(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791938
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】測定器用テストプローブ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20150917BHJP
G01R 1/06 20060101ALI20150917BHJP
【FI】
G01R1/067 A
G01R1/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-84298(P2011-84298)
(22)【出願日】2011年4月6日
(65)【公開番号】特開2012-220268(P2012-220268A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086449
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 浩明
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 俊介
【審査官】
續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−024699(JP,A)
【文献】
実開平01−051870(JP,U)
【文献】
特開2000−251820(JP,A)
【文献】
米国特許第04263547(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0127843(US,A1)
【文献】
特開2001−057985(JP,A)
【文献】
特開2011−174846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側から接触ピンを突出させたプローブ本体部と、一端を前記接触ピンに接続させて前記プローブ本体部の内部空間を経て該プローブ本体部の後端側から引き出された他端に測定器の入力端子に差し込むためのプラグを有するコードとを少なくとも備えてなる測定器用テストプローブにおいて、
前記プローブ本体部は、該プローブ本体部の外表面の適位置から一部を突出させて軸方向とは直交する方向での人為的な回転操作を可能に軸支させた回転ギアと、該回転ギアと噛合する噛合溝を表面に有して前記内部空間内に位置する内コード部周りに螺旋状となって進退可能に配置される弾性保護カバーと、前記先端寄りの適位置にて前記弾性保護カバー進退時の出入を許す出入口とを備え、
前記接触ピン使用時には、前記回転ギアを一方向に回転させることで前記出入口に前記弾性保護カバーの先端面が臨む位置までの該弾性保護カバーの退避を可能とし、
前記接触ピンの不使用時には、前記回転ギアを他方向に回転させることで前記接触ピンの全体を覆う位置までの前記弾性保護カバーの進出を可能としたことを特徴とする測定器用テストプローブ。
【請求項2】
前記弾性保護カバーは、これを退避させた際に前記出入口と掛合して全体が没入するのを阻止する前部突起を前記先端面に備える請求項1に記載の測定器用テストプローブ。
【請求項3】
前記弾性保護カバーは、これを進出させて前記接触ピンの全体を覆った際に前記噛合溝が前記回転ギアと噛合するのを阻止する後部突起を後端部に備える請求項1または2に記載の測定器用テストプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触ピンを先端側から突出させた測定器用テストプローブに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
テスタ等の測定器は、電気機器の据え付けや故障の修理を行う際に電圧や電流や抵抗を測定する必要から、ケーシング内に必要な計測回路を備えて形成されており、該ケーシング側に設けられた入力端子に対し測定器用テストプローブが備えるプラグを差し込み、測定器用テストプローブにおける接触ピンを測定対象物に電気的に接触させて必要な測定ができるようになっている。
【0003】
この場合に用いられる測定器用テストプローブとしては、例えば特許文献1にて本出願人が既に開示しているように、プローブ本体部の先端側から針状に突出させた接触ピンを備えているものを用いるのが一般的である。
【0004】
すなわち、測定器用テストプローブは、
先端側から突出させた接触ピンを備えるプローブ本体部と、前記接触ピンと電気的に導通させてプローブ本体部の後端側から引き出され
