001質量部以上、10質量部以下である、請求項1〜9のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
前記バイオマス原料に対する過熱水蒸気の通気量が、バイオマス原料(乾燥質量)1gあたり、0.05ml/min以上、10ml/min以下である、請求項1〜12のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[フルフラールの製造方法]
本発明のフルフラールの製造方法は、酸触媒と、界面活性剤、脂肪族アルコール、多価アルコール及び芳香族アルコールから選ばれる1種以上の濡らし剤とを接触させたヘミセルロースを含むバイオマス原料に対して、過熱水蒸気(SHS:Superheated Steam)を接触させるものである。
本発明者らは、酸触媒の存在下で前記バイオマス原料に対して過熱水蒸気を接触させるフルフラールの効率的な製造方法について検討を行ったところ、従来の方法では酸触媒がバイオマス原料の深部にまで浸透していないために、バイオマス原料の深部において反応が十分に進行せず、収率が低下することを知見した。そこで、本発明者らは、バイオマス原料の深部に対して酸触媒を浸透させる方法について検討を重ねた結果、特定の濡らし剤を用いてバイオマス原料の表面を濡れやすくすることで、溶剤や水を大量に用いることなくバイオマス原料の深部にまで酸触媒を十分に浸透させることが可能となり、このバイオマス原料と過熱水蒸気とを接触させることによりフルフラールの収率が向上することを見出した。以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
<バイオマス原料>
本発明のフルフラールの製造方法で用いるバイオマス原料は、ヘミセルロースを含むものであれば特に限定されず、例えば、草本系バイオマスや木質系バイオマス等が挙げられる。
草本系バイオマスの例としては、農業残渣のバガス、麦わら、稲わら、とうもろこし芯、とうもろこしの穂軸等が挙げられる。ここで、バガスとは、サトウキビの搾汁した後の残渣(ざんさ)を指す。その他、草本系バイオマスは、資源作物として、竹、ススキ、ケナフ、スイッチグラス等が挙げられる。
木質系バイオマスの例としては、廃建材、森林残材、木質チップ、木屑、おが屑、古紙等が挙げられる。木材の種類では、キシロースの含有量が多い観点から、広葉樹系の木材がフルフラールの製造に適している。これらのバイオマス原料は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記バイオマス原料の中でも、原料の価格の観点、及びフルフラールの製造効率の観点から、草本系バイオマスが好ましく、バガス、とうもろこし芯がより好ましい。
なお、本発明に用いるバイオマス原料に含まれるヘミセルロースの含有量は、より効率的にフルフラールを製造する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上である。
【0009】
本発明においては、より効率的にフルフラールを製造する観点から、サイズの大きいバイオマス原料を適宜粉砕機で粉砕して用いることが好ましい。バイオマス原料を粉砕することにより、バイオマス原料の表面積が増加し、酸触媒がバイオマス原料の深部に浸透しやすくなる。
バイオマス原料のサイズの範囲に特に制限はないが、ハンドリング性と反応効率の観点から、サイズの範囲の上限が好ましくは30mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下、より更に好ましくは1mm以下、より更に好ましくは841μm未満、より更に好ましくは707μm未満であり、そして、エネルギー効率とハンドリング性の観点から、サイズの範囲の下限が好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは100μm以上、より更に好ましくは149μm超、より更に好ましくは210μm超、より更に好ましくは250μm超である。ここで、バイオマス原料のサイズの範囲は、バイオマス原料中に含まれるバイオマス原料粒子のサイズの上限値と下限値により定める。バイオマス原料粒子のサイズは、最大長が1mm以上の粒子については定規を用いて目視にて測定して得る。また、最大長が1mm未満の粒子についてはASTM規格の目開きの篩により分級し、目開きXμmの篩を通過した各粒子のサイズをXμm未満とし、通過しない各粒子のサイズをXμm超とする。
【0010】
本発明においては、水分を含んだ状態のバイオマス原料を用いることができるが、水分を含んだバイオマス原料を圧搾、脱水、乾燥等の処理を行い、含水率を調整してから反応原料として用いることもできる。
バイオマス原料の含水率は、バイオマス原料からフルフラールを生成する反応の反応性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上であり、そして、生成したフルフラールの回収効率及び精製効率の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは65質量%以下である。
なお、バイオマス原料の含水率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0011】
バイオマス原料の含水率は、例えば、乾燥設備にバイオマス原料を入れ、バイオマス原料を加熱することにより調整することができる。なお、反応容器にバイオマス原料を入れ、反応容器内で加熱することにより乾燥を行うこともできる。
バイオマス原料の含水率を調節する際のバイオマス原料の加熱温度は、効率的に乾燥させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、バイオマス原料中の糖変性を抑制する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
【0012】
<酸触媒>
本発明の製造方法に用いる酸触媒としては、反応条件である程度の安定性を有するものであれば、有機酸でも無機酸でも用いることができる。
有機酸としては、カルボン酸又はスルホン酸が好ましく、具体的にはギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸等の炭素数7以下のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多価カルボン酸;乳酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸等が挙げられる。
無機酸としては、塩酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸等が挙げられる。
本発明の製造方法に用いる酸触媒のpKaは、反応速度の観点から、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下である。
【0013】
本発明のフルフラールの製造方法においては、揮発性の酸触媒も不揮発性の酸触媒も用いることができる。フルフラール生成反応に用いる製造装置の腐食を抑制する観点から、不揮発性酸触媒が好ましい。
ここで、揮発性の酸触媒とは、常温常圧で揮発する酸触媒を意味し、具体的には25℃における蒸気圧が1kPaより大きいものであり、不揮発性酸触媒とは25℃における蒸気圧が1kPa以下である酸触媒を意味する。
揮発性の酸触媒としては、塩酸、硝酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸が挙げられる。不揮発性酸触媒としては、硫酸、過塩素酸、リン酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、レブリン酸等の有機酸が挙げられる。
これらの中では、フルフラール生成反応を効率的に行う観点から、硫酸、塩酸、及びリン酸から選ばれる無機酸、並びにp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、及びレブリン酸から選ばれる有機酸の1種以上が好ましい。
また、フルフラール生成反応に用いる製造装置の腐食を抑制する観点及びフルフラール生成反応を効率的に行う観点から、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びレブリン酸から選ばれる1種以上がより好ましく、硫酸が更に好ましい。
【0014】
