特許第5791857号(P5791857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5791857
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】捕集装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20150917BHJP
   G01N 1/02 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
   G01N1/22 L
   !G01N1/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-528473(P2015-528473)
(86)(22)【出願日】2014年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2014068735
【審査請求日】2015年6月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000181767
【氏名又は名称】柴田科学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506050123
【氏名又は名称】有限会社ヴェリタスシステム開発
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 眞利
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義浩
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−156067(JP,A)
【文献】 特開2010−124711(JP,A)
【文献】 特開2002−153259(JP,A)
【文献】 特開2009−011265(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第2401174(GB,A)
【文献】 特開2012−026954(JP,A)
【文献】 特開2004−301749(JP,A)
【文献】 特開平09−196830(JP,A)
【文献】 渡辺雄飛 , 鈴木義浩, 榎本孝紀 , 村田克, 名古屋俊士,強制送風式パッシブサンプラー(セミアクティブサンプラー)の個人曝露測定に向けた基礎検討について,日本労働衛生工学会・作業環境測定研究発表会抄録集,日本,2013年12月12日,No.53rd−34th,Page.28-29
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44、C12M1/00〜1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕集部材を用いて大気中の被捕集物質を捕集する捕集装置であって、
前記捕集部材を収容可能な収容空間を有し、該収容空間内に大気中の空気を流入可能な流入口及び前記収容空間内の空気が流出可能な流出口が形成された長尺状のハウジングと、
前記流入口から前記収容空間内に空気を流入させると共に、その空気を前記流出口に向かって流動させるよう、前記収容空間内に気体流を発生させる気体流発生部と、
前記気体流が流動する位置に前記捕集部材を保持する保持部と
を備え、
前記ハウジングは、前記収容空間を有する上流側ハウジングと、前記上流側ハウジングの下流側に連結される下流側ハウジングと、前記上流側ハウジング及び前記下流側ハウジングを連結する連結部とを備え、
前記連結部は、前記下流側ハウジングの外径よりも大きい内径を有する筒状の流出方向規制壁部を有し、
前記流入口は、前記保持部に保持された前記捕集部材よりも上流側に形成され、
前記流出口は、前記流出方向規制壁部の内面と、前記下流側ハウジングの外面との間に形成された隙間であり、前記保持部に保持された前記捕集部材よりも下流側において、該流出口から流出された空気が該流出口よりも下流側のハウジング外面に沿って流動するよう、下流側に向けて開口している
ことを特徴とする捕集装置。
【請求項2】
前記流出方向規制壁部は、前記下流側ハウジングの上端部及びその近傍の外面を取り囲むように、前記下流側ハウジングに向けて突出して設けられ、
前記流出方向規制壁部の内面と前記下流側ハウジングの上端部及びその近傍の外面との間に形成された隙間が、前記流出口として機能するよう構成されている。
ことを特徴とする請求項1に記載の捕集装置。
【請求項3】
前記気体流発生部は、前記気体流を発生させるファンと、前記ファンの駆動を制御する制御部と、前記ファンを駆動させるための電力を供給する電源部とを備え、
前記制御部及び前記電源部は、前記下流側ハウジングに収容されている
ことを特徴とする請求項1に記載の捕集装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、上流側の端部側が閉塞された筒状に形成されており、
前記流入口は、前記ハウジングの周方向全域の4分の3以下の領域において、前記ハウジングの周方向に所定の間隔をおいて複数形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の捕集装置。
【請求項5】
