特許第5791890号(P5791890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791890
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】パルセーションダンパー
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/00 20060101AFI20150917BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20150917BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   F02M55/00 E
   F02M55/02 310C
   F02M55/02 350E
   F02M37/00 D
   F02M37/00 321A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-284889(P2010-284889)
(22)【出願日】2010年12月21日
(65)【公開番号】特開2012-132361(P2012-132361A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年7月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】野 亦 雄 志
(72)【発明者】
【氏名】小 澤 祐 二
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−182800(JP,A)
【文献】 特開昭61−145358(JP,A)
【文献】 特開2003−205312(JP,A)
【文献】 特開平07−144221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/00
F02M 37/00
F02M 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フューエルインジェクションレールに取り付けられるパルセーションダンパーにおいて、減衰室が内部に形成され、燃料が燃料供給管から前記減衰室に直接流入しない位置で前記フューエルインジェクションレールに下向きの姿勢で固定される前記パルセーションダンパーの本体と、前記パルセーションダンパーの本体に螺合し前記フューエルインジェクションレールに前記パルセーションダンパーの本体を固定するためのスタッドボルトと、を備え、前記スタッドボルトは、前記燃料供給管の出口と対向しない位置に開口し、前記フューエルインジェクションレール内の燃料の圧力変動を前記減衰室に導入する複数の通路を有し、前記通路は、前記減衰室と前記フューエルインジェクションレールとの間で、当該フューエルインジェクションレール内部の圧力勾配を利用して燃料を循環させることを特徴とするパルセーションダンパー。
【請求項2】
前記通路は、前記スタッドボルトに軸方向に貫通する複数の穴からなり、前記穴の開口位置が燃料の圧力勾配の方向に分散するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のパルセーションダンパー。
【請求項3】
前記通路は、前記スタッドボルトに軸方向に貫通する1つの貫通穴を形成し、前記貫通穴を仕切り板で仕切ることにより複数の通路を形成し、前記貫通穴の開口位置が燃料の圧力勾配の方向に分散するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のパルセーションダンパー。
【請求項4】
前記通路は、前記スタッドボルトの中心に軸方向に貫通穴を形成するとともに、前記スタッドボルトの外周に前記通路となる複数の溝を形成し、前記溝の開口位置が燃料の圧力勾配の方向に分散するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のパルセーションダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンの燃料噴射装置に燃料を分配するフューエルインジェクションレールや燃料配管に取り付けて、燃料の脈動を減衰させるパルセーションダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料供給系では、燃料噴射装置のインジェクターが開閉するたびに、燃料の脈動現象が顕著に表れる。燃料の脈動は、燃料配管を介して車体の床下から車内に騒音として伝わるという問題を惹起する。このため、燃料の脈動を低減させるために、パルセーションダンパーをフューエルインジェクションレールに取り付けることが従来から行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図6は、パルセーションダンパーの従来例を示す。参照番号1は、フューエルインジェクションレールの本体を示し、2はインジェクターを取り付けるためのインジェクターカップ、3はパルセーションダンパーを示す。燃料は、燃料供給管4からフューエルインジェクションレールの本体1に導入され、インジェクターカップ3に取り付けられている図示しないインジェクターからエンジンの気筒内に噴射される。
【0004】