前記バイオマス原料100質量部(乾燥質量)に対する前記酸触媒の量は、フルフラールの収率を向上する観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上、より更に好ましくは1質量部以上、より更に好ましくは2質量部以上、より更に好ましくは4質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上であり、そして、フルフラール生成反応に用いる製造装置の腐食を抑制する観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは8質量部以下である。
【0015】
<濡らし剤>
本発明においては、界面活性剤、脂肪族アルコール、多価アルコール及び芳香族アルコールから選ばれる濡らし剤を用いる。濡らし剤を用いることにより、前記バイオマス原料の表面だけでなく深部にまで前記酸触媒を浸透させることができるため、フルフラールの収率を向上させることができる。
【0016】
(界面活性剤)
前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤を使用することができる。
【0017】
非イオン性界面活性剤としては、下記(1)、(2)、(5)、(6)、(7)、(8)又は(11)に示す化合物等のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤、下記(3)、(4)、(9)又は(10)に示す化合物等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤、下記(12)に示す脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0018】
(1):下記一般式(A1)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル
R
1aO−(EO)
l−R
2a (A1)
(式中、R
1aは炭素数8以上、16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、lはエチレンオキシ基の平均付加モル数であり、3以上、40以下の数を示し、R
2aは水素原子又はメチル基を示す。)
(2):ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(ただし、アルキルは炭素数8以上、16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、エチレンオキシドの平均付加モル数は3以上、40以下である。)
【0019】
(3):(ポリ)グリセリンアルキルエーテル(ただし、アルキルは炭素数8以上、16以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、アルキル基の導入量は1分子あたり1以上、5以下であり、グリセリン平均縮合度は1以上、20以下である。)
(4):(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(ただし、脂肪酸の炭素数は8以上、16以下であり、アルカノイル基の導入量は1分子あたり1以上、5以下であり、グリセリン平均縮合度は1以上、20以下である。)
【0020】
(5):ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(ただし、モノエステル又はジエステルであり、脂肪酸の炭素数は、それぞれ、8以上、16以下であり、エチレンオキシドの平均付加モル数は3以上、40以下である。)
(6):ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ただし、脂肪酸の炭素数は8以上、20以下であり、アルカノイル基の導入量は1分子あたり1以上、3以下であり、エチレンオキシドの平均付加モル数は3以上、40以下である。)
【0021】
(7):ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(ただし、脂肪酸の炭素数は8以上、16以下であり、アルカノイル基の導入量は1分子あたり1以上、3以下であり、エチレンオキシドの平均付加モル数は3以上、40以下である。)
(8):ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(ただし、脂肪酸の炭素数は8以上、16以下であり、アルカノイル基の導入量は1分子あたり1以上、3以下であり、エチレンオキシドの平均付加モル数は3以上、40以下である。)
【0022】
(9):ショ糖脂肪酸エステル(ただし、脂肪酸の炭素数は8以上、16以下であり、アルカノイル基の導入量は1分子あたり1以上、5以下である。)
(10):下記一般式(A2)で示されるアルキルサッカライド
R
3a−O−(G)
p (A2)
(式中、R
3aは炭素数8以上、16以下のアルキル基、Gは炭素数5又は6の還元糖を示し、pは1以上、10以下の数を示す。)
【0023】
(11):下記一般式(A3)で示される化合物
R
4aO−[(PO)
q/(EO)
r]−R
5a (A3)
(式中、R
4aは炭素数6以上、12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、q、rはそれぞれ、プロピレンオキシ基、エチレンオキシ基の平均付加モル数であり、qは1以上、25以下の数、rは0以上、4以下の数を示し、R
5aは水素原子又はメチル基を示す。「/」はPOとEOの配列がランダムでもブロックでもよいことを意味する。r=0の場合、一般式(A3)はポリオキシプロピレンアルキルエーテルを示す。)
(12):脂肪酸アルカノールアミド
【0024】
これらの中では、フルフラールの収率を向上する観点から、前記(3)や(4)等の分子内にグリセリン骨格を有する非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0025】
非イオン性界面活性剤は、疎水性部位として炭素数8以上20以下のアルキル基又はアルケニル基を有することが好ましい。
これらの中では、ポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤、多価アルコール型非イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましく、具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、(ポリ)グリセリンアルキルエーテル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルサッカライド、及びポリオキシプロピレンアルキルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
これらの中では、フルフラールの収率を向上する観点から、具体的にはポリオキシエチレンドデシルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、グリセリンモノデカノエート、ポリエチレングリコールモノドデカノエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ドデシルマンノピラノシド、及びポリオキシプロピレンオクチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート及びドデシルマンノピラノシドから選ばれる1種以上がより好ましく、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル及びドデシルマンノピラノシドから選ばれる1種以上が更に好ましく、2−エチルヘキシルグリセリルエーテルがより更に好ましい。
【0026】
両性界面活性剤としては、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤、及びアルキルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型界面活性剤等が挙げられる。フルフラールの収率を向上する観点から、脂肪酸アミドプロピルベタインが好ましい。
より具体的には入手性の観点から、ドデシルカルボキシメチルヒドロキシイミダゾリウムベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデカン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン及びドデシルヒドロキシスルホベタインから選ばれる1種以上がより好ましく、ドデカン酸アミドプロピルベタインがより更に好ましい。
