(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、写真撮影等を行なう撮影装置であるカメラ等(以下、単にカメラという)に適用され、被写体像を結像させるための撮影光学系を備えたレンズ鏡筒を例に挙げて示すものである。
【0015】
なお、以下の説明に用いる各図面においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、これらの図面に記載された構成要素の数量,構成要素の形状,構成要素の大きさの比率及び各構成要素の相対的な位置関係は、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0016】
図1〜
図13は、本発明の第1の実施形態のレンズ鏡筒を示す図である。このうち
図1は、本実施形態のレンズ鏡筒の全体像を示す外観斜視図である。
図2は、同レンズ鏡筒の平面図である。
図3〜
図5は、本実施形態のレンズ鏡筒を分解して示す要部分解斜視図である。このうち
図3は、本レンズ鏡筒の構成部材のうち主に外装部品を取り出して示している。
図4は、本レンズ鏡筒の構成部材のうち主に複数のレンズ枠を取り出して示している。
図5は、本レンズ鏡筒の構成部材のうち主に固定枠及び合焦機構を取り出して示している。
【0017】
図6〜
図9は、本レンズ鏡筒の断面図である。このうち
図6は、本レンズ鏡筒における合焦機構を示す全体断面図である。
図7は、
図6の[7]−[7]線に沿う断面図である。
図8は、
図7の[8]−[8]線に沿う断面図である。
図9は、
図7の[9]−[9]線に沿う断面図である。
【0018】
図10〜
図13は、本レンズ鏡筒の外装部品を取り外し合焦機構の配置を示す平面図である。このうち
図10は、
図11の矢印[10]方向から見た平面図である。
図11は、
図10の矢印[11]方向から見た平面図である。
図12は、
図11の矢印[12]方向から見た平面図である。
図13は、
図11の矢印[13]方向から見た平面図である。
【0019】
本実施形態のレンズ鏡筒1の外装部品2は、主に
図1〜
図3に示すように、先端側から順に前面飾り環31と、フイルタ環32と、距離環33と、後カバー34等によって構成される。
【0020】
フイルタ環32は、レンズ鏡筒1の外周面のうち主に先端部近傍部位を覆う略円筒形状の部材からなり、先端部位にフイルタ等のアクセサリを装着するためのフイルタ用雌ネジが形成される。また、フイルタ環32の外周面上には、略矩形状の凹部32b(
図3参照)が形成される。この凹部32bの底面には、孔32cが穿設されている。そして、該孔32cを覆うようにして、透明な樹脂部材で形成された距離窓32aが凹部32bに対して嵌合配置される。ここで、距離窓32aは、フイルタ環32の凹部32bに対して、例えば両面テープ等の接着部材で接着固定される。そして、フイルタ環32の外周面上において、上記距離窓32aの近傍には、距離表示32ab(
図2参照)が印刷若しくはシール貼付等の手段によって設けられている。
【0021】
このフイルタ環32は、ビス32xによって、後述する固定枠16の前面に固定される(
図3の符号[V]から
図5の符号(32x)へと連結される)。
【0022】
なお、詳細は後述するが、この距離窓32aからは、当該レンズ鏡筒1の内部に配設される4群枠ユニット14(後述する)と一体に配設される距離指標板20の指標線20aが露呈することで、距離表示がなされるようになっている。
【0023】
上記前面飾り環31は、上記フイルタ環32の前面側外周寄りの部位を覆うことで内部の構造物を隠すと共に、略中央部近傍に配設される1群レンズ11aを露呈させて光路を確保するために設けられる略円環状薄板部材である。前面飾り環31は、上記フイルタ環32の前面外周寄りのフランジ部に対して、例えば両面テープ等の接着部材にて貼着固定される。
【0024】
距離環33は、レンズ鏡筒1の外周面のうち主にレンズ鏡筒の長さ方向の中程部位を覆う略円筒形状の部材からなり、後述する合焦機構18と協働して手動合焦操作を行なう際の操作部材として機能する。そのために、距離環33は、光軸O周りに回動自在に配設される。即ち、当該距離環33は、使用者の手動操作を受けて、光軸O周りに回転する第2の枠手段である。
【0025】
この場合において、距離環33の先端寄りの内周部には、光軸方向に付勢力が作用する円環状に形成される薄板状の板バネ部材からなる距離環バネ35が配設される。この距離環バネ35には、複数の折曲爪部35a(
図3参照))が形成される。この折曲爪部35aは、距離環33の被係合部33a(
図3参照)に係合することで距離環33に対して回動しないようになっている。
【0026】