前記保持部に保持された前記捕集部材よりも上流側に設けられ、前記気体流を乱流状態とさせるよう構成された乱流発生部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中に浮遊する揮発性有機化合物(VOC)や半揮発性有機化合物(SVOC)などの被捕集物質を捕集部材に捕集させる捕集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大気中に浮遊するホルムアルデヒドなどの被捕集物質の捕集には、大気中に曝され、自然拡散により捕集を行なうパッシブサンプラが用いられている(特許文献1)。このパッシブサンプラは、パッシブサンプラ内に設けられた吸着剤や捕集剤によって、被捕集物質濃度を捕集内面において常にゼロとし、それよりも濃度の高い捕集大気中と接する捕集外面となる導入口と一定の濃度勾配を保つことにより、物質濃度の移動拡散現象を利用して、被捕集物質を捕集するものである。
【0003】
パッシブサンプラの単位面積当たりの捕集率、すなわち単位捕集速度Jは、濃度勾配(C/L)及び拡散する物質の分子拡散係数D[cm/sec]により決定され、これは、いわゆるFickの拡散第1法則式(J=D×C/L)により表すことができる。ここで、Fickの拡散第1法則式において、Cは周囲の濃度[μg/ml]を表し、Lは拡散長[cm]、すなわちパッシブサンプラの導入口から捕集面までの長さを表す。また、(SR=A×D×C/L)式に示すように、単位面積当たりの捕集率J(J=D×C/L)に捕集面積Aを掛けることにより、パッシブサンプラの総捕集速度SRを求めることができる。一般にこれをサンプリングレートSRといい、パッシブサンプラのある特定の被捕集物質に対する固有捕集速度として知られている。このサンプリングレートSRは、[μg/(ppm×min)]などの次元単位で表現され、これにより、サンプリングレートSRの値と、捕集後の分析結果から得られた採取量M[μg]及び捕集時間t[min]の値とから、(C´=M/(SR×t))式に基づいて、大気中の被捕集物質の濃度C´を求めることができることが知られている。
【0004】
しかしながら、パッシブサンプラのサンプリングレートSRは、自然拡散により捕集を行なうものであるため、現場における風速の影響により定数値を示さず、特に微風速の場合には、サンプリングレートSRが著しく変動するという問題がある。これは、パッシブサンプラの周囲風速が小さくなることにより、拡散濃度勾配がパッシブサンプラから延伸してパッシブサンプラ外において濃度勾配を作ってしまい、拡散長Lの値が大きく変動するためであると考えられる。このような「拡散場の延伸」は、図8に示すように、風速が0.5m/sec未満、特に0.1m/sec以下の微風速において顕著となる。ここで、図8は、本出願人がパッシブサンプラを用いて検証した結果を示す、定常環境下におけるパッシブサンプラの捕集量と風速との関係を示すグラフであり、図8における縦軸、すなわち、パッシブサンプラの捕集量は、基準を明確にするために、ポンプを用いて捕集を行なうアクティブ法によって得られた捕集量との比[%](パッシブサンプラの捕集量/アクティブ法による捕集量)によって表してある。
【0005】
このような「拡散場の延伸」を防止するために、例えばパッシブサンプラの膜厚を厚くしたり、開孔径や開口率を小さくしたりして拡散長Lを大きく取ることにより、延伸を見かけ上小さくすることが考えられる。しかしながら、延伸を0にすることは原理上不可能であり、かつ実際の測定環境において風速は常に変動しており、風速変動に応じ拡散長Lも変動してしまうため、パッシブサンプラにおいて見掛け上の拡散長Lを予測し定数化とすることは不可能に近い。これにより、パッシブサンプラを用いた大気中の被捕集物質の濃度を正確に測定する場合には、測定現場に応じてサンプリングレートSRを実測にて求め、あるいは、ポンプなどを用いるアクティブ法との比較をして、予め代表値としてサンプリングレートSRを求め、これを用いるという、概括的な算定手法を用いなければならず、測定が煩雑であり、また、アクティブ法より精度の低い下位の手法であるという問題がある。
【0006】
このような問題を解決可能な捕集装置として、本出願人は、例えば図9に示す捕集装置300を提案している(特許文献2)。この捕集装置300は、図9に示すように、パッシブサンプラ302をハウジング310内に収容可能に構成されると共に、ファン322等の流動手段によってハウジング310内に強制的に風速を発生させることができるよう構成されている。このような捕集装置300によれば、現場における風速の影響を排除することができるため、被捕集物質の安定した捕集を実現することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−114176号公報
【特許文献2】特開2012−26954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の捕集装置300は、図9に示すように、長手方向の一端部に流出口312が形成されているため、例えば作業者の胸ポケット等の狭い空間に収容した場合には、流出口312が閉塞されてしまい、被捕集物質の安定した捕集を行うことができないおそれがある。