特許第5791904号(P5791904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5791904光散乱層を持つ隠れた有機光電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791904
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】光散乱層を持つ隠れた有機光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20150917BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20150917BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20150917BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
   H05B33/02
   H01L31/04 135
   H05B33/10
   H05B33/14 A
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-548223(P2010-548223)
(86)(22)【出願日】2009年2月19日
(65)【公表番号】特表2011-513907(P2011-513907A)
(43)【公表日】2011年4月28日
(86)【国際出願番号】IB2009050686
(87)【国際公開番号】WO2009107043
(87)【国際公開日】20090903
【審査請求日】2012年2月9日
【審判番号】不服2014-5566(P2014-5566/J1)
【審判請求日】2014年3月26日
(31)【優先権主張番号】08152016.5
(32)【優先日】2008年2月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163810
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 広和
(72)【発明者】
【氏名】タナセ クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】リフカ ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ポポヴィチ ミハエラ アイ
(72)【発明者】
【氏名】グライネル ホルスト
【合議体】
【審判長】 藤原 敬士
【審判官】 本田 博幸
【審判官】 鉄 豊郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−297479(JP,A)
【文献】 国際公開第03/026357(WO,A1)
【文献】 特開平5−29641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L51/50-51/56
H01L31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一及び第二の光電子活性領域を有し、これらの領域は、並んで配置され前記第一及び第二の光電子活性領域は、後部電極と前部電極とを少なくとも有し、これらの間には、有機光電子材料が挟まれており、前記第一の光電子活性領域の後部電極、有機光電子材料、前部電極が、前記第二の光電子活性領域の後部電極、有機光電子材料、前部電極と、間隙領域によって分離され、前記後部電極が反射性であり、前記第一及び第二の光電子活性領域に重ね合わされたカバー層が、前記第一及び第二の光電子活性領域と前記間隙領域との複合表面を少なくとも覆い、前記カバー層は、少なくとも部分的に加水分解されたシリカゾルから成る透明マトリクスに分散された第一の材料の光散乱粒子を有する材料を有し、前記カバー層は、50乃至95%の範囲の反射率を持つ、光電子デバイス。
【請求項2】
前記光電子材料がエレクトロルミネセンス材料である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記有機光電子材料が有機太陽光発電材料である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記カバー層が前記少なくとも1つの光電子活性領域に重ね合わされ、前記少なくとも1つの光電子活性領域の全表面を少なくとも覆う、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記透明マトリクスがシリカゾルゲルである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