(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物を加工するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記被加工物に導く光学系と、前記光学系の光路上に配置され前記レーザ光を入力パターンの形状に成形する複数の微小可動素子が配列された空間変調手段と、前記入力パターンに従って前記空間変調手段を構成する各微小可動素子を個々にオン状態とオフ状態に切り換え指示する転送データを生成する制御手段と、前記制御手段により転送された転送データを前記入力パターンとして前記空間変調手段に指定する領域設定手段と、前記被加工物の表面を撮像する撮像手段とを備えたレーザ加工装置において、
前記入力パターンとして複数の異なる図形からなるキャリブレーションパターンを用い、前記キャリブレーションパターンに対する前記レーザ光照射手段により前記被加工物上に照射された前記レーザ光のレーザ光痕を前記撮像手段で撮像した出力パターンの形状への変形を示す変換パラメータを算出する変換パラメータ算出手段と、
前記被加工物上での前記レーザ光の照射形状が前記キャリブレーションパターンの形状に一致するように補正するため前記変換パラメータを逆変換して逆変換パラメータを算出する逆変換パラメータ算出手段とを有し、
前記出力パターンが前記入力パターンに一致するように前記転送データを前記逆変換パラメータで変換し、ここで変換された転送データを前記空間変調手段への入力パターンとして前記領域設定手段を介して前記空間変調手段に指示することで前記被加工物への前記レーザ光の照射を調整する調整手段と、
前記調整手段により調整された前記レーザ光の照射前に前記撮像手段により撮像した前記被加工物の画像上に、前記逆変換パラメータで変換された転送データに基づく前記レーザ光が照射される領域を重畳させて表示させる表示手段と、
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、通常「キャリブレーション」という語は「調整」を含む意味に使われることもあるが、以下の説明においては「キャリブレーション」には「調整」が含まれないものとする。また、特に断らない限り、「調整」とは「キャリブレーションの結果に基づく調整」を意味するものとする。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明を実施するためのレーザ加工装置の構成を示す図である。
本発明が適用される調整装置は、
図1に示すようなレーザ加工装置100を制御する装置である。
【0026】
このレーザ加工装置100を概説すると、レーザ光源103から出射されたレーザ光を被加工物102が載置されたステージ101上へ導くための光学系と、レーザ光源103から被加工物102への光路上に設けられ、レーザ光を所望の入力パターンで被加工物102に照射するために複数個の配列された微小可動素子から構成された空間変調手段DMDを備えている。そして、このレーザ加工装置100は、空間変調手段DMDによって入力パターンの形状に成形されたレーザ光を被加工物102に照射する照射手段を備えている。
【0027】
より具体的に説明する。
図1において、レーザ加工装置100は、ステージ101の上に載置された被加工物102の表面を撮像するカメラ112、被加工物102の表面に対し照明光を照射する照明用光源111、被加工物102の表面に対しレーザ光を照射するレーザ光源103、レーザ光源103から出射されたレーザ光を任意の空間形状に変形させる空間変調素子(DMD)106、レーザ加工装置100全体を制御するための制御PC113、任意の位置でレーザ加工が可能なように加工位置を制御するステージ制御部118、制御PC113を操作するための入力部114、カメラ112から撮像された画像を処理する画像処理部116、画像処理部116で処理された画像、またはカメラ112で撮像された被加工物102の表面の画像をライブ画像として表示する表示部115、任意形状にDMD106を調整可能な領域設定部117、後述する変換パラメータを算出する変換パラメータ算出部120、変換パラメータ算出部120で算出された変換パラメータや任意のキャリブレーションパターンを記憶する記憶部119を備える。
【0028】
レーザ加工装置100は、ステージ101の上に載置された被加工物102上の欠陥を、レーザ光源103から出射された任意形状のレーザ光によって取り除き、欠陥を有する回路パターンを正常な回路パターンに加工する装置である。ここで、被加工物102は、FPD基板、半導体ウエハ、積層プリント基板などでもよく、その他の一般的な試料でもよい。
【0029】
このようなレーザ加工装置100において、レーザ光源103から出射されたレーザ光は、ミラー105で反射され、DMD106に入射する。
DMD106は、微小ミラー(微小可動素子)が2次元アレイ状に配列された空間変調素子である。微小ミラーの傾斜角は、少なくとも2種類に切り替え可能である。傾斜角が第1と第2の角度であるときの微小ミラーの状態を、それぞれ以下では「オン状態」と「オフ状態」という。
【0030】
DMD106は、制御PC113からの指示に基づいて、個々の微小ミラーの傾斜角、すなわち個々の微小ミラーの状態を独立に切り替える。DMD106に対する指示は、例えば、レーザ光を照射すべきか否かを表す2値データを2次元アレイ状に並べたデータにより表され、制御PC113から送信される。
【0031】