【0027】
陰イオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の疎水性部位を有する硫酸エステル塩;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩、アシルイセチオネート、アシルメチルタウレート等の疎水性部位を有するスルホン酸塩;高級脂肪酸塩、アルキルエーテル酢酸塩等の疎水性部位を有するカルボン酸塩;アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等の疎水性部位を有するリン酸エステル塩;並びにアシルグルタミン酸誘導体、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体等の疎水性部位を有するアミノ酸塩が挙げられる。これらの塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。
これらの中では、フルフラールの収率を向上する観点から、疎水性部位を有するスルホン酸塩が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩及び内部オレフィンスルホン酸塩から選ばれる1種以上がより好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが更に好ましい。
【0028】
陽イオン性界面活性剤としては、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数12以上28以下の炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、又は1級アミン、2級アミン若しくは3級アミンの鉱酸又は有機酸の塩が挙げられる。
より具体的には、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩が挙げられる。
これらの中では、フルフラールの収率を向上する観点から、第4級アンモニウム塩が好ましく、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、及びアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上がより好ましく、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上が更に好ましく、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドがより更に好ましい。
より具体的には入手性の観点から、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、及びジステアリルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上が好ましく、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドがより好ましい。
これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(脂肪族アルコール)
前記脂肪族アルコールとしては、特に制限はないが、入手性の観点から、炭素数4以上、22以下の脂肪族アルコールが好ましい。炭素数が前記範囲内であれば、バイオマス原料の深部に対する酸触媒の浸透量が増加する。
本発明に用いる脂肪族アルコールの炭素数は、フルフラールの収率を向上する観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下である。
前記脂肪族アルコールとしては、飽和でも不飽和でも、直鎖でも分岐でも、環状構造を有していてもよく、フルフラールの収率を向上する観点から、直鎖のものが好ましく、飽和のものが好ましい。
前記脂肪族アルコールの具体例としては、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、2−エチルヘキサノール、イソデカノール等が挙げられる。これらの中では、フルフラールの収率を向上する観点から、デカノールが好ましい。
これらの脂肪族アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(多価アルコール)
前記多価アルコールとしては、脂肪族多価アルコール及び糖アルコールが挙げられるが、本発明においては、フルフラールの収率を向上する観点から、脂肪族多価アルコールが好ましい。
多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の脂肪族多価アルコール類及びその類縁化合物が挙げられる。これらの中では、フルフラールの収率を向上する観点から、グリセリンが好ましい。
これらの多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(芳香族アルコール)
前記芳香族アルコールとしては特に制限はないが、入手性の観点から、芳香環部位はベンゼン環、ナフタレン環、フラン環が好ましい。また、芳香族アルコールの炭素数は、フルフラールの収率を向上する観点から、好ましくは7以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは9以下である。
前記芳香族アルコールの具体例としては、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、1−フェニル−2−メチル−2−プロパノール、2−プロピル−5−メチルフェノール、2−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−4−(2−プロペニル)フェノール、2−メトキシ−4−(1−プロペニル)−フェノール、4−フェニル−2−メチル−2−ブタノール、5−プロペニル−2−エトキシフェノール、1−フェニル−3−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノール等が挙げられる。これらの芳香族アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記界面活性剤、脂肪族アルコール、多価アルコール及び芳香族アルコールから選ばれる濡らし剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において用いる濡らし剤は、フルフラールの収率を向上する観点から、界面活性剤が好ましく、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び陰イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上がより好ましく、非イオン性界面活性剤が更に好ましい。また、本発明において用いる濡らし剤は、フルフラールの収率を向上する観点から、前記界面活性剤及び前記脂肪族アルコールを併用することが好ましく、非イオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールを併用することがより好ましい。
界面活性剤と脂肪族アルコールとを併用する場合の脂肪族アルコールに対する界面活性剤の質量比[界面活性剤/脂肪族アルコール]は、1/9〜9/1が好ましく、4/6〜8/2がより好ましく、5/5〜7/3が更に好ましい。
非イオン性界面活性剤と脂肪族アルコールとを併用する場合の脂肪族アルコールに対する非イオン性界面活性剤の質量比[非イオン性界面活性剤/脂肪族アルコール]は、1/9〜9/1が好ましく、4/6〜8/2がより好ましく、5/5〜7/3が更に好ましい。
【0033】
前記バイオマス原料100質量部(乾燥質量)に対する前記濡らし剤の量は、フルフラールの収率を向上する観点から、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.0005質量部以上、更に好ましくは0.001質量部以上、より更に好ましくは0.005質量部以上、より更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.3質量部以上であり、そして、製造コストと得られる効果との観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは3質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下である。
