特許第5791867号(P5791867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5791867-高純度テトラヒドロフランの製造方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791867
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】高純度テトラヒドロフランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/08 20060101AFI20150917BHJP
   C08G 63/88 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   C07D307/08
   C08G63/88
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2009-82133(P2009-82133)
(22)【出願日】2009年3月30日
(65)【公開番号】特開2010-235452(P2010-235452A)
(43)【公開日】2010年10月21日
【審査請求日】2012年2月23日
【審判番号】不服2014-7334(P2014-7334/J1)
【審判請求日】2014年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹田 多完
(72)【発明者】
【氏名】榑松 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 智澄
【合議体】
【審判長】 佐藤 健史
【審判官】 辰己 雅夫
【審判官】 瀬良 聡機
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−277412(JP,A)
【文献】 特開平06−166640(JP,A)
【文献】 特開平07−155526(JP,A)
【文献】 特開昭61−040807(JP,A)
【文献】 特開2006−198604(JP,A)
【文献】 特表2008−542230(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/024795(WO,A1)
【文献】 特開平07−188085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D307/00-307/94
C07C 1/00-409/44
C07B 31/00- 61/00
B01M 1/00- 1/08
B01D 1/00- 8/00
B01D 53/02- 53/12
G05D 7/00- 7/06
CAPLUS(STN)、REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水(B)および炭素数3〜10のアルコールを含有するテトラヒドロフラン含有物を、下記(イ)〜(ニ)を含む工程により精製する高純度テトラヒドロフランの製造方法。
(イ)水、炭素数3〜10のアルコールおよびテトラヒドロフランを含有するテトラヒドロフラン含有物を蒸留し、テトラヒドロフランを濃縮する工程。
(ロ)濃縮する工程に供給するテトラヒドロフラン含有物の濃度を連続的に検知する濃度検知手段、その検知結果により濃縮工程に供給するテトラヒドロフラン含有物の流量を制御する流量制御手段および制御された量のテトラヒドロフランを濃縮工程に供給する手段を有し、前記濃度検知手段と前記流量制御手段を同時に実施する工程。
(ハ)濃縮されたテトラヒドロフラン含有物を、吸着剤を用いて吸着脱水する工程であって、
(I)濃縮されたテトラヒドロフラン含有物を蒸気として、一方の吸脱着塔に供給し、水分を吸着剤に吸着させる吸着工程と、
(II)吸着剤が水分を吸着している他方の吸脱着塔において、減圧した状態で吸着工程(I)から得られた無水有機物蒸気の一部をパージガスとして供給して、吸着剤に吸着している水分を脱着する工程を有し、
(II)において、パージガス量を(イ)工程に供給するテトラヒドロフラン量の25〜40%とする、工程。
(ニ)吸着脱水されたテトラヒドロフラン含有物を蒸留し、不純物を除去する工程。
【請求項2】
前記テトラヒドロフラン含有物が、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとをエステル化反応させた後、次いで重縮合反応させてポリエステルを製造する際のエステル化反応時に生成する留出物である請求項記載の高純度テトラヒドロフランの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度テトラヒドロフランの製造方法に関するものである。本発明は、特に、1,4−ブタンジオールを原料とするエステル化反応で副生するテトラヒドロフランを、容易に高純度のテトラヒドロフランとして回収する高純度テトラヒドロフランの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート(以下PBTという)は、その優れた物理的、化学的性質を有するため、繊維、フィルム、その他の成形品等の種々の用途に広く用いられている。また強度や弾性率等の機械特性、耐熱性等に優れているため、特にエンジニアリングプラスチックとして広く用いられている。
【0003】