ミラー105からDMD106へ入射した入射光が、オン状態の微小ミラーにおいて反射されたとき、反射光の向きが鉛直方向となるように、レーザ光源103、ミラー105、およびDMD106が配置されている。そして、オン状態の微小ミラーで反射され、ミラー121およびハーフミラー107で反射されたレーザ光が、被加工物102の表面へ至る光路上には、結像レンズ108とハーフミラー109と対物レンズ110とを有する投影光学系が配置されている。オン状態の微小ミラーで反射されたレーザ光は、この投影光学系を介して、被加工物102の表面に投影、すなわち照射される。この投影光学系は、被加工物102の表面とDMD106とを共役の位置とするよう構成されている。
【0032】
オフ状態の微小ミラーは傾斜角がオン状態のときと異なる。よって、ミラー105からDMD106へ入射した入射光は、オフ状態の微小ミラーにおいて、ミラー121へ至る方向とは異なる方向に反射され、被加工物102上には照射されない。
図1中では、オフ状態の微小ミラーによる反射光の光路を破線矢印で示す。
【0033】
したがって、個々の微小ミラーをオン状態またはオフ状態に制御することによって、各微小ミラーに対応する被加工物102上の位置にレーザ光を照射するか否かを制御することができる。つまり、DMD106を用いることにより、任意の位置・方向・形状でレーザ光を被加工物102上に照射することができる。
【0034】
また、レーザ加工装置100は、照明用光源111を備える。
被加工物102の撮像に照明光が必要な場合は、照明用光源111からの照明光がレンズ122を介してハーフミラー109で反射され、対物レンズ110を介して被加工物102の表面に照射される。なお、カメラ112の代わりに、CMOS(Complementary Mental-Oxide Semiconductor:相補型金属酸化物半導体)カメラ等の撮像装置を用いてもよい。
【0035】
レーザ光、および照明光の、被加工物102の表面における反射光は、いずれも、対物レンズ110、ハーフミラー109、結像レンズ108、ハーフミラー107、レンズ123を有する光学系を介してカメラ112の光電変換素子に入射する。それにより、カメラ112は被加工物102の表面を撮像する。
【0036】
制御PC113は、レーザ加工装置100の全体を制御する。入力部114は、キーボードやポインティングデバイスなどの入力機器により実現される。入力部114から入力された指示は、制御PC113に送られる。
【0037】
また、表示部115は、制御PC113からの指示にしたがって、画像や文字等を表示する。表示部115は、例えば、カメラ112が撮像した被加工物102の画像を、ほぼリアルタイムに表示する。ここで、カメラ112が撮像し制御PC113が取り込んだ画像を「ライブ画像」ということもある。
【0038】
本実施の形態において、制御PC113は、汎用的なコンピュータでも専用の制御装置でもよい。制御PC113の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせ、のいずれかにより実現されてもよい。例えば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリと、ワーキングエリアとして使われるRAM(Random Access Memory)と、ハードディスク装置等の外部記憶装置と、外部機器との接続インターフェイスとを備え、これらがバスで相互に接続された、PC(Personal Computer)などのコンピュータによって制御PC113が実現されてもよい。CPUは、ハードディスク装置、またはコンピュータ読み取り可能な可搬型記憶媒体等に格納されたプログラムを、RAMにロードして実行することにより、制御PC113の機能を実現する。
【0039】
次に、被加工物102が基板であり、レーザ加工装置100が、基板表面の欠陥にレーザ光を照射して欠陥を修復するレーザリペア装置であるという具体例を使って、第1の実施の形態のレーザ加工装置100の動作の概要を説明する。
【0040】
上述のDMD106で形成されたパターンと被加工物102上に形成されるパターンとの位置関係の対応をとるのが、本発明で適用されるキャリブレーションである。
そして、上述のようなレーザ加工装置100は、次のような処理を実行する。
【0041】
まず、前記DMD106によって任意のキャリブレーションパターンの形状に成形された前記レーザ光を任意の感光体に照射し、カメラ112を用いて前記レーザ光が照射された前記感光体の画像を撮像する。そして、撮像されたキャリブレーションパターン画像を画像処理部116により抽出し、各パターン位置を検出する。
【0042】
図2は、キャリブレーションパターンの例を示す図である。
図2に示すように、キャリブレーションパターンは、面積の異なる数点の図形から構成される。例えば、
図2の(1)に示したキャリブレーションパターンの例は、4点の円から構成されている。
【0043】
また、キャリブレーションマークを感光する感光体としては、例えば、波長が1.355nmのレーザ光を高エネルギーで照射する場合であれば、素ガラスを用いることができる。また、波長が2.266nmのレーザ光の場合は、レジストが均一に塗布されたガラスに照射することでキャリブレーションマークを感光することができる。
【0044】
感光体の画像を撮像したレーザ加工装置100は、キャリブレーションを実行する。すなわち、変換パラメータ算出部120によって、前記撮像された画像のレーザ痕の形状と前記キャリブレーションパターンの形状とのズレ値を算出し、この算出されたズレ値に基づいて、前記レーザ光の前記被加工物上での形状が前記入力パターンの形状と一致するように補正するための変換パラメータを算出する。そして、前記算出された変換パラメータに基づいて、前記入力パターンに従った前記被加工物102へのレーザ光の照射を調整する。