第一の材料の前記粒子の屈折率が前記透明マトリクスの屈折率よりも高い、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第一の材料の前記粒子の屈折率が少なくとも2.0である、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第一の材料が、TiOアナターゼ、TiOルチル、ZrO、Ta、ZnSe、ZnS、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記粒子が前記カバー層材料の10乃至約80重量%を占める、請求項5乃至8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第一の材料の前記粒子の平均粒径が100乃至1000nmの範囲にある、請求項5乃至9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記透明マトリクスが色染料を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
フレームに配置される請求項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイスを有する装置であって、前記フレームが前記デバイスの外側縁を少なくとも部分的に囲み、前記カバー層が、少なくとも1つの前記デバイスと、前記フレームの少なくとも一部分を覆う、装置
【請求項13】
光電子デバイスを提供するステップと、
前記第一の材料の粒子が中に分散された、任意に前加水分解されたシリカゾルを提供するステップと、
前記光電子デバイスの前記前部電極の前に前記シリカゾルの層を配置するステップと、
前記層を乾燥させるステップとを有する、請求項5に記載のデバイスの製造のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間に有機光電子材料が挟まれる後部電極と前部電極を少なくとも有し、該後部電極が反射性である、少なくとも1つの光電子活性領域と、該前部電極の前に配置されるカバー層とを有する、光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(有機発光ダイオード)及びOPV(有機太陽光発電)技術が、異なるタイプの照明/再充電用途に代わるものとして出現している。OLED及びOPVは有機光電子デバイスと総称される。一般的に、有機光電子デバイスは2つの電極を有し、この間に有機光電子材料が挟まれる。
【0003】
OLEDにおいて、有機光電子材料はエレクトロルミネセンス材料である。電流が電極間に流されると、有機エレクトロルミネセンス材料は発光する。
【0004】
OPVデバイスにおいて、光電子材料は有機太陽光発電材料であり、これは、電極間に電圧を生じるために、光子を集めてそれを負と正の電荷に変える。
【0005】
有機光電子デバイスの柔軟性のために、これらは柔軟性用途において、すなわちデバイスが通常動作中に曲げられ得るか、又は曲面上にあり、例えばOLEDの場合には曲面ディスプレイデバイス若しくは照明システムをもたらす用途において、有利に使用され得る。
【0006】
この文脈において、少なくとも今日の技術の欠点は、高い光利用を得るために、光電子材料を挟む陽極電極及び陰極電極のうちの一方が高反射性であることである。従ってデバイスはミラー状の外観を持ち、これは用途によっては望ましくない。例えば、オフ状態におけるOLEDの外観が重要であり、これを改良するために異なる解決法が提案されている。
【0007】
Duggal et al.のUS 6 501 218は、OLED技術を利用する屋外標識用のデバイス構造を記載している。ここで、文字又は数字などの標識にパターン化されるOLEDは、発光OLED領域を覆う高散乱性で非吸収性のコーティングと、非発光領域を覆う高吸収性コーティングと組み合わされる。その結果、標識(文字、数字)を形成する高散乱性材料と、標識の輪郭を形成する高吸収性コーティングの組み合わせのおかげで、低周辺光レベル条件下でもOLED光によって見ることができる標識が得られる。
【0008】
US 6 501 218はOLEDの上部の散乱性エナメルコーティングの使用を開示している。しかしながら、エナメルはプラスチックフィルム又はスライドガラス上に噴霧される必要があり、それからOLEDデバイスに転写される。中間コーティング段階の必要無く、OLED表面に直接適用されることができるコーティングに対する需要がある。
【0009】
US 6 501 218のエナメルコーティングは、これが噴霧されている基板がストレスを受けるか又は曲げられると、割れるか又ははがれてしまうというさらなる欠点を持つ。
【0010】