このようなPBTの製造方法の一つとしてテレフタル酸と1,4−ブタンジオールとのエステル化反応によりビスヒドロキシブチルテレフタレートおよびその低重合物を得るエステル化工程とビスヒドロキシブチルテレフタレートおよびその低重合物を高温、高真空下で過剰の1,4−ブタンジオールを留出させつつ高重合度PBTを得る反応、いわゆる重縮合工程との2つの段階をもって行われるのが一般的である。そして、この方法でPBTを得る場合、エステル化工程では原料として用いられる1,4−ブタンジオールの脱水環化反応によってテトラヒドロフランが副生され、留出される。エステル化工程からの留出物の主成分はエステル化反応時および1,4−ブタンジオールが脱水環化反応してテトラヒドロフランに変化する際に発生する水と前述したテトラヒドロフランであり、テトラヒドロフラン濃度はエステル化条件によって影響を受けるが、テトラヒドロフラン含有量は通常50重量%以下である。
【0004】
テトラヒドロフランは、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂などの高分子化合物への溶解力が大きく、また沸点が低いことから反応溶媒、抽出溶媒、一般溶剤として広く使われている。また、近年テトラヒドロフランは、ルイス酸やプロトン酸を触媒として開環重合することで得られるポリオキシテトラメチレングリコール(以下PTMGという)を製造する原料としても用いられ、きわめて有用な物質である。上記留出物には水とテトラヒドフランの他にアルコール化合物、アルデヒド化合物、ジヒドロフラン化合物などが含有されており、これらの水、アルコール化合物およびアルデヒド化合物を除去する方法として、特許文献1には、テトラヒドロフランと水の混合物を留出させて後、モレキュラーシーブによる吸脱着法によって前記留出混合物から水を除去し、さらにテトラヒドロフラン含有物を蒸留し不純物を除去する方法が提案されている。また、特許文献2には、モレキュラーシーブによる脱水工程に供給する原料蒸気の含水率および蒸気供給量を一定に供給する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記方法では一次濃縮工程に供給する原料供給量を一定に供給する場合、エステル化条件によってテトラヒドロフラン濃度が変動するとテトラヒドロフランの量が変動し、一次濃縮したテトラヒドロフランと水の混合蒸気量、すなわちモレキュラーシーブによる脱水工程に供給する蒸気供給量がそれに伴い変動する問題が生ずる。この問題に対し、一次濃縮したテトラヒドロフランと水の混合蒸気を凝縮させ、凝縮した留出液を一旦タンクに貯蔵した後に、蒸発器で蒸発気化させ、モレキュラーシーブによる脱水工程に供給する原料蒸気の供給量を一定に調節することができるが、この様な方法は、エネルギーを多く消費する、且つ留出液の貯蔵タンクを必要とすることから経済性が悪いという問題がある。また、エステル化工程から留出回収されるテトラヒドロフランと水の混合物はエステル化条件によってテトラヒドロフラン濃度が変動する場合、留出液を一旦貯蔵しているタンクでサンプリングして人手によってテトラヒドロフラン濃度の分析を行い、その結果に応じて一次濃縮工程に供給するテトラヒドロフラン量を調節することができるが、この様な方法は煩雑であり、連続的に分析できないことから、安定しない問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−277412号公報
【特許文献2】特開2000−334257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、モレキュラーシーブによる吸着法によりテトラヒドロフラン含有物を精製する工程において、テトラヒドロフランの純度を変動させることなく、一定の高純度を有するテトラヒドロフランを安定して製造することができるテトラヒドロフランの精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、テトラヒドロフラン含有物を濃縮工程に供給する際、移液ライン中のテトラヒドロフラン含有物中のテトラヒドロフラン濃度を測定し、その移送ラインにフィードバックすることで、濃縮する工程に供給するテトラヒドロフラン量を任意に調整し、モレキュラーシーブによる吸着脱水工程に供給するテトラヒドロフラン含有物量を変動させることがなく、テトラヒドロフランの純度を一定に安定し高純度テトラヒドロフランの製造できることを見出し本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、
(1)水および炭素数3〜10のアルコールを含有するテトラヒドロフラン含有物を、下記(イ)〜(ニ)を含む工程により精製する高純度テトラヒドロフランの製造方法である。
(イ)水、炭素数3〜10のアルコールおよびテトラヒドロフランを含有するテトラヒドロフラン含有物を蒸留し、テトラヒドロフランを濃縮する工程。
(ロ)濃縮する工程に供給するテトラヒドロフラン含有物の濃度を連続的に検知する濃度検知手段、その検知結果により濃縮工程に供給するテトラヒドロフラン含有物の流量を制御する流量制御手段および制御された量のテトラヒドロフランを濃縮工程に供給する手段を有し、前記濃度検知手段と前記流量制御手段を同時に実施する工程。
(ハ)濃縮されたテトラヒドロフラン含有物を、吸着剤を用いて吸着脱水する工程であって、
(I)濃縮されたテトラヒドロフラン含有物を蒸気として、一方の吸脱着塔に供給し、水分を吸着剤に吸着させる吸着工程と、
(II)吸着剤が水分を吸着している他方の吸脱着塔において、減圧した状態で吸着工程(I)から得られた無水有機物蒸気の一部をパージガスとして供給して、吸着剤に吸着している水分を脱着する工程を有し、