【0045】
ここで、キャリブレーションの対象について説明する。
図3は、入力パターンから出力パターンへの変形例を示す図である。
説明の便宜上、以下ではカメラ112により撮像される画像の横方向の座標軸をx軸、縦方向の座標軸をy軸と呼ぶ。そして、画像の大きさは任意であるが、本実施の形態では、x方向に640画素、y方向に480画素であるとする。また、この大きさを「640×480画素」と表記する。画像内の各画素の位置は、x座標とy座標の組(x,y)により表される。すなわち、
図3における照射パターン310の左上隅と右下隅の座標はそれぞれ、(0,0)と(639,479)である。
【0046】
図3の照射パターン310は、カメラ112により撮像された画像に対して、その画像のどの部分にレーザ光を照射すべきかを表すパターンである。したがって、照射パターン310内の位置もx座標とy座標の組(x,y)により表すことができ、照射パターン310の大きさは、カメラ112により撮像される画像と同じ640×480画素である。
【0047】
図3の例では、照射パターン310は、画像の中心部にある、x軸に平行な太線とy軸に平行な太線が交わった白い十字形状と、背景の黒からなり、白い十字形状に相当するレーザ光を被加工物102上の部分に照射すべきことを表す。
【0048】
本実施の形態では、照射パターン310は次のようにして入力部114から指示される。
まず、照明用光源111からの照明光による照明のもとで、レーザ光を照射しない状態で、被加工物102をカメラ112が撮像する。そして、画像処理部116が、撮像された画像を取り込んで表示部115に出力する。
【0049】
その後、オペレータが、表示部115に出力された画像を見て、レーザ光を照射すべき範囲を入力部114から指示する。その指示は、入力部114と制御PC113を接続するインターフェイスを介して、640×480画素の大きさの照射パターン310のデータの形で、制御PC113に与えられる。
【0050】
なお、照射パターン310のデータは、外部装置から制御PC113に送られてもよい。例えば、レーザ加工装置100がFPD基板等のレーザリペア装置である場合には、欠陥検査装置から照射パターン310のデータが制御PC113に送られてもよい。あるいは、レーザリペア装置が画像認識部を備え、画像認識部が画像認識処理によって欠陥の形状を認識し、認識した形状を表す照射パターン310のデータを生成して制御PC113に出力してもよい。
【0051】
いずれにしろ、照射パターン310のデータが制御PC113に与えられる。すると、制御PC113は、個々の微小ミラーのオンとオフをDMD106に指示するためのDMD転送用データ320を、照射パターン310から生成する。DMD転送用データ320は入力パターンを表すデータであり、DMD106に転送(すなわち送信)される。
【0052】
DMD106では微小ミラーが2次元アレイ状に配列されており、微小ミラーの位置をu座標とv座標の組(u,v)により表すことができる。また、以下では説明を簡単にするため、画像内の画素の座標(x,y)と微小ミラーの座標(u,v)には、x=uおよびy=vの関係があるものとする。微小ミラーを適当に配置し、uv座標系の原点を適当に定めるだけで、この関係は成立するので、以下の説明の一般性は失われない。
【0053】
ここで、照射パターン310と同様に、レーザ光を照射することを白で、照射しないことを黒で表すことにすると、DMD転送用データ320も、白黒2値画像として表現することができる。換言すれば、微小ミラーをオン状態にすることを示す白、または微小ミラーをオフ状態にすることを示す黒により、位置(u,v)の点を表した白黒2値画像としてDMD転送用データ320を表現することができる。
【0054】
本実施の形態では、DMD106に800×600個の微小ミラーが配列されていると仮定する。すなわち、カメラ112が撮像した画像の画素数よりも微小ミラーの個数のほうが多い。よって、DMD転送用データ320を表す画像は、照射パターン310を表す画像の周囲を、黒いマージンで囲んだ画像となる。このようなマージンがある理由は後述する。
【0055】
すなわち、照射パターン310を表す画像の位置(x,y)における色(白または黒)と、DMD転送用データ320を表す画像の、u=x、v=yなる位置(u,v)における色は等しい。そして、位置(u,v)が、u<0または640≦uまたはv<0または480≦vとなる範囲にある場合、DMD転送用データ320を表す画像の位置(u,v)における色は黒である。
【0056】
なお、
図3では、DMD転送用データ320には白い矩形状の枠線があるが、この枠線は説明の便宜上、照射パターン310に相当する640×480画素の範囲を表示したものであり、白い枠線上の微小ミラーをオン状態にすることを示すものではない。
【0057】
また、本実施の形態では、DMD転送用データ320において、白い枠線よりも上のマージンと下のマージンの幅が等しく、かつ右のマージンと左のマージンの幅も等しい。しかし、マージンの幅は適宜定めてよい。
【0058】
照射パターン310とDMD転送用データ320との間の上記のような関係に基づいて、制御PC113は、照射パターン310のデータからDMD転送用データ320を生成する。上記の通り、DMD転送用データ320を生成するには、制御PC113は、単に照射パターン310の周囲に黒いマージンを追加すればよい。
【0059】
そして、制御PC113内の領域設定部117は、DMD転送用データ320をDMD106に出力することによって、800×600個の微小ミラーのそれぞれに対し、オンまたはオフの指示を与える。
