(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5791940
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月7日
(54)【発明の名称】水排出構造を有する燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/24 20060101AFI20150917BHJP
H01M 8/06 20060101ALI20150917BHJP
H01M 8/10 20060101ALN20150917BHJP
【FI】
H01M8/24 R
H01M8/06 W
!H01M8/10
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-86329(P2011-86329)
(22)【出願日】2011年4月8日
(65)【公開番号】特開2012-109199(P2012-109199A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2014年2月25日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0114180
(32)【優先日】2010年11月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁 酉 彰
(72)【発明者】
【氏名】金 鐘 聖
(72)【発明者】
【氏名】金 世 勳
(72)【発明者】
【氏名】陣 相 文
(72)【発明者】
【氏名】白 碩 ミン
(72)【発明者】
【氏名】許 誠 日
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−317444(JP,A)
【文献】
特開2006−344461(JP,A)
【文献】
特開2010−073448(JP,A)
【文献】
特開2003−338305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルがスタック両端のエンドプレート(EP)の間に積層された燃料電池スタックであって、
スタック発電部のエンドセルと前記両端のエンドプレート(EP)との間にはスタックの水排出のためのダミーセルとしてアノードに水素が流入するがカソードに空気が流入することがなくカソードの水排出だけが行われるカソードダミーセル(CD)とカソードに空気が流入するがアノードに水素が流入することがなくアノードの水排出だけが行われるアノードダミーセル(AD)がそれぞれ少なくとも一側に1つ以上積層されることを特徴とする水排出構造を有する燃料電池スタック。
【請求項2】
前記カソードダミーセル(CD)は、カソードプレート(CP)及びエンドアノードプレート(EAP)分離板を含んで形成され、前記アノードダミーセル(AD)は、アノードプレート(AP)及びエンドカソードプレート(ECP)分離板を含んで形成されることを特徴とする請求項1に記載の水排出構造を有する燃料電池スタック。
【請求項3】
前記エンドアノードプレート(EAP)は、アノードプレート(AP)の水素入口/出口ホールが除去されて形成され、前記エンドカソードプレート(ECP)は、カソードプレート(CP)の空気入口/出口ホールが除去されて形成されることを特徴とする請求項2に記載の水排出構造を有する燃料電池スタック。
【請求項4】
前記カソードダミーセル(CD)のカソードプレート(CP)とエンドアノードプレート(EAP)との間と、前記アノードダミーセル(AD)のアノードプレート(AP)とエンドカソードプレート(ECP)との間には、気体拡散層(GDL)をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の水排出構造を有する燃料電池スタック。
【請求項5】
前記カソードダミーセル(CD)及びアノードダミーセル(AD)は、膜電極接合体(MEA)を含まず、2つの気体拡散層(GDL)が互いに接合して積層されることを特徴とする請求項4に記載の水排出構造を有する燃料電池スタック。
【請求項6】
前記エンドセルまたはダミーセルがスタック両端のエンドプレート(EP)に接する面には、ダミーエンドプレートとしてエンドカソードプレート(ECP)またはエンドアノードプレート(EAP)がさらに積層されることを特徴とする請求項1に記載の水排出構造を有する燃料電池スタック。
【請求項7】
