(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5791839
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】蚊帳
(51)【国際特許分類】
A47C 29/00 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
A47C29/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-45839(P2015-45839)
(22)【出願日】2015年3月9日
【審査請求日】2015年3月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504093700
【氏名又は名称】株式会社ダイワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】行 恵美
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭11−000329(JP,Y1)
【文献】
特開2001−263683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面部と、前記床面部に連なる囲い面部とにより、内部空間が閉塞されてなる蚊帳であって、
前記床面部および前記囲い面部の少なくとも一方にコード線を配線するための配線口が設けられるとともに、前記配線口の位置に、前記配線口を塞ぐように第1の面ファスナーが重ねられて接合されており、
前記第1の面ファスナーは、前記配線口と連通する前記コード線の挿通口を有し、
前記第1の面ファスナーの上面には、前記挿通口および前記挿通口の周辺領域にわたって咬合面が咬み合う第2の面ファスナーが着脱自在に貼り合わされてなる蚊帳。
【請求項2】
前記配線口および前記挿通口は、切り込みである請求項1に記載の蚊帳。
【請求項3】
前記第1の面ファスナーと前記第2の面ファスナーとは、一端において互いに連接されている請求項1または2に記載の蚊帳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面部を備える蚊帳に関し、特に電気コード等のコード線を配線するための配線口を有する蚊帳に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、蚊等の虫から内部に居る人を守るものとして蚊帳が知られている。このような蚊帳の中には、床を這うムカデやゴキブリ等からも内部に居る人を守ることができるように床面部を備えたものがあり、さらには、蚊帳の内部に電灯を出し入れするための挿入口を天面部に備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような蚊帳は、挿入口から虫が侵入するのを防止するため、挿入口に線ファスナーが取り付けられており、電灯のコード線を挿入口の端部に寄せた状態で、線ファスナーを閉じることで、挿入口が閉じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】昭和11年実用新案出願公告第329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コード線の表面が一般的に曲面であるため、上記のように線ファスナーで挿入口を閉じる構成では、線ファスナーおよび挿入口とコード線との接触部分において隙間ができてしまい、コード線の周囲を完全に塞ぐことができなかった。そのため、コード線を配線するための挿入口(配線口)から虫が侵入することを確実に防止することができなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、コード線を配線するための配線口を有する蚊帳であって、コード線の周囲を確実に塞ぐことで、配線口から虫が侵入することを確実に防止することができる蚊帳を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、床面部と、床面部に連なる囲い面部とにより、内部空間が閉塞されてなる蚊帳であって、床面部および囲い面部の少なくとも一方にコード線を配線するための配線口が設けられるとともに、配線口の位置に、配線口を塞ぐように第1の面ファスナーが重ねられて接合されている。第1の面ファスナーは、配線口と連通するコード線の挿通口を有し、第1の面ファスナーの上面には、挿通口および挿通口の周辺領域にわたって咬合面が咬み合う第2の面ファスナーが着脱自在に貼り合わされている。
【0007】
本発明の蚊帳では、第1の面ファスナーに第2の面ファスナーが貼り合わされることで挿通口および挿通口の周辺領域が塞がれている。これにより、配線口および挿通口を通して蚊帳の内部空間に挿通されたコード線は、挿通口から所定の長さが第1の面ファスナーの咬合面と第2の面ファスナーの咬合面との間に挟まれる。このとき、第1の面ファスナーおよび第2の面ファスナーは面状であるため、コード線の表面の曲面に沿ってコード線を挟むことができる。その結果、コード線の周囲に虫の侵入路がなくなるため、蚊帳の内部空間へ虫が侵入することを確実に防止することができる。
【0008】
なお、囲い面部とは、床面部を除く蚊帳の内部空間と外部とを仕切る面を指す。すなわち、天面部を有する柱形の蚊帳であれば、囲い面部は周面部および天面部を指し、天面部を有さない錐形の蚊帳であれば、囲い面部は周面部のみを指す。この点は、本明細書を通じて同義である。
【0009】