【0060】
ここで、キャリブレーションに基づく調整を行わずに、与えられたDMD転送用データ320そのものにしたがってDMD106の微小ミラーがオン状態またはオフ状態となり、レーザ発振器103からレーザ光が出射されると仮定する。
【0061】
この場合、一般には、被加工物102上に照射されたレーザ光のパターンは、所望の照射パターン310とは異なる。なぜなら、レーザ加工装置100の光学系および/または撮像系にはずれや歪みがあるためである。
【0062】
例えば、ミラーやレンズが歪んでいたり、レーザ加工装置100の各構成要素の取り付け位置がずれていたり、取り付け角度がずれて本来の角度から回転して取り付けられた部品があったりするかもしれない。
【0063】
図3のライブ画像330は、そのように、所望の照射パターン310とは異なるパターンが被加工物102上に照射された場合に、カメラ112によって撮像される画像の例である。したがって、ライブ画像330上の位置も、xy座標系により表すことができ、ライブ画像330の大きさは640×480画素である。
【0064】
図3のライブ画像330では、レーザ光が実際に照射された部分が白で、照射されなかった部分が黒で表されている。ライブ画像330を照射パターン310と比較すると、白い十字形状がx軸のプラス方向に移動し、さらに、反時計回りに約15度回転している。照射パターン310からライブ画像330への変形は、実際には、このような平行移動(シフト)と回転だけではなく、拡大・縮小すなわちスケール変換や、剪断ひずみ等の形状の歪みを含むこともある。
【0065】
したがって、このような変形を防ぐために、キャリブレーションを行い、キャリブレーションの結果に基づいて、レーザ光の照射を調整する必要がある。
本実施の形態では、レーザ加工装置100に存在するずれや歪みに起因する上記のような照射パターンの変形を、一種の変換の結果であると見なし、その変換を数学的にモデル化している。
【0066】
次に、その数学的にモデル化された変換を表すパラメータをキャリブレーションにより取得し、取得したパラメータに基づいて調整する処理について説明する。
まず、キャリブレーション方法について説明する。
【0067】
制御PC113が領域設定部117に対して、
図2に示すような面積の異なる数点の図形から構成されるキャリブレーションパターンを与える。面積がそれぞれ異なることにより、画像処理による領域設定部117に与えるキャリブレーションパターンと感光体の表面に焼き付けられたキャリブレーションパターンの図形間の識別を容易にする。したがって、キャリブレーションパターンは、3点それぞれの区別がつくのであればどのような形状パターンでもよい。
【0068】
次に、カメラ112により感光体の表面に焼き付けられたキャリブレーションパターンを撮像する。画像処理部116は、取得されたキャリブレーションパターン画像から各図形の重心位置と面積を検出する。同様に、画像処理部116は、領域設定部117に与えたキャリブレーションパターン画像から各図形の重心位置と面積を検出する。
【0069】
そして、領域設定部117に与えたキャリブレーションパターンからの3点と、感光体の表面に焼き付けたキャリブレーションパターンからの3点の位置関係をもとに、領域設定部117から感光体表面間の変換行列を作成する。
【0070】
変換行列は次にようにして作成する。
すなわち、領域設定部117によりONされるミラー位置をミラー座標値、レーザ光源103により感光体表面に焼き付けられる上記ミラー位置に対応した位置を照射座標値とする。
【0071】
そして、次の2ステップにより変換行列を求める。
まず、第1のステップとして、数点のミラー座標値とそれに対応する数点の照射座標値を求める。
【0072】
DMD106は、領域設定部117にDMD106上の全微小ミラーのON、OFFに1対1対応した所定の2次元の2値画像を与えることで調整することが可能である。そこで、
図2に示したような、位置と面積の異なる数点の図形を含む2値画像を領域設定部117に渡すことでDMD106が形成するパターンの形状を調整する。そして、レーザ光源103から空間変調されたレーザ光を照射することで、感光体表面に2値画像に対応したパターンの焼付けを実行する。カメラ112により焼き付けられたパターンを含む感光体表面の画像を撮像する。領域設定部117に与える2値画像と感光体表面に焼き付けられたパターン画像を画像処理部116に渡し、キャリブレーションパターン座標検出処理を実行する。
【0073】
図4は、キャリブレーションパターン座標検出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS401において、感光体表面に焼き付けられたパターン画像に対し画像処理部116は、白をパターン、黒を背景とした2値化を実行する。2値化の方法としては、浮動二値化処理など、周知の方法を用いればよい。領域設定部117に与えられた2値画像も、白をパターン、黒を背景として作成される。
【0074】
そして、ステップS402において、2値化した画像に対して収縮処理を施した後に膨張処理を施し、パターンについての前景二値化画像を得る。収縮処理は、背景の領域を収縮させる処理であり、この収縮処理により線幅が所定の幅以下の部分は消去される。そして、収縮処理で残ったパターンの領域について、膨張処理によって元の大きさの領域に戻すことになる。
【0075】
ステップS403では、膨張・収縮処理を施した2値化画像の孤立領域をラベリングする。ラベリングの方法は任意であり、周知の方法を適用すればよい。