スタック両端のエンドプレート(EP)と前記ダミーエンドプレートとの間には気体拡散層(GDL)がさらに積層されることを特徴とする請求項6に記載の水排出構造を有する燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水排出構造を有する燃料電池スタックに係り、より詳しくは、従来のアノードプレート(AP)及びカソードプレート(CP)を簡単に変形したエンドアノードプレート(EAP)及びエンドカソードプレート(ECP)を上記カソードプレート(CP)及びアノードプレート(AP)と組み合わせてダミーセルを構成し、上記ダミーセルをエンドセル部に位置させるという簡単な構成により効果的に凝縮水を排出し、セルへの水の流入を最小化できる水排出構造を有する燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料が持っている化学エネルギを燃焼により熱に変えるのではなく、燃料電池スタック内で電気化学的に反応させて電気エネルギーに変換させる一種の発電装置であり、産業用、家庭用、及び車両駆動用電力を供給するだけでなく、小型の電気/電子製品、特に携帯用装置の電力供給にも適用される。
このような燃料電池において、車両駆動のための電力供給源として最も多く研究されている高分子電解質膜燃料電池(PEMFC:Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、Proton Exchange Membrane Fuel Cell)は、水素イオンが移動する電解質膜を中心として膜の両側に電気化学反応が起こる触媒電極層が付着された膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)、反応基体を均一に分布させ、発生した電気エネルギーを伝達する役割を担う気体拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)、反応基体及び冷却水の気密性と適正締結圧を維持するためのガスケット、及び締結器具、そして反応基体及び冷却水を移動させる分離板(BP:Bipolar Plate)を含んで構成される。
【0003】
この時、上記分離板(BP)は、水素が供給される流路が形成されたアノードプレート(AP:Anode Plate)と、酸素を含む空気が供給される流路が形成されたカソードプレート(CP:Cathode Plate)に分けられる。
上記燃料電池において、燃料である水素と酸化剤である酸素(空気)は、それぞれアノードプレート(AP)とカソードプレート(CP)の流路を介して膜電極接合体のアノード(anode)とカソード(cathode)に供給される。アノードに供給された水素は電解質膜の両側に構成された電極層の触媒により、水素イオン(proton、H
+)と電子(electron、e
−)に分解され、このうち、水素イオンのみが選択的に陽イオン交換膜である電解質膜を通過してカソードに伝達され、同時に電子は導体である気体拡散層と分離板を介してカソードに伝達される。
【0004】
上記カソードでは電解質膜を介して供給された水素イオンと分離板を介して伝達された電子が、空気供給装置によりカソードに供給された空気中の酸素と反応して水を生成する。この時、発生する水素イオンの移動に起因して外部導線を通した電子の流れが発生し、このような電子の流れにより電流が生成される。
図5は、一般的な燃料電池スタック1の一例を示しており、
図6は、上記スタックに使用される分離板(BP)のうちの1つであるアノードプレート(AP)10を示している。
【0005】
車両用燃料電池スタック1は、複数のセル5が直列に連結される構造であり、発電に必要な空気及び水素が、
図5に示すように、スタック1の一方の端部から供給及び排出される構造を有してもよい。
すなわち、空気及び水素が共用分配器2を介してマニホールドの孔があけられたオープンエンドプレート(open EP)3に流入されてスタック発電部7を循環した後、再びオープンエンドプレート3を介して排出される。ここで、カソード循環(Cathode loop)の場合、加湿器(図示せず)を介してスタック1に供給された空気がスタック1を通過し再び加湿器を介して車両外部に排出される。また、アノード循環(Anode loop)の場合、水素タンク(図示せず)から供給された水素が水素供給システム(FPS、図示せず)を介してスタック1に供給され、スタック1から排出された残余水素はFPSとスタックとの間を循環し続ける。
【0006】