好ましい実施形態の蚊帳においては、配線口および挿通口は、切り込みである。これにより、配線口および挿通口が細くなり、より虫の侵入を防止し易くなる。
【0010】
好ましい実施形態の蚊帳においては、第1の面ファスナーと第2の面ファスナーとは、一端において互いに連接されている。これにより、配線口および挿通口にコード線を挿通するために第2の面ファスナーを第1の面ファスナーから外した場合でも、第2の面ファスナーの一端が第1の面ファスナーと連接しているので、第2の面ファスナーが第1の面ファスナーから分離されて紛失されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コード線を配線するための配線口を有する蚊帳において、面ファスナーを利用することでコード線の周囲を確実に塞ぐことができ、配線口から虫が侵入することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の蚊帳の一実施形態を示す一部分を破断した斜視図である。
【
図2】
図1の蚊帳のA部を拡大して示す斜視図で、第1の面ファスナーおよび第2の面ファスナーを取り除いて示す図である。
【
図3】
図1の蚊帳のA部を拡大して示す斜視図で、第2の面ファスナーを第1の面ファスナーから外した状態を示す図である。
【
図4】
図1の蚊帳のA部を拡大して示す斜視図で、第2の面ファスナーを第1の面ファスナーに貼り合わせた状態を示す図である。
【
図5】
図1の蚊帳のA部を拡大して示す斜視図で、コード線を挿通した状態を示す図である。
【
図6】
図1の蚊帳のA部において、配線口の他の実施形態を示す斜視図で、第1の面ファスナーおよび第2の面ファスナーを取り除いて示す図である。
【
図7】
図1の蚊帳のA部において、挿通口および第2の面ファスナーの他の実施形態を示す斜視図で、第2の面ファスナーを第1の面ファスナーから外した状態を示す図である。
【
図8】本発明の蚊帳の他の実施形態を示す一部分を破断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。本実施形態の蚊帳1は、
図1に示すように、矩形状の床面部11と、床面部11の各辺から立ち上がって設けられる周面部121と、周面部121の上端に連なる矩形状の天面部122とから構成されている。蚊帳1は、床面部11、周面部121および天面部122によって、内部空間Sが閉塞されている。本実施形態では、周面部121および天面部122が、床面部11に連なる囲い面部12となる。
【0014】
床面部11、周面部121および天面部122には、虫を通さずに風を通すことができる通気性の良い布地が用いられる。周面部121および天面部122は特に、通気性を良くするためにメッシュ状の布地を用いることが好ましい。一方、床面部11は、床を這う虫との接触を防止するためにメッシュのない布地を用いることが好ましい。蚊帳1は、これらの布地を縫い合わせることによって形成されている。
【0015】
蚊帳1は、天面部122の各角部に、蚊帳1を吊り下げるための吊り具13が取り付けられており、吊り具13を、室内の天井または鴨居等に設けられたフックに引っ掛けることで吊り下げられる。
【0016】
周面部121には、使用者が蚊帳1の内部空間Sに出入するための出入口14が設けられている。出入口14は、周面部121に切り込みを入れることにより形成されており、本実施形態では、略U字状に切り込みが形成されている。出入口14には線ファスナー(図示せず)が設けられており、線ファスナーを開閉することによって、出入口14が開閉される。
【0017】
図2に示すように、床面部11には、コード線Cを配線するための配線口15が設けられている。配線口15は、床面部11に切り込みを入れることによって形成されている。配線口15の大きさは、コード線Cの端部に設けられるプラグまたはコンセントを挿通できる大きさとなっている。
【0018】
図3に示すように、配線口15が設けられる位置には、配線口15を塞ぐように第1の面ファスナー21が重ねて接合されている。具体的には、第1の面ファスナー21は、両面テープ、接着剤等の任意の接着手段を用いて床面部11に貼り付けられる。本実施形態では、両面テープを用いて床面部11に貼り付けた上で、カシメ等の固定具22で固定されている。
【0019】
第1の面ファスナー21には、配線口15と連通し、コード線Cを通すことができる挿通口23が形成されている。本実施形態では、第1の面ファスナー21を床面部11に貼り付けた状態で、床面部11と第1の面ファスナー21とを一緒に切り込みを入れることによって配線口15および挿通口23が形成されている。挿通口23の大きさは、配線口15と同様に、コード線Cの端部に設けられるプラグまたはコンセントを挿通できる大きさとなっている。
【0020】
図4に示すように、第1の面ファスナー21の上面には、挿通口23および挿通口23の周辺領域にわたって咬合面が咬み合う第2の面ファスナー24が着脱自在に貼り合わされている。本実施形態では、第1の面ファスナー21および第2の面ファスナー24は、咬合面がフック面およびループ面の区別のないタイプの面ファスナーを用いて形成されている。具体的には、1枚の長手方向に延びる長方形状の上記面ファスナーを長手方向中央部で折り返し、長手方向中央から一方側を第1の面ファスナー21とし、他方側を第2の面ファスナー24としている。これにより、第2の面ファスナー24は、第1の面ファスナー21と一端において互いに連接されている。
【0021】
コード線Cを蚊帳1の外部から内部空間Sに引き入れる場合、または、コード線Cを蚊帳1の内部空間Sから外部に引き出す場合には、第2の面ファスナー24を第1の面ファスナー21から外し、配線口15および挿通口23にコード線Cを挿通する。そして、