図7は、図6のパルセーションダンパー3の断面を示す。パルセーションダンパーの本体5には、減衰室6が形成されており、この減衰室6に燃料が導入される。減衰室6の底面はスプリングで支持されている。パルセーションダンパー3の本体5は、フランジ付きのスタッドボルト8を介してフューエルインジェクションレールの本体1に固定される。このパルセーションダンパー3では、本体5を固定するスタッドボルト8には通路9が形成され、燃料はこの通路9を通じて減衰室6と連通するようになっている。パルセーションダンパー3の本体5には、スタッドボルト8の雄ねじに対応する雌ねじが切ってあり、フューエルインジェクションレールの本体1に固定されたスタッドボルト8にパルセーションダンパー3の本体5をねじ込むことで固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−104636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなパルセーションダンパー3では、ガソリンから分離した水(または不純物)が減衰室6に入り込み、減衰室に滞留してしまうことがある。また、近年では、ガソリンにアルコールを混合した燃料が使われるようになっており、このようなアルコール混合燃料を使用していると、パルセーションダンパー3の減衰室6に水(または不純物)が溜まることが多い。このような水(または不純物)が減衰室6に滞留すると、本体5の内面に錆びが発生し、ダンピング機能を阻害するという問題がある。錆びの発生が進行すると、最悪の場合には燃料漏れの虞がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、水や不純物等がパルセーションダンパー本体内の減衰室に滞留することを防止できるようにしたパルセーションダンパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、フューエルインジェクションレールに取り付けられるパルセーションダンパーにおいて、減衰室が内部に形成され、燃料が燃料供給管から前記減衰室に直接流入しない位置で前記フューエルインジェクションレールに下向きの姿勢で固定される前記パルセーションダンパーの本体と、前記パルセーションダンパーの本体に螺合し前記フューエルインジェクションレールに前記パルセーションダンパーの本体を固定するためのスタッドボルトと、を備え、前記スタッドボルトは、前記燃料供給管の出口と対向しない位置に開口し、前記フューエルインジェクションレール内の燃料の圧力変動を前記減衰室に導入する複数の通路を有し、前記通路は、前記減衰室と前記フューエルインジェクションレールとの間で、当該フューエルインジェクションレール内部の圧力勾配を利用して燃料を循環させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、前記通路は、前記スタッドボルトに軸方向に貫通する複数の穴からなる。また他の実施形態によれば、前記スタッドボルトに軸方向に貫通する1つの貫通穴を形成し、前記貫通穴を仕切り板で仕切ることにより複数の通路が形成される。
【0010】
前記スタッドボルトの中心に軸方向に貫通穴を形成するとともに、前記スタッドボルトの外周に前記通路となる複数の溝を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態によるパルセーションダンパーを示す縦断面図である。
図2図1のII-II横断面図である。
図3】本発明の第1実施形態によるパルセーションダンパーの他の変形例を示す横断面図である。
図4】本発明の第2実施形態によるパルセーションダンパーを示す縦断面図である。
図5】本発明の第3実施形態によるパルセーションダンパーを示す縦断面図である。
図6】従来のパルセーションダンパーを示す斜視図である。
図7】従来のパルセーションダンパーを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるパルセーションダンパーの一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態によるパルセーションダンパーを示す。図1において、参照番号10は、フューエルインジェクションレールの本体を示し、参照番号12は、本実施形態によるパルセーションダンパーを示す。
【0013】
このパルセーションダンパー12の本体14の内部には、減衰室15が形成されている。この減衰室15には、燃料の脈動を吸収させるために底板16が設けられており、この底板16は、スプリング17によって付勢されている。なお、燃料の脈動を吸収する機構としては、底板16をスプリング17で付勢する替わりにダイヤフラム機構を用いるようにしてもよい。
【0014】
パルセーションダンパー12の本体14は、スタッドボルト18を用いてフューエルインジェクションレールの本体10に固定されている。パルセーションダンパー12の本体14には雌ねじが形成されており、スタッドボルト18は、この雌ねじに螺合するようになっている。この実施形態では、スタッドボルト18には、フランジ部19が形成されているフランジ付きスタッドボルトが用いられている。このフランジ部19は、パルセーションダンパー12の減衰室15を閉じる蓋としての役割も果たしている。また、フランジ部19の上面には、円環状の凸部20が形成されており、この凸部20は、フューエルインジェクションレールの本体10の底面に開口する穴21にぴったりと嵌合するようになっていて、ろう付け等によって接合されている。
【0015】
本実施形態では、図1図2に示すように、フューエルインジェクションレールの本体10と減衰室15との間で燃料を循環させる2つの通路22a、22bが、次のように、スタッドボルト18に軸方向に貫通するように形成されている。
