【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は種々検討した結果、貝殻よりヒドロキシアパタイトを作成することである。
この場合に他の起源のヒドロキシアパタイトと比較してより有効性の高いヒドロキシアパタイトが得られるように製造方法を改良した。
その方法は、『CaHPO
4および/またはCaHPO
4・2H
2Oと、貝殻および/または真珠の粉末を、70〜90℃で1〜24時間加温し反応させ、80℃以下で3〜72時間乾燥させることを特徴とするハイドロキシアパタイトの製造方法。』である。
これらの解決手段をとることによって、炭酸カルシウムがこれら以外の起源の場合に比較して、有効性が向上したことのみならず、予想外にヒドロキシアパタイトの生成する反応がスムーズになることがわかった。
以下に具体的な貝殻および/または真珠の粉末からヒドロキシアパタイトを得る製造方法に関して記載する。
【0006】
真珠はアコヤ貝、シロチョウガイ、クロチョウガイ、イケチョウガイ等の真珠、貝殻は真珠のとれる貝をはじめ、ホタテ、牡蠣、アサリ、ハマグリ等、特に限定なく使用できるが、本発明の主旨より,養殖で大量に発生する、アコヤ貝、牡蠣、ホタテが利用する価値があり、このなかでも、アコヤ貝が好ましい。
また、アコヤ貝の貝殻が主として真珠層を取り出したものや真珠の脱核したものを利用すれば、貝殻に含まれる成分が、炭酸カルシウムと真珠コンキオリン等の成分により限定され、そのほかの不純物が減少したヒドロキシアパタイトが得られる。
【0007】
CaHPO
4および/またはCaHPO
4・2H
2Oと、貝殻および/または真珠の粉末の比率は、カルシウムのリンに対するモル比が1.45〜1.67の範囲になるように配合する。しかしながら、1.55を越えると炭酸が残りやすくなので、1.45〜1.55の範囲が最も好ましい。
但し、貝殻にはコンキオリンをはじめとする炭酸カルシウム以外の物質が約5〜10%含まれているので原料の配合比を決める場合は注意する。
貝殻および/または真珠は水に溶けないので反応を進めるにはある程度の粒度以下にしないと反応時間が係りすぎたり、未反応の炭酸カルシウムが残ったりする。しかしながら、貝殻や真珠は炭酸カルシウムの結晶の隙間にタンパク質が層状にあり、この隙間があることと、タンパク質が反応を進める可能性があり、他の炭酸カルシウムに比較して平均粒度が大きくても反応が進みことがわかった。本発明者らの検討によれば、平均粒度が30μ以下であれば未反応の炭酸カルシウムが残ることはなく、他の起源の炭酸カルシウムに比較して大きな粒度で未反応物も残らない。
【0008】
これに水を加える。水の量は、CaHPO
4および/またはCaHPO
4・2H
2Oと、貝殻および/または真珠の粉末の合計量(重量)の5倍〜50倍程度を加える。
撹拌は懸濁状態が保たれる程度の撹拌しつつ反応させる。
これらの反応温度は、70〜90℃が適当で、70℃以下では副生成物(Ca
8H
2(PO
4)
6・5H
2O)が生じ、90℃以上では貝殻や真珠に含まれるタンパク質が変性し、出来上がったハイドロキシアパタイトの有効性が低いものしか得られない。
反応時間は、反応温度、原料の粒度等によって大きく異なるが、1〜24時間が適当である。
反応終了後、濾過或いはデカンテーション等である程度の水分を除去した後、乾燥する。乾燥方法は特に制限はなく、温度は80℃で行えば問題ない。しかし温度が低いと時間がかかるので、40℃以上が好ましい。
乾燥時間は、乾燥方法、反応物の粒度、乾燥温度によって異なるが、3〜72時間が適当である。
【0009】
上記の製造方法で作成したハイドロキシアパタイトを医薬品、化粧品に利用するが、本発明者らの検討の結果、化粧品の原料として他のハイドロキシアパタイトに比較して有効なことがわかった。
以下に実施例を記載するがこれに限定されることはない。
【0010】
実施例1
リン酸水素カルシウム2水和物 463g
アコヤ貝貝殻粉末1 138g
イオン交換水 7kg
製造方法
ビーカ−にイオン交換水を入れ,撹拌機で撹拌しながらリン酸水素カルシウム2水和物とアコヤ貝貝殻粉末1を投入した。
投入後1時間かけて80℃まで昇温した後,5時間保持した。
ろ過後,ステンバットにうつして70℃で、48時間乾燥した。