図5に示すように、コード線Cを第1の面ファスナー21上に這わせ、第2の面ファスナー24を第1の面ファスナー21に貼り合わせる。
【0022】
以上のように、本実施形態では、蚊帳1に床面部11が設けられ、内部空間Sが完全に閉塞されることで、床を這う虫が蚊帳1の内部空間Sに侵入することを防止することができる。その上で、配線口15が取り付けられることで、蚊帳1の内部空間Sにおいて、例えば電動ベッド、電気スタンド、扇風機および携帯電話の充電器等を使用する場合でも、容易に電源を確保することができる。これにより、電動ベッドを必要とする人でも、蚊帳1の中で虫を避けて安心して休むことができるし、蚊帳1の内部空間Sで電化製品を利用できるため、蚊帳1の内部空間Sの利便性を高めることができる。さらに、この配線口15は、配線口15と連通する挿通口23を有する第1の面ファスナーで塞がれており、挿通口23および挿通口23の周辺領域が第2の面ファスナー24で塞がれている。これにより、配線口15および挿通口23を通して蚊帳1の内部空間Sに挿通されたコード線Cは、挿通口23から所定の長さが第1の面ファスナー21の咬合面と第2の面ファスナー24の咬合面との間に挟まれる。このとき、第1の面ファスナー21および第2の面ファスナー24は面状であるため、コード線Cの表面の曲面に沿ってコード線Cを挟むことができる。その結果、コード線Cの周囲に虫の侵入路がなくなるため、蚊帳1の内部空間Sへ虫が侵入することを確実に防止することができる。さらに、本実施形態では、配線口15および挿通口23が切り込みであるため、配線口15および挿通口23が細くなり、より虫の侵入を防止し易くなる。
【0023】
また、本実施形態では、第1の面ファスナー21と第2の面ファスナー24とは、一体的に形成されており、一端において互いに連接されている。これにより、配線口15および挿通口23にコード線Cを挿入するために第2の面ファスナー24を第1の面ファスナー21から外した場合でも、第2の面ファスナー24の一端が第1の面ファスナー21と連接しているので、第2の面ファスナー24が第1の面ファスナー21から分離されて紛失されることを防止することができる。
【0024】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0025】
例えば、上記実施形態では、配線口15および挿通口23は、切り込みとして形成されているが、それに限らず、プラグまたはコンセントが挿通できる大きさで有れば任意の形状の孔とすることもできる。さらには、配線口15と挿通口23とは、同じ形状とする必要はなく、配線口15と挿通口23とが連通すれば、互いに異なる形状とすることができる。例えば、
図6および
図7に示すように、配線口15を矩形状の孔とし、挿通口23を楕円形状の孔として形成してもよい。また、配線口15を任意の形状の孔とし、挿通口23を切り込みとしてもよい。その逆も可能である。さらに、配線口15および挿通口23は、床面部11に限られず、囲い面部12、つまり周面部121または天面部122に設けられてもよいし、一箇所に限られず複数箇所設けられてもよい。
【0026】
また、上記実施形態では、第1の面ファスナー21および第2の面ファスナー24には、咬合面がフック面およびループ面の区別のないタイプの面ファスナーを用いているが、第1の面ファスナー21および第2の面ファスナー24は上記形態に限られない。すなわち、咬合面にフックのみを有する面ファスナーと、咬合面にループのみを有する面ファスナーとを準備し、
図7に示すように、一方を床面部11に貼り付けて第1の面ファスナー21とし、他方を第1の面ファスナー21から分離した第2の面ファスナー24とすることもできる。また、第2の面ファスナー24は、挿通口23および挿通口23の周辺領域を覆う大きさであればよく、必ずしも第1の面ファスナー21と同じ大きさとする必要はない。さらに、第1の面ファスナー21および第2の面ファスナー24は、必ずしも蚊帳1の内部空間S側に設けられる必要はなく、蚊帳1の外側に設けられてもよい。
【0027】
また、上記実施形態では、蚊帳1は、床面部11、周面部121および天面部122から構成される柱状を呈しているが、蚊帳1の形態は上記形態に限られず、床面部11を有する既知の任意の形態を取り得る。例えば、
図8に示すように、床面部11と周面部121(囲い面部12)とから構成される錐状を呈していてもよい。また、床面部11の形状は矩形状に限られず、円形状等の任意の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 蚊帳
11 床面部
12 囲い面部
15 配線口
21 第1の面ファスナー
23 挿通口
24 第2の面ファスナー
C コード線
S 内部空間
【要約】
【課題】コード線を配線するための配線口を有する蚊帳であって、コード線の周囲を確実に塞ぐことで、配線口から虫が侵入することを確実に防止することができる蚊帳を提供する。
【解決手段】本発明は、床面部11と、床面部11に連なる囲い面部12とにより、内部空間Sが閉塞されてなる蚊帳1であって、床面部11および囲い面部12の少なくとも一方にコード線Cを配線するための配線口15が設けられるとともに、配線口15の位置に、配線口15を塞ぐように第1の面ファスナー21が重ねられて接合されている。第1の面ファスナー21は、配線口15と連通するコード線Cの挿通口24を有し、第1の面ファスナー21の上面には、挿通口24および挿通口24の周辺領域にわたって咬合面が咬み合う第2の面ファスナー24が着脱自在に貼り合わされている。
【選択図】
図1