本実施形態の場合、通路22a、22bがフューエルインジェクションレールの本体10に開口する位置は、フューエルインジェクションレールの本体10内において生じる圧力勾配の方向に分散するようになっている。図示しないインジェクターから燃料が噴射されることで、フューエルインジェクションレールの本体10内部の燃料圧力が変動し、例えば、矢印で示すように、高圧から低圧へ向かう圧力勾配が生じる。通路22a、22bの間には差圧が生じるので、一方の通路22aは、減衰室15に燃料を導入する通路となり、他方の通路22bは減衰室15から燃料をフューエルインジェクションレールの本体10に戻す通路になる。
【0016】
本実施形態によるパルセーションダンパーは、以上のように構成されるものであり、次に、その作用並びに効果について説明する。
【0017】
フューエルインジェクションレールの本体10には、長手方向に複数の図示しないインジェクターが取り付けられており、これらインジェクターが燃料の噴射を繰り返すと、本体10の内部には、圧力変動とともに圧力勾配が生じる。
【0018】
インジェクターが閉じて燃料の圧力が高まると、その圧力によってパルセーションダンパー12の減衰室15にあるスプリング17が圧縮され、圧力が下がるとスプリング17が伸びるというように、スプリングの弾性エネルギーに転換することで脈動を吸収することができる。
【0019】
さらに、圧力勾配があることによって、パルセーションダンパー12には、次のようにして、スタッドボルト18に形成した通路22a、22bを通ってフューエルインジェクションレールの本体10とパルセーションダンパー12の減衰室15との間で燃料が循環するようになる。
【0020】
図1において、例えば、矢印で示すように、高圧から低圧への圧力勾配が生じた場合、通路22a、22bの間には差圧が生じることになるので、一方の通路22aは、減衰室15に燃料を導入する通路となり、他方の通路22bは、燃料を減衰室15からフューエルインジェクションレールの本体10に戻す通路となる。
【0021】
このようにして、フューエルインジェクションレールとパルセーションダンパー12の間で常に燃料を循環させることができるので、従来のパルセーションダンパーとは異なり、燃料から分離した水を滞留させることなく、確実に減衰室15から排出することができる。また、様々な不純物についても、同じようにして減衰室15から排出することができる。
【0022】
さらに、このような循環通路を、パルセーションダンパー12を固定するスタッドボルト18に形成しているため、循環のために配管を接続する必要がなく、パルセーションダンパー12そのものをフューエルインジェクションレールの本体10に固定するだけで済み、レイアウト上の制約を受けることがない。
【0023】
なお、以上説明した実施形態は、スタッドボルト18にその軸方向に二つの穴からなる通路22a、22bを形成した例であるが、図3(a)に示すように、通路として3つの穴24a、24b、24cを形成したり、あるいは図3(b)に示すように、4つの穴25a、25b、25c、25dにしてもよい。圧力勾配の方向に分散していれば、5穴以上であってもよい。
【0024】
第2実施形態
次に、本発明の第2の実施形態によるパルセーションダンパーについて、図4を参照して説明する。なお、図1と同一の構成要素には、同一の参照符合を付してその詳細な説明は省略する。
この第2実施形態では、スタッドボルト18に、1つの貫通穴を軸方向に形成し、この貫通穴を仕切り板26で仕切ることよって、2つの通路27a、27bを形成している。この場合、通路27a、27bは、圧力勾配の方向に分散しており、通路27a、27bの間には差圧が生じることになるので、フューエルインジェクションレールとパルセーションダンパー12の間で常に燃料を循環させることができるのは、第1実施形態と同様である。
【0025】
なお、この第2実施形態においても、仕切り板26によって仕切られる通路は、2つに限られるものではなく、3以上の通路を仕切るようにしてもよい。
【0026】
第3実施形態
次に、図5は、本発明の第3の実施形態によるパルセーションダンパーを示す。なお、図1と同一の構成要素には、同一の参照符合を付してその詳細な説明は省略する。
この第3実施形態では、スタッドボルト18の中心に貫通穴30を形成するとともに、スタッドボルト18の外周のねじ部に溝を切ることによって、通路31a、31bを形成し、さらに、フランジ部19に穴32a、32bを形成した実施形態である。
【0027】
この第3実施形態の場合、穴32a、32bと貫通穴30の開口は、圧力勾配の方向に分散しており、差圧が生じることになるので、フューエルインジェクションレールとパルセーションダンパー12の間で常に燃料を循環させることができる。
【0028】
以上、本発明に係るパルセーションダンパーついて、フューエルインジェクションレールの本体にパルセーションダンパーを取り付ける実施形態を挙げて説明したが、本発明のパルセーションダンパーは、フューエルインジェクションレールに燃料を供給する燃料配管に直接取り付けるようにしてよい。
【0029】
一部縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10…フューエルインジェクションレールの本体、12…パルセーションダンパー、15…減衰室、16…底板、17…スプリング、18…スタッドボルト、19…フランジ部、22a、22b…通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7