なお、アコヤ貝貝殻粉末1は、バレル研磨機で貝殻付着物と稜柱層を除いた後、粉砕機で平均粒度28ミクロンにしたアコヤ貝粉末である。
【0011】
実施例2
リン酸水素カルシウム無水 366g
アコヤ貝貝殻粉末2 138g
イオン交換水 7kg
製造方法
ビーカ−にイオン交換水を入れ,撹拌機で撹拌しながらリン酸水素カルシウム無水とアコヤ貝貝殻粉末2を投入した。
投入後1時間かけて70℃まで昇温した後,10時間保持した。
ろ過後,ステンバットにうつして45℃で、60時間乾燥した。
なお、アコヤ貝貝殻粉末2は、バレル研磨機で貝殻付着物と稜柱層を除いた後、粉砕機で平均粒度8.7ミクロンにしたアコヤ貝粉末である。
【0012】
実施例3
リン酸水素カルシウム無水 366g
アコヤ貝真珠粉末 138g
イオン交換水 7kg
製造方法
ビーカ−にイオン交換水を入れ,撹拌機で撹拌しながらリン酸水素カルシウム無水とアコヤ貝真珠粉末を投入した。
投入後1時間かけて70℃まで昇温した後,10時間保持した。
ろ過後,ステンバットにうつして80℃で、6時間乾燥した。
なお、アコヤ貝真珠粉末は、脱核した真珠を粉砕機で平均粒度14.5ミクロンにしたものである。
【0013】
実施例4
リン酸水素カルシウム2水和物 463g
アコヤ貝貝殻粉末1 180g
イオン交換水 7kg
製造方法
ビーカ−にイオン交換水を入れ,撹拌機で撹拌しながらリン酸水素カルシウム2水和物とアコヤ貝貝殻粉末1を投入した。
投入後1時間かけて80℃まで昇温した後,5時間保持した。
ろ過後,ステンバットにうつして70℃で、48時間乾燥した。
なお、アコヤ貝貝殻粉末1は、バレル研磨機で貝殻付着物と稜柱層を除いた後、粉砕機で平均粒度28ミクロンにしたアコヤ貝粉末である。
【0014】
比較例1
(反応温度を60℃にしたほかは、実施例1と同じ)
リン酸水素カルシウム2水和物 463g
アコヤ貝貝殻粉末1 138g
イオン交換水 7kg
製造方法
ビーカ−にイオン交換水を入れ,撹拌機で撹拌しながらリン酸水素カルシウム2水和物とアコヤ貝貝殻粉末1を投入した。
投入後1時間かけて60℃まで昇温した後,5時間保持した。
ろ過後,ステンバットにうつして70℃で、48時間乾燥した。
なお、アコヤ貝貝殻粉末1は、バレル研磨機で貝殻付着物と稜柱層を除いた後、粉砕機で平均粒度28ミクロンにしたアコヤ貝粉末である。
【0015】
比較例2
リン酸水素カルシウム2水和物 463g
炭酸カルシウム 128g
イオン交換水 7kg
製造方法
ビーカ−にイオン交換水を入れ,撹拌機で撹拌しながらリン酸水素カルシウム2水和物と
炭酸カルシウムを投入した。
投入後1時間かけて80℃まで昇温した後,5時間保持した。
ろ過後,ステンバットにうつして70℃で、48時間乾燥した。
なお、炭酸カルシウムは平均粒度5ミクロンのものを用いた。
【0016】
1.保水力試験
実施例1および比較例2を105℃、2時間乾燥させ、放冷後それぞれ約0.5gを取り重量を正確に測定し、飽和塩化ナトリウム水溶液を入れ、平衡状態に達したデシケーターに入れ48時間後重量を測定した。重量増加量は実施例1で4.51%、比較例2で2.42%であった。
なお、比較例2には蛋白質は含まれなかったが、実施例1には0.8%の蛋白質が含まれ(ケルダール法にて測定)、これが上記の差をもたらしていると考えられる。
【0017】
以上のように、大半は廃棄または低度の利用しかされてこなかった貝殻および/または真珠の粉末よりハイドロキシアパタイトを作り出した。さらに驚くべきことに本発明のハイドロキシアパタイトは他の起源のハイドロキシアパタイトに比較して有効性が高く、また、貝殻や真珠が持つ特性がハイドロキシアパタイトの製造において非常に優位なこともわかった。
また、比較例1のように反応温度を60℃にすると、
図2のように2θ=5゜にCa
8H
2(PO
4)
6・5H
2Oのピークが大きく出、副生成物ができていることがわかる。
さらに
図3に実施例1と実施例4の赤外線分析図を示すが実施例4では1400〜1500cm
-1近辺にピークがあり炭酸が残存していることを示しており、カルシウムのリンに対するモル比が1.45〜1.67の範囲で製造できるが1.45〜1.55の範囲が特に好ましいことも判明した。