上記スタック発電部7のそれぞれのセル5は、アノードプレート(AP)−気体拡散層(GDL)−膜電極接合体(MEA)−気体拡散層(GDL)−カソードプレート(CP)の積層構造を有するが、上記アノードプレート10及びカソードプレートは、
図6に示すように、水素、冷却水、及び空気がそれぞれ通過するマニホールド12,14,16を両端に備えている。
この時、上記アノードプレート10には、
図6に示すように、水素マニホールド12と連通する水素入口/出口ホール13が形成されており、上記アノードプレートのセル反応面に形成された水素流路15を介して水素が通過する。
【0007】
上記アノードプレート10の外郭及びマニホールド12,14,16の外郭を囲むガスケット18は、上記マニホールド12,14,16及び水素流路15を通過する各流体の気密性を維持し、水素マニホールド12を通過する水素だけ上記水素入口/出口ホール13を介して水素流路15を通過することができる。また、カソードプレートには、上記原理と同様に、空気マニホールドと連通する空気入口/出口ホールが形成されており、上記カソードプレートのセル反応面に形成された空気流路を介して空気が通過する。
【0008】
一方、上記のような燃料電池スタックの循環過程において、スタック発電部のカソード入口(Cathode IN)側には、加湿器−共用分配器−エンドプレート−スタック(分離板)マニホールドを介して凝縮水などが流入し、アノード入口(Anode IN)側には、FPS−共用分配器−エンドプレート−スタック(分離板)マニホールドを介して凝縮水と、カソードからMEA膜を介して水が流入する。
このような場合、流入した水は、オープンエンドプレート3に接する最外郭セルに流入するため、セル電圧の急激な下降/上昇の繰り返し、セル内部に存在する多量の水によるMEA触媒劣化を起こす。このような現象は、閉ループ(Closed Loop)で構成されたアノード循環(Anode loop)ではさらに深刻である。また、マニホールドの孔のないクローズエンドプレート(close EP)4の近くの最外郭セルは、分離板のインレットマニホールドを介して水素や空気が供給される時、スタックの長手方向のマニホールドで凝縮された水が上記クローズエンドプレート4側に偏って最外郭セルに流入する。
【0009】
セル内部のMEAを加湿する水分以外の凝縮水をスタック内部で除去することは、燃料電池車両の性能安定性及び耐久性に対する非常に重要な技術的課題である。このために、従来、車両の運転/制御技術やウォータータラップ(water trap)などを設けて水を除去したが、完全に水を除去することは困難である。
特許文献1では、スタック発電部の終端(エンドセル及びエンドプレート)部分にバイパスプレート(bypass plate)と中間プレート(intermediate plate)の構造を別に構成し、水素や空気がスタック発電部に供給される時、共に注がれる凝縮水などが発電部に流入せず、スタックの外部に排出される構成を提示した。しかしながら、上記特許の構成では、スタックの構成部品にバイパスプレート(bypass plate)と中間プレート(intermediate plate)を別に開発及び製作しなければならず、スタックの全体的な部品構成が複雑になる短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許US7,163,760
【特許文献2】特開2011−054423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記技術的課題解決のためになされたものであり、従来の燃料電池スタックを構成するセル構造とほぼ同様の構成を組み合わせてエンドセル部に位置させるという簡単な構成により効果的に凝縮水を排出できる燃料電池スタックを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため
の本発明に係る水排出構造を有する燃料電池スタックは、複数のセルがスタック両端のエンドプレート(EP)の間に積層された燃料電池スタックであって、スタック発電部のエンドセルと上記両端のエンドプレート(EP)との間にはスタックの水排出のためのダミーセルとして
アノードに水素が流入するがカソードに空気が流入することがなくカソードの水排出だけが行われるカソードダミーセル(CD)と
カソードに空気が流入するがアノードに水素が流入することがなくアノードの水排出だけが行われるアノードダミーセル(AD)がそれぞれ少なくとも一側に1つ以上積層されることを特徴とする。
【0013】