このため、従来の捕集装置300では、例えば作業者の胸ポケット等に収容して、携帯しながら被捕集物質の捕集を行うという捕集方法を実行することが困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、例えば作業者の胸ポケット等に収容して、携帯しながら被捕集物質の捕集を行う場合であっても、問題無く被捕集物質の捕集を行うことができる捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明に係る捕集装置は、捕集部材を用いて大気中の被捕集物質を捕集する捕集装置であって、前記捕集部材を収容可能な収容空間を有し、該収容空間内に大気中の空気を流入可能な流入口及び前記収容空間内の空気が流出可能な流出口が形成された長尺状のハウジングと、前記流入口から前記収容空間内に空気を流入させると共に、その空気を前記流出口に向かって流動させるよう、前記収容空間内に気体流を発生させる気体流発生部と、前記気体流が流動する位置に前記捕集部材を保持する保持部とを備え、前記流入口は、前記保持部に保持された前記捕集部材よりも上流側に形成され、前記流出口は、前記保持部に保持された前記捕集部材よりも下流側に形成され、該流出口から流出された空気が該流出口よりも下流側のハウジング外面に沿って流動するよう、下流側に向けて開口していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る捕集装置において、前記ハウジングは、前記収容空間を有する上流側ハウジングと、前記上流側ハウジングの下流側に連結される下流側ハウジングと、前記上流側ハウジング及び前記下流側ハウジングを連結する連結部とを備え、前記連結部は、前記下流側ハウジングの上端部及びその近傍の外面を取り囲むように、前記下流側ハウジングに向けて突出して設けられた筒状の流出方向規制壁部を有し、前記流出方向規制壁部の内面と前記下流側ハウジングの上端部及びその近傍の外面との間に形成された隙間が、前記流出口として機能するよう構成されることが好ましい。
【0012】
この場合において、前記気体流発生部は、前記気体流を発生させるファンと、前記ファンの駆動を制御する制御部と、前記ファンを駆動させるための電力を供給する電源部とを備え、前記制御部及び前記電源部は、前記下流側ハウジングに収容されることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る捕集装置において、前記ハウジングは、上流側の端部が閉塞された筒状に形成されており、前記流入口は、前記ハウジングの周方向全域の4分の3以下の領域において、前記ハウジングの周方向に所定の間隔をおいて複数形成されることが好ましい。
【0014】
本発明に係る捕集装置は、前記保持部に保持された前記捕集部材よりも上流側に設けられ、前記気体流を乱流状態とさせるよう構成された乱流発生部をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る捕集装置は、流出口が、流出口から流出された空気が流出口よりも下流側のハウジング外面に沿って流動するよう下流側に向けて開口していることにより、狭い空間に収容した場合であっても、流出口が閉塞されることがない。このため、本発明によれば、例えば作業者の胸ポケット等に収容して、携帯しながら被捕集物質の捕集を行う場合であっても、問題無く被捕集物質の捕集を行うことができる捕集装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る捕集装置の概略構成を示す断面図である。
図2図1のA−A´線に沿った断面図である。
図3】第1実施形態に係る捕集装置の流出口付近の概略構成を拡大して示す断面図である。
図4図3のB−B´線に沿った断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る捕集装置の概略構成を示す部分断面図である。
図6】第2実施形態に係る捕集装置を図6に示すC方向から見た状態を示す側面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る捕集装置の概略構成を示す部分断面図である。
図8】パッシブサンプラの捕集量と風速との関係を示すグラフである。
図9】従来の捕集装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の第1実施形態に係る捕集装置について、図1図4に基づいて説明する。第1実施形態に係る捕集装置1は、図1に示すように、捕集部材2を収容可能な収容空間12を有し、収容空間12内に大気中の空気を流入可能な流入口14及び収容空間12内の空気が流出可能な流出口16が形成された長尺状のハウジング10と、流入口14から収容空間12内に空気を流入させると共に、その空気を流出口16に向かって流動させるよう、収容空間12内に気体流を発生させる気体流発生部20と、気体流が流動する位置に捕集部材2を保持する保持部30と、捕集部材2よりも上流側において気体流を乱流状態とさせる乱流発生部13とを備えている。
【0018】
ハウジング10は、図1に示すように、収容空間12を有する上流側ハウジング10aと、上流側ハウジング10aの下流側に連結される下流側ハウジング10bと、上流側ハウジング10a及び下流側ハウジング10bを連結させる連結部10cとを備え、これら上流側ハウジング10a、連結部10c及び下流側ハウジング10bが同軸となるよう連結されることにより、スティック型のハウジングを形成するよう構成されている。ハウジング10は、ペンと同程度の大きさ、すなわち、十数cm程度の長手方向の長さを有し、かつ、数cm程度の径を有する小型のハウジングであり、例えば、流入口14が露出するように作業者の胸ポケット等に収容して携帯することが可能に構成されている。なお、以下の説明において、上流側とは、収容空間12内に発生する気体流の流動方向上流側、すなわち、ハウジング10の長手方向の上端部側をいい、下流側とは、収容空間12内に発生する気体流の流動方向下流側、すなわち、ハウジング10の長手方向の下端部側をいう。
【0019】