次に、ステップS404において、各パターンの重心位置を算出し、ステップS405において、各パターンの面積を算出する。そして、ステップS406において、ステップS405で算出した面積の大きさでソートすることにより、領域設定部117に与えられた2値画像上の数点のパターンと、感光体表面に焼き付けられた数点のパターンをおのおの対応させる。例えば、領域設定部117に与えられた2値画像上の数点のパターンのうち、面積が最大のパターンと、感光体表面に焼き付けられた数点のパターンのうち、面積が最大のパターンは対応するものとみなす。
【0076】
このようにして、領域設定部117に与えられた2値画像上の数点のパターンと、感光体表面に焼き付けられた数点のパターンの対応関係を取得する。
次に、第2のステップとして、数点のミラー座標値とそれに対応する数点の照射座標値をもとにアフィン変換行列を求める。
【0077】
例えば、
図3において、DMD転送用データ320は、マージン以外は照射パターン310と同じである。よって、照射パターン310は事実上、DMD106に指定される入力パターンと言える。そして、ライブ画像330は、その入力パターンに対応して、何も調整されずに変形を受けたレーザ光が被加工物102上に照射される場合に画像に生じる出力パターンである。したがって、照射パターン310からライブ画像330への変形は、上記入力パターンから上記出力パターンへの変換によるものと見なせる。
【0078】
本実施の形態では、この変換が変換行列Tにより表されるアフィン変換であるという数学的モデルを採用する。すなわち、変換行列Tの各要素が、キャリブレーションにおいて算出すべき変換パラメータである。
【0079】
上述のごとく、入力パターンと出力パターンはいずれもxy座標系で表すことができ、また、常にu=xかつv=yであるから、uv座標系とxy座標系を同一視しても、変換パラメータの算出には問題がない。
【0080】
すなわち、本実施の形態における数学的モデルは、「DMD転送用データ320における座標(u,v)と等しい照射パターン310における照射座標(x,y)が、アフィン変換を表す変換行列Tによって、ライブ画像330におけるミラー座標(x’,y’)に変換される」というものである。
【0081】
この数学的モデルを数式で表すと下記の通りである。
【数1】
【数2】
【0082】
ここで、アフィン変換行列をTとすると
【数3】
となる。
【0083】
このアフィン変換行列Tは、DMD画像上の任意の位置からレーザ照射画像上の一意の位置への変換を表すものである。そこで、DMD画像に対し、一度、逆変換行列T´で変換することにより、DMD画像に設定した任意の画像形状と同様のレーザ照射を実行することが可能となる。
【0084】
次に、上述のようなキャリブレーションパターンを用いて変換行列Tを算出する処理について説明する。
図5は、第1の実施の形態における変換パラメータとしての変換行列Tの算出手順を示すフローチャートである。
【0085】
まず、ステップS401において、制御PC113は、例えば
図2に例示したようなキャリブレーションパターンを作成し、領域設定部117に出力する。なお、制御PC113は、キャリブレーションパターンを作成する代わりに、予め記憶部119に格納されたキャリブレーションパターンを読み出してもよい。
【0086】
そして、ステップS402において、ステップS401で作成されたキャリブレーションパターンを、DMD106に入力パターンとして指定する。
次に、ステップS403において、制御PC113は、キャリブレーションパターンのデータから座標を取得する。例えば、
図2の(1)のキャリブレーションパターンの場合、制御PC113は、画像処理部116で実行する画像認識処理により、キャリブレーションパターンから4つの円を認識し、認識した4つの円の中心(すなわち重心)の座標をそれぞれ算出して取得する。これら4つの座標を、座標a、b、c、dとする。
【0087】
そして、ステップS404において、レーザ光を照射する。すなわち、キャリブレーションパターンにしたがって微小ミラーのオン状態とオフ状態を切り替えるように、領域設定部117がDMD106を制御する。それにより、レーザ光源103から出射されたレーザ光が、キャリブレーションパターンにしたがって空間変調され、DMD106を介して感光体の表面に投影される(すなわち照射される)。
【0088】
続いて、ステップS405において、カメラ112が感光体を撮像し、制御PC113によって撮像された画像のデータをカメラ112から取り込む(すなわちキャプチャする)。この画像には、キャリブレーションパターンに対応する出力パターンが存在する。
【0089】
次に、ステップS406において、制御PC113は、ステップS405で取り込んだ画像の出力パターンから、4点a´、b´、c´、d´の座標を以下のようにして取得する。
【0090】
すなわち、制御PC113は、まず取り込んだ画像を白黒2値画像に変換する。この2値化は、例えば各画素の輝度値と閾値との比較に基づいて行われる。変換された白黒2値画像において、白い領域は
レーザ光が照射された領域部分であり、黒い領域は
レーザ光が照射されなかった領域である。そして、制御PC113は、変換された白黒2値画像を使って、以下の処理を行う。
【0091】
例えば、
図2の(1)のキャリブレーションパターンが使われる場合、制御PC113は、画像認識処理により、円または楕円に近い形状の存在および位置を認識する。その結果、4つの形状が認識される。
