特許第5791924号(P5791924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791924
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】名刺入れ
(51)【国際特許分類】
   B42F 7/14 20060101AFI20150917BHJP
【FI】
   B42F7/14 C
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-55887(P2011-55887)
(22)【出願日】2011年3月14日
(65)【公開番号】特開2012-192523(P2012-192523A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2014年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124085
【氏名又は名称】加藤電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 眞一
【審査官】 宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−059982(JP,U)
【文献】 実開昭62−119831(JP,U)
【文献】 実開昭61−190220(JP,U)
【文献】 実開昭63−185624(JP,U)
【文献】 特開平10−264573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 1/00 − 23/00
B65D 83/08
A45C 1/00 − 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
名刺挿入口と名刺取出し口とを有し、内部に複数枚の名刺を重ねて収納できる互いに固定された下部ケースと上部ケースとから成る収納ケースと、
収納された名刺全体を上部ケース側へ押し上げる名刺押上げ手段と、
前記複数枚の名刺の最上部のものを係止する係止部を有する部材を具え、前記上部ケースに前記名刺取出し口へ向けてスライド可能に設けた名刺取出し機構と、
前記名刺取出し機構により押し出される名刺の先端部分を斜め下方へ向けて傾斜させるよう前記名刺取出し口近くに設けたガイド部と、
前記複数枚の名刺の最上部のものから2枚目及びそれより下部のものが前記名刺取出し口から押し出されるのを阻止するよう前記名刺取出し口近くに設けたストッパと、
を備えると共に、
前記名刺挿入口に開閉カバーを設け、前記開閉カバーの押下げ操作により、開閉カバーと共に前記名刺押上げ手段が押し下げられるよう構成したことを特徴とする、名刺入れ。
【請求項2】
前記名刺取出し機構の前記係止部を、2段以上の段差形状に形成したことを特徴とする、請求項1に記載の名刺入れ。
【請求項3】
前記収納ケースの前記開閉カバーを設けた側とは反対側に開閉可能な透明窓部材を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の名刺入れ。
【請求項4】
前記下部ケースの下面にポケット部を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の名刺入れ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の名刺を収納させておき、必要に応じて1枚ずつ連続して確実に、或いは1枚ずつ半自動的に確実に取り出すことができると共に、従来品の種々の不具合を解消し得る名刺入れに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の名刺を収納させた収納ケースに名刺の取出し口を設け、収納ケース底部に設けた板バネのような弾性手段を用いた押上げ手段で名刺を上方へ押し上げ、押し上げた名刺を蓋部の側に設けた窓部より指を入れて指と名刺との間の摩擦力によって名刺をスライドさせ1枚ずつ取出し口より押し出すことのできるものや、同じく押上げ手段を有し、蓋部の側に取出し釦部材を摺動可能に取り付け、この取出し釦に設けた係止部で最上段の名刺の端部を係止して取出し口より押し出すことができるようにしたものが、下記特許文献1と2に示したように公知である。