【0034】
前記濡らし剤に対する前記酸触媒の質量比[酸触媒/濡らし剤]は、特に制限はないが、フルフラールの収率を向上する観点から、好ましくは1以上、2000以下、より好ましくは5以上、1000以下、更に好ましくは10以上、600以下、より更に好ましくは10以上、500以下である。
【0035】
<酸触媒及び濡らし剤とバイオマス原料との接触>
酸触媒及び濡らし剤とバイオマス原料との接触は、前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液をバイオマス原料に噴霧する方法、前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液にバイオマス原料を浸漬する方法等で行うことができる。酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液をバイオマス原料に噴霧する場合は、バイオマス原料を流動させた状態で行うことが好ましい。前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液にバイオマス原料を浸漬する場合は、所定容器に充填した状態で、前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液を流通することで行うことができる。接触の後、前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液の過剰分を濾過、圧搾、又は遠心分離等の手法で除去してもよい。
酸触媒及び濡らし剤とバイオマス原料との接触は、バイオマス原料の含水率を簡便に調整する観点から、前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液をバイオマス原料に噴霧する方法が好ましい。
【0036】
酸触媒及び濡らし剤とバイオマス原料との接触の順番は特に制限はなく、バイオマス原料にまず酸触媒を接触させた後に濡らし剤を接触させてもよく、まずバイオマス原料に濡らし剤を接触させた後に酸触媒を接触させてもよく、バイオマス原料に酸触媒と濡らし剤とを同時に接触させてもよい。操作の簡便性及び、フルフラール収率の観点から、バイオマス原料に酸触媒と濡らし剤とを同時に接触させることが好ましい。
【0037】
<過熱水蒸気>
本発明においては、前記酸触媒と、前記濡らし剤とを接触させた前記バイオマス原料に対して、過熱水蒸気を接触させる。
本発明における過熱水蒸気は、与えられた圧力における水蒸気の露点よりも高温加熱された状態にある水蒸気を意味する。前記圧力は0.01MPa以上、1MPa以下が好ましく、0.09MPa以上、0.2MPa以下がより好ましく、実質的に大気圧が好ましい。ここで、実質的とは、あえて加圧、又は減圧は行わないが、装置運転のために微加圧、又は微減圧になることを許容することを表す。
過熱水蒸気の一態様として、大気圧下において100℃超に加熱された状態の水蒸気を、常圧過熱水蒸気という。常圧過熱水蒸気は、加圧、減圧等の設備を要さないことから、安価に得ることができる点で好ましい。
過熱水蒸気は例えば、飽和水蒸気を熱交換器を用いて等圧的に加熱することによって得られる。
【0038】
与えられた圧力における水蒸気の露点と実際の水蒸気の温度との差を過熱度という。本発明においてバイオマス原料に対して接触させる過熱水蒸気の過熱度は、フルフラールの生成反応をより効率的に行う観点及び水の凝縮による制御の振れを防止する観点から、好ましくは10K以上、より好ましくは30K以上、更に好ましくは50K以上であり、そして、経済性及び制御しやすさの観点から、好ましくは200K以下、より好ましくは150K以下、更に好ましくは100K以下である。
【0039】
バイオマス原料に対して接触させる過熱水蒸気の温度は、フルフラールの生成反応をより効率的に行う観点から、好ましくは100℃超、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは130℃以上、より更に好ましくは150℃以上であり、そして、製造エネルギーの消費を抑制する観点、及び生成したフルフラールの品質劣化を抑制する観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下である。
また、過熱水蒸気を接触させる際のバイオマス原料の温度は、フルフラールの生成反応における反応性の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、バイオマス原料の変性を抑制する観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下である。
【0040】
本発明の製造方法に用いる過熱水蒸気は窒素、アルゴン、二酸化炭素等の反応に悪影響を及ぼさないガスを含有していてもよいが、留分の捕集効率の観点から、含まないことが好ましい。
バイオマス原料に対する過熱水蒸気の通気量は、フルフラールの生成反応により生成したフルフラールを効率よく回収する観点から、バイオマス原料(乾燥質量)1gあたり、好ましくは0.01ml/min以上、より好ましくは0.05ml/min以上、更に好ましくは0.08ml/min以上であり、そして、製造エネルギーを抑制する観点からバイオマス乾燥質量1gあたり、好ましくは25ml/min以下、より好ましくは20ml/min以下、更に好ましくは10ml/min以下である。
前記通気量の条件下における反応時間としては、反応を十分に進行させる観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは20分以上、より更に好ましくは60分以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは300分以下、より好ましくは240分以下、更に好ましくは200分以下である。
【0041】
<バイオマス原料と過熱水蒸気との接触>
本発明のフルフラールの製造方法において、前記酸触媒及び濡らし剤と接触させたバイオマス原料と過熱水蒸気との接触は、例えば、円筒状の反応容器に前記バイオマス原料を充填した状態で、過熱水蒸気を通気することで行うことができる。円筒容器は水平、垂直あるいは任意の傾きに保持されていてもよい。過熱水蒸気の通気方向は、上方からでも下方からでもよい。
前記酸触媒及び濡らし剤と接触させたバイオマス原料は、あらかじめ接触時の圧力における水蒸気の露点以上の温度に加熱されていることが好ましい。
反応によって生成したフルフラールは、過熱水蒸気と共に円筒容器から排出される。排出されたフルフラールは冷却して凝縮させた後、水と分層させることで、得ることができる。必要に応じて蒸留等の精製を行うことで、所望の純度のフルフラールを得ることができる。
【0042】
[フルフリルアルコールの製造方法]
本発明のフルフリルアルコールの製造方法は、前記本発明の製造方法によりフルフラールを製造し、該フルフラールを水素添加する方法である。
フルフラールに対して水素添加する方法に制限はなく、銅−クロム等の触媒存在下、水素雰囲気下又は水素圧力下にて接触水素添加する方法を挙げることができる。
前記触媒としては、金属触媒、及び炭素又はシリカ担持金属触媒が挙げられる。前記金属触媒、及び炭素又はシリカ担持金属触媒に用いられる金属としては、好ましくは周期表第5族〜11族の金属、より好ましくは第6族〜11族の金属が挙げられる。より具体的な金属触媒としては銅−クロム、ラネーニッケル等が挙げられる。また、より具体的な炭素又はシリカ担持金属触媒としては、パラジウム/炭素、ロジウム/炭素、ルテニウム/炭素、白金/炭素、パラジウム/シリカ、ロジウム/シリカ、ルテニウム/シリカ等が挙げられる。
これらの中では、効率的に反応を行う観点から、好ましくは銅−クロム及びラネーニッケル並びにパラジウム/炭素、ロジウム/炭素、ルテニウム/炭素、白金/炭素、パラジウム/シリカ、ロジウム/シリカ、及びルテニウム/シリカから選ばれる1種以上であり、より好ましくは銅−クロム触媒である。
前記触媒の使用量は、効率的に反応を行う観点から、フルフラール100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