図2の(1)のキャリブレーションパターンの例では、4つの円の面積が小さい順に、それぞれ点a、b、c、dに対応しているとする。したがって、制御PC113は、認識した4つの形状の面積を算出し、その面積が小さい順にそれぞれ形状を点a´、b´、c´、d´に対応づける。さらに制御PC113は、認識した4つの形状それぞれの重心の座標を算出し、それら4つの座標を4点a´、b´、c´、d´の座標として取得する。
【0092】
続いて、ステップS407において、制御PC113は、上述したような変換行列Tを算出する。そして、作成した変換行列Tのデータを、RAMまたはハードディスク等の記憶部119に格納する。
【0093】
次に、第1の実施の形態における調整方法を説明する。
図6は、調整方法を説明するための図である。
図6に示す照射パターン310とDMD転送用データ320は、
図3に示したものと同様である。また、
図6は、
図3と同様の変換行列Tを用いて説明する図である。
【0094】
第1の実施の形態では、
図2の制御PC113が、既に算出して記憶部119に格納済みの変換行列Tと逆変換行列T´を読み出す。なお、逆変換行列T´は、変換行列Tの逆行列(=T
-1)として算出される。すなわち、逆変換行列T´は、変換パラメータとしての変換行列Tによる変換の逆変換を表す逆変換パラメータである。なお、逆変換行列T´のデータも、記憶部119に格納されている。
【0095】
また、制御PC113は、入力部114から照射パターン310を受け取り、DMD転送用データ320を生成する。さらに、DMD転送用データ320を逆変換行列T´によって変換してDMD転送用データ621を生成し、領域設定部117に出力する。
【0096】
そして、領域設定部117は、DMD転送用データ621をDMD106への入力パターンとして指定し、DMD106を制御する。すなわち、制御PC113は、領域設定部117を介して、DMD106に入力パターンとしてDMD転送用データ621を指定する機能を有する。
【0097】
図6に示した例では、
図3と同様に、変換行列Tは、x軸のプラス方向への移動と、反時計回りの約15度の回転とを合成した変換を表す。したがって、
図6において、逆変換行列T´により変換されたDMD転送用データ621は、DMD転送用データ320のパターンを時計回りに約15度回転させ、x軸のマイナス方向に移動したパターンである。
【0098】
そして、欠陥を修正するために、レーザ光源103からレーザ光が出射されと、そのレーザ光は、DMD転送用データ621が入力パターンとして指定されたDMD106を介して被加工物102上に照射される。本実施の形態では、ここでカメラ112が被加工物102を撮像し、カメラ112から画像を取り込む。こうして取り込まれた画像が
図6のライブ画像631である。
【0099】
図6に示したように、ライブ画像631に現れる出力パターンは、逆変換行列T´による変形と変換行列Tによる変形が相殺されるため、照射パターン310と等しいパターンとなる。
【0100】
このように、ライブ画像631上の出力パターンが照射パターン310と等しいということは、制御PC113による調整によって、加工すべき位置に加工すべき形状で正しくレーザ光が照射され、その正しい照射がライブ画像631として撮像されたということである。
【0101】
なお、DMD転送用データ320とDMD転送用データ621を比較すると分かるように、逆変換行列T´による変換の結果、微小ミラーをオン状態とすべきことを示す白い部分が、DMD転送用データ621においては、u<0または640≦uまたはv<0または480≦vの範囲にはみ出す可能性がある。そのため、本実施の形態では、照射パターン310を表す画像の画素数(例えば640×480画素)よりも多い(例えば800×600個の)微小ミラーを備えたDMD106が用いられる。この場合、
図3や
図6に示すように、DMD106に指定される入力パターンであるDMD転送用データ320を表す画像は、照射パターン310を表す画像の周りを黒い(すなわち光を照射しないことを示す)マージンで囲んだ画像である。
【0102】
以上が本発明を適用した第1の実施の形態の説明である。
本実施の形態によれば、実際に加工に用いるレーザ光とDMD106との間でキャリブレーションを実行するので、従来のガイド光とのキャリブレーションに比較して高精度なレーザ加工が可能となる。
【0103】
次に、本発明を適用した第2の実施の形態を説明する。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、第1の実施の形態で実行した処理の後に、欠陥修正のための加工で用いるレーザ光照射の予定位置を、表示部115に表示する実施の形態である。
【0104】
図7は、第2の実施の形態を説明するための図である。
すなわち、第1の実施の形態のようにして調整されたレーザ光の照射前に、被加工物102の表面をカメラ112により撮像する。そして、撮像された画像上に、例えば
図7の(1)のようにパターン701が形成された被加工物102の画像にレーザ光が照射される領域702を重畳させた状態で表示部115上に表示する。ここで、レーザ光の照射予定の領域702は、
図7の(2)のように外枠でもよいし、(3)のように塗りつぶしてもよいし、(4)のように半透明で重畳させてもよい。
【0105】
このように、表示部115上に照射予定領域を表示させるので、従来のようなガイド光用の光源を構成に追加する必要がない。
次に、本発明を適用した第3の実施の形態を説明する。
【0106】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、第1の実施の形態の構成に、ガイド光として利用するための光源が追加されている。
図8は、第3の実施の形態におけるレーザ加工装置の構成を示す図である。
【0107】