(II)において、パージガス量を(イ)工程に供給するテトラヒドロフラン量の25〜40%とする、工程。
(ニ)吸着脱水されたテトラヒドロフラン含有物を蒸留し、不純物を除去する工程。
【0010】
また、本発明は、
)前記テトラヒドロフラン含有物が、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとをエステル化反応させた後、次いで重縮合反応させてポリエステルを製造する際のエステル化反応時に生成する留出物である(1)記載の高純度テトラヒドロフランの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、精製テトラヒドロフランの純度を変動させることなく、効率よくテトラヒドロフランを精製する方法を提供できる。さらにプロセスの能力を最大限に発揮できるとともに、高純度テトラヒドロフランを最適の供給量で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明におけるテトラヒドロフラン製造装置の概略図の一例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、テトラヒドロフラン含有物は、テトラヒドロフラン、水および炭素数3〜10のアルコールを含有する。本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、テトラヒドロフラン含有物は、さらにイソブチルアルデヒドまたはn−ブチルアルデヒドから選ばれた少なくとも1種からなるアルデヒドを含むものでもよい。
【0015】
本発明では、テトラヒドロフラン含有物中の通常の組成比は、テトラヒドロフラン含有物全体において、好ましくは、テトラヒドロフラン(A)が2〜50重量%、より好ましくは5〜45重量%、さらにより好ましくは10〜40重量%であり、好ましくは、水(B)が98〜50重量%、より好ましくは55〜95重量%、さらにより好ましくは60〜90重量%であり、好ましくは、(A)+(B)が90〜99.7重量%、より好ましくは92〜99.5重量%である。
【0016】
本発明では、テトラヒドロフラン含有物は、好ましくは、テトラヒドロフラン100重量部に対して炭素数3から10のアルコールが0.3〜5.0重量部であり、より好ましくは0.5〜4.0重量部である。またアルデヒドを含有する場合は、テトラヒドロフラン100重量部に対して、好ましくは、0.005〜0.1重量部、より好ましくは0.007〜0.08重量部を含有する。
【0017】
本発明に好ましく使用されるテトラヒドロフラン含有物は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとをエステル化反応させた後、次いで重縮合反応させてポリエステルを製造するに際して、エステル化反応時に生成するテトラヒドロフランを含有する留出物を含むものである。
【0018】
また、ポリブチレンテレフタレートの原料は、好ましくは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分である。テレフタル酸は、好ましくは、全ジカルボン酸成分の50モル%以上を占めるものであり、60モル%以上を占めるものがより好ましく、70%以上を占めるものがさらにより好ましい。また、1,4−ブタンジオールは、好ましくは、全ジオール成分の50モル%以上を占めるものであり、より60モル%以上を占めるものが好ましく、70%以上を占めるものがさらにより好ましい。
【0019】
本発明に好ましく使用されるテトラヒドロフラン含有物は、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分として、具体的には、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0020】
また、本発明に好ましく使用されるテトラヒドロフラン含有物は、1,4−ブタンジオール以外のジオール成分として、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールが挙げられる。
【0021】
さらに、本発明に好ましく使用されるテトラヒドロフラン含有物は、例えば、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンジカルボン酸等のヒドロキシカルボン酸、及び、ベンジルアルコール、安息香酸、t−ブチル安息香酸等の単官能成分、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリン酸等の三官能以上の多官能成分等の1種または2種以上が共重合成分として用いてもよい。
【0022】
これらの原料の割合は、テレフタル酸に対して過剰量のブタンジオールを使用することが好ましく、具体的にはテレフタル酸に対して1.1〜3.0倍モル使用することが好ましく、1.1〜2.5倍モルの1,4ブタンジオールを使用することが特に好ましい。
【0023】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法は、テトラヒドロフラン含有物を、下記(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)工程を経ることにより、高純度テトラヒドロフランを得るものである。
(イ)水、炭素数3〜10のアルコールおよびテトラヒドロフランを含有するテトラヒドロフラン含有物を蒸留し、テトラヒドロフランを濃縮する工程。