上流側ハウジング10aは、図1に示すように、円筒状に形成されたハウジング本体11aと、上端部側が閉塞された円筒状に形成され、ハウジング本体11aの上端部側に着脱自在に取り付け可能に構成された蓋部材11bとを備えている。捕集部材2を収容可能な収容空間12は、これらハウジング本体11a及び蓋部材11bの内面によって規定されている。上流側ハウジング10aは、日光などの遮光効果を持たせるために遮光性を有する構成とすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0020】
ハウジング本体11aは、上端部及び下端部が開放された円筒状に形成されており、捕集部材2を収納した状態において、十分な気体流を発生可能な径及び軸方向の長さを有している。ハウジング本体11aの上端部及びその近傍は、ハウジング本体11aの他の部分よりも外径が小さくなるように肉薄に形成されている。このハウジング本体11aの肉薄部の外面には、蓋部材11bを取り付けるためのねじ(図示せず)が形成されている。ハウジング本体11aの下端部及びその近傍の外面には、連結部10cを取り付けるためのねじ(図示せず)が形成されている。
【0021】
蓋部材11bは、上端部が閉塞され、下端部が開放された円筒状に形成されており、ハウジング本体11aと概ね同じ径を有している。蓋部材11bの下端部及びその近傍は、ハウジング本体11aの上端部及びその近傍の肉薄部が挿入可能となるように、蓋部材11bの他の部分よりも内径が大きくなるように肉薄に形成されている。この蓋部材11bの肉薄部の内面には、ハウジング本体11aの上端部及びその肉薄部に形成されたねじ(図示せず)と係合可能なねじ(図示せず)が形成されている。
【0022】
蓋部材11bには、図2に示すように、上流側ハウジング10aの収容空間12内に大気中の空気を流入させるための流入口14が形成されている。流入口14は、蓋部材11bの外周面から内周面に亘って、蓋部材11bの軸方向と交叉する方向に貫通する穴であり、蓋部材11bの周方向全域の4分の3以下の領域において、周方向に所定の間隔をおいて複数(第1実施形態では3つ)形成されている。これら流入口14は、図2に示すように、蓋部材11bの軸と直交する断面において、それぞれ、これら流入口14の各中心軸X1、X2、X3が蓋部材11bの中心軸X4と直交しないように、周方向に位置をずらして形成されている。各流入口14は、大気中の空気を収容空間12内に流入可能な径を有しており、気体流発生部20の動作及び機能を阻害しないように構成されている。
【0023】
連結部10cは、図3に示すように、上流側ハウジング10aのハウジング本体11aに連結可能に構成される連結本体部17aと、下流側ハウジング10bに連結可能に構成される複数の連結柱17bと、流出される空気の流出方向を規制可能に構成される流出方向規制壁部17cとを備えている。
【0024】
連結本体部17aは、上端部及び下端部が開放された円筒状に形成されており、ハウジング本体11aの内径と概ね同じ内径を有し、かつ、ハウジング本体11a及び下流側ハウジング10bの外径よりも大きい外径を有している。すなわち、連結本体部17aは、その外面がハウジング本体11a及び下流側ハウジング10bの外面よりも周方向外側に位置するような、ハウジング本体11a及び下流側ハウジング10bよりも周方向外側に膨張した形状を有している。連結本体部17aは、その上端部及びその近傍の内面に、ハウジング本体11aの下端部及びその近傍に形成されたねじ(図示せず)と係合可能なねじ(図示せず)が形成されており、ハウジング本体11aに対して着脱自在に構成されている。
【0025】
連結柱17bは、図3及び図4に示すように、小径の柱部材からなり、上端部が連結本体部17aの下面に連結され、下端部が下流側ハウジング10bの上面に連結されるように、連結本体部17aの下面から下流側ハウジング10bの上面に向けて突出して設けられている。この連結柱17bは、図4に示すように、周方向に所定の間隔をおいて4本設けられており、空気の流動を妨げないよう構成されている。
【0026】
流出方向規制壁部17cは、連結本体部17aの下端部の周縁全域から下流側(ハウジング10の下端部側)に向けて突出して設けられた肉薄の円筒状に形成されている。流出方向規制壁部17cは、連結本体部17aの下端部から下流側ハウジング10bの上端部及びその近傍と重なる位置に至る軸方向の長さを有し、かつ、下流側ハウジング10bの外径よりも大きい内径を有している。すなわち、流出方向規制壁部17cは、その下端部及びその近傍によって下流側ハウジング10bの上端部及びその近傍の外面を取り囲み、流出方向規制壁部17cの下端部及びその近傍の内面と、下流側ハウジング10bの上端部及びその近傍の外面との間に隙間(流出口16)が形成されるように、連結本体部17aの下端部の周縁全域から下流側に向けて突出して設けられた環状の壁である。
【0027】
この流出方向規制壁部17cは、連結本体部17aの内面と共に、上流側ハウジング10aの収容空間12と連通する流路12aが形成されるよう構成されている。また、流出方向規制壁部17cは、下流側ハウジング10bの上端部及びその近傍の外面との間において、収容空間12内の空気が流路12aを介して流出される流出口16が画成されるよう構成されている。流出方向規制壁部17cがこのように構成されることにより、流出口16は、収容空間12及び流路12aを介して流出口16から流出された空気が、流出口16よりも下流側の下流側ハウジング10bの外面に沿って流動するよう、ハウジング10の周方向全域に亘って、下流側に向けて開口している。
【0028】