そして、当該レンズ鏡筒1を組み立てた状態において、距離環バネ35は、距離環33の前端面と上記フイルタ環32の後端面との間に挟持された状態で配設される。この構成によって、距離環33は、距離環バネ35によって後方に向けて押圧されている。したがって、距離環33が回動するとき、該距離環33と上記フイルタ環32との間には、上記距離環バネ35によって回転方向の摩擦(フリクション)が生じる。この摩擦力によって、距離環33の回動を確保しながら、同距離環33が軽い力で容易に回動してしまうことを抑止している。
【0027】
後カバー34は、本レンズ鏡筒1の外周面のうち主に後端部近傍部位を覆う略円筒形状の部材からなり、後述する固定枠16に固定される。この後カバー34の先端内側に、上記距離環33の後端部が係合するように配置される。この場合において、後カバー34の先端内側面と、距離環33の後端外周面との間には、防塵シート36(
図3,
図6等参照)が挟持された状態で配設される。この防塵シート36は、距離環33と後カバー34との隙間から、本レンズ鏡筒1の内部に細かい塵埃等が侵入するのを抑止するために設けられる円環状シート部材である。
【0028】
本実施形態のレンズ鏡筒1の内部構成部材は、主に
図4〜
図9等に示すように、先端側から順に1群枠ユニット11と、2群枠ユニット12と、絞りユニット15と、3群枠ユニット13と、4群枠ユニット14と(ここまで
図4参照)、固定枠16,合焦機構18,固定蓋17,レンズ側マウントユニット37(ここまで
図5参照)等を含んで構成される固定枠ユニット等によって構成される。
【0029】
1群枠ユニット11は、第1レンズ群11aと、この第1レンズ群11aを保持する第1群枠11bとによって構成されるユニットである。第1群枠11bは、略円環形状に形成されており、略中央部に上記第1レンズ群11aが固定保持される。第1群枠11bは、複数のビス11xによって、後述の第2群枠12bの前面側に固定保持される。
【0030】
2群枠ユニット12は、第2レンズ群12aと、この第2レンズ群12aを保持する第2群枠12bとによって構成されるユニットである。第2群枠12bは、中空の略円筒形状に形成されて、略中央部に上記第2レンズ群12aが固定保持される。また、第2群枠12bの内部には、後述する絞りユニット15,3群枠ユニット13等が固定保持される。さらに
、第4群枠ユニット14が光軸Oに沿う方向に進退自在に配設される。そして、第2群枠12bの前面には、上述したように第1群枠11bが固定保持される。
【0031】
第2群枠12bの内側空間には、光軸Oと平行に後方へ向けて延びるように吊軸21(
図4,
図7,
図9参照)が配設される。この吊軸21の一端は、
図9に示すように、第2群枠12bの前方内壁面の所定部位12cにおいて軸支されており、他端は、上記固定蓋17(詳細後述)の所定部位17aにおいて軸支される。そして、この吊軸21は、4群枠ユニット14のガイド部14cの貫通孔に相対的に摺動可能に嵌合される。これにより、4群枠ユニット14は、吊軸21によって光軸Oに沿う方向に進退自在にガイドされるように構成される(
図4等参照)。即ち、吊軸21は、4群枠ユニット14(第1の枠手段;後述する)を光軸Oと平行に直進案内する案内軸である。
【0032】
また、4群枠ユニット14が吊軸21を回動中心として回転しないようにするために、吊軸21に対して光軸Oを挟んで対向する部位には、回転規制軸22が吊軸21と平行に配設される。即ち、この回転規制軸22は、上記吊軸21と略同様に、一端が第2群枠12bの前方内壁面の所定部位12dにおいて軸支されており、他端は、上記固定蓋17の所定部位17bにおいて軸支される。ここで、第2群枠12bの前方内壁面の所定部位12dは、同所定部位12bに対して光軸O周りに略180度回転した部位となる。また、上記固定蓋17の所定部位17bは、同所定部位17aに対して光軸O周りに略180度回転した部位となる。この回転規制軸22は、4群枠ユニット14の軸受部14dの溝部に係合している。これにより、4群枠ユニット14が上記吊軸21によって光軸Oに沿う方向にガイドされて進退するとき、軸受部14dが回転規制軸22に沿って移動する。これにより、4群枠ユニット14は、光軸Oに沿う方向にのみスムースに移動自在となっている。
【0033】
上記4群枠ユニット14は、合焦用レンズ(フォーカシング用レンズ)である第4レンズ群14aを保持する第1の枠手段である。即ち、当該4群枠ユニット14は、第4レンズ群14aと、この第4レンズ群14aを保持する第4群枠14bとによって構成されるユニットである。第4群枠14bは、中空の略円筒形状に形成されて、略中央部後端に上記第4レンズ群14aが固定保持される。また、第4群枠14bの外周面上には、上記ガイド部14cと、上記軸受部14dとが、それぞれ所定の部位に突設される。上述したように、ガイド部14cには、上記吊軸21が、軸受部14dには回転規制軸22が、それぞれ摺動自在に嵌合している。
