【実施例1】
【0014】
調査済みの積雪深を調査地の住所と対応させて格納した積雪深データベースを使用する。積雪深データベースは、例えば、自治体の作成した役所調査結果や、既存の地盤設計見積書等から取得したデータを集めて生成する。(緯度、経度、積雪深データ、作成日)を含むデータ構成のものである。住所を検索キーにして、該当する住所の積雪深データを取得できる。また、緯度と経度を検索キーにして、該当する場所の積雪深データを取得できる。
【0015】
この積雪深データベースは、地盤設計に最適な積雪深データを集めたものである。しかし、積雪深データベースは、各自治体の建築基準法施行規則に従って作成されており、積雪深を指定した区域の決め方が自治体毎にまちまちで、複数の自治体の積雪深データを適確に検索することが容易でない。そこで、実施例1では、これらのデータを自動的に画一的に検索して、最適な積雪深データを取得する方法を提供する。
【0016】
図1は、積雪深調査システム10の実施例を示すブロック図である。
積雪深調査システム10は、コンピュータ50にインストールされたコンピュータプログラムを実行して、以下の機能を実現する。コンピュータ50の記憶装置58には、顧客データベース12、調査対象地の住所14、調査対象地の緯度と経度16、探索範囲18、積雪深データベース20、抽出データ22、設計用積雪深28、気象庁多雪年積雪データ30、積雪量観測値32等のデータが記憶される。これらのデータは、演算開始前や演算開始後に順次記憶装置58に書き込まれる。
【0017】
演算処理装置60は、コンピュータプログラムを実行することにより、図に示した、データ入力手段34、経度緯度変換手段35、データ抽出手段36、データベース検索手段38、距離計算手段39、ソート手段40、比較手段42、データ選択手段44等の手段として機能する。
【0018】
顧客データベース12は、調査対象地に建設する建物の設計情報と施主に関する情報を記録したデータベースである。データ入力手段34により調査対象地を指定すると、この顧客データベース12から、調査対象地の住所14が取得できる。データ入力手段34は、コンピュータのキーボードやマウス等のマンマシンインタフェースとして機能する。なお、調査対象地の住所がわかっているときは、データ入力手段34により直接調査対象地の住所14を直接入力することもできる。
【0019】
緯度経度変換手段35は、調査対象地の住所14から調査対象地の緯度と経度16を求める計算を実行する機能を持つ。この調査対象地の緯度と経度16を利用して、積雪深データベース20から、データ抽出手段36が、一定の範囲の積雪深データを抽出する。探索範囲18は、調査対象地の緯度と経度16を中心にして、例えば、東西南北に100秒(約2.5km)以下の距離にあるものを抽出するというように設定をした、条件設定用のデータである。
【0020】
以下の実施例では、探索範囲18は、第1の探索範囲と第2の探索範囲を設定する。第1の探索範囲は、100秒(約2.5km)以下である。第2の探索範囲は、200秒(約5km)以下である。実施例1では、第1の探索範囲を使用する。実施例2では第2の探索範囲を使用する。
【0021】
積雪深データベース20は、データ抽出手段36がネットワーク52を介してデータベースサーバ56から取得する。積雪深データベース20は、先に説明したように、(緯度、経度、積雪深データ、作成日)を含むデータである。自治体の作成した役所調査結果や、既存の地盤設計見積書等を集積した外部データベースでもよいし、これらのデータを収集して、必要なフォーマットに編集したものをデータベース化したものでもよい。この実施例では、記憶装置58に、必要なフォーマットに編集した積雪深データベース20が記憶されているものとして、
説明を進める。
【0022】
積雪深データベース20に緯度経度のデータが含まれていない場合には、データ抽出手段36は、住所を用いて抽出したデータを経度緯度変換手段35に渡して、その住所に対応する緯度経度を求め、探索範囲に含まれているかどうかを判断する。積雪深データベース20から一定の範囲で抽出されたものが、抽出データ22である。抽出データ22には、全て、緯度経度を含めておく。抽出されたデータが複数ある場合には、距離計算手段39が、抽出データ22に含まれた緯度経度を利用して、それぞれ調査対象地からの直線距離を計算する。距離計算手段39は、抽出データ22に、計算で求めた調査対象地からの直線距離を付加する。
【0023】
ソート手段40は、抽出データ22が複数ある場合に、調査対象地からの直線距離の順番にデータをソートする機能を持つ。データ選択手段44は、この抽出データ22中で、調査対象地からの直線距離が最も短いものを選択する機能を持つ。選択された結果が、設計用積雪深28である。
【0024】
以上のほかに、記憶装置58には、多気象庁多雪年積雪データ30が記憶されている。データベース検索手段38がネットワーク52を介して気象庁サーバ54をアクセスし、緯度経度を指定して取得したデータである。積雪量観測値32は、気象庁多雪年積雪データ30から抽出されたデータである。データ選択手段44は、実施例2で使用され、設計用積雪深28に適するデータを比較判定する機能を持つ。