【0003】
このうち特許文献1に記載された名刺入れは、指で収納ケース内に収納された名刺を押し出すために、強く名刺を押すと、名刺が下方へ沈むことから、取出し口から取り出しにくくなるという問題があり、この問題点は、収納ケース内にある名刺の数が少なくなると、押上げ手段の弾性手段の弾力が弱まることから、より増幅されるという問題があった。
【0004】
また、特許文献2に記載された名刺入れは、取出し釦部材の係止部で名刺の端部を引掛けて、取出し釦部材を押すことで名刺を取出し口へ押し出すものであるが、取出し釦部材の係止部で係止する部分が名刺の厚さ分しかないため、しばしば名刺を係止することに失敗し、何度もやり直さなくてはならないという問題が生じた。また、この特許文献2に記載された名刺入れは、名刺を取り出す度に取出し釦を手動で元位置に戻さなくてはならず、操作が煩雑であるという問題もあった。
【0005】
そのような問題点を解決するため、本発明者は、先に下記特許文献3に係る発明を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】第3108210号実用新案登録公報
【特許文献2】実開昭62−63020号公報
【特許文献3】特願2010−154826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
然しながら、これらの特許文献に記載の発明を含め、従来の名刺入れは、未だに次のような種々の不具合を有していた。
即ち、(1)名刺を1枚だけ送り出す際に誤動作が生じやすく、1枚も出てこなかったり、二枚以上出てきたりすることがある、(2)収納した名刺を最後のものまで確実には取り出せないことがある、(3)耐久性能が悪い、(4)可動式の蓋を用いたものは機能が不安定である、(5)名刺入れ全体が厚くなる、(6)名刺の収納作業や取替えがしづらい、(7)収納ケース内の名刺の残量が分からない、(8)受け取った名刺等を一時保管できない、等々の不具合を有しており、多くの改良の余地が残されていた。
【0008】
本発明は上記不具合を解決するためになされたもので、その目的とするところは、収納ケース内に収納させた名刺を最後のものまで1枚ずつ連続して確実に、或いは1枚ずつ半自動的に確実に取り出すことができ、耐久性能に優れ、薄型で、名刺の収納作業や取替えが容易であり、収納ケース内の名刺の残量が見えやすく、他人から受け取った名刺等を一時保管することも可能な名刺入れを提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載のように下記の如く構成される。
即ち、請求項1に記載の本発明に係る名刺入れは、名刺挿入口と名刺取出し口とを有し、内部に複数枚の名刺を重ねて収納できる互いに固定された下部ケースと上部ケースとから成る収納ケースと、収納された名刺全体を上部ケース側へ押し上げる名刺押上げ手段と、前記複数枚の名刺の最上部のものを係止する係止部を有する部材を具え、前記上部ケースに前記名刺取出し口へ向けてスライド可能に設けた名刺取出し機構と、前記名刺取出し機構により押し出される名刺の先端部分を斜め下方へ向けて傾斜させるよう前記名刺取出し口近くに設けたガイド部と、前記複数枚の名刺の最上部のものから2枚目及びそれより下部のものが前記名刺取出し口から押し出されるのを阻止するよう前記名刺取出し口近くに設けたストッパと、を備えると共に、前記名刺挿入口に開閉カバーを設け、前記開閉カバーの押下げ操作により、開閉カバーと共に前記名刺押上げ手段が押し下げられるよう構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る名刺入れは、前記名刺取出し機構の前記係止部を、2段以上の段差形状に形成したことを特徴とする
請求項3に記載の本発明に係る名刺入れは、前記収納ケースの前記開閉カバーを設けた側とは反対側に開閉可能な透明窓部材を設けたことを特徴とする。