【0034】
一方、ガイド部14cには、バネ掛け部14e(
図8参照)が形成される。このバネ掛け部14eには、例えば緊縮性のコイルバネ等からなるバネ手段である付勢部材19(
図4,
図8参照)の一端が掛けられている。また、付勢部材19の他端は、固定蓋17のバネ掛け部17cに掛けられている。したがって、第4群枠ユニット14は、付勢部材19の付勢力によって、常に固定蓋17の方向へと引っ張られている。
【0035】
さらに、ガイド部14cには、距離指標板20がビス20x等によって一体に配設される(
図4参照)。この距離指標版20の先端縁部には、指標線20aが形成されて、上述したように、この指標線20aは、上記距離窓32aを介して観察可能となっている。したがって、後述する合焦動作に伴って第4群枠ユニット14が光軸Oに沿う方向へと移動すると、距離指標板20も同時に同方向に移動する。この距離指標版20が移動するのに指標線20aも所定の方向に移動するので、当該指標線20aの位置によって合焦用レンズである第4レンズ群14aの光軸O上における位置を特定することができるように構成されている。
【0036】
絞りユニット15は、絞り羽根や該絞り羽根を駆動する絞りモータ15aと、これらの構成部材を保持する絞りユニット枠部材15b等によって構成されるユニットである。絞りユニット枠部材15bは略円環形状に形成される。そして、絞りユニット枠部材15bは、複数のビス15xによって、上記2群枠ユニット12に対し、その内部において固定保持される。
【0037】
3群枠ユニット13は、第3レンズ群13aと、この第3レンズ群13aを保持する第3群枠13bとによって構成されるユニットである。第3群枠13bは、中空の略円筒形状に形成されていて、略中央部に上記第3レンズ群13aが固定保持される。そして、第3群枠13bは、複数のビス13xによって、上記絞りユニット15を挟んで上記第2群枠ユニット12に対し、その内部に固定保持される。
【0038】
固定枠ユニットのうち固定枠16は、先端部位及び後端部位が大径に形成され、全体が略円筒形状に形成された枠部材である。固定枠16の内側空間には、上記1群枠ユニット11,上記2群枠ユニット12,上記絞りユニット15,上記3群枠ユニット13,上記4群枠ユニット14が組み立てられた状態で収納される。
【0039】
固定枠16の前面には、上述したように、上記フイルタ環32が複数のビス32xによって固定枠16の前面に固定保持される(
図5の符号(32x)から
図3の符号[V]からへと連結される)。
【0040】
固定枠16の上記先端大径部位には、外周面上に凹状部16a(
図5参照)が形成されている。この凹状部16aには、上記距離指標版20の前半部が光軸O方向に移動自在に嵌合配置される。
【0041】
また、固定枠16の外周面上の一部であって、上記先端大径部位と後端大径部位との間の小径部の所定の部位に穿設された孔部16bには合焦機構18が固定配設される。この合焦機構18の詳細構成は、後述する。
【0042】
さらに、固定枠16の外周面上には、上記合焦機構18の近傍に隣接させた位置に第4枠位置検出手段の一部を構成するリニアエンコーダ16cがビス16y等によって固定配置される。
【0043】
固定枠16の後端寄りの部位には、略円環形状の固定蓋17が、複数のビス17xによって固定される。固定蓋17の直径は、上記固定枠16の後端大経部位よりも小径に形成される。したがって、固定蓋17は、固定枠16の後端大径部位の内側近傍部位において、該固定枠16の固定部に固定される。
【0044】
また、さらに固定枠16の後端面には、上記固定蓋17を覆うようにして、該固定蓋17の後端大径部位と略同径の直径を有し、略円環形状に形成されたレンズ側マウントユニット37が複数のビス37xによって上記固定枠16の後面に対して固定されている。
【0045】
次に、本実施形態のレンズ鏡筒1における合焦機構18について、
図5〜
図9に加えて、
図10〜
図13を用いて以下に詳述する。
【0046】
上記合焦機構18は、駆動モータ18aと、リードスクリュー18bと、ロングギア18cと、ロングギア支持軸18dと、フォーカスナット18eと、転動部材であるローラ部材18fと、基台金具18g等によって主に構成されている。
【0047】
駆動モータ18aは、自動合焦動作を行なうための駆動源であり、例えばステッピングモータ等の電磁モータが適用される。駆動モータ18aの回転駆動軸には、リードスクリュー18bが一体に形成されている。このリードスクリュー18bは、光軸Oと平行に設けられており、かつ上記駆動モータ18aの回転出力によって回転する軸部材である。