レーザ加工装置800は、
図1を用いて説明したレーザ加工装置100に加え、さらに、ガイド用のLED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)光源801を備える。LED光源801から照射された光(以下「ガイド光」という)は、ハーフミラー802で反射され、ミラー105に入射する。このガイド光は、オペレータに対しレーザ加工位置を予め示すために用いられる。
【0108】
ここで、レーザ光源103とハーフミラー802とLED光源801は、ハーフミラー802を透過したレーザ光と、ハーフミラー802で反射されたガイド光との光軸が一致するように配置されている。したがって、ハーフミラー802で反射した後のガイド光の光路は、レーザ光源103からのレーザ光の光路と同じであり、レーザ光と同様ガイド光も被加工物102に照射される。
【0109】
このガイド光とレーザ光は同じ光路を辿るが、同焦調整が実行されない場合、被加工物102の表面上で微妙なズレを有する。そのため、特許文献1に開示したような従来のガイド光によるキャリブレーションを実行した後にレーザ光で加工すると、微妙にずれて加工されることとなる。
【0110】
本実施の形態では、ガイド光とレーザ光との間でキャリブレーションを実行することにより、高精度なレーザ加工を実行する。
すなわち、レーザ光が入力パターンの形状で被加工物102に照射されることを確認するために、ガイド光とレーザ光が辿る同じ光路を構成する光学系を介して、被加工物102に照射されるガイド光を、キャリブレーションパターンの形状に成形させて感光体に照射し、ガイド光が照射された感光体の画像を撮像する。そして、撮像された画像のガイド光痕の形状とレーザ痕の形状とのズレ値を算出し、第1の実施の形態と同様にして算出したレーザ痕の形状とキャリブレーションパターンの形状とのズレ値と、ガイド光痕の形状とレーザ痕の形状とのズレ値とに基づいて、変換パラメータを算出する。
【0111】
図9は、第3の実施の形態におけるガイド光とレーザ光のキャリブレーションを説明するための図である。
まず、DMD106にキャリブレーションパターンを調整した状態で、ガイド光(白)とレーザ光(黒)で被加工物102の表面に対し光を照射した画像をそれぞれ取得する(
図9の(5))。
【0112】
次に、取得された画像に対し、第1の実施の形態で用いた方法により、各キャリブレーションパターンの座標を取得する(
図9の(1)、(2))。その取得されたキャリブレーションパターン座標により、ガイド光とレーザ光間の対応関係を変換行列T2として取得する(
図9の(6))。
【0113】
次に、第1の実施の形態に記載の方法で、DMD106とガイド光間の対応関係を変換行列T1として取得する(
図9の(3)、(4))。DMD106に調整するマスク画像に対し(
図9の(8))、変換行列T1をかけることで、ガイド光が被加工面に照射されている状態をシミュレートすることが可能である(
図9の(9))。さらに、変換行列T2をかけることで、レーザ光が被加工面に照射されている状態をシミュレートすることが可能である(
図9の(10))。
【0114】
そして、変換行列T1に変換行列T2をかけた状態を変換行列Tとして計算することで、レーザ光を照射せず、ガイド光だけで、DMD106とレーザ光間のキャリブレーションを実行することが可能となる。
【0115】
なお、上述とは逆に、ガイド光をレーザ光からシミュレートしてもよい。
次に、本発明を適用した第4の実施の形態を説明する。
(第4の実施の形態)
【0116】
第4の実施の形態は、上述の第3の実施の形態と同様の構成のレーザ加工装置で実行される。
上述した第3の実施の形態のように、ガイド光を用いる構成の場合、DMD106上での回折角の影響によってガイド光とレーザ加工形状に位置ずれが生じる。そのため、オペレータが表示部115などで加工位置を確認する際、ガイド光が実際の加工位置よりずれて見えることがある。
【0117】
そこで、本第4の実施の形態では、加工前にガイド光用のマスクパターンをDMD106に設定し、加工用マスクパターンを加工直前にDMD106に設定する。これにより、ガイド光とレーザ加工位置の見た目のずれを無くすことが可能となる。
【0118】
すなわち、ステージ制御部118からの指示で被加工物102が載置したステージ101を制御することにより、被加工物102を加工位置に移動後、被加工物102の表面を撮像する。そして、画像処理部116で実行する画像処理により加工可能領域以外をマスクするマスク画像を作成する。次に、ガイド光とレーザ加工痕により作成された変換行列により、ガイド光用マスクと加工用マスクを作成する。
【0119】
そして、作成されたガイド光用マスクをDMD106に調整する。すると、ガイド光用のマスクは調整されているので、表示部115上にズレのない状態でのガイド光が被加工物102の加工位置を示すことになる。
【0120】
そして、レーザ光の発射準備がOKになると、加工用マスクをDMD106に調整し、レーザ照射後、ガイド光用マスクをDMD106に調整することで、加工位置の精度を確認することも可能となる。
【0121】
次に、本発明を適用した第5の実施の形態を説明する。
(第5の実施の形態)
図10は、第5の実施の形態を説明するための図である。
【0122】
上述の各実施の形態においては、精度良くキャリブレーションを実行するために、キャリブレーションパターンを照射する領域1002(
図10の(1))にパターン1001などの照射形状を歪める障害物が存在しないことが望ましい。パターン1001などの3次元物体上にレーザ光を照射すると(