下流側ハウジング10bは、図1及び図3に示すように、上端及び下端が閉塞された円筒状に形成されており、流出方向規制壁部17cの内径よりも小さい外径を有している。下流側ハウジング10bは、連結部10cに連結された際に、流出口16から流出された空気が下流側ハウジング10bの少なくとも上端部及びその近傍の外面に沿って流動することができる程度の長手方向の長さを有している。すなわち、下流側ハウジング10bは、捕集装置1が例えば作業者の胸ポケット等の狭い空間に収容された場合であっても、流出口16が閉塞されないよう、流出口16をハウジング10の下端部から離間させることが可能な長手方向の長さを有している。下流側ハウジング10bは、その内部空間において気体流発生部20の制御部24及び電源部26を収容可能に構成されている。
【0029】
気体流発生部20は、図1及び図3に示すように、連結部10cの流路12aに設けられたファン22と、ファン22の駆動を制御する制御部24と、ファン22を駆動させるための電力を供給する電源部26とを備えている。このファン22は、その駆動により、流入口14から収容空間12内に空気を流入させると共に、その空気を流出口16に向かって一定の速度で流動させ、収容空間12内に所定速度の気体流を発生させるように構成されている。ここで、ファン22は、風速0.5m/sec未満の気体流を発生可能なもので良く、比較的小型のものを用いることができる。制御部24は、ファン22のON/OFF操作を実行可能に構成されている。電源部26は、例えば乾電池等を用いることができ、低電力かつ小型なものを用いることができる。制御部24及び電源部26は、下流側ハウジング10bの内部空間に収容されている。これらファン22、制御部24及び電源部26は、周知のものを用いることができ、また、所定速度の気体流を発生させるように構成されていれば、細かい流速制御を持つ必要はない。
【0030】
保持部30は、図1に示すように、上端部が上流側ハウジング10aの蓋部材11bの上面に連結可能に構成され、下端部が捕集部材2を保持可能に構成された棒状の部材である。保持部30は、上端部が蓋部材11bに連結され、下端部において捕集部材2を保持した際に、捕集部材2が上流側ハウジング10aの収容空間12内に収まるような長手方向の長さを有している。保持部30の上端部は、ビス18が螺入可能なねじ穴が軸方向に沿って形成されており、ビス18による締結力によって、上流側ハウジング10aの中心軸と同軸となるように、蓋部材11bに取り付けられるよう構成されている。保持部30の上端部及びその近傍の周面には、螺旋気流発生部15を取り付けるためのねじ(図示せず)が形成されている。
【0031】
乱流発生部13は、図1及び図2に示すように、蓋部材10bの周面に形成された流入口14と、上流側ハウジング10aの内部において流入口14と整合する位置に設けられ、流入口14から流入された空気の流動方向を変更可能な螺旋気流発生部15とから構成されている。螺旋気流発生部15は、図1に示すように、ハウジング10の下流側に向けて先細りとなる円錐台形状に形成されており、その上面から底面に亘って、保持部30の上端部及びその近傍の周面に形成されたねじ(図示せず)と係合可能なねじ孔(図示せず)が形成されている。この螺旋気流発生部15は、円錐面(すなわち、ハウジング10の下流側に向けて先細りとなり、かつ、周方向に湾曲する曲面)が流入口14と対向するように、保持部30の上端部及びその近傍の周面上に取り付けられている。
【0032】
第1実施形態に係る乱流発生部13によれば、各流入口14が蓋部材11bの中心軸X4と直交しないように周方向に位置をずらして形成されると共に、流入口14と整合する位置に螺旋気流発生部15が設けられることにより、流入口14から流入した空気を螺旋気流発生部15の円錐面に沿って流動させ、上流側ハウジング10aの収容空間12内に螺旋気流を発生させることができるため、収容空間12内を流動する気体流を乱流状態にさせることができる。
【0033】
次に、第1実施形態に係る捕集装置1を用いて大気中の被捕集物質を捕集する方法と、この捕集方法により捕集された被捕集物質の捕集量から大気中の被捕集物質の濃度を算出する方法ついて、説明する。
【0034】
第1実施形態に係る捕集装置1を用いて大気中の被捕集物質を捕集するためには、まず、蓋部材11bをハウジング本体11aから取り外した後、気密袋から捕集部材2を取り出し、捕集部材2の端部を保持部30に保持させる。次に、捕集部材2が上流側ハウジング10aの収容空間12内に位置するように、蓋部材11bをハウジング本体11aに装着させる。その後、気体流発生部20の操作スイッチ(図示せず)を操作してファン22を駆動させ、収容空間12内に一定速度の気体流を発生させる。この際、乱流発生部13によって、収容空間12内の気体流が乱流状態となる。そして、捕集部材2の捕集面が被捕集物質を含有する気体流に曝され、移動拡散現象や吸着等により捕集部材2に被捕集物質が捕集される。所定の捕集時間経過後、ファン22の駆動を停止させると共に、蓋部材11bをハウジング本体11aから取り外し、捕集部材2を気密袋に回収する。その後、捕集部材2を測定室まで搬送すると共に、測定室において、周知の種々の方法により、捕集部材2に捕集された被捕集物質の捕集量Mを測定する。
【0035】
第1実施形態に係る捕集装置1を用いて大気中の被捕集物質の濃度を算出するためには、まず、Fickの拡散第1法則式(J=D×C/L)から、使用した捕集部材2の被捕集物質に対する単位捕集速度Jを算出する。ここで、第1実施形態に係る捕集装置1は、捕集部材2が曝される気体流を強制的に一定の速度で発生させることにより、測定環境における風速の影響を排除し、拡散長L、すなわち、捕集部材2の導入口から捕集面までの長さの値を一定にすることができるため、Fickの拡散第1法則式を精度良く反映させて単位捕集速度Jを算出することができる。ここで、Fickの拡散第1法則式において、Dは被捕集物質の分子拡散係数を表し、Cは周囲の濃度を表し、C/Lは濃度勾配を意味する。