この時、上記カソードダミーセル(CD)は、カソードプレート(CP)及びエンドアノードプレート(EAP)分離板を含んで形成され、上記アノードダミーセル(AD)は、アノードプレート(AP)及びエンドカソードプレート(ECP)分離板を含んで形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明の実施例で、上記エンドアノードプレート(EAP)は、アノードプレート(AP)の水素入口/出口ホールが除去されて形成され、上記エンドカソードプレート(ECP)は、カソードプレート(CP)の空気入口/出口ホールが除去されて形成されることを特徴とする。
【0015】
また、上記カソードダミーセル(CD)のカソードプレート(CP)とエンドアノードプレート(EAP)との間と、上記アノードダミーセル(AD)のアノードプレート(AP)とエンドカソードプレート(ECP)との間には、気体拡散層(GDL)をさらに含むことが好ましい。
【0016】
また、上記カソードダミーセル(CD)及びアノードダミーセル(AD)は、膜電極接合体(MEA)を含まず、2つの気体拡散層(GDL)が互いに接合して積層されてもよい。
【0017】
本発明の実施例によれば、上記エンドセルまたはダミーセルがスタック両端のエンドプレート(EP)に接する面には、ダミーエンドプレートとしてエンドカソードプレート(ECP)またはエンドアノードプレート(EAP)がさらに積層されることを特徴とする。
【0018】
また、スタック両端のエンドプレート(EP)と上記ダミーエンドプレートとの間には気体拡散層(GDL)がさらに積層されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る水排出構造を有する燃料電池スタックによれば、エンドアノードプレート(EAP)及びエンドカソードプレート(ECP)を通常のカソードプレート(CP)及びアノードプレート(AP)と組み合わせてダミーセルを構成し、上記ダミーセルをエンドセル部に位置させることにより効果的に凝縮水を排出でき、スタックセルへの水の流入を最小化することができる。
また、本発明に使用されるエンドアノードプレート(EAP)及びエンドカソードプレート(ECP)は、従来のアノードプレート(AP)及びカソードプレート(CP)で水素(または空気)入口/出口ホールのみ除去したものであり、従来のアノードプレート及びカソードプレートの成形工程において、水素(空気)入口/出口ホールを製作するパンチング過程を省略して製作できるため、製作工程が簡単であり、製作設備の追加が不要であるため費用を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施例に係る燃料電池スタックの積層構造を示す図面である。
【
図2】本発明の実施例で使用されるエンドアノードプレート(EAP)を示す斜視図である。
【
図3】一般的なセル構成からなる従来のスタック発電部において、オープンエンドプレートから流入する水がセルに流入する様態を示すグラフである。
【
図4】人為的に水を注入する場合、従来のスタック構造と本発明の実施例に係るスタック構造におけるセル電圧変動状況を示すグラフである。
【
図5】燃料電池スタックの構成を示す概略図である。
【
図6】従来技術に係るアノードプレート(AP)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る燃料電池スタックの積層構造を示し、
図2は、本発明の実施例で使用されるエンドアノードプレート(EAP)の構成を示す。
本発明は、スタックに流入する凝縮水を効果的に排出するためにスタック発電部のエンドセルとスタック両端のエンドプレート(EP)との間に積層されるダミーセルを含む。
通常のセル構造は、アノードプレート(AP)−気体拡散層(GDL)−膜電極接合体(MEA)−気体拡散層(GDL)−カソードプレート(CP)で構成されるが、本発明の実施例で使用されるダミーセルは、カソードプレート(CP)−エンドアノードプレート(EAP)を含むカソードダミーセルまたはアノードプレート(AP)−エンドカソードプレート(ECP)を含むアノードダミーセルで構成される。
【0022】
本発明で使用されるエンドアノードプレート(EAP)とエンドカソードプレート(ECP)は、従来のアノードプレート(AP)及びカソードプレート(CP)から水素入口/出口ホールと空気入口/出口ホールを除去したものである。