(ロ)濃縮する工程に供給するテトラヒドロフラン含有物の濃度を連続的に検知する濃度検知手段、その検知結果により濃縮工程に供給するテトラヒドロフラン含有物の流量を制御する流量制御手段および制御された量のテトラヒドロフランを濃縮工程に供給する手段を有する供給工程。
(ハ)濃縮されたテトラヒドロフラン含有物の溶液を、吸着剤を用いて吸着脱水する工程。
(ニ)吸着脱水されたテトラヒドロフラン含有物を蒸留し、不純物を除去する工程。
【0024】
なお、本発明でテトラヒドロフラン含有物とは精製前のものをいい、精製テトラヒドロフランとは精製後のテトラヒドロフランをいう。
【0025】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、まず、(イ)の工程において、水、炭素数3〜10のアルコールおよびテトラヒドロフランを含有したテトラヒドロフラン含有物を蒸留し、テトラヒドロフランを濃縮する。
【0026】
(イ)の工程において、好ましくは、蒸留によりテトラヒドロフランと水の混合物を留出させ、水(B)の大部分と炭素数3〜10のアルコールを除去する。蒸留は、好ましくは、室温で行うことができる。蒸留圧力は53kPa〜304kPaが好ましく用いられ、67kPa〜203kPaがより好ましく用いられる。圧力が53kPa以下であると留出混合物を凝縮させるために低温の冷却水を必要とし、設備が煩雑となるので、また304kPaを越えると留出液中の水分が多くなり、次工程への負荷が大きくなるため好ましくない。還流比については0.1〜5が好ましく用いられ、0.2〜2がより好ましい。0.1未満では留出液中の炭素数3〜1のアルコールがテトラヒドロフラン100重量部に対して0.3重量以下とならない可能性があるので好ましくなく、また5を超えると多くのエネルギーが必要となるので好ましくない。
【0027】
蒸留方法は、蒸留回分式でも連続式でも可能であるが、効率面などから連続式が好ましく用いられる。
【0028】
連続蒸留を用いる場合の具体例としてはテトラヒドロフラン含有物を蒸留塔に連続的に供給し、塔底から水の大部分と一部のテトラヒドロフランおよび炭素数3〜10のアルコールを塔底より連続的に取り出し、塔頂よりテトラヒドロフラン−水混合物を連続的に留出させる方法が挙げられる。
【0029】
蒸留塔の理論段数は3〜30が好ましく、5〜20がより好ましく用いられる。理論段数が3〜30であると、精製が十分でき、テトラヒドロフラン含有物の不純物を十分に分離することができ、効率的である。この理由についてはテトラヒドロフラン含有物に多くの水と炭素数3〜10のアルコール成分が含まれるため、蒸留塔内で泡を形成するためと推定している。
【0030】
かくして(イ)の工程では、留出したテトラヒドロフラン含有物には、テトラヒドロフラン−水混合物に炭素数3〜10のアルコールが混入し、その混入量はテトラヒドロフラン(A)100重量部に対して、好ましくは、0.3重量部以下とすることできる。炭素数3〜10のアルコールの混入量は、より好ましくは0.2重量部以下、さらにより好ましくは0.15重量部以下とすることにより最終的に得られる精製品中の不純物濃度をさらに減少することができる。
【0031】
ここで炭素数3〜10のアルコールとしては、たとえば、アルキルアルコール、アラルキルアルコール等が挙げられ、具体的には、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、オクチルアルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0032】
また、(イ)の工程では、留出したテトラヒドロフラン含有物に存在する水の量は、蒸留条件によって異なるが、通常、留出混合物全体に対して3〜15重量%である。留出したテトラヒドロフラン含有物に存在する水の量は、好ましくは4〜12重量%である。
【0033】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、(ロ)工程は、濃縮する工程に供給するテトラヒドロフラン含有物の濃度を連続的に検知する濃度検知手段、その検知結果により濃縮工程に供給するテトラヒドロフラン含有物の流量を制御する流量制御手段および制御された量のテトラヒドロフランを濃縮工程に供給する手段を有する供給工程である。
【0034】
本発明の(ロ)工程は、好ましくは、ポリエステルの製造工程において得られたテトラヒドロフラン含有物の濃度を連続的に検知する濃度検知手段、その検知結果により濃縮工程に供給するテトラヒドロフラン含有物の流量を制御する流量制御手段および制御された量のテトラヒドロフランを濃縮工程に供給する手段を有する供給工程である。ポリエステルの製造工程で得られたテトラヒドロフラン含有物は、より好ましくは、一旦タンクに貯蔵し、ポンプによりテトラヒドロフラン含有物の液を循環し一部を(イ)工程に供給する。ポンプによる循環は特に制限がなく(イ)工程への供給だけでもよいが、循環することが好ましい。
【0035】
本発明で使用される濃度検知手段は、テトラヒドロフラン含有物の流れを阻害しないオンラインタイプの分析計が好ましい。一般的に知られている分析計としては、ガスクロマトグラフィー、超音波分析計、密度計、コリオリ式質量流量計があるが、プラントに設置するオンライン分析計としては、密度と流量が同時に測定できるコリオリ式質量流量計が特に好ましい。このような濃度検知手段は、テトラヒドロフラン含有物の移液ライン中に設置するのが好ましいが、移液ラインに分岐した側管を設け、この側管に検知器を設置し、側管を流れるテトラヒドロフランの含有量を分析してもよい。なお、移液ラインから採取した試料を別の場所にある検知管にて分析しても目的を達成することができる。