請求項4に記載の本発明に係る名刺入れは、前記下部ケースの下面にポケット部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、請求項1に係る発明は、収納ケース内の名刺全体を上部ケース側へ押し上げる名刺押上げ手段と、複数枚の名刺の最上部のものを係止する係止部を有する部材と、前記複数枚の名刺の最上部のものから2枚目及びそれより下部のものが前記名刺取出し口から押し出されるのを阻止するストッパとの協働作用により、収納ケース内の名刺を1枚ずつ連続して確実に、或いは1枚ずつ半自動的に確実に取出し口から外側へ押し出すことができる。また、名刺の収納ケースは、下部ケースと上部ケースを堅固に固定して成るものであり、その上部ケースに名刺取出し機構を設けたから、従来の可動式の蓋に名刺取出し機構を設けたものに比べて、作動が安定し、耐久性も向上する。また、前記名刺挿入口に開閉カバーを設けることにより、収納ケース自体の一部を可動式の蓋とする場合に比べて、動作の安定性が確保され、名刺の収納、取替え作業も容易となる。また、前記開閉カバーの押下げ操作により前記名刺押上げ手段の押上げプレートも一緒に押し下げられるように構成したことにより、前記名刺挿入口からの名刺の収納作業や取替え作業が容易となる。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記名刺取出し機構の前記係止部を、2段以上の段差形状に形成したことにより、仮に1段目で名刺の引っ掛け動作に失敗したとしても、2段目以降の段差部で引っ掛けることができるので、名刺の確実な送出し機能が達成できる。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記収納ケースの前記開閉カバーを設けた側とは反対側に開閉可能な透明窓部材を設けたことにより、収納ケース内部の名刺の残量を外部から透視でき、確認できる。また、当該透明窓部材を開閉可能としたことにより、当該透明窓部材と前記開閉カバーとの両方を開け、透明窓部材を明けた開口から指を差し入れ、内部の名刺全体の側辺を指で押すことによって、反対側の名刺挿入口からそれらの名刺をまとめて取り出すことができるので、名刺全体の入れ替え作業が容易となる。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記下部ケースの下面にポケット部を設けたことにより、他人から受け取った名刺やキャッシュカード等をこのポケット部に一時的に保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る名刺入れを一方の側から見た斜視図である。
図2】本発明に係る名刺入れを他方の側から見た斜視図である。
図3】本発明に係る名刺入れに複数枚の名刺を収納させる状態を示す斜視図である。
図4】本発明に係る名刺入れから名刺を1枚取り出す状態を示す斜視図である。
図5】本発明に係る名刺入れの名刺挿入口の開閉カバーと、反対側の透明窓部材とを開いた状態を示す斜視図である。
図6】本発明に係る名刺入れの図5に示した状態において、内部の名刺を入れ替える様子を示す斜視図である。
図7】本発明に係る名刺入れの分解斜視図である。
図8】本発明に係る名刺入れの図1におけるA−A線断面図である。
図9】本発明に係る名刺入れの図8に示した状態から名刺を1枚取り出す状態を示す断面図である。
図10】本発明に係る名刺入れの図8中のC部分の拡大断面図である。
図11】本発明に係る名刺入れの図9中のD部分の拡大断面図である。
図12】本発明に係る名刺入れの図1におけるB−B線断面図である。
図13】本発明に係る名刺入れの図12中のE部分において、名刺挿入口の開閉カバーを開いた状態を示す拡大断面図である。
図14】本発明に係る名刺入れにおける名刺取出し機構の自動復帰手段の名刺の取出し動作開始前の状態を示す説明図である。
図15】本発明に係る名刺入れにおける名刺取出し機構の自動復帰手段の名刺の取出し動作終了時の状態を示す説明図である。
図16】本発明に係る名刺入れの下部ケースの下面に設けたポケット部を示す斜視図である。