反応温度としては、効率的に反応を行う観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは50℃以上、より更に好ましくは100℃以上であり、原料及び生成物の分解を抑制する観点及び経済性の観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
また、溶媒として、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒を用いて反応を行うことができるが、生産性の観点から無溶媒で反応を行うことが好ましい。
【0043】
上述した実施の形態に関し、本発明は、更に以下のフルフラールの製造方法、フルフリルアルコールの製造方法を開示する。
<1>酸触媒と、界面活性剤、脂肪族アルコール、多価アルコール及び芳香族アルコールから選ばれる1種以上の濡らし剤とを接触させたヘミセルロースを含むバイオマス原料に対して、過熱水蒸気を接触させる、フルフラールの製造方法。
<2>前記バイオマス原料が、好ましくは草本系バイオマス、及び木質系バイオマスから選ばれる1種以上であり、好ましくは草本系バイオマス、より好ましくはバガス、及びとうもろこし芯から選ばれる1種以上である、前記<1>に記載のフルフラールの製造方法。
<3>前記バイオマス原料に含まれるヘミセルロースの含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上である、前記<1>又は<2>に記載のフルフラールの製造方法。
【0044】
<4>前記バイオマス原料を、好ましくは粉砕機で粉砕して用いる、前記<1>〜<3>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<5>前記バイオマス原料のサイズの範囲の上限が、好ましくは30mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下、より更に好ましくは1mm以下、より更に好ましくは841μm未満、より更に好ましくは707μm未満であり、そして、範囲の下限が好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは100μm以上、より更に好ましくは149μm超、より更に好ましくは210μm超、より更に好ましくは250μm超である、前記<1>〜<4>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0045】
<6>前記バイオマス原料の含水率が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは65質量%以下である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0046】
<7>前記酸触媒が、揮発性の酸触媒及び不揮発性の酸触媒から選ばれる1種以上、好ましくは不揮発性酸触媒であり、前記揮発性の酸触媒が、塩酸、硝酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸等の有機酸から選ばれる1種以上であり、前記不揮発性酸触媒が、硫酸、過塩素酸、リン酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、レブリン酸等の有機酸から選ばれる1種以上であり、好ましくは硫酸、塩酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、及びレブリン酸から選ばれる1種以上であり、より好ましくは硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びレブリン酸から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは硫酸である、前記<1>〜<6>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0047】
<8>前記バイオマス原料100質量部(乾燥質量)に対する前記酸触媒の量が、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上、より更に好ましくは1質量部以上、より更に好ましくは2質量部以上、より更に好ましくは4質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは8質量部以下である、前記<1>〜<7>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<9>前記界面活性剤が、好ましくは非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤から選ばれる1種以上である、前記<1>〜<8>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0048】
<10>前記非イオン性界面活性剤が、好ましくは前記(1)、(2)、(5)、(6)、(7)、(8)又は(11)に示す化合物等のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤、前記(3)、(4)、(9)又は(10)に示す化合物等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤、及び前記(12)に示す脂肪酸アルカノールアミドから選ばれる1種以上であり、より好ましくは前記(3)又は(4)等の分子内にグリセリン骨格を有する非イオン性界面活性剤である、前記<9>に記載のフルフラールの製造方法。
【0049】
<11>前記非イオン性界面活性剤が、好ましくはポリオキシエチレンドデシルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、グリセリンモノデカノエート、ポリエチレングリコールモノドデカノエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ドデシルマンノピラノシド、及びポリオキシプロピレンオクチルエーテルから選ばれる1種以上であり、より好ましくは2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート及びドデシルマンノピラノシドから選ばれる1種以上であり、更に好ましくは2−エチルヘキシルグリセリルエーテル及びドデシルマンノピラノシドから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは2−エチルヘキシルグリセリルエーテルである、前記<9>に記載のフルフラールの製造方法。
【0050】
<12>前記両性界面活性剤が、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤、及びアルキルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型界面活性剤等であり、好ましくは脂肪酸アミドプロピルベタイン、より好ましくはドデシルカルボキシメチルヒドロキシイミダゾリウムベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデカン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン及びドデシルヒドロキシスルホベタインから選ばれる1種以上、更に好ましくはドデカン酸アミドプロピルベタインである、前記<9>に記載のフルフラールの製造方法。
【0051】
<13>前記陰イオン性界面活性剤が、好ましくはアルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の疎水性部位を有する硫酸エステル塩;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩、アシルイセチオネート、アシルメチルタウレート等の疎水性部位を有するスルホン酸塩;高級脂肪酸塩、アルキルエーテル酢酸塩等の疎水性部位を有するカルボン酸塩;アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等の疎水性部位を有するリン酸エステル塩;並びにアシルグルタミン酸誘導体、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体等の疎水性部位を有するアミノ酸塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくは疎水性部位を有するスルホン酸塩、更に好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩及び内部オレフィンスルホン酸塩から選ばれる1種以上、より更に好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩、より更に好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである、前記<9>に記載のフルフラールの製造方法。