【0036】
濃縮工程に供給するテトラヒドロフラン含有物の流量を制御する流量制御手段としては弁が好ましく、流量を制御する弁としては、グローブ、バタフライ弁、ボール弁がより好ましい。精度よく流量を制御するうえでは、グローブ弁が特に好ましい。また、流量制御手段としては、手動制御、自動制御があるが、効率面などから自動制御が好ましく用いられる。
【0037】
制御された量のテトラヒドロフランを濃縮工程に供給する手段としては、ポンプが好ましく、ポンプによりテトラヒドロフラン含有物の液を循環し一部を(イ)工程に供給してもよい。
【0038】
本発明の(ロ)工程において、濃度検知手段と流量制御手段とを同時に実施することが好ましい。本発明において、濃度検知手段と流量制御手段とを同時に実施するとは、濃度検知手段で検知された情報を流量制御手段に伝え、濃度検知と流量制御を互いにコントロールして行うことを意味する。
【0039】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、(ハ)工程として、濃縮されたテトラヒドロフラン含有物の溶液を、吸着剤を用いて吸着脱水する。
【0040】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、(ハ)工程で用いる吸着剤としては、具体的には、たとえば、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ(合成および天然産ゼオライト、カーボンモレキュラーシーブ等)、イオン交換樹脂、硫酸塩無水物、炭酸塩無水物、活性炭あるいは澱粉質などが挙げられる。本発明では、吸着剤として、モレキュラーシーブを用いるのが好ましく、天然産ゼオライト、合成ゼオライト、カーボンモレキュラーシーブ等、市販の粒状モレキュラーシーブをいずれも好適に用いることができる。粒状モレキュラーシーブの形状は、球状、円柱状、ペレット状、破砕状、顆粒状などのいずれでもよく、30〜3メッシュの範囲の大きさのものをいずれも用いることができる。このうち特に好ましくは、平均細孔直径が0.2〜0.5nmである粒状のモレキュラーシーブを用いるのが望ましく、特に、粒状のゼオライト3A、ゼオライト4A、ゼオライト5AあるいはNSC−4カーボンモレキュラーシーブなどを用いるのが好ましい。
【0041】
本発明では、これらの吸着剤は、一種のみで用いても、二種以上を適宜混合して用いてもよい。
【0042】
本発明で用いられる、より好ましいモレキュラーシーブによる吸着法について、下記に記載する。
【0043】
モレキュラーシーブによる吸着法の具体例としては、(イ)工程で得られた留出混合物を少なくとも2つの吸着塔を備えた装置を用いて、(I)水を含有する有機化合物を蒸気として一方の吸脱着塔に供給し、水分を吸着剤に吸着させる吸着工程と、(II)吸着剤が水分を吸着している他方の吸着塔において、減圧した状態で吸着工程(I)から得られた無水有機物蒸気の一部をパージガスとして供給して、吸着剤に吸着している水分を脱着し、続いて吸脱着塔内を吸着工程圧力までパージガスで昇圧する、脱着/昇圧工程と、を行うとともに、吸着工程と脱着/昇圧工程を切り替えて運転する圧力スイング吸着法が挙げられる。(イ)工程よりも減圧された吸脱着塔に連続的に供給し、塔頂から水(B)をテトラヒドロフラン(A)100重量部に対して0.05重量部以下の蒸気を連続的に取り出し(ニ)工程に供給し、塔底からはテトラヒドロフラン−水の混合物を連続的に留出させ、再度(ロ)工程に返送する。
【0044】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、(ハ)工程として、好ましくは、圧力スイング吸着法を用いる。圧力スイング吸着法は、回分式、連続式のどちらも可能であるが、効率面などから連続式が好ましく用いられる。
【0045】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、(ハ)工程として、好ましくは、吸着圧力が100〜300kPaであって、脱着圧力が1〜50kPaであることが好ましい。さらに吸着工程に導入する蒸気の温度が40〜200℃であることも好ましく、含水率が20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下であることが望ましい。パージガス量は(イ)工程に供給するテトラヒドロフラン量の5〜50%であることが好ましく、より好ましくは25〜40%である。また、脱水方法では、パージガスとして、吸着工程で得られた蒸気の一部を供給する代わりに、不活性ガスを供給してもよい。不活性ガスは、窒素、二酸化炭素、水素、メタン、アルゴン、およびヘリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、パージガスが不活性ガスと、吸着工程で得られた蒸気の一部とからなることが好ましい。
【0046】
本発明では、(ハ)工程は、好ましくは、(イ)工程で得られた留出混合物を(ハ)工程を経た後、得られた留出混合物の水をテトラヒドロフラン100重量部に対して0.05重量部以下とし、より好ましくは、水をテトラヒドロフラン(A)100重量部に対して0.03重量部以下、さらにより好ましくは、0.01重量部以下とする。