図17】本発明に係る名刺入れの下部ケースの(a)平面図、(b)底面側から見た斜視図である。
図18】本発明に係る名刺入れの上部ケースの底面図である。
図19】本発明に係る名刺入れの押上プレートの底面側から見た斜視図である。
図20】本発明に係る名刺入れの開閉カバーの内面側の構成を示す斜視図である。
図21】本発明に係る名刺入れの透明窓部材の下側斜視図である。
図22】本発明に係る名刺入れの取出し釦部材の下側斜視図である。
図23】本発明に係る名刺入れの名刺取出機構の押出しプレートの下側斜視図である。
図24】本発明に係る名刺入れの名刺取出機構の自動復帰手段のバネ収容カバーの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る名刺入れの実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0018】
図面によれば、この実施例に係る本発明の名刺入れ1は、図1図6に示す如く、名刺挿入口41と名刺取出し口42とを有し、内部に複数枚の名刺Mを重ねて収納できる互いに固定された下部ケース2と上部ケース3とから成る収納ケース4を有している。下部ケース2と上部ケース3とは、下部ケース2のネジ挿通穴24(図7)に挿通され上部ケース3の止めネジ穴39(図18)にねじ込まれる固定ネジ40によって互いに堅固に固定される。或いはまた、カシメ、溶着、接着等の各種固定手段でもよく、下部ケース2と上部ケース3とを堅固に固定できれば、その手段は問わない。収納ケース4の内部には、収納された名刺全体Mを上部ケース側へ押し上げる名刺押上げ手段5が設けられる。
上部ケース3には、図7に示す如く、その略中央部に明けた窓部33を通じて、止めネジ63により互いに固定された内部側の押出しプレート62と外側の取出し釦部材61とから成る名刺取出し機構6が、窓部33に沿って前記名刺取出し口42へ向けてスライド可能なように取り付けられている。前記押出しプレート62は、前記複数枚の名刺Mの最上部の名刺m1を係止する係止部621を有している。名刺取出し機構6の詳細については、図7図10を参照して後述する。
【0019】
前記名刺取出し口42の近くには、前記名刺取出し機構6により押し出される名刺の先端部分を斜め下方へ向けて傾斜させるガイド部37が設けられると共に、前記複数枚の名刺の最上部のものから2枚目及びそれより下部のものが前記名刺取出し口42から押し出されるのを阻止するストッパ23(図7図11)とが設けられる。
ストッパ23は、図7に示す如く、下部ケース2の前側の周壁部20bの中央領域を二重構造とし、その内側の周壁部20gの上辺を傾斜させて形成し、その最も高い箇所をストッパ23としたものである。このストッパ23の頂点と上部ケース3の前記ガイド部37との間には、最上部の名刺1枚だけが通過し得る隙間が形成されると共に(図8図9図11)、ガイド部37により名刺取出し口42が下向きに傾斜しているため、1枚目が取出し口へ押し出されると、2枚目以降が押し下げられる効果があり、これにより前記隙間を最上部の名刺1枚だけが通過し、2枚目から下の名刺の通過を効果的に阻止するようになっている。なお、ストッパ23の形態や設置箇所は、図示したものに限定されず、各種各様の方式のものが可能である。
【0020】
下部ケース2と上部ケース3は、好適にはいずれも合成樹脂材料で成形することにより製造した成形品であり、下部ケース2は底板20a(図7)と、この底板20aの周囲に設けた周壁部20b〜20fとを有している。上部ケース3は上板30aと、この上板30aの周囲を囲んで設けた周壁部30b〜30gとを有している。前記下部ケース2の前側の周壁部20bの上端縁は一段低い凹部22として形成され、上部ケース3の前側の周壁部30bと重ね合わせたとき、名刺取出し口42(図2図4参照)が形成されるようになっている。
【0021】
前記名刺取出し機構6は、前記の如く、前記上部ケース3の略中央部に取り付けられ、上部ケース3の略中央部に明けた窓部33のレール部34に沿って前後方向へスライド可能なようになっている。即ち、名刺取出し機構6は、上部ケース3の略中央部に明けた窓部33において、上部ケース3の内面側に設けられる押出しプレート62と、前記上部ケース3の外面側に設けられ、複数の止めネジ63により前記押出しプレート62に固定される取出し釦部材61と、により構成され、窓部33のレール部34に沿って前後方向へスライド可能なようになっている。