た先にプラグを備えるコードとで構成されており、該コードが備えるプラグを測定器側の入力端子に差し込んで電気的に接続させた上で、接触ピンを測定対象部位に電気的に接触させることで必要な測定作業を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−45898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1を含む従来からある測定器用テストプローブは、通常、
図4に示すようにプローブ本体部1の先端側から接触ピンが常に突出しているので、非測定時にはキャップ3を接触ピン側に覆い被せてこれを保護しておく必要がある。
【0007】
しかし、キャップ3は、プローブ本体部1の接触ピンを含む先端部2側に単に覆い被せておくだけなので、測定作業を行う使用時に取り外して仕舞い込んだときに誤って紛失してしまったり、測定しない不使用時に覆い被せた状態で測定器用テストプローブを持ち運んでいる最中に何かの拍子で脱落して紛失してしまうなどの不都合があった。
【0008】
本発明は、従来技術にみられた上記課題に鑑み、測定器用テストプローブにおけるプローブ本体部側に従来のキャップに相当する保護カバーを出没可能に内蔵させて紛失しないようにした測定器用テストプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであり、先端側から接触ピンを突出させたプローブ本体部と、
一端を前記接触ピンに接続さ
せて前記プローブ本体部の内部空間を経て
該プローブ本体部の後端側から引き出され
た他端に測定器の入力端子に差し込むためのプラグを有するコードとを少なくとも備えてなる測定器用テストプローブにおいて、前記プローブ本体部は、
該プローブ本体部の外表面の適位置から一部を突出させて軸方向とは直交する方向での人為的な回転操作を可能に軸支させた回転ギアと、該回転ギアと噛合する噛合溝を
表面に有して前記内部空間内に位置する内コード部周りに螺旋状となって進退可能に配置される弾性保護カバーと、前記先端寄りの適位置にて前記弾性保護カバー進退時の出入を許す出入口とを備え、前記接触ピン使用時には、前記回転ギアを一方向に回転させることで前記出入口に
前記弾性保護カバーの先端面が臨む位置までの
該弾性保護カバーの退避を可能とし、前記接触ピンの不使用時には、前記回転ギアを他方向に回転させることで前記接触ピンの全体を覆う位置までの前記弾性保護カバーの進出を可能としたことを最も主要な特徴とする。
【0010】
この場合、前記弾性保護カバーには、これを退避させた際に前記出入口と掛合して
全体が没入するのを阻止する前部突起を前記先端面に具備させておくのが好ましい。
【0011】
また、前記弾性保護カバーには、これを進出させて前記接触ピンの全体を覆った際に前記噛合溝が前記回転ギアと噛合するのを阻止する後部突起を
後端部に具備させておくこともできる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、弾性保護カバーは、回転ギアと噛合させた状態のもとでプローブ本体部側に常に一体的に組み合わせておくことができるので、保護カバー自体の紛失を確実に阻止することができる。
【0013】
しかも、接触ピンの使用時には、プローブ本体部を把持する側の手指を用いる片手操作で回転ギアを一方向に回転させることで、プローブ本体部に設けられている出入口に
弾性保護カバーの先端面が臨む位置にまで
該弾性保護カバーを退避させた際に露出される接触ピンを用いて直ちにプロービングテストを行うことができる。
【0014】
また、接触ピンの不使用時には、同様に片手操作で回転ギアを他方向に回転させながら接触ピン方向へと弾性保護カバーを進出させてこれを覆うことで、該保護カバー内に確保される囲繞空間を介して接触ピンの具体的な形状の如何を問わず包み込むようにして確実に保護することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、弾性保護カバーは、先端面に出入口と掛合する前部突起を備えているので、プローブ本体部の内部空間内に
全体が没入してしまうのを確実に阻止することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、弾性保護カバーは、
前端部を含む進出部位が接触ピンの全体を覆った際に噛合溝が回転ギアと噛合するのを阻止する後部突起を後端部に備えているので、プローブ本体部の出入口から弾性保護カバーが過剰に進出するのを確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一例を示す説明図であり、そのうちの(a)は、接触ピン使用時の正面図を、(b)は、(a)における要部構造を示すためにその一部を切り欠いて示す説明図。