【0047】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、(ニ)工程として、吸着脱水されたテトラヒドロフラン含有物を蒸留し、不純物を除去する。
【0048】
不純物は、一般的には有機不純物であり、さらに具体的には、本発明の炭素数3〜10のアルコール、アルデヒド、プロピオンアルデヒド、ジヒドロフラン、メタクロレイン、メチルテトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0049】
(ニ)工程において、蒸留方法は、回分式、連続式のどちらも可能であるが、効率面などから連続式が好ましく用いられる。
【0050】
(ニ)工程において、蒸留装置は、好ましくは、蒸留塔である。蒸留塔は、1塔あるいは複数の塔を用いることができるが、複数の塔を用いる場合は設備コスト的に2塔とするのが好ましく、その場合1塔目は塔頂から低沸不純物を除去し、2塔目は塔底から高沸不純物を除去し、塔頂から目的の留出液を得ることがより好ましい。また、1塔で行う場合は低沸及び高沸不純物を1塔で除去する方法が好ましく、塔頂から低沸不純物、塔底から高沸不純物を取り出し、蒸留塔中段から目的の留出液を得ることが好ましい。
【0051】
(ニ)工程において、蒸留塔の理論段数は20〜60が好ましく、30〜50がより好ましく用いられる。理論段数が20〜60であると、有機不純物が十分分離でき、本発明の目的とする精製テトラヒドロフランを得られるので好ましく、設備が高額とならない。
【0052】
(ニ)工程において、蒸留塔の圧力は、53kPa〜304kPaが好ましく用いられ、67kPa〜203kPaがより好ましく用いられる。圧力が53kPa〜304kPaであるとテトラヒドロフラン主成分とする留出液を凝縮させるために低温の冷却水を必要ではないので、設備が煩雑とならず、また、蒸留時の温度が高くならないので、副反応の生成等により新たな不純物が生成しない。蒸留塔の還流比については、5〜100が好ましく用いられ、10〜60がより好ましい。
【0053】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、(ニ)工程を経た後、得られる留出液中には、好ましくは、テトラヒドロフラン100重量部に対して水0.01重量部以下、アルデヒド(D)が0.005重量部以下となる。
【0054】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法により得られた精製テトラヒドロフランには、好ましくは、テトラヒドロフラン100重量部に対して水が0.01重量部以下、アルデヒドが0.005重量部以下であり、より好ましい形態としては、テトラヒドロフラン100重量部に対して水が0.005重量部以下、アルデヒドが0.003重量部以下、さらにより好ましい形態としてはテトラヒドロフラン100重量部に対して水が0.003重量部以下、アルデヒドが0.002重量部以下とすることである。
【0055】
テトラヒドロフラン100重量部に対して水が0.01重量部を超えたり、アルデヒドが0.005重量部を超えたりするとPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)の原料として用いた場合、着色するので好ましくない。また、上記以外の不純物、具体的には、プロピオンアルデヒド、ジヒドロフラン、メタクロレインについても、テトラヒドロフラン100重量部に対して0.003重量部以下とするのが好ましく、0.002重量部以下とするのがより好ましい。
【0056】
本発明において、水の量は、カールフィッシャー水分計を用いて水分量を測定し、試料に対する含有割合を求めることができる。
【0057】
またテトラヒドロフランを含めた各有機物についてはキャピラリー型ガスクロマトグラフを用いて、各成分に対応するピーク面積より各成分の含有割合を求め(X%)、(1)で求められた水分濃度(W%)を基に下記式で補正して含有量を求めるものである(Y%)。なお、テトラヒドロフランに対する含有量は対象となる有機含有率をテトラヒドロフランの含有率で除して求める。
Y(%)=(100−W)/100×X(%)
【0058】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法では、高純度のテトラヒドロフランを製造することができる。得られた精製テトラヒドロフランの組成は、例えば、テトラヒドロフラン100重量部に対して水が0.05重量部以下、炭素数3〜10のアルコールが0.003重量部以下、アルデヒドがある場合には、アルデヒド0.002重量部以下の精製テトラヒドロフランを得ることができる。
【0059】
次に、ポリブチレンテレフタレートを製造するためのエステル化反応及び重縮合反応方法について説明する。
【0060】
本発明においては、ポリブチレンテレフタレートを製造するためのエステル化反応及び重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に触媒を添加することが好ましく、好ましく使用される触媒は、有機チタン化合物であり、下記式で表される化合物が好ましく用いられる。
(R−O)Ti
ここでRは炭素数3〜10までの炭化水素基をあらわす。
【0061】