【0022】
押出しプレート62の下面の前記係止部621は、図10等に示すように2段、若しくはそれより多い段数の段差形状に形成することが望ましい。そうすることにより、仮に1段目で最上部の名刺m1の引っ掛け動作に失敗したとしても、2段目以降の段差部で引っ掛けることができるので、名刺の確実な送出し機能が確保できるからである。
【0023】
また、取出し釦部材61は、指で操作し易くするためにその上面611に凹凸形状が形成されると共に、下面612(図22)には、押出しプレート62と固定する止めネジ63をねじ込むためのネジ穴613が設けられ、上面611と下面612との間には段差部614が形成されている。また、押出しプレート62(図23)には、前記係止部621のほか、前記止めネジ63を挿通するためのネジ穴622と、弦巻バネ71の一端側の動きを許容するための凹部623(図7)が形成されている。取出し釦部材61と押出しプレート62を固定すると、前記段差部614により取出し釦部材61の下面と押出しプレート62の上面の間にスペースが形成され、そのスペースに前記窓部33のレール部34を挟み込むことにより、名刺取出し機構6をレール部34に沿って前後方向へスライド可能に保持するようになっている。
ユーザーが取出し釦部材61を、図1図2図8図10等に示した状態から前方向へスライドさせると、押出しプレート62の下面の後端部に設けた係止部621が、収納ケース4の複数の名刺の最上部の名刺m1の後端部を引っ掛けた状態で前方向へ押し動かすことができる(図9参照)。
【0024】
図示した実施例において、前記名刺取出し機構6には、名刺取出し操作後に、押出しプレート62等を原位置に自動復帰させる自動復帰手段7が設けられている。この自動復帰手段7は、図7図14図15に示したように、弦巻バネ71とバネ収容カバー72とから成り、バネ収容カバー72は、複数の取付けネジ73で上部ケース3の内面の自動復帰手段取付け領域38(図18参照)に取り付けられると共に、バネ収容カバー72の収装凹部721に弦巻バネ71の主体部711を収容するようになっている。弦巻バネ71は、その一方の端部712を止めネジ74で旋回可能に保持し、他方の端部713を押出しプレート62に設けた切欠部621へ挿入させつつ前記止めネジ63の1本のもので旋回可能に保持させている。尚、図24において指示記号722、723で示されたものは、図15に示したように、取付けネジ73と止めネジ74の取付用孔である。
図14に示す如く、名刺の取出し動作開始前の状態から、ユーザーが取出し釦部材61を弦巻バネ71のバネ力に抗して指で前方向へスライドさせ、図15に示すような名刺の取出し動作終了位置まで移動させた後、取出し釦部材61から指を離すと、弦巻バネ71の復原力により、取出し釦部材61及び押出しプレート62から成る名刺取出し機構6は、図14に示した原位置へ復帰するものである。
【0025】
なお、この自動復帰手段7は、弦巻バネに代えて引張コイルスプリングや圧縮コイルスプリング、スネークスプリング、或いは板バネその他の弾性手段を用いるようにしても良い。弦巻バネ71にすると、収納ケース4の厚みを極力薄くすることができる、また、扁平な線材を用いた弦巻バネとすると、収納ケース4の厚みを更に薄くすることが可能である。
また、この自動復帰手段7は、弾性手段の構成及び設置を工夫することにより、名刺の押し出し時と押し出し後の復帰時の両方を半自動で行うように構成することも可能である。
なお、バネ収容カバー72を設けた理由は、弦巻バネ71が露出していると、名刺に引っ掛かる等の誤動作を生じる可能性があるため、これを無くするためである。
【0026】
前記名刺押上げ手段5は、前記収納ケース4内で上下方向に移動可能な押上げプレート51(図7図13参照)と、当該押上げプレート51を押し上げるよう当該押上げプレート51と前記下部ケース2との間に設けた複数の弾性手段52と、で構成される。