【0052】
<14>前記陽イオン性界面活性剤が、好ましくはアミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数12以上28以下の炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、又は1級アミン、2級アミン若しくは3級アミンの鉱酸又は有機酸の塩から選ばれる1種以上、より好ましくは第4級アンモニウム塩、更に好ましくはアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、及びアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはアルキルトリメチルアンモニウムクロライド及びジアルキルジメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはアルキルトリメチルアンモニウムクロライドであり、より更に好ましくはドデシルトリメチルアンモニウムクロライドである、前記<9>に記載のフルフラールの製造方法。
【0053】
<15>前記脂肪族アルコールが、好ましくは炭素数4以上、22以下の脂肪族アルコールであり、前記脂肪族アルコールの炭素数が、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下である、前記<1>〜<14>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<16>前記脂肪族アルコールが、好ましくは飽和又は不飽和であり、直鎖、分岐、又は環状構造を有するものであり、より好ましくは直鎖のものであり、更に好ましくは直鎖かつ飽和のものである、前記<1>〜<15>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0054】
<17>前記脂肪族アルコールが、好ましくは1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、2−エチルヘキサノール、及びイソデカノールから選ばれる1種以上であり、より好ましくはデカノールである、前記<1>〜<16>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<18>前記多価アルコールが、好ましくは脂肪族多価アルコール及び糖アルコールから選ばれる1種以上であり、より好ましくは脂肪族多価アルコールであり、具体的に、好ましくはグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、及びソルビトールから選ばれる1種以上の脂肪族多価アルコール類及びその類縁化合物であり、より好ましくはグリセリンである、前記<1>〜<17>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0055】
<19>前記芳香族アルコールが、好ましくは芳香環部位はベンゼン環、ナフタレン環、及びフラン環から選ばれる1種以上であり、芳香族アルコールの炭素数が好ましくは7以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは9以下である、前記<1>〜<18>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0056】
<20>前記濡らし剤が、好ましくは界面活性剤であり、より好ましくは非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び陰イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは非イオン性界面活性剤である、前記<1>〜<19>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<21>前記濡らし剤が、好ましくは前記界面活性剤及び前記脂肪族アルコールを併用したものであり、より好ましくは非イオン性界面活性剤及び脂肪族アルコールを併用したものである、前記<1>〜<20>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0057】
<22>前記界面活性剤と前記脂肪族アルコールとを併用する場合の脂肪族アルコールに対する界面活性剤の質量比[界面活性剤/脂肪族アルコール]が、好ましくは1/9〜9/1、より好ましくは4/6〜8/2、更に好ましくは5/5〜7/3である、前記<21>に記載のフルフラールの製造方法。
<23>前記非イオン性界面活性剤と前記脂肪族アルコールとを併用する場合の脂肪族アルコールに対する非イオン性界面活性剤の質量比[非イオン性界面活性剤/脂肪族アルコール]が、好ましくは1/9〜9/1、より好ましくは4/6〜8/2、更に好ましくは5/5〜7/3である、前記<21>に記載のフルフラールの製造方法。
<24>前記バイオマス原料100質量部(乾燥質量)に対する前記濡らし剤の量が、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.0005質量部以上、更に好ましくは0.001質量部以上、より更に好ましくは0.005質量部以上、より更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは3質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下である、前記<1>〜<23>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0058】
<25>前記濡らし剤に対する前記酸触媒の質量比[酸触媒/濡らし剤]が、好ましくは1以上、2000以下、より好ましくは5以上、1000以下、更に好ましくは10以上、600以下、より更に好ましくは10以上、500以下である、前記<1>〜<24>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<26>前記酸触媒及び前記濡らし剤と前記バイオマス原料との接触が、好ましくは前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液をバイオマス原料に噴霧する方法、又は前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液にバイオマス原料を浸漬する方法、より好ましくは前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液をバイオマス原料に噴霧する方法であり、前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液をバイオマス原料に噴霧する方法の場合は、バイオマス原料を流動させた状態で行うことが好ましく、前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液にバイオマス原料を浸漬する場合は、所定容器に充填した状態で、前記酸触媒及び濡らし剤を含有する水溶液を流通することが好ましい、前記<1>〜<25>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0059】
<27>前記酸触媒及び前記濡らし剤と前記バイオマス原料との接触の順が、好ましくはバイオマス原料に前記酸触媒を接触させた後、濡らし剤を接触させる順、又はバイオマス原料に濡らし剤を接触させた後に酸触媒を接触させる順、バイオマス原料に酸触媒と濡らし剤とを同時に接触させる順のいずれかであり、より好ましくはバイオマス原料に酸触媒と濡らし剤とを同時に接触させる順である、前記<1>〜<26>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<28>前記過熱水蒸気は与えられた圧力における水蒸気の露点よりも高温加熱された状態にある水蒸気を意味し、前記圧力が、好ましくは0.01MPa以上、1MPa以下、より好ましくは0.09MPa以上、0.2MPa以下、更に好ましくは実質的に大気圧である、前記<1>〜<27>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0060】