【0036】
次に、Fickの拡散第1法則式(J=D×C/L)から求められた単位捕集速度Jの値と、捕集部材2の捕集面積Aの値に基づいて、(SR=A×D×C/L)式から総捕集速度、すなわちサンプリングレートSRを算出する。このサンプリングレートSRは、特定の被捕集物質に対する捕集物質の固有捕集速度である。ここで、サンプリングレートSRの次元単位は、[μg/(ppm×min)]である。
【0037】
次に、(SR=A×D×C/L)式から求められたサンプリングレートSRの値と、捕集部材2により実際に捕集された被捕集物質の捕集量Mの値と、捕集時間tの値とに基づいて、(C´=M/(SR×t))式から大気中の被捕集物質の濃度C´を算出する。
【0038】
このような濃度測定方法によれば、Fickの拡散第1法則式(J=D×C/L)を精度良く反映させ、(SR=A×D×C/L)式によりほぼ全ての拡散する被捕集物質のサンプリングレートSRを理論上推測することが可能となる。また、サンプリングレートSRの推測が可能となることにより、(C´=M/(SR×t))式により大気中の被捕集物質の濃度を正確に算出することができるため、精度の高い濃度測定を可能とすることができる。
【0039】
以上述べたとおり、第1実施形態に係る捕集装置1は、捕集部材2を収容可能な収容空間12を有し、収容空間12内に大気中の空気を流入可能な流入口14及び収容空間12内の空気が流出可能な流出口16が形成された長尺状のハウジング10と、流入口14から収容空間12内に空気を流入させると共に、その空気を流出口16に向かって流動させるよう、収容空間12内に気体流を発生させる気体流発生部20と、気体流が流動する位置に捕集部材2を保持する保持部30とを備え、流入口14は、保持部30に保持された捕集部材2よりも上流側に形成され、流出口16は、保持部30に保持された捕集部材2よりも下流側に形成され、流出口16から流出された空気が流出口16よりも下流側のハウジング外面に沿って流動するよう、下流側に向けて開口している。このため、第1実施形態に係る捕集装置1によれば、流出口16が、流出口16から流出された空気が流出口16よりも下流側のハウジング外面に沿って流動するよう下流側に向けて開口していることにより、例えば作業者の胸ポケット等の狭い空間に、流入口14が胸ポケットの外部に位置し、流出口16が胸ポケットの内部に位置するように収容して携帯した場合であっても、流出口16が閉塞されることがない。このため、第1実施形態に係る捕集装置1によれば、例えば作業者の胸ポケット等に収容して、携帯しながら被捕集物質の捕集を行う場合であっても、問題無く被捕集物質の捕集を行うことができる。
【0040】
また、第1実施形態に係る捕集装置1は、上述したとおり、ハウジング10が、収容空間12を有する上流側ハウジング10aと、上流側ハウジング10aの下流側に連結される下流側ハウジング10bと、上流側ハウジング10a及び下流側ハウジング10bを連結する連結部10cとを備え、連結部10cが、下流側ハウジング10bの上端部及びその近傍の外面を取り囲むように、下流側ハウジング10bに向けて突出して設けられた筒状の流出方向規制壁部17cを有し、流出方向規制壁部17cの内面と下流側ハウジング10bの上端部及びその近傍の外面との間に形成された隙間が流出口16として機能するよう構成されている。このような第1実施形態に係る捕集装置1によれば、流出口16が、ハウジング10の周方向全域に亘って形成されることとなるため、例えば作業者の胸ポケット等の狭い空間に収容した際に、流出口16の一部が閉塞された場合であっても、問題無く排気を行い、空気流を発生させることができる。
【0041】
さらに、第1実施形態に係る捕集装置1は、上述したとおり、気体流発生部20が、気体流を発生させるファン22と、ファン22の駆動を制御する制御部24と、ファン22を駆動させるための電力を供給する電源部26とを備え、制御部24及び電源部26が、下流側ハウジング10bに収容されている。このような第1実施形態に係る捕集装置1によれば、下流側ハウジング10bが、流出口16をハウジング10の下端部から遠ざけ、流出口16の閉塞を防止するためのスペーサとしての機能だけでなく、制御部24及び電源部26を収容する収容部材としての機能も有することとなるため、制御部24及び電源部26を下流側ハウジング10b以外の収容部材に収容させる場合と比べて、捕集装置1を小型化させることができる。
【0042】
またさらに、第1実施形態に係る捕集装置1は、上述したとおり、ハウジング10が、上流側の端部が閉塞された筒状に形成されており、流入口14が、ハウジング10の周方向全域の4分の3以下の領域において、ハウジング10の周方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。このような第1実施形態に係る捕集装置1によれば、流入口14が形成されていない領域(ハウジング10の周方向全域の4分の1の領域)を作業者側に向け、流入口14が形成されている領域(ハウジング10の周方向全域の4分の3の領域)を作業者から離れる方向(大気側)に向けた状態で、例えば作業者の胸ポケットに捕集装置1を収容して携帯することができる。すなわち、ハウジング10の周方向全域に流入口14が形成される場合には、例えば作業者の胸ポケットに捕集装置1を収容して携帯する際に、一部の流入口14が作業者と密着して閉塞されるおそれがあり、気体流を安定して発生させることができないおそれがある。これに対し、第1実施形態に係る捕集装置1は、例えば作業者の胸ポケットに捕集装置1を収容した際に作業者側に向く領域(ハウジング10の周方向全域の4分の1の領域)に流入口14が形成されていないため、流入口14の予期せぬ部分的な閉塞を未然に防ぐことができる。