好ましく使用される触媒の具体例としてはチタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトライソプロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、テトラ−2エチルヘキシルエステル、テトラオクチルエステル、テトラステアリルエステルあるいはこれらの混合エステルなどが挙げられるが、これらの中でもチタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトライソプロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステルが好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステルが特に好ましく用いられる。
【0062】
これらの有機チタン化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することができる。また、エステル化反応および重縮合時に同一種を用いてもよく、異種の有機チタン化合物を用いてもよい。さらに、この有機チタン化合物を適当な有機溶媒を一緒に添加してもよい。この場合の有機溶媒としてはイソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられるが、品質面の影響等を考慮すると1,4−ブタンジオールが好ましく用いられる。
【0063】
上記有機チタン化合物の添加量は、生成するポリエステル100重量部に対して0.005重量部以上、0.5重量部以下が好ましく、特に0.01重量部以上、0.2重量部以下の範囲が好ましい。
【0064】
この有機チタン化合物の添加時期についてはエステル化時有機チタン化合物の少なくとも一部が存在していれば特に限定はなく、エステル化反応前に一括添加しても、エステル化反応前に一部添加し、残りは重縮合反応終了までの任意の段階で添加するという分割添加をしてもよい。
【0065】
また、エステル化および重縮合反応においては、反応を効果的に進める上で、有機チタン化合物以外の触媒を別途使用することができ、例えば三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物、ジルコニウムテトラn−ブトキシなどのジルコニア化合物およびスズ化合物などを用いてもよく、特にスズ化合物の使用が好ましい。
【0066】
その具体例としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサへキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイドなどを挙げることができるが、これらの中でも、特にモノアルキルスズオキサイド化合物が好ましく使用される。上記の有機チタン化合物以外の触媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。また、上記有機チタン化合物以外の触媒の添加量は、生成するポリエステル100重量部に対して0.01重量部以上0.2重量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0067】
ポリブチレンテレフタレートの製造方法は、回分法でも連続法でもよく、通常のポリエステル製造に用いられるエステル化条件をそのまま適用することができる。エステル化反応は反応温度180〜250℃で行うことが好ましく、200〜240℃とすることがさらに好ましい、また圧力は6.7kPa〜101.3kPaとすることが好ましく、13.3kPa〜93.3kPaの減圧下で行うことがより好ましい。また、全エステル化反応後のPBTオリゴマーの反応率は97%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。また、エステル化の反応装置としては公知の装置が使用でき、エステル化反応槽としては、例えば、攪拌式縦型完全混合槽、熱対流式縦型混合槽および塔型連続反応槽等を1つあるいは同種または異種の槽を直列に2つ以上配して用いることができる。また、エステル化反応で生じる水と副生するテトラヒドロフランを主成分とするテトラヒドロフラン含有物はエステル化反応槽に連結した精留塔の塔頂から留出させ得ることができる。
【0068】
かかるエステル化反応で製造したPBTオリゴマーは重縮合反応槽へと移送され、好ましくは230〜260℃、さらに好ましくは240〜255℃で、好ましくは13.3Pa〜13.3kPaの減圧下で重縮合反応が行われる。また、重縮合反応槽としては、例えば、攪拌式縦型重合槽、攪拌式横型重合槽、及び薄膜蒸発式重合槽等を1つあるいは同種または異種の槽を直列に2つ以上配して用いることができる。さらに最終的に得られた
PBT重合体は造粒化工程等でペレット化され、必要に応じて固相重合によりさらに高分子量化される。
【0069】
本発明の高純度テトラヒドロフランの製造方法において、テトラヒドロフラン含有物は、好ましくは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとをエステル化反応させた後、次いで重縮合反応させてポリエステルを製造するに際のエステル化反応時に生成する留出物である。
【実施例】
【0070】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の分析は以下の方法に従って行った。
【0071】
(1)テトラヒドロフラン含有物中の水の量