【
図2】本発明における回転ギアと弾性保護カバーとの噛合状態を部分的に拡大して示す説明図。
【
図3】接触ピン使用時の状態を示す説明図であり、そのうちの(a)は、その要部斜視図を、(b)は、(a)の出入口と弾性保護カバーの前部突起との掛合時における要部拡大断面図をそれぞれ示す。
【
図6】接触ピン不使用時の回転ギアと弾性保護カバーとの位置関係を部分的に拡大して示す説明図。
【
図7】従来例における接触ピン不使用時の状態を示す要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、
図1(a),(b)からも明らかなように、先端13側から接触ピン16を突出させた合成樹脂材を含む適宜の絶縁性部材を用いて形成されるプローブ本体部12と、
一端を接触ピン16に接続さ
せてプローブ本体部12の内部空間15を経て
該プローブ本体部12の後端側から引き出され
た他端に測定器の入力端子に差し込むためのプラグ(図示せず)を有するコード22とを少なくとも備えてなる測定器用テストプローブ11に適用される。
【0019】
この場合、プローブ本体部12は、
該プローブ本体部12の後端14側から引き出されているコード22の部分的な部位として例えば軸方向での略中心位置に配置される所定長の内コード部23のほか、該内コード部23の周りに螺旋状となって
進退移動が可能に配置される弾性保護カバー32を
内部空間15内に備えている。
【0020】
しかも、プローブ本体部12は、長さ方向での略中間に位置する部位に略矩形形状を呈して内部空間15と連通する開口部18を備え、該開口部18を介して外表面17側から一部を突出させて
プローブ本体部12の軸方向(長さ方向)とは直交する方向での人為的な回転操作を可能に軸着された回転ギア20を備えている。
【0021】
また、例えば軟質ポリスチレンや軟質塩化ビニルのような軟質合成樹脂材などからなる弾性保護カバー32は、内部空間15内にて回転ギア20と順次噛合する多数条の噛合溝34を
表面32aの横幅方向に有し、かつ、内コード部23の長さ方向での周囲を螺旋状に囲繞して確保される囲繞空間35を介在させて配置されている。
【0022】
この場合、弾性保護カバー32は、
該弾性保護カバー32が備える噛合溝34が
図2に示すように回転ギア20と噛合していることから、該回転ギア20に加えられる時計方向または反時計方向に付与される回転力に応じて進退移動することができることになる。
【0023】
しかも、弾性保護カバー32は、
該弾性保護カバー32の前端部33を含む適宜長さ部位がプローブ本体部12の先端13寄りの適位置に設けられている出入口19を介して出入できる位置関係をとってプローブ本体部12側に配置されている。
【0024】
すなわち、弾性保護カバー32を必要としない接触ピン16の使用時(プロービングテスト時)には、回転ギア20を一方向である例えば時計方向に所定分回転させることで、
図3に示すように弾性保護カバー32の前端部33における先端面33a側をプローブ本体部12の出入口19に臨ませ、その余の部分を内部空間15内に退避させることができる位置関係のもとで配置されている。
【0025】
この場合、弾性保護カバー32は、これを退避させた際に
図3(a),(b)に示されているように出入口19と掛合して
全体が没入するのを阻止する前部突起37を
先端面33aに備えており、これによりプローブ本体部12の内部空間15内に弾性保護カバー32の全体が没入してしまうのを阻止することができるようになっている。
【0026】
また、弾性保護カバー32を必要とする接触ピン16の不使用時(プロービング非テスト時)には、回転ギア20を他方向である例えば反時計方向に所定分回転させることで、図
5に示すように進出させた弾性保護カバー32の前端部33を含む進出部位により接触ピン16の全体を包むようにして覆うことができる位置関係のもとで配置されている。
【0027】
この場合、弾性保護カバー32は、これを進出させて
図5に示すように接触ピン16の全体を覆った際に、噛合溝34が回転ギア20と噛合するのを阻止する後部突起38を
図6に示すように
後端部34に備えており、これによりプローブ本体部12の出入口19から弾性保護カバー32が過剰に進出するのを阻止することができるようになっている。
【0028】
次に、上記構成からなる本発明の作用効果を図示例に基づいて説明すれば、測定器用テストプローブ11は、接触ピン16の不使用時である接触ピン16が弾性保護カバー32の前端部33を含む進出部位で覆われた図