図10の(2))、カメラ112により撮像されるキャリブレーションパターン画像の加工状態が、不均一で歪んだ状態となってしまう。
【0123】
このような画像は、キャリブレーションパターンが不均一で歪んだ状態であるので、画像処理部116による画像処理で計測されたキャリブレーションパターン位置や重心がピクセル単位の誤差を有するため、精度良くキャリブレーションを実行することが困難となる。
【0124】
そこで、精度良くキャリブレーションを実行するために、パターン1001の形成されていない基板を用意することやパターン1001が形成されていない領域1002A、1002B、1002C、1002D(
図10の(3))にキャリブレーションパターンを照射する必要がある。
【0125】
本第5の実施の形態では、次のような処理を実行する。
まず、背景を検出する手段により、背景部分を検出する。この背景を検出する手段とは、例えば、ぼかしフィルターによりパターン1001を消去した背景画像(
図10の(4))と、キャプチャ画像(
図10の(5))とを差分することにより浮きでるパターン1001以外の領域(
図10の(6)の黒色の4つの矩形領域)を検出する手法が上げられる。
【0126】
そして、上述の各実施の形態において実行したようにして、キャリブレーションパターンを背景部分内に収まる位置に配置する(
図10の(7))。
すなわち、レーザ光源103から照射される前記レーザ光が、前記感光体として回路パターンが形成された被加工物102の表面のうち前記回路パターン部分以外の部分に照射されるように、キャプチャ画像から得られる表面の情報に基づいて前記キャリブレーションパターンを作成する。例えば、前記表面の情報としての回路パターンまたは欠陥を避けるようにキャリブレーションパターンを作成する。
【0127】
次に、本発明を適用した第6の実施の形態を説明する。
(第6の実施の形態)
本発明を適用した第6の実施の形態は、一度、キャリブレーションが実行された後、再度キャリブレーションを実行する実施の形態である。または、ガイド光でキャリブレーションを実行した後、レーザでキャリブレーションを実行する実施の形態である。
【0128】
図11は、第6の実施の形態を説明するための図である。
レーザ光の光量分布の均一性が失われると、DMD106のミラーを全部ONの状態で被加工物102に対してレーザ光を全面照射した場合(
図11の(1))、被加工物102の表面には加工ムラが発生する(
図11の(2))。
【0129】
このような加工ムラが存在する状態でキャリブレーションを実行すると(
図11の(3))、加工後のキャリブレーションパターンにグラデーションのようなムラが発生し(
図11の(4))、2値化によるキャリブレーションパターン検出を実行すると、キャリブレーションパターン形状を正確に検出することが困難となる(
図11の(5))。
【0130】
そこで、あらかじめムラの発生する部分を特定し(
図11の(6))、ムラを避けるようにキャリブレーションパターンを配置することで(
図11の(7))、ムラのないキャリブレーションパターンを作成することができ(
図11の(8))、キャリブレーションパターン形状を正確に検出することができる(
図11の(9))。
【0131】
具体的な処理としては、まず、加工前と加工後の画像間差分をとることで、差分画像を作成する。作成された差分画像には、加工により変化した部分のみが検出されるので、レーザ光の全面照射形状を取得することが可能である。
【0132】
次に、差分画像に対し2値化処理を実行することで、良好な加工部分とムラの影響を受けた加工部分とを分離する。キャリブレーションパターンは、光量分布の一定なレーザ光が良好に加工される領域に配置されることが望ましい。そこで、2値化処理により検出された良好に加工される領域上に配置されるように、キャリフレーションパターンの位置を移動させる。具体的には、キャリブレーションパターンとレーザ光の光量分布が一定な領域との差分が少なくなり、円の中心に近づかない方向へキャリブレーションパターンを移動させる。キャリブレーションパターンとレーザ光の光量分布が一定な領域との差分がなくなれば完了である。
【0133】
このようにしてムラを避けるようにパターンを配置することで、良好なレーザ加工結果を得ることができ(
図11の(8))、良好にキャリブレーションパターン形状を検出することが可能となる(
図11の(9))。
【0134】
次に、本発明を適用した第7の実施の形態を説明する。
(第7の実施の形態)
上述の第1乃至第6の実施の形態としては、キャリブレーションパターンを構成する図形の点数を、4点として説明してきたが、4点ではなく、2点として、変換行列を求めてもよい。また、一般的に、N点として、アフィン変換行列や擬似アフィン変換行列や射影変換行列を求めてもよい。
【0135】
以上説明してきたように、本発明を適用した各実施の形態によれば、実際に加工に用いるレーザ光と空間変調素子との間でキャリブレーションを実行するので、従来のガイド光とのキャリブレーションに比較して高精度なレーザ加工が可能となる。
【0136】
また、空間変調素子により任意のキャリブレーションパターンを投影可能なため、一度に効率よくキャリブレーションを実行することが可能である。
また、空間変調素子により任意形状のキャリブレーションパターンを投影可能であるため、照射対象領域にキャリブレーションパターンの形状をゆがめるような構成物が存在する場合であっても、それを避けるようなパターン配置で空間変調素子に設定することが可能である。
【0137】
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または形状を取ることができる。