また、装飾及び情報目的の発光パターンを含む大きな表面を得ることに高い関心があり、OLED表面が発光するときにのみパターンが目に見えるならば、多くの場合望ましい。
【0011】
さらに、例えばOPVから電圧を供給されるデバイスの外観を妨げないように、ユーザに見えないようにすることができるOPVデバイスを提供することに関心がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、従来技術の問題のうちの少なくともいくつかを少なくとも部分的に排除すること、及び、動作状態でない限り観察者から実質的に隠される改良された有機光電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、第一の態様において、本発明は、間に有機光電子材料が挟まれる後部電極と前部電極を少なくとも有し、該後部電極が反射性である、少なくとも1つの光電子活性領域と、該前部電極の前に配置されるカバー層とを有する、光電子デバイスを提供する。該カバー層は、少なくとも部分的に加水分解されたシリカゾルの透明マトリクスに分散された第一の材料の光散乱粒子を有する材料を有する。
【0014】
カバー層は散乱粒子のために高散乱特性を持つ。従ってこれは、カバー層の向こう側に配置された構造が見えないように、高い隠蔽力を持つ。しかしながら、光はこの層を通過することができる。
【0015】
少なくとも部分的に加水分解されたシリカゾルは、ストレス下において強い耐亀裂性を持ち、それ故、光電子デバイスがストレスを受けやすいときに有利に使用されることができる。
【0016】
少なくとも部分的に加水分解されたゾルは、前加水分解されたシリカゾルの乾燥を通して便利に得られることができ、これは室温でなされることができる。このカバー層材料は、さもなければOLED機能に対して悪影響を及ぼす溶媒及び/又は高い温度無しに得られることができる。さらに、これは基本的に非吸収性であり、散乱粒子を含むことはカバー層を高散乱性にする。
【0017】
本発明の実施形態において、光電子材料はエレクトロルミネセンス材料であり得る。
【0018】
光電子材料がエレクトロルミネセンス材料である場合、本発明の光電子デバイスはOLED(有機発光ダイオード)デバイスである。OLEDはカバー層を通して周囲へ発光する。
【0019】
OLEDによって発光される光はカバー層によって受光され、この光の一部分(T)はカバー層を通して透過される。光の別の部分(1−T)はOLEDの方へ戻って反射される。この光のこの部分(R(1−T))は、Rは反射電極の反射率であるが、OLEDの反射電極における反射後にカバー層によってもう一度受光される。この第二の光T(1−T)Rの部分はカバー層を通して透過されるが、別の部分T(1−T)RはOLEDの方へ戻って反射される。これはカバー層を通して透過される光が無くなるまで続く。結果として、OLEDによって発光され、カバー層を通して透過される光の部分は、カバー層の透過率に基づいて予想されるよりも著しく高くなる。従って、動作中、OLEDによって発光される光はカバー層を通してはっきりと見える。しかし非動作状態においては、OLED構造は基本的にカバー層を通して目に見えない。
【0020】
本発明の他の実施形態において、有機光電子材料は有機太陽光発電材料であり得る。
【0021】
光電子材料が有機太陽光発電材料である場合、本発明のデバイスは光を電圧に変換することができるOPV(有機太陽光発電デバイス)である。
【0022】
本発明に従ってOPVをカバー層の後ろに配置することは、こうしたOPVが必要とされる異なるデバイスにおいてこれらが隠されることができるように、OPVの構造を観察者に見えないようにする。OPVは散光とうまく機能するので、カバー層の散乱特性はOPVの機能を妨げることがない。
【0023】
本発明に従うデバイスは有機エレクトロルミネセンス材料と有機太陽光発電材料の両方を有してもよく、例えばデバイスの1つの領域は有機ベースの発光デバイスとしてはたらき、デバイスの別の領域は有機ベースの太陽電池としてはたらくことが留意される。
【0024】
本発明の実施形態において、上記カバー層は、上記少なくとも1つの光電子活性領域に重ね合わされ、上記少なくとも1つの光電子活性領域の全表面を少なくとも覆う。
【0025】
光電子表面全体をカバー層で覆うことで、光電子デバイスを隠す、すなわち、基本的に観察者に見えないようにする。OLEDデバイスにおいて、これはデバイスが動作状態になるまで隠されたままであり得る。
【0026】
本発明の実施形態において、デバイスは少なくとも第一及び第二の光電子活性領域を有し得、該領域は並んで配置され、その間に間隙領域を形成するために相互に間隙を介し、上記カバー層は上記第一及び第二の光電子活性領域に重ね合わされ、上記第一及び第二の光電子活性領域と上記間隙領域の複合表面を少なくとも覆う。