【0048】
また、駆動モータ18aには、上記リードスクリュー18bの先端部を回動自在に支持する基台金具18gが配設される。基台金具18gは、例えば薄板状金属部材を折り曲げ加工して形成され、該合焦機構18の基本部位を構成する部材である。この基台金具18gは、上記駆動モータ18aに取り付けられた状態で、固定枠16の外周面上において、例えばビス18x等によって固定される。
【0049】
上記リードスクリュー18bには、フォーカスナット18eが螺合する。このフォーカスナット18eは、外周面には平歯車部を有し、中心孔には雌ネジを有して形成されている。この雌ネジは、上記リードスクリュー18bに螺合する。また、平歯車部は、後述するロングギア18cと噛合している。そして、フォーカスナット18eには、
図6等に示すように、4群枠ユニット14のナット当接部14fが当接する。
【0050】
ここで、上述したように、4群枠ユニット14は、付勢部材19の付勢力によって常に固定蓋17の方向へと引っ張られている。したがって、ナット当接部14fは、フォーカスナット18eに当接した状態が常に維持されている。
【0051】
即ち、フォーカスナット18e(ナット部材)と4群枠ユニット14(第1の枠)とは、付勢部材19(バネ手段)によって互いに当接が維持されている。
【0052】
なお、フォーカスナット18eは、リードスクリュー18bだけが回転するとその回転に伴って、後述のロングギア18cに対して、上記4群枠ユニット14(第1の枠手段)と共に、光軸Oと平行な方向に非回転のまま移動するナット部材である。また、フォーカスナット18eは、後述のロングギア18cが回転するとその回転に伴って回転させられ、リードスクリュー18b上を光軸方向に上記4群枠ユニット14(第1の枠手段)と共に移動する。
【0053】
一方、基台金具18gには、上記リードスクリュー18bと平行にロングギア支持軸18dの両端が軸支されている。このロングギア支持軸18dは、ロングギア18cに回転可能に嵌合、挿通している。
【0054】
このロングギア18cは、光軸方向に長軸を有し、外周面に歯車部を有する部材であって、この歯車部は、上記フォーカスナット18e(ナット部材)と上記4群枠ユニット14(第1の枠手段)が光軸O方向に移動するのに必要な長さを有するように設定されている。また、ロングギア18cは、光軸Oと平行に回転可能に配置される。そして、ロングギア18cは、リードスクリュー18bが回転するときには、後述するように距離環バネ35の作用による距離環33の非回転状態を受けて、フォーカスナット18eの不回転状態を保持しながら、該フォーカスナット18eを光軸O方向に案内するように構成されるガイド平歯車である。
【0055】
ロングギア18cは、上記フォーカスナット18eの外周平歯車部に噛合している。また、ロングギア18cの一端側(本実施形態においては駆動モータ18a寄りの側)には、ローラ部材18fが一体に配設されている。ここで、ロングギア18cの一端は、
図5等に示すように小判形状若しくはDカット形状の凸状に形成されている。これに対応させてローラ部材18fの中心孔も小判形状若しくはDカット形状に形成されている。したがって、ロングギア18cの凸部に対して同形状からなるローラ部材18fの孔を嵌合させることで、ロングギア18cとローラ部材18fは一体に形成され一体に回転可能となっている。
【0056】
なお、ローラ部材18fの直径は、ロングギア18cの直径よりも若干大となるように設定されている。そして、ローラ部材18fの外周面は、上記距離環33の内周面33f(
図7参照)に当接している。したがって、距離環33が外部からの力量(例えば使用者による操作)を受けて光軸O周りに回動すると、その距離環33の回動力はローラ部材18fに対して摩擦伝達される。これにより、ロングギア18cもローラ部材18fと共に一体に回動する構成となっている。
【0057】
このように、上記ローラ部材18fは、距離環33(第2の枠手段)の手動操作による回動力をロングギア18c(ガイド平歯車)へと伝達する伝達手段として機能する。
【0058】
即ち、上記伝達手段は、上記距離環33(第2の枠手段の内周面)と、上記ロングギア18c(ガイド平歯車)と一体に設けられておりかつ上記距離環33(第2の枠手段)が回転したときにその内周に当接して転動する転動部材であるローラ部材18fとによって構成される。
【0059】
そして、転動部材であるローラ部材18fは、少なくとも距離環33(第2の枠手段)と転動当接している面を、弾性を有し、かつ摩擦力の大きな材質の部材、例えばゴム材等によって構成されている。
【0060】