前記押上げプレート51の前後及び左右の長さを、収納すべき名刺のそれと略同等以上とすることにより、名刺の反りや歪みを防止でき、1枚ずつの名刺の取出し動作の誤動作が解消されると共に、名刺の大きさのバラツキにも対応できる。
前記複数の弾性手段52としては、複数の圧縮コイルバネが好適に用いられる。コイルバネは、伸縮率が大きく、多数枚の名刺を収容しても収納ケース4を薄くできるためである。また、弾性率の調整も容易であり、使用状況に応じて最適の調整が可能であると共に、名刺の押さえ機能を安定させ得るためである。
収納ケース4の厚さを携帯に便利な厚さにしたとき、通常の名刺であれば15枚程度収納可能である。
【0027】
前記の各弾性手段52の下端部は、下部ケース2の底板20aの内面に設けた複数のバネ受皿部25内に嵌め入れ、上端部は、押上げプレート51の支台面511の下面に設けた複数のバネ受皿部512内に嵌め入れる。これらのバネ受皿部は、下部ケース2や押上げプレート51と一体的に成形してもよいし、ネジ止めするようにしてもよい。このように弾性手段52の下端部及び上端部を前記バネ受皿部内に嵌め入れることによって、これらの圧縮コイルバネの変形や誤動作を防ぐことが可能となる。また、圧縮コイルバネの下端部及び上端部をバネ受皿部内に嵌め入れるだけでよいので、板バネ等を接着したりネジ止めしたりする従来品に比べると、製造コストが軽減されるという効果もある。
【0028】
また、図示した実施例においては、弾性手段52の数と配置を、前記名刺取出し機構6が最上部の名刺m1を引っ掛けて押し出す中央部においては、3個の弾性手段52を設けて、前記引っ掛け動作を安定化させると共に、左右の端部近くにおいては2個ずつの弾性手段52を設けて、名刺の挿入時や取出し操作時に過度な圧力を避け、それらの操作がスムーズに行われ得るようにするために、押上げプレート51の領域に応じて押上げ荷重の差を生じさせるようになっている。これは、前記圧縮コイルバネ等の複数の弾性手段の数や配置に限らず、弾性手段の形態や取付け方法についても種々変化させることにより、押上げプレート51の領域に応じて押上げ荷重の差を生じさせることができる。
【0029】
図示した実施例において、前記名刺挿入口41には、名刺挿入口開閉手段8が設けられる。この名刺挿入口開閉手段8は、開閉カバー81及びそのロック機構83から成り、開閉カバー81は弾性手段としての圧縮コイルバネ82によって上方向(閉じる方向)へ付勢されるようになっている。
名刺挿入口41の開閉カバー81は、図7図12図13図20等に示す如く、上壁811、左壁812、前壁813、後壁814、突起815、バネ受皿部816、係止フック817を有し、収納ケース4を組み立てる際に、下部ケース2の名刺挿入口形成開口部21と上部ケース3の名刺挿入口形成開口部31との位置に嵌め入れられ、前記突起815が下部ケース2のガイド溝27及び上部ケース3のガイド溝311内に収容され、上下方向にスライド可能なように取り付けられる。圧縮コイルバネ82は、その下端が下部ケース2に設けたバネ受皿部26に嵌め入れられ、上端が開閉カバー81の上壁811の内面に設けたバネ受皿部816に嵌め入れられることにより、開閉カバー81は圧縮コイルバネ82により押し上げられ、常態においては閉じるようになっている。
【0030】
開閉カバー81の上壁811を押して、開閉カバー81を押し下げると、開閉カバー81の上壁811の内面が押上げプレート51の押下げ突部513に当接し、開閉カバー81と一緒に押上げプレート51が押し下げられる(図3図13参照)。これにより、複数枚の名刺Mを名刺挿入口41から挿入したり、取り替えたりする作業が容易となる。この場合、押上げプレート51の名刺挿入口41側が先ず押し下げられ、奥側は未だ押し下げられた状態にはなく、傾斜した状態となっているが、名刺Mを挿入するに従い、奥側も次第に押し下げられると共に、名刺Mの最上部のものの高さは前記押出しプレート62によって規制されるため、最終的に図12に示すように、押上げプレート51は下部ケース2の底板20aと平行となった状態で名刺Mが収納される。また、名刺Mを奥まで充分に押し入れると、名刺の先端は下部ケース2の奥壁20hに突き当たってすべての名刺の先端が揃えられる。