【0027】
2つ以上のOLED及びOLED間の間隙を1つの同じカバー層で覆うことで、上述のように発光デバイスが動作状態になるまで隠されていても、カバー層の表面に表示されることができる光パターンを提供する。太陽光発電デバイスの場合、カバー層の表面はその後ろに配置される複数のデバイスの存在を明らかにしない。
【0028】
本発明の実施形態において、上記透明マトリクスはシリカゾルゲルである。
【0029】
ゾルゲルは部分的に加水分解されたシリカゾルのさらなる乾燥によって得られ得る。これは室温、又は少なくとも光電子部品を損傷しない温度でなされることができ、また、光電子部品に有害な溶媒などの化合物を使用せずになされることができる。シリカゾルゲルはさらに、引っかきなどの機械的影響に良い耐性を持つガラス状材料である。
【0030】
本発明の実施形態において、上記カバー層は50乃至95%の範囲の反射率を持ち得る。
【0031】
好ましくは、光電子デバイスの構造を隠す能力と、十分な光を発光する能力の折衷を維持するために、カバー層の反射率は上記範囲内である。OLEDデバイスの場合、OLEDは非動作状態において隠されているが、カバー層はOLEDによって発光される光を通過させる。
【0032】
本発明の実施形態において、上記第一の材料の上記粒子の屈折率は透明マトリクスの屈折率よりも高い。
【0033】
低屈折率の材料の中に高屈折率の粒子を分散させることによって、良い散乱効果が得られる。
【0034】
本発明の実施形態において、上記第一の材料の上記粒子は、上記カバー層材料の約10乃至約80重量%、好ましくは15乃至70重量%を占める。
【0035】
カバー層に良い散乱効果を与えるために、光散乱粒子は上記の濃度でカバー層に含まれる。
【0036】
第二の態様において、本発明は、デバイスの外側縁を少なくとも部分的に囲むフレームに配置される本発明の第一の態様のデバイスを有する装置に関し、上記カバー層は上記少なくとも1つのデバイスと、上記フレームの少なくとも一部分を覆う。
【0037】
光電子デバイスとその周囲のフレームの両方を同じカバー材料で覆うことで、光電子デバイスが効果的に隠されることを可能にする。これは、フレームからOLEDへの移行部が、(OLEDの)非動作状態において単なる目視検査によって外側から容易に検出されないためである。
【0038】
第三の態様において、本発明は、本発明に従う光電子デバイスの製造のための方法に関し、該方法は光電子デバイスを提供するステップと、上記第一の材料の粒子が中に分散された、任意に前加水分解されたシリカゾルを提供するステップと、上記光電子デバイスの上記前部電極の前に上記シリカゾルの層を配置するステップと、上記層を乾燥させるステップとを有する。
【0039】
本発明は添付の請求項の全ての可能な組み合わせに関することがさらに留意される。
【0040】
本発明のこれらの及び他の態様は、本発明の現在好適な実施形態を示す添付の図面を参照して、より詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は本発明の発光デバイスを断面図で概略的に図示する。
図2a図2aはオフ状態における本発明のOLEDベースの装置を平面図で概略的に図示する。
図2b図2bはオン状態における図2aの装置を平面図で概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、一対の電極、後部電極と前部電極を有する有機光電子デバイスに関し、これらの電極の間に有機光電子材料が挟まれ、後部電極は反射性で、一方前部電極の前にカバー層が配置される。
【0043】
発光デバイス100、すなわち、有機光電子材料が本発明に従うエレクトロルミネセンス材料である有機光電子デバイスが図1に概略的に図示され、2つのOLED活性領域101及び101'を有する。各OLED活性領域101,101'は、後部電極102と前部電極103の間に配置された、すなわち挟まれた有機エレクトロルミネセンス材料104を有する。OLED活性領域101は、エレクトロルミネセンス材料104が2つの電極102,103の間に挟まれる領域と定義される。隣接するOLED活性領域101,101'の間の領域は、以下、間隙領域106と示される。
【0044】
本明細書で使用される、カバー層が前部電極の前に配置されるという文脈における"〜の前に配置される"という用語は、カバー層がデバイスの前部電極とデバイスの外部環境との間に配置されることを意味する。OLEDデバイスの場合、これはカバー層がOLEDによって発光される光を受光し、これを周囲へ伝えることを意味する。OPVデバイスの場合、これは周辺光が前部電極を通過する前にカバー層を通過し、太陽光発電層に到達することを意味する。
【0045】