図2に示す通り、本発明の実施例に係るエンドアノードプレート100は、両端に水素マニホールド120、冷却水マニホールド140、及び空気マニホールド160を備えており、従来のアノードプレート(AP)と同一の形状で製作される。
ただし、エンドアノードプレート100は、水素マニホールド120と連通する水素入口/出口ホールを備えていないため、水素マニホールド120を通過する水素気体がガスケット180により遮断され、エンドアノードプレート100のセル反応面に流入することはない。また、本発明の実施例に係るエンドカソードプレート(ECP)も空気マニホールドと連通する空気入口/出口ホールを備えていないため、空気マニホールドを通過する空気が上記エンドカソードプレート(ECP)のセル反応面に流入することはない。
【0023】
本発明の実施例に係るダミーセルは、化学反応を行わず、水排出のために積層されるセルであって、上記エンドアノードプレート(EAP)またはエンドカソードプレート(ECP)を含んで構成される。すなわち、アノードの水排出のためのアノードダミーセル(ED)は、アノードプレート(AP)とエンドカソードプレート(ECP)を含んで構成され、カソードの水排出のためのカソードダミーセル(CD)は、カソードプレート(CP)とエンドアノードプレート(EAP)を含んで構成される。
上記アノードダミーセル(ED)には、アノードプレート(AP)を介して水素が流入するが、エンドカソードプレート(ECP)を介して空気が流入することはないため、燃料電池の化学反応が起こることがなく、アノードの水排出だけが行われる。同様に、上記カソードダミーセル(CD)には、カソードプレート(CP)を介して空気が流入するが、エンドアノードプレート(EAP)を介して水素気体が流入することはないため、燃料電池の化学反応が起こることがなく、カソードの水排出だけが行われる。
【0024】
一方、本発明の実施例において、上記カソードダミーセル(CD)のカソードプレート(CP)とエンドアノードプレート(EAP)との間には気体拡散層(GDL)をさらに含む。上記気体拡散層(GDL)は、分離板間の電気的接触を維持できるようにし、MEAが入らないカソードダミーセル(CD)に、ガスケットの圧縮後、セルの内部空間をその厚さに合わせて満たすことにより、構造的な安定性を維持させる。好ましくは、上記カソードダミーセル(CD)の内部には、2つの気体拡散層(GDL)が互いに接合された気体拡散層接合体(GG)が積層されるようにしてもよく、これによって、通常のセルの厚さに合わせて構造的安定性を維持することができる。上記気体拡散層(GDL)は、アノードダミーセル(AD)のアノードプレート(AD)とエンドカソードプレート(ECP)との間にも同様に積層することができる。
【0025】
図1は、上記ダミーセルを本発明の一実施例により配置したスタックの構成を示すものである。
図1に示すように、複数のセル5が繰り返されるスタック発電部のエンドセルとエンドプレートとの間には、本発明の実施例に係るカソードダミーセル300またはアノードダミーセル320が積層される。
この時、図面符号「30」は、GDL−MEA−GDLが接合された5レイヤーMEAを示し、図面符号「60」は、2つのGDLが接合された気体拡散層接合体(GG)を示す。また、
図1は、本発明の一実施例であって、スタック両端がオープンエンドプレート3とクローズエンドプレート4で構成されたことを示しているが、スタック両端が両方ともオープンエンドプレートで構成されてもよく、
図1に示すセル構成は、スタックモジュールの+、−方向に応じてその反対に構成されてもよい。
【0026】
図1に示す本発明の実施例は、オープンエンドプレート3−カソードダミーセル300−アノードダミーセル320−一般セル5の繰り返し−アノードダミーセル320−カソードダミーセル300−クローズエンドプレート4で構成される。上記実施例でオープンエンドプレート3側に積層されたカソードダミーセル300には空気の流入のみが行われ、アノードダミーセル320には水素の流入のみが行われる。したがって、オープンエンドプレート3の空気マニホールドを介して流入する水は、大部分上記カソードダミーセル300を介してスタックの出口に排出され、オープンエンドプレート3の水素マニホールドを介して流入する水は、大部分上記アノードダミーセル320を介してスタックの出口に排出される。
【0027】
また、スタックマニホールドの長手方向に沿って、マニホールドで凝縮されてクローズエンドプレート4側に流入する水は、クローズエンドプレート4側に積層されたカソードダミーセル300とアノードダミーセル320を介して同じ方法で排出される。したがって、本発明によれば、スタック発電部の両端の最外郭部に位置したエンドセルへの水の流入を最小にでき、スタックに流入する水は効果的に除去される。