他方、上述したように、4群枠ユニット14のガイド部14cには、距離指標板20がビス20xによって固定配置される。ここで、距離指標板20には、第4群枠位置検出手段の一部を構成し、上記リニアエンコーダ16cの検出部(入力移動部)16ccに係合する係合部材20bが一体に取り付けられている(
図12,
図13参照)。係合部材20bは、先端に切り欠きを有して形成される部材であって、上記ビス20xによって距離指標板20と共に、4群枠ユニット14のガイド部14cに固定される。そして、係合部材20bの切欠部には、リニアエンコーダ16cの検出部16ccが係合している。したがって、4群枠ユニット14が光軸Oに沿う方向に移動して、距離指標板20が同方向に移動すると、係合部材20bも共に同方向に移動する。すると、係合部材20bは、リニアエンコーダ16cの検出部16ccに作用する。リニアエンコーダ16cの検出出力信号は、図示しないレンズ基板上に実装されたCPU等からなる制御回路へと伝達される。これによって、4群枠ユニット14の位置検出が行なわれる。
【0061】
以上のように構成された上記第1の実施形態のレンズ鏡筒1において、合焦動作を行なう際の作用を、以下に説明する。
【0062】
まず、自動合焦動作時の作用を説明する。使用者が当該レンズ鏡筒1を装着したカメラ(不図示)側の所定の操作、例えばファーストレリーズ操作等を行なうと、当該カメラは本実施形態のレンズ鏡筒1と協働して、自動合焦動作の実行を開始する。
【0063】
この場合において、駆動モータ18aが駆動されると、リードスクリュー18bが回動する。このとき、フォーカスナット18eは、ロングギア18c,ローラ部材18fを介して距離環33との間で連結されているが、距離環33とローラ部材18fとの間に摩擦力が生じているので、距離環33は不回動状態となっている。したがって、フォーカスナット18eは、上記リードスクリュー18bが回動しても回動せず、いわば回転規制された状態となっている。
【0064】
このように、フォーカスナット18eが回動しないことから、駆動モータ18aが駆動されてリードスクリュー18bが回動すると、これに螺合するフォーカスナット18eは回動しないので、同フォーカスナット18eは光軸Oに沿う方向に進退移動する。このとき、フォーカスナット18eには、4群枠ユニット14のナット当接部14fが常に当接している状態にある。したがって、フォーカスナット18eの光軸O方向への進退移動に伴って、4群枠ユニット14も同方向に進退移動する。このときの移動量は、リニアエンコーダ16cによって検出される。制御回路(不図示)は、該リニアエンコーダ16cの検出出力に基いて4群枠ユニット14の移動制御を行なう。
【0065】
次に、手動合焦動作時の作用を説明する。使用者が距離環33を光軸O周りに回動させることによって手動合焦動作が開始される。距離環33が回動すると、距離環内周とローラ部材18fとの摩擦でローラ部材18fが回転し、それに伴いロングギア18cも回転し、フォーカスナット18eが回動する。このとき、リードスクリュー18bは、駆動モータ18aのディテントトルクによって不回転状態にある。したがって、フォーカスナット18eは、ロングギア18cの回動に従動して非回転のリードスクリュー18bのネジ周りに回動しながら、光軸Oに沿う方向へと進退移動する。これによって、4群枠ユニット14も同方向に進退移動する。
【0066】
このように、使用者が距離環33を手動操作によって回動させることによって、フォーカスナット18eが光軸O方向に移動するので、自動合焦動作を行ない得る状態から、特に機構の切り換え操作を行なうことなく、そのまま手動合焦動作を行なうことができる。
【0067】
なお、手動合焦動作を行なう場合において、フォーカスナット18eが、その移動し得る範囲内の一端部に到達したときに、使用者がさらに距離環33を同方向へと回動操作しようとしたとする。このとき、フォーカスナット18eが距離環33の回動操作に応じて回動を続けようとすると、フォーカスナット18eの外周平歯車部とロングギア18cの噛合部分に過負荷がかかることによる損傷等が生じる虞がある。
【0068】
しかしながら、本実施形態のレンズ鏡筒1における合焦機構18においては、距離環33とロングギア18cとの間にローラ部材18fを介して駆動力の伝達を行なうように構成している。したがって、上述したような状況下において、ロングギア18cとフォーカスナット18eとの間に過負荷が生じた場合には、距離環33とローラ部材18fとの間で滑りが生じる構成となっている。したがって、ローラ部材18f以降、ロングギア18cへの駆動力の伝達が断たれることとなり、よって、合焦機構18Aの構成部材(特にフォーカスナット18e)や4群枠ユニット14に対して過負荷が加わらないように構成されている。
【0069】