なお、開閉カバー81を充分に押し下げると、開閉カバー81の左壁812の内壁面に設けた前記係止フック817が下部ケース2の底板20aの端縁部に係止され(図13)、開閉カバー81が開いた状態が保たれるようになっている。これにより、名刺の出し入れ作業が容易となる。開閉カバー81の下辺を図7図13において左方向に引くと、係止フック817が外れ、圧縮コイルバネ82の押上げ力で開閉カバー81が自動的に閉じられる。
【0031】
なお、図示した実施例においては、名刺入れを持ち歩いている際に不用意に開閉カバー81が開かないようにするために、図7に示す如く、開閉カバー81の閉鎖状態を保持するロック機構83が、上部ケース3に設けられている。このロック機構83は、ロック釦部材84と、ロック片85と、これらを互いに連結する固定ビス86とから成り、上部ケース3に明けたロック釦部材収容孔32に、図7中において左右方向へスライド可能なように取り付けられている。即ち、上部ケース3の外側に設けられるロック釦部材収容孔32と、上部ケース3の内側に設けられるロック片85とを、ロック釦部材収容孔32を通じて固定ビス86により互いに固定し、ロック釦部材84を左方向へスライドさせると、ロック片85が開閉カバー81の上壁811の下に進入して開閉カバー81が下方へ押し下げられるのを阻止し、開閉カバー81が開くのを防止する。開閉カバー81を開くときは、ロック釦部材84を右方向へスライドさせると、ロック片85が開閉カバー81の上壁811の下から無くなり、開閉カバー81を下方へ押し下げることが可能となる。
【0032】
図示した実施例においては、内部の名刺の残量が外部から分かるように、前記収納ケース4の前記開閉カバー81を設けた側とは反対側に透明窓部材9を設けてある。
また、この透明窓部材9は開閉可能とし、図5及び図6に示したように、この透明窓部材9と開閉カバー81とを開いた状態で、透明窓部材9の側から指を差し入れ、内部の名刺全体を反対側の名刺挿入口41からまとめて取り出すことができるようにして、名刺全体の入れ替え作業が容易となるようにする。透明窓部材9を開閉可能とするため、図示した実施例においては、上部ケース3の左辺側に透明窓部材収容切欠き部35を形成し(図7参照)、その内壁面に設けた突起軸36aに、透明窓部材9の側壁に形成した軸受孔91を嵌め合わせる。また、透明窓部材9の側壁に係止爪92を形成し(図7図21参照)、透明窓部材9を閉じたときに、この係止爪92が前記透明窓部材収容切欠き部35の内壁面に形成した係止溝36bと係合して、透明窓部材9が不用意に開くのを防止するようにする。
【0033】
図示した実施例において、前記下部ケース2の前側の周壁部20bの上端縁は一段低い凹部22として形成され(図7参照)、上部ケース3の前側の周壁部30bと重ね合わせたとき、名刺取出し口42(図2図4参照)が形成されるようになっている。このように、名刺取出し口42を下部ケース2と上部ケース3の接合部に沿って設けることにより、名刺取出し口42における名刺の引っ掛かりによる誤動作が防止される。
【0034】
更にまた、図示した実施例においては、他人からもらった名刺や、キャッシュカード、乗車券、領収書などを一時的に保管しておくために、下部ケース2の下面にポケット部29を設けてある。このポケット部29は、前記下部ケース2の下面に形成した凹所291と、その上を覆うカバープレート10とにより形成される(図7図13図16図17参照)。カバープレート10は例えば塩化ビニール等の透明な合成樹脂で作製され、その1辺(図7図16に示した例では左側の円弧状の1辺)を残して、残りの3辺の辺縁部を、下部ケース2の下面に形成した凹所291の周囲の一段高い土手部292に前記固定ネジ40で取り付けるものである。或いはまた、接着若しくは超音波溶着等の手段で接合するようにしてもよい。カバープレート10の中央に明けた孔101は、ポケット部内の収容物を指先で出し入れ口側へ送るためのものであり、奥側のコの字形の孔102は奥まで入り込んだ収容物を取り出し易くするための孔である。
【0035】
次に、本発明に係る名刺入れの作用効果について説明する。