【0043】
また、第1実施形態に係る捕集装置1は、上述したとおり、保持部30に保持された捕集部材2よりも上流側に設けられ、気体流を乱流状態とさせるよう構成された乱流発生部13をさらに備えている。このような第1実施形態に係る捕集装置1によれば、ハウジング10の収容空間12内を流動する気体流の風速が0.5m/sec未満の低風速であったとしても、安定した被捕集物質の捕集を可能とすることができる。すなわち、図9に示す従来の捕集装置300では、図8に示すグラフの結果から、ハウジング310内を流動する気体流の風速を0.5m/sec以上、特に1.0m/sec以上にしなければ安定した捕集を行うことができず、風速が0.5m/sec未満とならないように厳密な制御が必要である。そこで、本発明者は、例えば風速0.5m/sec未満の低風速の場合であっても安定した被捕集物質の捕集を可能とすべく、鋭意研究を重ねた結果、ハウジング内を流動する気体流を乱流状態とさせることにより例えば風速0.5m/sec未満の低風速であっても安定した被捕集物質の捕集を行うことができることを見出した。よって、第1実施形態に係る捕集装置1は、乱流発生部13を備えることにより、ハウジング10の収容空間12内を流動する気体流の風速を0.5m/sec以上とする必要がないため、大型のファンやバッテリーを用いる必要がなく、また、ファンの回転速度を抑えることができ、これにより、低騒音で小型化及び軽量化が可能な捕集装置とすることができる。
【0044】
さらに、第1実施形態に係る捕集装置1は、乾電池駆動のファン22によりハウジング10の収容空間12内に気体流を発生させるという簡単な構造の装置であるため、電源の確保が困難な場所においても使用することができ、また、例えば高速道路、生産工場などの被捕集物質発生源からの拡散調査など、測定箇所を多数設定する調査手法において、コストを掛けずに実施することができる。
【0045】
本発明に係る捕集装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。
【0046】
例えば、図1では、捕集部材2として、チューブ型のパッシブサンプラを図示したが、これに限定されるものではなく、種々の捕集部材を用いることができ、また、ハウジングの形状は、使用する捕集部材の種類及び形状に応じて種々の改変を行なうことができる。さらに、第1実施形態に係る捕集装置1は、例えば、ニコチンが吸着可能なポリウレタンフォーム(PUF)を捕集部材として使用した、環境中たばこ煙(ETS)個人曝露量測定用の捕集装置であるとしても良い。
【0047】
第1実施形態に係る捕集装置1において、ハウジング10は、上流側ハウジング10a、下流側ハウジング10b及び連結部10cを備えるものとして説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る捕集装置において、ハウジングは、捕集部材を収容可能な収容空間を有し、該収容空間内に大気中の空気を流入可能な流入口及び収容空間内の空気が流出可能な流出口が形成されたものであれば、種々のものを用いることができる。
【0048】
第1実施形態に係る捕集装置1において、流入口14は、3つ形成され、その中心軸X1、X2、X3がハウジング本体11aの中心軸X4と直交しないように周方向に位置をずらして形成されているとしたが、これに限定されず、流入口14は少なくとも1つ形成されていれば良く、また、周方向に位置をずらして形成されなくても良い。すなわち、本発明に係る捕集装置において、流入口は、保持部に保持された捕集部材よりも上流側に形成され、ハウジングの収容空間内に大気中の空気を流入可能な構成であれば、いかなる構成を備えていても良い。
【0049】
第1実施形態に係る捕集装置1において、流出口16は、流出方向規制壁部17cの内面と、下流側ハウジング10bの上端部及びその近傍の外面とにより画定されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る捕集装置において、流出口は、保持部に保持された捕集部材よりも下流側に形成され、該流出口から流出された空気が該流出口よりも下流側のハウジング外面に沿って流動するよう、下流側に向けて開口するものであれば、いかなる構成を備えていても良い。
【0050】
第1実施形態に係る捕集装置1において、気体流発生部20は、ファン22、制御部24及び電源部26を備えるものとして説明したが、これに限定されず、ハウジングの流入口から収容空間内に空気を流入させると共に、その空気を流出口に向かって流動させるよう、収容空間内に気体流を発生させるものであれば、いかなる構成を備えていても良い。
【0051】
第1実施形態に係る捕集装置1において、保持部30は、上端部が上流側ハウジング10aの蓋部材11bの上面に連結可能に構成され、下端部が捕集部材2を保持可能に構成された棒状の部材であるものとして説明したが、これに限定されず、気体流が流動する位置に捕集部材を保持するものであれば、いかなる構成を備えていても良い。
【0052】