つまり、距離環33が回転操作されたときに、ロングギア18cに噛合するフォーカスナット18eに過負荷が生じた場合、距離環33の内周面とローラ部材18fとの間で滑りが生じる。これにより、上記伝達手段(距離環33の内周面とローラ部材18f)は、上記距離環33(第2の枠手段)と上記フォーカスナット18e(ナット部材)との間に介在する滑りクラッチ手段として機能する。
【0070】
以上説明したように上記第1の実施形態によれば、駆動モータ18aによる自動合焦動作時には、リードスクリュー18bに螺合したフォーカスナット18eの回転規制を行なって、これを進退移動させる一方、距離環33による手動合焦動作時には、距離環33の回動方向の駆動力をフォーカスナット18eへと機械的に伝達して、回転規制されたリードスクリュー18bに螺合するフォーカスナット18eを回動させて、これを進退移動させるように構成している。
【0071】
したがって、このような構成により、自動合焦動作を行ない得る状態から、特に機構の切り換え操作を行なうことなく、距離環33を回動操作するのみで、即座に手動合焦動作を行なうことができる。
【0072】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態のレンズ鏡筒について、
図14〜
図16を用いて以下に説明する。本実施形態の構成は、基本的には上述の第1の実施形態と略同様の構成であって、合焦機構の構成が異なるのみである。したがって、上述の第1の実施形態と同じ構成部材については同じ符号を用いるものとし、以下の説明においては、上述の第1の実施形態の構成と異なる部位についてのみ詳述する。
【0073】
図14は、本発明の第2の実施形態のレンズ鏡筒における合焦機構に関連する構成部材を取り出して示す要部拡大分解斜視図である。
図15は、
図14の合焦機構に関連する構成部材のみを組み立てた状態の断面図であって、
図16の[15]−[15]線に沿う断面図である。
図16は、
図15の矢印[16]方向から見た平面図である。
【0074】
本実施形態の合焦機構18Aは、駆動モータ18aと、リードスクリュー18bと、基台金具18gと、外周歯車18hと、リングバネ18iと、Eリング18jと、ナット18k等によって主に構成される。本実施形態において、駆動モータ18a,リードスクリュー18b,基台金具18g等は、上述の第1の実施形態と同様の形状からなる。
【0075】
本実施形態においては、上述の第1の実施形態におけるフォーカスナットに変えてナット部組24を設けると共に、ロングギア18c及びロングギア支持軸18dとを廃して構成される。
【0076】
ナット部組24は、リードスクリュー18bに螺合する雌ネジを中心孔に有するナット18kと、外周面に平歯車を有する外周歯車18hと、上記ナット18kの軸部に挿通され薄板状板バネ部材を円環形状に形成した形態のリングバネ18iと、上記ナット18kの円周溝部に嵌合し上記リングバネ18iの抜け止めとなるEリング18jとを有して構成される。
【0077】
ナット18kの軸部を、外周歯車18hの中心孔にて嵌合した後、リングバネ18iに挿通配置され、この状態で、同軸部の円周溝部にEリング18jが係止される。この場合において、リングバネ18iは、外周歯車18hの一端面とEリング18jの対向面との間で圧接挟持された状態となる。したがって、リングバネ18iは、外周歯車18hの他端面をナット18kのフランジ面に向けて光軸Oに平行な方向に押圧している。そして、ナット18kの軸部は、外周歯車18hの中心孔に嵌合して一体となっている。したがって、ナット18k若しくは外周歯車18hのいずれか一方が回動すると、両者の嵌合力及びリングバネ18iの押圧力によって、両者は一体となって回動する。その一方で、例えば外周歯車18hに所定以上の回動力量、即ちリングバネ18iの付勢力により生じる摩擦トルク以上の力量が加わった時には、外周歯車18hとナット18kとの間で滑りが発生するように設定される。この場合には、外周歯車18hのみが別体として回動することになる。
【0078】
そして、上記ナット部組24の雌ネジはリードスクリュー18bに螺合している。この状態で、外周歯車18hは、距離環33Aの内周面に形成された内歯ギア33Aaに噛合している。ここで、内歯ギア33Aaは、距離環33A(第2の枠手段)の手動操作による回動力をナット部組24を介して4群枠ユニット14へと伝達する伝達手段である。
【0079】
つまり、この伝達手段は、上記距離環33A(第2の枠手段)の内周に設けられ上記ナット部組24の外周歯車18h(平歯車)と噛合する内歯ギア33Aa(内歯車)からなり、上記距離環33A(第2の枠手段)が回転したときに、上記内歯ギア33Aa(平歯車)を回転させるように構成される。その他の構成は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0080】