本発明で燃料電池スタックは、上記カソードダミーセル300とアノードダミーセル320を様々な組み合わせにより積層することができる。すなわち、上記カソードダミーセル300とアノードダミーセル320がそれぞれスタック発電部のエンドセルと両端のエンドプレート3,4との間の少なくとも一側に1つ以上積層される構造であれば、様々な組み合わせ及び数量の構成が可能である。
【0028】
一方、本発明の他の実施例によれば、スタック発電部のエンドセルまたはダミーセルがスタック両端のエンドプレート3,4に接する面には、ダミーエンドプレートとしてエンドカソードプレート200またはエンドアノードプレート100がさらに積層できる。上記ダミーエンドプレートは、上記エンドプレート3,4に接するエンドセルまたはダミーセルの最外郭分離板と接合して冷却水流路を形成することができる。また、上記ダミーエンドプレートが、エンドカソードプレート200またはエンドアノードプレート100で構成されることにより、エンドプレート3,4側の集電板に水素または空気が流入しないようにする。
【0029】
また、本発明の実施例によれば、スタック発電部のエンドセルまたはダミーセルの最外郭分離板とエンドプレート3,4との間、またはダミーエンドプレートとエンドプレート3,4との間には気体拡散層40がさらに積層されてもよい。 導体からなる上記気体拡散層40が挿入されることにより、エンドプレート3,4の内部に挿入された集電板と最外郭分離板(またはダミーエンドプレート)との間の電気的接触が可能になる。
このように本発明に係る燃料電池スタックは、簡単な構成によりスタックの水排出構造を形成することができる。すなわち、本発明で使用されるエンドアノードプレート(EAP)及びエンドカソードプレート(ECP)は、従来のアノードプレート(AP)及びカソードプレート(CP)で水素(または空気)入口/出口ホールのみ除去したものであり、従来のアノードプレート及びカソードプレートの成形工程において、水素(空気)入口/出口ホールを製作するパンチング過程を省略して製作できるため、製作工程が簡単で、効率的に凝縮水を排出することができる。
【0030】
本発明の実施例に係る燃料電池スタックの効果を説明するために、
図3は、通常のセル構成からなる従来のスタック発電部において、オープンエンドプレートから流入する水がセルに流入する様態を示しており、
図4は、人為的に水を注入する場合、従来のスタック構造と本発明の実施例に係るスタック構造におけるセル電圧変動状況を示している。
図3に示すように、一般的なスタック構造において、スタックに水が流入する場合、水流入の開始から1〜2秒内に大部分の水は第1セルに流入し、相当量の水が第2セルに流入し、その後のセルには水がほぼ流入しないことが分かる。
したがって、凝縮水などの水がスタックに流入する場合、最外郭付近のセル(エンドセル部)が最もぜい弱であると予想される。
【0031】
図4は、実際のスタックモジュールを用いてアノード入口に悪条件である30g/secの水を注入した場合の従来のスタック構造と本発明のスタック構造を示している。従来のスタック構造では、水の注入後、直ちに第1セルの性能(電圧)が急激に低下し、第2セルにも影響を及ぼすが、本発明のスタック構造では、数百秒が過ぎてもエンドセル付近の急激なセル性能(電圧)の低下はなかった。 これは流入する大部分の水が本発明に適用されたダミーセルに流入し、直ちに排出されるため、発電部セルへの水の流入が最小になることが分かる。
したがって、本発明に係る燃料電池スタックは、実際の車両において、スタックへの水の流入によるセル性能の不安定性、過量の水がセル内部に存在することによるMEA触媒劣化を最小にすることができる。
【0032】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 燃料電池スタック
2 共用分配器
3 オープンエンドプレート
4 クローズエンドプレート
5 セル
7 スタック発電部
10 アノードプレート(AP)
20 カソードプレート(CP)
30 5レイヤーMEA
40 気体拡散層(GDL)
60 気体拡散層接合体(GG)
100 エンドアノードプレート(EAP)
120 水素マニホールド
140 冷却水マニホールド
160 空気マニホールド
180 ガスケット
200 エンドカソードプレート(ECP)
300 カソードダミーセル
320 アノードダミーセル