【0025】
図2は、具体的な積雪深データ取得方法の説明図で、
図3は、積雪深データ取得のためのコンピュータプログラム動作フローチャートである。
図2と
図3を利用して、実施例1の処理を具体的に説明する。まず、始めに、ステップS11で、調査対象地の住所14を取得する。これは、例えば、データ入力手段34が顧客データベース12(
図1)等を利用して取得する。ステップS12では、取得した住所から、緯度経度変換手段35が緯度と経度を求める。次に、ステップS13で、データ抽出手段36は、探索範囲18を100秒以内に設定する。
【0026】
その後、ステップS14で、データ抽出手段36が、積雪深データベース20を探索して、調査対象地の緯度と経度を中心にして100秒以下の範囲の積雪深データを抽出する。探索範囲18は、
図2に示すように、縦200秒、横200秒の四辺形に囲まれた範囲を示している。ステップS15でデータ抽出手段36が、該当データ群を抽出したかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS16の処理に移行し、ノーのときは全ての処理を終了して、実施例2の処理に進む。
【0027】
ステップS16では、距離計算手段39が抽出データの緯度と経度を読む。そして、ステップS17で、調査対象地までの直線距離を計算する。そして、
図2に示すように、距離計算手段39は、その計算結果を抽出データ22に付加する。その後、ステップS18で、ソート手段40が、抽出データ22を直線距離順にソートする。ステップS19では、データ選択手段44が、直線距離が最短のものを選択をする。
【0028】
次いで、ステップS20で、データ選択手段44が選択したデータ中の積雪深を取得する。そして、最後に、ステップS21で、取得した積雪深を設計用積雪深28として出力する。以上の処理の結果、調査対象地の東西南北に100秒以下の距離に既存の積雪深データが存在する場合には、その積雪深データを自動的に取得して、地盤設計に利用することが可能になる。
【実施例2】
【0029】
積雪深データベースに、常に、これから建物を建設する予定の場所の近くのデータがあるとは限らない。人工密度の高い地域ではデータ量が豊富でも、人口密度の低い地域ではデータ量が不足している。そこで、補完のために、気象庁の多雪年積雪データベースを利用する。
【0030】
気象庁の多雪年積雪データベースは、(緯度、経度、積雪量観測値、観測日)を含む。気象庁の多雪年積雪データベースは、全国を5kmメッシュで区切り、漏れなく積雪量観測値を表示している。緯度経度をキーにして検索できる。精度的には積雪深データベースに劣るが補完のためには十分利用できる。即ち、積雪量観測値を積雪深として採用することができる。実施例2では、積雪深データベースを優先的に使用して、気象庁の多雪年積雪データベースを補完的に使用し、自動的に積雪深を取得するシステムを提供する。
【0031】
既に説明したように、100秒は約2.5kmである。調査対象地の東西南北に100秒以下の距離に積雪深データが存在する場合には、その積雪深データを採用する。しかし、存在しない場合には、100秒を越えて200秒以下の距離の積雪深データを抽出しておく。そして、気象庁の多雪年積雪データと比較して、大きい値を採用する。
【0032】
図4は、実施例2の積雪深データ取得方法の説明図で、
図5は、雪深データ取得のためのコンピュータプログラム動作フローチャートである。
図4と
図5を利用して、実施例2の処理を具体的に説明する。まず、ステップS31で調査対象地の住所を取得する。次にステップS32で、緯度経度変換手段35が、住所から緯度と経度を取得する。ここまでは、実施例1の最初の処理と同様である。
【0033】
次に、ステップS33で、データベース検索手段38が、上記の緯度と経度をキーにして、気象庁の多雪年積雪データを検索する。そして、ステップS34で、該当する場所の積雪量観測値を取得する。これを、設計用積雪深28の候補とする。次に、ステップS35で、データ抽出手段36が、積雪深データベース20の探索範囲を第2探索範囲に設定する。その後、ステップS36で、
図3のステップS14〜ステップS20の処理を実行して、積雪深データを取得する。
【0034】
ステップS37では、比較手段42が、ステップS34で取得したデータと、ステップS36で取得したデータの比較をする。比較手段42は、ステップS38で、大きい方のデータを選択する。設計の安全性のためである。以上の処理の結果、ステップS39で、比較手段42の出力したデータを、設計用積雪深として出力する。
【0035】
以上説明した実施例1のシステムも実施例2のシステムも、自動的に取得可能な最適な積雪深を取得することができるので、精度の高い地盤設計見積書を作成することができ、当該見積書作業の省力化を図ることができる。