以上のように構成された上記第2の実施形態のレンズ鏡筒における作用を、以下に簡単に説明する。
【0081】
まず、自動合焦動作時には、使用者がファーストレリーズ操作等を行なうと駆動モータ18aが駆動され、リードスクリュー18bが回動する。このとき、ナット部組24の外周歯車18hは、距離環33Aの内歯ギア33Aaに噛合しており、距離環33が距離環バネ35の上記作用により不回転状態となっている。したがって、ナット部組24は、上記リードスクリュー18bが回動してもナット部組24は回動せず、いわば回転規制された状態となっている。この状態で駆動モータ18aが駆動されリードスクリュー18bが回動すると、ナット18kは光軸Oに沿う方向に進退移動し、これに連動して4群枠ユニット14も同方向に進退移動する。
【0082】
次に、手動合焦動作時には、距離環バネ35の付勢力による摩擦力に抗して使用者が距離環33Aを光軸O周りに回動させる。距離環33が回動すると、内歯ギア33Aaに噛合する外周歯車18hを介してナット部組24が回動する。このとき、リードスクリュー18bは、駆動モータ18aのディテントトルクによって不回転状態にある。したがって、ナット部組24は回動しながら、光軸Oに沿う方向へと進退移動する。これによって、4群枠ユニット14も同方向に進退移動する。
【0083】
この手動合焦動作時にナット部組24が可動範囲内の一端部に到達した後、さらに距離環33Aが同方向へと回動操作されたとする。このとき、ナット部組24が距離環33Aの回動操作に応じて回動を続けようとしても、外周歯車18hとナット18kとの間で滑りが生じる。これにより外周歯車18hは空回りして、合焦機構18Aの構成部材に過負荷が加わることを抑止する。
【0084】
本実施形態のレンズ鏡筒における合焦機構18Aにおいては、4群枠ユニット14を光軸O方向に進退させるためのナット部組24を、外周歯車18hとナット18kとの二部材で構成し、両者間の駆動力の伝達を、リングバネ18iの付勢力によって行なうように構成している。このような構成により、上述の第1の実施形態と同様に、合焦機構18Aや4群枠ユニット14に対して過負荷が加わるのを抑止する。
【0085】
したがって、リングバネ18i(バネ部材)は、上記ナット部組24の外周歯車18h(平歯車)と上記ナット部組24のナット18kとを光軸Oに平行な方向で互いに圧接している。これと同時に、リングバネ18iは、ナット部組24に過負荷が生じた時には、滑りクラッチ手段として機能する。
【0086】
以上説明したように上記第2の実施形態によれば、上述の第1の実施形態に対して若干簡素化された構成としたにもかかわらず、略同様の効果を得ることができる。
【0087】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態のレンズ鏡筒について、
図17〜
図19を用いて以下に説明する。本実施形態の構成は、基本的には上述の第1,第2の実施形態と略同様の構成であって、合焦機構の構成が異なるのみである。したがって、上述の第1,第2の実施形態と同じ構成部材については同じ符号を用いるものとし、以下の説明においては、上述の第1,第2の実施形態の構成とは異なる部位についてのみ詳述する。
【0088】
図17は、本発明の第3の実施形態のレンズ鏡筒における合焦機構に関連する構成部材と外装部品を取り出して示す要部拡大分解斜視図である。
図18は、
図17の合焦機構に関連する構成部材と外装部品を組み立てた状態の断面図であって、
図19の[18]−[18]線に沿う断面図である。
図19は、
図18の[19]−[19]線に沿う断面図である。
【0089】
本実施形態のレンズ鏡筒においては、外装部品であるフイルタ環32と距離環33Bとの間に距離環バネ35が設けられており、この距離環バネ35が距離環33Bを後方に向けて押圧している点は、上述の第1,第2の実施形態と同様の構成である。
【0090】
本実施形態においては、上記距離環33Bの後方であって後カバー34の内側部位に内歯ギア環38を配設している点が異なる。この内歯ギア環38は、内周面上に内歯ギア38aを有する環状部材である。
【0091】
本実施形態における第2の枠手段は、手動により回転させられる第1回転環である距離環33Bと、内周面にナットギア18m(ナット部材;後述する)と噛合する内歯ギア38aを有し上記距離環33Bと共に回転する第2回転環である内歯ギア環38との二体化された環状部材によって構成される。そして、上記距離環33B(第1回転環)と内歯ギア環38(第2回転環)とは、距離環バネ35(バネ部材)によって光軸O方向に付勢され、摩擦力によって一体に結合されるように構成される。