水を1%以上含むテトラヒドロフラン含有物については、試料を約10〜100μl(試料中の水分により異なる)を精秤した後、容量滴定法式カールフィッシャー水分計(平沼産業(株)製)を用いて水の量(μg)を測定し、試料に対する重量%として算出した。また、水が1重量%未満のテトラヒドロフラン含有物あるいは精製テトラヒドロフランについては、試料を約0.1〜1ml(試料中の水分により異なる)を精秤した後、電量滴定法式カールフィッシャー水分計(三菱化学(株)製)を用いて水分量(μg)を測定し、試料に対する重量%を算出した。なお、テトラヒドロフラン(A)100重量部に対する重量部を求めるときは次項で求められるテトラヒドロフラン(A)の量を基に求めた。
【0072】
(2)テトラヒドロフラン含有物の有機含有量
Ultra−1(架橋型メチルシロキサンタイプ)をカラムとしてキャピラリー型ガスクロマトグラフ(島津製作所(株)製)を用いて、各成分に対応するピーク面積より各成分の含有割合を求め(X%)、(1)で求められた水分濃度(W%)を基に下記式で補正して含有量を求めた(Y%)。なお、テトラヒドロフラン100重量部に対する重量部を求めるときはテトラヒドロフランの量を基に求めた。
Y(%)=(100−W)/100×X(%)
【0073】
実施例1
原料としてテレフタル酸754重量部/時と1,4−ブタンジオール692重量部/時および触媒としてテトラブチルチタネート0.05重量部/時を精留塔および攪拌機のついたエステル化反応槽に連続供給しエステル化を行った後、重縮合反応工程へポリブチレンテレフタレートを得た。エステル化反応槽で生成した水とテトラヒドロフランとを精留塔を通して留去してテトラヒドロフラン含有物を得た。
【0074】
図1に、実施例1で用いた装置の概略図を示した。
【0075】
理論段数10段の蒸留塔5(第1蒸留塔)に上記のテトラヒドロフラン含有物を導管3より供給し、分析計4としてマイクロモーション流量計ELITE(エマソン製)を使用して密度を測定し、密度をテトラヒドロフラン濃度に反映しテトラヒドロフラン濃度を連続的かつ自動的に算出した。測定結果から第1蒸留塔に供給するテトラヒドロフラン量が1200重量部/時となるように供給量をグローブ弁にて自動的にオンライン制御し、常圧下、塔底温度110℃、還流比1で蒸留し、塔底6から水、若干のテトラヒドロフランおよび一部のn−ブタノールを留出させた。塔頂から留出混合蒸気を得た。
【0076】
上記留出混合蒸気を導管7を経由して水を選択的に吸着するモレキュラーシーブを充填した吸着塔8(吸着塔)に供給した。吸着塔8は2つの吸着塔を有するが、1つの吸着塔は、圧力0.15MPa、塔頂温度120℃とし、導管7から留出混合蒸気を供給し、モレキュラーシーブによる水の吸着を行い、塔頂より脱水されたテトラヒドロフランの蒸気を得た(吸着工程)。
【0077】
この蒸気の一部を圧力が70kPaのもう一つの吸着塔に返しモレキュラーシーブに吸着した水の脱着を行い(脱着工程)、テトラヒドロフラン、水等を含む脱着液は吸着塔底から導管9を経てテトラヒドロフラン含有物貯槽2に返送した。2つの吸着塔を前後のバルブにより吸着工程と脱着工程の吸着塔を切り替えることで連続的に脱水されたテトロヒドロフランを主成分とする蒸気を得た。
【0078】
この蒸気を導管10を経由し、理論段数20段の蒸留塔11(第2蒸留塔)に供給し、常圧、塔底温度70℃、還流比50で蒸留し、イソブチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ジヒドロフランを多く含むテトラヒドフラン含有物を導管12より抜き出し、塔底から導管13を経由して蒸留塔14(第3蒸留塔)に供給を行った。蒸留塔14は理論段数35段、常圧、塔底温度70℃、還流比10で蒸留し、塔底からはn−ブチルアルデヒド、n−ブタノールを多く含むテトラヒドロフラン含有物を導管16より抜き出し、塔頂から導管15を経由して精製テトラヒドロフラン800重量部/時を得た。該精製テトラヒドロフラン中の水分量は、30±3ppmであった。
【0079】
実施例2〜
実施例1と同様にして、テトラヒドロフランの精製を行った。操作条件および得られた精製テトラヒドロフランの抜出量および水分量を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
比較例1
オンライン制御を行わずに、蒸留塔5(第1蒸留塔)に供給するテトラヒドロフラン含有物を6時間毎に抜き出し、テトラヒドロフラン濃度を測定し、手動でテトラヒドロフランの供給量を制御した以外は、実施例1と同様の条件で行った。該精製テトラヒドロフラン中の水分量は60±20ppmであった。
【0082】
比較例2
オンライン制御を行わずに、蒸留塔5(第1蒸留塔)に供給するテトラヒドロフラン含有物の供給量を一定で行った以外は、実施例1と同様の条件で行った。該精製テトラヒドロフラン中の水分量は120±50ppmであった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本精製方法で精製したテトラヒドロフランは純度を変動させることなく、一定の高純度を有していることから、品質に優れるので、反応溶媒、抽出溶媒、一般溶剤や弾性繊維の原料として有用に用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 テトラヒドロフラン含有物受け入れライン
2 テトラヒドロフラン含有物貯槽
3 テトラヒドロフラン含有物供給管
4 分析計
5 第1蒸留塔
6 塔底物抜出しライン
7 吸着塔供給ライン
8 吸着塔
9 脱着液抜き出しライン
10 第2蒸留塔供給ライン
11 第2蒸留塔
12 塔頂物抜き出しライン
13 第3蒸留塔供給ライン
14 第3蒸留塔
15 精製テトラヒドロフラン抜き出しライン
16 塔底物抜き出しライン
図1