図1の実施形態において、前部電極103はOLEDデバイスの発光側(前側)をあらわすように透明であり、一方後部電極102は反射性である。
【0046】
電極、及び有機エレクトロルミネセンス材料又は有機太陽光発電材料に適した材料は当業者に周知であり、本明細書では詳細に論じられない。しかし典型的には、透過性前部電極はITO(インジウム‐スズ酸化物)などの透明な導電性材料から作られ、反射性後部電極は金属又は金属被覆材料などの反射性導電性材料から作られ得る。
【0047】
有機光電子材料は、当技術分野で周知の通り、高分子材料又は有機小分子を有する材料であり得る。
【0048】
当技術分野で周知の通り、光電子デバイスは通常はさらに、障壁層、一様な電流分布のための金属シャント、緩衝層、及び基板などの追加層を有し得る。しかしながら便宜上、こうした層の記載は、その位置及び使用が当業者に周知であるため省略される。発光デバイス100などの光電子デバイスはさらに、典型的には当技術分野で慣行の駆動電子機器(図示せず)を有する。
【0049】
カバー層105は、OLED活性領域101,101'の上面に、前部電極103の前に配置され、これらの活性領域の間に位置する間隙領域106も覆う。
【0050】
カバー層105は、前部電極とカバー層105の間に位置する基板107上に配置される。基板は、例えばガラス又はプラスチックであってもよく、例えば活性層を水及び/又は酸素から保護する緩衝層を有してもよい。
【0051】
カバー層は、少なくとも部分的に加水分解されたシリカゾルゲルの基本的に非吸収性のマトリクス111を有し、この中に散乱粒子110が分散される。
【0052】
典型的には、マトリクス111はシリカゾルゲルであり、これは透明で、硬質で、傷がつきにくく、ガラス状材料であるという利点を持つ。
【0053】
散乱粒子110は通常、周囲のマトリクス111よりも高い屈折率を持つ材料である。例えば、散乱粒子の屈折率は好ましくは少なくとも2.0である。周囲のマトリクスは典型的には約1.3乃至1.6の屈折率を持つ。
【0054】
散乱粒子110は通常、TiOアナターゼ、TiOルチル、ZrO、Ta、ZnS、ZnSe、又はこれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される材料から作られる。
【0055】
これらの材料は、上記マトリクスに分散される基本的に非吸収性の散乱粒子に適した材料の良い例である。
【0056】
散乱粒子は通常、上記カバー層材料の約10乃至約80重量%、好ましくは15乃至70重量%を占める。
【0057】
光散乱粒子は、カバー層において良い散乱効果をもたらすために上記の範囲内の濃度でカバー層に含まれる。
【0058】
散乱粒子110の粒径は、最大散乱効果を得るためにOLEDによって発光される光の色に一致するように選択されることができる。このため平均粒径は発光された光の波長に近くなければならない。従って、散乱粒子の平均粒径は100乃至1000nm、好ましくは200乃至800nm(すなわちUVから可視光までの波長範囲)に及ぶ。
【0059】
マトリクス中の散乱粒子110の濃度、及びカバー層105の厚みは、通常、OLED活性領域が非動作(オフ)状態であるときにOLED構造を隠すが、OLED活性領域によって発光される光がカバー層105を透過することを可能にするコーティングを得るために選ばれる。
【0060】
典型的にはパスあたり50%を超える反射率を持つコーティング層が望ましく、好ましくは75%を超え、例えば85%を超え、これによって良い隠蔽力が得られる。
【0061】
カバー層の厚みは通常、良い隠蔽特性と所望の透過率をもたらすために1μm乃至50μmである。
【0062】
理想的な場合、非吸収性のカバー層と仮定すれば、カバー層を通るOLEDによって発光される光の全透過率は次のように計算されることができる。
【数1】
Tはカバー層を通るパスあたりの透過率(1−反射率)であり、RはOLED活性領域の反射電極の反射率である。
【0063】
本発明のデバイスの代表値である、Tが20%(80%反射)及びRが80%の値の場合、Ttotは0.6に等しい。
【0064】
従って、OLED活性領域によって発光される光はカバー層を通してはっきりと見えるが、OLED構造はオフ状態においてカバー層を通して実質的に目に見えない。カバー層105は例えば次のように得られ得る。
【0065】
アルコキシシランの水溶液を、例えば触媒としてはたらく酸で前加水分解することによって、シリカ前駆体ゾルゲルが得られる。
【0066】
シリカ粒子の懸濁液が前加水分解ゾルに加えられる。そして散乱粒子110がこの混合物に加えられる。
【0067】
得られる混合物は、ローラーベンチなどの当業者に既知の手段によって均質化されることができる。その結果安定な懸濁液が得られる。冷凍庫に入れておけば、懸濁液は少なくとも2カ月の保存期間を持つ。