【0092】
内歯ギア環38の前端面38bは、上記距離環33Bの内周側の後端縁近傍に形成される内向フランジ部33Bbに当接している。上述したように、上記距離環33Bは、上記距離環バネ35の付勢力によって後方へと押されているので、内歯ギア環38も距離環33Bを介して同方向に押圧される。
【0093】
一方、内歯ギア環38の後端縁は、固定枠(不図示)の内周側の後端縁部近傍に設けられたボール環39に当接している。これによりボール環39は、上記距離環バネ35による上記内歯ギア環38の後方への押圧を受けている。
【0094】
上記ボール環39は、円環形状部材からなり、上記内歯ギア環38との当接面側に、複数のボール部材39aが周方向において等間隔に配設されている。この複数のボール部材39aは、上記内歯ギア環38の内周の後端縁近傍に設けられたスラスト面38cに当接することで、当該内歯ギア環38を円滑に回動させるためのボールベアリングとして機能する。
【0095】
上記内歯ギア環38は、距離環33B(第2の枠手段)の手動操作による回動力をナットギア18mを介して4群枠ユニット14へと伝達する伝達手段である。
【0096】
他方、本実施形態における合焦機構18Bは、駆動モータ18aと、リードスクリュー18bと、基台金具18gと,ナットギア18m等によって主に構成される。このうち、駆動モータ18a,リードスクリュー18b,基台金具18gは、上述の第1の実施形態と同様の形状からなる。上記合焦機構18Bのうちナットギア18mは、中心軸孔にリードスクリュー18bに螺合する雌ネジを有すると共に、外周面に内歯ギア環38と噛合する平歯車部を有するナット部材である。その他の構成は、上述の第1,第2の実施形態と略同様である。
【0097】
以上のように構成された上記第3の実施形態のレンズ鏡筒における作用を、以下に簡単に説明する。
【0098】
まず、自動合焦動作時には、駆動モータ18aが駆動されてリードスクリュー18bが回動する。このとき、ナットギア18mの平歯車部と内歯ギア環38の内歯ギア38aとは噛合している状態にあり、距離環33Bは距離環バネ35の摩擦力により不回転状態にある。したがって、上記リードスクリュー18bが回動してもナットギア18mは回動することはなく、いわば回転規制された状態となっている。つまり、距離環33Bが不回転状態にあるときには、ナットギア18mは不回転状態を維持する。
【0099】
この状態で駆動モータ18aが駆動されリードスクリュー18bが回動すると、ナットギア18mは不回転状態を維持したままリードスクリュー18bとナットギア18mの雌ネジとの作用により光軸O方向に進退移動される。これにより、4群枠ユニット4も同方向に進退移動する。
【0100】
次に、手動合焦動作時には、距離環33Bが使用者によって光軸O周りの回動方向に手動操作をされる。すると、距離環33Bとボール環39とに挟まれた内歯ギア環38は、上記距離環33Bと一体に円滑に回動する。このとき、リードスクリュー18bは、駆動モータ18aのディテントトルクによって不回転状態にある。したがって、ナットギア18mは回動しながら、リードスクリュー18bとナットギア18mの雌ネジとの作用により光軸Oに沿う方向へと進退移動する。これによって、4群枠ユニット14も同方向に進退移動する。
【0101】
この手動合焦動作時にナットギア18mが可動範囲内の一端部に到達した後、さらに距離環33Bが同方向へと回動操作されたとする。このとき、ナットギア18mが距離環33Bの回動操作に応じて回動を続けようとすると、距離環33Bと内歯ギア環38との間、即ち距離環33Bのフランジ部33Bbと内歯ギア環38の前端面38bとで滑りが生じる。これにより、距離環33Bが回動操作されても、内歯ギア環38が不回転状態になり、よって合焦機構18Bの構成部材に過負荷が加わることを抑止する。
【0102】
以上説明したように上記第3の実施形態によれば、上述の第1,第2の実施形態と略同様の効果を得ることができる。
【0103】
なお、上記各実施形態においては、光軸Oに沿う方向に進退自在に構成される第1の枠手段としての4群枠ユニット14は、合焦用レンズを保持しフォーカシングのために進退移動させる枠部材としている。しかしながら、本発明の構成は、この構成及び用途に限られることはなく、例えば変倍用レンズを保持しズーミングのために光軸O方向に進退移動する枠部材に適用することは全く同様に可能である。
【0104】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施し得ることが可能であることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。