<29>前記バイオマス原料に対して接触させる前記過熱水蒸気の過熱度が、好ましくは10K以上、より好ましくは30K以上、更に好ましくは50K以上であり、そして、好ましくは200K以下、より好ましくは150K以下、更に好ましくは100K以下である、前記<1>〜<28>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<30>前記バイオマス原料に対して接触させる前記過熱水蒸気の温度が、好ましくは100℃超、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは130℃以上、より更に好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下である、前記<1>〜<29>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0061】
<31>前記過熱水蒸気を接触させる際のバイオマス原料の温度が、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下である、前記<1>〜<30>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0062】
<32>前記バイオマス原料に対する前記過熱水蒸気の通気量が、バイオマス原料(乾燥質量)1gあたり、好ましくは0.01ml/min以上、より好ましくは0.05ml/min以上、更に好ましくは0.08ml/min以上であり、そして、好ましくは25ml/min以下、より好ましくは20ml/min以下、更に好ましくは10ml/min以下である、前記<1>〜<31>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<33>前記通気量の条件下における反応時間が、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは20分以上、より更に好ましくは60分以上であり、そして、好ましくは300分以下、より好ましくは240分以下、更に好ましくは200分以下である、前記<1>〜<32>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
【0063】
<34>前記酸触媒及び前記濡らし剤と接触させた前記バイオマス原料と前記過熱水蒸気との接触が、好ましくは円筒状の反応容器に前記バイオマス原料を充填した状態で、前記過熱水蒸気を通気することで行う方法である、前記<1>〜<33>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<35>前記酸触媒及び前記濡らし剤と接触させたバイオマス原料を、あらかじめ接触時の圧力における水蒸気の露点以上の温度に加熱する、前記<1>〜<34>のいずれかに記載のフルフラールの製造方法。
<36>前記<1>〜<35>のいずれかに記載の製造方法によりフルフラールを製造し、該フルフラールを水素添加するフルフリルアルコールの製造方法。
【0064】
<37>前記フルフラールに対して水素添加する方法が、好ましくは触媒存在下、水素雰囲気下又は水素圧力下にて接触水素添加する方法である、前記<36>に記載のフルフリルアルコールの製造方法。
<38>前記触媒が、好ましくは銅−クロム及びラネーニッケル並びにパラジウム/炭素、ロジウム/炭素、ルテニウム/炭素、白金/炭素、パラジウム/シリカ、ロジウム/シリカ及びルテニウム/シリカから選ばれる1種以上であり、より好ましくは銅−クロム触媒である、前記<37>に記載のフルフリルアルコールの製造方法。
<39>前記触媒の使用量が、フルフラール100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である、前記<37>又は<38>に記載のフルフリルアルコールの製造方法。
【0065】
<40>前記反応温度が、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは50℃以上、より更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である、前記<36>〜<39>のいずれかに記載のフルフリルアルコールの製造方法。
<41>溶媒としてメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒を用いて反応を行うか、又は無溶媒で反応を行う、好ましくは無溶媒で反応を行う、前記<36>〜<40>のいずれかに記載のフルフリルアルコールの製造方法。
【実施例】
【0066】
以下の実施例及び比較例において、特記しない限りは「%」は「質量%」を意味する。
試料の調製に使用した試薬は以下のとおりである。
・硫酸:95%硫酸(Aldrich社製)
・ポリオキシエチレンドデシルエーテル:花王株式会社製「エマルゲン 108」
・2−エチルヘキシルグリセリルエーテル:花王株式会社製
・グリセリンモノデカノエート:太陽化学株式会社製「サンソフト760」
・ポリエチレングリコールモノドデカノエート:花王株式会社製「エマノーン 1112」
・ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート:花王株式会社製「レオドールTW−0120V」
・ドデシルマンノピラノシド:株式会社同仁化学研究所製「ドデシルマンノピラノシド」
・ポリオキシプロピレン(3)オクチルエーテル:花王株式会社製
・ドデカン酸アミドプロピルベタイン:花王株式会社製「アンヒトール20AB」
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:関東化学株式会社製
・ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド:花王株式会社製「コータミン24P」
・デカノール:和光純薬工業株式会社製
・グリセリン:キシダ化学株式会社製試薬特級
・バガス:含水率58%、ヘミセルロース含有量24%:メッシュサイズがASTM規格で250μmの篩によって分級し、250μmのメッシュを通過しないものを得た後、定規を用いて目視にて確認しながら最大長が30mm以上の粒を手で除去したものを原料として使用した。即ち、原料サイズの範囲は250μm超30mm未満であった。
・とうもろこし芯:含水率60%、ヘミセルロース含有量26%:小型粉砕機(フォースミル FM−1(株式会社三商製))で1分間粉砕した後、メッシュサイズがASTM規格で250μmの篩と707μmの篩を用いて分級し、707μmの篩を通過し、250μmの篩を通過しないものを原料として使用した。即ち、原料サイズ範囲は250μm超707μm未満であった。
【0067】
<実施例1>
(試料の調製)
硫酸、イオン交換水、濡らし剤A(デカノール30%、グリセリンモノデカノエート70%)を混合し、硫酸10%、濡らし剤A0.20%とした水溶液A3.2gを用意した。
バガス15.2g(含水率58%)をポリエチレン製広口瓶500mL(アズワン社製)に入れた後、前記水溶液Aを噴霧器で0.8g吹き掛けて1分間混合した。水溶液Aの吹き掛け、及び混合を計4回行うことにより酸触媒及び濡らし剤を接触させたヘミセルロースを含むバイオマス原料(以下、「試料」ともいう)を調製した。
(フルフラールの製造)
反応装置として内径22mmの円筒形のガラス管を用意した。このガラス管に対して調製した試料8gを充填した。次いで、前記ガラス管の貫通方向が垂直になるように恒温槽中に設置した。
恒温槽を170℃に加熱し、前記試料の温度が100℃に達した時点で、170℃の過熱水蒸気をガラス管の下方から1mL/minの流速で180分間流通させた。流通させた蒸気は冷却することにより回収し、HPLC分析によりフルフラールの収率を算出した。結果を表1に示す。
【0068】
フルフラールの収率は、バイオマス原料中のキシラン量をNRELの手法(NREL Laboratory Amalytical Procedure “Determination of Structural Carbohydrates and Lignin in Biomass”参照)により求めた後、バイオマス原料中の全てのキシランがフルフラールに転化した場合を収率100%として計算した。