第1実施形態に係る捕集装置1において、乱流発生部13は、流入口14と、螺旋気流発生部15とから構成されているとしたが、これに限定されず、乱流発生部は、ハウジング10の収容空間12内を流動する気体流を乱流状態とさせることが可能な構成であれば、種々の構成を採用することができる。また、本発明に係る捕集装置は、例えば図9に示す従来の捕集装置300のように、乱流発生部を備えない構成としても良い。
【0053】
図5及び図6は、乱流発生部の第2の例(第2実施形態に係る捕集装置100)を示し、図7は、乱流発生部の第3の例(第3実施形態に係る捕集装置200)を示している。なお、第2及び第3実施形態に係る捕集装置100,200において、上流側ハウジングのハウジング本体及び蓋部材、流入口、並びに、乱流発生部以外の構成については、第1実施形態に係る捕集装置1の構成と同様であるため、その説明を省略する。また、第2及び第3実施形態に係る捕集装置100,200を用いて行う捕集方法及び濃度測定方法は、第1実施形態に係る捕集装置1を用いて行う捕集方法及び濃度測定方法と同様であるため、その説明を省略する。
【0054】
第2実施形態に係る捕集装置100の上流側ハウジング110aは、図5に示すように、円筒状に形成されたハウジング本体111aと、ハウジング本体111aの上流側の開口を閉塞する円盤状の蓋部材111bとを備えている。蓋部材111bには、図5及び図6に示すように、上流側の面(図5中、上側の面)から下流側の面(図5中、下側の面)に亘って、ハウジング本体111aの軸方向に沿って貫通する3つの垂直流入口114aと、ハウジング本体111aの軸方向と交叉する方向に傾斜して貫通する3つの傾斜流入口114bが形成されている。これら垂直流入口114a及び傾斜流入口114bは、大気中の空気を収容空間12内に流入可能な径を有しており、気体流発生部20の動作及び機能を阻害しないように構成されている。これら垂直流入口114a及び傾斜流入口114bは、図6に示すように、蓋部材111bの中心を中心とする同一円の円周上に等間隔をおいて連なって交互に形成されている。
【0055】
第2実施形態に係る捕集装置100において、傾斜流入口114bは、ハウジング本体111aの軸方向と交叉する方向に貫通しているため、該傾斜流入口114bを通過してハウジング10内に流入する空気の流れをハウジング本体111aの軸方向と異ならせることができ、これにより、ハウジング10内を流動する空気流の流れを乱し、乱流状態とすることができる。このように、第2実施形態に係る捕集装置100においては、傾斜流入口14bが乱流発生部として機能する。なお、第2実施形態に係る捕集装置100において、垂直流入口114a及び傾斜流入口114bは、それぞれ3つずつ形成され、蓋部材111bの中心を中心とする同一円の円周上に等間隔をおいて連なって交互に形成されているとしたが、これに限定されず、ハウジング10内を流動する気体流を乱流状態とすることができる構成であれば良く、傾斜流入口114bが少なくとも1つ形成されていれば良い。
【0056】
第3実施形態に係る捕集装置200は、図7に示すように、第2実施形態に係る捕集装置100の3つの傾斜流入口を垂直流入口とする代わりに、垂直流入口から流入された空気の流動方向を変更可能な板状の変更部材(乱流発生部)215を設けたものである。すなわち、第3実施形態に係る捕集装置200の蓋部材211bは、第2実施形態に係る捕集装置100の蓋部材111bと異なり、垂直流入口214のみが形成されている。
【0057】
乱流発生部215は、複数の板部材から構成されており、その一面が垂直流入口214と対向するように、ハウジング本体211aの内面に垂直に立設されている。このような乱流発生部215によれば、垂直流入口214から流入した空気の流れを乱し、上流側ハウジング210aの収容空間12内を流動する気体流を乱流状態にさせることができる。なお、第3実施形態に係る捕集装置200において、乱流発生部215は、複数の板部材から構成されるとしたが、これに限定されず、ハウジングの流入口から流入された空気の流動方向を変更可能なもの、すなわち、流入口から流入した空気の流れを乱して気体流を乱流状態とすることができるものであればいかなるものであっても良い。例えば、乱流発生部215は、空気の流れを阻害可能な程度に目の粗い濾紙、不織布及び金属網等の種々の構成を採用することができる。また、第3実施形態に係る捕集装置200において、流入口は、複数の垂直流入口からなるとしたが、これに限定されず、大気中の空気を上流側ハウジング210aの収容空間12内に流入可能な構成であればいかなる構成であっても良く、例えば、1つの垂直流入口又は1つ若しくは複数の傾斜流入口からなるとしても良いし、1以上の垂直流入口及び1以上の傾斜流入口からなるとしても良い。
【符号の説明】
【0058】
1,100,200 捕集装置、2 捕集部材、10 ハウジング、10a 上流側ハウジング、10b 下流側ハウジング、10c 連結部、12 収容空間、13 乱流発生部、14 流入口、16 流出口、17c 流出方向規制壁部、20 気体流発生部、22 ファン、24 制御部、26 電源部、30 保持部、114b 傾斜流入口(乱流発生部)、215 乱流発生部
【要約】
捕集部材を収容可能な収容空間を有し、流入口及び流出口が形成された長尺状のハウジングと、収容空間内に気体流を発生させる気体流発生部と、気体流が流動する位置に捕集部材を保持する保持部とを備え、流入口は、保持部に保持された捕集部材よりも上流側に形成され、流出口は、保持部に保持された捕集部材よりも下流側に形成され、流出口から流出された空気が流出口よりも下流側のハウジング外面に沿って流動するよう、下流側に向けて開口している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9