【0068】
そして懸濁液は、例えばスピンコーティング、スプレーコーティング、又はドクターブレードコーティングなど、任意の従来使用されるコーティング法を用いてOLED表面にコーティングされ得る。
【0069】
被膜は室温で乾燥させられ、透過率と隠蔽特性の所望の折衷を有する硬質の保護カバー層を得るために、さらなる熱処理は必要ない。
【0070】
使用されるOLEDは一様なタイルであってもよく、又はコーティング前に目に見えるパターン化された絵若しくは他の雰囲気を創り出すデザインを有してもよい。
【0071】
上記の実施形態は、有機エレクトロルミネセンス材料が有機太陽光発電材料に置き換えられる場合は、有機太陽光発電デバイス(OPV)にも適用され得ることが当業者に明らかであろう。
【0072】
典型的には、OPV(有機太陽電池としても知られる)は、日光又は室内光などの光を電気エネルギーへ変換することによって、何らかの電子デバイス(例えばOLED)を駆動するために使用される。観察者から隠される本発明のOPVは、例えばOPVが電圧を供給するデバイスの外観をOPVが妨げるべきではないことが望まれる場合など、多くの用途において有利である。OPVはもう目に見えないので、デザインの観点からこの方法の適用性が高められる。このような応用の実施例は、太陽電池駆動時計、PDA、携帯電話など、OPVが太陽電池としてはたらく場合を含むが、これらに限定されない。
【0073】
OPVの機能のために、デバイスの光変換効率に大きく影響しないように、利用される光は非常に良く散乱され得る。従って、OPVは本発明のようにカバー層の後ろに有利に位置し得る。
【0074】
しかしながら、本発明の光電子デバイスがOPVである場合、カバー層の透過率は好ましくはOLEDの実施形態における上記のように限定されない。代わりに、カバー層は通常、パスあたり少なくとも50%など、パスあたり少なくとも20%の透過率(パスあたり80%未満の反射率)を持つように選択される。しかしながら、カバー層は通常、良い隠蔽特性を持つように、すなわち高散乱性であるように選択される。
【0075】
本発明のデバイスは表面に埋め込まれてもよく、表面材料のフレームによって少なくとも部分的に囲まれ、ここでデバイス及びフレーム材料の両方が同じカバー層材料によって覆われる。従って、デバイスの位置は観察者から隠される(OLEDデバイスの場合、少なくともデバイスがオン状態になって発光するまで)。これは、情報を素早く表示するため、警告標識のため、又は壁の芸術的パターンのために、必要に応じて多数の用途で使用され得る。
【0076】
普通の壁200に埋め込まれる本発明の発光デバイス100を有するかかる装置が、図2a及び図2bに図示される。図2aにおいて発光デバイスはオフ状態であり、破線は発光デバイス100の位置のみを示す。中に発光デバイス100が配置されるフレームを形成するために、開口部が壁200に切り込まれる。カバー層105は発光デバイス100を覆うだけでなく、壁200を覆うためにも使用される。
【0077】
図2bにおいて、発光デバイス100がオンになるとき、"FIRE EXIT"の文字、及び所望の方向を指す矢印が壁で点灯される。これは当然、周囲材料のフレームに配置される発光デバイスの装置の1つの可能な使用をあらわすに過ぎない。
【0078】
本発明において使用されるようなシリカゾルゲルに基づくカバー層材料は、OLED表面だけでなく、限定はされないが、例えばガラス、金属、セラミック、プラスチック、又は木の表面などの他の表面にも付着する。従って、本発明の発光デバイスは事実上いかなる材料のフレームにも配置されることができる。OLED発光デバイスは柔軟な/曲げられる実施形態で作られることができ、本発明の発光デバイスは例えば柱などの曲面に配置され得る。
【0079】
当業者は、デバイス及びフレーム材料の両方が同じカバー層材料で覆われる、フレームによって部分的に囲まれる光電子デバイスのこうした装置が、OPVデバイスにも適用可能であることがわかるだろう。
【0080】
上記の実施形態において、カバー層は光電子デバイスの活性領域以上を覆う。しかしながら本発明の他の実施形態(図示せず)において、カバー層は、光電子デバイスの実際の層構造がカバー層によって隠されていても活性領域の形状又はパターンがはっきりと目に見えるように、活性領域のみを覆うか、又は基本的に活性領域のみを覆う。例えば、カバー層は染料又は色素の導入によってはっきりと目に見えるようにされてもよい。
【0081】
当業者は、本発明が上記の好ましい実施形態に決して限定されないことがわかるだろう。逆に、多くの改良及び変更が添付の請求項の範囲内で可能である。
【0082】
例えば、カバー層に所望の色を与えるために、カバー層材料が色素又は染料を含んでもよい。
図1
図2a
図2b