なお、実際に得られたフルフラールの量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて下記条件により測定し、絶対検量線法により定量した。
【0069】
<HPLC測定条件>
反応留分1.5mLをシリンジフィルターにより濾過してHPLC分析を行った。
・HPLC;株式会社島津製作所製
・カラム;CARBOSep COREGEL-87H 7.8 I.D.×300mm(東京化成工業株式会社製)
・溶離液;0.1%トリフルオロ酢酸水溶液(高速液体クロマトグラフ用トリフルオロ酢酸;和工純薬工業株式会社製)
・カラムオーブン;80℃
・流速;1.0mL/min
・試料注入量;10μL
・検出器;RI
・シリンジフィルター;テルモシリンジ注射針無し中口2.5mL(テルモ株式会社製)と、ディスミック25CS020AS(アドバンテック株式会社製)とを使用
・標準試料;フルフラール(Aldrich社製)
【0070】
なお、バイオマス原料中の含水率は、赤外線水分計を用いて下記条件にて測定した。
<バイオマス原料中の含水率測定条件>
バイオマス原料0.5gを用いて、赤外線水分計(Kett社製「FD−720」)により測定を行った。
・設定乾燥温度;105℃
・測定モード;自動停止モード
・測定終了条件;0.05%
【0071】
<実施例2>
硫酸、イオン交換水、濡らし剤B(ポリエチレングリコールモノドデカノエート50%、デカノール50%)を混合し、硫酸10%、濡らし剤B0.20%とした水溶液Bを用意した。
前記水溶液Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0072】
<実施例3>
硫酸、イオン交換水、濡らし剤C(ポリオキシエチレンドデシルエーテル50%、ポリオキシプロピレン(3)オクチルエーテル50%)を混合し、硫酸10%、濡らし剤C0.20%とした水溶液Cを用意した。
前記水溶液Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0073】
<実施例4>
硫酸、イオン交換水、ポリオキシエチレンドデシルエーテルを混合し、硫酸10%、ポリオキシエチレンドデシルエーテル0.20%とした水溶液Dを用意した。
前記水溶液Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0074】
<実施例5>
硫酸、イオン交換水、デカノールを混合し、硫酸10%、デカノール0.20%とした水溶液Eを用意した。
前記水溶液Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0075】
<実施例6>
硫酸、イオン交換水、グリセリンを混合し、硫酸10%、グリセリン0.20%とした水溶液Fを用意した。
前記水溶液Fを用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0076】
<実施例7>
硫酸、イオン交換水、前記濡らし剤A(デカノール30%、グリセリンモノデカノエート70%)を混合し、硫酸10%、濡らし剤A1.0%とした水溶液Gを用意した。
前記水溶液Gを用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0077】
<実施例8>
硫酸、イオン交換水、前記濡らし剤A(デカノール30%、グリセリンモノデカノエート70%)を混合し、硫酸10%、濡らし剤A0.020%とした水溶液Hを用意した。
前記水溶液Hを用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0078】
<実施例9>
ポリオキシエチレンドデシルエーテルの代わりに2−エチルヘキシルグリセリルエーテルを用いたこと以外は実施例4と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0079】
<実施例10>
ポリオキシエチレンドデシルエーテルの代わりにポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを用いたこと以外は実施例4と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0080】
<実施例11>
ポリオキシエチレンドデシルエーテルの代わりにドデシルマンノピラノシドを用いたこと以外は実施例4と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0081】
<実施例12>
ポリオキシエチレンドデシルエーテルの代わりにドデカン酸アミドプロピルベタインを用いたこと以外は実施例4と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0082】
<実施例13>
ポリオキシエチレンドデシルエーテルの代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いたこと以外は実施例4と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0083】
<実施例14>
ポリオキシエチレンドデシルエーテルの代わりにドデシルトリメチルアンモニウムクロライドを用いたこと以外は実施例4と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0084】
<比較例1>
硫酸、イオン交換水を混合し、硫酸10%とした水溶液Iを用意した。
前記水溶液Iを用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1の結果から明らかなように、本発明の製造方法によれば、高い収率でフルフラールを製造することができる。
【0087】
<実施例15>
原料としてバガスの代わりにとうもろこし芯(含水率60%、ヘミセルロース含有率26%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表2に示す。
【0088】
<比較例2>
原料としてバガスの代わりにとうもろこし芯を用いたこと以外は比較例1と同様にして試料を作成し、フルフラールの製造を行った。結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
<実施例16>
フルフリルアルコールの製造
実施例1で製造されたフルフラールを脱水処理したフルフラール400g、銅−クロム触媒(日揮化学株式会社製)3.2g、水酸化カルシウム(和光純薬工業株式会社製)1.6gを1Lのチタン製オートクレーブ(日東高圧株式会社製)に入れ、水素圧1.5 MPa、170℃、700rpmにて3時間反応を行った。室温に冷却後、加圧濾過により触媒を除去し、フルフリルアルコールを得た。フルフリルアルコールの純度は98%であった。
なお、フルフリルアルコールの純度はAgilent社製のガスクロマトグラフィー分析装置により下記の分析条件でガスクロマトグラフィー分析を行い、全ピーク面積に対するフルフリルアルコールのピーク面積の百分率として求めた。
【0091】
<ガスクロマトグラフィー分析条件>
Column : DB-WAX (30 m×0.25 mm id×0.25μm)
Injection temp.: 230℃
Detector temp. : 230℃(FID)
H
2 flow. : 40 ml/min
Air flow : 450 ml/min
He flow : 45 ml/min
Temperature program:
Initial temp.: 40℃
Initial time : 3 min
Increasing rate : 10℃/min
Final temp. : 230℃
Final temp. : 8 min
Injection volume : 1 μl
Split mode
Split ratio : 15 : 1
Total Flow rate (He): 24.5 ml/min
【課題】ヘミセルロースを含むバイオマス原料からフルフラールを高い収率で製造することができるフルフラールの製造方法、及びフルフリルアルコールの製造方法を提供する。
【解決手段】酸触媒と、界面活性剤、脂肪族アルコール、多価アルコール及び芳香族アルコールから選ばれる1種以上の濡らし剤とを接触させたヘミセルロースを含むバイオマス原料に対して、過熱水蒸気を接触させるフルフラールの製造方法、及び前記製造方法によりフルフラールを製造し、該フルフラールを水素添加するフルフリルアルコールの製造方法。