まず、図3に示したように、本発明に係る名刺入れ1の収納ケース4内に名刺を収納する際には、前記ロック機構83のロックを解除し、開閉カバー81を押し下げて名刺挿入口41を開かせる。そのとき、図示した実施例においては、開閉カバー81を押し下げると、前記の如く、押上プレート51も開閉カバー81により押し下げられるようになっており、また、開閉カバー81の内面に形成した前記係止フック817が下部ケース2の底板20aの端縁部に係止され、開閉カバー81が開いた状態が保たれるようになっているので、多数枚(例えば15枚程度)の名刺Mの挿入作業が容易となっている。
また、本発明では、名刺の収納操作や入替え操作を、上部ケース3と下部ケース2を取り外して行うのではなく、上部ケースと下部ケースは固定ネジ40により固定したままで、収納ケース4の側面に設けた名刺挿入口41から行えるようにしたため、収納ケース自体を堅牢にでき、耐久性能が向上する。
【0036】
名刺を1枚取り出す場合には、上部ケース3の上面にスライド可能に取り付けられている取出し釦部材61を前方向へスライドさせると、前記押出しプレート62の下面の後端部に設けた係止部621が、収納ケース4内の複数の名刺Mの最上部の名刺m1の後端部を引っ掛けた状態で前方向へ押し動かす(図9参照)。このとき、押し出される名刺の先端部分は、前記名刺取出し口42近くに設けられたガイド部37によって斜め下方へ向けて傾斜させられると共に、ストッパ23によって、2枚目の名刺m2及びそれより下部の名刺は名刺取出し口42から押し出されるのを阻止されるため、最上部の名刺1枚だけが確実に取り出され得る(図4)。また、押出しプレート62の下面の前記係止部621は、2段、若しくはそれより多い段数の段差形状に形成されているため、仮に1段目で最上部の名刺の引っ掛け動作に失敗したとしても、2段目以降の段差部で引っ掛けることができるので、名刺の確実な送出し機能が確保できるものである。また、取出し釦部材61は、前記自動復帰手段7により、常に所定位置で待機状態にあるので、次に取り出すときも取出し釦部材61を元の位置に戻す必要がなく、操作性がよい。
収納する名刺よりも大きなサイズの押上げプレート51を用いることにより、名刺の反りや歪みが生じることがなく、最後の1枚の名刺まで確実に取り出すことができる。
また、押上プレート51を押し上げる弾性手段として、伸縮率の大きな圧縮コイルバネを用いることにより、収納ケースの厚さを薄くすることができる。
【0037】
収納ケース4内の名刺の残量を確認したい場合は、透明窓部材9を通じてこれを確認できる。なお、開閉カバー81を透明な部材で作製した場合には、開閉カバー81を通じて透視するようにしてもよい。
収納ケース4内の多数の名刺をまとめて取り出したり、入れ替えたりする場合には、透明窓部材9と前記開閉カバー81の両方を開いた状態(図5)で、透明窓部材9の側から指を差し入れ、内部の名刺全体を反対側の名刺挿入口41からまとめて取り出すようにし(図6)、続けて、別の名刺を名刺挿入口41から収納するようにすれば、名刺全体の入れ替え作業が容易となる。
他人から受け取った名刺等は、ポケット部29に一時的に保管できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は以上のように構成したので、収納ケース内に収納させた名刺を最後のものまで1枚ずつ半自動で確実に取り出すことができ、耐久性能に優れ、薄型で、名刺の収納作業や取替えが容易であり、収納ケース内の名刺の残量が見えやすく、他人から受け取った名刺等を一時保管することも可能な優れた名刺入れを提供し得るものである。
【符号の説明】
【0039】
M 複数枚の名刺
1 名刺入れ
2 下部ケース
23 ストッパ
29 ポケット部
3 上部ケース
37 ガイド部
4 収納ケース
41 名刺挿入口
42 名刺取出し口
5 名刺押上げ手段
6 名刺取出し機構
612 下面
614 段差部
621 係止部
712,713 端部
81 開閉カバー
9 透明窓部材
図1
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