5に示す状態のもとで持ち運ぶことができる。
【0029】
すなわち、接触ピン16の不使用時には、後部突起38により弾性保護カバー32の噛合溝34との噛合状態が阻止されるに至るまで回転ギア20を他方向である例えば反時計方向へと
図6に示すように回転ギア20が後部突起38により回転できなくなる位置にまで所定分回転させることで、出入口19から柔軟、かつ、円滑に送り出された弾性保護カバー32の進出部位により確保される囲繞空間35内に、
接触ピン16の具体的な形状の如何を問わず
該接触ピン16の全体を包み込むように納めておくことでこれを安定的に保護することができる。
【0030】
しかも、弾性保護カバー32自体は、回転ギア20と噛合状態を維持した状態のもとでプローブ本体部12の内部空間15内に収納してプローブ本体部12側と一体的に組み合わせておくことでその紛失を確実に阻止することができる。
【0031】
また、接触ピン16の使用時には、回転ギア20を一方向である例えば反時計方向に所定分回転させることで、
図5に示す状態にある弾性保護カバー32を
図3(a),(b)に示されているように
該弾性保護カバー32の先端面33aが出入口19から臨む位置にまで退避させて前部突起37を出入口19に掛止させることで、プロービングテストが行えるように接触ピン16を直ちに露出させることができる。
【0032】
しかも、この場合においても、弾性保護カバー32自体は、回転ギア20と噛合状態を維持した状態のもとでプローブ本体部12の内部空間15内に収納された状態で一体的に組み合わせておくことにより、
これが紛失
するのを確実に阻止することができる。
【0033】
かくして、プロービングテストを終えた後は、後部突起38により弾性保護カバー32の噛合溝34との噛合状態が阻止されるに至るまで回転ギア20を他方向である例えば反時計方向へと所定分回転させて接触ピン16の全体を覆うに足りる長さにまで出入口19を介して進出させることで、
図5に示す状態とすることができる。
【0034】
このため、本発明によれば、弾性保護カバー32は、回転ギア20と噛合させた状態のもとでプローブ本体部12側に常に一体的に組み合わせておくことができるので、弾性保護カバー32自体の紛失を確実に阻止することができることになる。
【0035】
しかも、接触ピン16の使用時には、プローブ本体部12を把持する側の手指を用いる片手操作で回転ギア20を一方向に回転させることで、プローブ本体部12に設けられている出入口19に
弾性保護カバー32の先端面33aが臨む位置にまで
該弾性保護カバー32を退避させた際に露出される接触ピン16を用いて直ちにプロービングテストを行うことができる。
【0036】
また、接触ピン16の不使用時には、同様に片手操作で回転ギア20を他方向に回転させながら接触ピン16方向へと弾性保護カバー32を螺旋状に進出させてこれを覆うことで、該弾性保護カバー32内に確保される囲繞空間35を介することで接触ピン16の具体的な形状の如何を問わず確実に保護することができることになる。
【0037】
以上は、本発明を
図1ないし
図3に基づいて説明したものであり、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。例えば、弾性保護カバー32は、後部突起38が回転ギア20の回転を阻止した際に、先端部33の先端面33aがプローブ本体部12の出入口19内に常に位置する長さを付与して形成することにより、その先端面33aに前部突起37を具備させないでおくこともできる。また、弾性保護カバー32には、接触ピン16不使用時に出入口19に位置する部位と、接触ピン16使用時に出入口19に位置部位とのそれぞれに区別可能な注意喚起目印を各別に付けておくことで、前部突起37と後部突起38とを具備させないでおくこともできる。さらに、弾性保護カバー32には、これを退避させた際に出入口19と掛合して
該弾性保護カバー32の全体が没入するのを阻止する前部突起37を先端面33aに具備させるとともに、接触ピン16不使用時に出入口19に位置する部位に過剰進出を阻止させるための注意喚起目印を付けて後部突起38を具備させないでおくこともできる。
【符号の説明】
【0038】
11 測定用テストプローブ
12 プローブ本体部
13 先端
14 後端
15 内部空間
16 接触ピン
17 外表面
18 開口部
19 出入口
20 回転ギア
22 コード
23 内コード部
32 弾性保護カバー
32a 表面
33 前端部
33a 先端面
34 後端部
35 噛合溝
36 囲繞空間
37 前側突起
38 後側突起